焼肉のフランチャイズに加入するメリット・デメリット、経営のポイントは?
外食産業の中でも、焼肉店は老若男女を問わず強い支持を受けていますが、フランチャイズに加入して焼肉店を営業する形態も広く普及しています。焼肉のフランチャイズに加入すると、コロナ禍に強いなど様々な利点がありますが、食中毒の危険などのリスクもあります。
今回の記事では、フランチャイズで焼肉店を始めるメリットやデメリット、フランチャイズ焼肉店を成功させるポイントなどを解説しています。フランチャイズで独立開業を目指している方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
フランチャイズ焼肉店とは
フランチャイズ焼肉店とは、特定のフランチャイズに加盟して焼肉店を営業する事業形態です。焼肉店を営業しようとする人は、フランチャイズ本部(フランチャイズグループの中枢企業)とフランチャイズ契約を結び、加盟店オーナー(加盟店の経営者)となります。
加盟店は、フランチャイズ本部の子会社でも営業所でもなく独立した事業体で、加盟店オーナーは事業の経営者としての立場になります。ただし、フランチャイズ契約の内容により、契約当事者双方には様々な制約が課されます。
フランチャイズ焼肉店の開業費用
フランチャイズ焼肉店を始めるためには、次のような開業費用がかかります。
①加盟金・保証金・研修費
加盟金は、フランチャイズに入る際に本部に支払う費用です。焼肉フランチャイズの加盟金額は、数十万円から数百万円と幅があります。また、保証金は、開業後に加盟店がフランチャイズ本部に負債(ロイヤリティ滞納、仕入代金不払いなど)を負った場合に、清算用に預けておく金銭です。保証金は、フランチャイズに入る際に預けますが、使用されない場合はフランチャイズ契約終了時に変換されます。研修費は、加盟店オーナーやスタッフが、本部で研修を受講するために支払う費用です。
②店舗物件取得費
店舗物件を借りるための費用です。
③店舗改造費
店舗を焼肉店に改造する費用です。
④備品・消耗品取得費
店舗で使う設備や備品、消耗品を取得する費用です。
⑤広告宣伝費
店舗のPR費用です。
上の中で費用がかかるのが、①加盟金、③店舗改造費、④備品取得費です。①の加盟金の額は、フランチャイズにより差があります。②の店舗物件取得費は、購入ではなく賃借すれば、敷金・礼金・当初家賃程度の負担に収まります。
③の店舗改造費は、従前飲食店だった物件を借りれば費用を圧縮できます。しかし、飲食店以外だった物件を借りたら、厨房工事や客室カウンター設置工事などが必要になります。
④の備品取得費は、厨房用の流し・作業台・冷凍庫・冷蔵庫・ガスコンロなど、客室用の食卓セット・換気設備・照明設備などの費用がかかります。
フランチャイズ焼肉店の開業費用は店の規模などで違ってきますが、下は数百万円から上は2,000~3,000万円程度と見込んでおくとよいでしょう。
焼肉フランチャイズに加入するメリット
それでは、焼肉フランチャイズに加入すると、どのようなメリットがあるかをみていきましょう。
商号・ブランドを利用できる
焼肉フランチャイズに加入すると、フランチャイズの商号やブランドを使うことができます。事業や商売を行う場合に非常に大切なものの1つは、会社や店の信用です。信用は、長い歳月をかけて地道な営業を積み重ね、客に良質の商品やサービスを提供し続けて、少しずつ培われていくものです。
このため、昨日や今日開業したばかりの会社や店は、信用度が高くありません。客は、長年にわたり良い品やサービスを受けられたからこそ、その会社や店に信頼を寄せるのです。それを端的に表す言葉が、「○○さんの品なら間違いがない」というものです。
また、会社や店の信用と並んで大切なものが、その周知度です。周知度は、会社や店の名前が世間一般にどれだけ知られているか、すなわち有名かどうかということです。信用と同じく周知度も、短い期間では高くすることはできません。長年にわたる実績の積み重ねやPRを続けて、少しずつ有名になっていくのです。
焼肉フランチャイズに入れば、開業時点からこの信用や周知度を手に入れることができます。すなわち、自分の店舗にフランチャイズの商号を掲げ、フランチャイズブランドの料理を提供することができるのです。このことは、個人で開業する同業者に比べ、非常に有利な立場でスタートできるということです。
未経験者でもできる
焼肉フランチャイズに加入する大きなメリットは、未経験者でも始めることができることでしょう。個人で焼肉店を営業しようとしたら、以下の業務について、知識や技術をマスターしなければなりません。
- 食材の仕入先開拓・購入契約
- 仕入れた食材の保管
- 調理
- 接客
- 会計
- スタッフの募集・採用・教育
- 店舗の宣伝PR
- 事業収支の管理、ローン返済の管理
- 衛生管理
- 設備・調理器具の管理
事業を行うには、実に様々な業務について学習し、身に付けていかなければなりません。そのためには、知識や技術をマスターするための相当な準備期間がないと開業することは困難です。
それに対し、焼肉フランチャイズで開業する場合は、これらの業務の進め方やコツ、ノウハウなどについて、研修や業務マニュアル、専門家の指導などを通じて教え込んでくれます。事業経験がない初心者であっても、研修を受講し、業務マニュアルに従って作業し、随時本部の専門スタッフによる指導・助言を受けながら営業すれば、焼肉店を経営することができるのです。
このように、事業の未経験者や初心者でも始めることができることは、フランチャイズの大きな魅力です。
食材の仕入先を確保できる
焼肉フランチャイズに加盟すると、食材の仕入先を確保できるメリットがあります。焼肉店を営業しようとしたら、まず肉の仕入先をどうやって確保するかが問題です。焼肉店にとり、品質の良い肉を安定して確保することは、営業するための必須の条件です。通常は、国産の牛や豚の肉を仕入れようとしたら、国内の畜産農家を回るか肉の卸業者を訊ねて、仕入や価格の交渉を行う必要があります。しかし、そのような努力を重ねても、美味しい肉を安定して仕入れることは、簡単なことではありません。
また、焼肉店の重要な商品にタレがありますが、タレを自前で作る店以外は、その仕入れ先を探す必要があります。美味しいタレを自前で作ることができるようになるまでには、相当な経験や努力が必要であるため、当面、タレを直接購入できる業者を探さなければならないわけです。
それに対し、焼肉フランチャイズでは、食材は本部指定の業者から仕入れることになります。逆に、本部指定以外の業者から仕入れようとしても、フランチャイズ契約上難しいのですが、一定の品質の食材を安定して仕入れることができるのは、大きなメリットです。
消費者の志向を把握できる
フランチャイズは、消費者の志向を把握できるメリットがあります。フランチャイズ本部は、系列の直営店・加盟店における売上内容を集計・分析しています。営業実績のデータを集計・分析し、以下のように、客の好みや1回あたりに使う金額を調べています。
- ・人気がある肉の種類
- ・人気がある肉のランク
- ・人気がある肉の部位
- ・人気があるメニュー
- ・人気があるドリンク
- ・1グループあたりの来店人数
- ・1人あたりの売上げ(客単価)
営業データの集計・分析により、個々の店やグループ全体の成績として把握されることはもちろんですが、メニュー別に売上げの店舗間比較などを通じて、この地域は豚肉が好かれる、この地方は鍋物に人気があるなど、地域やエリアにより消費者の志向が違ってくることも研究されています。
そのようにしてフランチャイズ本部は、現在は何が消費者に好まれるか、この地方の利用客は何を求めているかなどを把握し、グループの新メニュー開発などに活用しています。
フランチャイズに加入すれば、フランチャイズ本部から、今人気がある食材や求められている料理などを提供商品のメインに置いて力を入れるよう指示・助言が出されるはずです。このため、加盟店は本部の指示を受けていれば、自動的に今の人気メニューや好かれる料理が何かを把握でき、そこにウェイトを置くことが可能となるのです。
個人で焼肉店を営業している場合は、自分の店の売上構成や人気メニューは把握することができますが、母数が多くないため、統計的な信頼性があまり高くありません。その点で、フランチャイズは全国規模の統計数値を把握できることから、今国民がどの方向を向いているか、どこに向かっているかなどを推測することが可能です。
コロナ禍に強い
焼肉店は、コロナ禍に強いメリットがあります。焼肉店は、食卓の前に強力な換気装置が備えられているため、感染予防の見地から、客が安心して来店できる業種としてコロナ禍の影響を軽微に抑えることができた経緯があります。感染予防のため外食が敬遠され、多くの飲食店が苦境に立たされた中にあって、この焼肉店特有の設備は多大の貢献をしたことになるのです。
一頃に比べ、コロナ禍は次第に収まってきましたが、まだ終わったわけではありません。今後も、再び感染の波がやってくる可能性があり、そうなれば外食を自粛する人も増えるかもしれません。その点からみても、将来的に感染拡大に怯えることなく営業ができるということは、大きな強みになるでしょう。
本部のサポートがある
フランチャイズに加入すると、本部のサポートを受けられるという大きなメリットがあります。
一般的に、飲食店経営の未経験者が焼肉店を始めることは、いかに研修や業務マニュアルなどを通じて学習や準備を行っても大変な困難を伴うことが想像でき、下手をすれば開業後間もなく倒産する事態に陥る可能性も否定できません。しかし、その難しい挑戦を可能にしてくれるのがフランチャイズであり、フランチャイズ本部のサポート力です。
焼肉店を始めるための準備や開業後に必要となる業務、営業にかかる想定外の事故やトラブルへの対処などについて、フランチャイズ本部は専門的な立場から支援を行ってくれます。具体的には、以下の事項について相談に応じ、助言・指導を行ってくれるのです。
- 資金計画の策定
- 融資の申込み
- 店舗物件探し・賃借契約
- 店舗改造工事・備品調達
- 従業員採用・教育
- 宣伝広告
- 食材仕入れ・保管
- 調理・接客
- 衛生管理・安全管理
- 収支管理
- 事故・トラブル
特に、①資金計画の策定では、加盟者が無理のない資金計画を組むことができるよう、専門的な見地からアドバイスを行ってくれます。また、③店舗物件探し・賃借契約では、フランチャイズ本部が目を付けている有望な出店候補地を中心に店舗探しに力を貸してくれます。
さらに、⑧調理・接客や⑨衛生管理・安全管理では、本部の専門スタッフであるスーパーバイザーが定期的に加盟店を巡回し、営業のやり方を実際にチェック、指導・助言を行います。
このようにして、加盟店オーナーは本部のサポートを受けながら、次第に営業に関する知識・技術・コツなどを身に付けていき、1人前になっていくのです。
焼肉フランチャイズに加入するデメリット
焼肉フランチャイズに加入するとデメリットもあるため、それもみていきましょう。
フランチャイズ関連経費がかかる
焼肉に限らず、フランチャイズに入ると、①加盟金、②保証金、③研修費、④ロイヤリティのような経費がかかります。加盟店が、フランチャイズ本部の商号やブランドを利用する対価として毎月支払うのがロイヤリティです。ロイヤリティは、毎月〇万円と固定額を支払う方式と売上額や利益額の〇%など一定の比率を支払う方式があります。
フランチャイズに入ると、このような費用を負担しなければなりません。
設備費がかかる
焼肉店を開業するには設備費がかかります。フランチャイズの中でも、設備費がかかるのが飲食店です。飲食店は、厨房に流しや作業台、冷凍・冷蔵庫、オーブン、ガスコンロなどの大型設備を備え付ける必要があります。また、客室には食卓セットや洒落た照明器具も用意することになります。このように、飲食店は他のフランチャイズ業種に比べ、設備費が多くかかる傾向がありますが、焼肉店では、さらに各食卓用に煙を逃がすための強力な換気設備も必要になります。
食中毒の危険がある
焼肉店は、食中毒が発生するリスクがあります。食中毒は、過去問題になったO157やカンピロバクターなどの病原体により発生します。主な原因は、生食肉の提供、肉の加熱不足、傷んで悪くなった肉の提供などとなっています。店側も食中毒には十分気を付けているはずですが、①肉やレバーの生食を希望する客がいる、②肉を客自身が焼くため加熱不足が生じやすい、③生肉を扱う箸で直接食べてしまう場合があるなど様々な事情があります。
食中毒の原因が店舗にあると判断された場合は、所轄の保健所により営業禁止または停止処分が下されます。客との間で損害賠償をめぐるトラブルが起きることがあり、フランチャイズブランドにも傷が付いてしまうため、甚大な損害が生じてしまいます。
風評被害を受けることがある
フランチャイズでは、風評被害を受けるデメリットがあります。フランチャイズの系列店で不祥事やトラブルなどが発生すると、それが1店舗だけの問題に止まらず、グループ全体の信用やブランドに影響する場合があります。
そのような場合は、自分の店にも影響が及ぶことがあり、それが原因で客足が遠のき売上げが減ることも想定されます。自分の店で不祥事やトラブルを起こさないよう注意することは、当然必要です。しかし、系列の他店で発生した場合に、被害を最小限に抑えるためにどのような対策があるかについては、研修やセミナーで啓発を図ってくれるよう、フランチャイズ本部に依頼するのも方法の1つでしょう。
自由な経営が難しい
フランチャイズでは、自由に経営を行うことが難しいデメリットがあります。フランチャイズ本部は、系列店の業績を上げて店舗を増やし、グループを成長・拡大させることを目的としています。
そのため、販売商品や提供サービスの質や価格を規格化し、事業の進め方も標準化しています。すなわち、系列店であれば、どこの店でも同じ値段で同じ焼肉料理を食べることができるとしているのです。また、食材保管や調理のやり方も、どこの店も同じ方法、同じ手順で行うことになっています。
したがって、焼肉フランチャイズに加入すると、提供する料理の質や値段、食材保管や調理方法など仕事の進め方について、本部が定めた内容や手順に従うことになります。自分の店だけ、メニューを特別に増やす、価格を割引く、食材の質を落とす、調理方法を変えるなどは、まず不可能であることを認識する必要があります。
フランチャイズ焼肉店を成功させる経営のポイント
それでは、フランチャイズ焼肉店を成功させるには、何が経営のポイントになるかをみていきましょう。
肉について学ぶ
まず1つ目は、何といっても「肉」について勉強することです。焼肉店を経営するためには、以下のように、肉のことを知ることが最初のステップになります。
- 牛肉、豚肉、鶏肉、猪肉、鹿肉など、それぞれの味や特徴の違いはどうか。
- 国産牛や輸入牛にはどのような種類があり、それぞれの肉はどのような味や特徴を持っているのか。
- ヒレやロースなど肉の部位は、どこの部分か。各部位は、どのような味や特徴を持っているのか。
- 肉は、さばいてから、どの位の時間寝かせて食べると美味しいのか。
- 肉は、焼き方(火加減や時間)の違いで、どう変わるか。美味しく焼くには、どうするか。
- 肉には、どのような栄養素があるか
- 食中毒を起こさないためには、どのような注意が必要か。
などについて、学習することが大切です。焼肉フランチャイズでは、加盟店は本部の工場でさばいた肉を保管し、皿に盛り付けて出すだけで、後は客が焼くからあまり本格的な調理は必要ないというところがあります。また、加盟店での調理が必要なフランチャイズでも、調理マニュアルが完備されているため、それに機械的に従えば料理を提供することは可能です。しかし、本格的な調理は必要ないといって安穏としていたり、調理マニュアルに盲目的に従うだけでは、将来的に店を流行らせることは難しいでしょう。
焼肉店の客は、当然肉好きです。それも、肉グルメや焼肉マニアなど、肉が大好きで肉の種類や調理法に大変詳しく、いわば肉にうるさい人たちが多く混じっています。そのような肉大好き人間である客たちの質問に対して、店主やスタッフが肉のことをあまり詳しく知らずに的確な返答ができなければ、店のレベルが疑われ、この客たちは今後2度と来店してくれない可能性があります。
逆に、客から問われたら、快くメニューや肉の解説をして美味しい焼き方を教えてあげれば、「この店の店主は肉をよく知っている。親切に教えてくれる」と評判になり、来客が増える可能性があります。また、店主の自分が勉強しておけば、従業員やアルバイトに適時指導することも可能になります。
利用客のニーズを取り込む
焼肉店経営の重要なポイントとして、利用客のニーズを取り込むことがあげられます。利用客のニーズといっても人により様々に異なり、またニーズは時代とともに変わっていきます。その様々に異なり時代とともに変化していくニーズを的確に捉え、それを店舗の経営や営業に取り込んでいくことが非常に大切です。厳しい競争を勝ち抜いて生き残っている飲食店は、どこも一般消費者のニーズを敏感に捉え、商売に反映させてきています。
一般消費者のニーズといえば、つい最近まではコロナ禍の影響で、外食ではなく自宅で美味しい料理が食べたいという人が多かったことから、宅配や持ち帰りの販売形態が普及しました。苦境に立った飲食店の中で、宅配や持ち帰りの業態を取り入れて、経営不振を乗り越えた店も多かったはずです。コロナ禍は未だ収まっておらず、この先も続く可能性があるため、今後も宅配や持ち帰りは利用客の大きなニーズとしてあり続けると想定されます。
また、近年では、自分だけで食事する「1人焼肉」のニーズが高まっており、焼肉店の中には、1人焼肉の専用ブースを備えているところもあります。単身世帯の比率が増えていることから、今後も1人焼肉のニーズは増えることはあるものの、減ることはないといえるでしょう。
さらに、最近は女性客が増えていることから、色とりどりの種類豊富な野菜を付け合わせたヘルシー志向の焼肉に対するニーズも今後さらに高まっていくでしょう。その他、国産高級肉に対するニーズやリーズナブルな価格で提供する焼肉への人気も衰える気配はありませんが、今後は、食材や料理の内容・質、提供価格、店の雰囲気など、様々な面で新しいニーズが生じてくることも予想されることから、それを経営にうまく取り込んでいくことが、事業成否の別れ道になるのではないでしょうか。
この一般消費者や利用客のニーズを把握し事業に反映させていくのは、本来はフランチャイズ本部の役割です。事業に利用客のニーズを取り込むといっても、加盟店が自由にできる範囲とできない部分とがあります。店の雰囲気などは加盟店の裁量である程度変えていくことができますが、事業の業態や焼肉の食材・メニュー・提供価格などは、加盟店が勝手に変更できないものです。
したがって、加盟店の裁量で自由に変えることができない事業の業態や焼肉の食材・メニュー・提供価格などについては、消費者や利用客のニーズを把握し事業に反映させることに力を入れているフランチャイズを選ぶことが最善の策になります。一方で、加盟店の裁量で自由にできる範囲については、営業の中で可能な限り利用客のニーズを取り込むよう工夫ができるでしょう。
サイドメニューを充実させる
サイドメニューを充実させることも重要なポイントです。サイドメニューを決めるのはフランチャイズ本部の役割であるため、このポイントも、サイドメニューが充実しているフランチャイズを選ぶという方法になります。
焼肉店にとって、サイドメニューは大変重要です。焼肉店に行くといっても、ほとんどの人が肉ばかり食べたいというわけではありません。また、同じ肉でも、焼肉だけを食べたいわけではなく、肉を使ったほかの料理も欲しいという人もいます。
焼肉店のサイドメニューは、フランチャイズによって様々に異なりますが、例えば、すき焼やしゃぶしゃぶなどの鍋料理、唐揚げやカキフライなどの揚げ物、ラーメンなどの麺類、野菜サラダや果物、スイーツなどを提供しているところもあります。飲み物も重要なメニューで、特に酒類は大変人気があります。
サイドメニューは、種類が多ければ多い程良いというわけではありません。しかし、フランチャイズの回転寿司店などでは、寿司とはあまり関係がない麺類や丼ものなど幅広い種類を提供しています。このことからも、嗜好の多様化にある程度対応がとれる程度のサイドメニューは必要ではないでしょうか。
良い場所に出店する
飲食店では、良い場所に出店することが事業を成功させる大きなポイントになります。立地が良い飲食店は、あまり宣伝に苦労しなくても客が集まってきます。逆に、立地が良くない店は、苦労してPRを行っても人がやってきません。良い場所に出店できるかどうかで、開業後の集客や経営状態、営業の苦労などが大きく違ってくるのです。
焼肉店で立地が良い場所は、以下のとおりです。
①大都市の繁華街 | 繁華街に店があれば、買物客が立ち寄ることができ、通勤帰りの会社員や学生の飲み会にも利用されます。 |
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②大都市のビジネス街 | ビジネス街に出店すれば、職場の飲み会や食事会、商談を兼ねた懇親会などに利用されます。 |
③街道沿い | 街道沿いは、休日は行楽客、平日は運転手や出張者などが車で立ち寄ることができます。 |
④ショッピングセンターなどの商業施設の一角 | 商業施設にあれば、休日を中心に買物に来た家族連れなどで賑わいます。 |
焼肉店をはじめるなら、上記のような好立地の場所に出店したいものですが、条件の良いエリアは競争も激しく、空き家がすぐに埋まってしまいます。個人の素人が独力で好立地の貸店舗を探そうとしても、なかなか簡単にはいかないでしょう。
そのため、効率的に店舗を探すには、フランチャイズ本部のサポートを受けるのがベストな方法です。フランチャイズ本部は、加盟店を出店させた豊富な経験を持っているので、その力を利用しない手はありません。
フランチャイズ本部は、日頃から商圏調査を行っており、加盟店を出店する場合の候補地を把握しています。加盟店が出店して有利と判断される場所であれば、貸店舗の情報なども入手している可能性があります。フランチャイズに加盟する際は、立地の良い場所に店舗を探してくれることを条件に提示する方法もあります。
開業費用を抑える
開業費用を抑えることも、非常に重要なポイントです。開業費用を抑えることがなぜ重要かというと、開業後の資金繰りに影響するからです。開業費用が多額にかかると自己資金だけで開業することが難しく、金融機関からお金を借りる必要が生じてしまいます。金融機関から融資を受けると、開業後に毎月借入金を返済していかなければなりません。
店舗に客が集まり料理が順調に売れ、業績が安定していれば借入金の返済もスムーズに続けることができますが、売上げが伸びずに経営が振るわなければ、運転資金の捻出に苦労することになります。
運転資金は、家賃・食材の仕入代・人件費・光熱水費など加盟店の営業を行うための費用を賄うためのお金で、通常は、店舗の売上金から捻出します。しかし、売上げが振るわなければ、売上金から運転資金を差し引いた残りが余らなくなってしまいます(不足で赤字になる場合もあります)。そうすると、金融機関に返すお金を捻出することができなくなってしまうのです。
このことからも、事業は常に最悪の事態を想定し準備を行う必要があります。開業後に売上げが不振でも何とか返済していけるよう、
ことが必要なのです。
開業費用を抑えるには、以下の方法が効果的です。
①小規模店で始める | 初めから大規模店を出すのではなく、小規模店で始めれば、店舗改造費、家賃、人件費などを圧縮できます。 |
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②従前が飲食店だった店舗を居抜きで借りる | 以前に飲食店を営業していた店舗を、設備・備品付きでそのまま借りることができれば、店舗改造費、備品購入費などを大幅に節約できます。 |
③従前が飲食店だった店舗を借りる | 居抜きでなくても、従前が飲食店だった店舗を借りることができれば、店舗改造費を圧縮できます。 |
食中毒を予防する
焼肉店を経営する重要なポイントの1つに、食中毒の予防があります。食中毒が発生すると、店舗だけの損害に止まらず、フランチャイズグループ全体に多大な迷惑をかける事態になってしまいます。食中毒を予防することは、事業が大きなダメージを受けるリスクを抑えることを意味します。
絶対に食中毒を発生させないという覚悟と取組みが非常に重要ですが、そのためには日頃から衛生管理を徹底することが求められます。衛生管理の具体例としては、以下のことをあげることができます。
①食材保管
食材の保管温度を適切に保つように管理します。
食材が古くなり過ぎないよう管理します。
②調理・提供
現在は、牛レバーや豚の肉・内臓・レバーなどを生食用として提供・販売することは禁止されています。したがって、客が生食を希望しても、ルールをしっかりと守ることが肝心です。
〇生肉を扱った箸・トングで食事をしない
肉の焼き方や箸・トングの使い分けについて、店舗スタッフが客を指導できるような体制を整えます。
生肉を扱った調理器具を野菜など他の食材に用いないように徹底します。
③洗浄・除菌・清掃
〇調理器具を洗浄・除菌する
〇清掃の手順を定めしっかり守る
毎日清掃を行う箇所や手順を定め、それを守ることを徹底します。
清潔感を与える
客に清潔感を与えることは、重要なポイントです。飲食店は客が料理を口に入れる場所であるため、店の清潔感が何よりも大切です。特に、近年は気軽に焼肉を食べる若い女性も増えていることから、清潔感があるかないかは店の評判に直結します。店舗に清潔感を醸し出すためには、以下のような取組が重要です。
①施設・設備
施設・設備はしっかりと清掃し、必要な個所は消毒を行います。焼肉店は、煙や油などで施設内が汚れやすいため、こまめな清掃と消毒が効果的です。客の視線に晒されるカウンターやテーブルが油で汚れていると、店全体のイメージが悪くなってしまいます。
②従業員
従業員は、身なりを綺麗にして清潔感を保つように努めます。ボサボサに伸びた髪や汚れた爪など、体の手入れを怠っていると不潔に見られてしまいます。また、体の手入れをきちんとしていても、制服が汚れたままだと清潔感は保てません。
防火対策に力を入れる
防火対策に力を入れることも重要なポイントです。焼肉店では、食中毒と並び火災を防ぐことが何よりも大切です。火災が発生してしまうと、自店の従業員や施設・設備の安全が脅かされるだけでなく、近隣の他店や住居にも被害が及ぶ可能性があります。このためにも、日頃から防火対策に力を入れて取り組む必要があります。
具体的には、①従業員に対する防火教育や消防訓練を実施する、②ロースターの清掃・点検をこまめに行うことが重要です。
特に、近年焼肉店では無煙ロースターの火災が多く発生しています。無煙ロースターは余分な煙が出ないということで、導入している焼肉店が多くみられます。この無煙ロースターの排気ダクトに火が付いた肉片が吸い込まれ、ダクト内の油が発火することで火災が発生する例が増えています。
予防対策として、ロースターや排気ダクトの清掃・点検を定期的に行うことが肝心です。
フランチャイズ焼肉店を始める手順
それでは、フランチャイズ焼肉店を始めるには、どのような手順を踏むのかをみていきましょう。
情報収集を行う
フランチャイズ焼肉店を始めるには、まず情報収集を行うことが必要です。ネットで焼肉フランチャイズの加盟店募集の各サイトを閲覧し、フランチャイズの概要や経営方針、加盟店の開業費用や開業後の収支目安などの情報を収集、それを一覧にします。集めた情報を比較して、目星を付けたフランチャイズをいくつか絞り込んでいきます。
次に、絞り込んだフランチャイズに資料を請求します。通常、加盟店募集のサイトに、「資料請求」というボタンがあるので、そこをクリックし、氏名や連絡先など必要事項を登録すれば請求することができます。
請求した資料を読んだら、最終的に加盟候補のフランチャイズを選び、説明会に参加してみます。説明会では、全体説明の後、開業に向けた手順などの個別相談もできます。開業費用を自己資金で賄えなければ、金融機関から融資を受ける準備も必要となりますが、個別相談では資金的な相談にも応じてくれます。
なお、個別相談に参加しても、気に入らなければ断ることができるので、臆する必要はありません。
フランチャイズ契約を結ぶ
加盟するフランチャイズが決まり、開業資金の目途もできたら、次はフランチャイズ契約の締結に進みます。通常、フランチャイズ契約書はフランチャイズ本部が用意したひな型を使用します。契約書にサインする前に、各条項を十分に確認する必要があります。疑問点は徹底的に質問して、納得した上で契約を結びます。
店舗物件を探し契約する
フランチャイズ契約を結んだら、次は、店舗物件探しに移ります。焼肉店は、店舗の立地が業績に大きく影響するため、良い場所に物件を探します。個人だけの力で良い物件を探そうとしても限界があるため、フランチャイズ本部にサポートを要請します。
フランチャイズ本部は、長年の経験から、どのような場所に店を開くと繁盛するかを熟知しており、企業のネットワークを使い良い物件を探すことができるため、その力を利用することが大切です。良い物件が見つかったら賃貸借契約を結び、開業の準備に入ります。
行政に届出を行う
焼肉店を営業するためには、行政に各種の届出を行う必要があります。
①飲食店営業許可の取得
飲食店営業許可は、飲食店を営業する場合に受けなければならない許可で、無許可で営業すると2年以下の懲役または200万円以下の罰金が課されてしまいます。店舗の所在地を管轄する保健所に申請し、検査を受けて合格すれば許可を取得することができます。
ここで注意を要するのは、保健所に事前相談を行っておくことです。店舗の工事が完了した後で指摘を受けると、設計や施工のやり直しになってしまうことがあるため、工事を行う前に図面を持参して相談するのが安全です。事前相談で特に問題がなければ工事を施工し、工事終了時点で営業許可の申請を提出します。検査を受けて合格すれば、飲食店営業許可証が交付されます。
②食品衛生責任者の配置
食品衛生責任者とは食品衛生の管理を行う責任者で、食材の保管や加熱を確認し食中毒の防止を図るなどの使命を負っています。飲食店営業許可を取得するためには、この食品衛生責任者を1人以上店舗に配置しなければならないこととされています。この資格は、地方自治体が主催する講習会を受講し、保健所に申請すれば取得できます。
③防火管理者の選任
収容人数30人以上の店舗は、防火管理者を選任することとされています。延べ床面積が300㎡以上は甲種防火管理者、300㎡未満は乙種防火管理者を選任することになっています。
防火管理者を選任したら、営業開始前に、店舗の所在地を管轄する消防署に防火管理者選任届を提出する必要があります。防火管理者の資格は、消防署などが主催する講習会を受講して取得します。
④消防用設備・防火対象物・火を使用する設備の届出
消防設備を設置した場合に「消防用設備設置届出書」を所轄の消防署に提出することとされています。
また、飲食店を開業する際は、消防設備等が基準に従って設置されているかを確認する「防火対象物使用開始届出書」を所轄の消防署に提出する必要があります。なお、店舗の改造や間仕切りを変える場合は、「防火対象物工事等計画届出書」を提出します。
さらに、火災を発生させる恐れがある設備や出力が大きい設備を導入する場合は、「火を使用する設備の設置届出書」を所轄の消防署に提出することとされています。
店舗工事・備品購入を行う
店舗物件を借り保健所への事前相談を済ませたら、焼肉店を営業できるよう店舗の内外装工事を施工します。内装工事では、厨房に使う部屋の電気・ガス・上下水道・防水工事などを行います。また、客室にはカウンターを設置します。外装工事では、焼肉店としての外観を保つため、破損個所の手直しや看板の設置を行います。従前飲食店を営業していた物件を借りることができれば、厨房や客室の工事費用を大幅に圧縮することができます。
また、店舗工事が終了したら、備品を購入して店内に備え付けます。焼肉店の備品は、厨房用の流し・作業台・冷凍庫・冷蔵庫・コンロ台など、客室用の食卓セット、食卓用の換気設備、照明器具、エアコンなど費用がかかるものが多くを占めています。経費節約のためにも、できるだけ中古品やレンタル品で間に合わせるよう工夫するとよいでしょう。
スタッフの採用と店舗のPRを行う
開業予定日が近くなってくると、アルバイトなどの店舗スタッフの採用も行う必要があります。最近は人手不足で、地域によってはアルバイトの確保が難しい場合もあるため、余裕を持った日程で事務を進めましょう。
また、並行して店舗の宣伝広告も行います。フランチャイズ自体の宣伝は本部が行っているので、加盟店は自店のPRを進めます。方法は、経費がかからないネットやSNSを使った宣伝を主体にし、予算に余裕があれば、近隣地域にチラシを配布するなどがよいでしょう。
研修を受け開業する
店舗の改造や備品の搬入が終わったら、フランチャイズ本部が主催する研修を受講し、事業にかかる知識・技術の習得に努めます。併せて、本部から提供される業務マニュアルを使って、営業のやり方も身に付ける必要があります。店舗スタッフを採用する場合は、並行してスタッフの教育も進める必要があります。
開業前の学習は、店舗を無事にオープンさせスムーズに軌道に乗せるために非常に重要な手順です。気を抜かないようにして、出来る限りの知識・技術・ノウハウをマスターすることが重要です。
以上の準備を整え、開業予定日に店をオープンさせることになります。多くのフランチャイズでは、開業日には本部から応援のスタッフが来て、サポートを行ってくれます。
まとめ
焼肉フランチャイズに加入するメリットは、本部のサポートを受け、フランチャイズの有名な商号・ブランドを利用することで未経験者でも開業ができることです。つまり、個人で開業するのに比べて有利に始められるため、未経験や初心者でも参入しやすいという利点があります。
一方、焼肉フランチャイズのデメリットは、厨房設備や換気設備をはじめとする設備費がかかる、食中毒のリスクがあるなど、重く受け止めないといけない等があります。
フランチャイズ焼肉店を成功させる経営のポイントは複数ありますが、①肉について学ぶ、良い場所に出店する、サイドメニューを充実させる、清潔感を与えるなど、利用客のニーズに応えること、②食中毒を予防する、防火対策に力を入れるなど、衛生管理や安全管理を徹底すること、③開業費用を抑えることで、資金的な破綻を防止すること等が挙げられるので、ぜひ検討してみてください。