低資金で始めるフランチャイズのメリット・デメリット 少額開業可能な業種・分野も
フランチャイズで事業を始めたいと思っても、ネックになるのが開業資金です。自己資金が足りない場合、金融機関からお金を借りて開業するしかありませんが、予定通りに返済できるか不安になることもあります。
一方、フランチャイズには低資金で始めることができる業種・業態があります。少額の投資で起業できれば返済リスクも小さく、安心して経営に専念することも可能です。
今回の記事では、低資金で始めるフランチャイズのメリット・デメリットや少額開業可能な業種・分野について詳細にご紹介しています。フランチャイズで起業したい方は、ぜひ参考にしてみてください。
目次
フランチャイズとは
フランチャイズは、フランチャイズに加入する人が、フランチャイズ本部が持つ商号・商標や確立された商品・サービスを使用する権利を得て、その対価として一定の金銭をフランチャイズ本部に払う事業形態です。
例えば、コンビニのセブンイレブンのフランチャイズに加入して、セブンイレブンの商号や商品、サービスを使用する代わりに、その対価として加盟金や毎月の手数料であるロイヤリティを支払う場合が該当します。
フランチャイズ本部は、新しい店のオーナーになってくれる加入者を常時募集しており、加入者が現れれば、短期間で営業できる店を作っていきます。コンビニであれば、商品の仕入れから販売、集客、アルバイトの採用など、コンビニ事業を進めるための手順や手法がマニュアル化されており、新しい店のオーナーはそのマニュアルに沿うだけで標準的なコンビニ店を経営できるようになります。
フランチャイズの特徴
フランチャイズに加入すると、以下のように、様々なメリットを享受することができるとともに、一定の義務も負うことになります。
【加入者のメリット】
①商号・商標を利用できる
フランチャイズに加入すると、加入者は、フランチャイズ本部の持つ商号や商標を利用できます。例えば、コンビニならセブンイレブン・フランチャイズに加入すると、自分の店舗にセブンイレブンの看板を掲げることができます。
②商品・サービスを利用できる
フランチャイズに加入すると、加入者は、フランチャイズ本部の商品やサービスを利用できます。例えば、セブンイレブンでは、セブンイレブン本部が自社開発した商品や独自のルートで仕入れた商品を販売することができ、購入者に対する各種サービス(くじなど)も利用できます。
③経営ノウハウを提供してもらえる
フランチャイズ本部は、その営業経験や実績から豊富な経営ノウハウを持っています。加入者は、その経営ノウハウの提供を受けることにより、ゼロからスタートするより素早く経営を軌道に乗せることが可能となります。
例えば、飲食店フランチャイズの場合、調理方法や接客方法、集客方法などがマニュアル化されており、飲食店経営の初心者であっても、マニュアルに従って調理・接客・集客を行なうことで飲食店営業が可能になります。
④標準的な経営モデルを目標にできる
フランチャイズは、それぞれ標準的な経営モデルを確立しています。標準的な経営モデルとは、㋐店舗の立地、㋑店舗の規模、㋒開業後の年数などの条件別に、売上高や必要経費、営業利益などを想定したモデルのことです。
すなわち、「この立地、規模の店舗の場合は、開業後〇年では、売上高〇〇万円、必要経費〇〇万円、営業利益〇〇万円を見込むことができる」という経営のひな形を作り上げているのです。
このため、フランチャイズで開業すれば、自分の店舗の条件をこの標準的な経営モデルに当てはめ、それを目安として店舗運営を行えるメリットがあります。
⑤本部にサポートしてもらえる
どのような事業でも、始めてみると様々な課題やトラブルに直面することも多くあります。
「思うように集客が伸びない」「売上げが伸びない」「必要経費がかかり過ぎる」「スタッフやアルバイトが確保できない」「客とのトラブルが発生した」などの問題が起きる可能性があります。
このような問題に直面した場合、個人経営の店舗であれば、オーナーが独力で対応・解決していかなければなりません。しかし、フランチャイズに加入していれば、加盟店オーナーが1人で解決することが困難な問題に対して、本部の専門スタッフが助言・指導を行い、解決に導いてくれます。
【加盟する際に負う義務】
①加盟金・ロイヤリティを払う必要がある
ほとんどのフランチャイズでは、加盟金を支払う必要があります。加盟金の額はフランチャイズによって異なります。
一方、ロイヤリティとは商標使用料をいい、加入者がフランチャイズの商標を使用する対価として払う金銭です。ロイヤリティは、店舗開業後に毎月払うことになりますが、その算出は大きく分けて次の2種類があります。
定額制 | 毎月〇万円など、金額が定まっている方法 |
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定率制 | 毎月、売上高の〇%など、率が定まっている方法 |
②フランチャイズ本部の経営方針に従う必要がある
フランチャイズ加入者は、加盟店オーナーとなって店舗経営に携わりますが、本部の経営方針に沿った店舗運営を義務付けられます。加盟店オーナーが、自分の好きなように自由裁量で事業を行うことは、フランチャイズ契約で禁止されています。
加盟店が、フランチャイズの事業を拡大するための営業戦略や経営方針に沿わない方法は認められないほか、各フランチャイズには、長年築き上げた信用度やブランドイメージがあり、それらを損なうような営業を認めることができないからです。
例えば、コンビニフランチャイズで、店舗オーナーがその時の自分の判断で、特定の商品を陳列しない、陳列商品の構成比率を変えてしまうなどは、本部の経営ルールに抵触してしまう可能性があります。
低資金で始めるフランチャイズのメリット
それでは、少額の資金で始めるフランチャイズにはどのようなメリットがあるかをみていきましょう。
素早く開業できる
低資金で始めるフランチャイズのメリットは、スピーディーに開業できる点です。通常、事業を始めようとすれば、開業のための資金を貯めることからスタートします。業種・業態や事業規模などによって必要となる開業資金は違ってきますが、どのような事業でも一定額の開業資金は必要です。
一般的には、何年間かかけて貯めた自己資金で不足する分を金融機関からの融資で賄います。しかし、金融機関の融資審査に合格しなければ、お金を借りることはできません。融資審査に通るような将来ビジョンや事業計画、返済計画などを立てるとともに、金融機関の融資担当者に理解・納得してもらう必要があります。
このように、通常の開業では、開業資金を用意するために、長い期間や大きな努力が必要となります。
それに対し、低資金で始める場合は、開業資金の工面に注ぐ時間と労力を大幅に節約できるため、計画してから素早く開業できるメリットがあります。
経営を軌道に乗せやすい
低資金で始めるフランチャイズは、開業後の事業を軌道に乗せやすいメリットも持っています。仮に、金融機関から多額の融資を借りて開業したとしたら、どうでしょうか。開業後は、事業を進める傍らで、毎月金融機関にローンの返済を行っていくことになります。この毎月の返済額は、返済期間の設定にもよりますが、融資を受けた金額に比例して大きくなります。
事業で順調に収益が上がれば対応が可能ですが、売上げが振るわなければ、ローン返済の負担が運転資金を枯渇させ、事業経営を圧迫することになってしまいます。
このように、開業資金を多額に必要とする事業では、開業後のローン返済が負担となり、事業を軌道に乗せるまで苦難が続くことになりかねません。
その点、低資金で始めるフランチャイズであれば、開業後のローン返済の負担が軽くて済むため、いち早く経営を軌道に乗せやすいといえます。
事業のリスクが小さい
事業には、失敗が付きものです。フランチャイズであっても、すべての事業が開業後にうまくいく保証はありません。開業後に、予想に反して集客や売上げが芳しくなく、毎月が赤字の状態だったとしたら、思い切って事業を止めて仕切り直しをすることも考えなければいけません。
しかし、開業資金や運転資金を多額に注ぎ込んできた事業を廃業するには、非常な勇気が必要です。長期間貯めてきた自己資金を失った上に、金融機関からの借金だけが残ることになるのです。
このように、多額の資金を投入した事業に失敗すると、資産を失うばかりか借金を作ってしまうリスクがありますが、低資金で開業していれば、失う資産も少なくて済み借金も大きくない、いわば事業リスクが小さいというメリットがあります。
低資金で始めるフランチャイズのデメリット
次に、低資金で始めるフランチャイズのデメリットについてみていきましょう。
切迫感に乏しい
低資金で開業すると、事業に伴う切迫感が乏しいデメリットがあります。多額の資金を投じて事業を始めた場合は、失敗したら大きな損失を被ることになり、精神的に立ち直ることができないかもしれません。そのため、事業が成功するよう万全の準備を行い、開業後も気を抜かずに最大限の経営努力を続ける人が多いのではないでしょうか。
一方で、低資金で開業できた場合は、多額の資金を投じた時と比べ、切迫感が不足しやすい傾向があります。失敗しても失うものが少なければ、経営面でもつい気が緩んでしまうことも起こり得ます。
しかし、フランチャイズといえど、事業を始めるからには、生半可な気持ちでは良い結果は生まれません。自分が開業した同じ業種では、他の店がしのぎを削って日々競争を繰り広げており、経営努力や経営改善を怠った店は自然と廃業に追い込まれるでしょう。
このことからも、仮に低資金で開業するにしても、万全の準備を行った上でスタートし、開業後も気を抜かずに集客に励み、経営努力を重ねていくことが大切です。
営業努力が必要
低資金で始める事業では、通常の事業を上回る営業努力が求められます。立派な建物や洒落た内装の店には、自然と客が集まってくる傾向があります。建物外観や窓越しに見える内装が人目を惹き、関心を集め、「このような立派な店構えなら信頼できる商品を置いているだろう」「この店なら美味しい料理が提供されるだろう」といった好印象を抱いてもらえます。
一方で、あまりお金をかけていない小さな店や自宅兼用の店舗などは、多くの人の関心を集めることはあまりありません。小さな店や自宅兼用の店舗などは、立派な店や大規模店に比べ、スタート時点で既にハンデを負っているといってもよいでしょう。
したがって、このような小さな店や自宅兼用の店舗などが、立派な店や大規模店に負けずに生き残っていくためには、多くの人に関心を寄せてもらえるような営業努力が必要となるのです。
少額でフランチャイズを始める場合には、開業資金の都合上、その多くが小規模店舗か自宅兼用の店舗にせざるを得ません。このような少額開業店が、多額の資金を注ぎ込んだ店舗と競争して勝ち残っていくためには、集客方法に工夫を凝らす、自分の店を印象付ける、他店にないサービスを売りにするなどの営業努力が重要となります。
フランチャイズを低資金で始めるポイント
次に、フランチャイズを低資金で始めるためのポイントについて見ていきましょう。
実店舗が不要な分野を選ぶ
フランチャイズを低資金で始めるポイントの1つ目は、実店舗を持たなくてもよい分野を選ぶということです。フランチャイズで事業を始めるためには、一般的に次のような開業費用が必要となります。
①フランチャイズ加盟金
フランチャイズに加入するための費用で、金額はフランチャイズによって異なります。
②店舗物件取得費
営業用店舗物件の取得費です。購入の場合には、土地・建物代含めまとまった資金が必要です。賃借の場合は、購入に比べ費用を節約できますが、当初に敷金・礼金・初月分家賃などが必要となります。
③店舗内・外装工事費
店舗の内装および外装工事費です。内装費用は、営業の種類によって大きく違ってきます。飲食業などでは、洒落た雰囲気の内装にするため、天井・壁・床などの改修やカウンター設置工事などが必要となります。また、厨房設置のための水回りや防水関係の工事費もかかります。
外装では、看板設置のほか、屋根や外壁の改修費がかかる場合があります。
④店舗用備品取得費
店舗で使用する備品取得費です。備品取得費も営業内容によって大きく異なってきます。学習塾や英会話教室では、生徒用の机・椅子、パソコン、書棚などが必要です。一方、飲食店の場合は、客用のテーブル・椅子・食器・厨房用機器・調理用具などが必要で、まとまった費用となります。
⑤店舗用消耗品取得費
店舗で使用する消耗品取得費です。一般的に、消耗品費は備品取得費に比べ少額で済みます。
⑥広告宣伝費
開業のための広告宣伝費です。宣伝の方法やどのような広告媒体を使うかによって、費用には差が生じます。
上のフランチャイズ開業費用の中で、まとまった金額がかかるのが、②店舗物件取得費、③店舗内・外装工事費、④店舗用備品取得費です。特に、飲食店の場合は、客を呼び込み、一定レベル以上の料理と併せて、客が満足できる時間と空間を提供しなければならないことから、それなりの体裁を持つ店舗や内装が必要です。
また、美味しい料理を提供するための厨房設備や調理用具の調達にもまとまった費用がかかります。飲食店以外の小売店や学習塾などでも、客や生徒を集めるためには、一定水準以上の店舗を構えておくことが求められます。
このように、業種・業態によって程度の違いはありますが、実店舗を構えるには、ある程度のまとまった資金が必要となります。フランチャイズを低資金で始めるためには、実店舗が不要な分野を選んで開業することがポイントとなります。
1人でできる分野を選ぶ
フランチャイズで事業を始める際、効率よく運営するためにはスタッフやアルバイトを雇う必要があります。例えば、コンビニでは販売員、学習塾では外部講師、飲食店では調理人や接客スタッフなどです。
しかし、スタッフやアルバイトを雇用すると、毎月の人件費がかかってきます。アルバイトでも時給1,000円以上かかり、また、特定の技能や知識を持つ調理人や学習塾講師などでは、月額数十万円の費用が発生します。
人件費は、開業後毎月固定でかかってくるため、店舗経営が順調に推移しないと、経営を圧迫する要因になってしまいます。なお、フランチャイズにも、オーナーが自分1人で開業できる分野も多くあるため、低資金で開業するには、1人で運営できる業態を選ぶことも大切です。
在庫を持たない分野を選ぶ
事業を進める上で、在庫を抱えることは一定のリスクになります。小売店でも飲食店でも、客足が順調で、商品や食材がよく売れて在庫がなくなればしめたものですが、売れ行きが芳しくなく多量の商品や食材が売れ残ってしまうと、仕入原価分を売上げでカバーしきれない状況となり、経営を圧迫する要因となってしまいます。
また、事業に在庫を伴うということは、在庫を保管する倉庫などのスペースも確保しなくてはならないことになり、その分費用が余計にかかります。
フランチャイズの事業では、在庫を持たなくてもよい分野も多くあります。低資金で開業するには、在庫を持たなくてもよい分野を選ぶことも大きなポイントです。
他店との差別化を図る
低資金で開業するには、他店との差別化を図ることが大切です。例えば、開業費用を豊富に投じて立派な店舗を作り、広告宣伝費も潤沢に使ってPRした店舗が開業したとします。客は、その店構えや広告宣伝に釣られて来店するため、提供する料理が一定水準のものであれば、それなりの売上げが確保できるかもしれません。
しかし、資金があまりないため、実店舗を持たない宅配専門の飲食店を自分1人で開業する場合、立派な店構えを武器に客を呼び込むことはできません。また、広告宣伝もあまりお金をかけられないことから、注文が沢山入ってくることもないでしょう。
このような場合に、低資金で開業した店を軌道に乗せていくには、①広告宣伝費をかけないPR(ネットを使ったPR、地道な個別訪問による売り込みなど)、②他店にないサービス(開店時期の割引サービス、注文を受けてから〇分以内に配達、貯まったポイントで還元など)、③他店を上回る営業努力(注文客から他の人に口コミでPRしてもらえるよう、顔見知りになる努力をするなど)等の差別化に向けた取り組みが必要となります。
フランチャイズ本部を最大限活用する
フランチャイズに加入すると、フランチャイズ本部が持つ豊富な開業ノウハウや経営ノウハウを提供してくれます。
まず、低資金でいかに効率よく開業するかについて、本部の専門スタッフから指導を受け、そのノウハウを活用することが重要です。また、フランチャイズによっては、開業時に揃える店舗用備品について、本部のルートを使って割安に取得できる場合があります。
さらに、店舗で雇う人材が確保できない場合などに、本部が人材を紹介してくれるケースもみられます。フランチャイズに加入するのであれば、フランチャイズ本部を最大限活用するのも有効な方法です。
少額で開業できるフランチャイズの業種・分野
それでは、少ない資金で開業できるフランチャイズには、どのような業種や分野があるのでしょうか。実例を交えてみていきましょう。
飲食
実店舗型の飲食店は、店舗物件取得費や店内改装費、厨房設備費などの初期投資額が大きく、低資金で開業するのは難しい面があります。しかし、実店舗を持たないテイクアウト(持ち帰り)やデリバリー(宅配)専門店であれば、低資金での開業が可能です。
まず、テイクアウトの場合、店内飲食がない分、店舗規模が小さくてもよく店内改装費も必要ありません。しかし、小規模な商品売場や最低限の厨房スペース・設備は必要です。一方、デリバリーは、店内飲食スペースおよび商品売場ともに不要で、最低限の厨房スペース・設備があれば開業ができます。
なお、調理スペースや厨房設備の確保にかかる問題を解決するために、厨房自体をレンタルしてしまう方法があります。これは、通常の営業を行っている飲食店が厨房を使わない時間帯に、賃料を払って借りる方法です。
このやり方で、デリバリーに特化し、厨房・店内飲食スペース・商品売場などを持たずに営業しているゴーストレストランもあります。飲食業で開業を検討する場合は、以下の点がポイントとなります。
- ・テイクアウトまたはデリバリーにウェイトが置かれているか
これからは、店内飲食のみの方式に比べ、テイクアウトやデリバリージャンルの成長が期待されている等 - ・店舗や厨房設備を構えなくてもよいか
店舗や厨房設備を構えると初期投資額が増えるため、店舗なし・厨房レンタルなど開業費用を抑える方式がとられているか等 - ・1人で開業できるか
- ・調理初心者でも営業できるか
調理方法のマニュアルがしっかりしている、本部の工場で下調理を行ったものを各店舗で仕上げ調理だけ行う方式など、初心者でも対応可能なシステムがあるか等
【飲食業の実例】
①ライフデリ
ライフデリは、高齢者宅に弁当の宅配を行っているフランチャイズであり、簡易な厨房のある既存店併設や居抜き物件の利用など、低資金で開業できる方法として注目を集めています。
この方法では、新しく店舗を取得する必要がなく、既存店の厨房が空いている時間帯に賃借する、または営業していない店舗の厨房を賃借するなどで、調理場所を確保します。
開業資金合計 | 21万5,000円 |
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開業資金内訳 | 加盟金0円 開業時商材費11万5,000円 研修費10万円 その他開業費4万1,500円 |
開業資金は、21万5,000円で、簡易な厨房のある既存店併設や居抜き物件の活用により、店舗の取得関連費はありません。ただし、厨房の内装工事が必要な場合は、別途費用が発生します。また、厨房機器を新たに購入する場合にも、費用が上乗せになります。
ライフデリの収益モデルは、次のようになっています。この収益モデルは、ライフデリの既存店の収益平均値から作成したものです。
月間売上高 | 〇1日50食パターン 81万2,310円 〇1日100食パターン 162万4,620円 |
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ロイヤリティ等(月間) | 〇1日50食パターン ロイヤリティ0円 原価33万6,413円 賃料8万円 光熱費4万円 その他経費9万8,000円 〇1日100食パターン ロイヤリティ0円 原価67万2,827円 人件費30万円 賃料8万円 光熱費8万円 その他経費13万8,000円 |
上表で、1日50食パターンは加盟店オーナーがすべて1人で運営する想定で、1日50食は開業後3~6カ月で目指す数値です。一方、1日100食パターンは、オーナー+アルバイト2~3人で運営する場合で、1日100食は開業後12~15カ月で目指す数値としています。
②インド亭
インド亭は、インド料理をはじめ8ブランドを扱っているゴーストレストランのフランチャイズです。ゴーストレストランは、自前の店舗や厨房を持たず、他の厨房を借りて調理し、デリバリー形式で料理を提供する飲食サービスです。
既に飲食店を経営している人は、既存の設備を使ってインド亭のブランドを導入することが可能です。また、新規開業を目指す人には、物件取得費や設備費がかからず、低資金で開業することができます。
開業資金合計 | 〇インド亭のみ導入する場合 70万円 |
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開業資金内訳 | 加盟金0円 ライセンス使用料50万円 研修費20万円 その他、厨房にオーブンがない場合は、オーブン設置費として20万円が必要 |
上の開業費用は、インド亭1ブランドで開業する場合の費用です。導入ブランド数が増えると、1ブランドにつきライセンス使用料が50万円かかります(4ブランドで200万円)。
既存の厨房を使うため、物件費・設備費はかかりませんが、設備が不足している場合は別途補充費用がかかります。
インド亭の収益モデルは、次のようになっています。
月間売上高 | 〇2ブランド導入で12時間営業する場合 約160万円 |
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ロイヤリティ等(月間) | ロイヤリティ約6万円 原価約53万円 その他経費約51万円 |
その他経費には、宅配手数料が含まれています。
買取
買取業は、貴金属など中古品や不用品を買い取って再販売する事業です。店舗を構える必要があるものの、2~3坪の小規模なもので営業ができるため、開業資金を低く抑えることが可能です。
ただし、買取業は、客から買い取った商品の再販売が思うようにいかない場合、在庫を抱えてしまうリスクがあります。この問題を解決するために、フランチャイズ本部が開拓した販売先を加盟店に紹介し、加盟店の販売を促進して売れ残りリスクを避ける方法を採用しているフランチャイズもあります。
この販売先の確保がされれば、加盟店は、買取商品の再販売先を自分で開拓することなく、商品を捌いていくことができます。
買取業で開業を検討する場合は、以下の点がポイントとなります。
- ㋐自宅または小規模店で開業できるか
- ㋑1人で開業できるか
- ㋒客から仕入れた商品について、その販売先を確保・保証してくれるシステムがあるか(在庫リスクがないか)
- ㋓貴金属やブランド品の真贋査定力を習得する研修が充実しているか
【買取業の実例】
①宝の蔵
宝の蔵は、他店との差別化を図り業績を伸ばしている買取業のフランチャイズです。買取業における営業上の課題は、客から買い取った商品をすべて再販売できるかどうかという点です。この点で、宝の蔵は独自のシステムを導入しています。
宝の蔵では、客から買い取った商品を企業に販売し、利益を上げます。その買取システムは、あらかじめ企業にWEBカメラ(スカイプ)で査定をしてもらい、査定額が付いた物だけを客から買い取ります。
買い取る際の査定額は、企業から提示された査定額を参考にして決定するため、客から商品を買い取った時点で利益が確定します。そのため、買取商品の売れ残りや在庫リスクがありません。
開業資金合計 | 100万円 |
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開業資金内訳 | 加盟金50万円 研修費40万円 開業サポート費10万円 |
開業資金の内訳をみると、店舗物件取得費や店舗改装費などがなく、自宅開業が想定されています。宝の蔵のサイトでも、比較的狭い3~10坪で開業ができ、店舗併用も可能となっています。このため、新規に店舗を構える場合に比べ、開業資金を大幅に節約することができます。
また、研修費は、集客研修、貴金属やブランド品の真贋査定、買取商品の企業への販売方法、オークション出店販売方法などの内容となっています。
宝の蔵の収益モデルは、次のようになっています。
月間売上高 | 500万円 |
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月間営業利益 | 197万200円 |
ロイヤリティ等(月間) | ロイヤリティ2万9,800円 商品買取代300万円 |
買取業だけあって、取扱い商品に貴金属やブランド品も多いため、月間の商品買取代として300万円程度が必要となります。宝の蔵によると、1日に5~6人の来店で利益が生じるとのことです。
②銀座屋
銀座屋は、店舗買取、出張買取、宅配買取をいち早く導入して営業展開している買取のフランチャイズです。
開業資金合計 | 200万円 |
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開業資金内訳 | 加盟金100万円 研修費50万円 開業支援金・開業準備金50万円 |
銀座屋の収益モデルは、次のとおりです。この収益モデルは、銀座屋直営店の2019年度の月次平均実績です。
月間売上高 | 1,122万3,000円 来店数146人 |
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月間営業利益 | 298万5,000円 |
ロイヤリティ等(月間) | ロイヤリティ月額10万円 広告協賛金10万円 商品買取代645万8,000円 |
買い取った商品の再販売先開拓は本部がサポートしてくれるため、在庫を抱えるリスクが少ないメリットがあります。
修理
修理(リペア)業は、物の修理やメンテナンスを請け負うサービスです。修理業はその幅が非常に広く、大きな物では建物のリフォームや外構の修繕、車のケアなど、また、小さな物では家具や時計、装飾品などの修理まで扱っています。その他、修理プラスαとして、どんな仕事でも請け負う便利屋として営業しているフランチャイズもあります。
修理業は、無店舗で営業ができ、また、在庫を抱えることも少ないため、開業費用を低額に抑えることができます。
修理業で開業を検討する場合は、以下の点がポイントとなります。
- ・自宅または小規模店で開業できるか
- ・1人で開業できるか
- ・機材はどの程度揃える必要があるか
必要な機材は、営業の対象により異なる。建物のリフォームや外構の修繕では大工・左官業の機材、時計や装飾品の修理では細かい専門用具が必要 - ・修理やメンテナンスの技術を習得する研修が充実しているか
【修理業の実例】
①ワールドリペア
ワールドリペアは、革・アルミ・木工・ボディコーティングなど、あらゆる物の修理・メンテナンスを手掛けるフランチャイズであり、本業とするのみでなく、土日のみ稼働して副業で儲けるコースも設定されています。店舗なし・在庫リスクなしが売りで、ロイヤリティも0円と注目です。
ワールドリペアの開業費用は、次のとおりです。
開業資金合計 | 〇本業プラン 262万3,590円~ 〇副業プラン 89万3,310円~ |
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開業資金内訳 | 〇本業プラン 加盟金80万円 技術研修費25万円 営業支援費25万円 機材(エアーコンプレッサー・ミシン)・材料費132万3,590円~ 〇副業プラン 加盟金20万円 技術研修費25万円 営業支援費25万円 機材(エアーコンプレッサー・ミシン)・材料費44万3,310円~ |
開業資金をみると、本業プランに比べ、副業プランが安くなっています。本業プランは人口50万人以上、副業プランは人口10万人以上を営業エリアのテリトリーとしています。開業資金の内訳には、店舗物件取得費や店舗改装費などがないことから、新たな店舗を出店するのではなく、既存スペースや自宅での開業が想定されています。
ワールドリペアの収益モデルは、次のようになっています。この収益モデルは、ワールドリペアの既存店の収益平均値から作成したものです。
月間売上高 | 〇本業モデル 売上高80万円 1日8時間、20日稼働 〇副業モデル 売上高30万円 1日3時間、8日稼働 |
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月間営業利益 | 〇本業プラン 76万円 〇副業プラン 28万5,000円 |
ロイヤリティ等(月間) | ロイヤリティ0円 材料費 売上の5% |
上表の収益モデルで、本業モデルの月間売上高80万円の内訳は、財布リペア20件、カバンリペア20件、靴リペア30件、その他5件となっています。また、副業モデルの月間売上高30万円の内訳は、財布リペア10件、カバンリペア8件、靴リペア5件、その他2件となっています。
②千里エクステリア
千里エクステリアは、住宅の外構などエクステリアを主体に修理を行うフランチャイズです。外構業を営むための特別な資格は不要で、未経験者でも3カ月にわたる研修で知識・技術が習得できます。
開業資金合計 | 30万円 |
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開業資金内訳 | 加盟金30万円 |
千里エクステリアの売りは、加盟金30万円のみで開業ができる点です。しかも、研修期間中も給与が支給されます。千里エクステリアの収益モデルは、次のとおりです。
年間売上高 | 5,760万円 |
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年間営業利益 | 1,216万円 |
ロイヤリティ | 総売上げの5% |
千里エクステリアでは、集客は本部がサポートしてくれます。また、加盟店が現場作業に専念できるよう、営業・図面・見積・受発注なども本部で一括サポートしています。
ハウスクリーニング
ハウスクリーニングは、住宅やビルの清掃を請け負うサービスです。近年、高齢世帯や共働き世帯の増加により、ハウスクリーニングに対するニーズが高まっています。清掃業は店舗や設備が不要で、清掃用具類の保管庫があれば開業することができます。また、在庫を抱えることもないため、事業に伴う大きなリスクもありません。
ハウスクリーニング業で開業を検討する場合は、以下の点がポイントとなります。
- ・自宅または小規模店で開業できるか
- ・1人で開業できるか
- ・機材はどの程度揃える必要があるか
ハウスクリーニング業で必要な機材は、住宅専門では家庭用清掃機材でよいが、ビル清掃も対象にすると床洗浄研磨機などの専門機材が必要 - ・ハウスクリーニングの技術を習得する研修が充実しているか
【ハウスクリーニングの実例】
①おそうじ本舗
おそうじ本舗は、2020年度の依頼件数が27万件の実績を誇る全国展開のフランチャイズとして有名です。おそうじ本舗は、ハウスクリーニング業者として名が知れていますが、併せて、修理や便利屋の業務も行っています。個人向けのハウスクリーニングは、1件の受注で約2万円の高単価とされています。
開業に必要な資金は、305万円(税抜)からとなっています。
開業資金合計 | 305万円~ |
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開業資金内訳 | 加盟金30万円 保証金20万円 研修・講習費55万円 機材費185万円 システム導入費15万円 |
必要な自己資金 | 50万円~ |
開業資金の内訳をみると、店舗物件取得費や店舗改装費などがありません。これは、新しく店舗を構えなくても、既存のスペースや自宅で開業ができるからです。ただし、ハウスクリーニングや修理に必要な機材費およびその使い方を習得するための研修・講習費が必要です。
おそうじ本舗の収益モデルは、次のようになっています。この収益モデルは、おそうじ本舗の既存店の収益平均値から作成したものです。
月間売上高 | 〇1人開業 売上高94万2,200円 〇従業員3人 売上高287万6,954円 |
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月間営業利益 | 〇1人開業 営業利益72万3,600円 〇従業員3人 売上高183万8,737円 |
ロイヤリティ等(月間) | ロイヤリティ6万円 広告分担金2万円 システム使用料2万円 |
ペットシッター
近年のペットブームを背景に、ペットシッターの業界が成長しています。ペットシッターは、ペットを飼っている人の自宅を訪問し、買主に代わってペットの世話をする仕事です。
ペット産業は、今後も著しい成長が期待されている分野です。ペットシッター業で開業を検討する場合は、以下の点がポイントとなります。
- ・自宅または小規模店で開業できるか
- ・1人で開業できるか
- ・本部で顧客を紹介してもらえるか
- ・ペットシッターの技術を習得する研修が充実しているか
【ペットシッターの実例】
①日本ペットシッターサービス
日本ペットシッターサービスは、平成11年にフランチャイズシステムを確立した大手フランチャイズ業者です。
開業資金合計 | 60~105万円 |
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開業資金内訳 | 加盟金40万円 研修費 〇Aコース17万円 〇Bコース62万円 備品費1万5,000円 ホームページ制作費1万5,000円 |
ペットシッターは無店舗で自宅開業できる分野であり、開業費用には店舗関連経費はありません。上表で、Aコースは実務経験のある人が対象、Bコースは初心者が対象で、初心者コースの方が手厚い研修内容となっています。また、ホームページは、フランチャイズ本部に作成から管理まで任せることが可能です。
日本ペットシッターサービスの収益モデルは、次のようになっています。この収益モデルは、日本ペットシッターサービスの既存店の収益平均値から作成したものです。
年間売上高 | 約700~1,000万円 〇オーナー分 1日6件、1ケ月25日間営業 3,000円×6件×25日×12月=540万円 〇スタッフ2名雇用分 1日12件、1ケ月25日間営業 3,000円×12件×25日×12月=1,080万円 1,080万円×50%=540万円 オーナー年間収入 540万円+540万円=1,080万円 |
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ロイヤリティ等(月間) | ロイヤリティ1万8,000円 |
日本ペットシッターサービスでは、顧客紹介制度を利用できるため、加盟店オーナーの営業活動は必要ありません。また、ペットシッター向け賠償責任保険が完備されているため、不慮の事故等にも対応が可能です。
加盟店オーナー1人でも十分な営業ができますが、スタッフを雇用すれば収益の向上が見込めます。
まとめ
低資金で始めるフランチャイズのメリットは、①開業資金を貯める期間が短いため素早く開業できる、②ローン返済の負担が軽いため経営を軌道に乗せやすい、③多額の初期投資を行っていないため事業のリスクが小さい、④事業リスクがないため、初心者でも始められるなどのメリットがある反面、「投資額が少なく、事業成功への切迫感に乏しい」「潤沢な資金を使って構えた店と競争するためには、営業努力を重ねることが必要」などのデメリットがあります。
したがって、フランチャイズにおける開業を低資金に抑え、開業後も安定した経営を続けるためには、①実店舗が不要な分野を選ぶ=店舗取得・開設関連費用が不要、②1人でできる分野を選ぶ=人件費が不要、③在庫を持たない分野を選ぶ=商品の売れ残りリスクがないことがポイントとなります。
さらに、広告宣伝費をかけないPRや他店にないサービス提供などの営業努力を積み重ねるとともに、フランチャイズ本部の力を最大限借りていくことが、フランチャイズにおける低資金開業を成功させる秘訣となるでしょう。