フランチャイズを始める心構え

政府主導の働き方改革により多様化を見せ始めた労働形態。テレワークやダブルワーク、時短勤務など個人の都合に合わせた働き方が受容される社会になりつつあります。

近年、経済産業者を中心に起業・創業の支援活動の取り組みが活発化。日本は欧米と比較して起業率が低く、起業に関心を持つ人も少ないと言われていますが、そこで今注目を集めているのがFCビジネスです。

日本の起業率が低い理由に、経営知識がない、業界知識が足りないなどがよく挙げられますが、その点、フランチャイズビジネスでは経営方法や最新の業界情報などは本部が用意してくれるといった利点があります。

このほか、現在FCビジネスは成長産業としても注目されており、日本フランチャイズチェーン協会によれば、2015年度の売上高は前年比4608億円の増加となる24兆5945億円に達しました。国内の総店舗数は7年連続で増加しています。

本記事では、フランチャイズビジネスを始めるにあたって必要な心構えや最低限の知識を、中小企業庁公表資料をもとに解説していきます。

独立・開業のきっかけとなるフランチャイズ

経営未経験でも、本部から経営指導や営業指導を受けることで短期間で事業を始めることができるのがフランチャイズビジネスの最大のメリットと言えます。

フランチャイズ加盟の基礎知識

フランチャイズに加入するためには、本部に対して加盟料や経営指導料を払う必要がありますが、その代わりプロの経営ノウハウと豊富な業界情報を得ることができます。

本部に支払うお金

加盟料(イニシャル・フィー) 契約締結時に支払うもの
経営指導料(ロイヤリティ・フィー) 契約期間中に定期的に支払うもの。売上高のうち一定の割合を支払う。

フランチャイザーとフランチャイジーの違い

FCビジネスでは、本部である事業者のことをフランチャイザー、加盟する契約者のことをフランチャイジーと呼びます。日本では、加盟者や加盟店とも呼ばれます。

フランチャイザー(本部)は、加盟者に対して独自の販売システムや経営ノウハウ、商標、ブランド力などを提供します。

フランチャイジー(加盟者)は、本部の事業ノウハウを利用して経営・営業活動を行い、その見返りとして売り上げの一部を定期的に本部に支払います。

フランチャイザー(本部) 自社の商標、サービスマークの使用を加盟者に対して許諾する側の事業者。本部とも呼ばれる
フランチャイジー(加盟者) フランチャイザーの商標、サービスマークなどの使用を許諾される側の事業者のこと

特定連鎖化事業

フランチャイズビジネスは、中小小売商業振興法では「特定連鎖化事業」(同法11条)」と呼ばれます。

中小小売商業振興法11条第1項

特定連鎖化事業 連鎖化事業であつて、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨及び加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの

同条は、フランチャイザーに対してフランチャイジーと契約する際に説明しなければならない事項について、以下のように定めています。

1 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
2 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
3 経営の指導に関する事項
4 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項
5 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項
6 契約の期間並びに契約前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項の更新及び解除に関する事項

契約する際に心がけるコト

中小企業庁が公表している「フランチャイズ事業を始めるにあたって」のなかでは、「事業であるからにリスクがあることを十分に認識する必要がある」と述べられています。つまり、経営とはすぐに軌道に乗るものではなく、失敗することもあります。また、加盟者は「独立した事業」であり、加盟したからといって本部の社員になるわけはありません。フランチャイザーとフランチャイジーはあくまで対等なビジネスパートナーであることを意識することが必要です。

フランチャズ事業の内容を十分に把握する

加盟する際、本部の事業内容を十分に吟味することが必要です。フランチャイズ契約は、契約期間が比較的長いため、その事業内容や契約内容について事前にできる限り自分で調査して、契約にのぞむのが理想的です。

分からないことがあれば、素直に質問し、十分納得ができるまで理解することが必要です。中小企業庁によれば、フランチャイズの契約トラブルとして、加盟契約後、事前に十分に説明を受けていなかったなどの相談が相次いでいるとされます。

中小小売商業振興法でもフランチャイザー側に事業内容などについて十分に説明する義務を課しています。のちのトラブルを避けるためにも、疑問点は残さないようにしましょう。

契約するまでの基本ステップを確認する

フランチャイズに加盟するまでの過程を確認します。独立・加盟するまでには、家族の理解や資金調達、物件・立地調査など入念な準備が必要となるからです。

加盟までの基本ステップ

1 加盟の心構えと家族の同意
2 本部事業者の情報収集
3 本部事業者候補の選定
4 本部事業者訪問
5 他加盟店訪問
6 資金面や物件有無の確認
7 本部事業者との面談
8 加盟希望の有無の意思表示
9 本部事業者による法定開示書面の交付・説明
10 物件・立地調査と検討
11 経営計画書の検討
12 資金計画の検討
13 資金調達
14 加盟の意思決定
15 フランチャイズ契約

(参照:中小企業庁「フランチャイズ事業を始めるにあたって」)

特に(9)本部事業者による法定開示書面の交付・説明では、トラブルの元にもなりやすいロイヤリティに関する事項をしっかりと確認しておくことが必要です。

ロイヤリティの算出方法はさまざまですが、中小企業庁によれば、定額制ではなく、売上に対して一定の比率を乗じて算出する場合は、売上高の範囲を確認しておくことが重要です。

たとえばコンビニエンスストアなどでは、廃棄ロスや棚卸ロスを仕入から差し引いた金額を売上総利益として算定する場合があり、廃棄ロスが増えるほど、ロイヤリティは増え、加盟店の利益が少なくなるといったことも想定されます。「思った以上にロイヤリティが高い」といった相談は非常に多く、赤字でもロイヤリティの支払いが発生することもあるので、注意が必要です。

フランチャイズガイドラインを確認!

公正取引委員会は、独占禁止法に基づいて、フランチャイズに関するガイドラインを策定し、公表しています。「フランチャイズ・ガイドライン」では契約前に本部側が開示することが望ましいとされる8つの項目を明示しています。確認しておきましょう。

1 加盟後の商品等の供給条件に関する事項(仕入先の推奨制度等)
2 加盟者に対する事業活動上の指導の内容、方法、回数、費用負担に関する事項
3 加盟に際して徴収する金銭の性質、金額、その返還の有無及び返還の条件
4 加盟後、本部の商標、商号等の使用、経営指導等の対価として加盟者が本部に定期的に支払う金銭(以下「ロイヤルティ」という。)の額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法
5 本部と加盟者の間の決済方法の仕組み・条件、本部による加盟者への融資の利率等に関する事項
6 事業活動上の損失に対する補償の有無及びその内容並びに経営不振となった場合の本部による経営支援の有無及びその内容
7 契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項
8 加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容

(参照:公正取引委員会「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」)

中小小売商業振興法における22開示項目

中小小売商業振興法では、「直近3年の加盟者の店舗数」「契約期間中に知り得た情報の開示禁止」「加盟に際する禁煙の徴収方法および時期」など、さらに具体的な開示項目を定めています。こちらも合わせて確認しておきましょう。

1 本部事業者の氏名及び住所、従業員の数
2 本部事業者の資本の額又は出資の総額及び主要株主の氏名又は名称、他に事業を行っているときは、その種類
3 子会社の名称及び事業の種類
4 子会社の名本部事業者の直近三事業年度の貸借対照表及び損益計算書称及び事業の種類
5 特定連鎖化事業の開始時期
6 直近の三事業年度における加盟者の店舗の数の推移
7 直近の五事業年度において、特定連鎖化事業の契約に関する訴訟の件数
8 営業時間・営業日及び休業日
9 本部事業者が加盟者の店舗の周辺の地域に同一又は類似の店舗を営業又は他人に営業させる旨の規定の有無及びその内容
10 契約終了後、他の特定連鎖化事業への加盟禁止、類似事業への就業制限その他加盟者が営業禁止又は制限される規定の有無及びその内容
11 契約期間中・契約終了後、特定連鎖化事業について知り得た情報の開示を禁止又は制限する規定の有無及びその内容
12 加盟者から定期的に徴収する金銭に関する事項
13 加盟者から定期的に売上金の全部又は一部を送金させる場合はその時期及び方法
14 加盟者に対する金銭の貸付け又は貸付けの斡 旋を行う場合は、それに係る利率又は算定方法及びその他の条件
15 加盟者との一定期間の取引より生ずる債権債 務の相殺によって発生する残額の全部又は一部に対して利率を附する場合は、利息に係る利率又は算定方法その他の条件
16 加盟者に対する特別義務店舗構造又は内外装について加盟者に特別の義務を課すときは、その内容
17 契約に違反した場合に生じる金銭の支払いその他義務の内容
18 加盟に際し徴収する金銭に関する事項
19 加盟に際し徴加盟者に対する商品の販売条件に関する事項収する金銭に関する事項
20 経営の指導に関する事項
21 使用される商標、商号その他の表示
22 契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項

(参照:中小企業庁「フランチャイズ事業を始めるにあたって」)