法人がFC加盟する上で大切な5つのコト
今年3月、米マクドナルドが世界で展開している直営店をフランチャイズ店舗に切り替える方針であることが、日本経済新聞(2017年3月3日付)の報道で明らかとなりました。2017年末までに直営店4000店をフランチャイズ化する予定で、全店舗の9割超がFC店舗になるとされています。
経営の効率化を図るために行われた直営店のFC化。今後、マクドナルドの直営店は研究・開発部門としての役割を強めていくのではないかと言われています。
このような急激に変化する市場に対応するべく、近年のフランチャイズ業界は法人契約を望む本部が増加しています。同時に、新規事業の開拓、事業拡大を目指してFC加盟する法人も多い一方で、慣れない事業で投資した資金を回収できずに撤退する企業も少なくありません。
法人がフランチャイズ加盟で成功するには何が必要なのか。本記事ではFC加盟するうえで大切な5つの要素を解説します。
目次
法人がFC加盟で失敗しないためには
個人が独立、開業に挑戦するのとは異なる法人のフランチャイズ加盟。所有する物件や人材などの経営資源をどれくらい投資できるかがカギとなります。また、FC加盟が会社の理念に沿うものなのか、明確なビジョンが描けているのかも重要な要素です。
多くのコストと時間をかける挑戦になるので、個人加盟よりも慎重な判断が求められます。次の5つの要素を見ていきましょう。
1 | 加盟目的、ビジョンの明確化 |
---|---|
2 | 事業計画、工程表の作成 |
3 | 従業員に対する丁寧な説明 |
4 | 慎重な情報収集、情報分析 |
5 | 適切な人材確保、人材育成 |
加盟目的、ビジョンを明確にする
法人がフランチャイズに加盟するのはリスクが伴う行為と言えます。そのため、なぜフランチャイズに加盟しなければならないのか、加盟することどれほどの利益が会社にもたらされるのかを明確にしなければなりません。
また、加盟するなら目標を立てることも大切です。のちに複数店舗経営することも十分ありえますので、メガフランチャイジーになることがゴールなのか、それとも自社ブランドを持つことなのか、など最終目標を定めておきましょう。
そうすることで社内スタッフの勤労意欲やモチベーションを高めることができ、目標達成に向けて一丸となって取り組む一体感が生まれます。
事業計画、工程表で見通しを立てる
法人のFC加盟で最も重要なのが事業計画書の作成です。優れた事業計画を立てられるかどうかは、成功と失敗の分かれ目ともなります。入念に市場調査を行い、資金調達・返済計画を立てるほか、仕入れルートの開拓、価格交渉、商圏・立地調査、店舗設計、人材確保、商品開発などを慎重に検討しましょう。コストと時間をかけただけで、投資を回収できなければ意味がありません。
新規事業への参入の場合、細かな工程表を作成するのは困難かと思われますが、FC本部から得られる既存店の経営資料などを参考にすることもできます。
このほかPDCAサイクルを活用することで、継続的な品質向上、経費削減などを行うことができます。
Plan(計画) | Do(実行) |
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売上予測、売上目標など具体的な業務計画を立案する | 進捗を確認しながら、計画に沿って業務を実行する |
Check(評価) | Action(改善) |
計画に沿った業務の実行が行えていたかどうかを検証する | 問題点を見つかったら、改善する |
実現可能性の高い事業計画書を作成するよう努めましょう。
従業員にきちんと説明して理解を得る
経営者のFC加盟の決断に対して、不安に感じる従業員は決して少なくないでしょう。特に新たにフランチャイズ部門に配属される社員は経験したことのない部署なだけに、戸惑うことも多いはずです。
したがって、経営者には経営方針の説明で、フランチャイズに加盟する理由について全従業員から理解を得ることが求められます。自分の会社がやろうとしていることがはっきりと見えれば、従業員たちの不安もきっと払拭されるでしょう。
法人は、個人と違って一人で会社を回しているわけではありません。独りよがりの決断にならないよう心がけることが社員たちから信頼を得ることにつながります。
加盟する本部の情報収集・分析を慎重に行う
法人に限らず、個人においてもフランチャイズに加盟する際は、複数の本部を比較検討するようにしましょう。参入しようとしている業界のフランチャイズ企業はなるべく全て把握するのが理想です。
フランチャイズ・システムでは本部と加盟店が担う役割は異なります。加盟店が果たす役割を正確に把握し、その上で契約内容と照らし合わせながらその中から自社の企業理念、方針に近い本部を選択します。
本部の役割 | 商品、サービス開発機能 | 加盟店の役割 | 資本投下機能 |
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原材料調達機能 | |||
商材安定供給機能 | |||
教育、指導機能 | |||
加盟店開発機能 | |||
広告宣伝機能 | 店舗運営機能 | ||
立地開発機能 | |||
立地診断機能 | |||
店舗建築、設計機能 | |||
店舗運営ノウハウ開発と改善機能 | |||
マニュアル整備機能 | 顧客管理機能 | ||
情報システム機能 | |||
経営情報収集提供機能 | |||
その他(金融斡旋、経理代行など) |
FC契約交渉では、本部が加盟者に対して十分な情報の開示を行わず、または虚偽、誇大な開示を行い、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように働きかける行為は、独占禁止法により禁止されています。
不利な条件で契約することがないよう、フランチャイズに関係する法令(独占禁止法や中小小売商業振興法※)は簡単に確認しておきましょう。
フランチャイズ・システムは中小小売商業振興法11条で、「連鎖化事業であって、当該連鎖化事業にかかる約款に、加盟者に特定の商標、商号その他の表示を使用させる旨および加盟者から加盟に際して加盟金、保証金その他の金銭を徴収する旨の定めがあるもの」と定義されている。
人材確保、育成を適切に行う
新たにフランチャイズ部門を立ち上がるに当たり、柱となる人材を確保しなければなりません。人材は新規に採用するのもいいですが、極めて重要な挑戦になるので、既存事業で優秀な結果を納めてきた人物を充てるのが理想的です。
それだけ新規事業にかける本気度を示すことにもつながり、社員たちからの期待も高まります。
また、多店舗展開ともなると人材の確保はより困難になるので、より計画的に人材を育てていくことが大切です。
法人加盟の準備ができているかチェック!
法人のFC加盟に必要な要素をクリアしているか、次のチェックリストを活用してチェックしてみましょう。
項目 | チェック欄 | |
---|---|---|
加盟目的、ビジョンの明確化 | 加盟する目的がはっきりしている。 | |
加盟後のビジョンが描けている | ||
フランチャイズ以外の選択肢も検討している | ||
新規事業に参入する覚悟がある | ||
成功に向けた強い意欲がある | ||
事業計画、工程表の作成 | 慎重に検討を重ねた事業計画書である | |
現実的な売上予測、客数予測である | ||
予測どおりに行かない場合の対策も用意している | ||
多店舗展開についての予測ができている | ||
実現可能性の高い投資回収計画である | ||
従業員に対する丁寧な説明 | 経営者として信頼されている | |
社員とコミュニケーションが図れている | ||
新しい事業を受け入れてくれる社風である | ||
分かりやすく、理にかなった説明ができる | ||
社員に納得してもらう時間を十分に確保している | ||
慎重な情報収集、情報分析 | 業界内のFC本部を全て把握している | |
競争店を把握している | ||
契約交渉に真摯に応じる本部である | ||
悪い評判を聞かない | ||
契約内容を複数検討し、比較している | ||
適切な人材確保、人材育成 | エース級の人材がいる | |
新規事業を安心して任せることができる | ||
次の人材を育てる計画が用意できている | ||
出る杭は打たれない企業風土がある | ||
人材に余裕がある |
チェック項目のうち、該当数が「0~5個」だと、残念ですが法人加盟をするのは一度考え直した方がいいでしょう。
「6~12個」は、急いで加盟するのではなく、一度立ち止まって、加盟目的を見直し、加盟に向けた体制が整うまで準備をしたほうが良いかもしれません。
「13~19個」は、法人加盟する準備がある程度整っているのであるので、会社に何が不足しているかを見直すといいでしょう。
「20~25個」は、加盟に向けた用意ができている状態と言えます。あとは自信をもってチャレンジしましょう。