クリーニングのフランチャイズに加入するメリット・デメリット、手順、ポイントとは?

フランチャイズの業種で、代表的なものにクリーニング業があります。クリーニングのフランチャイズは、利用客の洗濯物を本部が提携している工場に取り次ぎ、店では洗濯物の受け渡しや保管だけを行う営業形態が一般的です。店でクリーニング作業を行わないことから設備費用がかからず、クリーニング技術も必要がないため、未経験者でも始めることができる有力な候補になっています。

今回の記事では、クリーニングのフランチャイズに加入するメリットやデメリット、始める手順やポイントなどを解説しています。フランチャイズで独立・開業を考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。

クリーニングのフランチャイズとは

クリーニングのフランチャイズとは

クリーニングフランチャイズを説明する前に、クリーニング店にはどのような業態があるかを確認しましょう。街で営業しているクリーニング店は、おもに以下の3種類に分けられます。

①一般クリーニング店

自分の店でクリーニング作業を行う業態です。すなわち、利用客から洗濯物を預ってクリーニングをして返す一連の業務をすべて自分の店で行います。そのため、クリーニング作業を行うための設備(水洗機、乾燥機、プレス機、染み抜き機、包装機、アイロン仕上げ台、搬送コンベアーなど)を導入する必要があります。

これらの機械はどれも高価で、1台あたり100~200万円かかります。店舗物件取得費や内外装費も含めると、一般クリーニング店を開業するには、1,000~2,000万円程度の開業資金が必要です。また、店に対しては、クリーニング作業を行うための技術が求められるとともに、国家資格であるクリーニング師を配置することが義務付けられています。

②取次店

洗濯物の受け渡しだけを行い、クリーニング作業は提携先の工場に任せる形態の店です。クリーニング作業を行わないため、機械設備の導入やクリーニング技術、クリーニング師の配置は必要ありません。

③無店舗取次店

店舗を持たず、車両を店舗化した取次店です。ネットでクリーニングの受付を行い、洗濯物の宅配サービスを行います。

クリーニングのフランチャイズとは、フランチャイズに加盟してクリーニング店を営業する事業形態です。クリーニングのフランチャイズは、上で説明した業態のうち、主に②取次店、③無店舗取次店の業態になります。すなわち、クリーニングのフランチャイズは、店舗で洗濯物の受け渡しのみを行い、クリーニング作業はフランチャイズ本部が提携している工場で行う形態が一般的です。

クリーニングフランチャイズに加入するメリット

クリーニングフランチャイズに加入するメリット

それでは、クリーニングフランチャイズに加入すると、どのようなメリットがあるかを確認してみましょう。

クリーニングフランチャイズに加入するメリット7つ

初期費用が安い

クリーニングフランチャイズで開業すると、初期費用が安く済むメリットがあります。一般のクリーニング店を始めようとすると、洗濯機や乾燥機、プレス機など高額な設備を導入する必要があるため、店舗物件取得費も含めると1,000~2,000万円の初期費用がかかります。それに対しクリーニングフランチャイズは、ほとんどが取次店または無店舗取次店の事業形態であるため、クリーニング作業用の設備を導入する必要がありません。

一般的な取次店の場合、加盟するフランチャイズにもよりますが、200~300万円程度の初期費用で開業することができます。

技術が不要

クリーニングフランチャイズは、洗濯物のクリーニング作業を自店で行わないため、クリーニングの技術を身に付ける必要がありません。一口にクリーニングといっても、衣類や汚れの種類に応じて洗濯の方法が異なります。クリーニング作業には、次の4種類の方法があるのです。

①ドライクリーニング

水ではなく、特殊な溶剤を使って洗う方法です。衣類には、水洗いすると色落ちする、縮むなどで水洗いに適さないものがあります。その場合、特殊な溶剤を使うドライクリーニングを行います。また、水洗いでは落ちない油汚れなどもドライクリーニングが適しています。

②ウェットクリーニング

水洗いする方法です。水で落ちる汚れの場合は、このウェットクリーニングで水洗いします。ただし、水洗いといっても、工場で行うウェットクリーニングは、専用の洗濯機や特殊な洗剤・保護剤などを使うため、家庭で同じようにはできません。

③ランドリー

強力な洗濯機を使い、大量の温水で洗濯する方法です。水洗いに対し耐久性がある衣類などは、ランドリーで汚れを落とします。

④特殊クリーニング

普通の方法ではクリーニングができない場合、特殊クリーニングを行います。普通のやり方で洗うことができない革製品や毛皮製品、和服、カーペットなどが対象になります。

このようにクリーニング工場では、衣料や汚れの種類に応じてクリーニングの方法を変えています。このことからも、一通りのクリーニング技術をマスターしようとすると簡単ではありません。クリーニングフランチャイズでは、クリーニング作業はフランチャイズ本部が提携する工場で行うため、加盟店が難しい技術を身に付ける必要がありません。

資格が不要

クリーニングフランチャイズを始めるのに、特別な資格は必要ありません。クリーニング業法では、洗濯物の受取・引渡のみを行うものを除き、クリーニング所に国家資格であるクリーニング師を配置しなければならないと定められています。

すなわち、洗濯物の受取・引渡のみを行う取次店にはその必要がないが、クリーニング作業を行う一般クリーニング店には、クリーニング師を配置しなければならないということです。

国家資格であるクリーニング師になるためには、都道府県知事が行うクリーニング師試験に合格し、免許の交付を受ける必要があります。試験は、衛生法規や公衆衛生に関する知識、洗濯物の処理に関する知識および技術などの科目について行われます。

クリーニングフランチャイズは、取次店の業態が中心であることから、クリーニング師を配置する必要がありません。

商標を利用できる

フランチャイズに加盟すると、フランチャイズの商標やブランドを利用することができます。どのような事業でも、会社名や商号が世間に周知されるには、一定の時間と企業努力が必要です。長い期間をかけて、良質の商品やサービスを提供し続けることにより、会社名や商号が世間に認められ、提供商品やサービスにブランド価値が生じてくるのです。

会社や商号が社会から信頼され、提供商品やサービスにブランド価値が出てくると、安定した事業運営や事業拡大が期待できるようになります。

フランチャイズ企業は、これまでに企業努力を積み重ねてきたことにより、その商標やブランドが世間に周知され、一定の評価を得ています。クリーニングフランチャイズに加盟すると、事業のスタート時から、このフランチャイズの商標やブランドを利用することができます。自分のクリーニング店に、フランチャイズの商標名や商号を掲げることで、一般の消費者は、「あの会社が扱っているから安全だ」、「あの有名企業の製品だから間違いない」と信頼や安心感を持ってくれるのです。

このように、フランチャイズの看板を掲げるということは、個人の力では短期間でどうしようもできない消費者からの信頼や評価を貰えます。

営業方法を教えてくれる

フランチャイズに加盟すると、営業のやり方を教えてもらえるメリットがあります。未経験者が事業を始める際に、最も苦労することの1つが営業方法です。個人で開業する場合は、基本的に独学で営業方法を学習し、実践していかなければなりません。仮に、学習した営業方法で上手くいかない場合でも、どこにも相談できる相手はいません。そのような時は、試行錯誤を繰り返しながら営業方法の改善を試み、手探りで事業を進めることになってしまいます。

クリーニングフランチャイズに加盟すれば、営業のやり方を体系的にまとめた業務執行マニュアルを提供してくれます。マニュアルは、それに従って進めていけば誰でも行えるように作られているため、未経験者でも事業を始めることができます。

また、フランチャイズでは、開業前に本部で研修を行い、事業にかかる知識や技術を教えてくれます。研修の内容や期間は、業種やフランチャイズによって異なりますが、未経験者でも一定の知識・技術を身に付けて開業できる水準となっています。

このように、フランチャイズでは、その分野の初心者や未経験者でも事業を始めることができるような教育システムを採用しています。

集客力がある

フランチャイズで事業を始めると、集客面で有利な営業ができます。すでに説明したように、フランチャイズは長い期間かけて培った世間からの信頼や評価を持っています。そのため、フランチャイズの看板を掲げて営業を行うと、集客面で有利な営業ができます。

また、フランチャイズは、豊富な資金力を背景に、様々な宣伝広告を行っています。新聞、テレビ、雑誌、折込みチラシなど、個人で行おうとすると多額の費用がかかる媒体も使ってPRを行っています。

フランチャイズに加盟することは、そのフランチャイズの集客力も自動的に利用することができるということなのです。

本部のサポートがある

フランチャイズに加盟すると、本部からのサポートを受けることができます。フランチャイズでは、加盟店の開業前にオーナーに対して研修を行い、また、営業のやり方をまとめた業務遂行マニュアルを提供してくれます。

また、実際に開業した後は、営業の専門スタッフであるスーパーバイザーが定期的に店舗を巡回し、営業の指導・助言を行ってくれます。

このように、フランチャイズ本部は加盟店の事業が早く軌道に乗るよういろいろな支援を行ってくれますが、加盟店が日々事業を進める中では、以下のように実に様々な問題が降りかかってきます。

  1. 客が集まらない、売上げが伸びない
  2. 必要経費がかかり過ぎる
  3. アルバイトが確保できない
  4. 客の衣料を毀損・紛失してしまった
  5. 洗濯物を受け取りに来ない客がいる
  6. クリーニング料金が高過ぎる、閉店時間が早過ぎるとクレームをつけられる
  7. 客とトラブルになった

このような様々な問題を放っておくと、取り返しがつかない大きなトラブルや訴訟などに発展してしまうこともあるため、早急な対応が必要です。フランチャイズでは、このような場合に本部の専門家が相談に応じてくれ、指導・助言を与えてくれます。

クリーニングフランチャイズに加入するデメリット

クリーニングフランチャイズに加入するデメリット

クリーニングフランチャイズに加入するとデメリットもあるため、次はその点をみていきましょう。

成長分野ではない

1つ目のデメリットは、クリーニング業界が成長産業ではないことです。クリーニング業界が成長産業でなくなったのは、次の理由から、以前と比べてクリーニングの利用が減ってきているためです。

①安い衣料品を使い捨てる

昔は衣料品が高価で、1度買ったら比較的長く使う傾向にありました。そのため、定期的にクリーニングに出して大切に保存していたものです。しかし、近年は機能的な衣料品が手頃な価格で手に入れられるようになり、1シーズンで使い捨て、また新しい物を安く買うという人が増えています。このように安い物を使い捨てる風潮が広まると、こまめにクリーニングに出す人は減っていきます

②自宅で洗濯する

高価な衣料品は、縮みや色落ちなどを避けるため、プロであるクリーニング店に出す傾向があります。しかし、近年は衣料品が安く手に入るようになったため、縮みや色落ちなどを心配せず(縮みや色落ちしたら、また安く買えばよいと考える)、自宅の洗濯機で洗う人が増えています

このようにクリーニングの利用者が減ってきたのに応じて、クリーニング店も減っています。下表は、厚生労働省が公表しているクリーニング店の総数、および一般店、取次店の内訳です。

【クリーニング店数の推移】

区分 総数 一般施設 取次所
1980年 112,815 58,287 54,528
1990年 155,786 53,980 101,806
2000年 163,027 47,324 115,703
2010年 133,198 37,393 95,805
2020年 86,043 24,727 61,316
2022年 77,999 22,580 55,419

資料出所:厚生労働省衛生行政報告例

この資料によると、クリーニング店の総数は2000年に163,027店ありましたが、2022年には半分以下の77,999店に減っています。また、一般店は、1980年に58,287店あったのが、2022年にはやはり半分以下の22,580店に減っています。取次店は、2000年頃までは増える傾向にありましたが、その後はやはり減少傾向となっています。

このように、クリーニングの利用が減るにつれて、クリーニング店の数も減ってきており、クリーニング業界は成長産業とはいえない状況になっています。このため、これから先クリーニング店に利用客が押し寄せ、売上げが飛躍的に伸びるというような展望は持てませんが、逆にあまり悲観的になる必要もありません。

なぜなら、ある程度利用が減ってきているものの、クリーニングは人々が生活していく上で必要不可欠のサービスであるため、今後も底堅い需要はなくならないと想定されるからです。

また、クリーニングの利用とクリーニング店の数双方が減っているということは、わかりやすく言うと、「少なくなったパイを少人数で取り合う」ということです。利用客が減るにつれて、同業の店も減っているため、1店舗あたりの売上げは確保できる期待が持てそうです。

加盟金・保証金がかかる

フランチャイズに加盟すると、加盟金や保証金をフランチャイズ本部に払うことになります。加盟金は、フランチャイズに加盟する際に支払う金銭で、保証金は、加盟後に加盟店が本部に負債を負った場合、それを清算するために預ける金銭です。加盟金、保証金ともに、フランチャイズによってその金額が異なり、またそれらが無料のフランチャイズもありますが、クリーニングフランチャイズの相場は、加盟金と保証金を合わせて10~20万円程度となっています。

加盟金や保証金は、当初の開業費用に上乗せされる形でかかるお金であることから、その金額次第では、加盟者の大きな負担になってしまいます。

ロイヤリティがかかる

フランチャイズへの加盟時に加盟金や保証金がかかりますが、加盟した後は毎月ロイヤリティを払うことになります。

ロイヤリティは商標使用料といい、フランチャイズの商標やブランドを利用する対価としてフランチャイズ本部に支払う金銭です。その金額は、フランチャイズにより異なりますが、一般的には、毎月一定の金額を支払う方法と売上げや利益の一定割合を支払う方法とがあります。

ロイヤリティを無料にしているフランチャイズもありますが、クリーニングフランチャイズの相場は、売上額の20~30%程度となっています。

ロイヤリティの支払いは、店舗経営が順調であれば問題ありませんが、経営が軌道に乗る前や借入金返済が多額の場合などは、加盟者の負担となってしまいます。

契約の縛りがある

フランチャイズに加盟すると、契約の縛りを受けることになります。フランチャイズ契約では、〇年などの契約期間が定められており、その契約期間中は、契約当事者である加盟店とフランチャイズ本部双方は、契約内容を遵守する義務を負います。すなわち、仮に契約期間が5年間であれば、契約当事者双方は、5年の間は契約書に定められた内容を守らなければなりません。

また、契約当事者は、契約期間である5年間も勝手に縮めることはできません。例えば、「店の経営がうまくいかないので辞めます」と、加盟店が2年間で廃業しようとしても、契約相手であるフランチャイズ本部が同意しなければ辞めることはできません。強引に辞めれば、フランチャイズ本部が被る損害の賠償を請求される可能性があります。

フランチャイズ契約には、契約期間の途中で解約する場合に、契約当事者の一方が解約を申し入れた際は契約相手が同意すれば解約することができるなどの取扱いが定められるケースがあります。その場合は、契約書に定められた中途解約の取扱いに従って解約手続きを進めることになります。

しかし、契約期間の途中での解約について、契約書に取扱いが何も定められていない場合もあり、その時は、契約当事者双方の話合いによってどうするかを決めることになります。

いずれにしても、フランチャイズ契約を締結したら、契約当事者は、契約書に定められた契約期間中は契約内容を守る義務が生じ、契約期間の途中で辞めたい場合は契約相手の同意を得なければならないことになります。

本部の経営方針に逆らえない

フランチャイズに加盟すると、フランチャイズ本部の経営方針に従うことになります。フランチャイズには、それぞれの経営方針や事業戦略があります。フランチャイズの目的は、系列店の売上げや利益を伸ばし、グループ全体を成長・拡大させることです。このグループ全体を成長・拡大させる目的を達成するため、経営方針や事業戦略を定め、系列店が歩調を合わせて営業を行っているのです。

そのような中で、加盟店1店だけが経営方針に従わず、自由な営業方法を採用することはできません。例えば、フランチャイズ本部が定めた料金価格を守らず、加盟店の判断で安い価格設定を行うことは困難です。それを認めてしまうと、同じ系列店でありながら、同一のサービスに対する価格がバラバラになってしまうためです。

「自分は他人の指示を受けたくない」「自分の思うとおりに経営したい」という方は、フランチャイズには向いていない場合もあるでしょう。

クリーニングフランチャイズを始める手順

クリーニングフランチャイズを始める手順

次に、クリーニングフランチャイズを始める手順を確認してきましょう。

フランチャイズの選定・契約の締結

クリーニングフランチャイズを始める手順は、加盟するフランチャイズを選定することから始まります。フランチャイズを選定するには、次のステップで進めます。

①ネットでフランチャイズの情報を集める

ネットで、複数のフランチャイズについて、加盟店募集などのページを中心に情報を収集します。

②ネットだけでわからない情報は、本部に資料請求する

ネットだけでは、自分が欲しい情報が100%収集できるとは限りません。ネットに掲載されていない情報は、フランチャイズ本部に資料請求します。特に必要な情報は、フランチャイズの業態(一般クリーニング店、取次店、無店舗取次店など)、開業費用(加盟金、保証金、店舗取得費、店舗工事費など)、開業後の収益モデル(売上額、ロイヤリティ、必要経費、営業利益など)、出店場所(どのような場所に出店できるか、本部で店舗物件を探してくれるか)などです。

クリーニングフランチャイズの業態の中で、一般クリーニング店は設備費がかかり開業するには1,000~2,000万円程度の資金が必要です。取次店や無店舗取次店のフランチャイズであれば、設備費がかからず比較的少額で開業が可能です。

③フランチャイズの説明会に参加する

収集情報を吟味して、加盟候補のフランチャイズを絞り込んだら、説明会に参加してみます。説明会では、資料ではわからない事項の説明などを聞くことができます。目を付けたフランチャイズがあれば、個別相談会にも参加します。個別相談では、加盟や開業に向けての具体的な説明や相談が中心になります。個別相談に参加しても、納得できない点があれば加盟を断って引き返すことができます。

④契約の締結

加盟するフランチャイズが決まれば、フランチャイズ契約の締結に進みます。フランチャイズ契約書は、通常、フランチャイズ本部の方で書式を用意しています。契約にあたっては、契約書の条項によく目を通し、疑問点があれば納得できるまで説明してもらうことが肝心です。フランチャイズ本部の言うことを真に受けて、契約書にあまり目を通さずにサインしたばかりに、後で話が違うなどのトラブルが起きることもあるためです。

フランチャイズ契約書にサインすると、契約当事者である加盟者と本部は、以降契約内容を遵守する義務を負うことになります。

開業資金の調達

加盟するフランチャイズを選定し、フランチャイズ契約を締結したら、開業資金を調達しなければなりません。一般的に、クリーニングフランチャイズを始めるには、以下の開業費用がかかります。

クリーニングフランチャイズの開業費用

①加盟金・保証金

加盟金は、フランチャイズに加盟する際にフランチャイズ本部に支払うお金です。保証金は、加盟後に加盟店が本部に対して負債を負った場合に、それを清算するために預けるお金です。

加盟金、保証金ともにフランチャイズでその金額が異なり、0円としているところもあります。クリーニングフランチャイズの一般的な相場は、加盟金と保証金を合わせて10~20万円程度です。

②店舗物件取得費

店舗物件を購入または賃借するための費用です。購入よりも賃借する方が安く済みますが、契約時に敷金、礼金、当初数月分の家賃などが必要となります。

③店舗内外装工事費

店舗の内装や外装、看板の工事費です。クリーニング店は、飲食店などとは異なり最低限の施工でよいため、比較的安く済みます。

④備品・消耗品取得費

取次店の主要な備品は、カウンター、レジ、商品棚、ポール、ハンガーなどで、あまり高価な備品は必要ありません。

⑤広告宣伝費

店舗の宣伝費用です。開業資金に余裕があれば、チラシを作成して近隣に配布すれば効果があります。

開業時には、上記の開業資金に若干の運転資金予備を加えた資金を用意しておきます。自己資金で不足する場合は、金融機関から借り入れる必要があるため、融資の申込みを行います。

店舗物件の選定

店舗物件を探して決定します。フランチャイズによっては、立地の良い物件を本部の方で探してくれる場合もあります。クリーニング業では店の立地が非常に重要です。良い場所に立地している店は利用客が多く訪れ繁盛しますが、立地場所が悪いと集客に苦労します。そのため、店舗物件はフランチャイズ本部の組織やネットワークの力を借りながら、少しでも立地の良い場所に探すことが肝心です。

保健所への事前相談・届出

店舗が決まったら、内外装の工事を施工しますが、その前に、所管保健所に事前相談に行くことをおすすめします。所管保健所は、店舗の所在地を管轄する保健所となります。クリーニング店は、法令により施設・設備や衛生管理の基準を満たすことが求められるため、店舗内外装工事を施工する前に、建物の平面図などを持参して保健所に相談します。

保健所に事前相談を行なったら、その指導・助言内容を踏まえ、クリーニング店の開設届を提出します。取次店の場合は、次の書類を提出する必要があります。

  1. 開設届
  2. 構造設備の概要
  3. 施設の平面図、付近の見取図
  4. 開設者が法人の場合は、法人の登記事項証明書(6か月以内・原本提示)
  5. 検査手数料24,000円

店舗内外装の施工、保健所の検査

店舗内外装の工事内容は、保健所からの指導・助言に従って決定します。店の内装は、飲食店のように洒落た雰囲気に仕上げる必要はありません。洗濯物の保管と受け渡しができるようシンプルな造りで十分です。

店舗の工事が終了したら、保健所の検査があります。検査は、保健所の職員が設備基準等に適合しているかを確認するものです。この検査に合格し、保健所長の確認を得ると(確認証は後日交付)クリーニング店を開店することができます。

店舗用備品の準備、研修の受講

店舗の内外装の工事が完了したら、店舗用備品を購入して運び込みます。フランチャイズクリーニングの取次店は、洗濯物の受け渡し用カウンターにレジを設置し、商品棚、ポール、ハンガーなどがあれば営業ができます。

この点で、洗濯機や乾燥機、プレス機などが必要な一般のクリーニング店に比べ、備品購入に要する費用や労力が少なくて済みます

店舗用備品の準備と並行して、フランチャイズ本部が実施する研修を受講します。研修は、クリーニング店の営業ができるよう、クリーニング業にかかる知識や営業の手順、客の応対方法などが中心となります。取次店の仕事は主に接客がメインとなりますが、客からクリーニングに関する質問を受けた場合適格に答えられるよう、必要な知識も身に付けておく必要があります。

従業員の採用・教育

従業員を雇う場合は、その採用と教育を行います。当初は、加盟店オーナー1人で対応できるかどうかやってみるのも方法の1つです。実際にやってみて、1人では対応が難しいと判断される場合に、アルバイトなどを採用するのです。

ただし、フランチャイズによっては、加盟店の開店時刻、閉店時刻、定休日などが決められている場合があり、営業時間が長いと交代制を採用せざるを得ないこともあります。そのようなケースでは、従業員の採用は必須となるでしょう。

なお、従業員を採用したら、クリーニング店の営業を任せられるよう教育を行う必要があります。

開業

すべての準備が整ったら、いよいよ開業となります。多くのフランチャイズでは、開業当日は本部のスタッフが応援に来てくれます。開業直後は、珍しさから多くの客が集まる場合もありますが、まずは実地の営業を体験し、徐々に慣れていくことが肝心です。

クリーニングフランチャイズを始めるポイント

クリーニングフランチャイズを始めるポイント

それでは、クリーニングフランチャイズを始めるには、どのような点がポイントになるかをみていきましょう。

初期費用を抑える

最初のポイントは、初期費用を抑えることです。クリーニングフランチャイズの多くが、一般のクリーニング店ではなく取次店の業態を採用していることから、初期費用が安いというメリットが生まれてきます。すなわち、一般クリーニング店のように大がかりなクリーニング用機械設備を導入する必要がなく、洗濯物の保管と来客対応ができる店舗であれば、取次店を開くことが可能です。

フランチャイズで独立・開業を目指す人の中にも、初期費用の安さに目を付けてクリーニングフランチャイズの世界に飛び込もうとしている方がいるでしょう。その場合、クリーニングフランチャイズのメリットを最大限に生かすためにも、初期費用をできるだけ抑えることがポイントになります。

しかし、クリーニング用機械設備の費用がかからなくても、取次店を開くためには、フランチャイズ加盟金や保証金、店舗物件取得費や店舗内外装工事費などが必要になります。

クリーニングフランチャイズにおける加盟金や保証金の一般的な相場は、両方を合わせて10~20万円程度であるため、その水準を大幅に上回らないようにフランチャイズ選びを進める必要があります。

次に、店舗物件取得費ですが、クリーニングフランチャイズを成功させるためには、客が集まる良い場所に出店することが必須の条件になります。そのため、店舗物件取得費を抑えることを目標にするのではなく、良い場所に出店することを優先し、そのための経費はある程度受け入れる覚悟が必要です。

一方の店舗内外装工事費ですが、良い場所に店舗を確保することができれば、必要最小限の費用で洗濯物保管と来客対応ができるシンプルな空間に仕上げるだけで十分でしょう。

良い場所に出店する

2つ目のポイントは、良い場所に出店することです。上で、昔と比べてクリーニングの利用が減ってきていることを説明しました。今後、クリーニングに対する需要が大幅に伸びないとするならば、少しでも良い場所に店を構え、客が利用しやすい環境を整えておくことが効果的な対策になります。

クリーニング店に良い場所は、次の2点が挙げられます。

①商業施設やスーパーマーケットなど買物客が集まる場所

クリーニング店が商業施設やスーパーマーケットなどの一角にあれば、買物客が利用することができます。最近の商業施設やスーパーマーケットは駐車場が整備されているため、車で1回にまとまった量を出すことができます。商業施設やスーパーマーケットなどに店舗を出す場合は、クリーニング店の営業時間はその施設の営業時間の制限を受けることになります。

②駅前など通勤・通学客が通る場所

クリーニング店が駅前にあれば、サラリーマンやOL、学生などが通勤・通学の途中で立ち寄ることができます。1回に出すことができる量は紙袋1つ分と多くはないものの、出勤時に洗濯物を預け、帰りに受け取ることができるため、通勤・通学客には非常に便利です。駅前に店舗を構える場合は、通勤・通学客が多く通る早朝の7~8時位から夜の19~20時位まで、営業時間を長くするのが効果的です。

クリーニング店を出店するための良い場所は、上記のように、日々の生活で人が集まるか通過する場所になります。しかし、そのような良い場所を加盟者が個人で探し契約するのは、簡単ではありません。そのため、その組織力やネットワークを活用し、フランチャイズ本部に店舗物件探しをしてもらうのがベストな方法です。

フランチャイズに加盟する際には、①商業施設やスーパーマーケットなどの一角(建物内または敷地内)、②駅前の貸店舗のいずれかを、出店場所としてフランチャイズ本部が探してくれるという条件を提示してみるのもよいでしょう。その場合に、月々払うことができる家賃の上限も条件に加えておきましょう。

商圏に期待できる

クリーニングフランチャイズに加盟するには、出店エリアの商圏に期待できることも重要なポイントです。

これからのクリーニング業は、少ないパイを少人数で取り合う、いわば限られた客を限られた店で取り合うことであると認識しておく必要があります。このように利用客が限られた人数であるということから、出店地域の商圏が有望でないと、クリーニング店経営で成功することは困難になってしまいます。

このことから、フランチャイズに加盟する際には、次の2つがキーとなります。

①商圏調査で有望エリアと判定される地域に出店させてくれること

商圏調査は、店舗を出店する商圏内にどの程度の需要が見込めるか、障害となるものはないかなどを事前に調査することです。クリーニング業界に限らず、フランチャイズではエリアごとに商圏調査を実施しています。商圏内の人口や世帯数、年齢構成など利用客の基礎データに加え、競合店舗の出店状況なども調べているのです。

商圏調査のデータや判定結果は企業秘密事項ですが、加盟候補者が要求すればフランチャイズ本部は提供してくれるはずです。フランチャイズに加盟する場合は、商圏調査で有望エリアと判定される地域に出店させてくれることを条件に追加するのが効果的です。

②テリトリー制はメリットとデメリットを総合的に判断すること

フランチャイズ契約で、テリトリー制を定めている場合があります。フランチャイズでは、現時点で出店候補エリアに競合店がなくても、将来的に出店してくることも想定されます。その場合、出店してくるのが他系列の店舗であれば商圏競合を防ぐことはできませんが、自分が加盟している同系列店舗との競合はテリトリー制である程度防ぐことができるといわれています。

テリトリー制の中でもクローズドテリトリーは、フランチャイズ契約で加盟店に対し独占的に営業販売できる地域=縄張りを与える制度です。クローズドテリトリー制が定められていると、加盟店はその設定地域でのみ営業販売を行う権利を持つことになり、フランチャイズ本部はその地域内に新たな加盟店や直営店を出店することができなくなります。

その結果、先行出店した加盟店がその地域における独占的な営業権を持ち、同系列他店と商圏が競合するのを防ぐことができます(他系列フランチャイズの出店は防げません)。

ただし、クローズドテリトリー制で守られている加盟店は、その地域でのみ営業販売を行うことになるため、与えられる縄張りの大きさなどは十分に確認しておく必要があります。

また、テリトリー制はクローズドテリトリー以外にも種類があります。テリトリー制は、加盟店にもフランチャイズ本部にも様々な影響を及ぼす制度であることから、そのメリットやデメリットを総合的に判断することが大切です。

客のニーズを捉える

クリーニング店を成功させるには、客のニーズをうまく捉えることがポイントになります。一般の人が洗濯物をクリーニング店に出す場合に、その方達は様々なニーズを持っています。

例えば、①安く処理してもらいたい、②ふんわり・綺麗に仕上げてもらいたい、③短い日数で仕上げてもらいたい、④便利な場所にある店がよい、⑤駐車場がある店がよい、⑥朝早くから、夜遅くまで開けてほしい、⑦受け取りに行けない場合、長く置いてほしいなど様々な要望があります。

これらの顧客のニーズを多く満たすことができる店は、将来的に繁盛すると想定されます。このため、客のニーズをできるだけ捉え、それを営業内容や営業形態に反映させていくことが重要です。

しかしそうはいっても、加盟店の立場でできることには限界があります。洗濯物の完成度や仕上がるまでの日数は、フランチャイズ本部が提携している工場の処理内容で決まってしまいます。また、クリーニングの料金価格や開・閉店時刻、定休日などもフランチャイズ本部が統一的に決めている場合も多いことが想定されます。これらの項目は、加盟店がいくら客のニーズを取り込んで改善を図ろうとしても、どうしようもできない場合があるのです。

このことから、最初に加盟するフランチャイズを選ぶ段階で、利用客のニーズを十分に把握し、ニーズに応じた営業内容を構築しているフランチャイズを探すのが間違いのない方法です。

例えば、駅前にクリーニング店を構える場合は、通勤・通学客が多く通る通勤・通学時間帯に営業することが有利です。にもかかわらず、あまりに遅い開店時刻や早過ぎる閉店時刻を定めているフランチャイズがあったとしたら、その営業姿勢には疑問符が付きます。

以上のことから、利用客のニーズを捉え、そのニーズに応じた営業を行うためには、①フランチャイズ選びの段階で、うまくニーズを捉えているフランチャイズを選ぶ、②開業後は、加盟店として許される範囲内でニーズを取り込んでいくという2段階で進めるのが無難な方法といえるでしょう。

フランチャイズ選びの段階で、うまくニーズを捉えていると判定できたら、そのフランチャイズが有力な加盟候補になります。そして、加盟後に、フランチャイズ契約に抵触しない範囲で、利用客のニーズを反映した営業を行っていくのです。

そのように日頃の営業で消費者のニーズを取り込むよう努力を続けていれば、1度来店した客はそれ以降常連客として、末永く利用してくれる可能性が高いでしょう。

まとめ

クリーニングのフランチャイズに加入するメリット・デメリット、手順、ポイント

クリーニングフランチャイズに加入すると、商標を利用できる、営業方法を教えてくれる、本部のサポートがあるなど、フランチャイズ共通のメリットのほか、①初期費用が安い、②技術が不要、③資格が不要など、クリーニングフランチャイズ特有のメリットがあります。この特有のメリットは、クリーニングフランチャイズの多くが取次店の業態を採用していることで、大がかりな設備や専門技術が必要ないことに起因します。

一方、クリーニングフランチャイズに加入するデメリットとしては、加盟金やロイヤリティなどの経済的な負担がある、契約の縛りがある、本部の経営方針に逆らえないなどのほか、成長分野ではないなども挙げられます。

しかし、クリーニングは人々が生活していく上で必要不可欠のサービスであること、それを業とするクリーニング店自体も減っていることから、1店舗あたりの売上げを今後確保することも可能な分野なので、ぜひ検討してみてください。