フランチャイズは危ない?悪評や失敗事例、対策方法を紹介!

フランチャイズの形式を取る店舗で何十年も続くお店や、複数の店舗を経営するフランチャイズ経営者も多く存在する一方、「フランチャイズ経営は危ない」「フランチャイズ経営で失敗して、巨額の借金を背負った」などの噂話が出回ることがあります。

このように、「フランチャイズ=危ない・失敗する」という印象を持つ人もいますが、着実にフランチャイズとして経営を行い、きちんと儲けている店舗も存在するため、「フランチャイズ=危ない」と決めつけてしまうのは良くありません。

そこで、この記事ではなぜフランチャイズに悪評が付きやすいのか、フランチャイズの失敗事例、フランチャイズ加盟店側がとりうるフランチャイズで失敗しないための注意点、成功するフランチャイズと失敗するフランチャイズの違いなど、「うまくいくフランチャイズづくり・フランチャイズ経営」のためのポイントをご紹介します。

「フランチャイズは危ない」は本当か

「フランチャイズは危ない」は本当か

フランチャイズ加入に関する体験談としてWebや週刊誌・書籍などを見ると、フランチャイズに入って後悔した、失敗したという話などを見かけることがあります。このような形で、「うっすらとしたフランチャイズの失敗例」を見聞きすることで、「フランチャイズは危ないかもしれない」という感想を持たれる場合があります。

しかし、物事の常として、珍しいこと・良くないことはニュースになりやすい傾向です。ネガティブな話というのも、様々なところで語られます。逆にフランチャイズできちんと利益を出したという話は、経営者はわざわざおおっぴらにしないケースが多いです。このご時世ですので、儲かっていることを打ち出すメリットよりも、マイナスの方が大きいからです。

加えて、成功しているフランチャイズ加盟店から見れば、自身の事業に力を入れることに専念している事業者も多いです。また、儲かっていること、成功していることをアピールすると、妬まれたり、税務署に注視されたりするキッカケになりかねません。

必然的に、成功しているフランチャイズの声より、実数が少ない可能性が高い失敗したフランチャイズ加盟者、もしくは悪質なフランチャイズ事業者に引っかかった加盟者の声が大きくなります。そうすると、フランチャイズ全体に対して「危ない」という印象をうっすらと持つ人が出てくるわけです。

一部の儲け重視で加盟店のことを考えないフランチャイズ本部や、フランチャイズに入れば本部が全てやってくれるという他力本願な姿勢には注意する必要はあるものの、「フランチャイズ全体が危ない」という決めつけは、適切ではありません。その点も含めて、「本当にフランチャイズは危ないのか」というポイントを解説していきます。

フランチャイズとして数十年続く事業は多い

フランチャイズとして、長い間続いている事業者は少なくありません。例えば、ダスキン(その子会社のミスタードーナツ)、不二家、マクドナルド・ケンタッキーフライドチキン・CoCo壱番屋・モスバーガーなど、数十年前から始まり、現在も地域に根ざして営業を続けているフランチャイズの店舗というのは、非常に多く存在します。

また、現在はあり方が徐々に見直されているコンビニエンスストアですが、こちらも各本部の傘下に1万店舗前後、もしくはそれ以上のフランチャイズ店舗を抱えています。

このように、フランチャイズとして、長い期間にわたり定着し、地域で堅実な事業を行う事業者というのは、予想の他多いと言えます。また、新興のフランチャイズ店舗であっても、勢力を拡大し、本部・加盟店共に利益を得て、成長を続けるフランチャイズもあります。「コメダ珈琲」「ワークマン」は代表的な事例でしょう。

また、現在はフランチャイズを募集していないものの、意外なかつ極めて伸びた事例が「ユニクロ」です。ユニクロは、基本的には直営店が運営しています。しかし、ユニクロを運営する株式会社ファーストリテイリングのIRには、フランチャイズの店舗が2020年11月末現在48店舗存在します。多くは、以前からユニクロの黎明期にフランチャイズとして加盟した地元の事業者や、ユニクロ社内で実績を出し、フランチャイズのオーナーとしてふさわしいというお墨付きを得た優秀な人材などにしか門戸は開かれておらず、ここ数年での新規加盟店舗も2店舗のみということで、通常はフランチャイズとして加盟するのは極めて厳しいと言えます。

ちなみに、ユニクロの昔からのフランチャイズ店舗には、ユニクロが山口・広島で業務を展開し始めた、まだローカルであったときからユニクロのフランチャイズ事業者であったところが多いです。

多くのフランチャイズ事業者が、以前は紳士服店を経営しており、その後ユニクロを扱うようになっています。まだユニクロが小規模であったときからの長い付き合いの会社が少なくありません。ユニクロ側としても、黎明期を支えた恩義もあり、現在でもフランチャイズ契約を続けていると推測されます。

ユニクロは例外にせよ、様々な業種がフランチャイズという形態を活用し、多くの店舗は十分な利益を挙げています。その中でも、伝統あるフランチャイズ本部・新興のフランチャイズ本部など歴史を問わず、フランチャイズに加盟して成功するオーナーと、失敗するオーナーがいます。

フランチャイズ本部と加盟店の温度差

フランチャイズ本部と加盟店の温度差

フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店は、 ビジネス上、「事業者同士」として対等な関係です。フランチャイズに加盟する「経営ビギナー」の中には、「フランチャイズ本部になんでもおんぶに抱っこになればうまくいく」という楽観的な考えを持つ人も、ゼロではないと言えます。フランチャイズ本部側も、やはり自社の優位性をアピールし、加盟店を増やすために、「フランチャイズ本部がしっかりとサポートする」ということは、どこでも言うと思われます。

ただし、親と子の関係にたとえると、「親がいくらサポートしても、子どもに学ぶ姿勢・自主性」がないと、子どもは成長しません。フランチャイズも同じで、本部はフランチャイズ募集者としてできる限りのサポートを、加盟店に対して行います。しかし、サポートはできても、そのサポートをきちんと現場に反映させたり、フランチャイズ契約の範囲の中で創意工夫をこらし、成功するよう自助努力を行うということは、フランチャイズ加盟店に自主性によるところがあります。

また、 フランチャイズビジネスであっても、「ビジネスとして当たり前のことをきちんと行う」という姿勢は必須です。経営者・トップとしての努力を、フランチャイズオーナーが愚直に実行しないと、フランチャイズは成功する事が難しくなります。

フランチャイズ間の事業に対する取り組みの差

あるフランチャイズ店舗の事例では、お客さんも多く、好立地に接している複数の店舗が突然閉鎖されるという事態がありました。

一店舗目が成功し、二店舗目を出店するまでは良かったのですが、その後オーナーが現場に出なくなる、高級車を乗り回す、飲み歩き尊大な態度を示すなど、「地元や住民、従業員の心を凍り付かせる行動」を行い、経営が傾き、結局「突然の閉店」という事態となりました。最初は真面目にやっていたものの、少しうまく行ったところで、初心を忘れて締まったばかりに、このオーナーは転落してしまいました。

フランチャイズに限ったことではないですが、最初は誰もが事業に対して一生懸命に取り組みます。しかし、うまく行き始めたときに大きな態度を取る、少し傾いたときには誰も助けてくれなくなる可能性があります。

それゆえ、普段から一生懸命事業に取り組むこと、成功しても腰は低く、志は高く、そしてハードワーク(知的・物理的)をフランチャイズオーナーが行うことは重要です。また、フランチャイズを拡大する上では、人の育成が必然的な課題になります。その時、本当について行きたいと思われる人間と部下たちから慕われているかは重要です。様々な意味で、「この人について行く」という人材を抱えていないと、フランチャイズや経営そのものを拡大することはできません。

うまくいっているフランチャイズは、こっそり儲ける

うまくいっているフランチャイズは、こっそり儲ける

フランチャイズでこんな失敗をしました、という話はマスコミで良く出されます。それは単純に、下記の理由があります。

  • ・失敗する例は多くないからニュースバリューがある
  • ・フランチャイズを経営して失敗という、「人の不幸は蜜の味」という言葉に見られるように、失敗して悲惨なことになっている人の話は視聴者・読者受けがいい
  • ・フランチャイズでうまく行かなかったことをアピールすることで、何か他の狙いがある

フこのように、「フランチャイズに加盟して失敗しました」というのは、マスコミにとっておいしいネタと言えます。

逆に、うまく行っているフランチャイズは、儲けていることをあまりおおっぴらにしないケースもあります。長年続くフランチャイズ事業者は、店舗や事務所こそ質素ですが、地元の評判も良く、店舗も繁盛しています。あまり派手にすると、税務署などにチェックされたり、悪目立ちするというのもありますが、うまく行っている所ほど、意外と質素な印象です。

巨大なフランチャイズの創業者でありながら、質素な生活を好むことで有名な、CoCo壱番屋の宗次徳二氏は、「質素」を絵に描いたような方と言えます。宗次徳二氏は、現在CoCo壱番屋の親会社となっているハウス食品への株式売却で巨額の売却益を得ました。しかし、その売却益を得ても、毎日の清掃活動、篤志家としての支援、音楽ホールの建設など、自分のためではなく人のためにお金を使うということを行ってきました。

宗次氏は、けして恵まれたとは言えない境遇から、一生懸命現在のCoCo壱番屋に至るまでの基礎を築き上げてきましたが、これも「自分のため」であれば、ある程度で満足するか、どこかで転落していた可能性もあります。人間、人のためだと一生懸命になれるという言葉がありますが、「人のため・無私の精神」だからこそ、CoCo壱番屋が、カレーのチェーンとして異例の成長を遂げました。

宗次氏の事例は極端かもしれませんが、「実るほど 頭を垂れる 稲穂かな」という言葉もあるように、おおっぴらに儲けているとは言わない、利益を様々な形で社会に還元する、「おかげさまでお客様に来ていただいています」と本心から言えるような心を持つことは大切です。

同じ条件なのに、なぜ加盟店で差が出るのか

フランチャイズでは、同じフランチャイズ本部のもとであっても業績に差が出るパターンがあります。その理由を以下の表にまとめてみました。

理由

フランチャイズ経営者(加盟店)の体制の問題

フランチャイズに加盟する事業者は、既に地域で他の事業を行い多角化する法人から、脱サラし始めて事業に取り組む事業者まで多種多様。既に地元で様々な実績を出している事業者の場合、基本的な経営ノウハウ・リソースなど長けている。一方、これから事業に取り組む事業者の場合、基本的な経営の基礎習得、人材確保など課題が多いため、経営がうまくいくケースと行かないケースがある

立地・地域性・客層の問題

ビジネスは、9割が立地という意見もあるくらい立地の重要性は高い。極めて近い立地でも、交通量や入りやすさ、看板の視認性などで、入りやすさが大きく異なる。特に地方都市などで交差点の角に立地する土地の場合、入りにくい、出にくいために、結果として利用客が敬遠するケースもある。

また、都市部の場合は徒歩・自転車による入り込み客が多いことや、様々な客層が存在することが想定されるため、周辺の競合店舗や地域の治安、客層の把握が重要になる

フランチャイズ本部事業の認知度や、商品・サービスが地域のニーズに合致するかという問題

フランチャイズ本部はやるべきことに取り組んでいるが、存在が認知されていないというパターンがある。例えば、都市部で大流行しているかといって、それを地方都市・地方に持ってきても、以下のような要素で受け入れられない可能性がある。

・認知度の問題
・地域性
・価格に対する都市部と地方の価値観の違い
・ブームの終焉
・出店・維持コストが見合わない
・人材そのものが確保できない、あるいは適切な人材が確保できない。

いくら都市部で流行っているということをアピールしても、徒歩での入り込み客を想定した店舗を、地方都市のロードサイドでそのまま展開するのは難しく、ロードサイド向けにカスタマイズする必要がある。

また、ショッピングモールなどでも、出店やテナント料・運営コストが、フランチャイズの運営から得られる収益に見合わないことがある

以上の通り、フランチャイズにおける失敗では、フランチャイズ本部の問題、フランチャイズ加盟店の経営体制の問題だけでなく、地域性や出店立地など、様々な理由が混在します。「フランチャイズで失敗した」と単純化することは簡単ですが、フランチャイズ運営が想定通りに行かない背景には、様々な要素が存在することを踏まえておくことが重要です。

フランチャイズ加盟の失敗事例

フランチャイズ加盟の失敗事例

次は、フランチャイズ本部側に問題があるケースです。過去から現在に至るまで、フランチャイズ本部と加盟店の共存共栄を図る事業者がたくさんいる一方、一時的なブームを起こし、あまりビジネスがよくわからない人にフランチャイズ加盟をさせるフランチャイズというのも、現在も存在する可能性があります。

「フランチャイズ加盟店に利益を出させ、その利益を得る」のではなく、「フランチャイズの加盟料で儲けて、後は支援をせず、加盟店が取り残される」というケースは未だに存在することが言われています。

フランチャイズに加盟する上で、フランチャイズ本部側の問題で失敗しやすいケースは以下の通りです。

問題のあるフランチャイズ本部の存在

以前から時折マスコミなどで報道されている通り、「加盟させれば後は知らない」という悪質なフランチャイズ本部もある。明確な線引きは難しいが、下記の傾向が強いフランチャイズ事業者には注意。

・誰でも儲かる、成功すると、安易にうまく行くことをアピールする
・フランチャイズの説明会・勧誘などで、即決を迫ったり、「即決すると加盟金が割引」などインセンティブをつけるなどして、相手に判断する時間を与えない
・フランチャイズに関する契約書・各種文書の説明が不十分で、不明確な点を確認しても、きちんと説明してくれない
・フランチャイズのメリット・リスクの説明に関して、メリットばかりを強調し、リスク・不確実性がある部分を十分に説明しない
・実際の他のフランチャイズ加盟店の見学を拒んだり、フランチャイズ加盟店の横のつながりを作らせようとしない
・契約書が、加盟店側にとって極度に不利な条項となっている(極力、弁護士など専門家に相談して、条項のリスク説明を受けることをおすすめ)
・初心者でもOKを強調し、甘いことしか言わない
・宣伝が度を過ぎて派手
・社会貢献を強調するが、健全な事業利益があってこそ、雇用・納税・実際の社会貢献などができる。

「公益性の高い」「社会貢献」を過度にうたう事業者には、なぜぜ「社会貢献」の側面を強調するのか、他の加盟店の事例はどうなっているのか、事業として適切な利益を出せている加盟店はどれくらいあるのかを確認する

以上のように、派手な宣伝・美辞麗句などを並べ、フランチャイズに加入させて、後は本部からのサポートがほとんどないという状況では、フランチャイズに大きなお金を支払い、加入する意味がないと言える。

また、本部の説明などに違和感があったときは、加入自体を考え直した方がよい

ここに注意!フランチャイズの選び方と事業運営・経営

フランチャイズを検討する上では、フランチャイズの選定と事業運営・経営に対するしっかりとした姿勢が重要になります。フランチャイズの良さ・注意点を踏まえて、フランチャイズをどう選び、どのように事業を運営していくかを考える必要があります。

まず、フランチャイズには、意外と見落とされがちな面も含め、有形・無形のメリットがあります。まず、メリットについてまとめます。

メリット

メリット

理由・具体例

シンプルに「信用が得やすい」

フランチャイズ本部の多くは、実際の事業を形にし、ノウハウとしてパッケージに落とし込んでいる。事業を形にするプロセスで、既に名前は有名になっていますので、個人が単独で創業したビジネスより、知名度が高く、付随的に信頼も得やすくなる

日本政策金融公庫などの融資が受けやすい

創業してすぐの事業者が、金融機関から融資を受けることは難しい。ただし、日本政策金融公庫からの融資、都道府県の信用保証協会の保障をつけた融資は新規創業者でも比較的通りやすい。

とはいえ、新規事業でも一定のハードルはあり、「今後行う事業で、過去に就業経験があるか」「ビジネスモデルが固まっているか」などが要される。
フランチャイズの場合、過去の就業経験がないケースでも、本部での研修、ビジネスモデルのパッケージ化が既に行われているため、独力でビジネスを始めるよりは、融資審査を通過しやすい(ただし、特に日本政策金融公庫の場合、希望額の3分の1~最低でも10分の1など、一定の手元現金が求められるケースが多い)

開業時に、様々な事項で迷わなくて済む

フランチャイズの場合、開業・資金調達から物件取得・建物の建築なども含め、フランチャイズのパッケージとして提供しているため、開業時に経営者が悩むであろう様々な事項を、代わりに行ってくれるため、加盟店側は事業の磨き込みに専念できる。

また、店舗の建築や内装なども、統一的なものであるため、同じ仕入れ先から低コストで調達でき、発注コストが削減される可能性がある。

CM・広告宣伝などのコストが低い

知名度を増やすには、マスメディアを含めたCMや立て看板・その他広告宣伝のコストがかかるが、大手フランチャイズの場合、著名なタレントを起用できるため、単独の事業者では難しいPRを行うことができる

著名なブランドをそのまま活かせる

やはり、名前が全国的に知られた企業と、一個人が始めようとする企業では、知名度に極端な差がある。著名なブランドを冠することができるのは、特に初期段階ではアドバンテージとなる

地域によっては、ニュースバリューがあり、知名度向上のきっかけになる

フランチャイズが初進出する地区になると、マスコミなどで「○○地区で○○が出店」などニュースになることもあり、話題を呼ぶこともある

あわせて、注意点も挙げます。

本部の行う事業フォーマットにそのまま従う義務がある

フランチャイズとして、全国的に統一した事業を行う必要があるため、フランチャイズ加盟者側の裁量権は極めて限られる。フランチャイズ本部の立場から見れば想像が付くが、店舗間でサービスや営業時間がバラバラとなると、フランチャイズ本部としても「ブランドの一貫性」が保てなくなる。

それゆえに、本部も様々なオペレーションマニュアルや各種レギュレーションを策定しているが、「全国どこでも、統一された質の高い対応」が顧客に対してなされる状況作りというのはどのフランチャイズでも行っている。

加盟店側としては、裁量がないのは窮屈に見えるかもしれないが、中途半端な裁量より「統一された基準」に基づき実務を行う方が、結果として迷うことがなくなる

オーナー・従業員が本部の名誉を毀損する行為を行った場合、契約の強制解除・損害賠償請求・民事訴訟・問題を生じさせた当事者の告訴などを受ける可能性がある

以前、複数のフランチャイズでアルバイト店員が什器の中に入るなど問題行動、それをWebにアップロードするという事件があり、「バイトテロ」などという呼称も生まれた。この際も、それぞれ事件を起こしたアルバイトがいる当該店舗との契約は解除された。違約金等については不明確であるが、オーナー側・問題を起こした当事者側に損害賠償他様々なペナルティが生じる可能性がある

契約前の経営シミュレーション書面と現実の乖離

多くのフランチャイズでは、経営のシミュレーション書面を交付し、「これだけの収益が想定しうる」という書面を出すことがある。しかし、あくまでこれは「想定」であり、書面にも「この通りに行くとは限らない」という注意書きが存在する。

バラ色のシミュレーションだけに依拠すると、実際に始めた際に「想定と違う・・・」ということもなりうる

中途解約の場合、違約金等が発生する可能性が高い

想定通りに経営が行かず、中途解約となる場合、契約書などに定めた違約金等が発生する可能性が極めて高いです。どれくらいの違約金が発生するかは、契約内容によりますので、契約書締結時に違約金の額を把握しておく必要がある

フランチャイズにブランド力がない、もしくは負のブランドである可能性もある

フランチャイズというと、ブランドがプラスになるイメージも大きいが、時期や本部の経営状況によっては、フランチャイズのブランドがマイナスに働くこともある。

例えば、フランチャイズの本部や店舗で大きな問題が生じた場合、フランチャイズのイメージがマイナスとなることもありうる。

また、フランチャイズにブランド力がなく、世間一般で認知されていなかったり、地方都市・地方での知名度浸透が薄い可能性がある。

このように、フランチャイズのプラスのブランド力がない場合は、下記の点を考慮する必要がある。

・ブランド力の低下は、一時的なものか
・新興勢力のためブランド力はなくても、企業の理念や運営ノウハウ・今後の将来性が見込めるなど、これからに伸びしろがある場合は、ブランド力が強くなくても許容できる
・他の加盟店をできるだけ訪問し、店舗の現場を自身の目で見たり、実際に商品を購入するなどして、「自身が客ならば利用するだろうか」という消費者の目線で厳しく検討する
・フランチャイズ運営において、成功事例・失敗事例を確認し、失敗事例の場合はなぜうまく行かなかったかを確認する
・ネット上での評判を集める。ただし、不評な情報を削除するWebサービスなどもあり、最初の検索結果の一ページだけでなく、様々なページを見て考えること
・ホームページの開店・閉店情報をチェックし、閉店が多い場合は理由を本部に確認する

フランチャイズ契約が、本部側に極端に有利な条項になっている

フランチャイズ契約の場合、本部が定型的なひな形を有しており、加入側は本部の条項をそのまま受け入れる必要がある。

しかし、説明会やシミュレーション・口頭説明との違いがあったり、あまりにも違約金他各種ペナルティが高い場合などは、契約自体を再考する必要がある。

また、弁護士によるリーガルチェックを依頼し、「注意点・契約条項に不当な点がないか確認する」ことが重要。一度署名捺印すると、内容が公序良俗に反するなど極端に問題のあるケースでない限りは、契約書をベースに物事は進む

ロイヤリティが高い

フランチャイズ事業によっては、ロイヤリティの制度がわかりにくく、実際のロイヤリティがわかりにくいケース、実際に運営を行って、「実はロイヤリティが高かった」と判明するケースも想定できる。

ロイヤリティに関してわかりにくい部分がある場合は、計算根拠やロイヤリティ計算の実例を示してもらうことが大切

競業禁止条項に注意

多くのフランチャイズでは、ノウハウだけを利用されて、途中で抜けられ、同じ商売をされることのないよう、「競業禁止(競業忌避)条項」を設けているケースがある。

一定期間は、フランチャイズの業務と同じ、もしくは類似の業務を行ってはならないというのが一般的だが、競業禁止条項の有無や、ペナルティ、期間などについて注意しておく必要がある

本部との契約違反に注意

競業禁止条項以外にも、フランチャイズ本部との契約においては様々な禁止条項が存在する。

営業時間・独自商品の提供の禁止・独自販路での仕入れの禁止・本部指導に対する違反などが想定される。例えば、24時間営業を掲げている場合に、どうしても人が足りない、オーナー・スタッフが病気になった場合であっても、何らかの形で店を開けなかっただけで、契約違反となり契約解除、違約金等の支払いにあたるケースもありうる。

あらゆる契約違反となりうるケースを説明してもらい、契約を知らずに違反することがないようにする

フランチャイズ事業として、業種が成熟・衰退期にある業種を選んでしまう

業務分野によっては、成熟期・衰退期にある業種も少なくない。業界の現状を研究し、今後伸びる分野なのか、それとも成熟し競争が激化、そもそも産業分野として衰退している業種ではないかを確認することが重要

そもそもフランチャイズが詐欺・詐欺的商法であった

事業の開始を急いだり、素早い収益を求めたり、あせると引っかかる事例でだが、フランチャイズ自体が詐欺的商法であるという可能性も、ゼロではない。

多くの場合、詐欺的なフランチャイズは、

・素人でも簡単
・国からお金が出るので安定(実際は、国の制度運営により収支が大きく左右されるため、国の方針転換で突然厳しくなる可能性)
・本部からの十分な指導がない
・各種相談に対するフィードバックがない
・サポート等は行わないが、精神論をふりかざし、あくまで運営の失敗はフランチャイズ加盟者の問題とするなど、本部としての義務を果たさず、失敗の責任は全て加盟店に押しつける
・バラ色の経営計画を出すが、その裏付けの説明を明確にできない(裏付け条件を、通常ではあり得ない前提にしている)

注意点に関しては、あげるときりがないくらいの量になりますが、重要なことは、「本部だけでなく、信頼できて経営に詳しい友人や法律家などのセカンドオピニオン・サードオピニオンを得ることです。

やはり、フランチャイズを募集する側としては、いいことは強調する反面、注意点・不利な点は最小限の説明にとどめるケースが少なくありません。嘘はいけませんが、「不利なことはぼかす、言わない」ということはありえます。フランチャイズの選定は結婚に近い点があり、契約を行うのは簡単ですが、離れるときに様々な大変なことに直面します。フランチャイズは慎重に選ぶことが重要です。

フランチャイズも地域の中の店舗という事実

フランチャイズも地域の中の店舗という事実

フランチャイズの店舗も、元を正せば町の中の一店舗に過ぎません。それゆえに、フランチャイズの規約も踏まえた上で、地域との共存や地域活動への協力を図る必要があります。地方や商店街など、地域の結束が固いところほど、フランチャイズに対しては「よそ者がきた」という戦闘態勢になる傾向があります。しかし、ここで「自店舗も地域の一員である」ということを、地域の清掃や活動への協力など、あらゆる形で示すことで地域の目は徐々に変わり、あるとき「こいつらは俺たちの仲間だ」となる日が来る可能性があります。

地域の中に入り、信頼を得るのは数年・時に十数年かかります。逆に、信頼が崩れるのは一瞬です。信頼を崩さず、日々積み重ねて行けるように、地域・近隣店舗との良い関係作りを心がけることは重要と言えます。

フランチャイズ経営兼プレーヤーからの脱却

フランチャイズにおいては、多くの場合、当初は経営者=プレイヤーの立場となります。経営も行う、人材育成も行う、店舗運営も実務も行うと、全てが加盟する経営者の肩に掛かってきます。短期的には無理をする事はできてもある程度成長したら、実務を信頼できる部下に任せるフエーズが出てきます。

例えば自身が40代だったとして、この仕事を30年後、つまり70歳になってからも続けていける姿が想像できるかがポイントです。20代~30代の時は、多少の無理は利きますし、40代でもある程度のことはこなせます。しかし、年を重ねるにつれ、無理をすることは年々厳しくなります。

その中で、限られる体力・気力・判断力を若いときと同じように保てるか、というのは、正直厳しいと思います。だからこそ、フランチャイズ経営者には、早期におけるプレーヤーからの脱却が望まれると言えます。やはり経営者・事業主の常として、「自分でやった方が早い」「人に任せるにはまだ早い」など、実務を通して感じることは度々あるでしょう。

しかし、うまく行かないからと言ってずっと経営者自身が取り組み、スタッフに仕事を回さないと、スタッフの成長の機会が奪われますし、ビジネスを拡大させることにより、スタッフのキャリアアップと待遇改善が望みにくくなります。自身が社員の立場であれば、数年・十年・二十年と同じポジション・待遇で同じ仕事をさせられるというのは、好ましくないと感じると思います。

例えば塾講師であれば、一生一講師として、限られた収入で働く一生か、オーナーを成功させ、複数店舗を出店させ、相応の待遇で塾の塾長のポジションを得る一生と、どちらが幸せでしょうか。

このように、店舗の繁栄だけでなく、人の成長、利益の拡大、ポストの用意というのも、経営においては重要な要素になります。やはり経営者としては、「ついてくる社員・スタッフに、ついてくる価値がある」と思わせるだけの待遇、未来が提示できるかは重要と言えます。
このように、プレイングマネジャーからの脱却は、早期に具現化することが重要です。

うまく行くフランチャイズは、ここが違う

うまく行くフランチャイズは、ここが違う

同じ条件で、うまく行くフランチャイズもあれば、うまく行かないフランチャイズもあります。成功するフランチャイズ・失敗するフランチャイズに関してまとめます。

成功するフランチャイズ 失敗するフランチャイズ
最初は本部の提示する「型」を徹底的に守る 最初から自己流を表に出し「型なし」になり、行き詰まる
本部をビジネスパートナーとして考え、対等に接し、依存しない 何かあったら本部がなんとかしてくれる、と、親と子どものような関係になってしまっている
従業員の育成を、本部だけでなく加盟店側でもしっかりと行い、清潔さ・迅速・丁寧な対応など、ビジネスとして求められる基本的要素を大事にする スタッフを本部に研修に送ってしまえば良いと考え、店舗などできちんとした指導をしない
本部・スーパーバイザー・オーナー・スタッフ間の、ビジネス相手としての連携がうまく取れている 本部やオーナー、スタッフの関係がなれ合いになってしまっている
他の成功している店舗のことを、TTP(徹底的にパクる)する 他の成功している店舗を、「あそこは立地がいいから、客層がいいから」などうらやみ、改善の努力をしない
商売は立地が9割という声もあるくらい、立地は重要な要素のため、立地が出店にふさわしいか、看板は通りから見やすいか、ロードサイドの場合は左折からの入り込み客が多く想定されるか、入りやすい店舗か、出やすい店舗かなどを、実際に自身の目で確かめる 本部が提示した土地を、詳しく調査することもなくそのまま受け入れる
トップがハードワークをできる。特に最初のうちは、オーナーが仕事に対しストイックに向き合わないと、スタッフや本部も見限る可能性がある トップが遊び歩く。どこかのフェーズで、社長同士の付き合いが重要になる場面などでは、遊び・飲みも仕事の一つとなることもある。しかし、商売が軌道に乗り、店舗を信頼できるスタッフに任せることができるようになるまでは、社長が現場で汗をかく必要がある。
タバコを吸わない。特に飲食を扱う場合は、タバコをオーナーやスタッフが吸っている場面を第三者に見られるだけで、イメージダウンになる 休憩時間などに、タバコを吸う
従業員や本部・スーパーバイザーと、フレンドリーに接することはあっても、なれ合わない。あくまで彼らはビジネスパートナーであるため、中途半端になれ合って、仲良しごっこをする必要はない 従業員・スーパーバイザー等、立場が上ではない相手に対し高圧的な態度になるなど、人を見て対応をコロコロ変える。スタッフにせよ、その他の関係者にせよ、相手によって対応を変えることは、後で足を掬われる原因を自分で作ることになる
きちんと内部留保を行う。節税で不要な物を買うよりも、きちんと税金を支払い、 内部留保を手厚くしていくことで、コロナなど環境変化に対しても、ある程度対応できる「溜め」が作れる 節税と称して不要不急のものを多く購入したり、オーナーが経営の実情に対し分不相応な給与をとる
資金ショートがないように、日々資金繰りに目を配らせる とりあえず売上を挙げればなんとかなると思い、無駄な支出や日々の収支に無頓着な、どんぶり勘定になってしまう
本部に、「穏やかに」建設的な提言をする。本部をよくするために、「こうなるとより良いですね」というつぶやきを、スーパーバイザーや本部の直接接する担当者を通して提言する。 指揮系統を乗り越えて、本部の上部に直接文句を言う。スーパーバイザーや本部の専任担当者の面目を潰すことになる。また本部側としても、単なる不満では対応のしようがない

成功するフランチャイズ・失敗するフランチャイズというのは、通常のビジネスにも共通する点が多いです。当たり前の事について良識・常識を持って、徹底的に取り組んでいけるかというのは、どの業界でも重要と言えます。

フランチャイズ本部は依存先ではなくビジネスパートナー

フランチャイズ本部は、あくまで「ビジネスパートナー」であり、経営者として対等の関係です。だからこそ、フランチャイズ選びの初期の時点から、「自身は経営者である」という自覚を持って、ビジネスパートナー選び、実際の業務の運営などを行っていく必要があります。

会社でも、「○○で困っています」と相談されても、上司は様々な意志決定を行う上で、問題だけを丸投げされても困ることがあります。

  • ・現在こういう問題を抱えている
  • ・問題を抱えることでこのように困っている
  • ・このままにすると、このような問題に発展することが想定される
  • ・解決策としてこのようなことを考えているが、考えを伺いたい

このように、現状の問題の把握、自身で考えた解決策、上司へのアドバイスの求めなど、上司が答えやすいようにするのが重要です。そのため、フランチャイズ本部への相談も、「相手が答えやすいレベルまで問題を分解し、自身が考えつく解決策も含め提案する」など、投げっぱなしにならない相談の仕方をする事が重要になります。

これは、他のビジネスでも同様です。相手が回答しやすいようにする配慮は、対人折衝・交渉等において欠かせないといえます。そして、フランチャイズ本部の担当者・スーパーバイザーも人間です。担当者やスーパーバイザーに花を持たせるような配慮を行うことで、本部の担当者・スーパーバイザーの協力も仰ぎやすくなります。

まとめ

ここまで、フランチャイズは本当に危ないのか、という疑問に関し、様々な課題も含め検証しました。フランチャイズによっては、本当に利益ばかりを考えるフランチャイズ本部もあるかもしれませんが、よほど問題があるフランチャイズの場合、公正取引委員会や中小企業庁より指導を受けたり、その他行政処分を受ける可能性があります。

フランチャイズに関する問題は、全て本部が悪いと言うことではなく、加盟店側に責任があるパターンもあることなど、けして「誰が悪い」と単純化できるものではないということも強調すべきでしょう。

これからフランチャイズへの加入を検討する人は、フランチャイズの仕組みや、加盟しようとするフランチャイズや属する業界の現状、事業によっては立地など、多角的な角度からフランチャイズを考えて、十分に調べた上で加入することをお勧めします。