フランチャイズを始める時も辞める時も必須の知識!解約時の違約金を徹底解説します
解約違約金とは、あらかじめ定められた期間や条件を満たさない状況で契約を解約する場合に発生する違約金です。ほとんどのフランチャイズ契約に解約違約事項があり、定められた方法以外で解約をすると解約違約金をフランチャイズ本部から請求されます。
そのため、解約違約事項についてある程度理解しておかないと、フランチャイズ契約を締結するタイミングや契約の解約のタイミングでトラブルに発展する可能性が高くなります。
この記事では、フランチャイズ加盟店として事業を行う場合に必須となる解約違約金について詳しく解説するので、参考にしてみてください。
目次
フランチャイズの契約
コンビニエンスストアや飲食店や不動産賃貸業など、同じブランドで日本全国にある店舗展開をしている場合、フランチャイズであることが大半です。フランチャイズとは、一つずつの店舗の加盟店(フランチャイザー)は店舗名や店舗運営などビジネスモデル一式を活用させてもらう代わりに、フランチャイズ本部に加盟店手数料などの料金を支払います。
2020年10月に公表されたJFAフランチャイズチェーン統計調査によると、日本全国のフランチャイズ店舗は26万2,869店で、店舗統廃合などによる経営効率を改善しており昨年対比▲1,687店と減少しています。
開業資金を抑えられビジネスノウハウを修得しやすく事業が軌道に乗りやすいなどのメリットからフランチャイズ事業で開業する方は多くいます。フランチャイズビジネスは、フランチャイズ加盟店とフランチャイズ本部が共同で事業を行っていきます。
具体的には、広告などのブランディングや商品やサービス開発などのマーケティングやIT機器の導入による業務運用改善などがあります。お互いに何をするか、または何をしてはいけないかという条件を明確にしておくため、フランチャイズ店舗のオーナーとフランチャイズ本部はフランチャイズ契約を締結します。
このフランチャイズ契約の条件は、事業運営や収益に大きく影響する要素も含まれます。そのため、フランチャイズ本部から詳細まで説明を聞いて、内容を理解したうえで契約を締結することが必要です。
フランチャイズ契約の内容で特に注意が必要なのが、“事業運営”“手数料”“解約事項”に関わる事項です。(詳細は「2 契約の前後に注意すること」で後述します)
事業運営 | 営業時間などの制限や、店舗運営における条件など |
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手数料 | フランチャイズ本部に支払う手数料には何があるのか、その計算方法など |
解約時 | 中途解約手数料や契約期間と更新方法など |
この中で、フランチャイズ契約を行う際に考慮が不足するのが解約時の事項です。契約するかどうかを決めようとする時に、まだ運用も契約もしていない契約自体の解約事項を想定する意識が働きにくいためです。
フランチャイズ本部は、フランチャイズ契約を加盟店になろうとする事業者と契約できることを望んでいます。そのため、フランチャイズ事業を契約違反になる形で辞める場合をこと細かく説明することについてネガティブになります。また、フランチャイズ加盟店側も事業で望む利益が出ると考えてフランチャイズ契約を締結するため、解約時の条項についてチェックがおろそかになりがちです。
フランチャイズの契約終了
フランチャイズ契約が終了するのは、原則以下の3つパターンのどれかに該当します。
- ①契約期間満了時などの両者合意による契約終了
- ②契約期間中における解約申し出による契約終了
- ③契約期間中における契約違反による契約解除
①契約期間満了時などの両者合意による契約終了
最も円満にフランチャイズ契約が終了するパターンが、両社合意による契約終了です。具体的には、ほぼ全てのフランチャイズ契約には契約期間が定められています。この期間を全うするタイミングに契約自体を終了するやり方です。
契約期間満了に伴う契約終了の場合など、事前に定められた契約満了事項のとおりに契約が終了すると違約金は発生しません。本来、契約はその契約事項を守る合意をしているため、契約事項を全うする契約終了は最も円満なフランチャイズ契約の終了と言えます。
●契約期間満了について留意すべきこと
契約期間満了時に、フランチャイズ加盟店が契約終了の意思を持っている場合、契約終了をフランチャイズ本部へ連絡する方法と期間に留意が必要です。
ほとんどのフランチャイズ契約は、その契約が自動更新となっています。自動更新とは、契約期間が満了を迎えるタイミングでフランチャイズ加盟店が解約の意思を伝えない場合、自動的に契約更新がされることです。
契約期間満了時に、フランチャイズ加盟店とフランチャイズ本部の双方はフランチャイズ店舗の継続か終了を選択できます。そのため、解約の意思を定められた方法で実施しない場合には、契約の継続を行うように契約に定められていることが一般的です。そのため、契約の終了の意思がある場合にはその旨をフランチャイズ本部に伝える必要があります。
事前に定められた期間と書面など方法で解約の意思を伝えます。なお、書面で解約の意思を伝える場合、内容証明郵便など第3者がその内容を証明してくれる方法で実施することで、書面を受け取っていないと主張されるトラブルを回避できます。
なお、契約期間満了時にフランチャイズ店舗を継続する場合も契約内容を見直しする良い機会です。契約を自動更新すると契約内容もそのまま継続しますが、契約内容を改善させて新規の契約として改めてフランチャイズ契約を締結することも可能です。もし、フランチャイズ店舗を継続する意思があるが、フランチャイズ契約の内容を変更したい場合には契約期間満了を迎える前にフランチャイズ本部と契約内容の協議をします。
②契約期間中における解約申し出による契約終了
契約期間中における契約終了は、『任意解約』『合意解約』『契約解除』の3つのパターンがあります。
(契約解除については、③契約期間中における契約違反による契約終了に該当するため後述します。)
●任意解約
任意解約は、契約期間中に契約当事者片方の意思によって契約を解約することを言います。中途解約とも言います。契約期間が定められている契約では、契約期間中の解約は契約違反に該当します。そのため、契約の条項に、任意解約や中途解約について違約金などが定められていることが一般的です。
任意解約によって発生する違約金などは、金額や発生する条件など契約内容は全て任意で定めることができます。そのため、事前に確認することが必須となります。
●合意解約
合意解約は、契約者の双方の意思によって契約を解約することを言います。合意解約は、解約することとその解約の条件まで改めて合意をすることが一般的です。そのため、合意解約の場合に、違約金などの請求を行わないことを改めて決定・合意しておけば、違約金などの請求を受けることなく解約することも可能です。
フランチャイズ加盟店の立場で、契約期間中にフランチャイズ契約の解約をしようとする場合にはフランチャイズ本部との相談・交渉が必須です。実務上でも、加盟店が勝手にフランチャイズ事業をやめることはほぼありえません。
フランチャイズ本部と相談のうえ、どうにか事業継続の可能性を模索します。そのうえで、どうしても事業継続を行うことができない場合、もしくは事業継続をしない方で経済的メリットなどが大きい場合には、事業をいつ辞めるのかということを決定します。この時に、いつまで続けるのかをフランチャイズ本部の意向を反映できるなら契約期間完了による解約や契約期間中の合意解約ができる可能性が高くなります。
③契約期間中における契約違反による契約解除
フランチャイズ契約に違反があった場合には、加盟店に契約解約の意思がなかったとしてもフランチャイズ契約が解約になる場合があります。このパターンには、約定解除と法的解除の2つの解除方法があります。
約定解除 | 契約事項を遵守しなかった場合に解約となる解除事由に違反があった場合に行われる契約の解除を言います。解除事由を定めていない場合、もしくは解除事由に定められていない違反があった場合に約定解除を行うことはできません。 |
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法的解除 | 契約に対する履行遅滞や債務不履行などがあった場合や、契約不適合責任などにもとづいて解除する場合を言います。 |
契約の解除になった場合には、解約の違約金だけでなく遅延損害金やその他の定められた違約金を請求されることがあります。
フランチャイズ解約時の契約事項
フランチャイズ契約を解約する場合には、違約金を支払いすることは事業をやめるタイミングにおいて経済的に非常に痛手です。しかし、実はフランチャイズ契約の解約時にはそれ以外にも注意すべき事項があります。
そのため、中途解約時の契約事項を契約する前も解約を検討する時にも読み直す必要があります。契約事項において注意すべき事項は、以下になります。
●中途解約違約金
契約期間内に契約を解約することに対する違約金になります。違約金の算出方法は、契約によって異なります。一律の場合もありますし、変動する場合などもあります。定めが曖昧で複数の解釈が可能な場合や、契約期間の定義や記載自体が無い場合には事前に確認しておくことが必要です。
●競業違約金
フランチャイズ契約が終了した後に、定められた期間はフランチャイズ事業と同業の事業を行うことを禁じていることが一般的です。このことを競業避止義務と言います。競業とは、営業上の競争をすることを言います。
この定めは契約が終了した後にも有効となり、定められた期間内に同業の事業など、加盟していたフランチャイズビジネスの営業上で競争する事業を行うと義務違反となって違約金を請求されます。
フランチャイズ本部は競業違反を許容しないことが一般的です。なぜならば、フランチャイズ事業は、その事業に必要なノウハウを提供します。そのため、そのノウハウを無償で活用されるとフランチャイズビジネスが成立できないからです。
●商標権侵害
商標権侵害とは、登録された商標について業として正当な権利が無い法人や個人事業主が利用することを言います。具体的な利用例は、商品やサービスの名称やパッケージなどの商標の表示や販売や輸出入や広告などがあります。
フランチャイズ契約が有効の場合には、フランチャイズ本部が登録している商標を利用することは問題がありません。フランチャイズ加盟店には商標を利用する正当な権利がある状況です。
しかし、フランチャイズ契約が無効の場合、商標を利用する権利が無い状況になり、商標を利用すると商標権侵害となります。商標権が無い状況で利用を継続すると、フランチャイズ本部としては自身の商標権を守るために、商標権侵害を訴える行動に出ることになります。
フランチャイズ契約の解約手順
フランチャイズ契約を解約しようとする場合、フランチャイズ契約内容によってとるべき手順は異なってきます。また、前述のとおりフランチャイズ契約の契約期間に応じて異なってきます。
しかし、共通で実施すべき事項もあります。共通実施事項は以下の3点に集約されます。
- ①契約の解約理由の整理
- ②契約内容の確認
- ③解約手続きの実施
①契約の解約理由の整理
フランチャイズ契約をなぜ解約したいのか、もしくは解約しなければいけないのかを整理します。当たり前ではありますが、解約を検討する場合にその背景である解約理由は非常に重要になります。
解約する理由は概ね以下のタイプがあります。
事業上の理由 | 想定した売上や利益との乖離が大きく、事業の継続が困難となっている。 |
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資金上の理由 | 必要な資金調達ができず、事業を継続するために必要な運転資金が用意できない。(事実上の倒産) より利益がでる他のビジネスや、より安全な資産運用方法への資金活用方法の変更をしたい。 |
身体上などその他の理由 | 事業の後継者が見つからない状況で、オーナーが高齢などの理由から引退を希望する。 介護や家庭の事情や療養などの必要性から、事業の継続が困難になる。 |
現在、少子高齢化が進む日本においては消費者が減少することによる景気が停滞している状況です。そのため、事業で利益を上げることが簡単ではなく、事業を自分でやる魅力が減少していき、運転資金など事業を継続するために必要な資金は多く必要になります。そのうえで、高齢になり引退していく中で労働者が減少しています。
つまり、上記にあげた解約タイプは複合的になっている場合が多く、その中でも何が最も大きな問題であるかも整理が必要です。
●原因の解決方法
原因の整理をした後に、その解決方法を検討します。フランチャイズ契約の解約自体は、できるなら回避すべきです。なぜならば、法人や個人事業主として事業を行う以上、合意した契約を全うすることは基本です。逆に、違約金を支払いすれば契約を全うする必要が無いということも言うことも可能ですが、そこには道理や背景が無ければ、信頼を失うことになります。
契約期間まで事業を継続できる解決方法があるなら、その解決方法をフランチャイズ本部と共に検討することも必要です。フランチャイズ本部側から見ても、色々検討した結果それ以外方法が無い、ということを納得した方がその後の相談もスムーズに進みます。
しかし、契約事項を継続すること以外で事業や資金や健康面などの問題が解決せず、自己破産など重大な事態につながる場合には、契約の解除をできるだけ速やかに決めなければいけません。
②契約内容の整理
契約内容を理解したうえで、解約の判断や手続きを進めることは必須です。フランチャイズ契約書の内容を確認する際には、解約の前後に発生する違約金の金額とその条件を中心に確認します。また、契約上で解約の方法や事前告知の期限なども重要です。どのように契約を終了することが、不利益が少ないかを把握します。
また、その不利益は違約金など金額換算が可能の場合には、具体的な金額を把握します。せっかく契約内容を確認しても、認識していた金額と異なる多額の違約金を請求され支払いに困るということになっては整理の意味がありません。
そして金額換算をすれば、解約したい原因と比較して金銭的な損得が計算できます。
赤字が続くフランチャイズ店舗を想定してシミュレーションを記載します。
- ・毎月30万円ずつ赤字=キャッシュアウトが発生している状況
- ・フランチャイズ契約期間が12ヶ月残っていて、今解約すると解約違約金は300万円
この場合、店舗を12ヶ月間続けると、キャッシュアウトが総額360万円発生します。一方で、今解約すると解約違約金300万円をフランチャイズ本部に支払いすることになります。差し引きすると、中途解約をした方が60万円キャッシュアウトをおさえることができます。
但し、毎月30万円のキャッシュアウトを閉店セールなどやフランチャイズ本部の支援を受けることでキャッシュアウトを半分の15万円まで抑えることができるなら、12ヶ月で180万円(15万円×12ヶ月)でキャッシュアウトを抑えることもできます。そして、契約期間満了にてフランチャイズ契約を終了でき、解約違約金は発生しない形で終了できます。
このように、具体的な金額を算出しておくと、取るべき方法とその効果までを考えて選択ができます。
●フランチャイズ本部との協議
契約内容を理解し、それでも契約内容を受け入れられない場合には、フランチャイズ本部と協議します。フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店の契約であるため、契約内容はフランチャイズ本部が用意している場合が一般的です。そのため、フランチャイズ本部にとって都合の良い契約内容になっていて、フランチャイズ加盟店にとって分が悪い契約内容になっています。
③解約手続きの実施
解約の手続きは、解約の意向を示すことを定められた方法とその期間内に実施することが重要です。そのため、解約手続きはフランチャイズ契約内容に沿って実施します。もし、フランチャイズ契約内容に解約の手続きの定めがない場合には、念のためフランチャイズ本部や担当に問い合わせを行います。
解約手続きに期限がある場合には、その期限に間に合わせることが重要です。特に、解約申し出を行わない場合自動更新になるようなケースには注意が必要です。
契約の前後に注意すること
フランチャイズビジネスは、経験やビジネスノウハウがなかったとしても事業ができるようにフランチャイズ本部がそのノウハウや商品を用意しています。フランチャイズ加盟店は、フランチャイズ本部の提供するノウハウなどを利用して、事業で収益をだすことを目指します。
一方で、フランチャイズ本部は加盟店を増やせば増やすほど、フランチャイズビジネスが安定します。それは、加盟店が増えれば、加盟店から得られるロイヤリティが増えていくことと、加盟店店舗が増加することはブランディングや規模の利益が増加していきます。
そのため、フランチャイズ本部は、一般的にはフランチャイズ加盟店を増やす努力を常に継続しています。加盟店を増やすために、広告活動や営業活動を継続的に実施していきます。その結果、フランチャイズに加盟しようとする人がいる場合には、営業行為や説得行為を行います。当然、嘘や誤解を招くような発言は控えているフランチャイズ本部が一般的です。
一方で、フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店のトラブルは全くないわけではありません。中小企業庁が発行している「フランチャイズ事業を始めるにあたって」というフランチャイズ契約の留意点をまとめた資料では、フランチャイズに加盟しようとして本部事業者と加盟店契約を締結する前に事業内容や契約内容を充分留意・検討すべきであるとの注意喚起をしています。
契約前に注意しておくこと
前述の「フランチャイズ事業を始めるにあたって」では、まずフランチャイズの加盟を検討する人に対してその心構えを4つ示しています。
- ①加盟店は独立した事業者である
- ②事業リスクを充分に認識する
- ③フランチャイズ事業内容の十分な検討
- ④納得するまでフランチャイズ事業や内容の説明を受ける
①加盟店は独立した事業者である
フランチャイズビジネスにおいて、本部と加盟店はビジネスパートナーの関係を構築します。しかし、それでも本部と加盟店の収益構造は別々になっている独立した事業者です。採取的に事業について意思決定を行うのも、事業における責任を負うのもフランチャイズ加盟店のオーナーであるということを忘れてはいけません。
②事業リスクを充分に認識する
フランチャイズ事業は、完全に独立して事業を開始するよりビジネスが軌道に乗りやすく軌道に乗るまでに必要な期間が短いのが一般的です。しかし、それでも全てのフランチャイズ事業がすぐに成功する、ということではありません。どのようなフランチャイズ本部を選択し、その事業内容やビジネス環境や店舗立地などによってビジネスが軌道に乗る期間やそもそも軌道に乗るかどうかも変わってきます。
事業が軌道に乗っても、現在のコロナ禍の感染対策などに営業時間の短縮や営業事態の自粛など常に事業環境は変化します。原因は何であれ、事業がうまく行かない場合の責任は事業者が取らなければなりません。場合によっては、事業がうまく行かないことで借金を負うことになり、自己破産などに陥る可能性もあります。
これらの事業リスクは、フランチャイズ加盟店オーナーが負うことになります。フランチャイズは本部と連帯して進めていくため、事業リスクを意識しないまま契約して事業を開始してしまうケースがあるので、注意が必要です。
③フランチャイズ事業内容の十分な検討
フランチャイズ契約の特徴は、その事業内容にはフランチャイズ本部の事業のパッケージが優先されることです。具体的には、多くのコンビニチェーンは24時間365日営業が基本になっています。現在、少子高齢化により24時間365日店舗を運営することが困難になっている現実を受けて、テスト的に24時間365日の営業時間を見直す動きがありますが、それでもその数は全体のほんの一部です。
また、長年勤めた会社を退職してフランチャイズ加盟店のオーナーになる人は“小さいながら自分の店”を持つことを重視している人もいます。しかし、オーナーだとしてもフランチャイズビジネスには自己裁量で決定できる要素が非常に少ない場合もあります。自分らしい店を創りたい、という想いで始めた事業なのに、思うとおりにできないストレスに悩まされるようなことがないよう事業とその事業運営の方法まで内容をできるだけ説明を聞くようにします。
また、できるなら既存のフランチャイズ加盟店の他のオーナーの話を聞くことが重要です。フランチャイズ本部が紹介するフランチャイズオーナーはどうしてもフランチャイズ本部の意向に対して忖度してしまいます。そのため、自らフランチャイズオーナーの本音を聞きに行くことや店舗リサーチなどをして自ら調査することで事業の実際の動きやお客様の反応を把握することも必要です。
④納得するまでフランチャイズ事業や内容の説明を受ける
事業を行うということは、時代の変化に適応していくことが必要です。時代の変化が想定しにくいように、事業が受ける影響も想定が難しいのが現実です。しかし、「分からなかった」「想定できなかった」ということは、事業主になると通用しません。
フランチャイズ契約を締結する前の段階も同様で、契約しようとするフランチャイズ事業を行っていくなかで発生する事態をできるだけあげて、その場合のフランチャイズ事業や契約がどうなるのかを確認することが必要です。
様々なパターンを問い合わせして、それらのパターンの対応が想定されているフランチャイズ本部は社会の変化に適応することに準備ができている頼もしい加盟店であるといえます。一方で、複数のパターンや特にうまく行かない場合のパターンにおける想定や対応が用意されていないフランチャイズ本部は注意が必要です。
●フランチャイズ・ガイドライン
フランチャイズ・ガイドラインとは、加盟店募集をおこなう際の虚偽や誇大な情報開示などを行う『ぎまん的顧客誘引』や、加盟店と比較すると優越した地位に該当する本部がその地位を利用して不当に加盟店へ不利益を与える『優越的地位の濫用』などの独占禁止法に定める不公正な取引方法を具体的に示しているガイドライン*になります。
このガイドラインの中で開示が望ましい事項が定められています。この事項については、トラブルになり得やすい項目になります。そのため、本開示事項についてはフランチャイズ契約を行う前に内容を理解することが必要です。開示が望ましい事項は、以下になります。
- ①加盟店における商品やサービスの仕入れ・供給条件に関する事項
- ②本部が行う加盟店への事業運営方法への指導や研修の内容や方法、回数、費用などに関する事項
- ③加盟店に発生するロイヤリティなどの支払い義務が発生する金額の算定方法と支払い条件、保証金などの返還条件など
- ④加盟店と本部での決済方法についてと、加盟店への本部からの事業資金の融資制度の有無と料率などの条件など
- ⑤加盟店経営において損失が発生した場合の補償内容と、加盟店の経営不振に対する本部による経営支援の内容など
- ⑥加盟店がオープンした後の、その店舗の商圏への同一加盟店や競合となりえる店舗を本部や本部が支援する加盟店の開業させることに対する制限など
- ⑦加盟店契約の期間とその契約更新と解除、中途解約の条件・手続方法など
なお、フランチャイズ全般への問い合わせは一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会が運営するフランチャイズ相談センターなどに問い合わせすることができます。
既契約時に注意しておくこと
フランチャイズ契約前にどれだけ確認をしても、フランチャイズ契約を締結して事業を開始した後に想定していなかった事態や想定はしていたものの異なった結果になることはおこります。
このような状況に陥った場合に、フランチャイズ本部と加盟店の間でトラブルになることもあります。トラブルの内容に応じて対応方法は異なってきます。しかし、対応を解決に導くために共通するポイントがあります。
- ①主体的かつ即時に対応する
- ②ビジネスパートナーの立場で解決策を探す
- ③記録に残しておく
①主体的かつ即時に対応する
フランチャイズ事業にかかわらず、事業を行っていると様々な問題やトラブルが発生します。いくつかの問題が併発することもあります。事業で発生するこれらの問題やトラブルは影響の大小によってその関わり方や力の入れ方は変わるものの、全て主体的かつ即時に対応していくことが必要です。
ここでいう主体的というのは、事業主として事業上で発生した問題は解決までを管理していくということです。フランチャイズ本部はビジネスノウハウや商品提供などを提供してくれる立場です。そのため、発生した問題も本部側にその解決を任せがちです。もちろん、フランチャイズ本部側も、問題解決への行動を行います。
しかし、同じ問題でもその影響の大きさは加盟店と本部では異なります。加盟店から見ると問題解決が至急必要な場合でも、多くの加盟店を支えるフランチャイズ本部から見ると1つの加盟店との問題は多くの問題のうちの1つであることは事実です。そのため、問題解決は加盟店側が主体となって解決を目指すことが必要です。
また、問題やトラブルを解決させるために重要になるのは、即時に対応することです。特に、フランチャイズ本部との問題についてはビジネスパートナーとして協同する間柄のため時間を置きがちです。しかし、フランチャイズ本部と加盟店の間の問題が発生すると、事業全体に影響が広がるリスクがあります。
問題をそのままにしない、という姿勢は問題解決だけでなくスタッフ教育という点でも重要になります。問題に即時に対応できる組織は指示に対しても即時に対応できていきます。
②ビジネスパートナーの立場で解決策を探す
問題が起きた時に、フランチャイズ本部と協議する姿勢や、問題を解決して次につなげていく姿勢で取り組むことが必要です。フランチャイズ本部とは、意識しないと軋轢が生まれやすい環境にあるとも言えます。
フランチャイズ事業がうまく行かない場合、フランチャイズ本部に問題点を見つけがちです。より悪い場合には、問題点を見つけることすらフランチャイズ本部に委ねてしまうこともあります。
フランチャイズ本部と加盟店はビジネスパートナーです。お互いのビジネスエリアで最大の努力をしなければいけません。もちろん、フランチャイズ本部の努力無くしてフランチャイズ事業が成功することはありません。しかし、1店舗毎の売上や利益はその加盟店側の事業努力によるものが大きくなります。
加盟店オーナーが問題を解決する上で、自身が経営する加盟店の問題点を解決するほうがフランチャイズ本部の問題を解決するより簡単です。このことから、まず自身の加盟店側の問題を解決しつつ、影響や効果が大きい本部側の問題解決を推進していく方が得策です。
③記録に残しておく
フランチャイズ本部と加盟店は別会社であり、別の経営判断を行います。そのため、協議の姿勢があっても、妥協点が見つからない問題も発生することがあります。その場合には、最終的には裁判などで争うことになるかもしれません。また、裁判になることはなかったとしても、協議の内容が「言った・言わない」になりがちです。
そのため、本部とのトラブルなどが発生した場合にはメールや文章などのやり取りで記録が残る方法を選択します。打ち合わせや電話なども録音をとっておき、お互いに話した内容が記録に残るようにします。日常的に話をして録音ができない状況であった場合には、改めて備忘録などを作成して相手にメールなどで通知しておきます。
特に、解約の意向を伝えるなど重要事項を通知する場合には、内容証明郵便など第3者がその内容を証明できる書面でやりとりをすることを推奨します。
●主たるトラブル
フランチャイズ本部とのトラブルは以下の2つに集約されます。
①利益が上がらない
加盟店の利益が上がらないと、フランチャイズオーナーとしては加盟店契約をした意味がありません。しかも、フランチャイズ本部側は一定の利益があがることを前提に、加盟店を募集しています。そのため、利益が上がらない状況が続く場合には、大きなトラブルの原因になります。
この場合には、自身の店舗だけが利益が上がらないのか他のフランチャイズ加盟店も同様に利益が上がらないのかを確認する必要があります。自身の店舗だけが利益が上がらないならば、加盟店側に原因があると考えるべきです。一方で、他の加盟店も同様に利益が上がらないのであれば、市場の変化や本部側の問題があることが考えられます。
②本部のサービス質に満足できない
加盟店は、ビジネスノウハウを学びながら加盟店事業を行います。また、ブランディングやマーケティングや商品開発などを通じて加盟店へ集客することをサポートします。
マーケティングや商品開発などは当たることも外れることもあります。しかし、外れ続けると加盟店としては不満がたまっていきます。本部が実施するブランディングやマーケティングの対価として、ロイヤリティなど売上や利益に応じて本部へ毎月手数料支払いを継続しているためです。
ロイヤリティは支払い続けるが、フランチャイズ本部の活動によって集客や収益にプラスにならない状況が続くとトラブルの原因となります。
解約違約金の支払いができない場合
中途解約することによって請求を受けた解約違約金は高額になります。また、フランチャイズ契約を中途解約するということは、事業をやめることになります。そのため、店舗を閉鎖することでのキャッシュアウトが多くなり、収入が途絶える資金が不足しているタイミングになります。そのため、解約違約金が支払いできない状況もありえます。
解約違約金が高い場合
解約違約金を請求される状況になった場合、その金額が高すぎないか確認する必要があります。もともと解約違約金は、フランチャイズ本部の権利を守るためにあります。フランチャイズ本部は、構築したビジネスノウハウを提供してその対価として毎月のロイヤリティを受け取ります。
契約期間があるから、ビジネスノウハウの提供の対価を分割して得ることが計算できます。つまり、契約期間が無い場合には一括でビジネスノウハウの提供対価を得なければならず、加盟店になろうとする事業者の最初の負担が高くなってしまいます。
そのため、解約違約金自体は法律的にも認められています。一方で、高額すぎる解約違約金は認められないという過去の判例があります。解約違約金の請求金額については、フランチャイズ加盟店の平均的な利益や、その加盟店が解約しなければいけなくなった個別の事情なども考慮されています。
例えば、解約違約金の設定として毎月の定められたロイヤリティ金額に契約期間の残期間分を乗じるということであれば適正と判断される可能性が高いです。一方で、ロイヤリティの2倍以上を残期間で乗じる金額より高額の解約違約金は一般的に高すぎると判断される可能性があります。
具体例として、毎月のロイヤリティが5万円である加盟店契約で、契約期間から20か月前に解約したとします。その場合には、以下のように判断できる可能性が高くなります。
・解約違約金100万円(ロイヤリティ5万円×20か月):適正 ・解約違約金200万円(ロイヤリティ5万円×20か月の2倍):高額な解約違約金と判断される可能性あり |
あくまで、もともとのロイヤリティの設定の正当性や、金額の妥当性が前提にあります。
ロイヤリティを含めて、一般的に加盟店になることによって得られていた利益が加盟店になることの金銭的メリットになります。そのメリットを大幅に超えた金額設定は妥当性を欠くと判断することができます。
この考え方は、競業禁止の違反についての違約金請求も同様です。競業禁止自体は法律上で認められています。もし、この競業禁止が認められなければ、ビジネスノウハウを提供するたびにそのノウハウを盗まれてしまい、フランチャイズ本部だけでなくその他の加盟店の利益も損なう可能性が高くなります。しかし、請求した違約金が高すぎる場合には法律上で認められないケースがあります。
具体的な事例として、競業禁止の違反があった元加盟店に対してフランチャイズ本部がロイヤリティの36か月分の2,300万円を請求したことで元加盟店と裁判となりました。
その際の裁判所の判断としては、競業の禁止自体の有効性を認められました。一方で、違約金36か月分は高額であると判断し、6ヶ月分のロイヤリティを違約金として元加盟店への支払いを命じる判決が出されました。
●低すぎる解約違約金も注意が必要
加盟店になろうとする時、解約違約金が低いことは歓迎すべき事項と考える方が多いかもしれません。しかし、低すぎる解約違約金や競業禁止事項がないフランチャイズ本部との契約には注意が必要です。
なぜならば、低すぎる解約違約金の設定の場合、解約違約金を支払いして加盟店契約を辞めることを選択する加盟店が増える可能性があるからです。加盟店を抜けてノウハウを利用した同業種を実施する場合には、そのフランチャイズの加盟店にとっては競業他社となります。
その上、元加盟店はロイヤリティを支払いしなくてよくなるため、コスト構造が契約を続ける加盟店より改善されていることになります。この場合に、同程度のブランディングやサービス質を提供できることを前提とするならば、現在の加盟店が不利な立場に陥る可能性が高まってしまいます。
フランチャイズ本部との交渉が可能の場合
解約違約金の支払いが困難な場合には、フランチャイズ本部との交渉を行うことで解消する場合もあります。但し、全てはフランチャイズ本部が交渉に応じてくれるかどうかにかかっています。フランチャイズ本部が交渉に応じるかどうかは、その加盟店のそれまでの貢献度によってくるところが大きくなります。
貢献度とは、今までのフランチャイズ期間やロイヤリティの支払い金額や取引量などです。また、モデル店舗として他のフランチャイズ店舗の模範や相談に乗って本部運営への協力体制などもあります。
フランチャイズ本部が交渉に応じてくれるならば、交渉の方向性は大きく2つになります。
- 方向性①:解約違約金無しで解約する交渉
- 方向性②:解約違約金の支払い方法や金額の交渉
①解約違約金無しで解約する交渉
解約違約金を支払うことが困難な場合、解約違約金無しで解約する交渉から開始すべきです。もちろん、この交渉が成功する可能性は低いかもしれません。
解約違約金無しで解約できる前例を作ってしまうと、前述の加盟店を辞めて競業他社になる動きを止めることができないため、既存の加盟店が不利益を被る可能性があるからです。
しかし、高齢で引退する場合などの競業を行う可能性が無い場合や契約期間を短縮すれば契約期間を全うすることができる場合などは解約違約金無しで解約・終了する方法をみつけることができる可能性もあります。
②解約違約金の支払い方法や金額の交渉
解約違約金は支払いできるが、一括では支払いが難しい場合や金額自体の減額が必要な場合には、この交渉を行います。
この交渉自体は、解約違約金無しの交渉よりも成功確率が高くなります。分割で支払いする交渉の場合でも、減額の交渉でもその根拠を具体的に本部側に伝えることが重要になります。
分割にすれば、支払の管理をする手間がフランチャイズ本部に発生します。また、金額を減額すれば減額分本部へのキャッシュインが減ることになります。これらを納得できるだけの根拠があれば、フランチャイズ本部は交渉に応じる可能性があります。
まとめ
今回は、フランチャイズ契約を終了・解約する時の解約違約金についてまとめました。フランチャイズ事業だけなく、事業を行うことは予想もつかない事態は起こりえます。そのため、事業を終了・解約しなければいけない事態ということもありえます。
その場合には、フランチャイズ契約がどのようになっているのかを確認しながら、フランチャイズ本部と交渉を行い、本部と加盟店の両者が納得できる解決方法を見出すことがベストです。この交渉をするためにも、真摯に対応してくれるフランチャイズ本部を選ぶことや日頃から本部に対して真摯に対応していることが重要になります。