沸騰するインドのFCビジネス 世界市場の中心となる日も近い?
経済発展著しいインドは今、フランチャイズビジネスの進出先として世界各国から注目を浴びています。海外の直接投資に関する規制法は一応あるものの、フランチャイズを規制する法律ないのが大きな要因です。そのため、諸外国のFC企業はインドでチェーン展開がしやすいといったメリットがあります。米国でフィットネスジムを経営しているUFCジムは今後10年間でインド国内で100ヶ所以上でチェーン展開する計画を発表。まさにインドのフランチャイズビジネスが沸騰しています。
また、インド初となる高速鉄道導入の受注先が日本に決まるなど、日本との結び付きはこれ以上にないほど強まっています。本記事では「インド市場はどれほどの成長可能性を秘めているのか」に迫ります。
目次
インド市場の現状
人口12億人を超えるインドはヒンドゥー教徒が国民の約8割を占めます。首都ニューデリーには行政機関が集中しており、経済でも世界を代表する都市として知られています。2014年に誕生したモディ政権が経済政策を重視していることもあり、昨年度のGDP成長率は7.1%(2015年7.9%、2014年7.2%)と高い数値を維持して経済発展を遂げています。
国際関係では米国や日本と経済関係を強化する一方、中国・ロシアとも積極的に友好を深めています。
主な貿易相手国は、輸出が米国、UAE、香港で(日本は20位)、輸入は中国、米国、UAEとなります(日本12位)。
年度 | 輸入 | 輸出 |
---|---|---|
2007年度 | 2516億5400万ドル | 1631億3200万ドル |
2008年度 | 3036億9600万ドル | 1852億9500万ドル |
2009年度 | 2883億7300万ドル | 1787億5100万ドル |
2010年度 | 3697億6900万ドル | 2498億1600万ドル |
2011年度 | 4893億1900万ドル | 3059億6400万ドル |
2012年度 | 4907億3700万ドル | 3004億0100万ドル |
2013年度 | 4501億9800万ドル | 3144億0500万ドル |
2014年度 | 4479億7600万ドル | 3105億7200万ドル |
2015年度 | 3810億0600万ドル | 2622億9000万ドル |
2016年度 | 3843億5500万ドル | 2758億5100万ドル |
日本の高速鉄道を導入
インドは親日国ということもあり、日印はこれまで良好な関係を維持してきました。2017年9月、安倍首相はインド高速鉄道の起工式に出席するためインド訪問を訪問。9kmにもおよぶ歓迎パレードが催されるなど、両国首脳の親密ぶりがアピールされました。
インドにおける高速鉄道建設は、モディ首相が選挙時に掲げていた公約であり、ムンバイとアーメダバードの500キロを結ぶ一大計画です。日本は受注競争でフランスや中国を制し、2015年12月の日印首脳会談で日本の新幹線方式を導入することが正式に決定しました。2023年の開業を目指し今年着工される予定です。
中国とはインドネシアでの高速鉄道受注をめぐり、熾烈な入札競争が繰り広げられた結果、価格面で一歩リードした中国方式が採用されました。一方、インドのケースでは、日本側が約1.6兆円におよぶ総事業費の約8割を0.1%の低金利で貸し付けるという破格の条件を提示したことで、合意に至りました。
合意の背景には、インド市場で先行したい日本政府と安全性の高い鉄道インフラを導入することで経済効果を創出したいインド政府の思惑がありました。
インド初の高速鉄道誕生に対し、地元住民は経済効果がどの程度もたらされるかなど期待が高まっています。
規制がないインドはフランチャイズにうってつけ?
大きな成長可能性を秘めたインド市場は、外国直接投資に関して厳しい規制を設けています。特に小売では、国内の個人経営者保護のため、タバコ・葉巻・宝くじなどへの外国投資が禁止されています。
1 | 宝くじ(民間・政府宝くじ、オンライン抽選などを含む) |
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2 | 賭博、カジノ(賭博場)を含む |
3 | チット・ファンド(賭博事業) |
4 | ニディ会社(互助金融会社) |
5 | 譲渡可能開発権 |
6 | 不動産業または農家の建設 |
7 | タバコまたはその代替品から生成された葉巻、チェルート、たばこ、シガリロ(葉巻の一種)の製造 |
8 | 原子力および鉄道事業(認められている業務以外) |
ところが、フランチャイズビジネスに関して規制する法律は存在せず、むしろ自国民の経営者を増やすことにつながるのでインド政府から歓迎されているといいます。小売業では100%までの出資が可能で、2015年から単一ブランドなら電子商取引も可能となりました。ただし、投資を行う者とブランド所有者が異なる場合には、ブランド所有者との法的な同意に基づいていることが求められるので、その証明として「ライセンス供与やフランチャイズなどの合意書の提出」が必要となります(参照:JETRO)。
今後10年で100ヶ所!?米国大手ジムが見据えるインドFC戦略
世界2位とも言われるインドのフランチャイズ市場。アフリカとの結びつきも強く、インドを拠点としてアフリカ市場に進出するルートも開拓されています。
昨年9月には、米国でフィットネス施設を経営するUFCジムが、2028年までにインド国内で100ヶ所以上のジムを展開することができるとの内容のパートトナーシップ契約を締結したことを発表しました。同社グローバルフランチャイズのテイマー上級副社長は、「インドではフィットネス市場が活況を呈しており、UFCジムのユニークなトレーニング経験を住民にもたらすことができて興奮している。ムンバイの郊外に初出店した後は、10施設がインド全国でデビューする予定だ」と語りました(参照:Business Wire)。
2009年の創業以降、UFCジムは現在米国をはじめ10カ国で展開。海外に150以上のジムを運営しています。フィットネス市場の急速な市場拡大を背景に、UFCのフランチャイズは、過去2年間で50以上の店舗が開店し、来年には50店舗がオープンする予定としました。
インド進出はトラブルも覚悟? マクドナルド、170店舗を閉鎖
フランチャイズビジネスを世界に広げる際は、その国の法律や習慣をよく理解する必要がありそうです。
昨年8月、外食チェーン大手のマクドナルドのインド法人は、FC契約先が規定に著しく抵触する行為があったとして、一部店舗を閉鎖しました。マクドナルドはフランチャイズ契約を締結していたCPRL(コンノート・プラザ・レストラン・リミテッド)との関係解消を発表しました。
CPRLは北インドと東インドのマスターフランチャイジーでしたが、以前にも必要な営業許可を得ていないとして昨年6月に43店舗が閉鎖されていました。
マクドナルドは声明で「CPRLは、インド北東部のCPRLが運営する169店舗で、マクドナルドのインド法人とCPRLの間のフランチャイズ契約の終了通知を出した。今後、ブランド名、商標、デザイン、運営およびマーケティングの実践、食品レシピなどのブランド権をすべて撤回する。(今後は)マクドナルド・インド法人は、インド北部と東部で適切なライセンス契約を結べるパートナーを見つけることを約束する」と述べました。
ところがCPRLはこの決定に抗議するかのように、店舗経営を続けていたため、マクドナルドは12月、食材の提供を停止するなどの措置を講じ、169店舗中84店舗を閉鎖しました(参照:businesstoday)。
世界2位のフランチャイズ市場とはいえ、契約相手は千差万別。その国のマスターフランチャイジーとの良好な関係を維持するのは簡単ではないようです。
インド唯一のコンビニチェーン
世界各国に進出している日本の大手コンビニチェーンにとってインド市場は未開の地となります。世界最大手のセブンイレブンも進出していません。
24時間365日のコンビニ
インド国内で展開しているコンビニエンスストアのトゥウェンティ・フォー・セブン(Twenty Four Seven)は、コングロマリット企業のKKモディ・グループ(KK Modi Group)が運営するコンビニです。インドで初めてコンビニエンスストア形式で組織化された、24時間365日稼働する唯一の小売チェーンとなっています。
同社広報によると「すべてのコミュニティの人々の生活の不可欠な存在になる」という理念の下にさまざまなサービスを提供しています。トゥウェンティ・フォー・セブンでは加工食料品、インスタント食品、飲料、化粧品およびパーソナルケア製品、音楽・映画、雑誌、国内外の宅配便、インスタント写真の開発、請求書支払い、携帯電話のバッテリー、映画チケットなど3500以上の多種多様な商品を販売しています。
トゥウェンティ・フォー・セブンは、現代インドの仕事文化のニーズを満たし若い労働者を中心に利用が拡大しています。現在は首都デリーを中心に45店舗を経営。同社は日本のセブンイレブンの展開手法を学び、店舗拡大に取り組んできました。今後は、数年以内に全国に500店舗をオープンする方針を打ち出しています。
このほか、トゥエンティ・フォー・セブンはすでにインド最大の燃料小売チェーンであるIndian Oil Corporation(IOC)と、ガソリンスタンドで小規模店舗を開設する契約を結んでいます。全国に約24,000あるガソリンスタンドでコンビニを経営することでフランチャイズチェーンとして成長する計画です。
複数の外食チェーンと提携するイン・アウト
現在インド国内に157店舗を構えるのがイン・アウト(In&Out)と呼ばれるコンビニエンスストアです。インド全土に13,439の給油所を運営する国有企業バーラト•ペトロリアム•コーポレーション•リミテッド(BPCL)Bharat Petroleumによって運営されています。
同社は、1930年代初頭からインドに燃料補給所を運営してきました。イン・アウトは、複数のコーヒーチェーンやレストランチェーンとも提携しており、外出先で顧客に素早く食事を済ませることができるのがウリです。提携先企業は、人気チェーンのコーヒーデー、サブウェイ、マクドナルド、ピザハット、ケンタッキー(KFC)などがあります。また、朝から深夜まで営業しており、ATMなどのサービスも提供しています。