悪質なフランチャイズに遭わないためには?加盟金詐欺やトラブル対応策

フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店の間では、訴訟等の様々なトラブルに発展するケースが少なくありません。さらに悪質な事例になると、フランチャイズ詐欺に巻き込まれて貯金や退職金を失った上、多額の借金まで重ねてしまう可能性もあるため注意が必要です。

そこで今回の記事では、悪質フランチャイズに遭わないための注意点、見分け方、トラブル対処法を解説します。独立や起業を検討している方、フランチャイズの加盟を予定している方は、ぜひ参考にしてみてください。

悪質なフランチャイズに遭わないために

フランチャイズに加盟する上では、サラリーマンから独立もしくは退職して事業を始める人も多くいます。例えば、一般企業で仕事をしている会社員の場合、基本的には企業が失敗の金銭的責任を負い、社員にまで金銭等の責任が及ぶケースは低いです。

しかし、フランチャイズになると、加盟者は一人の事業者として扱われ、守ってくれる後ろ盾はなくなります。公正取引委員会・中小企業庁等の存在はありますが、あくまで自身が主体となり、自分の身を守っていかなければなりません。

そのため、詐欺まがいもしくは悪質なフランチャイズに遭っても、金銭的責任は全て事業者である自分自身に降りかかってきます。この被害を防ぐには、悪質なフランチャイズに遭わないようにする事、そして各種契約には細心の注意を払うことが重要なポイントです。

危ないフランチャイズの見分け方

□契約更新率が3分の2以下である

フランチャイズ契約は5年・10年など一定の年限を区切って行います。きちんと加盟店側も儲かるビジネスであれば、引き続き契約を更新して行くことが想定されます。しかし、その契約を更新しないという加盟店が多い状況であれば、フランチャイズのあり方自体に問題がある可能性が想定できます。

このように、本部とフランチャイズ加盟店が、長く付き合っているかというのも、フランチャイズ本部を見定める上で重要なポイントです。

□店舗の利益シミュレーションが誇張されている

店舗の利益シミュレーションを行う上で、理想的なプランしか出さないフランチャイズ本部は注意した方がよいと言えます。ビジネスには様々な不確定要素があるため、プランBなど、想定通りにうまく行かなかった場合のケースは書かれているか、また利益シミュレーションの前提がそもそもあり得ない数値になっていないかなどは注意する必要があります。

□一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会に加入していない

JFA・日本フランチャイズチェーン協会は、フランチャイズ業界が自主的な規制、自立的な行動を行う事で、フランチャイズという業態自体への信頼性を高めていこうと取り組んでいます。

まだ始まったばかりのフランチャイズなら別ですが、一定期間を過ぎたフランチャイズで、まだ加入していないという場合、なぜ加入しないのかなどを慎重に考えた方が望ましいです。

□エリア限定・期間限定・即日即決などを迫る

「本日決めればこういうメリットがあります!」「エリア限定・期間限定なので、今契約することが大事です!」など、即断即決を迫るフランチャイズ本部も避けたほうが望ましいでしょう。

すぐの決断を迫るということは、「一刻も早く加盟させて加盟料をとりたい」「相手が慎重に考える暇を与えたくない」など、なんらかの事情があると考えた方がよいです。

きちんとしたフランチャイズであれば、加盟希望者にじっくり考慮してもらい、本当に方向性が合うかを判断するものです。そういう意識のすり合わせなしに、「今加入しましょう!」と迫るフランチャイズ本部は、注意したほうが良いでしょう。

□現実性の低いプランを提示される

多くのフランチャイズの場合、本部がシミュレーションを出してくると思います。シミュレーションの中で、数値に裏付けはあるか、現実性があるかは重要なポイントです。

フランチャイズ加盟に限らず、アパート・マンション投資などで、一見非常に有利なプランになっているが、税金や修繕費など、一部の費用を入れないシミュレーションになっていたり、あくまで満室が前提になる条件だったり等、「嘘は言っていないが、かなり売る側に有利な内容でシミュレーションをしている」というケースは少なくありません。

フランチャイズも同様のことが想定されます。もちろん、厳密なシミュレーションを出す事業者も多いでしょうが、一部事業者等によっては、加盟数を増やすために、仮定条件を現実から離れたものに変えたり、来客数・客単価・利益率等を実態より少し高めの数値にすることで、売上・利益に関わる要素を操作することも考えられます。

いずれにせよ、フランチャイズ本部と加盟店が共存共栄していこうという意志があるかは、重要です。

□担当者が「儲かる」をやたらと強調する

フランチャイズの説明会やその後の個別説明、もしくは勧誘で、担当者が必要以上に「儲かる」を強調する場合、一歩引いてみた方がよいと言えます。事業は前述の通り、顧客の役に立った結果としての「儲かる」が基本であり、儲けだけを主眼に置くビジネスでは、フランチャイズ加盟店が「本部が儲けるための踏み台」にされる恐れもあります。

□フランチャイズ本部に関する批判が多い

どんな優良フランチャイズでも、うまく行くケースとそうでないケースがあります。うまく行かなかったケースの人が、憂さ晴らしに掲示板等に批判を行っているケースもあるかもしれません。

しかし、本部批判の声が複数かつ大きい場合は、フランチャイズ加盟を根本的に見直すことが望ましいと言えます。内容がリアルであればあるほど(このフランチャイズは、加盟料を徴収した後は指導がない、ロイヤリティーが不当に高いなど)注意することが重要です。

フランチャイズの加盟金詐欺

通常のフランチャイズ本部は、加盟店と共存共栄を図り、加盟店の利益が本部の利益と考えています。しかし、ロイヤリティを搾取することが主体的となっている業者は、下記のような特徴を持っています

  • ・加盟後の指導、アドバイスがほぼ無い
  • ・独自のノウハウが乏しい
  • ・加盟金が高い
  • ・当初提示の加盟金より不当に高い費用を請求される
  • ・フランチャイズ本部となるベースの直営店が、うまく行っているとは言いがたい
  • ・契約に曖昧な点が多い、契約書を見せてくれない、契約内容を検討させてくれない

加盟金詐欺の問題は、実質的な詐欺行為に近くても、あくまで商行為での決め事であるため立証が難しく、かつ調停や裁判で争うことはエネルギーとお金を使います。また、裁判で勝訴したとしても、相手はもともと合法と違法の間で騙すことを想定しているため、裁判が終わる頃には会社を計画倒産させていたりすることが想定されます。

また、いわゆる取引トラブルというと、都道府県の消費生活センターが助けてくれそうなイメージがありますが、フランチャイズの加盟店側も事業主と見なされますので、消費生活センターが介入することはできません。

なので、実質詐欺、詐欺まがいのフランチャイズにお金を取られてしまうと、取り返すのは極めて高い確率で不可能と思った方がよいと言えます。

そのため、少しでも不審に思う部分があれば、契約をしないことが安全です。

悪質なフランチャイズほど、執拗に加入させようと勧誘してくるものです。しかし、契約書やそれ以外の約束書きに署名をしてしまえば、後は相手の思うままです。おかしいと感じたら、明確に断り、それでも執拗な勧誘を行うようであれば、外部機関に相談を行う事が必要です。

運営法人の情報に注意する

ホームページなど、外部に公開する情報が充実しているか否かで、フランチャイズの誠実性がある程度見分けられます。

ホームページであれば、代表者や役員の経歴・情報が明確に記載されているか、事業理念など、「なぜそのビジネスをやるのか」が、読み手に伝わる形で記載されているかなど、作成中のページが残っていないかなど、不審な点がないかチェックすることが必要です。

フランチャイズは、以前から一部の悪質業者に、詐欺に極めて近い形で悪用されてきた経緯があります。フランチャイズだと、商行為の中での「グレーゾーン」が多く、一般市民相手なら問題になることでも、事業主相手であれば「商行為の一環」として黙認されてきた状態があります。

経営者・実質的経営者の経歴が書かれていない、ネットで過去に問題を起こしたことが掲載されているなどのケースは、特に注意して対応したほうが良いでしょう。

他のフランチャイズ店舗にアポなしで行く

フランチャイズの募集説明会では、本部店舗やフランチャイズ店舗の見学があるケースもあります。ただ、見学の際は多くのケースで意図的に来客を増やす(チラシ・クーポン・サクラなど)傾向があるため、後日同じ店舗や他の店舗に、客の立場で訪れて様子を見てみることも重要です。

もし、他の時間帯に行って、閑散としている、店員の私語が多かったりやる気がないなど問題があれば、そのフランチャイズは避けた方がよいと言えます。

本部側が示してくるモノやデータは、勧誘のために「お化粧」されたものである可能性も少なからずあります。やはりどのフランチャイズ本部だって、加盟店が増えれば儲かるわけですし、一社でも加盟店を増やしていくことで、勢力拡大・ロイヤリティー増などマイナスはないからです。

フランチャイズ加盟店の素の状態を、客としてフラットな目線で見に行くということは、ぜひ試していただきたいポイントです。

融資はあくまで借金

フランチャイズに加盟する場合、日本政策公庫など金融機関もお金を貸しやすくなります。しかし、あくまで借りたお金は、利息を付けて毎月返さなければなりません。資金が振り込まれてから、返済が完了するまでが融資といえます。

フランチャイズを始める時は、どんな人でも気が大きくなりますので、多くのお金を借りても、きちんと返していけると思いがちです。ただ、2年近くにわたるコロナ禍の環境変化など、ビジネスには「まさか」が存在します。まさかの自体でも安定して返していけるか、客観的な目線で見ることが大事です。

加えて、経営者が借入をする場合は、法人との連帯債務(保証)や、個人名義で借り入れるケースが大半です。

すなわち、返せなくなるという事態が発生すれば、代表者個人に全て債務が降りかかってきます。数百万円どころか、数千万円の債務弁済を要求されて、すぐお金を出せる人というのは極めてまれで思われます。

融資はあくまで借金であり、行うビジネスから得られる粗利に対し、借入額が過大ではないかはきちんと見つめる必要があります。

中小企業庁のフランチャイズ関連資料に目を通す

中小企業庁は、「フランチャイズ事業を始めるにあたって」という資料を公開し、フランチャイズ契約締結前に注意すべき点を詳しくまとめています。この中から、注意点をまとめます。

特にフランチャイズで多いトラブル事例として以下のケースがあります。

  1. 加盟契約締結前に申込金を支払ったが、返還に応じてくれない。
    加盟契約を正式に結ぶ前に、本部側から「とりあえず申込だけでも」と急かされて加盟したケースです。多くのケースの場合、明確に契約で返還の約束をしていない限り、戻ってこない可能性があります。
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  3. 経営がうまくいかないため解約を申し出たら、解約違約金を請求された。
    有名フランチャイズや新興フランチャイズを問わず、よくあるトラブルです。経営がうまく行かない、そしてお金もなくなってきたという状況で中途解約をしようとすると、解約違約金を請求され、そして払えないことがあります。
     
    契約書やフランチャイズ契約に関わる書類に、解約違約金の規定がきちんと定義されているケースが大半ですので、加入時はあまり意識しないかもしれませんが、万一の事を考え、中途解約について違約金やその他の諸費用(建物であれば、解体や原状回復が必要になる可能性もある)を把握しておくことが大事です。
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  5. 近隣への出店計画について
    近くに新たな加盟店ができるが、どうしたらよいか、というのは、加盟店の数の多いフランチャイズ加盟者の悩みでもあります。
     
    せっかく売り上げが軌道に乗ったにもかかわらず、近隣に同じ店を作られると、当然2店舗で売上を共食いすることになります。
     
    加盟店側としては、最初は、同じ会社が近くに店舗を出すということは考えられないと思いがちですが、フランチャイズ本部の目的はあくまで、本部利益の最大化です。本部にとってメリットがある立地であれば、後から同一の店舗を追加、直営化するなどして、店舗を地域に増やし、勢力拡大をする事がフランチャイズ本部にとってメリットになります。
     
    コンビニエンスストアなど、店舗数の多い業態では、近隣に出店をする事がある旨の表記が書かれているケースが大半です。契約書に記載されており、その内容で署名してしまった以上は、近隣に出店されても文句を言えません。
     
    自店舗だけでなく、競合店舗が同じ商圏に出店することもあり得ますし、こういう不測の自体があることは、事業に織り込んでおく必要があります。

フランチャイズ契約に関するトラブル対処法

フランチャイズに関する基本的な考え方やトラブル対処法についても理解しておく必要があります。フランチャイズ契約に関するポイントを押さえましょう。

  • ・チェーン本部についての情報の収集とその分析を行う
  • ・いくつかのチェーン本部に絞り込みを行う
  • ・チェーン本部への訪問や加盟説明会等に直接足を運び、事業の内容や収益性、主な契約内容、開業以前・以後にわたっての支援内容などについて確認
  • ・情報収集段階はあくまでも情報収集が目的であり、条件やチェーン本部の対応が良いからといって、早急に加盟を決めてしまわない
  • ・直営店や加盟店等を訪問して直接オーナーの意見等も聞き、事業の実態を把握する

このような事前確認や即時契約を行わないことは大変重要です。加えて、フランチャイズ契約を締結する前に、下記の内容を踏まえ、適切な情報開示を受けることが大切です。

  • ・中小小売商業振興法では、同法の対象とするいわゆる小売・飲食のフランチャイズ・チェーンについて、チェーン本部の事業概要や契約の主な内容等についての情報を、チェーンに加盟者に対して契約締結前に書面で示し、説明することを義務付けている
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  • ・中小企業庁では、本部事業者がこれらの情報を適切に開示し、説明しているかを確認するため、同法の規定に基づく報告徴収を継続的に実施している
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  • 事前に開示すべき項目は、詳細な項目が合計で22項目にわたる(後半部に詳細を記載、前項目きちんとチェックすること)
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  • ・契約に際し不明な点については、十分に理解できるまで本部事業者に確認し、また極力、専門家等第三者にも相談し客観的な角度からの意見も得ることが望ましい
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  • ・フランチャイズ契約は、一時的なものではなく長期(5年~10年スパン)にわたって効力を有するものと心得ておく
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  • ・加盟店が多額の投資をしなければならないケースもあるため、契約内容をよく理解し、確認してから契約を締結する
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  • ・本部事業者が契約を急がせたりしても、十分に説明を受ける。受けないとトラブルの原因になる
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  • ・事業収支に関する部分についても明確な確認を。店舗取得にあたって保証金(敷金)が必要か、減価償却費が入っているか、什器や機器のリース、クレジット、税金等も計上されているかチェックする
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  • ・借入れを行う場合には、元金の返済や利息の返済についても把握

また、経営理念や収益予測、契約を締結することによりどのような制限が生じるかを確認しておく必要があります。具体的なケースを挙げます。

  • ・本部企業の経営理念に賛同できるかどうか、また、自分が消費者として利用したい企業か
  •  

  • ・立地や商圏の問題で、本部から受けた売上予測や経費予測の説明と実際の現実が大きくかけ離れていないか
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  • テリトリー権の有無、内容(近隣に同じ店舗を出店する権利を本部に認めるか)
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  • 厳しい制約も多いので注意。競業避止義務、営業権の譲渡等に本部の許可を得る等、様々な事で本部の許可が必要になったり、脱退後のビジネスが制限される可能性がある

悪質な本部事業者対策

各所で警告されている事例として、以下のように契約金目当ての場合もあります。

  • ・加盟希望者向け事業説明会において、契約書以外の書類に住所や氏名を記載しただけで、後日、本部事業者から「契約書に署名をされたので、解約するなら違約金を支払ってください」などと金銭を要求された
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  • ・支払いを拒否すると配達証明郵便を送りつけ、支払いを要求してきた

契約書以外の書類に、「単に住所や氏名を記載しただけ」では契約が成立することはありませんが、内容が仮申込書等のタイトルになっていながら、実質的な内容が契約書と同等であることなども想定できるケースです。

しかし、政府全体による押印の廃止推進により、署名が印鑑の役割を果たすことになりました。もし書類の内容が契約書のような内容でなければ、違約金の類の金銭を支払う必要はありませんが、もし何かに署名を求められたときは、内容全体、特に細かい部分をくまなく確認する事をお勧めします。

もしトラブルが発生した場合は、外部機関に相談すること、署名を行う場合は、それがどのようなタイトルであっても、しっかり読み込み、納得した上で署名をする事が重要です。

契約前に確認必須の開示項目

中小小売商業振興法では、フランチャイズ契約を締結する前に、下記の情報全ての開示を義務づけています。22項目と多いですが、重要な部分のためチェックします。

事項 内容・注意点
1.本部事業者の氏名および住所、従業員の数(法人の場合は、その名称・住所・従業員の数・役員の役職名および氏名) 本部事業者の規模や事業の内容等を把握すること。また、本部事業者の代表者名や役員の来歴、またこれまでフランチャイズやその他の事で不祥事を起こしていないかも確認する必要がある
2.本部事業者の資本の額または出資の総額および主要株主の氏名または名称、他に事業を行っているときは、その種類 資本の大きさは経営の安定と直結するため、資本金が数千万~1億以上など、十分に積んであることは重要。また、主要株主(個人・法人)に関しても調べた方が望ましい。
フランチャイズ業者によっては、社長はお飾りの経営者で、主要株主が実質的な経営権を握っている可能性もある。
また、他に事業を行っている場合、その事業が社会的に認められるような事業・運営をしているかを確認することが望ましい
3.子会社の名称および事業の種類 子会社が存在する場合は、それぞれの会社がどういう役割を担っているのかを確認しておく必要がある
4.本部事業者の直近三事業年度の貸借対照表および損益計算書 決算書には必ず目を通し、可能であれば税理士等に有料相談を行い、会社の財務状況に問題がないかを確認できると理想的である
5.特定連鎖化事業(フランチャイズ事業)の開始時期 歴史が長いほど、安定性が図れる。開始時期が浅い場合、純粋な新規開業なのか、それとも最近進出したのかおよび「なぜ自社で展開せず、フランチャイズを募集しているのか」という部分を確認する必要がある
6.直近の三事業年度における加盟者の店舗の数の推移 ア.各事業年度末の加盟者の店舗の数
イ.各事業年度内の加盟した新規出店数
ウ.各事業年度内に契約解除された店舗数
エ.各事業年度内に契約更新された店舗数および更新されなかった店舗数
契約解除・更新されなかった店舗が多い場合は注意
7.直近の五事業年度において、フランチャイズ契約に関する訴訟の件数 ア.本部が加盟者または元加盟者を訴えた件数
イ.加盟者または元加盟者が本部を訴えた件数
訴訟件数が多ければ多いほど警戒する必要がある
。もちろん、規模が大きい会社の場合はどうしても訴訟を抱えることが避けられないが、会社の規模の割に、訴訟件数や訴訟される件数が不自然に多い場合、加盟店とのコミュニケーションに題がある恐れが存すると想定した方がよい
8.営業時間・営業日および休業日 営業時間は自分のライフスタイルとあっているか、休みはとれるのか、従業員を雇用する場合の採算性はどうなるか等相談すること。
また、休んだことによるペナルティがないかも確認する。
特に、長時間営業の業態や、24時間365日営業の業態の場合は、アルバイトなど労働者がいないと適切な店舗運営ができない。この点、人の確保のサポートや、やむを得ない場合の対策などを講じてくれるかは確認する必要がある。
もし少しでも営業日の規定を破った場合、契約解除となるような厳しい制約がある場合は、よほどの人員の確保ができる目処がない限りは避けた方がよい
9.本部事業者が加盟者の店舗の周辺の地域に同一または類似の店舗を営業または他人に営業させる旨の規定の有無およびその内容 いわゆるテリトリー権が認められているのか、認められていない場合は、今後における近隣の出店計画はどうなっているのか確認する必要がある。
また、現時点では出店計画がなくても、数年後などに出店計画が出る可能性はある。
そのため、テリトリー権がない場合は、当初の話と異なる出店が行われても、対処のしようがないので、その点は理解しておくこと
10.契約終了後、他の特定連鎖化事業への加盟禁止、類似事業への就業制限その他加盟者が営業禁止または制限される規定の有無およびその内容 契約終了後も、競業禁止や秘密保持、義務などの側面からどのような制限がかかるのかを理解しておくことが重要。また、この制限に反した場合の罰則・ペナルティなどがないかについても確認しておく必要がある。
多くの場合、類似業種の制限というケースが多いが、もっと厳しい制約を課す事業者もいるので注意
11.契約期間中・契約終了後、当該特定連鎖化事業について知り得た情報の開示を禁止または制限する規定の有無およびその内容 いわゆる守秘義務に関する項目。ノウハウや内部事項の開示については、多くのフランチャイズの場合厳しい制限や、違反時の罰則を備えているケースがある。フランチャイズを脱退し、事業と関係がなくなった後も、引き続き制限が続き、内部の話を外でしてはいけないなどの決まりがあるケースが多いので注意
12.加盟者から定期的に徴収する金銭に関する事項 ア.額または算定に用いる売上、費用等の根拠を明らかにした算定方法
イ.商号使用料、経営指導料その他の徴収する金銭の性質
ウ.徴収時期
エ.徴収方法
(ロイヤリティーに関しては、計算根拠を求めておくことが重要。ロイヤリティーに関しては、計算根拠が非常に複雑になっているケースが多く、表面上に見える数字だけで実質的なロイヤリティーを推し量ることが難しいケースもある。だからこそ、各種ロイヤリティーの計算根拠を理解できるまで説明してもらい、もし自分が理解できない場合は契約を考え直した方がよいかもしれない)
13.加盟者から定期的に売上金の全部または一部を送金させる場合はその時期および方法 オープンアカウントなど本部との相殺勘定・会計処理の仕組みが複雑な場合は、納得するまでしっかり質問する、理解が出来ない場合は契約をしないという決断も重要
14.加盟者に対する金銭の貸付けまたは貸付の斡旋を行う場合は、それに係る利率または算定方法およびその他の条件 本部から金銭貸付や貸付斡旋がある場合、利率や算定方法、根拠等に関して明確に確認しておく。不当に利息が高いと感じればやめたほうがよい。
また、取引のプロセスで、本部からの自動貸付が行われるケースもあり得るので、どういうときに貸付処理が行われ、利息はいつ生産するのかなど細かい部分も確認する事が必要
15.加盟者との一定期間の取引より生ずる債権債務の相殺によって発生する残額の全部または一部に対して利率を附する場合は、利息に係る利率または算定方法その他の条件 こちらもどの時点で債権債務の相殺が行われるか、タイミングや算定基準をしっかり聞く必要がある
16.加盟者に対する特別義務店舗構造または内外装について加盟者に特別の義務を課すときは、その内容 特に全国的に知名度の高いフランチャイズほど、内外装に関して統一性を求められる。この特別義務や、各種看板・宣伝等も含めて、外観や広告、案内図などについては確認しておくことが必要
17.契約に違反した場合に生じる金銭の支払いその他義務の内容 契約違反時の金銭の支払い義務として、どのような時点で支払い義務が生じるのか、金銭の支払額は具体的にいくらかを確認しておくことが重要。
特に、経営者ではなく、従業員・アルバイトが問題行為を起こした場合、経営者に直接責任がなくても、監督責任という形で経営者が多額の賠償を求められたり、店舗を強制閉鎖させられる恐れもあるので、支払い金額やその他義務は、念入りに確認しておく
18.加盟に際し徴収する金銭に関する事項 加盟料だけでなく、その他開業にかかる費用やコンサルティングフィー、開業時の宣伝費用など、業態によっては多くの費用が発生する可能性がある。費用を自身が受けられる融資でまかなえるかはきちんと確認しておく必要がある
19.加盟者に対する商品の販売条件に関する事項 ア.加盟者に販売し、または販売をあっせんする商品の種類
イ.商品の代金の決済方法
20. 経営の指導に関する事項 ア.加盟に際しての研修または講習会の開催の有無
イ.加盟に際して研修または講習会が行われるときは、その内容
ウ.加盟者に対する継続的な経営指導の方法およびその実施回数
経営指導に関しては、最初だけ行ってその後放置ということがないか、また店舗のスーパーバイザーが適切な売上向上のための提案をしてくれるかなど、フランチャイズの指導実態を本部だけでなく、できれば同じフランチャイズの他のオーナーから非公式に聞けると望ましい。
また、研修会や講習会の期間・費用負担等はどうなるかも確認する必要がある
21.使用される商標、商号その他の表示 ア.使用させる商標・商号その他の表示
イ.当該表示の使用について条件があるときはその内容
フランチャイズ本部の商標・商号を利用するときは、本部の看板を借りる訳なので、ブランドイメージを毀損する行為があってはならないし、表示利用に関しては厳格に決められているケースが多いので、どんな細かいことであっても商標・商号の取り扱いについては確認する事が必須といえる
22.契約の期間並びに契約の更新および解除に関する事項 ア.契約期間
イ.更新の条件および手続き
ウ.解除の要件および手続き
エ.契約解除の損害賠償金の額または算定方法
その他義務の内容
契約期間が長すぎないかというのは注意点。ビジネスの環境は数年で大きく変化する。10年等の長期契約であれば、その間に社会が大きく動いている可能性があり、結果として業態が時代に合わなくなる可能性がある。レンタル店やCD店、書店などがデジタル化で廃れたように、今まで力のあった業態も、時代の変化で収益性が弱くなったり、社会環境の変化に適応できなくなる可能性がある。
特に、マンパワーに頼る業態の場合、今後政府の方針で最低賃金を全国加重平均1,000円以上に賃上げ、社会保険料や税負担の上昇、労働基準法違反に関する取り締まりもより厳しくなるため、毎年コスト増が継続するものと考えておく必要がある。
また、更新条件や解除の条件に関しても、「何をするといけないのか」を明確にしておく必要がある

以上、22項目と非常に多岐にわたりますが、フランチャイズ契約というのは長期にわたり、かつ個人に取っては大きな金銭が絡む事業です。そのため、フランチャイズ加盟前に、全ての事項に関して納得いくまで調べ、本当にこれで問題ないという確信が持てて、始めてフランチャイズへの加盟を行うことが重要です。

“おいしいだけの話”には飛びつかないこと

「世の中にうまい話はない」「人が持ってくる儲け話は詐欺」ということは多くの人が理解しているものの、自分がフランチャイズ契約を結ぶ時になると、客観的に判断できなくなるケースも少なくありません。

例えば、フランチャイズ紹介サイトには、未経験者に魅力的な文言が掲載されていることがあります。「素人でも初月から月商200万円」「異業種からの参入で売り上げ月500万円」など、景気のよい数字が飛び交います。

このような広告を見ていると、「このフランチャイズに加入するだけで自分も成功できそう」、そう錯覚してしまう宣伝文句があふれています。ただ、現実は甘くありません。月商200万円でも、場所はどこで、残る利益はいくらで、どれくらい働いてこの結果かという事を冷静に見る必要があります。

また、後ほど述べますが、今後日本の人件費や税金、社会保険料などは高い確率で上昇していきます。現在は大きな利益が出るシミュレーションでも、年月が経つと利益が確保しにくくなる可能性もあります。そのような、将来の事も考えてフランチャイズを検討すべきです。

冷静に考えて、フランチャイズにただ加盟するだけで成功できるほどビジネスは甘くはありません。なぜなら、事業にはタイミングや事業者の創意工夫、努力、社会の時流など様々な要素が絡むため、「これをすればうまくいく」というほどビジネスは単純なものではありません。

ですが、自分がフランチャイズを検討する立場になると、「これはいいビジネスだぞ!」と、あまりにおかしな儲け話に注意する目が曇ってしまいます。

まず、「楽して儲かる」ということを全面に押し出すフランチャイズは避けた方が良いと言えます。「楽して儲かるビジネス」というのは、得てしてフランチャイズ本部側に取って「楽して儲かるビジネス」であったりするものです。

仮に、少ない負担で大きな利益を挙げることができるビジネスであっても、そこには「需要>供給」というからくりが存在しているケースがあります。がら空きのビジネスがあったとしても、よほど市場規模が小さくない限り、大手・中堅の会社が事業展開し、パイを持っていく可能性は大きくあります。ブルーオーシャンであることに他の事業者が気付けば、瞬時にその場所がレッドオーシャンに変化する可能性もありうるのです。

そのため、市場の歪みで瞬発的に儲かるビジネスがあったとしても、時間が経つにつれ、普通のビジネス、もしくは儲からないビジネスになってしまうことを想定する事が必要です。

例えば、レンタルのフランチャイズ事業を例に取って考えます。以前は、店舗に行って、DVDやCDを借りるのが当たり前でした。

しかし、スマートフォンと高速通信が普及、各社が動画・音楽のサブスクリプションサービスやオンラインレンタル事業を始めたことで、「消費者はあるかどうか分からない店舗までDVD・CDを借りに行く手間をかけるくらいなら、サブスクリプションで映画や音楽を楽しんだ方が、スピードが早く、品切れもなく、返す手間もありません。ある程度スマホ・PCが使える利用者は、オンラインの見放題やレンタルの方を利用します。

まだ世代によってはDVD、CDを好む層もいるので、まだ需要がゼロになっているわけではないですが、今後DVD・CDレンタルの市場が縮むことはあっても、伸びることは極めて想定しにくいと言えます。

また、中古品買い取りの市場も、ヤフオク・メルカリなどの普及で、ヤフオク・メルカリで売った方が高く売れるという認識ができ、中古市場がネット経由になっている傾向があります。

他の例では、iPhone修理ビジネスが挙げられます。つい最近まで、iPhone修理ビジネスは、技術習得の手間もかかりにくく、正規の修理も費用がかかるため、非常にニーズの大きいビジネスでした。

しかし2021年に出たiPhone13以降は、本体に部品等、正規修理の判別機構が備えられ、Apple認定・正規のサービスプロバイダー以外の業者が修理を行うと、動作に不具合が出るような仕組みとなり、修理は極めて難しくなっています。今後、iPhoneの修理ビジネスというのは、先細る可能性が高まっています。

また、携帯電話の代理店というのも以前は非常に儲かるビジネスでした。携帯電話・スマホの普及期は、携帯キャリアから多額のインセンティブが払われ、買う側も実質0円で購入でき、店舗も購入後のインセンティブで儲かるなど、非常に利益が出しやすいビジネスでした。

しかし、現在はオンライン契約の普及や格安SIMの普及、携帯料金の値下げによるインセンティブ引き下げ、コンプライアンス強化による、契約の厳格化など、携帯キャリア会社による代理店の選別など様々な要素が絡まり、携帯電話の代理店の撤退が相次いでいます。それだけ、携帯代理店というビジネスが時代に合わなくなったと言えます。

まとめ

フランチャイズ契約は、大抵のケースが一生に一度の契約です。だからこそ、細心の注意を払い、契約により問題が生じないか、ビジネスとしてきちんと成り立つかなどを精査する必要があります。

一度契約書に署名し、事業が始まると、後は契約書に規定された通りに物事は進んでいきます。あとから「こんなはずではなかった」と気づいても手遅れのケースもあるので、フランチャイズ加盟前の調査をしっかりと行うことで、悪質なフランチャイズに遭遇するのを避けられるよう、心がけることが大切です。