フランチャイズの企業側(本部)のメリット・デメリットとは?

フランチャイズの募集を見ていると、「きちんと収益が出せる事業なら、フランチャイズでは、自社でやればいいのでは?」など疑問に感じた経験はないでしょうか。しかし、フランチャイズを募集する企業があえて自社での展開でなく、フランチャイズの方式を利用していくのは理由があります。

また、フランチャイズ本部側にとって、自社展開ではなくフランチャイズ方式を選ぶことによるメリットもあります。もちろん、フランチャイズを利用することによるデメリットもあります。

今回の記事では、フランチャイズを募集している企業側(本部)のメリット・デメリットについて詳しくご紹介するので、フランチャイズ展開を検討している方などは、ぜひ参考にしてみてください。

なぜフランチャイズを募集する企業が多いのか

自社展開ではなく、フランチャイズ展開により、事業を広げようとする企業は少なからずあります。実際現在大手となっている企業の多くは、フランチャイズを活用することにより、規模の拡大と事業の急成長を果たしてきました。

有名な企業では、サーティワンアイスクリーム・ミスタードーナツ・モスバーガー、CoCo壱番屋、コメダ珈琲、餃子の王将などがフランチャイズを展開しています。他のフランチャイズでは、ダスキンなどのサービス系企業も、自社展開ではなくフランチャイズ展開を選択しています。自社展開ではなく、フランチャイズ展開を図るのには次のような理由があります。

自社だけによる展開の限界とスピードの必要性

自社展開とフランチャイズ展開の両方を選ぶのは、第一に「スピード感をもって事業を拡張できる」という理由があるからです。また、フランチャイズ募集を行うことにより、加盟店から「加盟金」などのキャッシュが入ってくるため、資金繰りがスムースになる点も挙げられます。

もし、全てが自社展開の場合、出店先の地域事情の調査や、現地で働く社員の雇用、必要に応じた本社社員の異動、出店時のコスト負担と資金繰りの確保など、様々な課題がついて回ります。これは、大手資本や大企業の出資があればともかく、一般企業では非常に難しいことです。

例えば、渋谷の公園通りで、低カロリー・低糖質なのに美味しいということをセールスポイントにし、若年層女性を中心にヒットしたフルーツサンド屋さんがあると仮定します。フルーツサンドはブームになっているスイーツの一つですが、スイーツの世界は移り変わりが激しいという側面があります。以前ブームになったタピオカドリンク店は、あまり見かけなくなりました。

飲食業の場合、時流に乗ることと、スピーディーに全国の主要地域を抑えていくこと、そして一過性のブームではなく商品を定着させることは大きな課題です。

このフルーツサンド店を経営する会社としては、たとえば以下のような課題が生じます。

  • ・フルーツサンドは現在人気だが、ブームとして一過性のもので終わるのではなく、定着させたい、タピオカや白いたい焼き・クレープのようにはしたくない
  • ・フルーツサンドに関しては、競合店舗が増えてきており、マリトッツォなど、同じサンド系という種類の近いブームの製品がある
  • 素早く全国展開を行うことで、フルーツサンド業界のトップとしての地位を確立する必要がある

このような時、大手企業や外資系企業のような資本力があれば、スピーディーな自社展開も可能です。しかし、通常の企業であれば、資金調達を行い、人材を採用し、地域の事情に応じて店舗を展開していくというのは非常に難しいです。

しかし、フランチャイズを活用することで解決できる課題もあります。様々な地域にスピーディーに展開でき、自社ブランドの知名度向上も図れ、人材についても自社雇用ではなく、フランチャイズ加入企業の人材活用を図れますので、自社で雇用する時間・コスト・リスクがなくなり、本体を身軽にしたまま、全国規模の展開が可能となります。

もちろん、フランチャイズ本部であることによる収益も大きなポイントではありますが、フランチャイズ本部の利益はそれだけではありません。

スピード勝負の現代において、素早い店舗網の拡大を図れ、自社ブランドの認知度を高めることができるというのは、フランチャイズを展開する本部側にとって、フランチャイズ収益と並ぶ大きなメリットになり得ます。

地域事情の問題

自社で多店舗展開・全国展開を行う場合、出店地域の市場調査や、地域性の把握というのが大きな課題になります。

渋谷公園通りやMIYASHITA PARK近辺の店舗であれば、テイクアウトをして代々木公園・宮下公園で食べるなど、食べる場所の確保は容易です。しかし、同じ渋谷でも、センター街・東急通り・松濤・円山町では客層や賃料・確保が必要なスペースなどを考えると、よほど良い立地でないと、毎月のランニングコストが大きくなり、固定費がまかなえません。

同じ渋谷区でも、これだけ環境が異なるので、都下や首都圏・全国に目を向けると、様々な地域事情の違いが存在することは、容易に想像がつ付きます。スターバックスは、郊外立地ではドライブスルーを併設・数十台の駐車場を確保するなど、地域の交通事情に合わせた出店を行っています。

他のフードビジネスにしても、出店場所の事情に合わせたビジネスを行っていかないと、地域に受け入れられないおそれがあります。ロードサイドの店舗で、テイクアウト主体の店舗を作っても受け入れられにくい可能性があります。

また、当然ですが、ロードサイド店展開の場合は、大半の顧客は車で来るものと想定する必要があります。これを見誤ると、車が入りきらなかったり、近隣店舗からクレームが来たり等、トラブルの原因になってしまいます。

また、所得が高くない地域で、健康にこだわった高級スイーツを販売しても、受け入れられない可能性があります。むしろ庶民的な商品を売り、店構えも周囲に馴染むようなものの方が良いと言えます。

加えてフランチャイズに加盟店として加盟するのは、大抵当地の多角化を目指す企業か、地元でこれから独立しようと考えている一定層です。

そのため、進出地域を自社でいろいろ調査するよりも、その地域に数年なり、数十年なり住んだり、ビジネスを行っている企業や事業主であれば、暗黙のルールも含め、様々な現地事情に詳しい可能性があります。

このように、現地の事情に通じた人に、事業のパッケージを活用してもらうことができるというのもポイントです。

自社展開の場合の人材確保・人事異動の問題

自社で展開していくことは、クオリティの平準化、自社の価値観の浸透などでメリットがあります。

ただし、人材確保や人事異動などの面で、「進出する現地に行ける人材を募集する」「指導力のある人間を地方に一定期間行かせる」など、人を雇い、動かすという問題が噴出します。

特にこの1・2年のコロナ禍で、地域移転を伴う人事異動に関するハードルが高まりました。少し前までは、全国転勤が当たり前という風潮の企業も多かったですが、働き方改革やコロナ禍による移動制限を通して、引っ越しを伴う人事異動というのが非常に敬遠されることとなりました。

また、共働き世帯が増えている現在、異動すると夫婦の片方は、仕事を辞めてついて行くか、異動する側が単身赴任を行うかの選択を行う必要があります。

以前のように、出店候補地域に次々引っ越ししてというのは、身軽な独身の若い世代など非常に限られることも想定できます。

そうであれば、明確なルールを作り、ルールの中で現地企業や事業主に委任する形の、フランチャイズの方が効率的と言えます。また、副次的にではありますが、地方に固定した雇用を産めるというメリットもあります。

また、特に現在、本来は身軽で移動させやすいはずの若い世代であっても、都心から地方に移動することを嫌悪する層は少なくありません。事実、都心と地方都市・地方では様々な意味で選択肢が異なりますし、都心に比べ、地方はいろいろなしがらみなど、面倒な点があります。

「地方に移動するのなら辞めます、代わりの職場がありますから」と、優秀な人材に退職されては元も子もありません。

そういう意味でも、自社展開にこだわるよりも、フランチャイズを活用する方がいろいろな意味でフランチャイズ本部としての事業がスムースになると言えます。

フランチャイズの活用で身軽になれる

フランチャイズの制度を活用することで、本部社員は主力商品の磨き込みや加盟店指導など、現場ではなく「仕組みを作る業務」に専念し、有能な人材を採用しやすくなります。

もちろん、現場で成果を出してくれる人材も重要ですが、その人材が10の成果を出せるとして、完璧に準じたレベルの8~9の成果を出す人材を10人育てられる人間の方が、全体の質を底上げすることができます。

人材をシステマチックに育成できる研修システムやマニュアルを整備し、後はフランチャイズ加盟店に研修・マニュアルの遵守をお願いし、本部から適宜指導を行うことで、サービスの平準化ができます。

飲食業・学習塾・便利屋その他様々なフランチャイズは、10の人材を求めるより、1~4の及第点以下の人材を現場に置かず育てるか、他の活躍の場所を提案する、そして5以上の平均的人材を、7~9のレベルの「安定したサービスを提供できる人材に育てる」事の方が、全体のイメージにとっても重要です。

また、フランチャイズで働く従業員は、本部との直接雇用関係ではないので、本部人員やオフィスが身軽になるというのも良い点です。

地域の企業・事業主に任せることで地域貢献になる

ことさら強調するものでもないですが、進出予定地にそのまま進出すると「アウェー」になることが多いです。各地域には「昔から続く複合企業」が存在します。

例えば、ある地域の会社は、最初は自社ブランドのレンタルビデオ店からスタートし、有名飲食店や釣具店のフランチャイズ、学習塾、ネットカフェ、自社開発商品の展開など幅広く行い、地域ではメジャーな存在となっています。

一方、ある会社は、結婚式を中心に行っていますが、婚活事業のフランチャイズ・雑貨店、有名スイーツ店のフランチャイズなど、女性向けの事業を軸に多角化を図っています。

これらの会社は「地元の虎」的存在で、地域事情や立地、客層の適した場所や人材の見極め方を心得ています。経営で苦労するのは「人」の問題が大きいです。しかし、地元に根ざした事業であれば、もともと地元に定着しているが、様々な事情で現住所を離れることが出来ない、しかし優秀な人材を確保しやすいというところがあります。

加えて、フランチャイズ加盟店の収益は地域にそのまま納税され、人材も地域で消費、納税を行うわけですので、副次的な効果として「進出地域への雇用創出と納税での貢献」が実現します。

フランチャイズ募集会社・加盟店のメリット

事業者が本部としてフランチャイズを展開する理由を整理します。

フランチャイズ募集会社のコスト削減

もし、事業者が自前で店舗を立ち上げていく場合、出店先のリサーチ・客層の把握・店舗用地の取得・店舗の建設(もしくは居抜き物件の取得)などで、非常に時間がかかります。

加えて、各種費用にかかる資金繰りや、金融機関からの資金調達も大変難しい課題です。これも、フランチャイズ形式であれば、加盟店それぞれが自社で資金調達や用地確保を行うため、展開がスムースに進みます。

一方で、直営にこだわって広げていく場合は、経営体力・資金力と時間が相当かかります。コメダ珈琲店も、当初は名古屋など限られた地域が主体でしたが、ファンドに譲渡され、フランチャイズ化を徹底してからは、全国への展開が素早く進みました。

資本力や、サービスへのこだわり、あるいはバックに大企業がついているなどあれば別ですが、一般の店舗が直営だけで店舗網を広げるのは大変です。

例えば、大半の店舗が直営であるスターバックスコーヒーは、駅や空港・サービスエリアなど、直営店の出店が特殊な事情で難しい地域には、例外的に「ライセンス事業」という形で出店をしていますが、大半の物件は直営です。

これは、スターバックスが外資系企業で、店舗の急拡大より、価値観やクオリティを統一した出店を目指したからと言えます。1996年の銀座1号店の開店から、最後の進出地の鳥取での2015年の開店まで、およそ20年近くの期間がかかっています。

それだけ、自社だけの展開を大前提としてネットワークを広げることは、時間がかかるものといえます。

ですが、フランチャイズであれば、事業次第ですが、数年単位のスパンでネットワークを全国に拡大することが可能です。

加えて、「規模の利益」によるメリットも、本部・加盟店双方にとって、大きな強みとなります。規模が大きくなればなるほど、フランチャイズの原材料費を大量に仕入れてコスト削減したり、建設事業者と提携することで、フランチャイズ店舗をより安価なコスト・スピーディーな速度で開発できます。

また、コンビニエンスストアなど、数がものを言う業種では、集中した地域に一気に出店し、地域での地名に加え、効率的な配送を実現するドミナント戦略をとることにより、効率的な流通と、地域での知名度を獲得することができます。

コンビニほどのドミナント戦略でなくても、一つの便で配送可能な店舗が多いほど、効率よく流通を行うことができます。

フランチャイズ加盟店側のメリット

フランチャイズ加盟店側にもメリットがあります。前にも少し触れましたが、現在は通常の脱サラ層や、事業転換を考えている個人事業主だけでなく、地元の中堅企業でも、事業の多角化や事業再構築を念頭におき、フランチャイズに加盟、もしくは事業をフランチャイズ化する事例が増えています。

フランチャイズ加盟店側は、フランチャイズ本部がこれまで試行錯誤で積み上げ、きちんとビジネスとして利益を挙げられるようにパッケージングした「事業のレシピ」をそのまま借り受けることができます。

それだけではありません。やはり、飲食店や塾など、フランチャイズが主体の店舗は、全体の規模の大きさ・知名度の高さがものをいうところがあります。この規模の大きさを活かした流通やシステムの活用ができるのは強みです。

加えて、本部の看板を使えることもメリットです。近年急激に知名度を増したフランチャイズ本部である、作業服のワークマン・スイーツのシャトレーゼなどは、広告だけでなく、テレビ・雑誌などマスメディアに取り上げられたり、SNSなどで広く拡散されることにより知名度を増やしてきました。以前はワークマンは吉幾三のCMなど、いかにもベタな作業服というイメージでしたが、現在はコストパフォーマンスが高く、一定のスタイリッシュさと丈夫さを両立した、高コスパブランドの地位を確立しています。

ワークマンに行けば、コストパフォーマンスに優れて、作業服として実用になる製品が買える、シャトレーゼに行けば、安くておいしいスイーツが買えるなど、消費者の中にイメージが刷り込まれています。

もちろん、フランチャイズ加盟店にとっては、事業そのものが伸びれば伸びるほど収益も向上するという側面があるので、事業に取り組むモチベーションの維持と、高収益を出したときのリターンが期待できます。

以上のような、加盟店側も様々な「売れる仕組み・ブランド」を借り受けることが出来るというのはメリットです。

事業再構築の手段としてのフランチャイズ活用

新型コロナの影響下にある事業者に対して、事業再構築補助金という、事業転換にかかる費用の3分の2、金額は100万円から最大1億円を補助する事業があります。この事業にも、フランチャイズへの転換・フランチャイズ制度の活用・自社がフランチャイズの本部になるなど、フランチャイズのシステム活用を念頭に置いた応募が多く見られます。

具体的にどのような転換事例があるか、事業再構築補助金にかかる、事業転換計画集の中からピックアップします。

  • ・不動産事業からガーデン事業のフランチャイズへ転換
  • ・IT事業に加え、ロボットプログラミングのフランチャイズへ加入
  • ・居酒屋から焼き鳥のテイクアウトフランチャイズへの転換
  • ・内装工事業から不動産販売のフランチャイズに加入し、不動産販売とリノベーション事業の相乗効果を図る
  • ・布団洗いに特化したコインランドリーに業種転換
  • ・不動産販売の落ち込みをカバーすべく、フランチャイズ検索ポータルサイト及び起業家と投資家と投資家マッチングサイトを開設
  • 日本初の健康麻雀事業のフランチャイズ、5年以内に30店舗の展開を目指す
  • ・排水槽清掃の感染症対策、酸欠・有毒ガス死亡事故防止、労働環境改善、効率化、高付加価値化に向け、ロボットアーム他の開発による槽内無人化の新工法を確立し、フランチャイズ展開を図る
  • ・女性起業家を対象として、「あん食パン」の専門店のフランチャイズ化を図る
  • ・レトルト食品製造技術を活かしカレーパンの製造販売を行うために、製造工場・直売所を建設するとともに、事業のフランチャイズ化を図る
  • 非接触型ベーカリーのフランチャイズ化を図る
  • 脱サラ希望者に、フランチャイズ本部へのあっせん事業を行う
  • ・ホームページを通し、LINEを通し一般消費者の不要品やブランド品を買い取り、リユース事業者に販売するサービスを展開、将来的にフランチャイズ化を図る
  • ・韓国で有名なチキンのフランチャイズに加入し、収益化を図る
  • ・外食産業から、食品小売、肉の製造直売事業者のフランチャイズに加入し出店する
  • ・広島でお好み焼き・鉄板焼き事業を営んでおり、このノウハウをフランチャイズ化して展開、同時にゴーストレストランで自社事業・他社事業との共同展開を行う
  • ウイルス・抗菌剤の加工フランチャイズ事業を行う
  • 低糖質ソフトクリームのフランチャイズ事業を行う

この通り、事業再構築補助金の事例だけでも、フランチャイズ本部になる、フランチャイズに加入するという事例の多さに驚かれるかと思います。

このように、公表されている情報だけで事業のフランチャイズに加盟する、事業をフランチャイズ化する、あるいはフランチャイズ事業の仲介者として展開していこうという取り組みが多数ありますので、水面下では更に多くの取り組みが進んでいることが想定できます。

これだけフランチャイズに加盟するだけでなく、自社の事業をフランチャイズ化しようという試みが多いのは、当然理由があります。

自社の事業をフランチャイズ化することにより、加盟料その他のキャッシュの確保が見込める以外に、フランチャイズを使って製品の知名度・購買ルートを全国区にする事ができるからです。

例えば、広島のお好み焼き・鉄板焼き事業店舗がFCに乗り出す事例を見ても、現在他の地域では「広島焼き」という、広島県民からすると、本筋には見えないお好み焼きも出てきています。

そこで、広島で20年以上営んだ、「本当の広島発のお好み焼き屋」が作る「広島のお好み焼き」を展開することにより、通常のお好み焼き店と差別化が図れます。

他にも、脱サラ希望者に対し、フランチャイズの仲介を行うという事業も注目に値します。フランチャイズを選択するという観点では、なかなか一般の人に、どのフランチャイズが向いているかというのはわかりにくいです。

手元資金やこれまでの業務経験、適性などを踏まえ、脱サラ後に適したフランチャイズ案件を案内してくれることで、紹介事業者は、フランチャイズ募集事業者からの紹介報酬を受け取り、フランチャイズ加盟者は自身に適したフランチャイズを見つけられ、フランチャイズ募集事業者も、加盟店が増えるということで、三方よしの取引になります。

さらに、上記のフランチャイズ事業だけでなく、事業再構築補助金の採択事業事例集全体を読むと、「非接触」「抗菌」「デリバリー」「テイクアウト」「ソーシャルディスタンスを取れる空間での自由な活動」など、withコロナ、アフターコロナを主体にした事業が多く見られます。

今後も、withコロナ・アフターコロナを見据えた業態のフランチャイズ化が進んでいくと思われます。フランチャイズを運営する側も、加盟する側も、ワクチン接種の流れや、今後の社会の空気の変化を読んで、「withコロナの時期のビジネス」「afterコロナの時期のビジネス」を双方見据えて行くことが重要と言えます。

加盟店側が融資を受けやすい

開業するときには、日本政策金融公庫や銀行(+都道府県の信用保証協会の保証)を付けて、資金を借り受けるケースが多いかと思いますが、フランチャイズがメジャーであればあるほど、融資審査が通りやすかったり、満額出る傾向が見られます。

もちろん、有名な会社であっても、代表者の業務経験や自己資金、信用情報等の問題もありますので、確実に融資を受けられるわけではありませんが、自身で0から店舗を立ち上げるよりは、審査面で有利になる可能性は高いと言えます。

融資する側としても、有名なフランチャイズ店で、かつ評判がよいものであれば、「このフランチャイズで、この事業者さんなら貸しても大丈夫だろう」となります。

一方、フランチャイズでも、全てが評判がいいとは限りませんので、過去に好ましくない問題が発生しているフランチャイズは避けたり、フランチャイズの世間、できれば金融機関からの評判を事前にチラリと聞いておくことをお勧めします。

事業の宣伝になる

法人・個人事業主にとって、自分の事業を人に伝えるというのは、時折難しいケースがあります。これは、フランチャイズへ加入を提案する上で大きな強みとなります。

農業であれば農業、自動車修理店であれば自動車修理店、不動産業であれば不動産業と、メジャーな業種は簡単に伝わりますが、近年増えているIT関係の事業だと、若い人には伝わるとしても、年配の人や、デジタルリテラシーを学んでいない人にとっては、IT関係の仕事は「よくわからない仕事をしている人」という扱いになります。人間、わからない物には抵抗感を示すのは世の常です。

システム開発請負、IoTを使った技術開発、ブロックチェーンの業種に応じた応用、Webライター・Webデザイナー・プログラマー・システムエンジニア・Youtuber・アフィリエイター・VR開発者・AR開発者などは、総じて「なにかよくわからない仕事をやっている人」との印象を与える場合もあります。

具体的に何をしているのか説明しようとしても、相手が少しデジタルに疎い人だと「なんかよくわからんからいい!」と言われ、結局「なにかよくわからないけど難しいことをしている人扱い」となるくらい、「自身の仕事に対する外部への説明が難しい」といえます。

しかし、これが「ワークマンのフランチャイズを経営しています」「明光義塾のフランチャイズを運営しています」「ハウスドゥのフランチャイズに加盟しています」など、「あ、テレビ番組やCMでよくやっている、あのお店の事業をやっているのね」と容易に理解して貰えます。

物件の入居審査やローン審査、初対面の人との話の際、会社設立後の手続などで「あなたはどんな仕事をしている方ですか?」ということはよく問われます。IT系であれば、詳細な資料やHPでの説明が必要ですが、フランチャイズなら、フランチャイズが作成した資料を使えば、すぐに理解して貰えます。

この説明コストが極めて低い点も、フランチャイズの隠れたメリットの一つと言えます。

本部の売り上げに貢献してもらえる

もし、加盟店だけで事業を行っている場合、方向性がズレて経営不振への道をひた走っているとしても、誰も注意やアドバイスはしてくれません。気がついたら、お客さんがいなくなり売上が減るだけです。

しかし、フランチャイズの場合、本部の支援担当者が「ここに課題があるのではないか?」「こうすればもっと良くなるのでは?」「今のセールストークより、このように話した方がお客さんが理解してくれる」など、客観的なアドバイスをすることが可能です。

当然、店の売り上げが伸びることで、本部の利益も向上するというwin-winの関係ですので、お互い伸ばすために必死に知恵を出し合うメリットがあります。

また、「なくて七癖、あって四十八癖」という言葉があるように、加盟店経営者自身・スタッフのビジネス上まずい癖というのは、概して自分自身では気付きにくいものです。ですが、フランチャイズの指導員であれば、「これはマイナスの要素になっていますよ、意識して直しましょう」とビジネスの利益を絡めて指摘できるので、本人・スタッフ側にとっても、抵抗なく受け入れられます。

また、フランチャイズ加盟店によっては、事業者間の積極的な交流を図ったり、優秀なフランチャイズや人材を表彰するなどして、フランチャイズ間の活発な切磋琢磨や、加盟店従業員のモチベーションアップを図る取り組みを行うことで、フランチャイズ側だけでなく、本部にとっても良い影響になります。

もちろん、本部の指導だけが全てではありませんし、本部の指導に対する依存体制になってしまうのは問題ですが、客観的なアドバイスが受けられるのはフランチャイズならではの良さと言えます。

フランチャイズ募集会社のデメリット

フランチャイズ募集会社にとって、メリットだけでなく、デメリットも存在します。大きな点としては、製品・サービスのクオリティコントロールと、加盟店の統率という面です。

詳細を見ていきます。

フランチャイズ加盟店の法令遵守・マナー遵守

フランチャイズの本部として、特にあってはならない問題が、フランチャイズ加盟店・社員・アルバイトの法令遵守等の意識の欠如によるトラブルの発生です。

有名な所では、フランチャイズ加盟店の店員・アルバイトが食事を粗末に扱う動画をアップしたり、その他不適切な行為を行ったことで、フランチャイズ加盟店ではなく、「フランチャイズ本社」のブランドが表に出ることです。

もし何かが起こると、問題を起こした加盟店だけでなく、フランチャイズ全体が大きなイメージダウンとなり、顧客離れを招きかねません。特に現在は、ネットを通じてアルバイトなどの悪ふざけが広がり、炎上、マスコミに取り上げられるということが恒常化しています。1店舗の、数人の不心得者の行為が、ブランドイメージの大きな毀損に繋がりかねません。

このような事がないように、本部側でもしっかりと社員・アルバイト研修、教育を行うことが必要ですが、それでも規模が拡大すればするほど、想定外の行動を行う人間が入ってくる可能性は0ではありません。

そのため、不適切な行為な行為が出来ない仕組み作り(本部直結の監視カメラなど)、不適切な行為をした際にどんな大変な事になるか、社会的制裁を受けるか、損害賠償責任を負うかなどのペナルティを末端まで徹底して周知するなど、不適切行為発生を防止するために、あらゆる措置を取る必要があります。

また、最初は真面目な人材であっても、入ってから数年経ち、仕事に慣れたところで、不適切な行為を起こす可能性もあります。慣れによる、不適切な行為の防止や、勤務年数を経た従業員・アルバイトのキャリアアップ・昇給・追加研修などを促し、「真面目に頑張ることによるインセンティブを与える」とともに、やってはいけないことに関してはしつこいくらいにフランチャイズ加盟店の社員・アルバイトに刷り込み、年数経過による慣れ・ズレが出ないようにしていく必要があると言えます。

加盟店とのトラブル

フランチャイズでは、本部と加盟店のトラブルはどうしても起こりがちです。特に、加盟店側が本部との契約の内容をよく把握していなかったり、逆に本部の加盟店開拓担当者が、加盟目標を達成するために、加盟店に対し、十分な説明をしていなかったというケースが想定されます。

トラブルを防ぐためには、まず、「弁護士を通じた、紛争時、本部に有利になりつつも、フランチャイズ加盟店側にも言いたいことは言えるようにするという契約書の作り込み」と、フランチャイズ加盟店への契約内容の徹底した説明にあります。

概して、契約の内容が複雑になると、説明する側もされる側も、流れ作業的になり、「なんとなくわかった」となりかねません。

その時はいいとしても、万一後で紛争になった場合、加盟店側は、「加盟の時そんな説明は受けていない」、本部側は「加盟の際にきちんと説明し、理解してもらい、署名をもらった」となります。

当然、契約書に署名している以上は、本部側が有利であるのは明らかなのですが、加盟店が「聞いていなかった、不当契約だ!」など、抵抗をしたり、様々な批判活動を行ったりすると、本部のイメージダウンや、他のフランチャイズ加盟店への影響等、様々な問題が想定できます。

そのため、穴のない契約書づくり、契約書の徹底した説明、「聞いていない」ということがないようにする仕組み作り(例えば、契約説明時にビデオで記録するなど)をすることが重要と言えます。

また、加盟店が増えれば増えるほど、本部が意識してコントロールしないと、加盟店が独自にあらぬ方向に行ってしまう可能性があります。

ある弁当チェーンの本部と、大手加盟店が分裂し、別々の弁当チェーンに分離してしまったということもありましたが、加盟店側の規模が大きくなりすぎないように、パワーバランスをコントロールしていくことも重要です。

特に、1つや2つの大手加盟店が、かなりの売上を挙げる状況になると、本部と加盟店の力関係が逆転する恐れもあります。もちろん、良好な関係を築けていればいいですが、何らかの問題でトラブルになると、最悪の場合は、フランチャイズが分裂する恐れもあります。

そこまで行かなくても、加盟後ノウハウだけを得て脱退、同一や著しく類似した事業を立ち上げることのないように、この点も競業避止義務を契約で明確にしておく必要があります。

フランチャイズの場合、全てが収益になるわけではない

当然の話ではありますが、フランチャイズ加盟店が行った事業の利益は、加盟店が売上・利益として受け取るものであり、本部側は指導料や加盟料・食材費など、間接的に利益を得るのみとなります。

ただ、加盟店側もリスクを大きく負っているわけですので、長い共存共栄のためにも、加盟店側が事業継続に十分な利益を作り、本部はあくまでその余剰を受け取る、という気持ちの方が良いと言えます。

フランチャイズ側も、本部の指示に従うという原則の下、規定通りに対応を行ったり、商品販売・サービス提供を行っているわけですので、「本部の指示を遵守すると、しっかりと利益が出る」という成功体験を得続けてもらうことも重要です。

本部体制の整備と展開のバランス

フランチャイズ本部を運営する場合は、フランチャイズの展開スピードに見合う本部体制の構築や人員の確保、一定以上の成果が出せる指導ノウハウの作成、加盟店側から「加盟したのに何も支援がない、支援が手薄委」という不満が出ないように、早急に本部体制の整備を行っていく必要があります。

フランチャイズ本部を運営する上では、「フランチャイズ事業者」としての仕組み作りと、実際のフランチャイズ加盟店の経営結果やフィードバックを受けての仕組みの改善が欠かせません。

一度仕組みを作って終わりではなく、仕組みを検証し、「こうすればもっと良くなるのではないかという実験」、PDCAサイクル(Plan-Do-Check-Action)を回し、想定・実験を行い、結果を検証、そこで得たものをフランチャイズ本部・加盟店で共有し実行に移すという、「加盟店のために、フランチャイズの仕組みを日々改善していく」という取り組みが重要です。

特に飲食系にありがちなことですが、特定の食べ物がブームになり、多くの加盟希望事業者から引き合いが来て、本部の指導できるキャパシティを超えてしまうことは想定できます。

何ごとも、ブームで流れに乗ると急拡大することはあっても、ブームはいつかさるか、もしくは定番となって定着するかのどちらかの道を辿ります。

ブームの時に、ともかく出店攻勢をかけるばかりで、本部としての指導や、商品・サービスのクオリティコントロールが行き届いていないと、お客さんからしても、「なんか流行っているから食べてみたけど、たいしたことないな」となってしまいかねません。

一時のブームで定着せず終わってしまったフランチャイズは、白いたい焼き・クレープなどなど、枚挙に暇がありません。一方で、ブームの波に乗って、ブーム沈静化後も定番として根強く残り続ける商品もあります。

フランチャイズ本部の提供する商品を、一過性のサービスで終わらせず、どうすれば定着させられるかという視点も重要と言えます。

フランチャイズのブランド維持

フランチャイズ本部にとって、これまで記したことも含め、ブランドイメージを落とさない配慮をすることの重要性をかきました。ただ、フランチャイズ本部の商品・サービスがもともと知られていなければ、何の意味もありません。

本部は、フランチャイズブランドの知名度向上に労力を割く必要があります。加盟する側としても、本部のフランチャイズ事業にブランド力がなく、事業名を人に言っても「何それ?」と言われる状況では、フランチャイズに加盟する意味があるのか、となってしまいます。

加盟店のためにも、本部が積極的に広告やPRを行うことにより、幅広く知ってもらう活動を続ける必要があります。

加えて、ブランドコントロールを行い、「良かった」という経験をした人を増やすことにより、ブランドがプラスに働くような配慮が必要です。

また、フランチャイズと本部。フランチャイズ間でトラブルが起こらないように、常に顧問弁護士の意見を得るなど、「少し危ないかも」という予兆を感じたときに、すぐに対策に入れる体制を作ることは重要です。

まとめ

企業がフランチャイズを募集する上では、事業を急拡大したい、スケールメリットを得たいなど、企業側に取っても大きなプラスがあり、また自社だけの展開よりも、様々な意味でスピード感があるため、フランチャイズの本部を運営しています。

なお、本部と加盟店は、契約上対等な関係にあります。そのため、交渉するべき部分は交渉し、契約上不合理な点・納得出来ない点は詳しく説明してもらうか、契約を考え直すか等を行うことも大切です。