フランチャイズ契約とは何? 契約時に気をつけるポイントをわかりやすく解説!

会社設立を考える上で、ゼロから事業を立ち上げるよりも、既に完成されたビジネスを利用する「フランチャイズ」の仕組みは以前からメジャーとなっています。著名なブランドやビジネスシステムを活用できる一方、契約期間の縛りや解除条件、違約金、その他ブランド毀損の防止の必要性など、自身でビジネスを行う場合よりも、形にはまった形で事業を運営していく必要があります。

特に、フランチャイズの契約書に関しては、様々な点で、フランチャイザー、つまり先方に取って有利に設計されています。フランチャイジーとして加入する場合は、契約書の内容を熟読し、納得した上で加入する必要があります。

そこで当記事ではフランチャイズの契約書について詳しく解説するので、ご参考ください。

なぜフランチャイズ契約書を結ぶのか

なぜフランチャイズ契約書を結ぶのか

フランチャイズに加入する上では、フランチャイズ事業者(フランチャイザー)と、フランチャイズ契約を締結する必要があります。

契約を締結する主な理由は、「フランチャイズの看板を守るため」です。

フランチャイズ契約を締結する必要性

具体的には、

  • ・フランチャイズのブランドイメージの維持
  • ・フランチャイズの損害防止
  • ・フランチャイズの安易な脱退・ノウハウを持ち出すことの防止
  • ・その他フランチャイズ事業者側の利益の維持

などです。フランチャイズ事業者側は、事業パッケージを数年・数十年かけて開発してきました。このノウハウを利用させる分、フランチャイズ加入者側にも、「フランチャイズのイメージにそぐわない行動がない」よう、きちんと契約書や経営指導で管理していく必要があります。

そのため、全体としてフランチャイズ事業者側に有利な契約書となっています。

一般的な企業間・個人間の契約であれば、契約書の内容に関する交渉の余地はありますが、フランチャイズの場合は、事業者側が差し入れる契約書を原則そのまま受け入れる形となります。(例外的に、大きな事業者に対しては、特別の覚え書きなどが締結されるケースもあり得ます)

そのため、フランチャイズ契約書に関する様々な注意点を把握しておくことが大切です。また、フランチャイズ加入者として問題を起こし、賠償請求・契約取り消しなど不利益のないように、またフランチャイズのブランドイメージを低下させることのないように事業を行う必要があります。

フランチャイズのイロハ

フランチャイズは、事業者側が用意したビジネスパッケージをそのまま受けて、本部の意向と違わぬ形で運営する必要があります。日本全国どこへ行っても同じ水準・同じサービス・同じ製品の提供が受けられる、これがフランチャイズの強みと言えます。

有名なフランチャイズ事業者と言えば、コンビニエンスストア・ファーストフードチェーンなどがあります。どれも、基本的には同じような店舗・同じような商品で運営されるのが原則です。(地域・土地によっては、その土地の景観・環境にそぐうよう店舗を工夫したり、地域独自のオリジナルメニューを作るケースもあります)

例えば、コンビニエンスストアであれば、過疎地などよほど特別な地域でない限り、24時間営業がなされていたり、統一的なキャンペーンが行われるなど、直営店もフランチャイズも、足並みを揃えた運営になっています。(北海道を主力とするコンビニエンスストアのように、営業時間に柔軟性も持たせている、例外的な存在もあります)

そのため、フランチャイズ加盟店が、本来フランチャイズが扱わない品を扱う、ということは、基本的に認められていません。フランチャイズ加入者の商品・サービスというのは許されず、あくまで本部の方針に沿う、統一された運営が必要となります。

建前上は、本部と契約者の対等な契約というのがフランチャイズですが、実質的には、本部の指示にフランチャイズが従う、もし従わない場合は契約解除や違約金などの罰則がある関係で、力関係は本部>フランチャイズ加入者というのが現実と言えます。

力関係は本部>フランチャイズ加入者

また、フランチャイズ契約に関しては、事業者間の契約ですので、クーリングオフは適用されません。また、契約内容に関して、消費生活センターが介入することも当然できません。(消費生活センターが対応できるのは、事業者と個人のトラブルのみです)

ただし、消費生活センターでは保護されない分、事業者間の取引であるため、本部と加盟店間の取引において不公正な取引方法が用いられた場合は、独占禁止法上での問題となります。

そのため、公正取引委員会が介入するケースも想定されます。

また、公正取引委員会は、独占禁止法に基づき、「フランチャイズ・ガイドライン」を公表しています。

これにより、どのような行為が、「ぎまん的顧客誘引(本部が加盟店の募集に当たり虚偽若しくは誇大な開示を行うこと等により、競争者の顧客を不当に誘引すること)」や「優越的地位の濫用(加盟店に対して取引上優越した地位にある本部が加盟店に不当に不利益を与えること)」といった独占禁止法に定める不公正な取引方法として問題になるかなどが、具体化されています。

また、独占禁止法に抵触する恐れのある事案として、取引先の制限・仕入れ数量の強制・見切り販売の制限・契約締結後の契約内容の変更、契約終了後の競業禁止など一定の措置を、「本部による優越的地位の濫用」としています。

また、本部の取引方法として、取扱商品や販売方法の極度な制限、一定の売上高の義務化・加盟者に契約の解約権を与えなかったり、解約の場合に高額の違約金を課すこと、不当に契約期間が長いことなども、問題のある行為としています。

他にも、抱き合わせ販売等拘束条件付き取引、販売価格の制限などを行わないように示しております。

上記のように、独占禁止法違反行為を行った事業者に対して公正取引委員会は、

○排除措置命令(独占禁止法第 20 条)
違反行為をした者に対して,違反行為を速やかに排除するよう命ずる行政処分
○課徴金納付命令(独占禁止法第 20 条の 6)
カルテル,入札談合等の違反行為防止という行政目的を達成するため,行政庁が違反事業者等に対して課す金銭的不利益のことをいいます。優越的地位の濫用行為が行われた場合は,違反行為をした者に対して,違反行為に係る期間(3 年間を上限とします。)における違反行為の相手方との取引額に算定率(1%)を掛けた額の課徴金が課せられる

もしフランチャイズシステムに疑問がある場合は、「公正取引委員会事務総局 経済取引局取引部 企業取引課 03-3581-1882」が窓口になっていますので、そちらに問い合わせてみると良いでしょう。

また、独占禁止法と公正取引委員会の関わりに関し、わかりやすく、詳細にまとめたパンフレットもありますので、こちらに目を通しておくと良いでしょう。

公正取引委員会の調査や一般の人からの報告を元に調査し、「排除措置命令・課徴金納付命令・警告・注意」の措置を取るケースがあります。

いずれにしても、フランチャイズ契約は、事業者と事業者の商取引であるため、一般の商取引におけるクーリングオフのように、一定期間であれば無条件で契約解除ができるわけではありません。一度契約書にハンコを押したら、後戻りはできない物と心得ておきましょう。

フランチャイズの契約書の注意点

フランチャイズの契約書の注意点

フランチャイズの契約書の文面は、会社によって異なります。

ただし、一般的な方向性としては、「中小小売商業振興法」という法律で、フランチャイズ事業のあり方が定められています。

この法律では、中小小売商業の経営近代化を図る有効な手段として、連鎖化事業(ストアチェーン事業)を定義した上で、その中でもフランチャイズ事業を「特定連鎖化事業」と定め、運営が中小・個人事業主に取って過度な負担とならないよう、様々な事項を定めています。

フランチャイズ契約にかかる、重要な条文をひもといてみましょう。

第11条 連鎖化事業であって、当該連鎖化事業に係る約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨および加盟者から加盟に際し加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの(以下「特定連鎖化事業」という。)を行う者は、当該特定連鎖化事業に加盟しようとする者と契約を締結しようとするときは、経済産業省令で定めるところにより、あらかじめ、その者に対し、次の事項を記載した書面を交付し、その記載事項について説明をしなければならない。

  1. 一 加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項
  2. 二 加盟者に対する商品の販売条件に関する事項
  3. 三 経営の指導に関する事項
  4. 四 使用させる商標、商号その他の表示に関する事項
  5. 五 契約の期間並びに契約の更新および解除に関する事項
  6. 六 前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項

このように、契約時には様々な具体的事項を文書化した「契約書」を締結しないといけません。また、契約書以外にも、様々な開示書面が交付されます。

加えて、フランチャイズ加入者保護の観点から、中小小売商業振興法施行規則・独占禁止法などで、フランチャイズの適正な運営や情報開示がなされる定めが存在しています。

フランチャイズ契約を締結する前にチェックすべきポイントとして、過去トラブルが生じた事項を中心に、中小小売商業振興法で、「事前開示項目」を加入者に対し、契約締結前に書面を交付し、説明することを義務付けています。

この「事前開示項目」こそ、特に注意して確認すべき事項と言えます。

事前開示項目は、下記の通りです。

事前開示項目 チェックポイント
1.本部事業者の氏名および住所、従業員の数(法人の場合は、その名称・住所・従業員の数・役員の役職名および氏名) 会社の基本的な事項ですので、ここについては流し読みで良いでしょう
2.本部事業者の資本の額または出資の総額および主要株主の氏名または名称、他に事業を行っているときは、その種類
3.子会社の名称および事業の種類
4.本部事業者の直近三事業年度の貸借対照表および損益計算書 本部事業者の財務状況、特に収益が本業ではなくフランチャイズ収入・加盟金などに片寄る(加盟店から搾取する)構造になっていないか注意が必要です
5.特定連鎖化事業の開始時期 フランチャイズ事業の開始時期で、歴史があれば多少信頼が置ける、程度の物です
6.直近の三事業年度における加盟者の店舗の数の推移 ア.各事業年度末の加盟者の店舗の数
イ.各事業年度内に加盟した新規出店数
ウ.各事業年度内に契約解除された店舗数
エ.各事業年度内に契約更新された店舗数および更新されなかった店舗数
の開示が求められており、加盟店舗が減少している場合は、特に注意した方が良いです
7.直近の五事業年度において、特定連鎖化事業の契約(フランチャイズ契約)に関する訴訟の件数 ア.本部事業者が加盟者または元加盟者を訴えた件数
イ.加盟者または元加盟者が本部事業者を訴えた件数
シンプルに、訴訟に至るということは本部と加盟者の信頼関係が決裂していることを意味しますので、この件数が多い場合は特に注意し、紛争内容も含めて判断する必要があります
8.営業時間・営業日および休業日 営業時間が自分の生活に支障を来さないか、体力面で問題はないか、休みはとれるのか(家族・親族の急病・出産・逝去などイレギュラーな事態で休めるのか)、従業員を雇用する場合の採算性はどうなるか等様々な角度から確認すると共に、やむを得ず指定された営業時間に営業できなかった場合の罰則があるかなどの確認も必要です
9.本部事業者が加盟者の店舗の周辺の地域に同一または類似の店舗を営業または他人に営業させる旨の規定の有無およびその内容 後ほど説明する、同一店舗が近隣に出店しない、というテリトリー権が認められているのか、認められていない場合の近隣の出店計画はどうなっているのかを確認した方が良いです
10.契約終了後、他の特定連鎖化事業への加盟禁止、類似事業への就業制限その他加盟者が営業禁止または制限される規定の有無およびその内容 契約終了後も、競業禁止や秘密保持、義務など、FC契約で得た情報・機密を守る必要があります。どのような制限がかかるのか理解しておきましょう
11.契約期間中・契約終了後、特定連鎖化事業について知り得た情報の開示を禁止または制限する規定の有無およびその内容
12.加盟者から定期的に徴収する金銭に関する事項の件数 ア.額または算定に用いる売上、費用等の根拠を明らかにした算定方法
イ.商号使用料、経営指導料その他の徴収する金銭の性質
ウ.徴収時期
エ.徴収方法
ここの部分も、文書だけだとわかりにくい点がありますので、納得いくまで説明してもらうことが重要です
13.加盟者から定期的に売上金の全部または一部を送金させる場合はその時期および方法 会計処理(後述のオープンアカウントなど)でも、いろいろ複雑な部分がありますので、ぜひ詳しい説明を受けておくことが必要です。
14.加盟者に対する金銭の貸付けまたは貸付けの斡旋を行う場合は、それに係る利率または算定方法およびその他の条件
15.加盟者との一定期間の取引より生ずる債権債務の相殺によって発生する残額の全部または一部に対して利率を附する場合は、利息に係る利率または算定方法その他の条件
16.加盟者に対する特別義務店舗構造または内外装について加盟者に特別の義務を課すときは、その内容
17.契約に違反した場合に生じる金銭の支払いその他義務の内容 この点は非常に大事です。自身に責がなくても、一時期問題になった「バイトテロ」のように、非常識なアルバイトが問題のある行為を行い、店全体が契約違反で賠償・もしくは強制閉店など責任問題になり、多額の金銭の支払いを要されることも考えられます
18.加盟に際し徴収する金銭に関する事項 ア.金額または算定方法
イ.加盟金、保証金、備品代その他の徴収する金銭の性質
ウ.徴収時期
エ.徴収方法
オ.当該金銭の返還の有無およびその条件
こちらも後ほど述べますが、契約後、店舗が確保できず開店ができないというトラブルもあるようです。こういうイレギュラーな事態の場合に、返金がされるのかは確認した方が良いです
19.加盟者に対する商品の販売条件に関する事項 ア.加盟者に販売し、または販売をあっせんする商品の種類
イ.商品の代金の決済方法
販売・あっせん商品の種類を確認する必要があります
20.経営の指導に関する事項 ア.加盟に際しての研修または講習会の開催の有無
イ.加盟に際して研修または講習会が行われるときは、その内容
ウ.加盟者に対する継続的な経営指導の方法およびその実施回数
経営指導ですが、別途費用がかかるケースもありますので、その点は事業者に確認した方が良いでしょう。
また、事業の中核となる部分を研修、講習会でレクチャーしてくれるわけですが、その期間で本当に必要な技術が身につくのかも考えた方が良いでしょう
21.使用される商標、商号その他の表示 ア.使用させる商標・商号その他の表示
イ.当該表示の使用について条件があるときはその内容
商標の利用方法、広告・宣伝などでも注意する必要があります
22.契約の期間並びに契約の更新および解除に関する事項 ア.契約期間
イ.更新の条件および手続き
ウ.解除の要件および手続き
エ.契約解除の損害賠償
どのような形態の解約にいくらの解約違約金を支払うこととなるのか、やむを得ない事情での解約や不可抗力での解約はどのような扱いになるのか、非常に大事な部分ですので、フランチャイズ事業者に確認しましょう

また、「フランチャイズ・ガイドラインにおける開示が望ましい事項」として、下記の事項を提示する事を推奨しています。

加盟後の商品等の供給条件に関する事項(仕入先の推奨制度等)
加盟者に対する事業活動上の指導の内容、方法、回数、費用負担に関する事項
加盟に際して徴収する金銭の性質、金額、その返還の有無および返還の条件
ロイヤルティの額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法
本部と加盟者の間の決済方法の仕組み・条件、本部による加盟者への融資の利率等に関する事項
事業活動上の損失に対する補償の有無およびその内容並びに経営不振となった場合の本部による経営支援の有無およびその内容
契約の期間並びに契約の更新、解除および中途解約の条件・手続に関する事項
加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一またはそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業することまたは他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無およびその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無およびその内容

多くのフランチャイズ事業者は、上記のガイドラインも詳しく説明しています。そのため、フランチャイズ・ガイドラインの説明、もしくはそれに準ずる説明がない場合は、少し考えた方が良いでしょう。

以上、非常に項目が多いですが、一つ一つがフランチャイズ契約において重要な要素を担っています。全てを細々と確認していくのは大変ですが、今後数年・十数年にわたる契約であることからしっかりと読み込み、可能であれば、弁護士・税理士など専門家に、有料で依頼し、契約書のリスク部分を検討してもらうことも一つの手法と考えて良いでしょう。

フランチャイズ説明会の注意点

フランチャイズ説明会の注意点は「冷静に考える」という点です。新型コロナウイルスの影響もあり、集合でのフランチャイズ説明会は少なくなりましたが、一般論として、フランチャイズ説明会は、事業のいい部分を「徹底的に」アピールします。

裏を返すと、課題のある部分、不利な部分は、最小限の説明にとどめるか、説明の必要がない事項に関しては、説明を省略します。

他のビジネスでもそうですが、フランチャイズの事業説明会の目的は、「フランチャイズへの加入契約をとりつけること」の一点です。

そうすると、必然的に、「有利な点は徹底的にアピール、不利な点はさらりと流したり、説明しない」など、説明事項のボリュームに強弱をつけることになります。

また、フランチャイズ事業者側としては、説明会が終わった、参加者の気持ちがホットなときに契約をさせたいと考えています。

そうするといきおい、「いかに自社のフランチャイズ事業が優れているか」「早く契約し、すぐビジネスを開始すべきか」というトーンで物事が進んでいきます。

しかし、ここで場の雰囲気やスタッフの勢いに呑まれるのではなく、冷静に「このフランチャイズ事業に加盟する価値はあるのか」「フランチャイズ事業のリスクと問題点は」という点を冷静に考え、感情的にならず、論理的に考えていく必要があります。

何かのメリットを呈示され、その場で契約することを強く迫られたとしても、一旦持ち帰って、じっくりと検討し、時には第三者目線の意見をもらうことも必要です。

フランチャイズ契約は、一度署名捺印をしてしまうと、後戻りはできません。一方、事業者側は、いかに相談会の参加者に、その場でハンコを押させるかという点に関して、非常に計算して説明会を作り込んでいるケースも想定できます。

いずれにせよ、冷静に検討することが重要です。

規約違反の罰則に注意

規約違反の罰則に注意

規約違反は、経営者自身の問題・事情による規約違反、従業員による規約違反など、様々な事情があります。

まずは、何が規約違反になるのかをしっかり把握しておくことが大切です。また、加入者側からすれば、「これが規約違反!?」となる事項もあるでしょう。

規約違反と指摘され、契約解除・損害賠償請求に至ってからでは遅いので、「何が規約違反に該当するのか」をきちんと把握する必要があると言えます。

フランチャイズ契約の落とし穴

フランチャイズ契約の落とし穴

ここまでで述べてきたように、フランチャイズ契約に関しては、複雑さ故の落とし穴が多くあり、契約書や各種書面を注意深く検討する必要があります。

フランチャイズ契約のトラブル例

フランチャイズトラブルに関しては、様々なことが問題になり、時にニュースになることもありますが、中小企業庁の示す、よくあるトラブル事例を見てみましょう。

よくあるトラブル事例

①フランチャイズ本部の呈示した売上・経費予測と実態が異なる

先ほども述べたとおり、本部事業者が提示する売上予測等は、既存店の過去の平均値や、一定の前提に基づいて算出した想定値のため、実際に蓋を開けてみると、想定売上の半分や、想像以上の経費というケースも想定できます。

なぜこのような売上予測なのか、という売上・経費の算出根拠を明確にしてもらうとともに、類似した環境にある既存加盟店から話を聞いたり(近すぎると警戒されるので、ある程度距離がある所に確認した方がよい)、同業他店と比較する、加盟希望者自身が独自に出店地域の状況を調査したり、専門家に相談するなど、フランチャイズ本部の話を鵜呑みにしない姿勢を持つことは重要です。

②開店できなかったのに加盟金が返還されない

問題視されている契約形態の中には、店舗候補の物件が確定する前に契約を締結し、加盟金と同趣旨の金銭の支払いが求められるケースがあるそうです。

この場合、店舗が確定すれば良いのですが、未確定の場合は、「加盟金が返金されない」「なのに店舗は開店できない」「契約書に署名・捺印をしているため、裁判などの手段を利用しようとしても勝てない」ということが想定されます。

店舗が未確定のまま契約を締結する場合は、本部事業者による開店に向けた支援体制の仕組みや、開店できなかった場合の金銭の返還の有無等について明確な説明を受け、開店できなかった場合のリスクを理解しておくことが重要です。

③ロイヤリティーが想定以上に高く、利益を圧迫している

ロイヤリティー(ロイヤルティ)とは、本部事業者の持っている商標・システムやノウハウ、貸与設備、広告等の継続的使用に対する対価や、経営指導を受けるための費用として、加盟店が開店後に継続的に本部事業者に支払う費用の事を指します。

定額制で毎月○○万円、と固定されている場合はわかりやすいですが、売上高の○%、売上総利益の○%等とされている場合は、売上高、売上総利益の範囲がどこまで含むのかを確認しておく必要があります。

また、ロイヤルティは必ずしも純利益に応じて支払うものとは限りません。例えば粗利や売上高がロイヤルティ算定の基準となる場合や、店舗規模・客席数によって算定する場合は、売上不振・コスト増による赤字の場合でも、ロイヤリティーを支払う義務があるケースもあります。

このように、ロイヤリティーがどのように算定されるかは、特に注意してフランチャイズ事業者に確認し、仕組みに納得した上で加入するようにしましょう。

④赤字になったら、フランチャイズ本部から自動的に貸付が行われていた

お金を借りる契約をしていないにもかかわらず、貸付が自動的に行われると言うことはまずありません。(総合口座における定期貯金担保のいわゆる「ウラ定期」を除く)

ですので、一般の方に取ってはにわかに信じがたいところがあるかと思いますが、特に後コンビニエンスストアの業態を主として、加盟店と本部事業者の間で発生する様々な債権債務において、加盟店側の勘定がマイナスになった場合、自動的に本部から利子付きで融資がされる仕組みがあるケースもあります。

この際に、結果として「事実上の本部による融資が実行されていた」というケースが起こります。

チェーンにより貸付の仕組みは異なりますが、概して複雑な仕組みです。システムや自動融資がある場合の利率に関しては、確認・理解しておくのが望ましいでしょう。

⑤経営に行き詰まり、解約を申し出たら更に違約金を請求され払えない

フランチャイズ契約に関して、数ヶ月、数年単位でうまく行っても、時間が経つにつれ、経営環境の変化により経営が悪化し、事業の継続が困難になることもあります。

概してそういう場合は、ほぼお金の余裕もなくなっているものですが、フランチャイズ事業者との契約によっては、中途解約する際の解約金が発生し、「そんなお金払えない!」とトラブルになることがあるようです。

このため、

  • ・契約が解除されるケースはどのような場合か
  • ・どのような手続きを経て、契約解除に至るのか。
  • ・加盟店が契約期間途中で解約を申し出たときは、解約金または損害賠償金は必要か
  • ・解約金・損害賠償金を支払う義務があるとしたら、その算定方法
  • ・加盟店が業績不振に陥り解約を申し入れる、という加盟店に支払の余裕がない状況でも、解約金が必要かどうか

など、解約・契約解除時のお金・手続きの問題はしっかり確認しておく必要があります。

⑥自身の店の近くに同じチェーンの店舗が開店したり、競合チェーン店が開店した

これは特にコンビニエンスストアでよくあることですが、コンビニエンスストアの競合他社が、既にある店舗の近く(極端な場合は数十メートルとなり)に店舗を出店してくることがあります。

もっとフランチャイズ加入者にとって納得が行かないのは、同じチェーンの店(直営店・FC店)が出店することです。同じ店舗に出店されると、必然的に売り上げは近隣の同じブランドのコンビニエンスストアに持って行かれることになります。

フランチャイズ契約では、同一チェーン内において加盟店に一定の領域の商圏保護や地域制限(テリトリー権)を設けているものもありますが、一方で、こういったテリトリー権を認めない契約もあります。(コンビニエンスストアに多いと言われている)

コンビニエンスストアは、今でこそ数の勝負は落ち着き始めていますが、最近までチェーン数の拡大が多くのコンビニエンスストア事業者の競争要因でした。

店舗数を増やせば増やすほど、本部は利益が出ますし、商品開発に予算をかけたり、大量の購買により安価な仕入れができるからです。

そのため、将来近隣に「同一チェーンの店舗」が開店することがあり得るのかどうか等、契約の条項や出店計画を確認し、納得・妥協した上で契約を締結することが必要です。

フランチャイズを選ぶ際の注意点

フランチャイズを選ぶ際の注意点

フランチャイズを選ぶ、加入する際には、「自身が事業者としてフランチャイズ業者と契約するのだ」という強い自覚が必要です。

中小企業庁が、「フランチャイズ事業を始めるにあたって」というパンフレットを出しており、こちらをひもときながら、注意点をまとめていきます。

注意点

○加盟店は従業員ではなく、「独立した事業者」であるということ

フランチャイズ契約は、加盟店と本部事業者がそれぞれ独立した事業者として、各々の責任において締結するものですので、おんぶにだっこという姿勢ではいけません。

あくまで、独立事業者の自覚を持ち、事業に主体的に取り組むのだ、という気持ちを持つ必要があります。

○事業には、リスク(不確定要素)があることを理解する

リスクというのは、「危険」という意味のイメージが強いですが、「不確定要素」という意味もあります。

事業に関しては、「必ず儲かる」という手法は存在しません。ある場所で繁盛しているフランチャイズも、立地や地域の経済環境で、別の場所では繁盛しないという事も考えられます。

また、サービスレベルが顧客の満足する基準でないと、いくら有名なフランチャイズであっても、顧客が手着せず、利益が上がらなくなるかもしれません。

このように、事業にはリスクがあることを認識し、契約解除条件や違約金、その他のリスクや加盟者の責務を十分に理解することが必要です。

○フランチャイズ事業の内容を十分に検討する

フランチャイズ契約は、長期にわたるケースが多く、途中解約の場合は違約金などがかかるケースも多いです。そのため、事前に別の加盟店を視察したり、他のフランチャイズ加入者、第三者などの話を聞くなど、多面的な角度から情報を集め、「本当にこのフランチャイズ事業に加入して大丈夫なのか」をしっかり検討する必要があります。

フランチャイズ事業者が、「事業目論見書」「想定プラン」など、非常に良い数値を示したプランを提示する事があるかもしれません。

しかし、あくまでプランは理想的な条件におけるシミュレーションの一つに過ぎず、プラン通りに行かなかった場合でも、プランを呈示したフランチャイザー側が責任を取ったり、補填してくれるわけではありません。

そのため、「当初呈示されたプランと実際の売り上げ・利益が違う!」という事態になっても、フランチャイザーは、「あくまでこれは目論見書・プランであり、実際の成果を約束する物ではありません。

下に小さく、「これはシミュレーションで、実際とは異なる場合がありますという旨の文言が書いてありますよね」と言うだけです。

また、シミュレーションはフランチャイザーがあくまで参考資料として加入検討者に差し入れる物で、何の法的効力も持ちません。一方、契約書は、お互いが納得して署名・捺印をしたもので、契約書面として強い証拠能力があります。

その点に関し、あくまでプランは理想的なケースと心得て、鵜呑みにしない方が良いでしょう。

○フランチャイズ事業や契約の内容について十分納得いくまで説明を受ける

フランチャイズ事業そのものや、契約内容に関しては、どんな細かいことであっても、事業者側に確認する必要があります。

特に、「どういう場合に問題になるのか」「やむを得ない事情も含め、様々な事情でフランチャイズ契約を解約する場合に、違約金・ペナルティに関してはどのような物が発生するかなどは、事業者にしっかりと確認する必要があります。

また、契約書・各種書面の常として、加盟者側に不利な点は、小さく、わかりにくく書かれているケースが多いです。自分では理解できない文言があったときこそ、「これは具体的にどういう意味ですか?」と確認する必要がありますし、書面の隅々まで目を通し、メリット・リスク・その他要因を確認した上で、署名・捺印を行う必要があると言えます。

フランチャイズの「儲かりそうな感じ」に注意

フランチャイズの「儲かりそうな感じ」に注意

フランチャイズで、安易に「儲かる」を全面に打ち出してくる会社に関しては、注意した方が良いでしょう。どんなビジネスも「絶対」ということはありません。

一方、フランチャイズ事業者としては、加入者が増えれば増えるほど自然と「儲かる」ので、フランチャイズ事業者は「儲かる」でしょう。

しかし、フランチャイズ加入者にもきちんと儲けさせる仕組みがあるか、実績があるか、サポートがあるかの店は注意すべきですし、安易に「儲かる」、また近年では耳障りのいい「社会貢献」など、引きの強いワードを利用するフランチャイズ事業者に関しては、一歩引いた目で見た方が良いと言えます。

一つの考えとして、前にも述べた、その会社が本業で儲けているのか、それともフランチャイズで儲けているのかは重要な点です。

自社でやればやるほど利益が出る仕組みであれば、自社で体制を作って取り組みます。しかし、あえて自社でやらないという場合には、それなりの理由があります。

単に自社のリソース不足であったり、勢力を急拡大したいためフランチャイズを募集するというケースもあるかもしれません。

しかし、問題なのが、肝心な本業で儲かっておらず、フランチャイズ契約からのロイヤリティーなど、フランチャイザーから儲けているというケースです。

ここで、加盟店側もきちんと利益を出せていればいいですが、直営店が赤字のフランチャイズ事業者が、加入者の店舗を儲けさせるだけの指導ができるでしょうか?

その店を考えると、本業で儲かっておらず、フランチャイズの制度の部分が企業の屋台骨となっているのは、少し慎重に考えた方が良いかと思います。(ただし、フランチャイズを数百~数万社抱えるメガフランチャイザーの場合は例外です)

また、フランチャイズを提供しようとするビジネスが、自身が事業を始める地域のニーズに合うかという観点も重要です。

高齢者向けの宅配弁当を、核家族が大半を占める商圏で展開しても、地域のニーズとはずれてしまうため、収益が出しにくくなる恐れがあります。

一方で、高齢が多く住む老朽化した団地や、買物難民が多い地域で、高齢者向けの宅配弁当・買物代行などができると、逆に立地が強みとなるでしょう。

ただ、フランチャイズであることは、事業を限定することにも繋がってしまいます。

一般的なフランチャイズ事業であれば、事業のカラーを統一するため、フランチャイズ事業で行うこと以外の事業はできませんし、フランチャイズ事業で得た顧客リストを元に、顧客に他の商品を提案するなどということは、情報の不正な活用になる恐れもあります。

つまり、宅配弁当屋のフランチャイズであれば、弁当と、宅配弁当事業に付随する物しか販売できません。

一方、フランチャイズでない独立した事業の場合、業務内容に縛りはありませんので、「最初は便利屋として安価な案件を請け負い、その後地元の家電業者と連携した家電の買い換えの提案、リフォームの提案・・」など、様々な顧客の不便を解決できる方法を提示することで、これがビジネスに繋がることもあるのです。

いずれにせよ、フランチャイズのビジネスは、「ブランド・手法・商品・運営手法」など、様々な事業に必要なものがパッケージされている分、事業自体の自由度は低いということは割り切っておいた方が良いでしょう。

自身が事業に本気で取り組めるか・一過性のブームでないか

フランチャイズに加入する際は、事業の将来性・利益なども大切な観点ですが、当初は経営者自身が現場の第一線で働くことになるパターンが多いです。便利屋のフランチャイズであれば、様々な技術を身につける必要もありますし、物理的に汚れる仕事も、抵抗なくできる必要があります。

コンビニエンスストアであれば、アルバイトがいないときは店員として店頭に立ち、また従業員・アルバイトの勤怠管理や金銭管理など、経営者の立場と現場責任者の立場を両方こなす必要があります。

これを「数年、10年、20年と、続けていける情熱と体力を保ち続けられるか?」という観点も、フランチャイズの事業を考える上で大切と言えます。

また、事業が一過性のブームでない、常にニーズがある事業である、という観点も大切です。
例えば、以前ブームになった、白いたい焼き、メロンパン、ステーキ、タピオカ、高級食パンなどで、継続的に続いているフランチャイズ事業がどれだけあるでしょうか。

特に、単品に近い品揃えで、一時の流行になっている物は、流行が過ぎ去ればあっという間に客足が遠のきます。

食事であれば、「一過性の流行ではないか?飽きが来ないものではないか」という観点をぜひ念頭に置いた方が良いと言えます。

また、フランチャイズが拡大すれば、事業を社員・アルバイトに任せて進めていくこともできますが、そこに至るまでは、経営の才覚が必要です。

経営というのは、一般の事業であっても、フランチャイズの事業であっても、社長が余裕を持って取り組める、ということは経営の安定性を示す一つのファクターと言えますが、
「事業の立ち上げ」「事業の安定化」「社員・アルバイトの育成」「家業から経営」というフエーズを乗り越え、きちんとビジネスとして回るようにしていく必要があります。

その点も考え、ビジネスを考えて行くことをお勧めします。

まとめ

まとめ

フランチャイズは、ブランド・ノウハウ・商品など、ビジネスに重要な要素をパッケージごと活用できる、便利な制度であります。

一方、フランチャイズのブランドイメージを守るための配慮や、各種契約の履行、本部との適切な関係構築など、フランチャイズならではの課題も多くあります。

特に、フランチャイズ契約に関しては、様々な方面で、トラブル、訴訟が発生しているという話もあります。また、悪質な場合、フランチャイズ加入者から吸い上げることで、自社のビジネスを成り立たせているフランチャイズ事業者も、皆無とは言えません。

個人事業主として取り組む場合でも、法人化して取り組む場合でも、専門家、会社設立をする場合は代行業者などのセカンドオピニオンを得ることにより、フランチャイズが本当に適正かと言うことを判断することが望ましいでしょう。