理美容室のフランチャイズ市場、微減傾向続く? 顧客獲得に向けて新業態も

FC加盟のジャンルとして人気が高い美容室フランチャイズ。2017年度の美容市場見込みは1兆5113億円(矢野経済研究所より)で前年よりわずかに減少しました。高価格帯が主流だったものの、近年は低価格で提供するチェーンが増えました。
一方、理容室は少子高齢化や後継者不足から個人経営店は年々減少。2017年の理容市場規模は昨年より31億円減少の6377億円と見込まれています。

1990年代末から2000年代前半にかけてはカリスマ美容師が注目を浴びるなど空前のブームとなっていた美容室業界。しかし、今年4月にはいわゆる「聖子カット」の生みの親であるサロンが倒産するなど、その人気に陰りが出てきたとも囁かれています。

果たして今後のサロン業界は縮小してしまうのでしょうか。最新の理美容室市場に迫ります。

理美容室の市場規模

調査会社の矢野経済研究所によると理容室市場と美容室市場を合計した今年の理美容室市場規模は2兆1490億円で昨年より85億円の減少となります。近年、理容室を取り巻く環境は厳しさを増しており、店舗数は減少し、売り上げは低迷する状態が続いています

理美容室市場規模の推移

年度 市場規模額
2012年度 2兆2265億円
2013年度 2兆2087億円
2014年度 2兆1758億円
2015年度 2兆1658億円
2016年度 2兆1575億円
2017年度 2兆1490億円

(矢野経済研究所より)

一方、美容市場は過去5年間を見るとほぼ横ばいですが、低価格美容サロンチェーンなどの台頭により市場規模は微減しています。全国展開する大手美容サロンチェーンは多様化する顧客に対応するため、新業態の開発に取り組んでいます。

店舗過剰状態となった美容市場

全国各地には大手美容室によるフランチャイズ店舗が展開されている美容室業界。厚生労働省によれば国内美容師数は前年比9061人増加の49万6697人(2015年3月時点)となっています。また、同年度中に新たに美容師免許を取得した者は19,005人おり、美容師の数は増加傾向にあります。美容室の数は前年度比1.5%増加となる23万7525施設です。全国のコンビニ数が約5万5000店舗であることを考えると実に5倍近い数字です。

国内の美容市場はまさに「店舗過剰」状態で、さらに客数は減少しているため全体の売上高も減少傾向です

2017年度の美容市場の内訳を見ると、パーマネント市場3610億円、カット市場2915億円、セット573億円、その他8015億円の見込みです。全体では前年比54億円の減少です。少子高齢化や人手不足の影響により、今後の顧客獲得に向けた取り組みは一層厳しくなるとの見方がされています。

厚労省は、

「そうした雰囲気は物からだけではなく、そこで働く従業者からも伝わるもので、何より従業者が明るく、楽しく、安心して働け、経営者との信頼関係が良好でなくてはならない。また、正しい美容知識と的確な顧客データの管理による適切な顧客へのアドバイスにより、顧客に店の技術と人に対する信頼関係を築いてもらえるように、経営者と従業者が一体となって取り組むことが大切である」(参照:厚生労働省資料より)

と述べています。

美容室市場規模の推移

年度 市場規模額
2012年度 1兆5575億円
2013年度 1兆5487億円
2014年度 1兆5285億円
2015年度 1兆5220億円
2016年度 1兆5167億円
2017年度 1兆5113億円

(矢野経済研究所より)

低価格サロンチェーンが人気

技術に優れた人気の美容師を指名するよりも、美容室でありながら安くてそれなりのデザインを求めることができる低・中価格帯のサービスが高まっています。実際、多くの美容FCチェーンは低価格態での施術を可能とする店舗を全国的に展開しています。

さらに、近年は資金不足などを理由として「面貸し」で店舗を経営する個人事業主が増加しています。「面貸し」とは他人が経営する美容室の一部をフリーランス(個人事業主)の美容師に提供することを言います。ミラーレンタルとも呼ばれます。面貸し美容室は増加傾向にあり、開業資金不足で独立できないオーナーをサポートするシステムとして普及しています。

本屋とビューティーサロンが一体となった驚きの新業態

近年は異業種間による一体型店舗経営が数多く見られます。書店大手のTSUTAYAを運営する株式会社CCC(カルチャー・コンビニエンス・クラブ)は、カフェが併設された書店「Culfe(カルフェ)」を2013年から3年間で100店舗に拡大するなど、「ブックカフェ」が定番化。このほか、雑貨やギャラリー、ドラックストア、授乳室を設ける本屋まで出現するなど業態は新たな形を見せています。

たとえば2015年5月には蔦屋書店の中にビューディーサロンがオープンし、新業態のビューディーサロンとして注目を集めました。フットサロンを経営する株式会社uka(ウカ)はTSUTAYAを経営するCCC(カルチュア・コンビニエンス・クラブ)株式会社と合弁会社を設立。読書やDVD鑑賞を楽しみながらヘアカラー、ネイルデザインから頭皮や肌のケアまで総合的なメンテナンスサービスが用意されています。

Cu by uka 梅田店

縮小する理容室業界

赤・白・青のサインポールを店頭に置く床屋を見かけることも少なくなりました。90年代末の美容師ブームで都内を中心に美容室が乱立するのと同時に理容室の数は徐々に減少。2017年(見込み)の理容市場は理髪4483億円、その他1894億円の合計6377億円で前年より31億円減少しました。理容室市場は過去5年間で300億円以上減少しており、今後もこの傾向は続くと見られています

理容室市場規模の推移

年度 市場規模額
2012年度 6690億円
2013年度 6600億円
2014年度 6473億円
2015年度 6438億円
2016年度 6408億円
2017年度 6377億円

(矢野経済研究所より)

客足減少の背景

厚労省によると全国の理容指数は前年より約3000年減少して23万1053人となります(2015年度3月末時点)。理容室数は前年度1.2%減少となる12万6546施設です。1986年をピークに以降はほぼ一貫して理容室数は減少しています。厚労省は理容業について「理容業は新規参入が比較的容易なものの、同業他店とのサービスの差別化が図りにくく、人手によるサービス業で生産性向上が図りにくい」と分析

一般的な理容室はカットほかシャンプーや顔剃りなどが一体となったサービスを提供します。しかし、バブル崩壊後、消費者の支出は厳しくなり不要なものにはお金を払わないという風潮が強まりました。

さらに近年は1000円カットなど低価格を売りにするカット専門店の増加が従来の理容室の顧客減少に拍車をかけました。

経営者と客の高齢化

理容室の減少は経営者の高齢化、後継者不足もその一因となっています。生活衛生関係営業経営実態調査によれば経営者の年齢は60歳以上が約6割(60歳〜69歳39.1%、70歳以上20.8%)を占めます。客層も60歳以上がメインで、次に40代となります。

また、多くの経営者が経営課題として「客数の減少」を挙げており、次いで「競合店舗の新規出店」、「客単価の減少」、「施設・設備の老朽化」、「立地条件の悪化」が挙がりました。

理容業界の今後について厚労省は「性別・年齢を問わず、刻々と変化する消費者の多様な需要に完璧に対応することは難しい」としつつ、「立地条件や顧客の年齢層などを考慮した『地域密着型』にするのか、短時間利用・駅前設置等の『利便性追求型』にするのか、あるいは音楽・アメニティ等の工夫による『癒し型』にするのかといった経営方針を明確化し、従業員と協力して他店との差別化に取り組むことが重要」と述べました。

理容室の今後の課題

地域密着型店舗 立地条件や顧客の年齢層などを考慮した地元住民重視の理容室
利便性追求型 時間のないサラリーマンや低価格重視の学生をメインターゲットとした理容室
癒し型 アメニティ重視のゆったりとくつろげる空間づくりを意識した高級路線の理容室

(参照:厚生労働省「生活衛生関係営業経営実態調査」より)

聖子カットサロン倒産!どうなる今後の理美容業界

今年4月、女優・歌手の松田聖子さんモデルの「聖子ちゃんカット」を生み出したことで知られる美容室「HAIR DIMENSION」を経営していたヘア・ディメンション・ホールディングスが破産したことが大きなニュースとなりました。カリスマ美容師の火付け役とも言われていた大手美容室の倒産ニュースに美容業界に衝撃が走りました。

人口密集地にはほぼ全て美容室が行き渡った現在。店舗の入れ替わりも激しく、各店舗は顧客確保に向けた新サービスの開発が求められています。今後美容師ブームが再熱することはあるのか、理容室は衰退の一途を辿ってしまうのか。理美容業界に注目です。