アメリカ発の人気フランチャイズチェーン10選
フランチャイズには、国内発の業態だけではなく、アメリカなど海外発のフランチャイズチェーンも多くあります。元々フランチャイズの仕組みは、アメリカで生まれたシステムであり、数十年にわたりフランチャイズとして運営されている事業も少なくありません。
そこで今回の記事では、アメリカ発のフランチャイズに焦点を置き、人気フランチャイズを10社を選定しました。日本での売上高・規模だけでなく、独自性なども含め、おなじみの会社から、知る人ぞ知る会社まで、幅広い視点で選定するので、ご参考ください。
目次
アメリカ発人気フランチャイズチェーン10選
アメリカのフランチャイズは、世界的に展開されているチェーンが多く、また、進出国で得たノウハウをアメリカに逆輸入し、システムの改善につなげている点が特徴です。
人気のアメリカフランチャイズ10選を見ていきましょう。
アメリカで産まれ、日本で進化を遂げたセブンイレブン
アメリカ発で、日本で成長・完全に定着したブランドと言えば、セブンイレブンです。セブンイレブンの始まりは1927年のテキサスでした。元々は、町の氷を扱う小売販売店でした。
氷を使った冷凍・冷蔵保存を行うのが限度で、「氷」という商品が、現在と異なり「食品保存」という実用的な価値を持って販売されていました。
氷を扱う中で、店舗を担当していた人は、“当時としては”思い付きそうですが、誰もがやらなさそうな大変な施策を発案し、実行しました。
それが、「週7日・16時間営業」という形態です。「毎日営業しており、行ってみたのに定休日で店が開いていない」という状況をなくし、「毎日開いているお店」というポジションを確保、さらに「食料品、例えば牛乳やパンなどもあると便利」という顧客のニーズを、店舗の担当者は受け取り、会社に提案、現在のセブンイレブンの原型が形作られ始めました。
このように、お客様のマインドシェアの中で「いつでも開いている」「必要な物が揃っている」「ニーズに応じた物を揃えるようにしてくれる」という存在が、セブンイレブンの発展に寄与しました。
他のビジネスでもそうですが、「ここに行けばたいていのニーズが満たせる」、いわゆる「ワンストップサービス」という印象を消費者に与える事は、他のビジネスにおいても重要です。コンビニのような、簡易な小売業態だけでなく、他の業態でも同じです。「ついでに」のニーズを満たせれば良いのです。
テレビショッピングやラジオショッピング広告・新聞広告や牛乳配達など、「主力商品単品で利益を出すことは難しい」という販売手法は多くあります。テレビやラジオ・新聞の広告出稿量やスペース、販売商品の単価だけでは、広告そのものの費用をカバーできるかは不明確です。しかし、買ってもらう「ついでに」、買ってもらった「あとに」が利益の源泉となるビジネスのが、前述のビジネスです。
LTV(ライフ・タイム・バリュー)という、一人(一家族)の消費者から得る利益と、CPA(コスト・パー・アクション)という、一人の顧客を獲得するのに必要な費用という概念があります。
テレビ・ラジオショッピングなどは、購入後に、郵送でカタログを送付する事業者が非常に多いです。牛乳配達の場合は牛乳以外にも健康食品や各種食品など、「牛乳配達を利用する高齢者層にとって、ニーズがありそうなものをあわせて提供する」など、一度獲得した顧客に対し、「顧客のニーズに即した方法で」商品をカタログなど自然な手法で提案します。
そうすると、一人の顧客を獲得することで、より少ないコストで、継続的な利益を得ることが可能です。買物・通販だけでなく、多くの人は、面倒な手続を好みません。市区町村役場などでも、一カ所で極力手続ができるワンストップサービスを提供する所は多いです。各種サービス業態でも、「手続を一カ所だけでなく他の所と提携して、最初に行ったところの手続だけで全てを完了してくれる」という点を強みにする事業者もあります。
現在のセブンイレブン他コンビニエンスストア各社を見ても、最初の氷・牛乳・その他食料品から、「あると便利だな」、という商品・サービスを、下記の通り幅広く扱っています。
- ・お弁当
- ・スイーツ
- ・各種日用品
- ・書籍・雑誌
- ・飲料
- ・宅配便
- ・公共料金の支払い
- ・住民票の取得
- ・銀行ATM
セブンイレブンが、いわゆる「365日・朝7時から夜11時まで」という社名通りの営業時間になったのは、1946年です。その時から、「7-ELEVEN」というロゴ・コンセプトが受け継がれ、現在におけるセブンイレブンのロゴマークにも、当時の名残を残しています。
日本にセブンイレブンを持ち込んだのは、イトーヨーカ堂というスーパーチェーンであることは有名です。アメリカのセブンイレブンのフランチャイズとして営業するだけではなく、セブンイレブンを日本の消費者のニーズにカスタマイズし、強い商品力を持つコンビニエンスストアに育てあげました。
さらには、米国のセブンイレブンを買収する、元々は親会社であったイトーヨーカ堂の株式時価総額を追い抜くなど、破竹の勢いで発展を遂げました。さらに2020年、コンビニエンスストア兼ガソリンスタンドの「Speedway」のコンビニ・ガソリン等小売部門を株式公開買い付けにより買収、210億ドル(2020年12月の日本円に換算して約2兆1,735億円)という大型買収も行いました。このように、米国で生まれ、日本に育てられたセブンイレブンは、現在も世界的なブランドであり続けています。
クリスマス・お正月に強いケンタッキー・フライドチキン
クリスマス・お正月になると、ケンタッキー・フライドチキンのCMを目にする方は多いと思います。ケンタッキー・フライドチキンは、フランチャイズの中でも極めて歴史のある会社で、世界で初めてフランチャイズビジネスを始めたと言われています。
ケンタッキー・フライドチキンと言えば、創業者の「カーネル・サンダース」氏の、紆余曲折を経た人生のエピソードは有名です。鉄道職員・保険外交員など職を転々とし、40歳にシェルのガソリンスタンドの経営を受託、食事を提供するなど行い、1940年に、現在の「秘伝のレシピ」によるフライドチキンが誕生しました。その後カーネル・サンダースは、各地域に「商標・経営権」を売り歩き、1964年にケンタッキー・フライドチキンの経営権を他社に売却し、資本面でのEXITをするものの、トレードマークの存在として生涯にわたり、全世界で活動を行いました。
日本においては、1968年に設立され、その後1970年の日本万博で店舗を出店し、同年より店舗展開を始めました。現在でこそ、コンビニエンスストアなどでのフライドチキンの取り扱いなども増え、様々な店舗がフライドチキンを売るようになりました。しかし、フライドチキンとしてまず始めに想起されるのは、多くの人にとって「ケンタッキー・フライドチキン」ではないでしょうか。
カーネル・サンダースという、今も存在感を放つケンタッキー・フライドチキンのシンボルと、日本の四季や、現在はテイクアウト需要にあわせたビジネスで、現在もケンタッキー・フライドチキンは日本独自の発展を遂げています。
フィットネスのカーブスはアメリカ発
少し前から、女性専用・短時間のサーキットトレーニングを売りにする「カーブス」の存在をあちこちで見かけるようになりました。カーブスも、元々はアメリカ発で、フランチャイズの形態を取っています。
日本においては、直営店・フランチャイズ両方が混在しますので、あまりフランチャイズというイメージは強くない印象です。しかし、全世界で2007年には1万店を超えるなど拡大をしました。その後リーマンショックの影響もあり、日本法人がアメリカのカーブスを買収するという、セブンイレブンと同じルートを辿ることとなりました。
そのため、現在の日本のカーブスのフォーマットは、アメリカなど本家とは違う、「女性限定だが、年代を問わず、気軽に参加できる」「友達同士で入会することでメリットがある」「高齢者向けの健康プログラムを提案する」など、日本の高齢化社会や女性の口コミ力など、日本ならではの特性にあわせたプログラムを組んでいます。
カーブスの日本法人が、米国の本家カーブスを買収したのは、プログラムの開発など、業務展開の自由度が高まるという意味合いも大きかったと言えます。フランチャイズに限らず、「フォーマット販売」というのは、細やかな制約があるケースが多いです。例えば、以前は日本のテレビ局が海外のテレビ番組のフォーマットを購入するというケースが目立ちました。
例えば、「24-TWENTY FOUR」を日本でドラマ化した「24 JAPAN」、以前なら全問正解で1,000万円の賞金が付与される、「クイズ・ミリオネア(Who Wants to Be a Millionaire?)」、最高賞金2,000万円の「ウィーケスト・リンク(The Weakest Link)、「2000万円落下クイズ!マネードロップ(The Million Pound Drop)」などが存在します。
この仕組みは以前よりメジャーで、「クイズ!100人に聞きました」はアメリカの「Family Feud」を輸入、「ザ・チャンス!」も、「The Price is Right」を輸入、日本版は終了したものの、アメリカ版は両番組とも2019年時点では健在、「The Price is Right」は
日本のテレビ局が海外の番組フォーマットを購入する一方、日本の番組でも「Sasuke」はアメリカで「American Ninja Warrior」として定着、「加トちゃんケンちゃんごきげんテレビ」の、家庭におけるホームビデオを紹介する「おもしろビデオコーナー」は、「American Funniest Video」としてアメリカに展開し、Youtubeが普及するまでは、根強い人気を誇るコンテンツとして存在しました。
日本が海外の番組のフォーマットを購入する場合、相手国のテレビ局の考え方により、フォーマットが固定(ライティング・デザイン・決めゼリフなどあらゆる詳細な部分)されることがあります。海外のフランチャイズを日本法人が運営する場合も同じですが、海外のフランチャイズを日本法人が運営する場合、様々な取り決め及び取り決めに反した場合のペナルティが存在します。
細かい規定がある中でも、アメリカ発のシステムを日本向けにカスタマイズし、最終的には米国法人を買収するに至ったカーブスのエピソードを踏まえると、日本人は、ゼロからイチを作ることは苦手だが、既存のものを改良・発展させることについて長けているというDNAは、昔の時代から引き継がれていると言えます。
エピソードに事欠かないマクドナルド
マクドナルドは日本のみならず、世界を席巻するハンバーガーチェーンとして、長い間頂点に君臨しています。マクドナルドを考える上では、アメリカで発展したマクドナルドと、日本で独自の成長を遂げたマクドナルド、双方の分析が欠かせません。まず、アメリカのマクドナルドに関して記載します。
アメリカのマクドナルドの起源を振り返ると、当初は「マクドナルド」という兄弟が始めた「スピード・サービス・システム」をキャッチフレーズとするハンバーガーレストランが始まりでした。店舗は当初より盛況でしたが、マクドナルドを国際的企業に押し上げたのは、当時ミルクシェイク・ミキサーのセールスパーソンであった、レイ・クロックと言えます。
2007年に出版され、現在も読まれ続ける、「レイ・クロック自伝 成功はゴミ箱の中に」では、レイ・クロックがいかにしてマクドナルドを一大チェーンに発展させたかが描かれています。
レイ・クロックがマクドナルドに大きく関わり、発展させるチャンスを掴んだのは52歳の時でした。当時のレイ・クロックは、以前からの激務により、糖尿病と関節炎を患い、胆嚢のすべてと甲状腺の大半を失うという、極めて身体面で厳しい局面にありました。その中で、マクドナルド兄弟とビジネスを行い、その後契約書の「たった一つの条項」のために、マクドナルド兄弟と権利の問題で争うことになるなど、窮地に陥る事も度々ありました。
本書の中には、“「未熟でいるうちは成長できる。成熟した途端、腐敗が始まる」これは私の座右の銘だ。”というメッセージがありますが、マクドナルドという一大帝国を築き上げた後にも、このように成熟しないよう戒めているという点で、レイ・クロックは生涯成長を志向した人物と言えます。
この「レイ・クロック自伝 成功はゴミ箱の中に」には、現代にも通じ、そしてフランチャイズや会社設立に挑戦する人、中高年から新しい事に挑戦する人に対する金言が多く含まれています。“マクドナルドのスローガンに「ビジネスは、一人では成功しない」”という言葉があります。二人以上、例えば夫婦でフランチャイズに参画させることは、一見家族全体に負担を与えるようにも見えますが、一方で、「人は自分のためだけでは頑張りきれない」「人にはそれぞれ強みがある」という人間の本質を見抜いています。
今でも大手フランチャイズ事業者で、夫婦や家族での参画を条件にしている会社がありますが、事業の継続性に加え、参画者それぞれの長所を活かすことによる相互補完という意味合いも大きいです。
また、レイ・クロック氏は、前述の通り元々はミキサーのセールパーソンです。言わば、レストラン経営の経験どころか調理業務の経験もない、業界のアウトサイダーです。本書における、ユニクロ創業者の柳井正氏と、ソフトバンク創業者孫正義氏の対談で、レイ・クロック氏も、柳井氏も、孫氏も、それぞれが業界のアウトサイダーであり、それ故に業界のセオリーに引きずられることなく、独自の経営を打ち立てることができた旨が語られています。
柳井氏は山口の宇部や小郡という地方・そして広島の現在のユニクロに当たるカジュアル店舗から出発、孫氏もITが軸とは言え、ソフトウェアの流通、書籍・雑誌の出版からスタートし、アメリカなど海外で流行している業態を日本に持ち込む「タイムマシン経営」を標榜・実践、Yahooの合弁会社設立・中国アリババとの提携、Yahoo!BBのアグレッシブなセールスでブロードバンドを徹底的に普及させました。
更には日本テレコムを買収、ダイエーホークスの買収、ボーダフォン日本法人の買収で携帯電話事業に参画、携帯電話会社のスプリントの買収、半導体大手Armの買収など、様々な事業を買収し、「ソフトバンク」という一大帝国を築き、現在もソフトバンク・ビジョンファンドによる投資など、様々な方面に関与しています。
一方、柳井氏は、セオリーなど一部法人の買収はあれど、基本はユニクロ・GUなど自社ブランドを徹底的に育て上げました。2020年8月期の売り上げは、コロナ禍で前期比12.3%減ながら、それでも2兆88億円という極めて大きな規模となっています。
現在も第一線に存在する二人が、共通し、「彼らから学んだ」としたのが、レイ・クロック氏、そしてこれから述べる、マクドナルド日本法人設立・発展の立役者である藤田田氏です。
藤田田氏は、海外との強いパイプを持ち、前述の通り宝石商など、日本に海外製品を売り込むことに長けた、国際的な感覚を持つセールスパーソンと言えます。藤田田氏は、著書「勝てば官軍」「ユダヤの商法」などで、極めてユニークな提言や、海外、特にユダヤに関わるビジネスについて、数多く言及しています。
例えば、現在「ファクタリング」として、事業者間で「請求書(請求権利)を買い取る」という取引が一般化しています。この事業も元々は、ユダヤ人が行う「ファクター」という事業に源流が存在します。ファクターのエピソードは、藤田氏が「ユダヤの商法」に「ユダヤ人は、請求書までも商品にする」と記しています。「ユダヤの商法」が記された当時は、「ファクタリング」という事業も一般的ではなかった側面がありますが、現在はファクタリングも事業として一般化されています。
「ユダヤの商法」には、特に多くの金言が多くちりばめられています。ユダヤ商法の基礎になっている、「七八対二二の法則」は、パレートの法則(業務成果の8割は、時間全体の2割が生み出し、この概念は他のことにも応用できる)が普及する前にから、既にユダヤ人の間で絶対的な法則として語られ続けています。
ビジネスで言えば、お金を持つ二二を対象にした方が儲かる、だから、お金を持つ二二を相手に商売する、という視点は、なるほどと言えます。
七八対二二の法則のみならず、ユダヤ人は数字に強い、そして数字に強くなることがユダヤ商法の一歩であるともしています。ただ、藤田田氏が日本に持ち込んだマクドナルドは、二二より、むしろ七八を対象にしているビジネス、つまり大衆を相手にしたものです。なぜ、藤田氏がマクドナルドを日本に持ち込もうと考えたかというと、このような理由です。
”「ユダヤ商法に商品はふたつしかない。それは女と口である(筆者の原文を尊重し、そのまま引用しております)“
世の中で財布を握る、消費を行うのは女性が主体であること、人間は1日に何度か食事をしないと生命が維持できないため、口、つまり「食に関わるビジネス」は常に求められるわけです。このことは、“ユダヤ人にいわせると、これは『ユダヤ商法四〇〇〇年の公理』なのだそうだ。しかも『公理であるから証明は不要』”とされるくらい、古来より語り続けられる定石とされています。
ユダヤの商法では、女性が購入する品を、商才を要するが儲かる「第一の品」とし、口に入れる商品を一般的な商才を持つ人間でも比較的儲けやすい「第二の品」と定義しています。「第二の品」として日本に持ち込まれたマクドナルドが、日本の食文化を変えるまで発展し、現在も巨額の利益を稼ぎ出していることは、特筆すべきでしょう。
また、ユダヤの商法では、常にメモを取ることを旨とし、「曖昧さを許さない」「日時・金額・納期については厳守する」、口約束でも契約書でも、「契約は神との契約同様、絶対に守る」ということが遵守されています。日本でも、契約書に関しては、「契約書を締結する」という概念が広まっては来ましたが、口頭の約束などでは曖昧であったり、業界によっては商慣習で、報酬や条件等を明確にしない業界も存在するようです。(さすがに、現在では各所で是正の動きが図られていますが)
他にも「時を盗むな」「税金に対して厳正であり、利益計算時に税金を予め差し引き利益を検討し商売する」など藤田田氏の著書で、現在にも通じるエピソードは多々あります。
マクドナルドはハンバーガーの提供に関して、あらゆる業務を定型化し、様々な人材を調理ができる存在に育て上げる教育システムや「ハンバーガー大学」として、中堅・中核のオペレーション人材を育てるシステムなど、人を育成することを見事にシステム化した組織と言えます。
人材育成だけではありません。マクドナルドは、いわゆる「ファースト・フード」という、安く、早く、おいしいという印象が強い店舗です。ですが、マクドナルドは、自身のビジネスを「レストラン・ビジネス」と定義しています。「QSC&V(品質・サービス・清潔さ・価値)」をビジネスの理念とし、現場のオペレーションにまで反映しています。
品質に関しては、世界各国で共通の品質を提供するための品質管理の徹底、サービスについては、小さなお子様をお持ちなら、誰もがねだられるであろう、現在人気のキャラクターを起用した「ハッピー・セット」の提供や、クルーの対応、清潔さについては、「衛生管理の徹底的なマニュアル化と実践」、そして品質・サービス・清潔さを全て高い基準に満たしたことで生まれる価値など、ビジネスの理念を様々な形で現場に反映しています。会社によっては、経営理念・ミッションが形骸化することもありますが、マクドナルドの場合は、理念・ミッションの徹底的な実現に、常に配慮しています。
また、現実的な側面として、「ハッピー・セット」などの子どもが喜ぶ商品を提供することで、家族客を取り込むほか、小さい頃からハンバーガーに馴染ませる習慣を作ることで、ライフ・タイム・バリューを最大化し、小さい頃だけでなく、学生・大人になっても通い続けてもらうよう、マクドナルドに馴染んでもらうということも推測できます。
様々な課題を持つという意味で注目すべきSubway
Subwayは、日本では、現状規模が縮小する厳しい展開であり、米国でも店舗の再構築を進めている状況ですが、海外では引き続き店舗拡大を続けています。日本のSubwayを利用した人なら実感できると思いますが、注文を受けてから調理するなど新鮮な食事を提供してくれ、注文に関し事細かにカスタマイズしてくれる一方、注文が面倒・時間がかかるので、仕事の合間の急ぐランチタイムには不向きなどの印象を持つ方もおられるかと思います。
人間は、「選択」という行為に殊の外ストレスを抱えます。スティーブ・ジョブスや日本でもリブセンスの経営者など、「決まり切った服しか着ない」、それ以外にも「選択の行為をなくす」ということで経営に頻繁に問われる選択のリソースを無くすことにより、「自身が本質的に選択を行うことについて、意思力を温存する」という考え方を持つ人も少なくありません。
また、繁忙時は、後ろに人が並ぶ中で、希望を伝える必要がありますが、日本人にありがちな「他者に迷惑をかけてはいけない、待たせてはいけない」という国民性から、「後ろの人の目線を気にしながら注文を行う」というのは、非常にストレスです。
このような点で、Subwayの本来の強みである、ヘルシー・安価・カスタマイズできるというメリットが、必ずしも日本では活きてこなかったことも推測できます。
しかし、日本でも、今後さらに健康志向が高まることは想定できます。一つの要因として、「病気になる前に治す」という発想や、Apple Watch・スマホと繋がる体組成計など健康管理の側面を持つガジェットが増えることにより、「自身の体型・健康状況・運動頻度など」が容易に確認できる状態になりました。
また、健康管理のゲーミフィケーション(ゲーム化)や、取った食事の分析ができるサービスなど、健康を得るための行為が、これまでのストイックなものから、ゲーム的な物へと形を変えようとしている気配があります。
2020年は、健康管理・感染対策など「体を守る・命を守る」ということが改めて問い直された一年でした。2021年以降感染症収束後も、健康管理と、体を守るための健康な食事のあり方が問い直されるなかで、「ヘルシーかつ安価なファースト・フード」であるSubwayは、再評価が行われる可能性も秘めています。
つけまつげのXTREME LASHES
次は「つけまつげ」という全く異なるジャンルです。XTREME LASHESは、世界25カ国、商材のみに関しては世界50カ国と世界的に展開されている、まつげエクステや美容液など、目元周りを中心にしたコスメブランドです。
高級・高単価で、美に対し意識が高い層をターゲットにしており、日本国内のサロン展開は現在白金台と新潟地区などに限定されています。しかし、世界的に展開され認知度が向上していることや、目元に対する影響の強みなどから、今後海外の影響を受け、日本のXTREME LASHESに対しても、プラスの影響が出る可能性もあります。
サーキット型キックボクササイズの9ROUND
9ROUNDは、本来のエクササイズの訴求に加え、「なぐる」「ける」「たたく」という、ストレスを合法的・健康的に解消できる点を強みに挙げています。日本では2020年12月現在4店舗と、これから展開が広まることが想定されます。
2020年は、感染症の影響により、運動などエクササイズによる健康維持が課題となる一年でした。家庭内でのトレーニングでも、ある程度の運動は可能ですが、「大きな動き・音・声が出るエクササイズ」というのは日本の住宅状況では厳しい物があります。
その点、9ROUNDは、感染症対策にも配慮した環境で、完全予約制、マスク着用の義務化、30分で1セットのトレーニングができるなど、現状求められる新しい生活様式に配慮しつつも、インストラクターとコミュニケーションをしながら運動ができるという点で、感染症が一定の落ち着きを見せた後は、より発展をしていく可能性を秘めています。
アイスチェーンとして定着!サーティワン・アイスクリーム
サーティワン・アイスクリームは、第二次世界大戦終結の1945年、アメリカのカリフォルニア州の郊外にて、「バスキンさん」と「ロビンスさん」の2人によって創設されたアイスクリームチェーンです。日本では、1973年に不二家との合弁会社として設立され、現在不二家の主要株主であるヤマザキパンの供給・オペレーション・資本力などの強みもあり、世界で愛されつつも、日本独自の成長を遂げたアイスクリームチェーンといえます。
社名の由来は、31日間、違う味のアイスクリームを味わって欲しいというコンセプトに基づきます。名前に違わず、サーティワン・アイスクリームは非常に豊富な種類のフレーバーを揃えています。かつ定番・季節商品・アイスクリームケーキなど、「お店でないと買えない」「サプライチェーンの温度管理が徹底されており、顧客がアイスクリームを口にするときには、ちょうど良いとろけ具合のアイスクリームを味わうことができる」などの強みがあります。
サーティワン・アイスクリームは、日本に完全に定着したほぼ唯一の大手アイスクリームチェーンと言えます。世界52か国以上で8,000店舗を展開するサーティワン・アイスクリームですが、日本が世界で2番目の市場となるくらい、日本に定着した存在となっています。
以前はハーゲンダッツも、アイスクリームの路面店を展開していましたが、現在は日本からは撤退している状況です。(海外においては幅広い国で路面店が展開されています。)高級感を主体にしたハーゲンダッツと、小学生・中高生から大人まで幅広い層をターゲットにしたサーティワン・アイスクリームとで、日本での展開が大きく異なる結果となったのは、様々な要因が想定できます。
まず、ハーゲンダッツは確かに高価格アイスですが、コンビニ等、どこでも購入することができます。ハーゲンダッツが高級感を訴求し、CMも社会人の仕事の後の「大人のごほうび」という側面を出す一方、サーティワン・アイスクリームのカップは、基本的にサーティワン・アイスクリームの店舗とヤマザキ・デイリーストアなどヤマザキパン系列のコンビニエンスストアでしか販売されていません。CMに関しても、中高生・大学生の女性をターゲットにした、ポップなCMが主体です。
また、賑わい創出や社会貢献などの工夫として、「寄付をするとアイスクリームがもらえるキャンペーン」、「特定日に、ダブル・トリプルがお得」など、「行列・賑わいを作る工夫」「店舗に若年層・カップル・家族など若い層を主体に人が集まる工夫を行う」「顧客にフレーバーを選んでもらうということや、店内のカラフルさから、「ほどよい行列ができ、待つ側としてもいろいろなものを見て選べる」というメリットがあります。
また、店舗のオペレーションや必要な坪数等に関して、下記のような特徴があります。
- ・火や油など厨房設備を要しないため、安全管理がしやすく、通常の飲食店と比べ必要な坪数が少ない
- ・若年層のイメージが良く、調理技術より接客など顧客対応が主体のため、アルバイトが集めやすい。ユニフォームもアルバイトの主体となる若年女性・学生に好まれ、オペレーションも通常の飲食に比べ容易
- ・仕込みや調理は不要なので、「顧客に対する製品提供・サービス」などに専念できる
また、サーティワン・アイスクリームはショッピングモールを主体に展開されています。同じ商圏の、競合するショッピングモールの双方に、サーティワン・アイスクリームが出店するというケースもあります。
これは、サーティワン・アイスクリーム自体が若年層に愛され、店舗に対する来店のきっかけになるケースも多いため、あえて競合相手同士であっても、出店を許容しているということが言えます。
コールドストーン・クリーマリー・ブルーシールアイスなど、独自性・熱烈なファンを持つアイスクリームチェーンは存在しますが、全世代に幅広く愛されるアイスクリームチェーンという観点では、サーティワン・アイスクリームの実質的な競合はない状況です。
実はアメリカ生まれ、不動産のセンチュリー21
センチュリー21も、日本で長きにわたり定着していますが、発祥はアメリカです。1971年に誕生後、伊藤忠商事と提携、直営店を持たず、全店をフランチャイズとすることで、直営店とフランチャイズの競合を廃止し、本部はフランチャイズの成長に専念するという施策に力を置いています。2019年時点では954店舗と、不動産事業者の1,000店舗を視野に入れ、着実に店舗を増加させています。
センチュリー21の日本法人は、ホームページ上などでも、安易な儲けの訴求などは行わず、また安易に本部に依存するのではなく、ブランドやノウハウを活用・共有しつつも、独立独歩の経営者として成長したいという「誠実さ」を持つ経営者を加盟店として求めています。
フランチャイズのみならず、どのビジネスでも「経営者自身が、大きく経営者として成長したいという情熱を持つこと、かつその情熱を一過性のものではなく、持ち続けること」は重要ですが、特にセンチュリー21は、「継続的に自身の心に火を灯せる経営者」を求めていることが窺えます。
不動産の事業というのは、宅建士に合格し、各種不動産業関係の業界に加入すれば、開業できる事業です。また、不動産の商品、つまり土地・建物・賃貸物件などは、フランチャイズならではの独自商品というのは存在せず、一方で「全ての商品が異なる特性を持つ、一点物である」という側面もあります。商品での差別化が難しい以上は、人や「ここに行けば大丈夫」という信頼感を持つブランド、土地や建物の情報に通じた様々な人的ネットワークなど、複数の要素が欠かせません。
センチュリー21の場合、「誰でもウェルカム」ではなく、「志の高い経営者、成長志向の経営者を求める」ことで、ブランドを築き上げる「フランチャイズ経営者」全体の向上を図ろうとしていることが伝わります。また、フランチャイズによっては、加盟店同士の情報交換を不可とする事業者がいる一方、センチュリー21の場合は、むしろ「加盟店同士で積極的に情報交換をし、成功・失敗のノウハウを共有、全体に波及させよう」という気持ちも見られます。
また、センチュリー21のフランチャイズ募集のページには、「センチュリー21には他社フランチャイズが持つような本部の不動産実務ノウハウ、あるいはカリスマ性をもった指導力は持ち合わせていないかもしれません。しかし、加盟店一店一店が様々なヒントを得ながら、自分の頭で考え、自分のやり方にあった経営手法を実践し、成功に導くだけの環境があり、それがまさにセンチュリー21の強さの源泉であり原点なのです。」という記載があります。
これは、ある意味フランチャイズビジネスの本質を突いている表現です。「甘いことは言いませんし、最終的には経営者である加盟店自身が強くなることが重要である」、そして、「加盟店自身がそれぞれ成長を遂げることにより、センチュリー21自体も日本法人・また米国本部と共に成長する」など、経営者同士のフェアな関係・を築いていこうという姿勢が見えます。
また、センチュリー21といえば、「ゴールドジャケット」という制服が象徴的なシンボルです。ゴールド・イエローを主体としたジャケットは、非常に目立ちます。あのジャケットを見ると、センチュリー21とすぐにわかるくらいに、ゴールドジャケットのイメージが定着しています。ビジネスでは、「派手」「明確さを持つ」ことも一つの強みとなります。ゴールドジャケットは「センチュリー21のメンバーであり、自社のネットワークで様々な物件を紹介できる」というシグナルにもなり得ます。
センチュリー21のフランチャイズの集客以外のメリットとして、「人材の募集がしやすい」という点も強調されています。サイトでは、センチュリー21という知名度の高いフランチャイズの看板があることで、“「普通に応募があり、普通に選考できる」”ということを強みにしています。
一見、ハローワークなり人材紹介などで人を募集すれば、現在の状況では多くの応募がありそうです。しかし、求人に同条件で、「○○不動産」という文字と、「センチュリー21加盟 ○○不動産」という文字が並んでいたら、どちらの方が「入る側として心配がなさそう」でしょうか。
不動産業は、特に事業者により個性がわかれるという話も、時折聞くことがあります。マンガ「正直不動産」では、強い個性を持つ独立事業者で働く主人公たちを通し、ハードさのエピソードが生々しく語られるくらい、入る側にとっては、覚悟が必要な業界といえます。
しかし、センチュリー21のように、知名度も高く、長年の実績や過度な営業をしない姿勢の会社であることが知られていることで、「自社が安心して取引できる会社である」ということを言外に伝えることができます。
加えて、日本ならではの施策として、センチュリー21のポータルサイトを構築し、年間3,600万件に上るページビュー(サイトの閲覧回数)を記録、またsuumo、ホームズ、at homeなど、有力な約20社と提携、ITを用いた集客や、LINEでの問い合わせ対応、ポータルサイトを通した全国加盟店への求人募集、住宅売却や、世界各地のセンチュリー21グループとのネットワークを活かした海外物件への対応など、幅広いサポートを行っています。
また、2020年の感染症発生の影響で生じた、任意売却や、自宅を売り、そこに家賃を払い住み続ける自宅のリースバックへの対応、物件に問題がないかを診断する、インスペクション(住宅診断)サービス・瑕疵保険・保証、最大手家電量販店との提携など、日本法人として独自の進歩を遂げています。
このように、センチュリー21という世界的に知られたブランドを活かしつつも、日本の状況に徹底的なカスタマイズしたサービスを本部で提供することにより、日本にローカライズされたセンチュリー21は今後も成長を続けていくことが見込まれます。
ミスタードーナツ・ミスドもアメリカ発祥
最後はおなじみの、ミスタードーナツです。日本では「ミスド」という名前が定着し、主力マーケットも現在は日本が大きな位置を占めています。厳密な意味では、ミスタードーナツは現在のアメリカには存在せず、ダンキンドーナツにブランドチェンジしたり、独自ブランドに転換しているため、アメリカ発祥のフランチャイズではありますが、現在は各国独自の運営がなされている状況です。
ミスタードーナツも、徹底的に日本の志向・事情にカスタマイズした製品作り、オペレーション・PRなどを行っています。日本でも早期にフランチャイズを全国組織化した「ダスキン」がミスタードーナツを運営、現在はフランチャイズの募集は行っていないものの、フランチャイズの店舗も複数運営されています。
ミスタードーナツは高い知名度を誇る反面、様々な課題を改善するために、独自の試みを行っています。経営面では健康志向の高まりによるドーナツ離れや、テイクアウトへのニーズの高まり、コンビニエンスストアなど他業態との競合などにより、売上の回復にはまだ時間を要する状況ですが、値引きセールの廃止と価格改定、立地特性に応じた新店舗開発、フードメニューなど、ドーナツ以外のプロダクトの提供などで、1店舗毎の売上は増加するなど、これからに向けた結果を出し始めているため、今後の復活も期待できます。
同業他社で、日本に華々しく進出したドーナツチェーンもありますが、こちらは直営店オンリー・催事販売の活用など、違った形で日本への浸透を地道に図る中、ミスタードーナツの日本への定着、世代を問わない知名度は、特筆すべきものと言えます。
まとめ
以上、アメリカ発で日本進出済みのフランチャイズチェーン10社について、知名度の高いフランチャイズチェーンから、今後に期待したいものまで幅広く紹介しました。
日本で愛されるフランチャイズの多くは、アメリカの製品・サービスを、より日本に馴染みやすい製品・サービスにしてカスタマイズしたものが、日本に普及・定着したことが見て取れます。
また、特に食に関する分野の場合、アメリカと日本では、ボリューム・味付け・販売手法など、求められる物が大きく異なるため、いかにアメリカで知名度・人気があっても、日本に馴染むものにしなければ、日本に定着することが難しいという、日本マーケットの厳しさも垣間見えます。
バーガーキング、タコベル、カールスジュニア・ウェンディーズなど、日本に一度進出し、撤退した物の、再度日本に進出するケースも増えています。ウェンディーズはユニークで、日本でもマニアに知られていた「ドムドムバーガー」とともに「ウェンディーズ」がダイエーグループの会社として展開したものの、ダイエーがすき家などで知られる「ゼンショー」に事業を譲渡、更に、ゼンショーからドミノ・ピザの日本普及に尽力した「ヒガ・インダストリーズ」に譲渡され、現在は「ウェンディーズ・ファーストキッチン」のブランド名で日本展開をしています。
このように、アメリカ発のフランチャイズで日本に進出した事業者は、様々な経緯・歴史を辿っており、日本に定着したブランドもあれば、現在足踏みをしているブランド、日本から撤退したブランド、再挑戦を図っているブランドなど、多種多様と言えます。総じて、もともとのアメリカ発のブランドを、いかに日本の厳しい消費者に受け入れられる物にするかというのは、アメリカに限らず、全世界から日本に進出するブランドにとって課題と言えます。