オーストラリアでフランチャイズ展開する日系企業
2015年に発効した日豪経済連携協定(EPA)きっかけに日本とオーストラリア間でのヒトとカネの動きが活発化しています。近年は日本食チェーンの進出も相次ぎ、寿司、ラーメン、焼き鳥などがオーストリア人の間で人気となっています。農林水産省によれば、オーストラリア、ニュージーランド(その他オセアニア地域含む)の日本食レストランは2000軒以上にのぼるとされます。
もともとオーストラリアの食文化は、多種多様な移民の流入に影響を受けているため、日本食のほか、フレンチ、イタリア、中華、タイ、ベトナムなどのレストランが多数営業しています。その特徴は個人が1店舗を経営しているケースが多く、日本やアメリカと違ってチェーン展開している大手企業がほとんどありません。そのため、事業者数8360社に対して店舗数は8727店舗となります。
本記事ではオーストラリアにおける外食産業市場を中心に、フランチャイズ展開している日系企業の動向などを詳しく見ていきます。
目次
日豪EPAの発効
2006年に日本とオーストラリアの経済連携協定交渉が始まり、2014年、安倍首相とアボット前首相が署名したことで締結されました。
オーストラリアは日本にとって4番目の貿易相手国であり、石炭や石油、鉄鉱石そして牛肉などを主に輸入しています。
一方、日本はオーストラリアにとって2番目との貿易相手国となり、日本から自動車、石油製品、その他機械・部品などが多く輸出されています。
日本からの輸出品はほぼ関税撤廃
締結内容を確認すると、日本からオーストラリア市場に向けては、農林水産品では全ての品目について関税が撤廃されています。
自動車については完成車輸出額の約75%が関税撤廃となっており、残る完成車も3年目で撤廃される予定です。自動車部品についても、主に3年目以内での関税撤廃となっています。
一方、オーストラリアから日本市場に向けては、鉱工業品のほぼ全ての品目が10年間で関税撤廃となります。
農林水産品については、コメが関税撤廃の対象外となり、牛肉は冷凍の場合段階的に18年目に19.5%まで削減し、冷蔵の場合段階的に15年目に23.5%まで削減されます。
ヒトの移動や投資も活発化
物品貿易のほか、ヒトの移動や投資、サービス、税関手続きなどに関する規制が緩和され、緊密に連携できるよう図られました。
ヒトの移動 | 商用訪問者、企業内転勤者、投資家等の自然、また、その配偶者と子に対する入国及び一時的な滞在の許可に関する約束を規定。手続の簡素化、迅速化及び透明性の向上 |
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サービス | 内国民待遇、最恵国待遇、数量・外資規制、現地における拠点等に関する規律を定める。ネガティブリスト方式(留保を付した分野以外 は自由化を約束)を採用。電気通信サービス、金融サービスについても追加的な約束を規定 |
税関手続き | 税関手続の透明性、関税法令の適正な執行及び物品の速やかな通関のための枠組みを定めるとともに、協力・情報交換を促進 |
投資 | 投資財産設立段階及び設立後の内国民待遇および最恵国待遇、特定措置の履行要求の禁止、正当な補償等を伴わない収用の禁止 |
経済関係の緊密化 | 経済関係の一層の緊密化を目的として、貿易及び投資の促進につき協議するために、政府関係者に加え、産業界関係者も招請可能な小委員会を設置 |
日本酒などが大人気に
日本からオーストラリアに輸出する水産物はそれほど多くないものの、日本酒などのアルコール飲料の輸出量が急増しています。
近年の和食ブームとともに世界で日本酒が飲まれる機会が増え、財務省貿易統計によれば、昨年度の清酒(日本酒)の輸出額は155億8100万円(前年度比111%増)、輸出数量は約19,737kl(前年度比109%)となり、7年連続で過去最高となりました。
オーストラリアでは2008年以降、日本からのアルコール飲料の輸入が増え続けており、2014年は8375豪ドル(約7.4億円)に達しました。
日本酒に限れば、オーストラリア向け輸出量は前年比23.8%増の333.6キロリットル、輸出額は29.0%増の2億6,952万9,000円となりました。2007年との比較では、輸出量は2.8倍、輸出額は3.4倍に拡大しています(2014年時)。
2008年 | 5102豪ドル |
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2009年 | 6007豪ドル |
2010年 | 6546豪ドル |
2011年 | 6625豪ドル |
2012年 | 6869豪ドル |
2013年 | 7770豪ドル |
2014年 | 8375豪ドル |
オーストラリアの外食産業事情
農林水産省によれば、シドニーだけで250軒以上の日本食レストランが見られ、寿司のフランチャイズチェーンが増えている一方、独立系日本食レストランもオーストラリア全土の大都市で増加傾向にあるとされます。
米系ファストフードチェーンが一番人気?
1970年代に欧州からのみの移民を受け入れる白豪主義を廃止して以降、アジアなどからの移民が増加した結果、多種多様な文化が受け入れられるようになりました。
オーストラリアの外食産業は、日本貿易振興機構(ジェトロ)によると、「フード・飲料サービス」全体の売上高(ファストフード店、レストラン、カフェ、テイクアウト店など含む)は、前年度比5.2%増となる730億7200豪ドル(約6.4兆円)で、全産業の売上高の2.5%を占めます。
オーストラリアではハンバーガーやフライドチキン、ピザなどの米系ファストフードが人気で、全体の売上高は153億豪ドル(約1.3兆円)、事業者数は2万4,600社、店舗数は3万1,858店、被雇用者数は21万4,265人となります。
なかでも最大手は870店舗を展開するマクドナルドで、うち75%がフランチャイズ展開しています。次いで600店舗以上のケンタッキーフライドチキンと約270店舗のピザ・ハットを運営するヤム!ブランド、3位に1300店舗を展開するサブウェイとなります。
近年は外食にお金をかける家庭が増加
また、オーストラリア統計局によると、オーストラリアの一般家庭における飲食費の週間平均は約255豪ドル(約2万2500円)とされます。家計支出に占める飲食費の割合は19.7%で、近年はシリアルおよび非アルコール飲料の出費が減る一方、外食やテイクアウトにかける費用が増加しています。
オーストラリアにおける日本食レストランの正確な数は定かではないですが、シドニーとメルボルンでそれぞれ600店舗前後、ブリスベンで約200店舗、全国で約1,900店舗ほどとのデータもあります。(オーストラリアの大手飲食店批評サイト「イータビリティー」の検索結果より 参照:ジェトロ)。
Go Sushi | オーストラリア全土で30店舗以上を展開。Pacific Retail Management Groupの企業であるSushi Tribeの一環で、同グループはWasabi WarriorsやKick Juice Barsも運営 |
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Sushi Sushi | オーストラリア全土で100軒以上のレストランを展開するフランチャイズチェーン |
Sushi Train | オーストラリア全土に45店舗を展開。オーストラリアで 20年前、初めて回転寿司店を導入した企業 |
AFC Franchise Corp. | オーストラリアで87店舗を展開。スーパーマーケットを対象にした新鮮な寿司の最大手サプライヤー。米国で事業を始め、うち多くはスーパーマーケット Woolworthの店内で営業。 |
Yayoi | 日本の大手飲食サービス業プレナスグループが経営するレストラン。同グループ傘下には他に、Hotto Mottoや鍋レストランのMKなどがある |