店舗を効率的に増やすならどっち!?フランチャイズ店と直営店の特徴や見分け方
コンビニやファミリーレストランや学習塾など、様々な業種で利用されているのがフランチャイズシステムです。フランチャイズシステムを利用して運営する店舗の種類には、フランチャイズ店と直営店があります。フランチャイズ店と直営店にはそれぞれ役割やメリットデメリットがあります。
今回の記事では、「店舗経営をしたい」「店舗を増やしたい」という時に役立つ二つの店舗の違いについて詳しく解説していきます。
目次
フランチャイズシステム
日本フランチャイズチェーン協会の『JFAフランチャイズチェーン統計調査』によると、2019年度のフランチャイズチェーン数は1,324チェーンで、その店舗数は26.2万店になります。また、その売上高は約26.6兆円あります。
新型コロナウィルス感染症の流行によって、営業事態や営業時間の見直しを迫られる苦しい経営が続く中、売上高は昨年より4,362憶円(前年比+1.7%)増加しています。売上はこれで10年連続の増加を記録しています。経営効率を強化しながら、フランチャイズシステムは成長を継続しています。
●フランチャイズシステムの運営
フランチャイズシステムは、本部と加盟店からできています。本部を“フランチャイザー”、加盟店を“フランチャイジー”とも言います。
フランチャイズ本部は、自社の店舗運営のノウハウや機器やシステムなどをパッケージ化して加盟店を募ります。そして、テレビコマーシャルやネット広告などを利用したブランディングやマーケティングを通じて店舗への集客を即します。また、商品開発と共に製造された商品や材料などを各店舗に卸していきます。その結果、契約した加盟店が売上や利益を伸ばしていくことで、より多くの加盟店を増やしていくことができればより知名度の高いフランチャイズになっていきます。
●フランチャイズ店舗の種類
フランチャイズシステムの店舗は、フランチャイズ店と直営店があります。フランチャイズ本部が店舗の運営を行っているのが、直営店になります。一方で、加盟店と言われるフランチャイザーが経営する店舗をフランチャイズ店と言います。
店舗の数が多いのは、圧倒的にフランチャイズ店です。一例として、コンビニ大手のセブンイレブンは2万店以上店舗がありますが、98%がフランチャイズ店舗で直営店は2%以下になります。これは、フランチャイズシステムの事業モデルとフランチャイザーとフランチャイジーのそれぞれの役割の違いによるところが大きく関わっています。
●フランチャイザーの役割
フランチャイザーの役割は、大きく以下の2つになります。
- ①フランチャイズ事業を拡大していく
- ②フランチャイジーの経営を安定させる
①フランチャイズ事業を拡大していく
フランチャイズシステムは、店舗数を増やしていくことでメリットが増加していきます。10店舗の数が多ければ多いほど、認知度が上がります。また店舗数が多ければ、その分商圏を広げることができます。また、店舗数が多ければ広告やシステム開発や商品開発などの効率が向上します。また、物流効率も改善します。
②フランチャイジーの経営を安定される
フランチャイザーの利益は、フランチャイジーから受け取るロイヤリティと言われる加盟金が主たる収益になります。ロイヤリティの計算方法は様々ですが、加盟店の数が増えればフランチャイザーが得る収益は増えていきます。そのために、既存のフランチャイジーの経営を安定させることで新しく加盟店になってくれる事業主を獲得していくことで、規模の利益を獲得していき、フランチャイザーとフランチャイジーの両方の利益になります。
●フランチャイジーの役割
フランチャイズ店を運営するフランチャイジーの役割は、フランチャイザーと比較するとシンプルです。その役割は、店舗運営を行い、利益を上げることに集約されていきます。フランチャイジーが利益を上げるということは、売上や利益に連携してロイヤリティの金額が決定しているため、フランチャイザーの収益が向上します。詳細は後述します。
●フランチャイジーと代理店
フランチャイジーと似た販売方法に代理店販売や販売代理店があります。代理店販売と販売代理店は同じ意味で使用されるため、ここでは代理店で統一します。商品の販売を行う権利やアフターサービスの委託契約を商品製造や卸す事業主と契約を行います。
代理店には、販売エリアや規則が緩く、販売も自社の商号で行います。代理店は、さらに複数の商品を取り扱うことも可能です。代理店契約を締結する本部同士としては競合となる商品も取り扱うことも可能*です。例えば、保険代理店は複数の保険会社の保険を取り扱って、お客様のニーズの変化にあった保険を紹介するといったことが可能です。
*代理店契約によります。
代理店は事業活動における制約がフランチャイジーと比べると自由度が高く、自社の経営資源や経営判断によって独自の事業活動を行うことができます。そのため、既存の販売先や販売網を利用して販売を増やすことを目的に代理店になる場合もあります。1から事業を行うためにフランチャイズ加盟店になるのではなく、すでにある事業をより強化するために代理店になるケースです。
フランチャイズ店舗の役割
フランチャイジーが経営する店舗がフランチャイズ店の役割は大きく以下の2つです。
- ①フランチャイズ加盟店として収益を最大化する
- ②フランチャイザーにアイデアや意見などの情報を連携する
①フランチャイズ加盟店として収益を最大化する
フランチャイズ店舗を経営しているのは、その店舗毎の事業主になります。そのため、フランチャイズ店舗の最も大きな役割は、経営するフランチャイズ店舗の事業で収益を上げることになります。
●フランチャイズ店舗の収益
『売上』から『費用』を引いたものが収益です。フランチャイズ店の売上は、他の事業と同じです。物を販売することやサービスを提供することの対価として、代金を受け取ります。これはフランチャイズであっても一般的な事業でも共通です。
フランチャイズ加盟店と一般的な事業の差は『費用』にあります。フランチャイズ加盟店は、そのフランチャイズ加盟店契約に則ってロイヤリティを支払うことが義務付けられています。ロイヤリティはフランチャイズ加盟店がフランチャイザーの商号やビジネスモデルなどフランチャイズサービスを活用して事業を行う対価です。
このロイヤリティは、自身で飲食店やサービス業を行っている場合には発生しない費用です。ロイヤリティ以外の費用は、人件費や店舗家賃や商品の仕入れ代金など一般的な事業と同じです。
なお、ロイヤリティの計算方法はそのフランチャイズ契約によって定められています。収益に大きく影響します。フランチャイズ契約の締結を検討する場合には、その金額を自分で計算できるまで理解することが必要です。特に、売上高に応じてロイヤリティの金額が変わるのか、収益(『売上』-『費用』)に応じてロイヤリティが変わるのかは、事業の収益に影響がでることがあります。
売上高に応じてロイヤリティが決まる場合には、例え収益がマイナスの際にも発生するため注意が必要です。収益がマイナス=赤字の状態なのにロイヤリティを払うことが発生するということです。売上が多い中、それを上回る費用による赤字な状況下で高額なロイヤリティを請求される場面なども想定できます。このような場合、フランチャイズ加盟店としては経営に大きな負担になります。
一方で、収益額に応じてロイヤリティが決まる場合には、収益がマイナスならロイヤリティを支払いすることが原則ありません。また、収益が少ない場合にはそれに連動してロイヤリティも少額になるため、経営が苦しい時のロイヤリティ負担が軽減できます。
●フランチャイズ店が収益を上げる重要性
フランチャイズ店の経営をしているのは、それぞれの事業主になります。そのため、フランチャイズ店が利益を上げれば、事業主の経営力が向上します。なお、フランチャイズ店が収益を上げることはフランチャイズシステムにおいて、フランチャイザーにとっても大きなメリットになります。
フランチャイズ店が儲かれば、単純にフランチャイザーの売上増加が期待できます。まず、フランチャイズ店の仕入れが増えるので、商品を卸しているフランチャイザーの売上になります。また、フランチャイズ店の売上や利益が上がれば、受け取れるロイヤリティも増加することが期待できます。
さらに、収益が増加しているフランチャイズ店は良いモデル加盟店ができます。利益が出ているフランチャイズ店が増えれば、フランチャイズに新たに店として加わることを検討する事業主が増えることが期待できます。フランチャイズ店が増えれば、規模の利益が強化できます。また、儲かっている店舗はそれだけお客様の評判を獲得していることになります。お客様の増加やお客様からの評判の向上はフランチャイザーにとってもフランチャイズ店にとっても大きなプラスになります。
②フランチャイザーにアイデアや意見などの情報を連携する
フランチャイズ店舗と直営店ではフランチャイズ店舗の数が圧倒的です。また、お客様に接するのは店舗です。店舗で得られるお客様の意見や情報をできるだけ多く収集するには、フランチャイズ店舗から得ることが重要になります。
お客様の情報を得る上で活用されている代表例がPOSレジです。POSとは、Point Of Saleの略で日本語訳すると販売時点情報管理となります。どのような商品やサービスがいくらで何時売れたかのデータを蓄積・連携されます。このデータはフランチャイザーの元に集まります。
フランチャイザーの元に集まった情報は、商品名と販売価格と販売数や販売時間と販売店舗や顧客情報(年齢層や性別)などの情報です。これらの情報を組み合わせて、販売傾向を分析し、それ以降の販売戦略や商品戦略に生かされていきます。
●フランチャイズ店の意見を反映する重要性
現代の情報化社会にあっては、よりお客様の意見を以前よりも重視していくことが求められています。SNSなどで情報が拡散されやすくなっているため、良い情報も悪い情報も早くかつ多方面に情報が流れていきます。
そのため、フランチャイズ加盟店1店舗の運営の結果のみで、そのフランチャイズ本部ならびに加盟店全体に影響が発生するリスクが生じかねません。各店舗で直接お客様と接しており、かつデータ化しにくいお客様の動向や雰囲気をフランチャイザーが把握・理解するためには常日頃からフランチャイズ店との密なコミュニケーションをとりながら、情報の連携を行う取り組みを行う必要があります。
直営店の役割
直営店は、フランチャイザーと同一の資本で経営・運営されている店舗を指します。直営店のことをレギュラーチェーンとも言います。直営店では、店舗を運営する店長をはじめとするスタッフもフランチャイザーが雇用しているのが一般的です。そのため、店舗運営に関わる収益はフランチャイザーのものになります。
直営店の役割は大きく以下の3つになります。
- ①収益を上げる
- ②新商品や新サービスなどのチャレンジを行う最新店舗モデル
- ③店舗運営や店舗スタッフの育成
①収益を上げる
フランチャイズ加盟店と同様に直営店も収益を上げる役割を担います。前述のセブンイレブンなどのようにフランチャイズシステムで加盟店割合が98%以上というのは別ですが、小規模のフランチャイズ事業やフランチャイズ事業を開始した段階においては直営店の利益はフランチャイザー全体の収益に大きな割合を占めるケースは珍しくありません。
また、直営店が収益を上げられるビジネスモデルであるからこそ、加盟店が集まるということもあります。儲からないビジネスモデルに対してロイヤリティを支払いしてまでやりたいと思う事業主はいません。
利益を上げるビジネスモデルで商売をしたい、というように他の事業主に思わせるためには、店舗運営によって収益を確保することは必須です。これは、同じ収益を上げるという役割でもフランチャイズ店にはない直営店ならではと言えます。
②新商品や新サービスなどのチャレンジを行う最新店舗モデル
フランチャイズ店は、基本的には商品構成やサービスはフランチャイザーの指示に従うことが求められます。しかし、同じ商品構成やサービスを継続するとお客様のニーズの変化に対応できなくなることや競合他社との競争力が低下するリスクがあります。
そのため、常にフランチャイザーは新商品や新サービスなどの変化に適応するためのチャレンジを試すことが必要になります。
しかし、市場に投入しないとそのサービスがお客様にどのくらい受け入れられるかは分かりません。その状態では、各自の収益を追いかけるフランチャイズ店に落とし込むことはできません。そのため、フランチャイザーの同一資本である直営店でテスト導入などを行います。
また、サービスや商品だけではなく業務効率を改善する上で必要不可欠なシステム導入や設備投資もテストを行う必要がある場合には、直営店で優先的に実施します。そのため、直営店は常に最新店舗となっています。そのうえで直営店でのテスト結果が良かった商品やサービスまたシステムや設備がフランチャイズ加盟店へ導入されていきます。
直営店には、時代の変化などに対応するために必要な変化を試す場所という役割があります。
③店舗運営や店舗スタッフの育成
直営店のスタッフは、自社で雇用する人材で構成されています。フランチャイズ加盟店のオーナーに店舗運営をアドバイスするスタッフになるためには、店舗運営を実際にやった経験が必要になります。ビジネスモデルを理解したうえで、店舗運営を100%理解している人材でなければ、フランチャイズ加盟店へ適切なアドバイスをすることができません。
そのため、直営店には店舗運営経験を積む場所という役割もあります。同様にフランチャイズ店の人不足の際には、スタッフとしてヘルプに入ることもあります。そんな時に、フランチャイザーから来たスタッフとして質の高い仕事ができるようにスタッフ育成の場所という役割も直営店にはあります。
さらに、フランチャイズ店で雇用した社員やアルバイトやオーナー自身も自身の店舗で勤務する前に直営店などで経験を積む研修を行う場合もあります。直営店には、自社の人材育成と加盟店の人材の研修の場という役割もあります。
●直営店化して収益改善
フランチャイズ店舗で経営が苦しくなってその事業主が事業をやめてしまった店舗をフランチャイザーが引き継ぐというパターンもあります。フランチャイザーで引き継いだ店舗は直営店になります。直営店にして、収益が改善してから新たなフランチャイズオーナーを見つけてくるということをするフランチャイザーもあります。
また、その逆で最も事業上収益化が難しい新規開業時期を直営店として店舗運営を行うフランチャイザーもいます。その後事業が軌道にのったタイミングでフランチャイズ店にその店舗運営と経営を引き継ぐことになります。これであれば、フランチャイズ店は新規開業時の経営リスクを回避することができるため、フランチャイズ店オーナーとしては大きなメリットになります。
●直営店のみの多店舗展開のメリット
フランチャイズシステムは、フランチャイザーとなる企業とは別の資本を持つ事業主に店舗運営を任せていきます。一方で、直営店だけで多店舗展開をしていく場合もあります。直営店で多店舗展開していくメリットは、店舗運営のマネジメントが簡単であり、全体の統制をとることが比較的に簡単です。
また、利益を最大化することができます。フランチャイズシステムでは別資本を利用して店舗展開のスピードを加速することができます。一方で、レギュラーチェーンでは全て自己資本で展開していくため、収益はすべて自社のものになります。そのため、チェーン全体の利益を分配せずに集約することができるために利益は最大化されやすいという特徴があります。
店舗を増やすタイミング
事業において店舗を増やすタイミングは非常に重要です。お客様が定着・増加して売上と利益を順調に確保できるようになり、かつビジネスモデルが確立し店舗運営ができるスタッフの育成ができた時点が店舗を増やす最も良いタイミングです。
しかし、順調に売上や利益を伸ばしている事業には必ず競合が出てきます。ビジネスモデルを模倣したうえで、不足している点を改善した競合が複数店舗一気に進出してくる可能性があるのです。そうなってくると、最適なタイミングを待ってから店舗を増やすようにしていたら現代のビジネスのスピードに負けてしまうことになります。また、競合に競うように店舗を出店していくと価格競争などに巻き込まれて、思うように利益が出ない泥仕合になりかねません。
そのためには、できるだけ早いタイミングで多店舗展開をしていくためには、他社にはなくかつお客様のニーズに合致する“優位性”が事業の中で明確になったタイミングこそ店舗を増やすタイミングと言えます。
優位性とは、商品やサービスのもつ優れた特徴です。そして、優れた特徴はお客様が選ぶ=購入する理由に結び付いていることが重要です。優位性が明確であれば、その優位性を確保できる条件にあった店舗を増やしていくことができます。
直営店を増やすとき
一般的には、最初に出店する第1号店から数店までは直営店であることが多くなっています。直営店を増やすことで、売上規模が拡大できます。また、1店舗あたりの運営コストを下げることができます。これが多店舗展開をしていくうえで得られる規模の利益=スケールメリットになります。
規模の利益を、飲食店のケースで説明します。店舗が増えればお客様が増えます。お客様が増えれば、販売量が増えるのでそれに応じて食材などの仕入れ量が増えます。仕入れ量が増えれば、購買力が高くなるので1個あたりの単価を下げる交渉が可能になります。
また、チラシ広告やポスティングなどをしても複数の店舗の情報を記載することは、1店舗のみで運営しているよりは同じ費用をかけても店舗の数だけ集客の可能性があがります。採用も同様に、多くの人数を1度に採用することで1名当たりの採用コストを抑えることができます。
また、出店することは認知度向上やブランディングにもつながります。一般的には、新規出店で連想できるのは『人気が出てきた』『儲かっている』などのプラスのイメージです。出店をするとその商圏が広がるのとあわせて、認知度が高まります。
●ドミナント効果とリスク分散
これらの多店舗展開の効果を得るためには、ドミナント戦略に注意することが必要です。ドミナント(Dominant)は、支配的や独占的という意味があります。ドミナント戦略とは、事業を展開する商圏=エリアを絞ったうえで、そのエリアに店舗出店などの経営資源を集中させていきます。そのうえで、そのエリアでは同業種で最も強い立場になることを目指します。その結果、競合他社が参入しにくい環境を作り出します。
ドミナント戦略による優位的な地位を確立することで、効率的な経営をすることができます。競合他社が参入しにくい環境下であれば商品やサービスの価格競争など同業他社との競争に意識を集中することなく、お客様のニーズに応えることに経営資源を集中することが可能です。
地域を絞って店舗を出店していくのは、仮に優位的な地位を獲得できなかった場合でも、商圏エリアに対する理解が進んでいる点や、直接的な指導やマネジメントがしやすい点やスタッフの行き来ができる点や商品や材料の配達が効率的にできるなどのメリットが多くあります。
一方で、ドミナント戦略や地域を絞ることでおこるデメリットもあります。最も大きなデメリットはエリアのマイナスの影響が経営全体に大きく影響しやすい点にあります。
本来、多店舗展開はリスク分散の意味があります。これは1店舗の売上がなにかの理由で減少しても、他の店舗の売上がそれをカバーすれば経営のバランスは安定します。しかし、ドミナント戦略によってエリアを限定してしまうと、せっかくのリスク分散がききにくくなることがあります。
具体例は、商圏の魅力の減少などがあります。日本全体として少子高齢化による人口減少が進んでいます。その中で多店舗展開をしている商圏に人口減少が急速に進むことが起こりえます。当然、一瞬で人口が減少するようなことは起こりにくく、数年という単位の時間をかけて人口は減少していきます。
そのため、人口減少の影響は売上の減少などに少しずつ継続的な影響を残していくのが一般的です。その時に、機敏に体制を変更できるだけの財力と体力と機動力を組織に残しておくことが求められます。
また、その商圏での悪い評判などがおこるとその火消しには苦慮します。ドミナント戦略は同じ商圏に店舗を増やして目立っているため、良くも悪くも評判の影響を受けやすい点にも注意が必要です。
フランチャイズ店舗を増やすとき
フランチャイズ店舗を増やすために、最低限必要なのは事業のフランチャイズ化になります。フランチャイズ化するための絶対条件はありません。また、フランチャイズを行うことにたいする許認可も不要です。必要なのは、加盟店を募集した時にやろうと思う事業主を見つけることができるだけのビジネスの魅力があるかどうかです。
フランチャイズ店舗を増やすことが直営店と決定的に異なるのは、フランチャイザーの自己資本を活用せず店舗展開を行うことです。そのため、フランチャイズ店舗を出そうとする時にはその店舗を運営しようと考える事業主を見つけなければいけません。
フランチャイズを展開する事業主とフランチャイズ店舗を運営する事業主は、一般的には資本関係はありません。そのため、それぞれが利益追求をしながら、お互いの利益になるように運営のバランスをとっていくことが必要です。つまり、フランチャイザーとフランチャイジーの双方が利益を出せる体制がとれるタイミングがフランチャイズ店舗を増やすタイミングということになります。
●フランチャイズ化のポイント
フランチャイズ化するために絶対条件はない、と説明しました。しかし、フランチャイズ化するにあたって抑えるべきポイントはあります。抑えるべきポイントは、以下の3つになります。
- ①ビジネスモデルが明確になっている
- ②オペレーションがマニュアル化されていて、それを指導できるスタッフがいる
- ③フランチャイズ契約が準備できている
①ビジネスモデルが明確になっている
フランチャイズにおいては、ビジネスモデルが商品と言うこともできます。そのためには、フランチャイズ加盟店になる検討をする事業主にどのような事業かを理解してもらうためにビジネスモデルは明確である必要があります。
ビジネスモデルでは、以下のことが具体的に伝えられることが必要です。
- ・どのようなサービスや事業か
- ・お客様は誰か
- ・利益がだせるための優位性は何か
どんなことをして、誰をお客様にするのか、そして儲けを出すための強豪との違いは何かと言うことが明確に伝えられるビジネスモデルが必要です。
②オペレーションがマニュアル化されていて、それを指導できるスタッフがいる
ビジネスモデルがあるなら、そのモデルを実行できる体制が必要です。直営店で店舗を出す場合には、既存の店舗で店舗運営を行っていたスタッフを回すなどできる為、マニュアル化はそれほど必要ではありません。
しかし、フランチャイズ店舗ではスタッフもフランチャイズ店舗で雇用することが一般的であるため、フランチャイズ店舗の事業主が準備するスタッフでオペレーションができることが求められます。そのために、オペレーションがマニュアル化されていることと、そのマニュアルにそった運営を実現するために指導していくスタッフがいることが必要です。
オペレーションをマニュアル化できるというのは、簡単ではありません。マニュアル化できるためには逆説的になりますが、オペレーション自体をできるだけシンプルに構成することが必要です。大きくフランチャイズ化しているフランチャイザーのオペレーションは非常にシンプルです。コンビニやファーストフード店など、アルバイトスタッフを多く活用しても店舗運営が回るシンプルなオペレーションになっています。
③フランチャイズ契約が準備できている
加盟店側の事業主にとっても、フランチャイザーにとっても重要になるのがフランチャイズ契約です。契約内容を明確にしておかないと、後々のトラブルに対応することができません。出店を優先して、契約は後からということにしないようフランチャイザーと加盟店の双方の権利と義務を明確にすることが必要です。また、金銭が必ずついてまわる加盟金やロイヤリティならびに解約条件などは固めておきます。
また、契約内容の重要な点を概略化した「フランチャイズ契約のあらまし」を記載した開示書面が必要です。この開示書面をもって、フランチャイズ加盟を検討する事業主に対して契約内容を理解してもらうための説明が求められます。(小売商業振興法第11条)
フランチャイザーと加盟店の間でトラブルになる内容は、フランチャイズ契約でカバーする必要があります。トラブルなどの事例は中小企業庁がまとめた資料「フランチャイズ事業を始めるために」などが参考になります。
なお、上記3つのポイント以外にもフランチャイズ化するための準備として、以下の項目など必要になることは多数あります。
- ・商標やサービスなどの商標件の登録
- ・加盟店選定基準
- ・出店の選定基準など
●フランチャイズ加盟店の募集
フランチャイズ加盟店の募集を効率的に実施するためには、既存店を軌道に乗っているかどうかが最も重要といえます。既存店が順調に経営できていて、売上も利益も継続的に伸びている状況であれば、前述のビジネスモデルにおける説得力が増します。
売上や利益が伸びている店舗は活気や元気があるので、店舗を見てもらうとその雰囲気が伝わるものです。逆に、数店の直営店しかない状況で、その直営店が売上や利益などが伸び悩む状況では、加盟店になろうとする事業主を説得することは簡単ではありません。
その上で加盟店開発の営業を行います。加盟店開発とは、自社のフランチャイズ店舗のオーナーになる事業主を探すことです。大まかに加盟店開発の手順についても紹介します。
加盟ターゲットの決定 | ・法人と個人事業主(開業希望)のターゲットの決定 主に初期投資でどれだけ資金が必要になるのかでターゲットが変わります。個人の場合にはターゲットが広がりますが、必要資金を抑えるような配慮が必要です。 ・開拓するエリアの決定 フランチャイズ全体ならびにその新規出店にとって最良の出店エリアを決定します。出店エリアが広すぎると、加盟店開発効率もその後の出店・運営サポートも効率が下がる要因になります。 |
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開発手法の決定 | ・自社で行うか外部に委託するかを決定 開発営業行為にはノウハウが必要です。長期的にフランチャイズビジネスを考えるなら、社内にノウハウが蓄積するため自社で開発営業を行うことが一般的です。一方で、人材がいない場合や短期的かつ効率的な開発営業を行う場合にはすでにノウハウがある外部に委託することも検討すべきです。 ・営業手法の決定 加盟店募集サイトや求人サイト、フランチャイズ本部が集まる展示会や、実店舗などでのポスターなどどのように認知を増やして加盟希望者の見込みを作るのかを決定します。 ・営業予算の決定 営業事態を外部に委託する場合にも、サイトや天気会への出店なども有償になるケースが大半です。そのため、事前に開発営業にどの程度の費用をかけてよいのか予算化しておきます。 |
事業説明会と個別面談 | ・事業説明会 フランチャイズ事業に興味がある事業主や検討中の事業主向けの事業説明会を行います。初期の段階では多くの人が集まる場合は稀で、実質は個別面談に近い内容を行うことになることもあります。しかし、説明会とした方が「話だけ聞きたい」といったまだ興味がそれほど大きくない事業主も気楽に参加することが期待できます。 ・個別面談 興味を持っていただいた事業主がやりたいことなどヒアリングに時間を費やします。そのうえで、自社のフランチャイズとマッチしているかをお互いに確認していきます。最終的には、事業を行う熱意と実際の資金がどれだけあるのかも把握することが必要です。 加盟店条件など詳細の情報を提供することや事業主側の資金状況を確認することなどから秘密保持誓約書を利用することを忘れずに実施します。 |
加盟審査と締結 | ・加盟審査で適正確認 フランチャイズビジネスを立ち上げた際には、そのビジョンに賛同してくれる方であれば、加盟店になってもらいたい、と思うのが当然です。しかし、フランチャイズ事業を継続するのは簡単ではありません。また、立ち上げたばかりである時には一緒に試行錯誤していく場面もでてきます。事業主として自ら事業を行う意思や行動力、また経営もしくは組織を動かしたことのある経験、最低限の資金力などの審査基準を設けて客観的に審査することが必要です。 ・契約締結 契約締結を行う前に、もう一度加盟店条件をフランチャイズ加盟店となる事業主と確認します。この時に、リスクをしっかり認識させることでその後の事業運営をお互いにトラブルなく進めることができます。 |
店舗運営のメリットとデメリット
あなたが自分のサービスや商号をもった店舗をもっと増やしたい、そう思った時に店舗運営を直営店として自分の資金で行うか、他の事業主に任せるかということは悩ましい問題です。これは店舗やサービスを展開する社長がどのようなビジネスをしていきたいのか、どのように事業を展開していきたいのかという重要な意思決定になります。
直営店とフランチャイズのそれぞれのメリットとデメリットがあります。重要な意思決定であるため、それぞれのメリットとデメリットを整理したうえで、自身の会社の状況と将来性を考慮して意思決定することが必要です。
直営店のメリットとデメリット
直営店のメリットとデメリットともに、店舗展開を自社の資金で行うところに起因していきます。
メリット
- ①経営者の意思決定が店舗運営に直接反映できる
- ②人材育成や組織マネジメントが長期的にできる
- ③安定的な経営ができる
①経営者の意思決定が店舗運営に直接反映できる
直営店のスタッフは、フランチャイズ本部を展開する企業と雇用契約を行います。そのため、本部社員やアルバイトへの指示命令は本部から直接実施することが可能です。また、収益の影響も同一資本のため、他の事業主に気兼ねする必要はなく、本社の責任でフラチャイズ本部の考えやアイデアが100%反映させることも可能です。
特に、2~3店舗を出店している状況では経営が安定しにくい時期があります。その際には、経営者の意思決定に対して正確かつスピードをもってついていく必要が多くなります。このような時には、直営店であるメリットが最大限生かすことができます。
②人材育成や組織マネジメントが長期的にできる
自社で雇用している社員やアルバイトスタッフについて、その人材のスキルにあった仕事を割り振ることができます。店舗運営が得意な人は店舗運営に特化させることももちろん可能です。しかし、店舗運営よりマネジメントが長けている人はエリアマネージャーなどの店舗運営より人のマネジメントにより重きをおく仕事を任せることができます。
また、直営店の数が増えれば人も増え、経理なども複雑になるため、本社機能が必要になります。本社機能では人事や経理といった専門的なスキルが必要な仕事を任せることもできます。仕事や部署が増えれば、その分役職者を排出することもできます。役職者を多く配置することができれば、組織マネジメントを強化することも期待できます。
③安定的な経営ができる
組織マネジメントを生かして着実に利益が上がる直営店を増やしていくことで、フランチャイズ本部のえる利益は最も多くなります。つまり、1店舗あたりの利益が大きくなっていれば、規模の利益を追求することをしなくても安定的な経営を行うことができます。
一方で、以下のような直営店であるがゆえのデメリットもあります。
- ①店舗展開のために資金が必要になり、出店スピードが資金力に依存する
- ②マネジメント範囲が広い
①店舗展開のために資金が必要になり、出店スピードが資金力に依存する
直営店を店舗展開する場合には、その店舗開業資金はすべてフランチャイズ本部のある企業が調達することが必要になります。実施する事業によって店舗の開業資金は異なりますが、複数店舗を同時に開業することや年間100店舗などの規模で店舗を1社の資金で開業していくためには強力な資金力や資金調達力が必要となります。
十分な資金力や資金調達力がない場合には、店舗を出せば儲かることが分かっていても、直営店が出店できないといったことも起こります。また、出店において重要となる立地条件が良い場所に出店する機会が得られたとしても資金力の関係で直営店を出すのはあきらめざるを得ないといったことも起こりえます。
②マネジメント範囲が広い
直営店のスタッフは自社のスタッフであるため、自社で指示・命令や教育を行っていくことが必要です。そのため、直営店を増やすことはマネジメントしなければいけない人数とその幅を広げることになります。
マネジメントする幅が広がれば、マネージャーを増やす必要があり、人件費などのコストが増える要因にもなります。
フランチャイズ加盟店のメリットとデメリット
フランチャイズ加盟店による店舗運営は、その店舗数が増加することに比例して事業に参加する事業主が増えるという点がフランチャイズ本部から見た場合のメリットとデメリットに起因します。
フランチャイズ加盟店のメリットは、以下になります。
- ①複数の事業主と共に1つの事業を大きくすることができる
- ②シェアを一気に獲得することを目指せる
①複数の事業主と共に1つの事業を大きくすることができる
フランチャイズ加盟店のオーナーはそれぞれが事業主です。事業主であるため、それぞれのフランチャイズ加盟店の開業ならびに運営の資金をそれぞれの事業主が準備します。そのため、フランチャイズ本部の事業主とフランチャイズ加盟店毎の事業主が一つのフランチャイズ事業に携わっていることになります。
資金をお互いに出し合っているため、フランチャイズ加盟店の事業主もパートナー企業といえます。その関係の中でお互いの利益のために、フランチャイズ事業に対して知恵と意見を集約させていくことができる点はフランチャイズ加盟店が参加しているからできるメリットといえます。
②シェアを一気に獲得することを目指せる
フランチャイズ加盟店で店舗を展開することで、それぞれの店舗はそれぞれの事業主にその運営を任せることができます。そのため、複数店舗を一時期に同時に開店することもできます。複数店舗を集中して開店していくことで、競合他社が参入する前にターゲットとするエリアや顧客層に対して高いシェアを一気に獲得ができます。
シェアを獲得することができれば、既存のフランチャイズ加盟店は安定した店舗運営を行うことができます。そうなれば、フランチャイズ本部のロイヤリティ収益も安定し、新規のフランチャイズ加盟店の募集も簡単になっていきます。
一方で、フランチャイズ加盟店のデメリットは事業主が多くなることによる統制が取りにくくなる点に集約されます。統制が取れないことは、どこでも同じサービスを期待するお客様に対して同じ看板の店舗でありながら均一のサービスが提供できなくなります。看板が同じ場合には同じサービスを受けられることをお客様が期待することは当然です。その中で、サービス質が異なることはフランチャイズ全体の信用を失うことになりかねません。
そのため、フランチャイズ本部はフランチャイズ加盟店のサービス質に対して十分なケアを行うことと合わせて、フランチャイズ加盟店になる審査を十分に行うことが必要になります。
まとめ
フランチャイズ事業における直営店とフランチャイズ加盟店についてまとめました。フランチャイズ事業では直営店もフランチャイズ加盟店もそれぞれ異なる重要な役割を果たします。そして、直営店もフランチャイズ加盟店も利益を上げられることが重要です。そして、店舗が利益を上げるためにはフランチャイズ本部の事業戦略やマーケティングやマネジメントが重要になります。
フランチャイズ本部と直営店、フランチャイズ加盟店のそれぞれの力が集結して一つのブランドを成長させていくフランチャイズ事業は今後も成長余地を残すビジネスモデルといえます。また、事業主としてビジネスを始めたいと考える方はビジネスモデルを学ぶ意味も含めてフランチャイザーの説明会などに参加することをおススメします。