フランチャイズに最も合う立地、物件選びのポイント

FC加盟するときに最も大切な調査の1つが商圏設定です。商圏とは店舗が集客できる地理的範囲、人口カバー率などを指し、消費者の購買行動を人口と距離を基準に商圏を調査し、その土地でどれだけ需要があるのかをはかるのが目的です。

商圏調査は経営に直接的な影響を与えるので慎重に行う必要があります。本部が持つ膨大な統計データを参考に分析するのが一般的です。だからといって加盟オーナーは何もしなくていい訳ではありません。近所にあるライバル店数、来店する際の交通手段、その地域の世帯収入事情などを把握できれば、きっと店舗運営に役立つはずです。

また、物件選びも経営を成功させるために重要です。店舗の最適な広さ、立地などを見極めるのは、安定した売り上げを確保するために欠かせない作業となります。

本記事では、フランチャイズ加盟するときの商圏の設定のポイント、物件選びのコツをご紹介していきます。

商圏設定のポイントを知ろう

コンビニエンスストアやファストフード店などを出店する場合、商圏設定の如何によって将来が大きく左右されます。立地選びを間違えれば、他店と同じ価格の商品・サービスを提供しても売り上げは芳しくないでしょう。

正しく出店するためには、店舗までの距離の距離圏と、商圏内に年齢・性別ごとに何万人住んでいるかなどの商圏人口、さらに、世帯収入・ライフスタイルなどの住民特性をこまかく把握しなければなりません。

商圏設定で重要な3要素

  • 商圏距離
  • 商圏人口
  • 商圏住民特性

コンビニエンスストアは1次商圏

たとえば日用品や食料品が中心のコンビニは、顧客がほとんど毎日来店することを想定して商圏を設定します。総務省統計局によればコンビニエンスストアの一般的な対象エリアは「徒歩5〜10分以内」で、対象者は「昼間人口3000人、夜間人口3000人、世帯数1000世帯以上」とされます。

徒歩5分程度なので、商圏距離は300m〜500m以内となります。来店手段は徒歩か自転車です。距離的に車や電車など公共交通機関の利用を想定しません。
最寄品(日用品や食料品のこと)中心で来店頻度が高く、商圏距離が徒歩圏内の業態は一次商圏に分類されます

週単位で来店し、自転車で10分程度の距離にあるものは2次商圏に分類されます。ドラッグストアや中規模スーパーマーケットなどがこれに該当します。

ブランド品や家電、衣料品など専門品を扱う業態は3次商圏となります。月に一回程度、クルマで約30分かけて来店する距離です。大手家電量販店や百貨店などがこれに該当します。

対象エリア、対象人口 業態例
1次商圏 商圏人口3000人。徒歩5分以内。ほぼ毎日来店。最寄品が中心。 コンビニ、小型食品スーパーマーケットなど
2次商圏 商圏人口5000〜1万人。自転車で10分程度。週に1〜2回来店。中間品が中心。 ドラッグストア、中規模スーパーマーケット
3次商圏 商圏人口3万人〜10万人以上。クルマで30分程度。月に1回来店。専門品が中心。 百貨店、大規模家電量販店など

都市計画法による制限も把握する

このほか、建物を出店するときは都市計画法による制限を受けます。都市計画法とは、店舗の建ぺい率や容積率などを指定した法律であり、商業施設の用途に応じた規制を設けています。たとえば、第1種低層住居専用地域は、閑静な住環境を守ることを目的としており、低層住宅やこれに準じた店舗しか建設できません。床面積50㎡を超える店舗や、閑静な住環境を阻害するパチンコ店などは建設できない決まりとなっています。このほかの専用地域は以下のようになります。

第一種住居地域 住居の環境を保護するため定める地域
第一種低層住居専用地域 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
第一種中高層住居専用地域 中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
第二種住居地域 主として住居の環境を保護するため定める地域
第二種低層住居専用地域 低層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
第二種中高層住居専用地域 主として中高層住宅に係る良好な住居の環境を保護するため定める地域
近隣商業地域 近隣の住宅地の住民に対する日用品の供給を行うことを主たる内容とする商業その他の業務の利便を増進するため定める地域
防火地域又は準防火地域 市街地における火災の危険を防除するため定める地域

(都市計画法9条)

地域メッシュ統計の利用

総務省統計局は、商圏分析においてGIS(地図情報システム)を利用した地域メッシュ統計による手法を紹介しています。フランチャイズにおけるコンビニ出店やファストフード出店する際にとても便利です。

まず、県内の人口分布と既存コンビニ分布を把握します。500mメッシュで地域人口、年齢別人口、世帯数、昼間人口、夜間人口をポイントデータ表示させた既存のコンビニのデータを準備します。コンビニ商圏は前述した通り、「徒歩5分圏内、で間人口3000人、夜間人口3000人、世帯数1000世帯以上」が一般的な条件となるのでこれを最低条件として検索すると以下のような854箇所のメッシュが該当します。

参照:総務省統計局「地域メッシュ統計の利用例」)

上記条件で抽出されたメッシュ内に既存のコンビニがないことを確認したら、メッシュの中心点から半径700mの円を書いて、その円内に既存のコンビニがないことを確認します。そして、メッシュ内に競合店が無いことは確認し、このメッシュの周辺にも競合店が無いか確認します。この結果、7メッシュ(7つの赤い点)が抽出されました。

参照:総務省統計局「地域メッシュ統計の利用例」)

この7メッシュからに世帯数、昼間人口、夜間人口、年齢別を基準に出店候補エリアを絞り、河川、鉄道、大きな道路で分断されていないかを確認します。最後に、市場規模、競合状況、地理的条件などを考慮して抽出エリア内で店舗を探索し、担当者が現地に出向いてデータではわからない諸条件による検証を行い、出店の可否を決断します。

(参照:総務省統計局「地域メッシュ統計の利用例」)

フランチャイズ加盟ではすでに所有している土地・建物を店舗物件とする契約形態もあります。土地・建物を本部に用意してもらう契約タイプでは、本部が地域メッシュ統計を活用して、オーナーに最適の出店エリアを選定してくれます。

物件選びのコツとは

出店予定エリアが決まれば、土地の選定・物件選びに入ります。土地の広さや地形(じがた)は業態により異なります。業態に不似合いな地形にすると、売り上げに影響しかねないので慎重に検討しましょう。商業施設の場合、一般的にはスクエア(正方形)など均等の形が好まれます。

足を使って周辺環境を徹底調査!

商圏設定では、統計データをもとに最適の出店地を抽出しましたが、出店地の周辺環境は実際に訪れて徹底調査する必要があります。店舗予定地に面する道路の混雑具合や駐車場・駐輪場の有無、時間帯ごとの通行量、清潔性、安全性、視認性などを調べ上げます。いくら最新技術で最適のエリアを選定したとしても、出店したことがわかりにくく、または入店しにくいような場所では意味がありません。出店後の周辺環境に与える影響まで考慮して、物件予定地を検討するよう心がけましょう。

すでに土地を用意している場合、開業しようとしている業態がその地域で需要があるのかを調査しましょう。その上で、集客数見込み、売り上げ見込みなどを試算し、継続的に店舗運営ができるかどうかを検討します。

貸店舗の初期費用に要注意!

貸店舗の場合、業態や店舗規模に応じた売上高、必要経費を試算して家賃を決めることになります。また良い貸店舗を見つけるためには不動産会社選びも重要です。なるべく多くの不動産会社を訪問し、最も条件の良い貸店舗を見つけましょう。何度も訪問することで不動産会社と懇意になり、特別な情報を流してくれることもあります。信頼関係の構築がいい物件選びの第一歩です。

初めて貸店舗を選ぶなら、契約の際に必要となる経費が予想を上回ることがあります。店舗用賃貸は住居用と異なり、数ヶ月分の保証金を積まなければならないからです。契約期間が終われば返済されるのが一般的ですが、初期費用として高額になるので、保証金でいくら必要になるのかを事前に調べておきましょう。このほか、礼金、敷金、家賃、共益費、権利金などが必要になる場合もあります。

貸店舗の入居、退去の際に必要となる費用

礼金住居用賃貸では一般的なお礼金ですが、貸店舗ではあまり多くありません。賃料の1、2ヶ月を支払うのが相場です。返済されない費用です。
敷金退去時に原状回復費用として事前に支払う金銭です。店舗に損傷を与えてしまった場合に、敷金から補填されます。返済される費用です。
保証金貸店舗、賃貸オフィスで一般的な担保金です。無利息で返済される費用となります。
権利金物件を借りることで発生する利益の相当分として支払う対価となります。返済されない費用です。居抜き(前のテナントの設備・什器・造作が残された物件)の場合、その対価として支払うことも多いです。
償却費解約時に差し引かれる費用です。保証金から10%引かれて返還されたり、保証金に対して年3%引かれたりするのが一般的です。
家賃毎月支払う費用です。ショッピングセンターなどでは売上に対して一定に比率をかけて算出する売上歩率方式を採用していることもあります。
共益費オフィスビルの共益部分(階段、廊下、エレベーター)の使用に対して支払う費用です。毎月支払うのが一般的です。