人手不足で出店ハードル高まる外食フランチャイズ業界

大手家電量販店ビックカメラと衣料品大手ユニクロがコラボした「ビックロ」。本屋とカフェが一体となった「ブックカフェ」。このように最近の経営形態は単体業種の営業からの多様化、総合化が進んでいます。背景には少子高齢化や人手不足が挙げられ、さまざまな年齢層の顧客を呼び込もうと各企業は工夫を凝らしています。

近年市場が拡大している外食業界も人口構造変化への対応に追われています。メガフランチャイジーの台頭により現在まで着実に売上高を伸ばしてきましたが、空前の人手不足に直面。新規の出店が大変難しい環境になっているといいます。

外食フランチャイズの市場概要

三井住友銀行の調査によれば、外食業界の市場規模は成長期だった1980年代から2000年まで右肩上がりに増加。ピーク時には30兆円に迫る勢いでした。しかし、以降は節約志向の高まりやデフレにより2010年まで減少傾向となっていました。

2015年度の市場規模

2015年現在の市場規模は25.1兆円で、その内訳は飲食店13.5兆円、集団給食3.4兆円、料亭・バー等3.0兆円、宿泊施設2.9兆円、喫茶・酒場等2.2兆円、その他0.3兆円となりました。

外食業界の市場規模(2015年)

構成比 市場規模
飲食店 53.6% 13.5兆円
集団給食 13.5% 3.4兆円
料亭・バー等 11.8% 3.0兆円
宿泊施設 11.4% 2.9兆円
喫茶・酒場等 8.7% 2.2兆円
その他 1.0% 0.3兆円
全体 100% 25.1兆円

(参照:三井住友銀行 企業調査部)

業態別では、若者の酒離れや少子高齢化でパブ・居酒屋は縮小しました。このほか、カフェ、ファミリーレストラン、ファストフードは横ばいに推移すると見られています。

チェーン数が増え続けているが

20億以上の売り上げを出すメガフランチャイズの台頭を背景に、外食フランチャイズの売上高は90年代の2.5兆円から約4兆円に伸びました。チェーン数は300チェーンから600チェーンに迫る勢いです。

しかし、人口減少による人手不足から出店ハードルはますます高まっていくとの予想がされます。全国の有効求人倍率は1倍を超えましたが、政府与党の賃上げ要求により全国の平均時給は上昇。今後、外食・飲食チェーンは人件費抑制を図った店舗運営が求められます。

IT、ビッグデータ活用で人手不足を乗り越えろ

深刻化する人手不足を受けてあらゆる業界でAIやビッグデータを活用する動きが広まっています。コンビニエンスストア大手のローソンでは商品の発注や在庫管理にAI(人工知能)を活用するなど、業務の効率化につながっているといいます。

外食産業におけるIT活用

低価格化競争が激化する外食サービス。サラリーマンの平均ランチ代は600円を切ります。その結果、外食チェーンは商品単価を上げるよりもいかにしてコストを下げるかが求められています。

最近では注文・清算の自動化や人材募集におけるIT活用などの導入が進んでいます。調理、給仕以外の業務を極力自動化することで人件費削減を実現しています。

AIに仕事を奪われる!?

AIの進化やビッグデータ活用によって人手不足対策が期待されるも、最終的には人の全ての仕事を奪うのではないかとの懸念が広がっています。

経済産業省の試算によれば2030年までに技術革新により735万人分の雇用が減ると予測されました。部門別にみると「役務・技術提供型サービス部門」での雇用削減が283万人と最も大きくなります。次いで、「顧客対応製造部門」214万人、「粗原料部門」81万人、「おもてなし型サービス部門」80万人、「プロセス型製造部門」58万人、「インフラネットワーク部門」53万人、「情報サービス部門」17万人と続きました。

部門別に見た雇用削減試算

部門 削減予想
顧客対応製造部門 283万人
粗原料部門 214万人
おもてなし型サービス部門 81万人
プロセス型製造部門 80万人
インフラネットワーク部門 58万人
情報サービス部門 53万人
合計 735万人

(参照:経済産業省より)

ただし、この数値は2030年まで対策を何も講じなかった場合の「現状放置シナリオ」によるものです。機械・ソフトウェアと共存する「変革シナリオ」では、人にしかできない職業に労働力を移動することで、人々が広く高所得を享受できる社会を目指すとしています。

外国人、高齢者の活用進む

このほか、外食業界では外国人留学生と65歳以上の高齢者の活用が積極的に行われています。特にフランチャイズチェーンでは、働き方改革の一環として営業時間の短縮や離職率低下に向けた取り組みが進められています。

たとえば、大手ファミリーレストランチェーンの「すかいらーく」では、全店舗の7割で営業時間の短縮、採用業務のアウトソーシングが行われました。
マクドナルドやモスバーガーなどのファストフードでは、接客スタッフの高齢者採用が積極的に進められています。

こうした流れを受けて、経産省は

「民間活動において必要となる行政手続についても利便性やスピード感の向上が不可欠となってくる中、民間に先んじて行政自ら、革新的なテクノロジーを活用し、業務プロセスの抜本的な高付加価値化・効率化やサービスの大幅な利便性の向上に取り組む」

とコメントしました。

外食産業のみならず、あらゆる業界で人手不足に対応する取り組みに注目が集まります。