フランチャイズでの起業は個人事業主or会社設立のどちらかがオススメ?

2017年と少し古い調査結果ではありますが、日本で起業をしたい、という起業希望者は72.5万人*とされています。また、実際に起業準備をしている人は、36.7万人となっています。そして、実際に起業するのは16.0万人います(中小企業庁『2020年度版中小企業白書 第1部 令和元年度(2019年)の中小企業の動向』より)。

また、同様にサラリーマンなどの本業とは別に副業での起業を希望するいわゆる副業起業希望者も78.1万人いるとされています。そして、その約半数が実際に副業起業準備者となっています。

起業と副業起業の両方の希望者を合わせると、150万人を超える数になります。海外に比べて起業者が少ないといわれる日本ですが、150万人という数は決して少なくないと驚かされます。

今回の記事では、経験やスキルがなくても起業できるフランチャイズでの起業について、個人事業主と会社設立の双方のメリット・デメリットを解説します。

フランチャイズの起業

最新のJFA*フランチャイズチェーン統計調査によると、2019年度時点で日本全国には1,324のフランチャイズチェーンがあり、店舗数は262,869店となり、売上は26.6兆円となっております。

2020年には新型コロナウィルス感染予防対策などで営業時間の見直しや休業などの様々な対応を迫られる以前の数値になりますが、売上は10年連続の増加になっています。

一方で2016年と少し古くなりますが、全産業の民営事業所の数は558万**になっていることから、およそ事業所の20分の1がフランチャイズ事業者の店舗といえます。

起業をしようとする時、前職の経験やスキルや取引先などの関係性は非常に重要になります。前職から取引があるお客様をそのまま引き継ぐことができる起業であれば、ビジネスの立ち上げが比較的簡単にできます。また、ノウハウやスキルがあれば、見込み客がなくても新規顧客を取り込む新規営業にフォーカスすることでビジネスの立ち上げを進めることができます。

一方で、サラリーマンをしていた人が飲食店などの前職とは異なる事業にチャレンジしたいという起業の場合は、必要なノウハウやスキルや見込み顧客がないゼロからのスタートになります。このゼロの状態で、ノウハウやスキルの不足を埋める手助けとなるのが、フランチャイズになります。

フランチャイズを代表するのは、セブンイレブンやファミリーマートなどのコンビニエンスショップです。コンビニを例にとってフランチャイズのチカラを見てみます。

例えば、フランチャイズ本部の助けなく、コンビニを開こうとするとどうなるでしょうか。まず、コンビニの名称やブランド、店舗デザインなどを1から始める必要があります。そのうえで、どのような商品を揃えるかを検討し、商品を卸してくれる企業や商品を運んでくれる運送会社などと契約する必要があります。さらに、実際に店舗契約や内装工事業者と内装工事を進めなければなりません。

さらに、アルバイトスタッフを採用して、接客や商品陳列などの研修を行う必要があります。そして、開店に合わせて宣伝や広告を行って集客できるようにすることを並行して進めなければいません。

また、開店後はセブンイレブンやファミリーマートやローソンといった知名度の高い店舗と集客やマーケティングの競争をしなければいけなくなります。もちろん、既存の業界を新規の業界参入者がシェアを奪っていくことはあります。しかし、そこには既存の業界を研究し、長い間の顧客が持っていた課題を解決することで大きなメリットを生み出すことができる場合などです。

ノウハウなく、専門知識がない状態では、起業すること自体簡単なことではなく、業界の既存企業と競争することは並大抵ではありません。

*JFAは、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会を指します。JFAはフランチャイズ業界の発展のために、FC本部やFC加盟店などにフランチャイズの情報を提供している法人になります。

**総務局統計局『産業別民営事業所数と従業者数』より

フランチャイズの起業手順

フランチャイズでの起業をしようとする場合には、独自の起業と大きく違うのはフランチャイザ―選びです。フランチャイザーとは、フランチャイズサービスを運営している会社になります。フランチャイザ―と契約することで、商標やデザインや商品・サービスなどを利用することができて、サービス運用のノウハウを活用することができます。

一般的な起業においては、やりたい事業(事業内容や事業規など)を検討してから、ビジネスプランを考えて具体的に起業の準備を進めていきます。フランチャイズでの起業の場合には、やりたい事業が決まった後のステップはフランチャイザー選びになります。

フランチャイザー選びは、フランチャイズでの起業において非常に重要になります。フランチャイズビジネスは、フランチャイザーとビジネス上のパートナーとなります。そのため、パートナー選びに成功すれば事業の立ち上げからその後の事業展開まで適切に進んでいきます。一方で、パートナー選びに失敗すると、やりたいこととやらなければいけないことがかい離して、思うように事業を展開することができない状態になってしまうことがあります。

フランチャイザー選びのポイントは、以下の4つに集約されます。

  1.  様々なフランチャイザ―を調べる
  2.  気になるフランチャイザーの情報を集める
  3.  フランチャイザーを比較する
  4.  フランチャイズ契約内容を確認する

前述したとおり、フランチャイザーとはビジネス上のパートナーともいえる関係性が必要です。丁寧に情報を収集した上で比較検討を行なうことが求められます。

●様々なフランチャイザーを調べる

起業を検討する段階では、早く起業したいと希望する人も多くいます。そのため、決めたフランチャイザー以外のことを調べない方もいます。しかし、本当にそのフランチャイザーでよかったのか、という検証できません。

「ここで良かった」という根拠があると、覚悟が変わってきます。慌てず、様々なフランチャイザーを調べることを省略しないように留意してください。

複数のフランチャイザーを調べる方法は、大きくは以下の3つに集約されます。ポイントは多くのフランチャイザー情報に効率的にアプローチをして行くことです。

✓新聞や雑誌の利用

日経流通新聞などには定期的にフランチャイズ店舗を募集する広告の特集が組まれています。また、ビジネスなどの専門誌にもフランチャイズオーナーの募集を目にすることができます。

✓フランチャイズショーやフェアへの参加

東京や大阪を中心として、加盟店を募集することを目的としてフランチャイザーが一同に集まるショーが定期的に開催されています。

JFAが特別協力しているFRAX(フラックス)と呼ばれるフランチャイズビジネスエクスポなど非常に多くののフランチャイザーが集まるため、複数のフランチャイザーの情報を集めるだけでなく、直接話を聞くことができる貴重な機会です。

また、このようなショーやフェアーにはフランチャイズでの起業を検討する方が複数来場します。そのため、その後の情報交換などのためにも、他のフランチャイズでの起業を検討する方と親しくなっておく良い機会でもあります。

✓インターネットを利用

フランチャイズに限らず、情報を調べようとするときに今ではインターネットでの情報収集は欠かせません。JFAのホームページやフランチャイズ加盟店募集のポータルサイトなどインターネットを通じて得ることができる情報は非常に膨大です。

●気になるフランチャイザーの情報を集める

複数のフランチャイザーの中から、自分がやりたい業界やサービスなどが具体的にイメージして、気になるフランチャイザーについてより詳細な情報を集めていきます。

✓説明会への参加

気になるフランチャイザーの説明会に参加します。現在は、新型コロナウィルスの感染予防のためにオンラインなどによる説明会も実施しています。

これらの説明会に参加することで、フランチャイザーのビジネス内容などにより詳しく知ることができます。また、フランチャイザーのスタッフの対応ー時間通りの進行や受け応えの的確さなどーを見ることでフランチャイザーの組織力なども見ることができます。

✓実際にフランチャイズ店舗やサービスを利用する

フランチャイズ店舗に行ってサービスをユーザー目線で確認します。自分が満足できるサービスであれば、自信を持って人に販売することができます。

✓フランチャイズオーナーの話を聞く

フランチャイザーだけでなく、起業や運用をしていく同じ側の立場にいるフランチャイズオーナーの話は貴重な情報です。また、オーナーがフランチャイザーに100%満足していることは少なく、思っている課題を聞くことでより現実的な選択をすることができます。

●フランチャイザーを比較する

比較する点は、「収益性」と「将来性」です。この2点が自分に合ったフランチャイザーかどうかを比較します。

収益性は、どのくらい利益が欲しいのかで、求める収益性は変わってきます。特に収益性において留意すべきは、うまく行く場合とうまくいかない場合の両面から確認する点です。2021年現在がそうであるように、経済全体が不足の事態に陥っても、収益が出るあるいはギリギリ赤字にならないようなビジネスの収益性は非常に心強いと言えます。

フランチャイズの収益性を確認する際に必ず確認しなければいけないのは、ロイヤリティの仕組みです。ロイヤリティとは、フランチャイズの仕組みを利用してビジネスができる代わりにフランチャイザーに支払う手数料です。

このロイヤリティの仕組みは、各フランチャイザーが決定します。そのため、毎月定額で発生する場合や売上や利益に連動して発生する場合など様々な仕組みがあります。状況によっては、うまく事業が軌道に乗らず赤字が続いている中でもフランチャイズ手数料の支払いをしなければならないなど心情的に納得しにくい場面なども発生しえます。

ロイヤリティを含めて収益構造は納得できるまでフランチャイザーへ確認することをお勧めします。

将来性は、どのくらい事業を継続したいのかによって、その重要度が異なってきます。一般的には5年から10年のスパンで将来を見込むべきです。特に、フランチャイズ契約が5年になっている場合などは、最低限5年先を見通せるフランチャイズビジネスを選択する必要があります。

ただし、5年先を見通せているかを判断することは簡単ではありません。変化が激しく大きい現在の経済状況においては、どんな技術革新や競合が表れるかを正確に見抜くことは困難です。そのため、過去どんな変化に対応してきたかを確認することで今後発生しうる不測の事態への対応力を測るようにします。

●フランチャイズ契約内容を確認する

フランチャイズ契約は、お互いがビジネス上のパートナーとなるための契約です。契約とは約束を意味します。そして、契約内容は一般的には契約書を作成した側にとって都合の良い内容になっています。一方的な約束を強いられることがないように、フランチャイズ契約書ではフランチャイザーの都合の良い内容になっていると思って、内容の説明を求めます。

また、フランチャイズオーナーになろうとする方は自身で一読すべきです。フランチャイザーも当然契約内容の重要事項は説明しますが、起業を行っていく中では契約内容を自身で確認することは非常に重要になります。全ての契約事項を確認することは難しくても、フランチャイズで起業しようとするのであれば、ビジネスのやり方を規定しているフランチャイズ契約の約款内容を把握しようとするのは基本です。

フランチャイズの選択が完了すると、フランチャイズでの起業はフランチャイザーとの二人三脚となります。ここからは、主体性はもちろん必要になりますが、フランチャイザーの持つノウハウを活用するため、独自で独立開業するより難易度は下がります。

フランチャイズの起業に求められるもの

フランチャイズオーナーには、個人事業主であっても法人設立をしても共通で求められるものがあります。それはサービス質の維持と主体性です。

● サービス質の維持

フランチャイズの特徴は、ブランディングを利用する事ができるという点にあります。例えば、セブンイレブンやローソンを利用するときに、その店舗を運営しているのが法人か個人事業主かを気にする人は非常に少数であると言えます。

同じように知名度の高いフランチャイズの飲食店やサービスも同様です。同じ看板の店舗であれば、同じサービスを受けられると思うため、その運営者が法人か個人かということは関心が薄くなります。

これはフランチャイズチェーンが持つブランディング効果と言えます。どのフランチャイズ店舗でも同じクオリティのサービスを提供することは簡単ではありません。しかし、それができるフランチャイズは、確固たるブランディングを確立することができます。このブランディングが確立できれば、サービス質を維持しながら、店舗を増やしていき、規模の利益を追及していくことができます。

フランチャイズオーナーになろうとする場合、どれだけ求められるサービス質を実現できるか、ということが第一の目標になります。これは、言われたことを忠実に実行することで実現が可能です。

●主体性

指示やマニュアルを忠実に実行することは、簡単ではありません。指示やマニュアルの内容を正確にとらえて、継続的に実行するためには計画性と実行力と主体性が必要になります。指示を受動的に受けるのではなく、事業を軌道に乗せ、それを維持するために必要な助言を探していく主体性を持ちながら、フランチャイザーのアドバイスを利用していくという姿勢が重要になります。

そして、指示に対する正確な実行からさらに一歩前に進むためには、問題発見と解決能力が必要になります。事業をより成長させるため、もしくは安定した業績の継続を実現するためには他社がやっていることを実行することとあわせて他社がやらないことをやる必要があります。

他社がやらない問題を発見するためには、現実的かつ具体的で計測可能な目標を持つことです。

現実的かつ具体的で計測可能な目標があれば、現実と目標とのかい離を把握することは比較的簡単です。毎月90万円の売り上げが上がっている事業で、毎月の売上を100万に成長させることを目標としたとします。

月間の売り上げをあと10万円の売り上げを上げるためには、どんな工夫をすればいいか具体的なアイデアが生まれます。このアイデアが無理なく生まれる為に必要なのが目標です。自ら目標が立てられて、その目標を実現させるための行動を考えられる能力がフランチャイズオーナーに共通して求められる基礎的能力と言えます。

フランチャイズの起業のメリット/デメリット

フランチャイズの起業をすることを、個人事業主として実施するのと会社設立をして実施する点それぞれのメリットデメリットは後述します。一方で、個人事業主・会社設立に共通しているメリットとデメリットがあります。

この共通しているフランチャイズのメリットとデメリットを理解したうえで、個人事業主と会社設立を選択していく順番が適切です。

フランチャイズと個人や会社で1から事業を立ち上げていくことの大きな違いは、ビジネスモデルがパッケージ化されているかどうかにあります。

最近は、すでに事業を実施している企業を買収することでビジネスを途中から引き継ぐモデルもあります。しかし、起業の場合には事業を自身のやり方を一つずつ作り上げていくことが一般的です。この事業を1から立ち上げていくのと、既存のビジネスモデルを活用していくことでは起業の課題や難しさが異なってきます。この違いがメリットとデメリットの要因になります。

フランチャイズに共通するメリットは以下になります。

  1.  経営や事業の経験不足を補える
  2.  商品力や集客力が強い
  3.  資金計画がぶれにくい

●経営や事業の経験不足を補える

ビジネスモデルがパッケージになっているうえに、経験豊富なフランチャイザーのスタッフが起業に必要な情報や取引先などを紹介してくれます。

フランチャイザ―と契約するフランチャイズ店舗が多ければ多いほど、多くの店舗経営や顧客情報が収集できます。これらの情報を利用して、売れ筋商品の分析や顧客分析をすることで効率的な経営ができます。

●商品力や集客力が強い

フランチャイザーの重要な仕事の一つが商品力や集客力の強化になります。つまり、マーケティングになります。

マーケティングが弱いフランチャイズのパッケージは収益力が低くなり、顧客と加盟店から見たときの魅力が減少します。そうなってしまうと、顧客が減り1店舗あたりの売り上げが減少するので既存の加盟店離れが進み、新規の加盟店締結が進まなくなります。その結果、フランチャイザーの売り上げも減少し、マーケティングの予算が確保できず商品力がさらに下がる、という負のサイクルへ入り込みます。

逆に、商品力や集客力を高めることができれば顧客が増加して既存店舗の売り上げが上がり、新規店舗も増えてフランチャイザーの売り上げも上がり、マーケティングを強化できるというプラスのサイクルを回すことができます。

そのため、フランチャイザーはマーケティングに力を注いでおり、その結果築き上げたブランド力を起業時点から活用できるというのはフランチャイズの大きなメリットです。

●資金計画がぶれにくい

資金繰りは事業を行う上で大企業から個人事業主まで共通の課題であり、継続的な課題です。

とくに起業したタイミングで必要となる資金が計画を上回ってしまうことがあります。これは、まず起業することのコストを低く見積もってしまうことと、思う以上に事業の立ち上げに期間が必要で売り上げが計画より低くなることで起こります。

フランチャイズでの起業であれば、過去の他社実績を反映した資金計画をフランチャイザーが持っている場合もあります。フランチャイザーとしても、開店して事業を開始してくれて初めて加盟店としての稼働が開始できるため、現実的かつ詳細な資金計画の立案について相談に応じてくれます。

フランチャイズでの起業に共通するデメリットは、フランチャイズ契約が優先されることに要因があります。

  1.  独自の運用がやりにくい
  2.  ロイヤリティ負担が継続する

● 独自の運用がやりにくい

フランチャイズ店舗やサービスは、定められたマニュアルや規則に従って運用することが求められます。それは、1店舗の評判が同じ看板やサービス名称を利用する複数のほかのフランチャイズ店舗へも影響するためです。

また、フランチャイズ店舗を利用するお客様は同じフランチャイズ店舗なら同じサービスを期待しています。各フランチャイズ店舗でオーナーが異なっていることは分かっていても同じサービスが受けられると思えるので、フランチャイズは成立します。

そのため、フランチャイズでの起業をするなら、独自の運用は制限されると考えるべきです。

● ロイヤリティ負担が継続する

フランチャイズを継続する場合には、フランチャイザーへのロイヤリティが継続します。ロイヤリティの負担は、決して軽くありません。

利益が出るのは、フランチャイズの貢献が高いと感じているのであればロイヤリティの負担は当然の費用と考えることができます。一方で、利益が出ていない中でロイヤリティの負担が続く状態が継続するとフランチャイザーとの関係が悪化してくる要因にもなりかねません。大事なことは、フランチャイザーを上手に活用して利益を上げ、ウィンウィンの関係性の中でロイヤリティを支払えるようにすることです。

個人事業主のフランチャイズ起業

個人事業主とは、副業される方を含めた個人=株式会社などの法人を設立しない事業者になります。

従業員を雇用しないで個人事業主として起業するためには、以下の3つの手続きが必要になります。法人設立と比較すると簡単に起業することができます。

  • ✔︎ 税務署での開業届(正式には「個人事業の開業の届・廃業等届出書」)の提出
  • ✔︎ 市区町村での「事業開始等申告書」
  • ✔︎ 都道府県税事務所での「事業開始等申告書」

起業する時に、事業の規模や種類によっては個人事業主が向いている場合や不利になる場合があります。また、前述の通りできるだけ早期に起業する必要がある場合などはまず個人事業主として起業して、タイミングをみて法人を設立するということも可能です。

メリット

個人事業主としてフランチャイズで起業をするメリットは、以下になります。

  1.  事業に集中できる
  2.  ブランド力や商品力を最大限活用できる
  3.  資金調達能力が上がる
  4.  収入と働きが連動しやすい

●事業に集中できる

個人事業主は、事業主としての維持コストもやらなければならないことも多くありません。そのため、事業に集中できます。

起業したばかりの個人事業主は経営の初心者である場合がほとんどです。そのため、フランチャイザーが提供する様々なアドバイスやサポートは大きなアドバンテージになります。また、トラブルや対応すべき問題などに対して、アドバイスをくれる存在は非常に心強いものです。そして、フランチャイザーはフランチャイズ加盟店が収益を上げることを共通の目的としているため、実務的で実利に適ったアドバイスを提供してくれます。

事業を行っていくと、収益を上げることに関係性がない仕事や問題が発生して、その解決に時間も動力も取られてしまうことがあります。これらの時に、相談ができて一緒に問題解決をしてくれるフランチャイザーと手が組めることは個人事業主の起業においては大きなメリットになります。事業以外の問題がなく、事業に100%集中できる状況を作り出すことができれば収益がついてくる可能性が高まります。

ただし、アドバイス待ちになって自ら考えない、行動しないということやアドバイスのせいにして結果の責任から逃れるような態度は問題となります。自ら考えて行動しながら、転ばぬ先の確認や答え合わせとしてフランチャイザーを活用すること、そして事業の結果は自らの責任として問題に取り組み続けることが必要です。

●ブランド力や商品力を最大限活用できる

事業をする上で重要なのは、収益を上げることです。収益はお客様がサービスや商品を購入することであげられます。

ブランド力とは、商品やサービスが持つ価値であり、その価値が消費者に与える影響力を表します。ブランド力がある商品は、消費者に与える影響力が強い商品を指します。そのため、ブランド力が高くできれば、高い価格で販売できたり継続的な利用を則すことができます。

ブランド力を高めていく活動をブランディングと言います。ブランディングは、消費者に信頼や良いイメージを定着させていくことを行います。このブランディングには、継続的かつ戦略的な宣伝活動が必要になります。

そのため、ブランディングを起業したばかりの個人事業主が行うことは簡単ではありません。

同じように、商品力のある商品やサービスを作ることも同様です。商品力を高めようとすると、消費者分析や競争力のある商品開発などが必要になります。

個人事業主が起業する場合には、1人での起業になることが多く、実質的に複数のことを同時にこなすことが困難です。そのため、起業時点でブランド力があり、商品力のある商品やサービスを取り扱えるフランチャイズ起業はアドバンテージになります。

●資金調達能力が上がる

個人事業主は、資金調達方法が限られます。また、起業するタイミングも資金調達方法が限られます。そのため、個人事業主で起業する場合には資金調達先を確保することは一層困難になります。

しかし、フランチャイズ加盟店として個人事業主が起業する場合には以下の2点で資金調達にプラスに働きます。

  • ✔︎ フランチャイズ加盟店契約を締結している事実がある
  • ✔︎ フランチャイザーが資金援助をしてくれる場合もある

まず、フランチャイズ加盟店契約を締結しているということは、フランチャイズ側の審査をパスしていることがあげられます。フランチャイズは全てのフランチャイズ加盟店オーナー希望者と加盟店契約を締結するわけではありません。審査などをして、人間性や経営者としての資質や資金力をみます。

そのため、この審査にパスをしているということは客観的な信用力になります。また、加盟店契約を締結する時に、一般的には加盟店契約料が発生します。加盟店契約を締結する場合には、加盟店契約料を支払うことができたということも併せて証明できます。

これらのことから、フランチャイズ加盟店契約を締結できたという事実は、金融機関などに融資を申し込みした時に実施される審査にプラスに働きます。

●働きと収入が連動しやすい

事業主になる目的は人それぞれになりますが、働いた分だけ収入が欲しい、という目的を持って起業する人は少なくありません。

サラリーマンでは、働いても働いても給与が変わらない限り収入は変わりません。しかし、事業主になれば仕事が増えれば収入が増えます。

そして、個人事業主がフランチャイズで起業すると基本的に収益に直結した仕事を多くこなすことになります。前述の通り、ブランディングや商品開発は事業上必要ではありますが、それで収入が増えるわけではありません。あくまで、商品やサービスが売れて始めて収入が入ることになります。

また、法人と比較すると個人自業主は事業主としていることに対するコストややることが少なくて済みます。

これらのことから個人事業主がフランチャイズで起業することで収入に直接返ってくる仕事や働きを増やすことができ、費用などが少ないため手元に利益として残りやすいというメリットがあります。

デメリット

個人事業主がフランチャイズで起業するときのデメリットもあります。詳しくみていきましょう。

●フランチャイズありきになってしまう

前述したよう1人ないしは少数で行う個人事業は、できることが限られます。そのため、フランチャイズで起業をすると、良い意味でも悪い意味でもフランチャイズの事業のみを実施することになります。

起業のタイミングにおいては、フランチャイズに注力することは当然です。注力しなければ、事業が立ち上がらないことすらありえる、起業から事業が安定的に収益を上げるまでは事業運営の中で最も難しい時期と言えます。

この時期は、経営者が経営力を鍛えることができる期間でもあります。この時期に鍛えられた経営力がその後の事業の安定や発展に役立ちます。

一方で、フランチャイズで起業をすると事業の立ち上げ時期はフランチャイザーのアドバイザーと2人3脚になります。この事業の立ち上げは、フランチャイザー側のマニュアル化されたフランチャイザーありきの事業の立ち上げになります。

フランチャイズありきの事業立ち上げは、事業の成功率を高めながら立ち上げ自体を効率的に行う上で非常に有効です。そのため、そこに苦労もないまま事業立ち上げ期間をすぎてしまうと、鍛えるべき経営力が鍛えられないままになってしまう場合があります。

経営力は、その後長い間事業を実施していく上で早いうちに身につけることが必要です。そのため、フランチャイザーとの2人3脚であっても、経営力を身につけるという課題を持ってマニュアルの仕組みやそこの背景にあるノウハウを吸収する意識を持って、自ら主体的に起業していく姿勢を持つことが必要です。

●発展性が限られる

一般的なフランチャイズ契約規定には、「競業禁止」規定が盛り込まれています。競業禁止義務とは、フランチャイズ加盟店のオーナーは、フランチャイズ契約を終了してから一定期間フランチャイズ側と競業することを禁止する規定です。つまり、フランチャイズ契約を止めた後には、同じ商圏エリアで同業種を行うことができないことになります。

これは、ノウハウを提供するフランチャイズ側を守るために必要な規定ですが、事業主としては効率的な独立が難しくなる要因になります。

また、フランチャイズ事業フランチャイズ側のマニュアルに従ってサービス運営をする必要があるため、収益は働く量に連動していく傾向があります。独自の動きが可能な独自の企業であれば、収益力向上のための商品やシステム投資などを行うことができますが、フランチャイズ事業においてはその動きは限られています。

本来、個人事業主は1人や少数での起業ならびに事業運営になるので機動性が高い特徴があり、変化に対応しやすさがあります。これらがフランチャイズの企業においては損なわれる要因になります。

会社設立のフランチャイズ起業

事業を始めようとする時に会社を設立し、会社として事業を始める選択があります。会社とは株式会社などの法人です。法人は、法人格があり契約の当事者になることができます。

個人事業主に比較すると、会社を設立することは手間も時間もかかります。しかし、手間も時間もかけているからこそ、信用を得やすいというメリットがあります。また、一般的には株式会社などの法人の方が個人事業主よりも事業規模が大きくなるため、取引先を安心させる要因になります。

なお、会社というと最も知名度が高い株式会社の他に合同会社や合資会社などがあります。ここでは、株式会社を前提にフランチャイズの起業のメリットとデメリットを解説していきます。

メリット

会社設立をしてフランチャイズで起業をするメリットは、以下になります。

  1.  複数の事業が同時並行できる
  2.  規模の利益を追いやすい
  3.  ノウハウを最大限に生かせる

●複数の事業が同時並行できる

株式会社などを設立した場合には、その約款に記載された事業内容に沿っていれば、複数の事業を同時並行に進めることができます。

事業を複数実施することのメリットは、仮に1つの事業が成功できなかったとしてももう1つの事業が成功していれば会社全体としては利益が出ている状態にできます。

実際に2つ以上の事業を同時に新規事業として立ち上げることはあまり多くはないかもしれません。しかし、1つ目の事業が軌道に乗った時点で、次の事業を立ち上げるということはありえます。

特にフランチャイズで起業することは、フランチャイザーのノウハウを活用して事業を立ち上げるため、一般的には計画通りに立ち上げることができる可能性が高くなります。そのため、フランチャイズ事業と他の事業も実施したいという時には、会社設立をして時期をずらして新規事業を立ち上げていくという選択をすることができます。

もちろん、個人事業主が複数の事業を同時に行うことができないわけではありません。しかし、会社設立の方がそれぞれの事業に責任者を置いて組織を構築していく上では適していると言えます。

また、複数の事業を行うことはフランチャイズ事業にとってもプラスに働くことがあります。フランチャイズ事業はフランチャイズの知名度を活用できるため、新規顧客の獲得に適しています。

事業においては、顧客に販売や提案できる商品・サービスが多ければ多いほど利益が上がりやすい状態になります。つまり、1人の顧客にフランチャイズ事業でAという商品を販売する。その後、別事業のBというサービスを利用してもらう、ということができれば新規顧客を獲得できる価値が倍に増えることになります。

複数の事業を行うことは、フランチャイズ契約約款やフランチャイズ側との調整が必要になります。事前に相談の上、前述の競業禁止などの事項に該当しないよう留意することが必要です。

●規模の拡大を目指しやすい

規模の利益とは、生産量や販売量が増えていっても固定コストは変わらないため、多く生産や販売をした方が1つあたりの生産や販売のコストが下がることを言います。

フランチャイズ契約においても、1店舗の契約より2店舗の契約の方がより良い条件を獲得できる可能性が高まります。最終的にメガフランチャイジーと言われる複数でかつ大規模のフランチャイズ事業を行う企業は、フランチャイザーに対して強い交渉力を持っています。

会社設立時点で複数のフランチャイズ店舗を運営することはリスクが高い動きになりますが、1店舗が軌道に乗った後に事業の安定性や拡大を目指して店舗を増やしていくことはあります。

そして、フランチャイズ店舗を増やしていくことは、会社設立をしておいた方がプラスに働きます。なぜならば、フランチャイズ店舗を増やしていくと、売上や利益が増えていきます。その時に、個人事業主より法人の方が利益に対して支払う税金が安くなる場合があります。

個人事業主の利益(収入から費用を引いた残り部分)は、所得税がかかります。一方の株式会社などの法人の利益は、法人税がかかります。そして、利益が高くなると所得税より法人税のほうが税率が低く設定されているため、同じ利益でも払う税金が法人の方が安くなります。

そのため、起業する時点から事業規模を拡大していきたい計画があれば、会社設立をしておく方が良いでしょう。

●ノウハウを最大限に活かせる

フランチャイズはビジネスノウハウをパッケージ化しているものです。このビジネスをパッケージ化することができれば、事業を拡大することが簡単にできるため、その企業や事業にとって非常に有益です。

そして、ビジネスノウハウを突き詰めると、他の事業にも共通して言えることが多くあります。なぜならば、ビジネスノウハウはその基本部分は普遍的なものが多いからです。

例えば、店舗を清潔に保っておくことは、ビジネスの基本であり他の事業においても必須の事項です。これらの基本からフランチャイザーは落とし込みや研修を行っていくところが一般的です。

また、ブランディング力や商品力がどのように販売に影響していくのか、ということもフランチャイズ加盟店になることで学ぶことができます。

これらのビジネスの基本について研修やノウハウを加盟店運営を通して実践の中で学び、その後のビジネス展開に役立てることができます。これらのノウハウを通して、より事業を広げていこうと思うなら、法人として複数の人材に直接学ばせることができるという意味で会社設立をしてフランチャイズ事業で起業することはメリットになります。

デメリット

会社設立をしてフランチャイズで起業するときのデメリットは、事業規模が小さい場合に会社形態の維持に費用がかかるという点になります。

会社を設立する場合には、費用がかかります。また、事業年度が終了すると法人税の確定申告が必要になります。個人事業主の所得税も確定申告が必要ではありますが、その内容や必要書類などで複雑さが増します。

また、定款や登記内容の変更などが必要な場合には申請や登録が必要など、会社を維持するために必要なことは多くなります。

これらのことは、フランチャイズで起業することから発生するわけではなく、すべての会社設立において言えることになります。前述の所得税でも法人税でも大差がない範囲での利益で良い範囲の事業規模での活動を目指す場合には、会社を設立することはその業務の煩雑さやかかる費用が増えるという点でデメリットということができます。

まとめ

フランチャイズの起業についてと、個人事業主と会社設立でのフランチャイズ起業のそれぞれのメリットとデメリットをまとめました。

個人事業主と会社設立してのフランチャイズでの起業にメリットでメリットが出てくる大きな要素は、起業の後の事業規模を広げていくのか必要な規模でとどめていくのかという点に集約されていくと言えます。

フランチャイズの起業をすることは決まったが、個人事業主と会社設立で迷ったら、いったんは個人事業主でスタートして、事業規模の拡大に伴って“なりあがり“と言われる個人事業主から法人へ移行する方法も取ることができます。この場合は、事前にフランチャイズ側に相談しておくこともお勧めしておきます。

いずれにせよ、フランチャイズでの起業はマニュアルやノウハウがあり、ブランディングや商品力がある商品やサービスを取り扱うことができるので、検討してみてください。