フランチャイズで話題のゴーストレストラン、ゴーストキッチンって何? メリット・デメリットを紹介
様々な業界に拡大しているフランチャイズですが、最近では、ゴーストレストランやゴーストキッチンの分野にも普及しています。ゴーストレストラン、ゴーストキッチンは、実店舗を持たずネット上に店を構え、デリバリーやテイクアウトに特化した飲食店ですが、新型コロナウイルスの感染拡大により、現在最も注目を集めているサービスです。
本記事では、フランチャイズで話題となっているゴーストレストラン、ゴーストキッチンを始める場合のメリットやデメリット、さらにフランチャイズ・ゴーストレストランの収益や開業手順について解説しています。ゴーストレストランやゴーストキッチンの開業に関心がある方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ゴーストレストラン、ゴーストキッチンとは
ゴーストレストラン、ゴーストキッチンとは、実店舗を持たずにネット上に店を構えるレストランのことです。実店舗がないため、店内飲食はなく、主にデリバリー専門の営業形態となっています(一部で、テイクアウトを取り入れている業者もあります)。料理の配達は、主にデリバリーサービスに委託するため、デリバリーサービス業者のプラットフォーム上に店のホームページを掲載しています。
調理は、レンタルした厨房で行いますが、他のゴーストレストラン業者と共同で使用する例も多くみられます。
ゴーストレストラン、ゴーストキッチンには、その業態に応じた営業戦略や経営ノウハウが必要です。そのため、ゴーストレストランのマーケティング・販売戦略や事業経営のノウハウなどをセットで提供してくれるフランチャイズが普及しています。フランチャイズに加入すれば、後で説明するように、未経験者でも短期間でゴーストレストランを始めることができます。
フランチャイズ・ゴーストレストランのメリット
次に、フランチャイズでゴーストレストランを始めるメリットについて見ていきましょう。
フランチャイズでゴーストレストランを始める場合は、大きく分けて、
- 既存の飲食店がゴーストレストランに参入する
- 未経験者がゴーストレストランで創業する
の2つのケースに分けることができます。
ここでは、既存店が参入した場合と未経験者が創業した場合それぞれのメリット、両者に共通するメリットなどについて解説していきます。
商号・設備をそのまま使える(既存店)
既存の飲食店がフランチャイズでゴーストレストランに参入する場合は、従来からの店の商号(屋号)はそのまま利用できます。サイドビジネスとしてゴーストレストランを始める場合は、従来の飲食店はこれまでの商号でそのまま継続し、新しく追加するゴーストレストランは、加入するフランチャイズの商号でウェブ上に店を構えればよいのです。
歴史があり地域に親しまれてきた飲食店であれば、従来からの商号を使い続けることにより、引き続きその地域に周知、浸透していくことができます。
一方、新しくウェブ上に出店する店は、フランチャイズのブランド力や周知度を最大限に利用して、デリバリー専門店として営業していけばよいわけです。これは、1人のオーナーが、2つの店を同時に経営することを意味しています。
また、最も大きいメリットが、飲食店の厨房設備をそっくり活用できることです。ゴーストレストランは、店舗を持たないレストランですが、食材を調理するための厨房は必要です。この厨房設備を他から借りる必要なく、自分の店のものを自由に使えるメリットは、①厨房の賃借料がかからない、②使用時間は自分で決めることができる、③使用スペースの制約を受けないなど、非常に大きいといえます。
空き時間を有効活用できる(既存店)
既存店がゴーストレストランを始めると、既存店の空き時間を有効活用できるメリットがあります。
飲食店には定休日があり、また営業日でも、客が混む時間帯とそうでない暇な時間帯が発生します。ゴーストレストランでは、既存店の定休日や営業時間外、客があまり来ない暇な時間を利用して仕込みや調理を行うなど、空き時間を有効に活用することができます。
初期費用を抑えることができる(創業)
ゴーストレストランで創業すると、初期費用を大幅に節約することができます。通常、実店舗の飲食店を創業する場合は、店舗用の物件を購入するか賃借しなければなりません。店舗用物件を購入するには、かなりのまとまった資金が必要となり、また賃借する場合でも、敷金や礼金、家賃などがかかります。
さらに、店舗の内装工事や厨房設備を導入するためには、かなりの出費を強いられます。
このように、飲食店を開業しようとすると、立地場所や規模にもよりますが、数百~数千万円の資金を準備する必要があります。
それに対して、ゴーストレストランは実店舗を持たないため、初期費用が大きくかかりません。調理のための厨房だけは必要ですが、レンタルキッチンを借りるのが一般的です。レンタルキッチンは、他の調理人と共同で借りることもでき、その場合は家賃の節約にも繋がります。
フランチャイズ制のゴーストレストランでは、一概にはいえませんが、数十万円程度の少額資金で開業できるものもあります。
短時間で開業できる(創業)
フランチャイズのゴーストレストランは、短い準備期間で開業することができます。一般的に、実店舗の飲食店を開業しようとすると、店舗の物件探し、賃借契約を経て、開店準備を始めていきます。開店準備では、主に店舗の内装工事や厨房設備の導入を行う必要があります。
これらの内装工事や設備の導入にはある程度のまとまった期間が必要ですが、その期間も家賃が発生します。
それに対して、ゴーストレストランは実店舗を持たないため、内装工事は必要ありません。また、レンタルする厨房を見つけてくれるフランチャイズもあります。個人でゴーストレストランを始めようとすると、材料の仕入れ先探しや提供メニューや調理手順の作成、広告宣伝をはじめとする営業戦略全般の検討など、煩雑で難しい問題を独力で解決していかなければなりません。
その点、フランチャイズに加入すれば、これらの課題について、フランチャイズ本部が持つ豊富な経験とノウハウでしっかりとサポートしてくれます。
このように、フランチャイズのゴーストレストランは、実店舗型飲食店や個人経営店に比べ、格段に速いスピードで開業することが可能です。
調理に専念できる(創業)
ゴーストレストランは、調理に専念できるメリットがあります。実店舗型の飲食店では、配膳や後片付け、接客、会計、現金管理など、調理以外にも多くの仕事があります。その場合、調理以外の仕事を行うスタッフを雇えば、人件費がかかります。
それに対し、ゴーストレストランは実店舗を持たないため、配膳、後片付け、接客などの仕事はありません。会計だけは必要ですが、この場合も現金の授受を伴うレジ作業は発生しません。ゴーストレストランは注文を受けた料理を作るだけで、配達はデリバリーサービスに委託します。デリバリーサービスの清算はネット上で行うため、現金の授受やレジ作業がなく、現金保管の煩わしさもありません。
ゴーストレストランでは、これらの煩わしい作業がないため、調理に専念することができるのです。
コロナ禍の打開策になる(既存店・創業共通)
ゴーストレストラン・ゴーストキッチンは、コロナ禍を打開するための切り札的な存在です。新型コロナウイルスの感染拡大により、飲食店の経営は危機的な状況が続いています。
飲食店業界は、コロナ禍により3密が忌避され客足が減ったのに加え、休業や時短営業などもあって、先行きが見通せない状況にあります。
このように、コロナ禍により、実店舗型の飲食店は大きな被害を受けていますが、危機的な経営状況を立て直すため、デリバリーやテイクアウトに活路を見出そうとする店が多くみられます。
また、最近の飲食業界では、デリバリーやテイクアウトに特化したゴーストレストランやゴーストキッチンにも注目が集まっています。ゴーストレストラン・ゴーストキッチンは、コロナ禍の中にあっても3密を気にせず利用でき、また、スマホで簡単に注文ができることから、現在の社会的なニーズにマッチした業態ということができ、ゴーストレストラン業界は今後も成長・拡大していくとみられています。
複数のブランドを利用できる(既存店・創業共通)
フランチャイズのゴーストレストランは、複数のブランド(商号)を利用できるメリットがあります。
フランチャイズによっては、複数のブランドを提供しているところがあります。例えば、同じフランチャイズで、ハンバーグ、パン、カレーという3種類のブランドを提供メニューにし、サービスの幅を広げることなどが可能です。
複数のブランドを提供することで、世間の多様なニーズに応えることができ、客層も大きく広げることができます。開業当初は提供メニューを絞り、経営が軌道に乗ってきたら、可能な範囲で少しずつデリバリーの提供メニューを増やし、将来的に売上げを伸ばしていく方法もあります。
未経験者でもできる(既存店・創業共通)
フランチャイズ・ゴーストレストランは、ゴーストレストランの経験がない人でも始めることができます。さらに、ゴーストレストランの未経験者だけでなく、今まで飲食店を経営した経験がない人、もっと極端な例としては、調理を行ったことがない人でも、始めることが可能です。
通常、個人でゴーストレストランを開業しようとすると、以下のことを自分だけの力で行う必要があります。
- 調理技術の習得(修行・学習)
- 調理メニューや価格などの設定
- 調理するための厨房設備を探して契約
- 食材や容器の調達先を探して契約
- デリバリーサービスを探して契約
- 店舗の広告宣伝
- スタッフ雇用のための求人募集
- 事業の資金計画や収支計画の策定 など
それに対して、フランチャイズ・ゴーストレストランでは、ゴーストレストランのマーケティング・販売戦略や事業経営のノウハウなどをセットで提供し、サポートも行ってくれるため、仮に初心者であっても、早期に開業して事業を軌道に乗せることが可能になります。
提供ノウハウや本部のサポート内容は、各フランチャイズにより違ってきますが、おおむね、次のような支援を受けることができます。
(上の項番に対応)
- 調理
・研修により調理の基本やルールを学び、開店後は、マニュアルに従って調理すればよい
・調理方法は標準化されており、難しい調理技術は不要 - 調理メニューや価格
・あらかじめ設定されている
(例)から揚げ 1個250円など - 厨房設備
・手頃な物件を紹介してくれる - 食材や容器の調達先
・紹介してくれる
・統一的な食材・容器を提供してくれるフランチャイズもある
・また、フランチャイズによっては、食材の基本的な調理は本部の工場で行い、各店舗に配送するところもある。各店舗は、仕上げの調理のみを行い、デリバリーサービスに配送を任せる。 - デリバリーサービス
・各フランチャイズで契約先が決まっている - 店舗の広告宣伝
・フランチャイズブランドの宣伝PRは、本部が実施
・各オーナーは、自店のPRに専念すればよい - スタッフ雇用のための求人募集
・効果的な求人募集のやり方は、本部が教示してくれる - 事業の資金計画や収支計画の策定
・事業開始のための資金計画から相談に乗ってくれるフランチャイズが多く、事業開始後の経営ノウハウなども本部スタッフがサポートしてくれる
以上のように、フランチャイズ本部は、ゴーストレストランのマーケティング・販売戦略や事業の立ち上げ、事業経営のノウハウなど豊富な知識と経験を提供してくれます。
このため、
- ゴーストレストランの未経験者
飲食店の経営者で、新たにゴーストレストランを始めようとしている人 - 飲食店の未経験者
飲食店を経営したことがない人 - 調理の未経験者
調理をあまりしたことがない人
などであっても、フランチャイズに加入すれば、ゴーストレストランを始めることができるのです。
フランチャイズ・ゴーストレストランのデメリット
次に、フランチャイズのゴーストレストランのデメリットについて見ていきましょう。
加盟金がかかる
フランチャイズのゴーストレストランに加入する際には、フランチャイズへの加盟金がかかります。加盟金の具体的な金額は、フランチャイズにより異なりますが、100万円以内が相場となっています。加盟金がかかるフランチャイズが主流ですが、中には加盟金を取らないところもあります。
また、フランチャイズによっては、加盟金とは別に保証金を支払うシステムになっている例もあります。
ロイヤリティがかかる
フランチャイズ・ゴーストレストランでは、毎月本部にロイヤリティを払う必要があります。ロイヤリティは、フランチャイズ加入者が本部に支払う「商標使用料」です。加入者がフランチャイズの商標を利用させてもらうかわりに、毎月、売上げの何%かを使用料として支払う仕組みです。
ロイヤリティの金額もフランチャイズにより異なりますが、売上額の10~20%程度が相場となっています。
デリバリー手数料がかかる
フランチャイズ・ゴーストレストランでは、フランチャイズ本部へのロイヤリティに加え、毎月、デリバリーサービスの利用手数料がかかります。
デリバリー手数料は、「出前館」や「Uber Eats」などのデリバリーサービスに登録して利用するための手数料です。
デリバリー手数料の金額は、デリバリーサービスにより異なりますが、売上高の35~40%程度が相場となっています。
ゴーストレストランは、フランチャイズに加入していても、デリバリーサービスのプラットフォームを通じて集客し、注文を受けるシステムとなっているため、デリバリー手数料は必要経費といえます。
出来立てを提供できない
ゴーストレストランでは、調理した料理を注文先に配達しなければなりません。そのため、できたての料理を提供することができないデメリットがあります。
どのような料理でも、できたての瞬間が最も美味しいものです。しかし、配達に時間がかかると冷めてしまい、料理の味にも影響が生じてしまいます。
これは、デリバリーを専門とするゴーストレストランの宿命といえますが、できるだけ料理の味や香りを落とさない工夫が必要です。
そのためには、
- 料理を入れる容器を工夫する
- 配達先で温め直せば美味しく食べられるメニューを中心にする
- 麺類は、麺とスープを別容器にする
などが求められるでしょう。
周知させるのが難しい
ゴーストレストランは、自店を世間に周知させるのが難しいデメリットがあります。
実店舗の飲食店であれば、駅前など立地のよい場所に店を構えていれば、自然と通行人の目に留まり客が集まってきます。客は、店の看板や表示されているメニューを見て、この店で食べようと決めます。
この場合、「店の立地が良ければ、自然に大勢の人の視界に入る」ことがポイントです。
したがって、客層は、常連客ばかりでなく、一見の飛び込み客も混じっています。
しかし、ゴーストレストランは実店舗や看板がなく、注文は主にデリバリーサービスのプラットフォームを介して受けることになります。
デリバリーサービスのプラットフォームは、注文者が自宅の住所を入力し、注文したい料理のジャンルを選べば、自宅の近くにあるゴーストレストランが表示される仕組みになっています。いわば、レストランの検索と注文を一つのプラットフォームで可能にする非常に便利なツールです。
このように、プラットフォーム自体は非常に使いやすい仕組みになっていますが、ゴーストレストランからみると、プラットフォーム上で自店をPRし周知していくのは、そう簡単ではありません。
それは、YahooやGoogleの検索エンジンで、上位表示される難しさと似ている部分があります。YahooやGoogleの検索エンジンで上位表示されるには、そのサイトが、検索者のニーズを満たす充実した内容や検索エンジン向けの形式(キーワード・タイトル・見出しなど)を備え、常に新しい内容に更新されていることが必要です。
もちろん有名なフランチャイズであれば、そのブランド力により、検索された一覧の中で目立つことはできるでしょうが、それが必ず自店であるかどうかは別問題です。自分が加入しているフランチャイズがいかに有名で周知度が高くても、そのことがダイレクトに自店の表示に繋がるわけではないのです。
ゴーストレストランでは、自店のページが、実店舗のように「自然に大勢の人の視界に入る」ことはありません。
そのため、ゴーストレストランでは、実店舗以上に、自店のPRや広告が必要です。
出前館やUber Eatsなど有名なデリバリーサービスの検索システムは、YahooやGoogleなどの検索エンジンとその仕様が同一ではないにしても、やはり視聴者のニーズに即した充実した内容や新しい情報を求めているはずです。
したがって、わかりやすく充実した内容の情報を掲載し、また、SNSも活用して自店をPRするなどの努力が求められます。
フランチャイズ・ゴーストレストランの収益
それでは、フランチャイズ・ゴーストレストランでは、どの程度の収益が上がるのでしょうか。ここでは、主なフランチャイズ・ゴーストレストランの収益モデルや利益率について見ていきましょう。
フランチャイズ・ゴーストレストランの収益モデル
ここでは、代表的なフランチャイズ・ゴーストレストランの収益モデルを見ていきましょう。収益モデルとは、パターン別に、「売上額がこの程度なら、仕入原価やデリバリー手数料などの必要経費がこの位かかり、営業利益が〇〇円程度になる」という標準的な経営のひな形のことです。
【かつ丼吉兵衛】
「かつ丼吉兵衛」は、かつ丼を専門に提供するフランチャイズで、ゴーストレストランのほか、実店舗のフランチャイズも展開しています。
〇初期費用
- ・加盟金30万円
- ・保証金20万円
- ・研修費10万円
初期費用として、フランチャイズへの加盟金が30万円、保証金が20万円かかりますが、相場からみると高くありません。他に研修費が10万円かかります。
「かつ丼吉兵衛」では、主に既存店の収益に利益を上乗せできるモデルを公開しています。
厨房設備は、既存店のものを使用することができますが、吉兵衛専用ミニフライヤーおよび食品表示ラベル用プリンターについては、使用指定がされています。
必要経費では、仕入原価や油代のほか、システム使用料(発注システム、電子マニュアル利用料など)が必要ですが、ロイヤリティはかかりません。
〇提供商品
- ・玉子とじかつ丼1,080円
- ・ソースかつ丼1,140円
- ・韓辛味噌マヨかつ丼1,200円
- ・カレーかつ丼1,270円
「かつ丼吉兵衛」の収益モデルは、次のとおりです。
項目 | ケース1 | ケース2 |
---|---|---|
売上額(年間月平均)A | 948,000円 | 372,000円 |
原価B | 284,000円 | 112,000円 |
油代C | 23,000円 | 16,000円 |
Uber Eats手数料D | 357,000円 | 140,000円 |
システム使用料E | 30,000円 | 30,000円 |
ロイヤリティF | 0円 | 0円 |
営業利益G (A-B-C-D-E-F) |
253,000円 | 74,000円 |
上表のケース1では、月平均売上額が948,000円で、そこから仕入原価をはじめ必要経費を差し引いていきます。
月平均売上額A 948,000円-仕入原価B 284,000円-油代C 23,000円
-Uber Eats手数料D 357,000円-システム使用料E 30,000円-ロイヤリティF 0円
=月平均営業利益G 253,000円
月平均で、必要経費控除後の営業利益が253,000円となっています。
既存店の本業利益に加えて、平均して毎月253,000円の利益が上乗せされるイメージです。
提供商品の平均単価を1,150円とすると、月平均売上額が948,000円であることから、
・月平均売上額948,000円÷平均単価1,150円≒月平均提供数824食
・月平均提供数824食÷月平均営業日数25日≒1日平均提供数33食
計算上は、1日あたりの平均提供数が33食なので、本業に負担のかからない範囲ではないでしょうか。
一方、ケース2では、負担がより軽くなります。月平均売上額Aが372,000円で、そこから必要経費を差し引いた月平均営業利益Gが74,000円となっています。上と同じように、提供商品の平均単価を1,150円とすると、月平均売上額が372,000円であることから、
・月平均売上額372,000円÷平均単価1,150円≒月平均提供数323食
・月平均提供数323食÷月平均営業日数25日≒1日平均提供数13食
1日あたりの平均提供数が13食なので、本業にはほとんど負担がかからないといえます。
【宇奈とと】
「宇奈とと」は、うな丼を提供しているフランチャイズです。
「宇奈とと」を運営しているG-FACTORY株式会社は、飲食店をはじめ、エステティック、アパレルなどのサービス業の経営をサポートしている企業です。
〇初期費用
- ・加盟金100万円
- ・保証金100万円
- ・研修費0円
店での調理は、「切る、焼く、盛る」のシンプルな手順で、負担を軽減しています。
研修費はかかりませんが、研修では、「串打ち」や「裂き」などはなく、「焼き」の技術を身に付けます。
「宇奈とと」の売りは、商品価格の安さです。うな丼550円、うな重880円など、通常ではみられない低価格路線をとっているのが特徴です。
〇提供商品
- ・うな丼550円
- ・うな重880円
- ・うな丼ダブル1,000円
- ・うな重上1,430円
- ・うな重特上1,650円
- ・ビックリ重2,200円
「宇奈とと」の収益モデルは、次のとおりです。
項目 | ケース1 | ケース2 |
---|---|---|
売上額(年間月平均)A | 2,427,000円 | 737,000円 |
原価B | 849,450円 | 257,950円 |
デリバリー手数料C | 849,450円 | 257,950円 |
営業利益D(A-B-C) | 728,100円 | 221,100円 |
上表で、ケース1は、かなり本格的に取り組むモデルです。月平均売上額が2,427,000円ということは、提供商品の平均単価が仮に800円とすると、
・月平均売上額2,427,000円÷平均単価800円≒月平均提供数3,034食
・月平均提供数3,034食÷月平均営業日数25日≒1日平均提供数121食
で、1日あたり平均して120食以上を調理することになります。
例えば1日の業務時間が10時間として、そのうち、休憩(食事)や厨房の後かたずけ、清掃、雑務を除いた調理時間が8時間と仮定します。
・1日の調理時間8時間÷1日平均提供数121食≒3.97分
1食あたり4分弱の調理時間で仕上げる必要があるので、場合によってはスタッフを雇う必要があるかもしれません。
一方、ケース2は、月平均売上額が737,000円とケース1の1/3程度になっているため、かなり余裕がありそうです。
【東京からあげ専門店あげたて】
「東京からあげ専門店あげたて」を運営するGlobridgeは、「CCCチーズチーズカフェ」のフランチャイズ展開や飲食店直営事業などを行っています。
〇初期費用>
- ・加盟金10~100万円
- ・保証金20万円
- ・研修費0円
加盟金は、0~100万円と差があります。研修費はかかりませんが、開業に向けた研修内容は、衛生テスト、ビデオ研修、店舗体験など充実しています。なお、調理経験豊富な人は、研修を省略して開業することもできるとしています。
既存店の設備を利用しての開業であるため、新たな設備投資などは不要で、最短1週間でオープンすることも可能とのことです。
〇提供商品
- ・創業若鶏の醤油からあげ680円
- ・自家製タレの油淋鶏880円
- ・濃厚タルタルチキン南蛮880円
- ・創業若鶏の醤油からあげ弁当880円
- ・超濃厚ネギ塩からあげ弁当1,080円
- ・さっぱり梅肉しそからあげ弁当1,080円
「東京からあげ専門店あげたて」は、既存店での開業モデルを公開しています。
項目 | ケース1 |
---|---|
売上額(年間月平均)A | 2,000,000円 |
原価B | 400,000円 |
UberEats手数料C | 700,000円 |
本部取次手数料D | 400,000円 |
営業利益E(A-B-C-D) | 500,000円 |
収益モデルでは月平均売上額が2,000,000円と、既存店の副業としては、かなり本格的な内容となっています。デリバリー注文は本部が対応し、各店舗は調理を専門に行い、デリバリー業者が配達するという分業が徹底されています。
【TGALデリバリー】
「TGALデリバリー」は、国内・海外に店舗を展開しているフランチャイズです。提供するブランドは30ブランドと多く、その中から好きな複数のブランドを組み合わせて1店舗で提供できるシステムとなっています。
〇初期費用
- ・物件取得150万円
- ・厨房機器250万円
- ・宅配バイク100万円
- ・加盟金100万円
- ・研修費50万円
- ・補償費50万円
初期費用には、物件取得費や厨房機器費などがあり、未経験者の創業もフォローしてくれるシステムとなっています。
また、デリバリー専門店ではありますが、宅配バイク購入費があることから、デリバリーサービス業者への委託ではなく、自店で宅配を行うシステムとなっています。
〇提供ブランド
- ・バーガーズカフェ グリルフクヨシ
- ・芝浦ジンギスカン
- ・BistroRYU
- ・神保町ビーフ
- ・オムライスカフェ イエローグルメ
- ・ニューヨークサンド ベジフル
- ・和牛寿司 又二郎
- ・信州更科 又右衛門
- ・牛かつ 黒べこ
- ・レイジングミート
様々な提供ブランドがあり、一見すると、未経験者には調理が難しそうです。しかし、フランチャイズ本部の工場で基本的な調理加工がされており、各店舗では、提供されるレシピに従って加工を行うだけということです。複雑な味付けや技術などは不要とされているため、未経験者でも始めることができるでしょう。
「TGALデリバリー」の収益モデルは、次のとおりです。
項目 | ケース1 |
---|---|
売上額(年間月平均)A | 4,500,000円 |
原価B | 1,570,000円 |
人件費C | 1,480,000円 |
支払手数料D | 350,000円 |
地代家賃E | 150,000円 |
固定ロイヤリティF | 50,000円 |
その他諸経費G | 400,000円 |
営業利益E(A-B-C-D-E-F-G) | 500,000円 |
上表の収益モデルは、月平均売上額が4,500,000円で、かなり本格的な取組内容となっています。自前で宅配するだけあって、1か月の人件費が1,480,000円となっています。これだけの人件費をかければ、10人近くのアルバイトを雇用できるのではないでしょうか。
また、ロイヤリティは月額固定制で5万円です。この収益モデルは売上額が大きいため、ロイヤリティ比率は売上額の1%強と安くなっています。
【収益モデルまとめ】
これまでに掲載した収益モデルにおける月平均営業利益を整理すると、
①既存店での開業パターン
7万4,000円~50万円
②創業パターン
22万1,100円~72万8,000円
既存店で開業する場合は、やはり本業との平行作業となるため、営業利益には限界があります。しかし、本業の収益に上乗せされる利益が狙えるのは魅力的です。一方、創業パターンでは、ゴーストレストランの業務に専念できるため、大きな営業利益が期待できます。
フランチャイズ・ゴーストレストランの利益率
次に、フランチャイズ・ゴーストレストランの利益率について見ていきましょう。
【究極のブロッコリーと鶏胸肉】
「究極のブロッコリーと鶏胸肉」は、渋谷、六本木などの首都圏をはじめ、大阪梅田、名古屋など全国に展開しているフランチャイズです。「究極のブロッコリーと鶏胸肉」では、既存の飲食店への導入が前提となっています。メニューは、ブロッコリーと鶏胸肉のみと非常にシンプルです。
〇フランチャイズへの加盟条件
- ・実店舗で飲食業をすでに運営していること
- ・Uber Eats、Woltなどデリバリーサービス対応エリアであること
- ・ランチタイム(12:00~14:00)、ディナータイム(18:00~21:00)どちらの時間帯も営業ができること
- ・電子レンジ、冷凍庫、冷蔵庫が店舗にあること
- ・本部指定の看板を設置できること
- ・店頭販売(テイクアウト)を運用できること
調理工程の90%以上を本部の工場で調理しているため、店舗側の作業に負担がかからず、既存店の本業に支障が生じないシステムとなっています。
店側の調理工程がシンプルであるため、専門的な調理スキルや専門の調理器具も必要がなく、また、追加スタッフの採用も不要とされています。
「究極のブロッコリーと鶏胸肉」では、ゴーストレストランの利益率を公開しています。
売上 | 販売価格 | 100% |
---|---|---|
費用 | デリバリー手数料 | 約35~40% |
原価(容器、配送料含む) | 約30~35% | |
ロイヤリティ | 10% | |
利益 | 粗利益 | 約15~25% |
〇費用
- ① 人件費
上表では、追加スタッフの採用が不要とのことから、人件費は計上されていません。 - ② デリバリー手数料
デリバリー手数料は、売上高(販売価格)の約35~40%と幅があります。
利用するデリバリー業者によって、数値が変動します。 - ③ 原価
仕入原価には、容器代および材料の配送料が含まれています。
仕入原価は、売上高(販売価格)の約30~35%となっていますが、出店地域への配送料により数値が変動します。 - ④ ロイヤリティ
ロイヤリティは、売上高(販売価格)の10%に固定されています。
〇利益
売上高から必要な費用を差し引いて利益を求めますが、その利益率は、売上額(販売価格)の約15~25%となっています。
フランチャイズ・ゴーストレストランを開業する手順
次に、フランチャイズ・ゴーストレストランを開業する手順について見ていきましょう。フランチャイズ・ゴーストレストランを開業する流れは、次のようになります。
- 資料の請求・説明会への参加
- フランチャイズ加盟契約
- 物件についての話し合い
- メニューについての話し合い
- 調理の研修
- 広告・宣伝
- デリバリー契約
- 開業
以上の各ステップについて、個別に見ていきましょう。
①資料の請求・説明会への参加
はじめに、加入の候補となるフランチャイズを選び、資料を請求します。
フランチャイズの資料を見れば、その特徴、加入条件、加盟金、ロイヤリティなどが把握できます。
各フランチャイズでは、加入者のために説明会を開催しています。説明会に参加すれば、より詳しい情報が得られ、質問もできるため、フランチャイズ加入を検討している場合は参加することをおすすめします。
②フランチャイズ加盟契約
フランチャイズの資料や説明会での情報を基に、最終的に加入するフランチャイズを決定します。
加入するフランチャイズが決まったら、フランチャイズ本部と加盟契約を締結します。
加盟契約書の各条項は、必ず確認するようにします。通常、フランチャイズには契約期間が定められており、契約期間中に解約すると違約金を取られる場合があります。このため、契約期間、および契約期間中の解約について定められている個所は、十分に確認しておくことが大切です。
③厨房の検討
フランチャイズ加盟契約を締結したら、厨房施設・設備についての検討が行われます。厨房施設・設備についての検討は、次の④メニューの検討と併せて行われます(厨房とメニューは不可分の関係にあるため)。
〇既存店が導入する場合
既存店の厨房設備を確認し、フランチャイズ・ゴーストレストランで新しく取り組むメニューの調理に対応できるかどうかの打合せを行います。厨房設備が、新しく取り組むメニューの調理に対応できなければ、設備の交換や追加について検討します。
〇創業する場合
創業する場合は、厨房施設・設備を持っていないため、物件探しや契約方法についてアドバイスを受けます。物件が決まれば、レンタルの契約を行い、厨房設備を用意します(厨房設備付きの物件の場合もあります)。
物件探しや賃貸借契約、また、厨房設備の購入・レンタルなどは、フランチャイズ本部がサポートしてくれます。
④メニューの検討
フランチャイズによっては、複数のメニューブランドを用意しているところがあります。
加入者それぞれの条件に応じて、どのメニューを選ぶかの打合せを行います。
〇既存店が導入する場合
既存店がフランチャイズ・ゴーストレストランを導入する場合は、既存店のメニューを踏まえて、どのようなメニューを新しく導入すればよいか、話合いが行われます。
この場合、既存店メニューと似たジャンルのメニューを導入すれば、調理法もマスターしやすく効率的でしょう。一方、既存店メニューとは別ジャンルのメニューに取り組めば、メニューの幅が広がり店舗イメージの刷新に繋がります。
〇創業する場合
創業する場合は、既存店のメニューに縛られることなく、新しいメニューに取り組むことができます。
⑤調理の研修
厨房やメニューが決まったら、調理の研修を受けます。
料理ができる過程は、各フランチャイズによって、
- ㋐ フランチャイズ本部が店舗に材料を配送し、店舗がほとんどの調理を行う
- ㋑ フランチャイズ本部の工場でほとんどの調理を行い、店舗は仕上げのみ行う
など様々です。
㋐「店舗がほとんどの調理を行う」パターンは研修期間が長め、㋑「店舗が仕上げのみ行う」方法では短い研修で済みます。
また、「既存店が導入する場合」は、元々オーナーが調理人であるため、簡単な研修で一人前になるケースがほとんどです。
フランチャイズでは、各メニューの調理法がマニュアル化されているため、一度覚えれば同じ味の商品を作ることができるようになります。
⑥広告・宣伝
調理研修が終われば、いよいよ開業に向かって広告・宣伝をスタートさせます。フランチャイズでは、フランチャイズ自体のPRは本部が行いますが、各店舗の広告・宣伝は、本部の指導に基づき各店舗が行います。
フランチャイズ・ゴーストレストランが人目に留まり、注文を受ける契機は、
- デリバリーサービス業者のプラットフォームを介して
- フランチャイズ本部のホームページを介して
- 各店舗のホームページや広告チラシなどを介して
- 既存店の場合は、来店して
など多くの方法があります。
一般の人が注文するのは、①「デリバリーサービス業者のプラットフォームを介して」が圧倒的に多いのですが、ここには競争相手がひしめき合っており、自店を前面に出すのはなかなか難しいともいえます。
このため、
- ㋐ デリバリーサービス業者のプラットフォームに、わかりやすく充実した情報を掲載する
- ㋑ 各店舗のホームページを充実させる
- ㋒ SNSを活用してPRする
- ㋓ 近隣に広告チラシなどを投函する
- ㋔ 知人を介して口コミで広める
などの方法でPRに努めることが肝心です。
⑦デリバリー契約
各フランチャイズは、配達を委託するデリバリーサービス業者が決まっているため、その業者と契約することになります。
⑧開業
以上、①~⑦までの手順を経ると、いよいよフランチャイズ・ゴーストレストランのスタートです。
まとめ
フランチャイズ・ゴーストレストランには、加盟金やロイヤリティなど金銭的な負担がありますが、フランチャイズのブランドを利用できる、初期費用を抑えることができるなど多くのメリットがあります。
既存店がフランチャイズ・ゴーストレストランを導入する場合と未経験者が創業する場合では、享受するメリットや検討すべき条件などが異なります。
フランチャイズ・ゴーストレストランの開業を検討されている方は、各自の環境や条件に応じて、自分に合ったフランチャイズを選ぶことが重要です。