【契約する前に】FC本部と加盟店を訪問しよう〜本部に対する質問編〜
人生を大きく左右するフランチャイズへの加盟。その契約するフランチャイズ本部を決める際に最も大切なのが本部と加盟店を直接訪問して情報収集することです。収益モデルや契約内容はインターネットで調べることができますが、担当者の話を直接聞くのとでは印象が大きく変わります。加盟店訪問も先輩オーナーのリアルな情報を仕入れる貴重なチャンスとなります。職場の雰囲気も自分の目で見てみないとわかりません。ですからFC加盟では積極的に足を運んで情報収集に努めることが大切になるのです。
本記事では、なぜ本部・加盟店を訪問するのか、訪問先で何を質問すればいいのかを詳細に見ていきます。
目次
本部・加盟店訪問の重要性
脱サラしてラーメン屋を開きたい、または夫婦二人でコンビニ経営にチャレンジしたい−−。このように独立するときの選択肢として挙がるのがフランチャイズ加盟です。経営が軌道に乗るまでの最低保証制度や本部スタッフの定期的な派遣など、経営初心者にとってFC加盟は強い味方となります。
本部の加盟オーナーのトラブル
しかし、加盟する前と後で話が違ったという例も少なくありません。契約前に提示された売上見込みに全く届かなかったり、スーパーバイザーがほとんど巡回に来ないなどのケースが意外と多いのが現実です。どうして加盟前にもっとよく調査しなかったのか、加盟店に話を聞いていればこんなことにはならなかった…、など後悔しても後の祭り。契約期間を満了するまでは正当な理由なくこれを解約することができません。
FC契約を規制する2つの法律
加盟前に本部を訪問することは、その企業の実態を把握するまたとないチャンスです。もちろん本部側は自分たちに都合の悪い情報を積極的に話すことはないですが、加盟者が鋭く質問することで相手も答えざるを得なくなるでしょう。FC契約を法的に規制する中小小売商業振興法や独占禁止法は、加盟者に対する説明義務を本部に課しているため強い味方となってくれます。
1 | 本部企業の従業員数、資本額、役員・株主の氏名など |
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2 | 本部企業の直近3年分の財務諸表(貸借対照表と損益計算書) |
3 | 特定連鎖化事業(フランチャイズ事業)の開始時期 |
4 | 3年分の加盟店舗数の推移と5年分の訴訟件数 |
5 | 本部企業が加盟者店舗周辺に同一または類似の店舗を出店する計画があるかどうか |
6 | 契約期間中と契約終了後に、同一または類似の事業を始めることに制限を設けているかどうか |
7 | 加盟金と定期的に徴収する費用(ロイヤリティなど)について |
8 | 本部の融資制度を利用する場合の利息や算定方法など |
9 | 契約違反が発覚したときの違反金や中途解約条件 |
10 | 経営アドバイスに関する事項について |
本部訪問時ではあらかじめ準備した質問事項を全て聞き、疑問や不安が残らないようにすることが大切です。この際、質問に応える担当者の姿勢も見るべきポイントの1つです。投げやりに答えていないか、面倒臭そうにしていないかなどの振る舞いを見極めましょう。やはり真摯に応えてくれる企業なら契約後も良好な関係を維持できそうな気がするものです。
一方、加盟店訪問もとても大切です。リアルな経営状況や本部の支援体制を加盟オーナー側から意見を聞くことができます。月に◯◯万円の売上が見込めると本部がいっても、下回る可能性は十分にあります。そういう時、本部はどのような支援をしてくれるのか。オーナーの相談に真剣に乗ってくれるのかなどを調査する必要があります。ほったらかしにされることも多くあります。
では訪問する際、どのような質問をすればよいのか。見ていきましょう。
本部訪問で質問すること
FC本部を訪問するときは、事前に質問事項をまとめ、相手先の会社情報を集めておくことが大切です。訪問した際、加盟者があまりにも無知だったら本部担当者の心証に影響します。訪問先に「よく調べて来ているな」と思わせるくらいの熱意を見せることも大事です。
必ずしたい20の質問
質問では経営理念や加盟店舗数など基本的事項から、収益モデル店舗の情報開示やスーパーバイザー(SV)との面会頻度など細かい情報を聞き取ります。
中小小売商業振興法は、フランチャイズチェーン事業を営む事業者に加盟希望者に対して売上高など重要事項について情報を開示し、説明することを義務付けています。本部が契約前に交付する法定開示書面では、直近3年分の決算書類の開示や5年以内における訴訟件数も開示事項となります。この法定開示書面をもとに質問事項を作成してもいいでしょう。本記事では以下の20事項の質問を推奨します。
本部の経営状況に関する質問 | |
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1 | 企業理念について教えてください |
2 | フランチャイズ展開を行っている理由を教えてください |
3 | 他社競合店に対する御社の強みを教えてください |
4 | オーナーに求める条件について教えてください |
5 | 研修内容と期間、費用を教えてください |
6 | 収益モデルとその根拠となる店舗を教えてください |
7 | 現在の加盟店舗数、多店舗経営オーナー数、メガフランチャイザーについて教えてください |
8 | スーパーバイザーの定期訪問回数を教えてください |
経営理念、オーナーに求められる資質を聞く
企業理念を聞くことはとても大切です。何を目的にフランチャイズ展開しているのかを聞き、自分が加盟する理由との擦り合わせを行いましょう。目的が違えば、店舗経営を巡って両者の間に少なからず歪みが生じてくるはずです。手遅れになる前に、互いの意思確認をしておきましょう。
その際、本部がどのようなオーナーを求めているのかも聞き出しましょう。積極的に意見を出すオーナーを歓迎する本部もあれば、煙たがる企業もあります。素直に従ってくれるオーナーが欲しいのか、互いにアイデアを出し合い2人3脚で運営したいのか、比較的自由に運営させてもらえるのかを確認します。
また、加盟オーナーに対する姿勢に関する質問は次のようになります。
加盟オーナーに対する姿勢に関する質問 | |
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9 | 加盟金、保証金、開店時必要経費、ロイヤリティ、その他費用について教えてください |
10 | 売り上げ見込みに達しない場合の本部の対応について教えてください |
11 | その他トラブル発生時の本部の対応について教えてください |
12 | 初期投資回収に必要な期間を教えてください |
13 | 直近5年の契約解除件数を教えてください |
14 | 直近5年の訴訟件数を教えてください |
15 | 競業禁止義務、テリトリー権について教えてください |
16 | 契約違反の損害賠償について教えてください |
17 | その他加盟オーナーの義務について教えてください |
18 | 最低売上保証制度について教えてください |
19 | 今後の事業展望について教えてください |
20 | 契約解除条件とその違約金について教えてください |
経営不振店へのこれまでの対応策を聞く
加盟金やロイヤリティなどの事項は法定開示義務があるので、担当者も素直に教えてくれるでしょう。しかし、加盟者が最も気になるのは経営が成功するかどうかです。もちろんオーナー側の努力に大きく左右されますが、不調時に本部がどのような手を差し伸べてくるのかは確認しておきたいところですよね。過去の経営不振店に対して本部がとった対応とその効果を聞き出すことで、本部の加盟店に対する姿勢を見極めましょう。企業によっては契約後はほったらかしで不採算店はすぐ見捨てるものもあるので、注意が必要です。
加盟店舗数の推移を確認する
フランチャイズ契約ではオーナー店舗がいくら好調でも本部の経営成績次第で撤退に追い込まれます。そうならないためにも、企業の現在の経営状況と今後の見通しを調べることがとても大切です。加盟店が増え続けており成長が見込める企業は申し分ないですが、経営規模が縮小傾向で業界自体も見通しが明るくないのなら再考の余地ありでしょう。最近は、経営再建のため他業態のフランチャイザーとなる流れが強まっています。人手不足を背景に業態転換する動きも活発化しており、安定したフランチャイジーを見極めるのが難しい状況です。経営に“絶対”はないですが、せめて企業が公開しているIR情報や決算短信を確認して現在の経営状況を把握するよう努めましょう。
分からないことがあったら素直に聞く
このほか、何か不明な点があれば恥ずかしがらず何でも尋ねることが大切です。疑問や不安を抱えたままで契約するのは後味が悪いですし、両者の関係にとっても決して良くありません。向こうは経営のプロでありこちらは初心者かもしれませんが、遠慮なく質問していきしましょう。経営が成功するかどうかは経験の差だけではなく、熱意が大事です。心の底から納得するまで契約してはいけません。
独占禁止法のフランチャイズ・ガイドラインも確認しよう
フランチャイズ契約を規制する法律は中小小売商業振興法のほか、独占禁止法のガイドラインがあります。これは、FC契約の性質上、立場が強くなりがちな本部の加盟オーナーに対する各種行為を独占禁止法に照らし合わせて制限するものです。
たとえば、本部が加盟者を募集する際、実際の売上高より多く見せたり、他社よりも過剰に有利な条件で取引すると誤解させるような行為は禁止されています。
また、加盟店に対して仕入れ先を無理に指定したり、仕入れ数量を正当な理由なく強制する行為も、「優越的地位の濫用」として規制されます。こういった行為を行った事例があるかどうかも調べる必要があります。
加盟契約すれば長い付き合いになるフランチャイズビジネス。最善の本部を選ぶためにも苦労を惜しんではいけません。