フランチャイズのオーナー会とは?参加するメリットや組合と異なる点など

フランチャイズのオーナー会は、フランチャイズの加盟店オーナーの集まりをいいます。

オーナー会はフランチャイズによって様々に異なり、加盟店オーナーが自主的に組織するものやフランチャイズ本部が主導して組織するものなどがあります。また、その活動内容も単に情報交換や親睦を目的とするものから、組織としてフランチャイズ本部に様々な要求を行うものなどがあります。

今回の記事では、フランチャイズのオーナー会と労働組合の違いを整理するとともに、オーナー会に参加するメリットこれからのオーナー会のあり方について解説します。フランチャイズ業界に携わる方は、参考にしてみてください。

フランチャイズのオーナー会とは

フランチャイズのオーナー会とは

フランチャイズのオーナー会とは、フランチャイズの加盟店オーナーの集まりや組織をいいます。オーナー会は、フランチャイズによってその活動内容が異なり、単にオーナーが集まって会合を開くだけのものもあれば、正式な組織として運営されフランチャイズ本部に様々な要求を行うものなどがあります。

単にオーナーが集まって会合を開くだけのオーナー会は、情報交換や親睦を主体としているものです。オーナー会として正式に組織化していなくても、年に1~2回加盟店の集まりを開催し、加盟店同士の情報交換や本部からの連絡の場としているフランチャイズが多くみられます。組織化されていなくても、このような年に1~2回の加盟店の集まりをオーナー会と呼んでいます。

しかし、正式な組織として運営されフランチャイズ本部に様々な提案や要求を行うオーナー会もあります。このようなオーナー会は、企業における労働組合に似た存在といえるかもしれません。つまり、個別の加盟店オーナーは本部に対してものを言うことが難しいため、オーナー会という組織が一丸となり様々な要求や陳情を行う場合があるからです。

このようにオーナー会という組織として要求や陳情を出されれば、フランチャイズ本部も簡単に無視することが難しく、誠実な対応が要求されることになります。このため、オーナー会が労働組合化して様々な要求を突き付けてくることを懸念し、オーナー会の組織化に前向きでないフランチャイズもあります。

オーナー会の種類

フランチャイズのオーナー会は、組織化の方法により次の3種類に分けることができます。

①加盟店オーナーが自主的に組織する場合

加盟店オーナーが、自主的にオーナー会を組織し運営を行うものです。単にオーナー同士の情報交換や親睦を目的とするものから、フランチャイズ事業についての改善提案や要望を取りまとめ本部に提出するレベルのものまであります。加盟店オーナーが自主的に組織するオーナー会の場合は、フランチャイズ本部側は参加しないケースが多くみられます。

②フランチャイズ本部が主導して組織する場合

フランチャイズ本部が主導してオーナー会を組織するものです。フランチャイズ本部が主導してオーナー会を設立する理由は様々ですが、加盟店との積極的な交流や親睦を図るため、または加盟店の不平不満の受け皿として組織化するため、あるいは加盟店だけで勝手にオーナー会を設立させずに自ら主導して組織化し、それを監視下に置こうとするケースなどがあります。

いずれにしても、フランチャイズ本部が主導して組織した場合には、本部もオーナー会のメンバーとして参加することになります。

③第3者が組織したオーナー会に参加する場合

加盟店オーナーやフランチャイズ本部以外の第3者により設立されたオーナー会です。この場合は、複数のフランチャイズに跨って組織化されたものもあります。

オーナー会と労働組合

フランチャイズのオーナー会と労働組合

ここでは、オーナー会と労働組合を比較し、その違いについて見ていきましょう。

労働組合とは

労働組合法には、労働組合の定義が規定されています。それによると、労働組合とは、「労働者が主体となって自主的に労働条件の維持改善や経済的地位の向上を図ることを主たる目的として組織する団体、またはその連合団体」をいいます。

すなわち、労働組合は次の要件を満たす団体とされています。

①労働者が主体となって自主的に組織する団体

労働組合は、労働者が主体となって自主的に組織する団体でなければなりません。このことから、例えば、組織化にあたり労働者の主体性や自主性がなく、経営者の意向が強く反映された団体は、労働組合とはいえません。

②労働条件の維持・改善や経済的地位の向上を図ることを主たる目的とする団体

労働組合の目的は、労働時間、休暇、賃金などの労働条件や経済的地位について、経営者に維持・改善を求めることとされています。

日本国憲法第28条では、労働者の権利が保障されています。

〇日本国憲法第28条

勤労者の団結する権利及び団体交渉その他の団体行動をする権利は、これを保障する。

この勤労者の団結権、団体交渉権、団体行動権は、労働三権として憲法で保障されています。

①団結権 勤労者の団結権は、勤労者が団結して労働組合を組織できる権利です。立場が弱い労働者が個別に会社と交渉しようとしても難しく、また、会社側も個々の労働者を相手にしていたのでは非効率です。そのため、労働者側の交渉窓口として労働組合を組織化できる権利なのです。
②団体交渉権 団体交渉権は、労働組合が労働者の代表として、労働時間や賃金など労働条件の維持・改善について、会社と交渉ができる権利です。労働組合が団体交渉を申し入れた場合は、会社は正当な理由なくこれを拒むことができないとされています。
③団体行動権 団体行動権は、団体交渉により労働条件の維持・改善が期待できない場合に、労働争議(ストライキ)を起こすことができる権利です。

以上のような憲法で定められた勤労者の労働三権を具体的に保障するために、労働組合法があります。

労働組合法では、従業員が組合に加入することを邪魔する、従業員に対し組合からの脱退を勧めるなど会社が労働組合の運営に介入・支配することを禁止しています。

また、会社が組合に対し資金援助などの利益を供与することも禁じられています。

オーナー会と労働組合の異なる点

それでは、これまでみてきたフランチャイズのオーナー会と労働組合法上の労働組合は似ている点もありますが、どこが違うのでしょうか。

オーナー会と労働組合が組織的に違うかどうかは、次の点がポイントになります。

①団体の構成員が労働者であるか否か

オーナー会は、フランチャイズの加盟店オーナーで構成されています。一方の労働組合は、労働者が主体となって組織する団体であると労働組合法で定められています。そのため、加盟店オーナーが労働者といえるかどうかが判断基準になりますが、加盟店オーナーはフランチャイズ本部に雇用されているわけではないため、労働者には該当しません。

というか、加盟店オーナーは、規模は小さくても経営者に属します。加盟店が法人組織であっても個人事業であっても、店舗スタッフを雇用しながら店舗を経営していく立場にあることから、立派な経営者といえます。

したがって、構成員からみて、オーナー会は労働組合の要件を満たしているとはいえません。

②団体の構成員が自主的に組織したか否か

オーナー会は、加盟店オーナーが自主的に組織したものとは限りません。オーナー会は、加盟店オーナーが自主的に組織する場合以外に、フランチャイズ本部が主導して組織する場合や第3者が組織したものなどがあります。フランチャイズ本部が主導して組織した場合には、本部もオーナー会のメンバーとして参加することになります。

一方、労働組合は、労働者が主体となって自主的に組織する団体であると労働組合法で定義されています。また、労働組合法では、会社が労働組合の運営に介入・支配することを禁止しています。

このことから、フランチャイズ本部が主導して組織するオーナー会は、加盟店オーナーが自主的に組織したものとはいえず、また、フランチャイズ本部が運営に介入していることから、労働組合としての要件を満たしているとはいえません。

③団体が、労働条件の維持改善や経済的地位の向上を図ることを目的としているか否か

オーナー会は、労働条件の維持改善や経済的地位の向上を図ることを目的として組織されたものだけとは限りません。フランチャイズ本部に対し、フランチャイズ事業にかかる様々な要求や陳情を行うオーナー会もありますが、そのような活動は行わずに単にオーナー同士の情報交換や親睦を目的とする会も多くあります。

労働組合法では、労働組合は、労働条件の維持改善や経済的地位の向上を図ることを目的とする団体であると規定しています。この点からみると、オーナー同士の情報交換や親睦を目的とするオーナー会は、労働組合の要件を満たしません。

以上、フランチャイズのオーナー会と労働組合とを比較してきましたが、総合的に勘案すると、オーナー会は労働組合に似ている面はあるものの、組織的には異なるものであることがお分かりいただけるでしょう。

オーナー会と労働組合を巡る行政実例・判例

フランチャイズのオーナー会と労働組合は、似ている面はあるものの組織的には異なるものであることをみてきました。しかし、実は、加盟店オーナーが、フランチャイズ本部からみて労働組合法上の労働者に該当するかどうかについて、これまで法的に争われた例が以下のように複数あります。

①加盟店オーナーは、労働組合法上の労働者に該当するとの判断がされた例

岡山県労働委員会命令(平成26年3月13日)
東京都労働委員会命令(平成27年4月16日)
東京都労働委員会命令(令和元年7月31日)

②加盟店オーナーは、労働組合法上の労働者に該当しないとの判断がされた例

中央労働委員会命令(平成31年2月6日)

以下のような判例もあります。

①加盟店オーナーは、労働基準法および労働契約法上の労働者に該当しないとの判断がされた例

東京地裁判決(平成30年11月21日)

以上のように、加盟店オーナーがフランチャイズ本部の労働者に該当するかどうかについては、事案により判断結果が分かれています。加盟店オーナーが労働組合法上の労働者に該当するとの判断では、加盟店から本部に対し労務の提供があったと評価し、加盟店オーナーが組織する団体は労働組合に当たるとしています。

一方、加盟店オーナーは労働組合法上の労働者に該当しないとの判断では、同じ条件の店舗を経営しても経営努力によって差が生まれることから、加盟店オーナーの事業者性に着目し労働者ではないとしています。

行政実例や判例の方向性については、今後の推移をみるしかありません。しかし、事案によって、加盟店オーナーが労働組合法上の労働者に該当するかについての判断が分かれていることからも、加盟店オーナーが組織する団体を労働組合法上の労働組合と断定するのは、現時点では難しいのではないでしょうか。

オーナー会に参加するメリット

フランチャイズのオーナー会に参加するメリット

それでは、フランチャイズのオーナー会に参加すると、どのようなメリットがあるのでしょうか。加盟店オーナーとフランチャイズ本部それぞれのメリットをみていきましょう。

オーナー側のメリット

まず、オーナー会に参加するオーナー側のメリットとして、以下のものをあげることができます。

①経験豊富なオーナーから教えてもらうことができる

オーナー会に参加すると、経験豊富なオーナーから教えて貰うことができます。

同じ系列の加盟店オーナーといっても、経験年数は様々に異なります。この道何十年というベテランもいれば、先月に事業を始めたばかりの初心者もいます。特に初心者のオーナーは仕事のやり方を覚えるのに精一杯で、業務を効率的にこなすアイデアや必要経費を節減するノウハウなどを持っていません。業務の効率化や経費削減の重要性は頭ではわかっていても、実際に取り組む時間的な余裕や専門知識がないのです。

このような状況でオーナー会に参加すると、経験年数が長いオーナーや業務改善意欲が旺盛なオーナーから、業務の効率化や経費削減について有益なアドバイスを貰うことができます。

また、アドバイスは業務の効率化や経費削減の範疇に止まらず、店舗スタッフの採用や育成方法、効果的な宣伝広告の出し方、フランチャイズ本部からの要求への対応方法など、加盟店経営にかかる様々な分野に及びます。

このようにいろいろな分野の問題に対し、経験が浅い初心者のオーナーによい解決策はなかなか浮かんできません。そのような場合に、経験豊富なオーナーやアイデアマンのオーナーから教えてもらうことで解決法が見えてきます。

②他店との情報交換や悩みの共有ができる

次に、上の①と重なる部分がありますが、他店との情報交換や悩みの共有ができるメリットがあります。

フランチャイズ事業を進める上で外部との交流が全くない場合は、他の加盟店の状況がほとんどわかりません。

  • ・他店の集客はどの程度か
  • ・売上げはいくら位あがっているのか
  • ・利益は出ているのか

など、他店の様子が気になっても把握する手段がありません。

また、事業を行っていると、仕事上で様々な悩みも生じてきます。

  • ・客の集まり具合が減ってきたが、何か対策を講じなければいけないのではないか
  • ・人手が足らないので募集をしたが、アルバイトが集まらない
  • ・客からのクレームが多いが、よい対処法はないか

このような加盟店オーナーの悩みは、他の人になかなか相談するのが困難です。

そのような場合にオーナー会に参加すれば、情報交換によって他店の様子を把握することができ、また、同じ立場にある他店オーナーに悩みを打ち明けて相談に乗ってもらうことが可能となります。

③組織的な要求・交渉が可能となる

オーナー会に参加すると、組織的な要求・交渉を行う途が開けます。フランチャイズ事業では、個々の加盟店はフランチャイズ本部に対し優位な立場にありません。事業を進める上で、グループとして改善した方がよい点や要求したい事項があっても、個々の加盟店から意見することは簡単ではありません。

そのような場合に、オーナー会で意見や要求内容を検討・集約し、オーナー会として提案書や意見書を提出・交渉することが可能です。

フランチャイズ本部も、個々の加盟店からの要求や交渉には前向きでなくても、オーナーが一丸となって組織として提案・交渉してくれば、正面から向き合わざるを得ません。このことは、既にみてきたように、労働組合が使用者側と交渉するパターンに類似しています。労使交渉も、個々の労働者では使用者側との交渉が困難ですが、労働者がまとまって労働組合として交渉すれば、使用者と対等に話し合うことができます。

加盟店オーナーがフランチャイズ本部の労働者であるかどうかは、行政実例や判例で明確な答えが出ていませんが、オーナーがまとまってオーナー会として本部と交渉することは、労働組合の労使交渉に似た効果が期待できます。

④オーナー会としてPRや販促活動ができる

オーナー会としてまとまった会ができると、その会独自の活動ができるメリットがあります。オーナー会独自の活動は、フランチャイズ本部に要求や陳情を出すことばかりでなく、事業推進や業績向上に向けた会としての活動も含まれます。

販売促進活動や商品・サービスのPRなどは、個々の店舗では経費や人手の面で制約がありますが、オーナー会として複数店舗で行えば、コストが安く済み人材の融通もききます。

⑤オーナーのモチベーション維持に繋がる

オーナー会に参加することは、加盟店オーナーの仕事に対するモチベーション維持に繋がります。人は誰しも、自分と同じ立場の人とコミュニケーションをとり、有益な情報を交換・共有したいと望んでいます。それはフランチャイズの加盟店オーナーも同じで、自分と同じ問題や悩みを持つ同系列他店のオーナーとコミュニケーションを通じて結び付きたいと思っています。日々厳しい仕事に向き合う中で、「自分は1人だけでやっていく。他から孤立しても構わない」というオーナーは、滅多にいないでしょう。

したがって、オーナー会に参加して、他店のオーナーとコミュニケーションがとれることは、「自分には同じ境遇の仲間がいて、お互いの情報を交換することができる」との安心感を得ることに繋がります。さらに、仲間から有益な情報を得ることにより、仕事への改善意欲が高まっていくメリットがあります。

本部側のメリット

次に、オーナー会に参加するフランチャイズ本部側のメリットとして、以下のものをあげることができます。

①加盟店の意見や要望を知ることができる

オーナー会に参加すると、フランチャイズ本部は、加盟店の意見や要望を知ることができます。フランチャイズ本部が参加するオーナー会の多くは、本部が主導して組織化するものです。本部は、オーナー会を組織することにより、加盟店の意見や要望を知る場として利用できるのです。

もっとも、加盟店の意見や要望を知る場が、団体交渉のように本部対加盟店の図式になることを本部が望んでいるはずがありません。フランチャイズ本部はオーナー会を上手にコントロールしながら、意見交換や親睦という柔らかい雰囲気を醸成し、加盟店の意見や要望を把握しようとします。

日頃、フランチャイズ本部は、店舗巡回指導を行うスーパーバイザーを介して各店舗の様子を把握していますが、オーナー会では、本部が直接加盟店から様々な意見や要望を聞くことができます。

このように加盟店の生の声を聞くことで、フランチャイズ本部は、今後のフランチャイズ事業を進める参考資料にすることができます。

②グループの問題点を知ることができる

オーナー会に参加すると、フランチャイズ本部はグループの問題点を知ることができます。

フランチャイズ本部は、日頃から、自グループの動向やグループ内の出来事、ニュースなどに目を配らせています。それは、グループ内に何かトラブルなどが発生した場合に、出来るだけ迅速に対応するためです。

しかし、それだけ細かく目を配らせていても、時折グループ内における問題が表面化せず、その結果フランチャイズ本部の耳に届かないケースが出てきます。

その理由の一つに、グループ内での評価の問題があります。通常、フランチャイズ加盟店は、本部と契約を通じて仕事を行っていることから、何か問題が発生した場合には素早く本部に報告し、その解決に本部の力が必要な場合は対処してくれるよう要望します。

しかし、直営店の場合は、店舗で何か問題が起きると、その店=店長の成績や評価に直結します。直営店の店長はフランチャイズ本部の社員が就いているため、店長は自分の成績に影響することを恐れ、問題が起きたことを本部に報告せず自分だけで解決しようとする場合があるのです。

その場合に店長の力で解決できればよいですが、解決できずに事が大きくなって初めて本部の耳に入るケースもあります。

オーナー会に参加すると、主に加盟店オーナーから、グループの抱える課題や個々の店舗で対応に困る問題など、本部にとって必要な情報が報告や要望の形で出されます。フランチャイズ本部にとって、オーナー会は貴重な情報収集の場でもあるのです。

③加盟店独自のノウハウを把握し、標準化することができる

フランチャイズ本部は、オーナー会を通じて加盟店のユニークなノウハウを把握することができます。

同じ系列の加盟店でも、オーナーの創意工夫により独自の手法やノウハウを用い、業績を向上させている店舗があります。フランチャイズ本部は、オーナー会に参加することにより、そのような優れた手法やノウハウを把握することが可能です。さらに、その手法やノウハウを他店でも使えるように標準化し、グループの全店舗で活用することができればフランチャイズの業績向上に繋げることができます。

④グループの結束を強くすることができる

オーナー会は、グループの結束を強くします。オーナー会は、フランチャイズの加盟店や直営店が一堂に会する場です。その目的が、グループの親睦であっても、種々の問題を持ち合って検討し解決策を提案する場であっても、グループ自体の結束を強くします。

仮に、オーナー会がなければ、グループ内の店長は、他店の店長やスタッフに会うことも知ることもないため、何か相談したいことが起きても連絡し難い環境になってしまいます。しかし、オーナー会で他店の店長やスタッフと知り合いになれば、日頃から情報交換や相談が可能になります。

このように、オーナー会自体にグループの結束力を高める力がある以上、フランチャイズ本部としては、その場に出席して会の進行をリードしていくことが肝心です。

⑤グループの勉強会として活用できる

オーナー会は、フランチャイズグループの勉強会として活用ができます。フランチャイズへの加盟者は、事業や商売の経験者もいますが、未経験の初心者も多く混じっています。その理由は、多くのフランチャイズ事業が、事業経験がない初心者であってもできるシステムになっているからです。

どうして初心者でもできるシステムになっているのかは、主に次の理由によります。

  • ㋐フランチャイズのブランドを利用できる
  • ㋑フランチャイズ本部から、事業の進め方や経営ノウハウを教示される
  • ㋒助言・指導などフランチャイズ本部のバックアップがある

理由はまだ他にもありますが、ここで重要なのは、㋑事業の進め方や経営ノウハウの教示、および㋒助言・指導などフランチャイズ本部のバックアップです。

フランチャイズ本部としては、事業経験の浅い初心者オーナーに早く1人前になってもらい、店舗の経営を安定させてほしいとの目的があります。そのために、開業前後に加盟店オーナーに対する研修がなされ、また、開業後はスーパーバイザーによる店舗の巡回指導が行われます。

このように、あの手この手を使い加盟店オーナーをスピーディーに育てることが、フランチャイズ本部の重要な役目ですが、この目的のためには、オーナー会が非常に役立ちます。

オーナー会は加盟店オーナーが一堂に会する場であることから、その機会を利用して本部が講師を招聘し、加盟店オーナー向けの研修会を開くことができるからです。

例えば、オーナー会を2部に分け、前半は加盟店オーナーとフランチャイズ本部との意見交換や連絡の場とし、後半を研修にするなどの方法があります。

仮にオーナー会がないとしたら、加盟店オーナーを集める機会を別に作る必要がありますが、オーナー会と同時に研修会を開けば、時間的にも場所的にも非常に効率的です。

⑥加盟店の不満のはけ口にすることができる

フランチャイズ本部がオーナー会に参加することは、加盟店の不満のはけ口にできるメリットがあります。

フランチャイズ事業は、フランチャイズ本部と加盟店との契約で成り立っており、両者は、形式上では対等な契約当事者同士ですが、実質的にはフランチャイズ本部が優位な立場にあります。当初締結するフランチャイズ契約では、フランチャイズ本部にとって経営戦略上不利になる内容は取り決められていないのが実情です。そのため、フランチャイズ事業を進める中で、加盟店には様々な不満やストレスが蓄積されていきます。

例えば、一般的なフランチャイズ契約では、加盟店で使用する材料や販売する商品は、フランチャイズ本部か本部が指定する業者から仕入れなければならないとされています。仮に、加盟店がより安価に購入できる仕入先を開拓したとしても、そこから仕入れると契約違反とされてしまいます。

また、契約では、加盟店が店舗内で使用する備品のうち、指定されたものは、フランチャイズ本部が指定する業者から購入しなければならないという例も多くみられます。

このように、材料や商品、店舗内で使用する備品(指定されたもの)をフランチャイズ本部、または本部指定の業者から購入しなければならないことについては、フランチャイズの統一されたブランド水準を維持するためとされています。

しかし、経費を節減して少しでも利益を積み重ねようと日々努力している加盟店からみると、せっかく安く購入できる仕入先を諦めて、本部の指定業者から高く仕入れなければならないことは、本来であれば耐え難いことでしょう。

さらに、フランチャイズ契約で、加盟店の営業日や休日、営業時間などが決められ、営業日や営業時間を変更するには、事前にフランチャイズ本部と協議する必要があるとする例も多くみられます。

一般の商売であれば、営業日や営業時間は、客の集まり具合や店舗スタッフの確保状況などに応じて、経営者が臨機応変に変えることができるものですが、フランチャイズでは契約の縛りがあるため、加盟店オーナーの自由にはできません。

このことは、「フランチャイズに加盟する際に取り交わした契約書に書いてあるから、事前に了解済み」と言われればその通りですが、元々フランチャイズ契約書自体が本部の作成したものを使うことが多いことから、納得しかねる場合もあるのではないでしょうか。

以上のように、加盟店が事業を行う場合は元々の契約上の制限があるのに加えて、仕事の進め方などについて本部から指導や指図が下され、加盟店オーナーの不満やストレスが貯まっていくことになります。

フランチャイズ本部はオーナー会に参加して、このようなオーナーの不平や不満を聞き、そのはけ口とすることでオーナーのストレスを軽減することが可能です。

⑦加盟店の募集に有利となる

フランチャイズ本部がオーナー会に参加することは、加盟店の募集に際し有利に働きます。

これからフランチャイズの加盟者になろうとしている人は、「オーナー会があるということは、このフランチャイズは情報交換や研修の場が用意されている」と認識します。また、「このフランチャイズは、オーナー会を通じて加盟店の意見をよく聞いてくれる」と考えます。

フランチャイズ本部も、オーナー会を組織していること、本部もオーナー会に参加して意見交換していることなどを加盟店募集のホームページなどを使い積極的にPRしていきます。

フランチャイズ本部がオーナー会に参加して意見交換している姿は、重要な情報がグループ内で共有される開かれたフランチャイズであるとのイメージを見る人に与えます。

オーナー会に参加するポイント

フランチャイズのオーナー会に参加するポイント

それでは、オーナー会に参加するとしたら何が重要か、そのポイントを見ていきましょう。

オーナー側のポイント

オーナー会に参加する場合の加盟店オーナー側のポイントとして、次の2点をあげることができます。

①オーナー自身が事業や業界の理解を深める

1点目は、オーナー自身が事業や業界の理解を深めることです。加盟店オーナーは、加盟店の経営者として、店舗の営業や経理一式、従業員の採用・管理などを行っています。加盟店の経営を軌道に乗せ業績を向上させていくか、業績不振に陥らせるかは、オーナーの実力次第というわけです。そのため、加盟店オーナー自身が、フランチャイズ事業やフランチャイズ業界について十分に理解することが求められます。

オーナー会に参加すると、現在フランチャイズ業界で話題となっている出来事やニュースなどに触れることができます。また、他の加盟店の話を通して、効率的にフランチャイズ事業を進める方法や事業の安定化を図るノウハウなどを把握することができます。さらに、フランチャイズ本部の経営方針や事業戦略、フランチャイズ契約に関する知識、本部と交渉する場合のポイントなどについても情報を仕入れることが可能です。

したがって、オーナー会に参加する場合は、まず、オーナー自身が事業や業界の理解を深めることを目的とすることがポイントになります。

②店舗スタッフに事業や業界の理解を深めてもらう

2点目は、店舗スタッフに事業や業界の理解を深めてもらうことです。オーナー会といっても、加盟店オーナー以外の店舗スタッフは参加できないなどということはありません。オーナー会のルールはフランチャイズによって異なりますが、多くのオーナー会はそれ程厳格なルールを決めているわけではありません。会場の定員が許す範囲内であれば、加盟店オーナーが従業員やスタッフを連れて出席することが許されます。

フランチャイズ加盟店は、オーナー1人だけの力で維持されているわけではありません。もちろんフランチャイズ事業の中には、オーナー1人で開業できる業態もありますが、それ以外の多くの業態では、オーナーと店舗スタッフは車の両輪と同じく、どちらが欠けても、どちらが力不足でも、店舗の経営は困難になってしまいます。

したがって、加盟店の経営を軌道に乗せ業績を向上させていくためには、オーナーが自身の実力を伸ばしていくのと併せて、店舗スタッフを育てていくことが非常に重要な鍵となります。

このため、オーナー会のようにフランチャイズ事業や業界の情報収集・学習ができる機会があれば、積極的に店舗の従業員やスタッフを参加させ、事業や業界の理解を深めてもらうと同時に、知識やノウハウを吸収してもらうことが肝心です。

本部側のポイント

オーナー会に参加する場合のフランチャイズ本部側のポイントとして、次の2点をあげることができます。

①グループ全体のレベルを上げる

1点目は、フランチャイズグループ全体のレベルを上げることです。「グループ全体のレベルを上げる」とはどういうことなのかというと、フランチャイズ本部と加盟店を含めたグループ全体の人材について、事業・業界に対する理解を深め、営業力を磨き、店舗運営のノウハウを身に付けるなど、仕事人としてのレベルをアップさせることです。

人材のレベルアップは、本部だけ、または特定の店舗だけでは不十分で、本部も含めた全ての直営店や加盟店の水準を底上げするということです。

すなわち、フランチャイズ本部は、オーナー会に参加して様々な情報を把握することにより、自分達自身のレベルを上げていくとともに、そこに参加する直営店・加盟店オーナーやスタッフの水準も底上げしていけるよう会の運営をリードしていくことが重要です。

オーナー会が単なる親睦の場で終わるのではなく、グループの発展に資するような建設的な意見やアイデアが出てくるように、オーナー会のルールを定める活発な情報交換ができる雰囲気づくりを図るなどの工夫を行っていくのがポイントです。

なお、あまり自由闊達な意見を出せるような会にしてしまうと、フランチャイズ本部に対して要求を突きつける場となってしまう虞があるため、本部としてはその点も注意しながら会の運営を行っていくことが求められるでしょう。

②グループの結束を強くする

2点目は、グループの結束を強くすることです。フランチャイズでは、日々の営業は個々の加盟店が分かれて行っていますが、同じフランチャイズブランドを利用し、同じ商品や同じサービスを提供しています。したがって、個々の加盟店には、フランチャイズグループの一員であるとの強い意識があり、グループのブランドや商標を守っていこう、イメージをより高めていこうとの意思があります。

そのため、フランチャイズに何か大きな事件があり、商標ブランドが傷つけられたような場合には、本部のみならず、それぞれの加盟店も必死に営業努力を行って名誉を挽回しようとするのです。

これは、自分達が所属しているフランチャイズグループに対する信頼や愛着があればこそできることであり、グループの結束力の結果ということができます。フランチャイズ本部は、オーナー会を通じて、加盟店のグループに対する信頼や愛着をより醸成し、グループ全体の結束力を強めるよう努力することが重要なポイントとなります。

これからのオーナー会のあり方

フランチャイズのこれからのオーナー会のあり方

それでは、これからのオーナー会はどうあるべきかを考えてみましょう。

メリットを最大限に活用できる組織を目指す

これからのオーナー会のあるべき姿は、加盟店オーナーとフランチャイズ本部それぞれが得られるメリットを最大限活用できる組織を目指すことです。

すでにみてきたように、オーナー会に参加することは、加盟店オーナーとフランチャイズ本部それぞれに次のようなメリットがあります。

【オーナー側のメリット】

  1.  経験豊富なオーナーから教えてもらうことができる
  2.  他店との情報交換や悩みの共有ができる
  3.  組織的な要求・交渉が可能となる
  4.  オーナー会としてPRや販促活動ができる
  5.  オーナーのモチベーション維持に繋がる

【本部側のメリット】

  1.  加盟店の意見や要望を知ることができる
  2.  グループの問題点を知ることができる
  3.  加盟店独自のノウハウを把握し、標準化することができる
  4.  グループの結束を強くすることができる
  5.  グループの勉強会として活用できる
  6.  加盟店の不満のはけ口にすることができる
  7.  加盟店の募集に有利となる

加盟店オーナーとフランチャイズ本部双方のメリットを生かすためには、それぞれのメリットを双方が認め合い、それを尊重する必要があります。また、それらのメリットを活用するにあたり、双方が協力し合う体制や雰囲気づくりも重要です。加盟店オーナーとフランチャイズ本部双方ともに、オーナー会の活用ということを事業戦略の1つの柱として進めていけば、オーナー会の持つ価値はより高まっていくでしょう。

加盟店と本部がともに高め合う組織を目指す

これからのオーナー会のあるべき姿は、加盟店と本部がともに高め合う組織を目指すことです。オーナー会は、フランチャイズ本部に対し様々な要求を行う組織であるという一面があります。その見方からすると、オーナー会は本部に対する圧力団体または労働組合として、本部と利害が対立する関係にあるとみることができます。

しかし、仮に個別の要求事項においてオーナー会と本部に利害が対立する部分があったとしても、より広い視野からみた場合、オーナー会がグループ全体に与えるプラスの影響は非常に大きいものがあり、そのことは、オーナー会と本部共に十分過ぎるほど理解しています。

このことから、オーナー会の進行が、本部に対する圧力的・陳情的な内容だけで終わってしまうとすれば、大変勿体ないことといえるでしょう。

フランチャイズグループをより良くしてブランド価値を高めたい、グループの売上げを伸ばして拡大させたいなどの希望は、加盟店と本部双方が持っているものです。このことからも、グループ全体の利益になるような意見交換や提案の場として、オーナー会を活用していくことが重要です。

オーナー会の活発な意見交換や議論を通じ、グループを良くする改善案や客の心を掴むアイデア、客が喜ぶサービスの提案を出し合うなど、加盟店と本部がともに高め合う場にすることが、これからのオーナー会の存在意義を一層高めていく方法であるといえます。

まとめ

フランチャイズのオーナー会について

オーナー会は、フランチャイズ本部に対し様々な要求を行う組織という一面があり、本部に対する一種の圧力団体または労働組合としての機能を持っています。したがって、オーナー会には、加盟店からの個別の要求事項について、審議・提出する場としての役割があるといってよいでしょう。

一方で、オーナー会に参加することは、加盟店とフランチャイズ本部双方に様々なメリットをもたらします。このことから、加盟店オーナーとフランチャイズ本部それぞれが得られるメリットを最大限活用していくこと、オーナー会をそのメリットを活用できる組織にしていくことが非常に重要です。

そのためには、加盟店とフランチャイズ本部双方が、お互いのメリットを認め合い、それを尊重し協力し合える関係にすることが求められます。

また、オーナー会は、より広い視野から、グループ全体の発展や利益に向けた意見交換・提案の場として活用できることを見逃してはいけません。オーナー会は、加盟店や直営店とフランチャイズ本部が一堂に会し、活発な意見交換や議論を通して、グループの発展と利益に資する内容の話合いや協議を行うことができる機能を持っているのです。

以上のことから、オーナー会を単に本部に対する圧力的・陳情的な会として止めるのではなく、①加盟店とフランチャイズ本部双方が、オーナー会から得られるお互いのメリットを認め合い、そのメリットを最大限活用できる組織にしていくよう協力し合うことや、②グループの発展と利益に資する内容の協議を行うことができる組織にしていくこと等が、オーナー会を活用する鍵となるのではないでしょうか。