フランチャイズって儲かるの? フランチャイズの特徴や起業するメリット・デメリット

フランチャイズは初めて起業する方にとってもチャレンジしやすい事業形態の一つです。起業の際に大きな壁となる専門知識やノウハウをフランチャイズ契約によって得られるため、業界未経験の起業家にとっても参入しやすい事業形態となっています。

また、フランチャイズ契約によって事業の未経験者でも収益が出るようパッケージ化されたシステムなどを利用できるため、早期に安定的な収益体制を目指すことも可能です。もちろん、何のリスクもなく成功できる事業はありませんが、フランチャイズは儲かる仕組みが事前に整えられているためチャンスの多いビジネスだと言えます。

今回の記事では、このようなフランチャイズを利用した事業の概要や儲かる仕組みを説明し、メリットやデメリット、フランチャイズで起業する際の注意点についても詳しく解説します。起業に興味のある方やこれから起業される方は是非参考にしてください。

フランチャイズとは?

フランチャイズとは?

フランチャイズとは、既に事業として確立している店の看板やサービス、商品などを使用してビジネスを行う仕組みです。もちろん、これらの権利や商品などを無断で使用することはできませんが、使用する側とその使用を許可する側の双方で契約を締結すると可能になります。この契約をフランチャイズ契約と言い、契約に定められた一定のルールの下で店の看板やサービス、商品などを使用することが可能になり、フランチャイズチェーンの一員としてとして事業を行うことが可能です。

フランチャイズとは?

フランチャイズ契約によって様々な権利などを与える事業者をフランチャイザー(フランチャイズ本部)と言いますが、一般的なフランチャイズ契約ではフランチャイザーがお店の看板やサービス、商品などのブランド力を駆使して儲かる仕組みを構築してシステム化されたビジネスパッケージを提供します。

一方、店の看板などを使用する事業者のことをフランチャイジー(加盟店)と呼びますが、フランチャイジーはこれらのパッケージなどを利用する対価としてフランチャイザーにロイヤリティを支払うのがフランチャイズビジネスの大きな仕組みです。この説明だけだとイメージが浮かばないかもしれませんので簡単な例を確認してみましょう。

例えば、大手コンビニエンスストアのセブンイレブンのフランチャイズチェーンに加盟した場合、全国的にも知名度の高い「セブンイレブン」の看板でコンビニエンスストアの運営を行うことができます。店内で販売する弁当やパン、惣菜などの商品はこれまでセブンイレブンが開発してきた自社ブランドを始めとする様々な商品をセブンイレブンの流通網を通じて仕入れることが可能です。

また、販売や在庫管理などで必要となるPOSシステムも利用することができ、オーナーとなる方には研修制度なども用意されています。これらを利用して事業を行う対価としてフランチャイザーへロイヤリティを支払う仕組みです。

現在、フランチャイズビジネスは非常に大きな市場規模を誇っており、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会の統計調査によると2018年度の売上高は26兆2千億円を超える規模にまで成長しています。フランチャイズチェーンの数も1,328となっており、国内の総店舗数は26万4千店を超える規模です。フランチャイズ市場は大きく分類して小売業、外食業、サービス業という3つの業種がありますが、それぞれの業種の動向については以下の表1の通りです。

表1 フランチャイズチェーン統計調査

フランチャイズチェーン統計調査

(参照:一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会ホームページ 2018年度「JFAフランチャイズチェーン統計調査」報告より一部抜粋

3つの業種のフランチャイズチェーンのうち最も店舗数が多いのはコンビニエンスストアを含む小売業で、店舗数に占める割合は全体の40%を超えています。企業の統廃合などによってチェーン数自体は減少しましたが、店舗数は微増となっておりいまだに拡大傾向です。続いて店舗数が多いのはサービス業で、チェーン数と共に店舗数も堅調に増加しています。

フランチャイズのイメージが強い外食業はチェーン数こそ最多の568チェーンとなっていますが、意外なことに店舗数はコンビニエンスストアを下回る水準です。また、店舗数は前年と比較しても減少傾向となっており、外食業にとっては少し厳しい統計結果となっています。ここからはフランチャイズで起業できるこれら3つの業種について更に詳しく確認してみましょう。

①小売業
小売業は文字通り仕入れた商品を販売する事業形態です。小売業のフランチャイズチェーンには身近な存在となっているコンビニやスーパーマーケット、100円ショップ、業務スーパー、ホームセンターなどがあります。これらの総合小売業だけでなく飲食料品や家電、インテリア、雑貨、化粧品、書籍、文具、印章(印鑑)、スポーツ用品などの特化された商品を販売するフランチャイズチェーンも多いのが小売業の特徴です。

②外食業
外食業のフランチャイズチェーンも私たちの生活においては非常に身近な存在です。外食業ではハンバーガーや牛丼、カレーなどのお馴染みのファストフード店が数多くフランチャイズチェーンとして運営されています。他にも、ラーメンやうどん、お好み焼き、たこ焼き、たい焼き、サンドイッチ、ドーナツ、焼肉、しゃぶしゃぶなどの多くの店舗がフランチャイズで運営されており、喫茶店やカフェなどもフランチャイズチェーンが多い外食業です。

③サービス業
サービス業にも意外とフランチャイズチェーンが多く、様々なフランチャイズ店が存在します。レンタカーなどを扱うリース・レンタルサービスや学習塾、カルチャースクール、保険業、住宅建築、リフォーム、ビルメンテナンスなどもフランチャイズで運営されることのあるサービス業です。

また、最近需要の増えている介護サービスやリラクゼーションなどでもフランチャイズチェーンの店舗は数多く存在します。サービス業には小売業や外食業とは異なり店舗が無くても運営できる無店舗型のフランチャイズチェーンも存在し、このようなフランチャイズチェーンでは初期投資を抑えて起業できる点がサービス業の特徴の一つです。

フランチャイズビジネスの儲かる仕組み

フランチャイズビジネスの儲かる仕組み

フランチャイズチェーンに加盟して事業を始める場合、やはり実際に儲かるのかどうかは大変気になるポイントです。結論から言うと儲かる可能性が高い事業ではありますが、業種やフランチャイズモデルによって儲けの金額やその可能性は大きく変わります。基本的なポイントのおさらいになりますが、会社や個人事業主などの儲けは以下の通り売上高から費用を差し引いた金額です。

利益(儲け)=売上高-費用

単純に考えると売上高が費用を上回れば儲けが出る仕組みです。しかし、フランチャイズチェーンに加盟して店舗運営をする場合、この費用には製造や仕入にかかる費用だけでなくフランチャイズ本部に支払うロイヤリティなども含まれるため、この仕組みについては詳しく理解しておかなければなりません。こちらでは、フランチャイズ契約に基づいてフランチャイズ本部へ支払が必要となる費用について詳しく確認してみましょう。フランチャイズ本部へ支払う主な費用は①初期費用②ロイヤリティ③その他費用(店舗運営費等)の3つです。

フランチャイズ本部へ支払う主な費用は①初期費用②ロイヤリティ③その他費用(店舗運営費等)の3つ

①初期費用
フランチャイズチェーンへ加盟する際、加盟金や保証金、研修費などの初期費用をフランチャイズ本部へ支払うケースが多くなります。

・加盟金
加盟金はフランチャイズチェーンへ加盟する際に支払う費用です。フランチャイズ本部から提供されるノウハウやマーケティング戦略などのサポートに対する費用やブランド使用料として加盟時に一括で支払います。毎月発生するロイヤリティとは別の費用となりますが、フランチャイズチェーンによっては加盟金が不要なところもあります。加盟金は様々な権利の使用やサービスの対価として支払うため、原則として廃業時も返還されない初期費用です。また、加盟金は税法上の開業費など繰延資産に該当するケースが多いため、支払った年の税金の計算において一括で費用計上できないこともあります。

・保証金
保証金はフランチャイズチェーンに加盟する際に本部へ預けるお金です。フランチャイズ店として営業を始めると毎月の仕入代金やロイヤリティなどをフランチャイズ本部に支払うこともあります。このとき、加盟店の都合により支払いができない場合などに備えて本部が預かっておく資金が保証金です。保証金は脱退時に未払金等が無い限り返還される資金のため、税金の計算上は費用として認められない支出となります。

・研修費
フランチャイズチェーンを運営していく上で必要な知識やノウハウ、技術などを本部の研修などで習得する際に必要な費用です。この研修費は接客対応や技術習得などが必要になる業種で幅広く実施されており、研修時間や方法、費用などもフランチャイズチェーンによって異なります。研修制度があるフランチャイズチェーンではこの研修費も初期費用として必要です。

②ロイヤリティ
フランチャイズチェーンとして店の看板や商品、ノウハウなどを使用する対価としてフランチャイズ本部へ支払う費用がロイヤリティです。ロイヤリティには大きく分けて定額制のものと歩合制のものがあり、それぞれのロイヤリティは月ごとに計算され加盟店から本部へ支払うケースが多くなります。

・定額制
定額制とは毎月納めなければならないロイヤリティが「月額〇万円」のように具体的な金額で定められているロイヤリティです。定額制の大きな特徴は毎月支払わなければならないロイヤリティが固定されているため、売上高が大きくなればなるほど利益が大きくなる点です。反面、売上高が上がらないような形態ではロイヤリティの負担が重くなり、十分な利益の確保が難しくなります。言葉の説明だけではイメージが掴みにくいため、簡単な具体例で確認してみましょう。

(例1)月額5万円の定額ロイヤリティの場合、売上高に対する利益と売上高利益率(利益を売上高で割った率)の変動は以下の通りです。なお、ロイヤリティ以外の費用として売上高の30%に相当する仕入が発生する事業だと仮定します。
A.売上高が20万円の場合
利益は「利益=売上高-費用-ロイヤリティ」となるため、売上高が20万円の場合の利益は以下の通りです。
利益=20万円-(20万円×30%)-5万円=20万円-6万円-5万円=9万円
売上高利益率=9万円÷20万円=0.45
B. 売上高が100万円の場合
利益=100万円-(100万円×30%)-5万円=100万円-30万円-5万円=65万円
売上高利益率=65万円÷100万円=0.65
C. 売上高が500万円の場合
利益=500万円-(500万円×30%)-5万円=500万円-150万円-5万円=345万円
売上高利益率=345万円÷500万円=0.69

3つの例を比較しても分かるように、ロイヤリティが定額で固定されていると売上高か大きくなればなるほど利益の額は多くなる仕組みです。定額制の特筆すべき点は、売上高利益率も売上高が大きくなればなるほど大きくなる点で、売上高が大きくなるほど効率よく儲けられる割の良いビジネスということになります。

・歩合制
歩合制とは売上高などに応じて支払うロイヤリティが変動する仕組みです。「単月売上の〇%」や「営業利益の〇%」のように売上高や利益に連動して支払うロイヤリティを計算します。利益に連動してロイヤリティを支払う制度はコンビニチェーンで多く採用されていますが、利益管理にはPOSシステムなどの導入も欠かせないためコンビニ以外の業界ではあまり導入されていない計算方式です。他のチェーンでは単純に売上高の変動に応じてロイヤリティを計算する方式が多く採用されています。それでは、歩合制における利益や売上高利益率について例2と例3の計算例を確認してみましょう。

(例2)売上高に対して10%のロイヤリティがかかる場合、売上高に対する利益と売上高利益率の計算は以下の通りです。なお、例1と同様にロイヤリティ以外の費用として売上高の30%に相当する仕入が発生する事業だと仮定します。
A.売上高が20万円の場合
利益=20万円-(20万円×30%)-(20万円×10%)=20万円-6万円-2万円=12万円
売上高利益率=12万円÷20万円=0.6
B. 売上高が100万円の場合
利益=100万円-(100万円×30%)-(100万円×10%)=100万円-30万円-10万円
=60万円
売上高利益率=60万円÷100万円=0.6
C. 売上高が500万円の場合
利益=500万円-(500万円×30%)-(500万円×10%)=500万円-150万円-50万円
=300万円
売上高利益率=300万円÷500万円=0.6
(例3)売上高から仕入にかかる原価を控除した粗利に10%の歩合制ロイヤリティがかかる場合、売上高に対する利益と売上高利益率の変動は以下の通りです。なお、例1、2と同様にロイヤリティ以外の費用として売上高の30%に相当する仕入が発生する事業だと仮定します。
A.売上高が20万円の場合
粗利=売上高-仕入原価=20万円-(20万円×30%)=20万円-6万円=14万円
ロイヤリティ=14万円×10%=1.4万円
利益=粗利-ロイヤリティ=14万円-1.4万円=12.6万円
売上高利益率=12.6万円÷20万円=0.63
B. 売上高が100万円の場合
粗利=100万円-(100万円×30%)=100万円-30万円=70万円
ロイヤリティ=70万円×10%=7万円
利益=粗利-ロイヤリティ=70万円-7万円=63万円
売上高利益率=63万円÷100万円=0.63
C. 売上高が500万円の場合
粗利=500万円-(500万円×30%)=500万円-150万円=350万円
ロイヤリティ=350万円×10%=35万円
利益=粗利-ロイヤリティ=350万円-35万円=315万円
売上高利益率=315万円÷500万円=0.63

例2と例3からは実に興味深い結果が出ていることをお気づきですか。歩合制のロイヤリティの場合、売上高に応じて利益の金額自体は変動しますが売上高利益率は常に一定のままです。もちろん、売上高にかかる経費を一定割合の仕入経費だけと仮定しているためこのような結果となりますが、歩合制のロイヤリティが設定されている場合は売上高が少なくてもある程度の利益率が確保できるような仕組みと捉えることができます。

③その他費用
フランチャイズチェーンを運営する場合、①の初期費用と②のロイヤリティ以外の費用もフランチャイズ本部へ支払うことがあります。小売業における仕入などは本部の仕入網を利用するケースが圧倒的に多くなるので、この場合は別途仕入代金の支払いが必要です。

また、店舗の広告宣伝費や本部を通して購入する消耗品なども利用に応じて発生する費用です。その他にもフランチャイズチェーンのシステムを利用する際に必要なシステム利用料などの費用が定期的に発生することがあります。これらの費用については運営上必ず発生が見込まれる費用もあるため、フランチャイズ本部へ支払う費用として正確に理解しておくことが重要です。

以上がフランチャイズ本部へ支払う主な費用です。フランチャイズチェーンを運営する場合、この他にも店舗運営などに関わる費用が必要になります。

例えば、従業員に対する給与や福利厚生費のほか、店舗の水道光熱費や消耗品費、土地や建物などを借りている場合は地代家賃も必要です。これだけ多くの費用がかかると「フランチャイズは儲からないのでは?」と思うかもしれませんが、決してそうではありません。フランチャイズチェーンではブランドなどを活用して一定以上の売上高が見込めるため、一定水準までの費用が発生しても儲かる仕組みが整えられているのです。

ただし、フランチャイズチェーンによって加盟店に対するサポートは大きく異なり、実店舗を運営する場合は立地などによって売上高が大きく変動することもあります。そのため、売上と費用の仕組みを正確に理解してから儲かるフランチャイズチェーンを選択することが安定的な利益を生み出す一番のポイントです。

フランチャイズのメリット

フランチャイズのメリット

フランチャイズは儲かる仕組みが整えられた成功例のあるビジネスモデルで事業を開始できます。そのため、個人で一から事業を始めるよりもメリットの多い起業方法です。こちらではフランチャイズで起業するメリットについて詳しく確認してみましょう。

フランチャイズのメリット

初めてでも起業しやすい

フランチャイズで起業するメリットの1つは初めてでも起業しやすい点です。フランチャイズではフランチャイズ本部によって収益を上げるビジネスモデルが構築されているため、これらの方針に従って運営することで基本的には儲けが出せるビジネスパッケージとなっています。

そのため、初めて起業する場合は「何を売るか?」「どのようなサービスを提供するか?」「どこから仕入れるか?」「利益は出るのか?」といったことを最初から検討して試行錯誤を重ねなければなりませんが、フランチャイズでは売るものや提供するサービス、仕入の方法、利益確保の態勢がパッケージとして整えられているためその中から運営したいフランチャイズチェーンを選択することで事業を始めることが可能です。

また、初めて起業する場合は事業計画書を作成し、収益見込みや資金繰りなどを細かく計算して成功できる事業かどうかを検証しなければなりません。その点も、フランチャイズ本部によっては事業計画書などの作成をサポートする体制が整っているため、初めて起業する方でも簡単に検証することが可能です。

特に、店舗型のビジネスを運営する場合は立地の良し悪しが売上を大きく左右しますが、多くの加盟店を抱えるフランチャイズチェーンではこれまでの豊富な立地調査や市場調査に基づいたデータをもとに事業を行う予定地や売上予測に関するサポートを受けることができます。

さらに、起業する場合には資金の調達が必要となることもありますが、こちらについても融資窓口の紹介などのサポートを提供しているフランチャイズ本部もあるため大変頼りになります。融資については、初めて起業する方が良くできた事業計画をもとに融資を必要としても金融機関は貸し倒れのリスクを懸念してなかなか融資に踏み切ってくれないのが実情です。

ところが、フランチャイズチェーンでは確立されたビジネスモデルによって安定的な収益体制が構築されているため、そのフランチャイズチェーンに加盟することが貸し倒れのリスクを低くすることからフランチャイズ本部の紹介で融資を申し込むことによってスムーズに融資が実行されるケースもあります。

これらの他にも従業員の採用や仕入ルートの確保、顧客の確保などの様々なサポート体制を整えているフランチャイズ本部もあり、初めて起業する方にとっても起業しやすい環境が整えられています。

既存のブランド力を活用できる

フランチャイズで起業する場合、既存のブランド力を活用できる点は大きなメリットになります。起業してから経営者が頭を悩ませることの一つは集客です。一から個人で起業する場合は顧客にとって魅力的な商品やサービスを開発し、市場の納得できる価格で販売または提供できなければ集客することはできません。

また、どれだけ素晴らしい商品やサービスを提供していても広告宣伝などの努力を継続しなければ安定的な集客は難しいのが現実です。一方、フランチャイズで起業する場合はこれまで成功してきたブランド力を活用できるため、最初から一定の顧客の支持を得ながら事業を始めることができます

ここでいうブランド力とはお店の看板だけでなく既存の商品力や商品開発力も含めた広い意味でのブランド力です。フランチャイズチェーンを展開する企業はこれまでの歴史の中で築き上げてきたブランド力によって看板の名前だけで一定の集客を図ることができます。つまり、顧客はこの看板の効果によって一定以上の商品やサービスを提供してもらえることを連想できるため、フランチャイズチェーンの看板によって集客を図ることができるのです。

このブランド力は商品力や商品開発力においても大きな効果を発揮し、小売業では最初から安定的かつ豊富な品ぞろえで事業を開始することができ、新商品なども途切れることなく供給することができます。また、外食業では既に多くの顧客から信頼を得ている定番メニューを提供できるだけでなく、随時新メニューを投入できることによって飽きられることのない商品の継続的供給が可能です。

サービス業においても安定して提供できる既存のサービスの他、消費者のトレンドや意向を汲み取った新サービスも提供できるため、既存顧客の維持だけでなく新規顧客の開拓も並行して行うことができます。このように、起業直後からブランド力を活用して安定的な売上高を確保できるため、フランチャイズで起業することは業界経験や知識のない起業家にとって大きなメリットです。

経営に専念できる環境が整っている

フランチャイズで起業する際は経営に専念できる環境が整っている点も大きなメリットとなります。フランチャイズチェーンではもともと利益が出るビジネスモデルが構築されているため、基本的にはマニュアルや運営方針に従うことで安定的かつ継続的な企業運営が可能です。

そのため、フランチャイズチェーンでは加盟店の経営者が自身の店舗の経営に多くの時間や労力を割いて専念することができます。一から起業した場合は広告宣伝やキャンペーンによる既存顧客の維持が必要になり、新規顧客獲得のための商品開発やサービス向上のためのマニュアル作成なども必要です。

また、法令改正などの外部環境の変化にも対応しなければならないため店舗運営だけに多くの時間や労力を割くことは難しくなります。しかし、フランチャイズチェーンではこれらの仕事がほとんどフランチャイズ本部の役割となるため、加盟店は売上管理を中心とした自身の店舗運営のみに専念することが可能です。

これにより、従業員の採用や教育、効率的なオペレーションの確立などの店舗運営に特化した仕事に多くの時間を割くことができます。このように、フランチャイズチェーンに加盟することによって経営に専念できる点は大きなメリットです。

フランチャイズのデメリット

フランチャイズのメリット

フランチャイズは初めてでも起業しやすいというメリットがある反面、フランチャイズ本部から様々な制約を受けるためデメリットも存在します。こちらではフランチャイズで起業する際のデメリットについて確認してみましょう。

フランチャイズのデメリット

ロイヤリティを支払わなければならない

フランチャイズで起業するデメリットの一つはロイヤリティを支払わなければならない点です。ロイヤリティはフランチャイズチェーンの看板を使用させてもらい事業を行うため当然納めなければならない費用であることは理解できます。

しかし、売上が少ないときや資金繰りが苦しいときでも基本的には支払わなければなりません。中には赤字の補填制度を設けているフランチャイズチェーンなども存在しますが、経営者は営業収支がプラマイゼロだと自身の生活費も出ていない状況となるため生死に直結する大きな問題です。

そのため、ロイヤリティの支払いが必要となるフランチャイで起業する際にはロイヤリティの仕組みをしっかりと理解した上で事前に利益見込みを立てておくことが重要になります。フランチャイズ本部によってはロイヤリティが一切不要と喧伝しているところもありますが、そのようなフランチャイズチェーンでは本部が商材や消耗品等の販売を行うことで利益が出る仕組みです。

このように、フランチャイズは都合よくブランドや商品だけを無償で使用できるような甘いビジネスではありませんので、本部へ納める様々な経費についても詳細を理解した上で起業の判断を行わなければなりません。

経営の自由度が少ない

ランチャイズで起業すると経営の自由度が少ない点もデメリットの一つです。そもそも、フランチャイズ本部ではビジネスモデルを一つのパッケージとして加盟店に提供していますが、これは今まで築き上げてブランドイメージや商品を守るために必要だという側面もあります。

例えば、外食業のフランチャイズチェーンで全く違う味の商品を提供することや、チェーン店間で大きな味の違いがあることは「このお店に行けばこの味の○○を食べられる」と期待している消費者の期待を裏切る行為です。

そのため、フランチャイズ本部では提供するメニューの選定から食材の仕入、調理方法、食器に及ぶまで細かく提供方法をルール化し、加盟店に手順に従った商品の提供を求めます。もともと、フランチャイズで起業するということはフランチャイズチェーンのブランド力を活用することによって売上を確保するということなので、これらのブランドを維持するためのルールについては十分な理解が必要です。

しかし、新しい商品の開発ができる経営者や、新しい販路拡大や新規のプロモーションなどを企画できる経営者にとっては経営の自由度が少ないビジネス形態となっており、フランチャイズチェーンの中で事業を行うことを少し窮屈に感じるかもしれません。もちろん、新しい商品の企画をフランチャイズ本部の企画開発部などに提案することや、新しい販路拡大や新規のプロモーション企画などを加盟店アドバイザーと話し合うことは可能です。

ただし、これまで収益の出るパッケージでフランチャイズチェーンを安定的に運営してきた本部がこれらの提案や意見を受けて大きく変わることはあまり期待できません。結果的に、フランチャイズで起業する場合は、あらかじめ定められた収益の出るパッケージの中でマネージメントしながら利益を確保しなければならないということです。

外部環境の変化に影響を受けやすい

フランチャイズで起業する場合、外部環境の変化に業績などが影響を受けやすい点も事前に理解しておかなければならないデメリットの一つです。例えば、近くに競合する同業者が出店した場合には顧客の取り合いとなるため、価格戦略や販促対応などを一からやり直さなければなりません。

しかし、フランチャイズチェーンで起業する場合は出店後にこのような外部環境の変化が起こってもフランチャイズ本部の許可を得なければ対応策を実施することも不可能です。そのため、対応が後手に回り経営上大きな打撃を受けることもあります。

これはコンビニエンスストアなどの業界でよく見かけることですが、近くに新しいコンビニができた後に以前からあったコンビニの経営が厳しくなり撤退などを余儀なくされる事例です。もちろん、フランチャイズ本部も事前の立地調査などで競合の可能性や競合時の対応策などを想定しているため無策というわけではありませんが、フランチャイズオーナーの対応策が限られているため競合においては分が悪くなる傾向にあります。

この他にも、フランチャイズチェーン自体のブランドイメージなどが毀損されるケースも外部環境の変化に当たるものです。例えば、以前ニュースでも話題になっていましたがフランチャイズチェーンのアルバイト店員が軽い気持ちでイタズラしたことがSNSなどで拡散され、バッシングを受けることによってフランチャイズチェーンのブランドイメージ自体が毀損される事件がありました。

もちろん、この事件は同じフランチャイズチェーンの他店にも大きな影響を及ぼしており、風評被害を受ける加盟店や一時的な売上減少に陥る加盟店もあったほどです。このことからも分かるように、フランチャイズチェーンは外部要因による影響を受けやすい事業形態のため、フランチャイズで起業する場合はこれらのことにも注意しなければなりません。

フランチャイズで起業する際の注意点

フランチャイズで起業する際の注意点

ここまでフランチャイズで起業する場合のメリットやデメリットについて確認しました。フランチャイズで起業を検討する場合、これらのメリットやデメリットをしっかりと把握した上でなるべく具体的な収益見込みを立ててから起業の判断を行うことが成功する秘訣です。ここからは、フランチャイズで起業する際の注意点について詳しく確認してみましょう。

フランチャイズチェーンの選択

フランチャイズで起業することは今後の人生を左右する大きな出来事になります。そのため、詳細なビジネスモデルを理解した上で安定的に収益体制を構築できるフランチャイズチェーンを選択することが何よりも重要です。フランチャイズチェーンで起業する場合、本業として起業する方もいれば隙間時間の副業として起業する方もいます。起業する方の働き方やそれぞれの置かれている環境によってフランチャイズチェーンの選択肢は変わってくるため、入念な下調べを行ってから最終的な決断を下すことが重要です。

まずは、詳細なビジネスモデルを理解するためにフランチャイズ本部が開催する説明会には必ず参加することをおすすめします。フランチャイズ本部が開催する説明会では、事業内容や会社の経営ビジョンなどを把握することができるため、頭で思い描いていたイメージと実際の仕事が同じものか確認を行うことが可能です。

また、説明会に出席すると直接質問することによって不明点や疑問点などを解決することもできるため、具体的な検討段階に入った時点で必ず説明会を活用するようにしてください。なお、遠方の方を対象に電話説明会やWEB説明会を行っているフランチャイズ本部もあるため、スケジュールや交通費などの事情で説明会の出席を見送っていた方はこれらの手段を試すことも検討してみてください。

説明会を上手に活用することで具体的なビジネスモデルの確認を行うことができますが、中でも以下の3点はフランチャイズチェーンを選ぶ上で最も重要なポイントとなるためしっかり理解しておくことが重要です。

フランチャイズチェーンを選ぶ上で最も重要なポイント

①初期費用
初期費用には既に説明した通り加盟金・保証金・研修費が挙げられますが、これらの費用は金額が大きくなることもあるため注意してその金額を確認しなければなりません。また、フランチャイズチェーンを始める際、自身で店舗を新築するケースでは土地や建物の購入費などが必要になり、賃貸でも敷金・礼金などの支払いでまとまった資金が必要です。

これらの起業に必要な資金を漏れなく確認し、「開業資金として捻出する金額として問題はないか?」「計画的に投下資本を回収できるか」といったポイントを冷静に判断しなければなりません。

②ロイヤリティ
フランチャイズで起業する場合、ロイヤリティは今後の収益構造に大きく関わるため詳細まで把握しておくことが重要です。ロイヤリティは定額制や歩合制などで決定されますが、今後フランチャイズチェーンとして運営していく中で必ず定期的に発生するコストとなるため安定的な収益をあげられる水準かどうかを入念に検証しなければなりません。

もちろん、利益率の高いフランチャイズチェーンではロイヤリティが高く設定されることもありますが、最終的にはロイヤリティ以外の経費も含めた利益水準が判断のポイントです。想定される売上高から運営費用とロイヤリティを引いた金額が毎月想定できる経常的な利益となるため、その水準が事業として成り立つレベルかどうかを精査しなければなりません。

③サポート体制
フランチャイズで起業を考える場合、フランチャイズ本部のサポート体制も事前に確認しておかなければならない重要事項です。基本的に、フランチャイズチェーンの運営は本部が構築したパッケージを利用することでほとんどのチェーンが利益を確保できる体制となります。しかし、起業する際には無理なく事業を継続できるかどうかについても事前に検討しておくことが重要です。

なぜなら、フランチャイズチェーンとして事業を開始する時点では本部の手厚いサポートを受けられるケースが多く、一番多忙な時期を本部の応援や広告宣伝などの後押しによって順調な滑り出しとなることが多いからです。

ところが、その後の事業の継続においてはフランチャイズオーナーの負担が大きくなり、事業の継続自体が難しくなるような深刻なケースもあります。そのため、スタートアップの時期だけでなく定期的なサポート体制が用意されているかを確認し、安心して事業を継続できるようなサポート体制の整ったフランチャイズチェーンを選択することが重要です。

これらの3つのポイントがフランチャイズチェーンを選択する際の重要な要素となります。あとは開業資金などの問題もありますが現在は開業資金がほとんど不要なフランチャイズも存在するので、これらを天秤にかけた上で最も自身の起業像に合ったフランチャイズチェーンを選択するようにしてください。

安易な利益見込みと資金繰りには要注意

フランチャイズチェーンとして起業する場合、安易な利益見込みや資金繰りの問題で事業を継続できなくなることがあります。そのため、収益モデルや開業後の資金繰りについては細心の注意が必要です。事業の利益見込みについてはフランチャイズ本部のサポートによって売上見込みや仕入原価などの予測を事前に立てることができるので、運営経費などを最大限に見込むことである程度の予測を立てることができます。

多くのフランチャイズ本部で算出される売上見込みなどの数字は長年蓄積された立地調査やマーケティングによってはじき出される裏付けのある数字です。そのため、少し厳しい目線でこの数字を活用することで少し余裕を持った利益見込みを立てることができます。

しかし、資金繰りについては利益が出ていても安定的な資金繰りを確保できないこともあるため、利益見込みとは別に予測を立てておくことが重要です。この利益が出ているのに資金が回らないという現象は会計や財務に詳しくない方にとってイメージのつきにくい現象ですが、実際に多くの企業がこの現象に陥ることがあり最悪のケースでは利益が出たまま倒産する黒字倒産という現象に至ります。フランチャイズで起業する場合、この現象が起こる可能性が高いのは起業の際に融資を受けるケースです。

融資を受けると利息と共に元本を返済しなければなりませんが、支払う利息は経費(注1)として利益の計算に反映される反面、元本は経費にはならないため利益の計算には反映されません。これにより利益が出ているのに資金が足らないという現象が発生するのです。利益見込みとは別に資金繰りの計算をすることでこの事態は回避できるので、必ず起業前には資金繰りについても綿密な計画を立ててください。

(注1)事業のために必要な資金を調達した場合はその資金の調達にかかる支払利息を経費として計算することができます。

起業の形態

フランチャイズで起業する場合、個人事業主か法人の形態で事業を行うことになります。この2つの起業形態の違いは税金の計算面で大きく異なり、個人事業主で起業する場合は所得税が、法人として起業する場合は法人税が課される仕組みです。

この2つの税金の違いは税金を計算する際の税率に顕著に表れており、利益水準が低い場合は所得税の方が税金は安くなり、利益水準が高くなると法人税の方が税金は安くなる傾向となっています。そのため、一定の利益水準(注2)までは個人事業主として事業を営み、その利益水準を超えると法人を設立するケースが最も一般的です。

(注2)一般的に、所得ベースで500~600万円の水準で個人事業主から法人成りすると法人の方が納める税金が少なくなると言われています。ただし、各種所得控除などによってその所得水準は異なるため、実際の判断は詳しく両者の計算結果を比較した上で行われるのが一般的です。

このような起業形態による税金の差などは一般的に良く知られていますが、この点以外にも個人事業主と法人には明確な相違点があるのでそれらについても十分注意しなければなりません。主な相違点は以下の通りです。

・起業に必要な費用
個人事業主は税務署に届け出を出すだけで起業できますが、法人は登記なども必要になるため起業の際に費用がかかります。例えば、株式会社の形態で法人を設立する場合、設立登記に25万円前後の費用が必要です。また、法人には利益に対して課税される法人税の他に利益に関係なくかかる均等割りという税金が発生します。最も規模の小さい株式会社でも東京23区の場合年間7万円の納税が必要です。

・融資を受ける際の信用力
事業で融資を利用する場合、個人事業主よりも法人の方が信用力は高いと判断される傾向にあります。もちろん、何の実績もない起業の段階で融資を受けることは非常に困難なことです。しかし、法人は登記によってその存在が国に保証されることや、定款に事業の目的が記載されているため事業実態の確認しにくい個人事業主よりも信用力が高いと判断される傾向にあります。

起業に必要な費用や融資の際の信用力は起業する際に意外と見落とされがちな項目です。そのため、起業前にはこれらの項目についても検討し、将来的なビジョンも含めて起業の形態を決定しなければなりません。

まとめ

まとめ

今回の記事ではフランチャイズの特徴や儲かる仕組み、メリット・デメリットなどを説明しました。フランチャイズとして起業する場合、フランチャイズチェーンの選択が成功のカギを握ります。そのため、儲かる見込みのあるフランチャイズチェーンを慎重に選択する作業が重要です。また、利益見込みや資金繰りなどを事前にシミュレートしておくと儲かるフランチャイズチェーンの見極めにも役立つので、起業の前にはこれらの項目にも注意を払って儲かるフランチャイズチェーンの選択を心がけてください。