フランチャイズに加盟する前に知っておきたい15のポイント
独立や退職をきっかけに、フランチャイズへの加盟を検討する方が増えています。フランチャイズは、有名な企業のブランド・ノウハウを借り受ける事ができ、ゼロから事業を立ち上げるよりも事業立ち上げがスムースに行きやすいといったメリットがあります。
一方、加盟・契約に伴うトラブルを防ぐためには、事前にフランチャイズ契約のルールや注意点を確認しておくことも大切です。今回の記事ではフランチャイズへの加盟を検討する前に、事前に知っておくべきポイントをわかりやすく解説するのでご参考下さい。
フランチャイズ加盟のポイント 事業検討・心構え編
フランチャイズの募集サイトを見ると、初心者でも月収数十万~数百万、他店舗展開で事業を自動化など、非常に派手な言葉で加盟者を募るフランチャイズ事業者も目立ちます。
企業は当然利益を出す=フランチャイズへの加入促進をし、加盟料などの利益を得るといいう必要がありますので、有利なことや大きな実績は大体的に宣伝し、不利・マイナス・過去の失敗は、小さくしか書かないことも多いでしょう。
もちろん、フランチャイズのアピールをする上で虚偽の実績を出すことはできないので、書かれていることも事実ですが、加入者全員が成功モデルのように上手くいくとは限りません。
第一章では、フランチャイズ加盟を考える上で重要な事業内容の検討、フランチャイズ加盟における心構えの面に関してまとめ、第二章ではフランチャイズ契約のポイント・留意点について解説します。
フランチャイズは独立した経営者であるという自覚を持つ
心構えの大前提として、「フランチャイズ加盟者は、あくまで独立した経営者であり、フランチャイズ事業者と対等のマインドで関わっていく」ということを踏まえておく必要があります。
確かに、フランチャイズに加盟することで、本部からブランド・ノウハウの提供やサポートなど、様々なメリットがあります。ただ、そのサポートを実行したり、事業者と共に検証・改善するのは加盟者側の仕事でもあります。
フランチャイズに加盟したから「本部に全てお任せ・丸投げ」という姿勢では、フランチャイズ事業者の側もサポートが難しくなります。
経営主体は経営者自身であります。お客様気分ではいけません。フランチャイズ事業者は加盟事業者のサポートを行う側であり、各種相談や施策の実行は、加盟者側が責任を持って行うのだということを念頭に置いておく必要があります。
事業内容が自分に適しているかを考える
既に事業を経営しており、社員・アルバイトなどにFCのパッケージを実行させる体制があればともかく、通常は自分一人や家族、アルバイトなど最小限の人材から事業をスタートすることになります。
事業のビジネスモデルがいかに優れたものであっても、開始当初は経営者がプレイング・マネジャーの立場で、現場で働き管理を行う必要があります。
その時は、経営者自身が自身の仕事にフルコミットできるか、また業態が自分の年齢・スキル・やりたいこと・できることなどと合致しているかも重要になります。「自分が最前線に立ったとき、客観的に顧客にどういう印象を与えるか」という点は考慮しておいた方が良いでしょう。
開業しようとする地区の商圏・顧客層を考える
開業する地区の商圏や顧客層を考えるのは大切です。例えば、入院機能を備えた病院の周囲にある立地でコンビニエンスストアを運営するとしましょう。
主要顧客は、病院内の売店が閉店している時間帯に来る、病院の入院患者の見舞客や医師・看護師・病院の周囲に住む医師・看護師の家族などが想定できます。
また、品揃えに関しても、高齢者向けの商品や、可処分所得のある医師が好みそうな商品、暇つぶしの書籍・子ども向けの簡単なおもちゃ・医療従事者のストレスケアに配慮した商品や近隣住民の好みそうな商品など、「来る人は何を求めてここに来るか、ふと目にしたときに買ってくれそうな物は何か」について考える必要があります。
加えて、顧客層というのも重要です。小学校・中学校の近くなどは、一見人通りも多く、好立地に見えます。しかし、この好立地がプラスに働く業態と、マイナスに働く業態があります。
近所の口コミで伝え聞いた事例では、「学習塾」「病院」など親がお金を出す、つまりお金の出し手が学生自身ではないビジネス、「物販」を主としない業種は、繁盛しているケースが多いそうです。
しかし、コンビニエンスストアなど、「物販を主体とする業種」では、顧客層(小中学生)の可処分所得の少なさや、万引き(窃盗)などの問題があり、短期間で閉店の憂き目に遭うケースを何件も伝え聞きます。
逆にこれが高校生になると、教育面で問題のある高校でない限りは、普通に生徒が良い顧客となってくれますし、学習塾などは更に親和性の高い事業となる可能性があります。
また、都市・地方を問わず事業を行う立地の安全性や客層の健全さ、地方であれば店舗への進入のしやすさというのも重要な観点です。
立地の安全性については、特に夕方・夜間・深夜に現地を視察したり、可能であれば近隣住民に聞いたり、店舗に顧客として行き、その中で話をサラッと聞くことなどで、地域自体の安全性に問題がないかを確認することが望ましいと言えます。
それから、地方の場合は、車を利用した移動が前提となっています。地方で交通量が多く、一見良さそうに見える立地であっても、「車が渋滞する交差点の四つ角立地」というのは大きな鬼門です。
特に、四つ角の部分で一方向からしか出入りできない、二方向から出入りができるが、一方向からは出入りがしにくく狭いという立地は、大きなマイナスになりかねません。入るときにも気を遣いますし、出るときには、車が出口前に連なっており、なかなか出られずストレスになります。
実際、多くの四つ角立地の店舗のうち、「左折で2カ所から入れて、両方からの進入路が十分に確保してある」という店舗は長続きしていますが、「1カ所からしか入れない、2カ所から入れるが、1カ所の進入口が小さい、右折進入しかできないという立地の店舗は、大抵の場合、数ヶ月~数年で撤退の憂き目に遭っています。
右折でないと進入できない立地の場合、後続が渋滞することで、通行する人に「この店舗が邪魔だ」という印象を与えてしまうことさえあります。
このように地方の場合は、「車で進入しやすいかどうか」という、「店舗側から見たら一見些細なことでも、来店者にはじわじわストレスを与える」状況になってしまうのは、大きなマイナスです。顧客にとっては「他のところでいいか」となってしまい、いくら努力をしても、「顧客の気分」で敬遠される可能性もあります。
また、都市や駅周辺部の場合は、客層が場所により大きく異なるという問題があります。
現在はコロナ禍で夜の街も静かになってしまっていますが、これまでは飲み屋街などがあると、客層が良くも悪くも、「普通のお客様」と異なるケースも少なくなく、特に物販主体の店舗では、セキュリティに気をつける必要があります。
逆に、都市や駅周辺部がビジネス街として発達している場合は、周辺に勤務する人が何を望むかを考えた上で、立地やサービス、品揃えなど、あらゆる事を考える必要があります。
商売は立地(テナント)が9割とまでいうコンサルタントの方も存在しますが、あながち大げさな話ではありません。ビジネスにおいて、どこで何を行うか、そして「お金がきちんと動く場所に進出する」ということは重要と言えます。
事業が時流に乗っているかを熟考する
立地も重要な要素ですが、やはり事業が時流に乗っているかという点は、注目すべき点と言えます。
特に、この数ヶ月にわたるコロナ禍は、消費者の行動をガラリと変えてしまいました。いわゆる、「夜の街」関連の業種に関しては、ダメージを受けている業種が相当数です。また、夜の街の周辺業種、例えば周辺のコンビニエンスストアや食品店・診療所・薬局・夜の店に商品を納入する事業者などは、相当な影響を受けていることが容易に推測できます。
また、対面での接触を伴う業務は、業種を問わず大きな影響を受けていることも推測できます。
このコロナ禍がいつまで続くかわかりません。コロナ禍における消費者の行動変容で、新型コロナウイルスが落ち着きを見せても、消費者の消費のあり方は大なり小なり変化する恐れがあります。
その点で、これまであった「回転率を高める薄利多売のビジネス」「密集・密接・密閉が生じるビジネス」というのは相当厳しい局面に置かれるかもしれません。
加えて、ビジネスそのものが「時流に沿っているか」「流行が終わっていないか」、そして「時流や流行の影響を過度に受けない業種であるか」ということを考える必要があります。
流行に関しては、いろいろな事例が思い浮かぶかと思います。今はどうなったのだろうというテイクアウトビジネス、「クレープ」「メロンパン」「白いたい焼き」など、枚挙に暇がありません。
特に白いたい焼きで言えば、「今残っているお店がいくらあるか」「コンビニでもついで買いできるものを、わざわざ独立店舗まで言って買うか」などの問題があります。
加えて、「時流」という面では、人口動態も着目すべき点です。出生率が下がり、中高年の人数が多く、かつ可処分所得も大きいという状況では、若年層を対象にしたビジネスを選ぶということは、毎年全体のパイが減っていく中で、競合と争う必要があるわけです。
加えて、現在の若者の場合、スマホゲームの課金やWeb配信への課金、携帯代、スマホ本体などデジタル関連に可処分所得を投じている傾向があります。
その中で若者をターゲットにするには、よほど若者が惹きつけられる商品を考えるか、あるいは可処分所得の高い両親・祖父母等をターゲットにした、「支払いの財布が違う事業」を選ぶなど、「支払うのは誰か?」という点に着目するのも一つの考えと言えます。
このように、「今後自分が参入しようという事業は、市場から求められるか?」という点は冷静に考えて行く必要があります。
もし事業の採算が取れなくても、本部が損失補填をしてくれるケースというのは、基本的にないと考えるべきでしょう。
フランチャイズであっても、あくまで事業の成否は、業種選定や立地選定も含め「自己責任」になってしまうわけです。その点、冷静な目線で考えた方が良いかと思います。
本部のシミュレーションはあくまで参考と割り切る
フランチャイズ加盟を検討する上で、本部の説明会やWeb説明会に参加すると、「収益シミュレーション」など、どれくらい事業で売上・利益が出るかの目論見書を提示されるケースは多いと思います。
当然、このシミュレーションには、数字に何らかの裏付けがあって計算されたものですので、収益シミュレーションを全否定するわけではありません。
しかし、収益シミュレーションの表には小さく「これはあくまで参考です、この数値になることを実際に保証するわけではありません」という旨の文言が書かれているでしょう。
収益シミュレーションは、一つの参考材料として考えても、そのままストレートに受け取るのは、経営者の姿勢としてどうかと思いますし、「疑ってみる」という考えを持たないと、商売人として生き残れないでしょう。
実際、収益シミュレーション通りに行かなかったとしても、本部が責任を取ってくれるわけではありません。あくまで、収支シミュレーションは机上の計算に基づく想定である、ということは繰り返し頭にたたき込んでおく必要があります。
けしてフランチャイズ事業者が出した、事業成功の保証書などではありません。単なる「バラ色のシミュレーション」です。
むしろ、実際に事業を行った際は、外的要因に加え、フランチャイズ加盟者の努力・改善などの要素も絡むので、シミュレーション通りに行くと思い込まない方が望ましいと言えます。
フランチャイズ本部のサポート体制を確認
フランチャイズに加盟し、自営業を始める、会社設立を行う人の大半は、「経営」という側面に関しては初心者であることも想定できます。
特にこれまで会社の役員や重要な役職を担ってきた人であっても、「会社員として求められた能力と、一人の自営業者・スタートしたての法人代表者として求められる能力」というのは大きく異なります。
重要な役職に就き、これまでは雑務も含め大抵のことは部下がやってくれた、という場合であっても、フランチャイズ事業者として独立した場合は、過去の肩書き、人脈などはほぼ関係ないものになります。
あくまで、「若葉マークの経営者」でしかないわけです。自動車運転には教習所がありますが、経営に関しては教習所がありませんし、そもそも答えがあるわけではありません。
そのような中で、フランチャイズ本部にいろいろと相談できるということは、客観的なアドバイスを受け、方向性の軌道修正など、「事業が意図せぬ方向へ行ってしまう」ことを未然に防止することができます。
しかし、フランチャイズの本部側が、真剣に「加盟者の成功が自社の成功」という気持ちで向き合ってくれる会社であるかどうかは重要になります。
もしフランチャイズ事業者が、自社の利益至上主義であれば、加盟させ、ロイヤリティなど得ることばかりに注力し、加盟後のフォロー・アドバイスなどが不十分になってしまう恐れもあります。
このような、加盟店舗に対するフォローに関しては、ネットの評判の他、もし可能であれば少し遠めのところ(近くでないため、商圏での競合がないため、率直に話してくれる可能性がある)のフランチャイズ加盟店に行き、話を聞いてみるという方法もあります。
今後の事も考え、フランチャイズ事業者がどのような考えを持つのか、評判はどうなのか等を確認することも重要と言えます。
フランチャイズ事業者の評判を確認
先ほどの事業者に限らず、フランチャイズ事業者の評判を確認することが重要です。フランチャイズ募集のサイトを見ると、「店舗の平均年商何千万円!」とか「やればやっただけ成果に」「週3の稼働で月○○万円」「開業数年で売上数千万の実績も」など、魅力的な言葉が並んでいます。
ただ、フランチャイズ事業者が実績として挙げるのは、「極めてうまく行ったケース」であることが大半で、「失敗したケース」や、「軌道に乗っていないケース」などを示すことはまずありません。
やはり、わかりやすく、華々しい言葉の方が見る人の目を惹きますので、突出した実績がピックアップされるのは、致し方ないものと言えます。
ただ、良い実績ばかりを並べ、一方で「結果が出なかった事業者さんもいます、その原因はこうでした」など、マイナスの事もきちんと話してくれるフランチャイズ事業者は、誠実と言えましょう。
よほどの悪質な事業者でない限り、やはりフランチャイズ事業者と加盟店が共存共栄し、共に成長していくのが理想であると考えています。
また、中長期的に見ても、一時的に派手な方法でフランチャイズを大量に増やせたとしても、フォローができずに加盟者が破綻したり、最初の話と違うと訴訟を提起されてしまうと、事業者側にとっても大きな信用毀損になります。
また、フランチャイズ事業者の評判を確認する上では、フランチャイズ事業者の運営者・実質的経営者や役員の来歴なども重要です。
これまでの事業や、過去にフランチャイズ事業で大きな問題を起こしたことはないか、また、社会的に意見が分かれるビジネスとの関与はないか、反社会的勢力との関与はないかなどに関しても、できる限り調べておくことが望ましいと言えます。
併せて、過去のフランチャイズ事業展開が、「加盟者・加盟金を取って後は・・」という前歴があれば、今募集している事業も同じような事になる可能性が想定できます。
また、新型コロナウイルスの影響で、事業説明会というのは減り、オンラインでの説明会も増えました。
実際の説明会・オンラインで多人数を交えた説明会で注意すべきことは、
- ・サクラがいないか
- ・説明手法が催眠商法的ではないか
- ・即日の契約を迫ってこないか
という点です。
サクラについては、説明会で積極的に入ろうという人が何人かいると、「自分も」という心理になる可能性があります。
しかも、「先着10名様だけとか本日契約をした人だけ、加盟金20%オフ」のような、ニンジンをちらつかせられるケースもありえます。
普段は催眠商法や詐欺・FCトラブルを「あんなものに引っかかる人が悪い」と考えるような方でも、場の雰囲気に飲まれ、冷静に考えず、即決契約をしてしまう可能性もあります。
また、自己啓発書にありがちな「成功者は即断即決する」という言葉を使い、「ぜひあなたも本日ご決断下さい」「エリアには限りがありますので、先行者利益を得ましょう」などと即断即決を迫るケースが悪質商法にはあると伝え聞きます。
もし、フランチャイズ事業者が万一、あまりよろしくない考えを持つところであれば、一つのテクニックとして、即断即決や場の雰囲気づくり(儲かりそう、今契約しないと損)などの、悪質商法のクロージングの手口を、そのまま説明会に持ってくることも想定し得ます。
万一、説明会などで「今日契約させよう」という雰囲気が見られたらある程度は警戒する必要があると思った方が良いでしょう。
フランチャイズ事業者が「なぜFC展開をするのか」を確認
意外と抜け落ちがちな視点ですが、フランチャイズ事業者が自前でやらず、フランチャイズを募集するのには、何かしらの理由があります。儲かる事業であれば「自社で運営することが一番効率良いのではないか」と冷静な方が考えるのは自然な事です。
それでもフランチャイズを募集するのには、
- ・自社のリソースでは素早い全国展開が難しい
- ・自社で雇用し事業展開を行うのはコスト負担が大きい
- ・地域の事情に通じた法人・事業者と組みたい
など、外部の力を用いたいという理由が何かあるから、という可能性が大きいと考えた方が良いと思います。(もちろん、それ以外の要因も考えられます)
FC展開を行う理由、そして、なぜ自社展開ではなくFC展開なのかを、説明会や本部とのコミュニケーションで確認することが大切です。それが単なる儲かる人を増やしたいなど「きれいごと」ではなく、理にかなったものであれば良いでしょう。
また、フランチャイズは、100%成功するというものではありません。
修行制度などを経てFCで独立する制度がある会社でも、「うまくいかなかった例がある」と率直に書いている会社もあります。
成功例だけではなく、失敗例や、予想と実際の乖離があり、てこ入れに入っているFCがあるかなど、課題・失敗例も聞き、マイナス面も包み隠さず話してくれるかは重要と言えます。
このような、事業の負の側面を隠し、いいことばかり言い契約を迫る場合は、いろんな意味でFC加入を考え直した方が望ましいと言えます。
フランチャイズだからこそ、地域に溶け込む努力を
フランチャイズは、有名・実力派企業の看板を借りられるという側面があります。ただ、それにあぐらをかいて、地域や周囲の店舗との共存を軽視すると、足元をすくわれるたり、悪評が広がってしまうこともあります。
フランチャイズに加盟することは、会社の看板を背負う一員になるという事でもあります。そこで、地域との共存を考えなかったり、近隣住民に親しんでもらう配慮を怠ると、「あの○○はダメだ」と言われかねません。
さらに、フランチャイズ運営者自体の問題だけでなく、フランチャイズ本体の問題にまで発展すると、本部にも迷惑をかけたり、問題によっては契約解除・損害賠償請求などの可能性も出てきます。
それくらい、加入したフランチャイズ事業者の看板を背負った認識と、地域との共存は重要です。
フランチャイズ事業者の方針が第一なので、本部にも確認する事は重要ですが、問題がない場合は、地域の商工会への加入や奉仕活動への参加、周囲の清掃など、一見地道で目立たないことであっても、「地域にもきちんと溶け込んでいきます」ということを行動で示すことが大切と言えます。
人材採用、育成を本部任せにしない
フランチャイズは、大手であればあるほど、マニュアルも充実し、人材採用に関しても「採用センター」を設けるなど、人材育成のマニュアル化や、採用のシステム化を図っています。
一方で、マニュアル通りに業務を行わせることや、人材を育成していくことは、経営者とフランチャイズ事業者の社員とで、二人三脚で行う必要があります。
このような、既に存在するマニュアル・システムは当然活用すべきですし、事業遂行の上で、マニュアルを逸脱する対応をしてはいけません。
フランチャイズ事業者の社員としても、採用した社員・アルバイトなどの行動を逐一見ることは、物理的に不可能です。
そこで、経営者が社員・アルバイトときちんと向き合い、日頃からコミュニケーションを取ることで、モラルの向上や、社員・アルバイトに対し「きちんと自分たちを見てくれているな」という意識を植え付ける必要があります。
特に、当然のことですが社内でのパワハラ・セクハラや、釣り銭・ポイントのような細かなものから、社内の資産まで「横領」がないように、経営者が「きちんと見ているぞ」という部分を意識させることも重要になります。
やはり、フランチャイズ事業者であっても、トップが仕事に対して率先垂範して取り組むという姿勢を示すことは重要です。
時に書籍などでは、「遊び歩ける余裕のある社長が良い社長だ」などと書かれたりしていますが、事業が軌道に乗っていないケース、中途半端に乗り始めたケースで真に受け実行することは、社員・アルバイトにとって悪影響を与えかねません。
社員・アルバイトは、「俺たちはこんなに働いているのに社長は・・・」という気持ちを持ち、それが社内モラルの低下や重要な社員・アルバイトの離反などに繋がることも考えられます。その点に関し、トップが行動であらゆる事を示していくというのは重要でしょう。
フランチャイズ加盟のポイント・契約編
ここでは、フランチャイズに加盟する上で重要な、契約に関する面についてまとめています。
契約において、何よりも覚えておいていただきたいのは、「ハンコを押したら、もう後戻りはできない」という点です。
詳しくは後ほど説明しますが、仮に契約が加盟者側にとってどんなに不利なものであったとしても、ハンコを押した、つまり「契約した」以上は、内容が公序良俗に反しない限りは、争いになっても裁判所は「契約したのですよね、ではそれが優先です」となるだけです。そのため、契約というのは場の雰囲気に飲まれず、冷静に判断して契約を行う必要があります。
それでは、具体的な部分な点を検討してみましょう。
不明な点は曖昧にしない
契約書の文言というのは、ほとんどの人にとって「わかりにくく、読みたくない」、堅苦しい文章の山で構成されています。
仕事でこれまで契約業務などに携わっていて、契約書を読むことに抵抗感がない人や、保険の営業・審査業務のように、約款を読み込むことに慣れている人にとってはともかく、普通の人が「フランチャイズ加盟契約書」を読み込むのは大変です。
理想的なのは、契約書はじめ各種書面を、弁護士など契約に詳しい専門家に見てもらうという方法です。書面を踏まえ、注意事項やトラップなどを指摘してもらうのが理想と言えます。
そこまでするのが難しい、という場合でも、中小企業庁が出している、「フランチャイズ事業を始めるにあたって」というリーフレットを読み込み、契約や法定開示書面のチェックポイントなどを抑えておくことは重要です。
特に、中小小売商業振興法における開示項目は、フランチャイズ事業者の内容を考える上で、大事です。
具体的なチェックポイントを当リーフレットからピックアップしてみましょう。
- ・本部事業者の規模や事業の内容等を把握
- ・直近の出退店数を把握する。退店数多い場合は注意
- ・本部事業者とフランチャイズ加盟者間の5事業年度の訴訟の数。
- 訴訟が多いことは、それだけ本部事業者とフランチャイズ加盟者の信頼が毀損されるような事態が発生しているということの表れですので、訴訟が多い場合は特に注意した方が良いでしょう。
- ・営業時間・営業日・休業日
- ・近隣への出店計画など
- ・競業禁止・秘密保持義務
- ・ロイヤリティの計算根拠
- ・オープンアカウントなど特殊な会計処理を始めとする、会計処理の仕組み
- ・契約違反となるケースとその場合の金銭支払い・契約解除などのペナルティ
- ・店舗が何らかの事情で開店できない場合、加盟金などは返還されるか
- ・十分な経営指導が受けられるか、また研修等にかかる追加負担はあるか
- ・契約期間・更新・解除において、どの解約の場合にどれくらいの解約金がかかるのか
これは、チェックポイントの一要素に過ぎず、他にもチェックする点は多く存在します。
加えて、契約を行う上では、保証金・借入などお金の面を極力クリアにすると共に、
- ・フランチャイズ事業者の経営理念
- ・開設予定地の立地や商圏
- ・収益予測の検証
- ・フランチャイズ契約により受ける制限を認識しておく
ということも重要です。
重要なのは、契約やその他開示書面において、「わからないことをわからないままにしない」ということです。
もし少しでも疑問に思うことや。わかりにくいところがあれば、わかるまでしっかりと質問していくべきですし、もし説明・情報開示を拒んだり、嫌な顔をする場合は、フランチャイズとして契約しても、長期的な良い関係を築いていくことは難しいで可能性があります。
ハンコを押したら後戻りはできない
フランチャイズ事業者の中には、悪質な本部事業者も存在します。
事業者によっては、加盟希望者向けの事業説明会で、契約書ではない書面に住所氏名を当日に書かせ、後日契約書を交付、疑義があっても「いや、契約したでしょう、解約するなら違約金を支払ってください」と金銭を要求し、断ると、内容証明郵便等を送りつけ、支払いを強要するという事例さえもあります。
もちろん、この場合は、契約書以外の署名にただ住所・氏名を記入しただけですので、「ハンコを押したと言うことにはならない」=契約の成立には繋がりません。
もし上記のような、契約でないものを契約と言い張り、不当な請求を行うという事例に巻き込まれた場合は、フランチャイズ契約に関する相談窓口、一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会のフランチャイズ相談センターに相談することが重要です。
このように、フランチャイズ事業者側と、加盟者側の知識の非対称性(知っていることの違い)を悪用し、不当な請求を行う、悪質な事業者もいるという現実は抑えておくべきです。
加えて、このようなだまし討ちを行うフランチャイズ事業者が、加盟者側の事も配慮した運営を行うとは考えられません。
この例は極端にせよ、加盟希望者に考える時間を与えず、即日契約を迫るフランチャイズ事業者はあると心得ておくべきです。
中小企業庁の発行する公的なリーフレッでも、様々なトラブル事例が報告されています。
- ・フランチャイズに加盟して経営を始めたが、フランチャイズ事業者が示した当初の売上予測の半分にも満たない
- ・店舗候補物件が確定する前に、見切り発車で契約を結んでしまい、結局開店できなかったにもかかわらず、加盟金や諸費用が返還されない
- ・想定外のロイヤリティで、収入の大半がロイヤリティとして吸い上げられる
- ・自分の店が繁盛してうまく行ったところに、近くに本部直営店を出され、売上が激減してしまった
- ・経営がうまく行かず解約を申し出たら、解約違約金を請求された。
このような、フランチャイズ事業者と加盟者同士のトラブルに加え、近年はSNSなどで、店舗内で撮影した不適切な画像・動画(職員を粗末に扱う、業務用冷蔵庫の中に入る)など、普通の感覚でまず考えられないことを行い、それをインターネットにアップロードするという者もいます。
このような不心得者がトラブルを起こしたばかりに、本部から信用失墜に関する責任追及を受け、違約金・契約解除や訴訟などの事態に発展する可能性もあります。
事業者同士だけではなく、近年は内部の不心得者から足を掬われる可能性もある、ということは注意するべきです。
社員やアルバイト教育においても、「こういうことをすると数千万円単位の損害賠償・時に刑事訴訟で警察のお世話になる可能性、また行った行為がデジタル・タトゥーとして一生残り続けるなど、軽い気持ちのふざけが身を滅ぼす、ということは強く自覚させた方が良いでしょう。
年齢の高低を問わず、「社会人としてやってはいけないこと」を行い、大きなトラブルを引き起こす人は存在します。
このようなトラブルを未然に防ぐためにも、あえて常識でわかりそうな事であっても、「明確にダメと伝え、罰則も伝えることで、自身のふざけた行為が恐ろしい事に繋がる可能性は、認識させておくことが大切です。
FC事業者との契約は、事業者同士の契約と心得る
フランチャイズ事業者との契約は、これまででも触れてきたとおり、実態はともかく、契約上は「プロとプロの契約」ということになります。
これが事業者と消費者の立場であれば、消費者保護法・消費生活センターの介入など、消費者保護の仕組みが多くあります。
しかし、事業者同士の契約においては、基本的に弱い立場が保護されるという仕組みはありません。あくまで事業者同士の対等な関係の契約であり、クーリングオフなども当然できません。
以前、IT知識の乏しい自営業者を狙い、電話勧誘で数百万のホームページや関連するソフトウェアを数年にわたるリースで契約させる事業者がおり、問題になりました。
アプローチとしては、月数万円でホームページが持てるという切り口であるものの、実際は5年なり7年にわたる長期契約を前提にしたリースである上に、契約後のフォローも不十分であることから問題になりました。
しかし、会社と個人事業主や零細企業、つまり事業者対事業者の契約であると言うことで、不当に高い長期契約をしてしまった側が救済されることはなく、消費生活センターや消費者庁などの介入もできず、契約をした側は泣き寝入りすることとなりました。
このように、事業者同士の契約でトラブルがあっても、原則は、事業者同士の契約なので「注意しなかった事業者が悪い」という結論になってしまうケースが多いです。
もちろん。フランチャイズ事業者の業界団体や経済産業省・中小企業庁なども、ガイドラインの策定や中小小売商業振興法という、フランチャイズ加盟者を守る法律の策定、中小企業庁や地方経済産業局でのフランチャイズ関連相談の受付など、一定の対策は行っています。
とはいえ、やはり対消費者の契約と比べ、「事業者同士の契約は対等である」という建前があること、加えて「大きく力のある事業者の方が、主導権を握る」という現実があることも踏まえて、契約に関しては非常に慎重に考えて行う必要があります。
改めて、「ハンコを押したら、後戻りはできない」ということを、心得ておくことが重要です。
ロイヤリティに注意する
ロイヤリティの仕組みに関しては、シンプルな会社から極めて複雑な会社まで、多種多様です。
また、店舗工事や事業者の紹介、各種材料・商材の仕入れを本部から行う上で、本部にとっての実質的なロイヤリティが入っているケースもあります。
そのため、「どこかで本部が利益を得る仕組みがあるはずだが、それはどこか」ということを把握しておく必要があります。
表向きはロイヤリティの安さや定額をアピールしつつも、どこか他の部分でフランチャイズ事業者が利益を挙げる仕組みが構築されている、という可能性はゼロではありません。
また、ロイヤリティ自体も、計算が非常にわかりにくいものがあります。
例えば、中小企業庁のパンフレットで例として示されている、コンビニエンスストアのロイヤリティの金額について見てみましょう。
ロイヤルティの金額
=売上総利益×ロイヤルティ率
={売上高-(売上原価-廃棄ロス原価-棚卸ロス原価)}×ロイヤルティ率
={売上高-(期首在庫+仕入-期末在庫)+廃棄ロス原価+棚卸ロス原価}×ロイヤルティ率
={(売上高-期首在庫-仕入)+(期末在庫+廃棄ロス原価+棚卸ロス原価)}×ロイヤルティ率
この計算式を見て、普通の人ロイヤリティの仕組みを理解することは相当難しいと思われます。
また、本部シミュレーションの数字では、低いロイヤリティに見えても、実際に事業を運営してみると、廃棄ロスや棚卸しロスなどの部分で、想定のロイヤリティより高いロイヤリティになる可能性もあります。
さらに、コンビニエンスストアの場合は、加盟店側の勘定が不足する際に、オープンアカウントという形で、貸付を自動的に行いカバーする仕組みとなっている会社もあります。
このように、事業者によっては、ロイヤリティ以外にも非常に複雑なシステムが存在する場合があります。
このような点も含め、ロイヤリティ他、どのようなお金がかかるのかを把握しておくことが大切です。
契約トラブルがあれば、中小企業庁・公正取引委員会・弁護士に相談
ここまででお話ししたとおり、契約におけるトラブルは原則、事業者同士で解決しなければなりません。
しかし、これは建前という面もあります。フランチャイズ事業者とフランチャイズ加盟者、立場で言えばどちらが事実上強いかは、言わずもがなでしょう。この現実を踏まえ、実質的に立場の弱いフランチャイズ加盟者側のため、経済産業省・中小企業庁・公正取引委員会が、施策を打っています。
省庁・業界団体も相談窓口を作るなど、各種トラブル発生時に対応できる窓口を創設しています。
ただ、話がこじれる可能性などがある場合は、早めに弁護士など専門家に相談し、今後の打ち手について考えた方が良いでしょう。
特に、深刻な事態になってから相談するのではなく、「違和感を感じたら、相談する」「傷が浅いうちに、相談する」など、速い動きを行うことは重要です。
話がこじれにこじれ、到底解決できない状況でボールを渡されても、公的機関も弁護士も困惑します。
何にせよ、先手を打った相談・行動が必要になってくる事は、常に意識しておくことが望まれます。
まとめ
ここまで、フランチャイズの注意点に関して15のポイントにまとめお話ししてきました。フランチャイズへの加入というのは、メリットも大きいですが、一方で、フランチャイズ事業者の看板の下に入るということでもあります。
そこには、自主裁量ではなく、フランチャイズの意向を積極的に汲んだ行動が求められると共に、フランチャイズの「ブランドを守る」という責務も生じます。
フランチャイズ加盟は、確かに起業の有効手段である一方、フランチャイズの「看板」という長年築き上げた仕組みを守ること、事業者同士として対等な取引をすること、そして度を超えた不当な要求から自社の身を守る配慮、自助努力など、ゼロからの起業とは異なる求められることを念頭に置いておきましょう。