コンビニFCは人手不足にどう立ち向かう?〜若手アルバイトと上手に接する5つの方法〜

なぜ今の若者はアルバイト先としてコンビニを選ばなくなってしまったのでしょうか。多岐に渡る業務内容が原因なのか、上司・同僚との人間関係が原因なのか、最低賃金に問題があるのかなど、さまざまな理由が議論されています。また、せっかく採用したとしても1ヶ月足らずで辞めてしまう例が後を絶たないといいます。

高齢化・人口減少が止まらず求人を出してもなかなか人が集まらないなか、頼みの綱は若い外国人留学生です。大手コンビニ各社は留学予定の学生を現地で研修を受けさせ、来日後は即戦力として現場に就いてもらう体制を整えています

平成30年に入り、いまだ人材不足の解決策が見出だせないコンビニ業界。人手不足が続けば24時間営業を維持するのも難しく、抜本的な運営体制の見直しも議論され始めました。

本記事では、フランチャイズ業界で最大の懸念事項となっている人手不足、早期離職問題について、その対策を考えていきたいと思います

コンビニアルバイトの全国平均1023円

コンビニ業務はレジ打ち、品出しといった基本業務から公共料金の支払い、宅急便の受け付け・受け取り、タバコの銘柄の把握など多岐に渡ります。しかし業務内容は複雑な割に賃金が低いとも言われてきました。

時給、15ヶ月連続の増加

ネット求人サイトのバイトルによれば、全国平均の時給は前年同月比15ヶ月で増加しており、2017年11月期は1023円となります。職種別時給では「食品販売」940円、「販売その他」で954円です。一方、コンビニは昼間800円〜900円、深夜・早朝で1000円超といったケースが多いようです。

なお、時給が最も高い職種は、1位「モデル・エキストラ・芸能関連」(1435円)、2位「携帯・家電販売」(1398円)、3位「SE・PG・エンジニア・運用」(1379円)、4位「塾講師・家庭教師」(1341円)、5位「薬剤師・登録販売者・薬局」(1335円)となりました。

<職種別>アルバイト高時給ランキング

順位 職種 時給
1位 モデル・エキストラ・芸能関連 1435円
2位 携帯・家電販売 1398円
3位 SE・PG・エンジニア・運用 1379円
4位 塾講師・家庭教師 1341円
5位 薬剤師・登録販売者・薬局 1335円
6位 教師・講師・インストラクター 1323円
7位 キャンペーン関連 1292円
8位 パチスロ 1247円
9位 旅行 1239円
10位 イベント関連 1236円

(参照:ディップ株式会社「バイトル アルバイト時給データ」より)

全国最低は737円

時給を都道府県が定める最低賃金に合わせるコンビニが多いなか、全国で最も低かったのは、佐賀・長崎・熊本・大分・宮崎・鹿児島・沖縄の737円となりました。次いで、青森・岩手・鳥取(738円)、山形・愛媛(739円)、島根・徳島(740円)、福島(748円)と続きました(参照:厚生労働省)。

一方、時給が最も高かったのは東京で958円でした。次いで神奈川(956円)、大阪(909円)、埼玉・愛知(871円)、千葉(868円)となりました。

時給が最も低い都道府県 トップ5

順位 職種 時給
1位 佐賀県、長崎県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県 737円
2位 青森県、岩手県、鳥取県 738円
3位 山形県、愛媛県 739円
4位 島根県、徳島県 740円
5位 福島県 748円

(厚生労働省公表資料より作成)

時給が最も高い都道府県 トップ5

順位 職種 時給
1位 東京都 958円
2位 神奈川県 956円
3位 大阪府 909円
4位 埼玉県、愛知県 871円
5位 千葉県 868円

(厚生労働省公表資料より作成)

アルバイトの時給が上がりすぎて経営困難?

人手不足を背景に高騰する人件費に対して、経営者からは悲鳴の声が上がっています。比較的低いとされてきたコンビニアルバイトも都内を中心に1000円超えの求人を見かけることも少なくありません。人員を確保するために、各コンビニオーナーは時給を上げざるを得ない状況となっています。

しかし、人件費の上昇は、フランチャイズ業界では加盟オーナーの長時間労働問題につながります。多くのオーナーが法定労働時間を超えて休みなく店頭に立つことで何とか経営を維持できているというのが現状です。

あるコンビニオーナーは「特に深夜早朝の時間帯は若者が集まらないし、高校生を雇ったとして3ヶ月足らずで辞めてしまう。昼間は主婦を中心に回しているが『あの人とは一緒に立ちたくない』など人間関係で問題を抱えることも多い」と話します。

政府が昨年10月の経済財政諮問会議で3%の賃上げを要求したように、今後も人件費の増加が予想されています。「人手不足」と「人件費高騰」。切っても切り離せない両者に対して私たちはどのように立ち向かえばいいのでしょうか。

職場環境改善!若者を定着させる5つの方法

SNSの普及により職場における諸々の問題が表面化するようになりました。上司の暴言、店員に土下座を強要する客、偽の異物混入による風評被害など良くも悪くも毎日のようにニュースで話題になります。

また、「ブラック企業」「ブラック職場」なども問題になりました。過酷な労働環境を揶揄する言葉ですが、ブラックのイメージが定着しないよう職場環境の改善に取り組む企業も増えました。

特に「最近の若者との付き合い方」に悩む経営者が多いようです。「強く叱ったら辞めてしまった」「個人情報など何でもかんでもSNSで報告してしまう」といった悩みが尽きません。若者とどう接したらスムーズに経営できるのか、どうすれば早期退職を防げるのか、どうすれば求人でたくさんの人がくるようになるのかは、次の5つのポイントが参考になります

1 仕事内容を具体的に説明する
2 叱るよりも褒める
3 人前で注意しない
4 適切に人員配置する
5 評価システムを構築する

仕事内容を具体的に説明する

早期離職をしてしまう人のなかには、仕事を始める前と後でイメージのギャップがあったと話します。アルバイトの退職理由を調査したアン・レポートによれば、辞めた理由の9位に「求人募集に記載されていた内容と、実際の仕事内容・条件が異なるから」が入ります。また、「楽でない・疲れる仕事だから」が2位に、「仕事内容に興味が持てない・興味を失ったから」が4位にそれぞれ入っています。

アルバイトを始める前は、職場の雰囲気がよく見えたり、業務内容もやさしそうに見えても、いざ始めてみると予想外に厳しく誰にも相談できる感じではなかったという人が多いようです。

アルバイトを辞める理由 トップ10

順位 理由 割合
1位 店長や社員の人の雰囲気が悪いから 12.7%
2位 長い時間働ける仕事ではないから 11.6%
3位 楽でない、疲れる仕事だから 9.0%
4位 仕事内容に興味が持てない、興味を失ったから 6.8%
5位 給与が低いから 6.5%
6位 勤務地が自宅から遠いから 4.7%
7位 もっとよい条件の仕事が見つかったから 4.5%
8位 時間の融通が利かないから 4.5%
9位 求人募集に記載されていた内容と、実際の仕事内容・条件が異なるから 4.2%
10位 1日に働く時間が長いから 4.0%

(参照:an report「バイト、パートが「辞める理由」「続ける理由」)

このように、入社前のイメージギャップをなくすために仕事内容や量について、採用担当者は具体的に説明する必要があります。誰にでも簡単に務まるように見せるとかえって離職のタイミングを早めるだけかもしれません。もちろん、「この仕事はこんなに大変なんだ」とプレッシャーをかける必要はないですが、業務内容と就業時間、休憩時間について偽りなく伝えることが大切です。

また、職場の雰囲気について説明することは難しいかもしれませんが、仕事の相談をしやすい教育係や先輩アルバイターをあらかじめ紹介するのも1つの方法です。必ずしも明るい職場ばかりではないですが、ギスギスした雰囲気を作らないような職場環境作りに取り組むのも責任者の仕事です。

叱るよりも褒める

「最近の子はちょっとしかっただけで辞めてしまう」と嘆く声が多く聞かれます。学校教育で体罰や厳しすぎる指導が見直されてから、生徒に対して甘く接する風潮が近年ありました。その結果、最近の若者は叱られることに耐性があまりなく、重く受け止めてしまう傾向があると言われています。もちろんそういう人ばかりではないですが、オーナーは最近の子の特徴を掴んでコミュニケーションしなければならないでしょう。

まずは、「叱る」ことよりも「褒める」ことに重点を置きましょう。仕事の覚えが早かったり、顧客対応が上手だったりするときは褒めてあげることが大切です。褒められることで自信がつき、アルバイターの作業効率が上がるかもしれません。また、職場の雰囲気の改善にもつながります。

人前で注意しない

アルバイターの勤務態度に問題あったり、重大なミスをしてしまったとときは叱ったり注意したりする必要があるでしょう。

しかし、この場合も人がいる目の前で注意するのではなく、なるべく個室で2人きりのときに伝えることが大切です。客や同僚のいる場所でミスなどを指摘することは、相手に反省する気持ち以上の「恥ずかしさ」を与えてしまいます。最近の叱られ慣れていない若者ならなおさらでしょう。

また、叱る際も決して怒鳴るのではなく、いけなかったポイントを冷静に伝えることが重要です。この際、改善方法も同時に提示してあげてもよいでしょう。同じミスを繰り返さないために、また勤務態度を改善するために有効な手段です。

適切に人員配置する

アルバイトが辞める理由の1位には「店長や社員の人の雰囲気が悪いから」がランクインしています。つまり人間関係の悪化を理由とする退職が圧倒的に多いということです。

オーナーとアルバイター、もしくは雇われ店長とアルバイターの間には明確な上下関係があります。若者にとっては最も緊張する相手であり、完全に打ち解けるのは難しいかもしれません。しかし、だからといって常に高圧的な態度をとったり厳しく接してばかりなのは禁物です。部下とはいえ仕事上の関係なので容姿を批判したり人格を否定するような発言は慎むべきでしょう。最近は特にパワハラが問題になりやすいので注意が必要です。

また、同僚同士の関係では仲のよいスタッフもいれば、仕事以外では一言も交わさないような関係の人もいるでしょう。コンビニ運営は24時間業務のため、複数の人員を常に店舗内に配置する必要があります。この際、年齢や境遇がかけ離れた人同士を同時に配置しても、スタッフ同士もどう接していいかわかりません。

ですので、人員配置をする場合はできるだけ条件の近い人同士を同じ時間帯に立たせるなどの工夫を凝らすと、職場環境の改善につながることがあります。職場に仲のよい同僚ができれば悩みを相談し合えますし、早期離職を防ぐ効果も高まります。

このほか、談話スペースを設け、スタッフ同士が親交を深める場所をつくることも効果的です。仕事以外の他愛のない話をするだけで職場の居心地は格段に良くなるはずです。業務時間以外でコミュニケーションを図れる職場作りが大切になります。飲み会など職場外での交流があれば、さらに早期離職の防止になるとの調査データも出ています

仕事ぶりを評価するシステムを構築する

ただ日常的に業務をこなすだけではなく、仕事の成果などを評価するシステムを導入するのも、早期離職の防止に効果的です。アルバイト・パートなどに限らず人材教育をする上でとても重要で、従業員の能力を客観的に把握できるといったメリットがあります

評価システムでは目標を定め、達成できた際には表彰することで、仕事に対するやりがいを感じさせることができます。また、職場スタッフ共通の目標を設定することで連帯感が生まれます

仕事に対する責任感とやる気を引き出し、かつ人材教育も行うことができる評価システムを是非導入してみてください。