中南米フランチャイズ事情② 〜アルゼンチン、チリ、ペルー編〜
拡大する中南米のフランチャイズ市場。
前回記事では、日本貿易振興機構ジェトロ「中南米フランチャイズ業界の動向」をもとに、ブラジルとベネズエラにおけるフランチャイズ事業について詳細に見ましたが、今回は、アルゼンチン、チリ、ペルーを取り上げます。
目次
景気回復を図るアルゼンチン
景気回復が鈍いアルゼンチンは、過去に何度も財政破綻を経験するなど経済的には安定していません。
2001年に経済社会危機に陥って以降は、貿易面で日本と関係が希薄になっていましたが、2015年にマクリ政権が誕生後、アルゼンチン大統領として18年ぶりに来日。都内で開催された「日本・アルゼンチン経済フォーラム」で、開放経済路線の継続とマクロ経済の安定を表明し、両国は貿易関係を強化していくことで一致しました。
GDPの2%を占める
ジェトロ調査資料によれば、アルゼンチンにおけるフランチャイズ市場規模はGDPの2%を占め、2019年までに年率10%程度の拡大が期待されるとしました。
同国のフランチャイズ市場は2009年以降、急成長し、2016年現在ではフランチャイザー700社超、フランチャイジー3万店超となります。
フランチャイズによる売上高は日本円で1兆650億円(1500億ペソ)におよび、小売全体の22%を占めます。(アルゼンチン商標・フランチャイズ協会発表数値より)
売上高 | 1500億ペソ |
---|---|
全体の小売売上高に占める割合 | 22% |
GDPに占める割合 | 2% |
従業員数 | 20万人以上 |
フランチャイザー | 700社以上 |
フランチャイジー | 3万店以上 |
前年比加盟店増加率 | 11.5% |
業態別ではフードサービスがトップ
フランチャイズを展開している企業を業態別に見ると、「フードサービス」が最多となる43%を占めます。次いで、「専門・特殊ビジネス」18%、「その他サービス」15%、「アパレル&アクセサリー」11%、「美容・健康」9%、「教育」4%と続きました。
業種 | 割合 |
---|---|
フードサービス | 43% |
専門・特殊ビジネス | 18% |
その他サービス | 15% |
アパレル&アクセサリー | 11% |
美容・健康 | 9% |
教育 | 4% |
「フードサービス」ではカフェ、アイスクリーム、ファストフードなどが人気業種で、このほか「専門・特殊ビジネス」ではスーパーマーケット、家具、建築素材、「その他サービス」では旅行代理店、コンサルタント、レンタカー、収納代行、「アパレル&アクセサリー」では履物、アンダーウェア、「美容・健康」ではエステ、ネイル、ダイエット、「教育」では語学などとなります。
加盟店舗ランキング、収納代行がトップ
アルゼンチンフランチャイズ協会が作成する「アルゼンチン・フランチャイズガイド」によれば、最も多く加盟店を経営するフランチャイザーは、収納代行サービスの「ラピパゴ」で2750店舗です。
次いでクリーニングの「ラベ・ラップ」1419店舗、アイスクリームの「グリド・エラード」1280店舗、「ディア・スーパーマーケット」584店舗、アイスクリームの「セイ・トゥ・ジェラート」325店舗、塗料販売の「カラーショップ」215店舗、コーピーショップの「ボナフィデ」210店舗、ファストフードの「サブウェイ」185店舗、コーピーショップの「ハバナ」148店舗、同「カフェ・マルティーネス」147店舗と続きます。
順位 | 企業名 | 業種 | 店舗数 |
---|---|---|---|
1 | ラピパゴ | 収納代行サービス | 2750 |
2 | ラベ・ラップ | クリーニング | 1419 |
3 | グリド・エラード | アイスクリーム | 1280 |
4 | ディア・スーパーマーケット | スーパーマーケット | 584 |
5 | セイ・トゥ・ジェラート | アイスクリーム | 325 |
6 | カラーショップ | 塗料 | 215 |
7 | ボナフィデ | コーピーショップ | 210 |
8 | サブウェイ | ファストフード | 185 |
9 | ハバナ | コーピーショップ | 148 |
10 | カフェ・マルティーネス | コーピーショップ | 147 |
ジェトロによると、アルゼンチンにおける外資系企業の進出は、中南米では少ないほうで、国内企業によるシェアが9割以上となります。外資は、国別で米国が3%と最も多く、次いでスペイン2%、イタリア1%、ブラジル1%と続きます。
チリのフランチャイズ市場、10年間で倍増
スペイン系の住民が4分の3を占めるチリでは、2期目となるバチェレ政権が税制改革や各制度改革に積極的に取り組むも、経済成長は減速しており、支持率は低迷しています。
日本とは2007年に経済連携協定(EPA)を締結しており、チリ産の安いワインがよく輸入されています。
外資系企業が参入しやすい
近年のチリ・フランチャイズ市場は拡大しています。国内で展開していたブランド数は10年前(2005年)で93ブランドでしたが、現在(2016年6月時点)で203まで増加しました。加盟店は5232店舗におよびます。そのうち、外資系企業によるものが7割で、チリブランドは3割にとどまります。
チリはもともと外資に対する規制が緩やかなため、チリ市場は外資系企業にとって参入しやすく、また、投資回収期間平均2年1ヵ月という短さも魅力の1つとなっています。
飲食関係やアパレルが人気
国民の72%が「外食をする」と答えるチリでは、飲食関連のフランチャイズ企業が全体の4割を占めます。
また、ファストファッションを中心にアパレルブランドも店舗を多く、飲食についで、17%を占めます。特に最近は外資系ブランドの進出が盛んで、中南米1号店にチリを選ぶブランドもあるといいます。
ペルーのフランチャイズ市場、13億ドルに
昨年末から今年4月まで豪雨被害に見舞われたペルーは、クチンスキー政権が経済振興策を積極的に打ち出し、これまでに日本を含む17の国・地域との間に通商協定(自由貿易協定、経済連携協定等)を締結しています。日本ともEPAを締結済みで2012年に発効しました。
米外食チェーンが人気
ペルーのフランチャイズビジネスは外食産業が中心となって発展してきました。米国のケンタッキーフライドチキン(KEC)や、スターバックスコーヒー、バーガーキング、ピザハットなどが相次いで進出し、店舗数を拡大。
昨年11月時点でのフランチャイズチェーン数は、KFCが108店舗で最も多く、次いでスターバックスコーヒー86店舗、ピザハット81店舗、バーガーキング37店舗、チリーズ(ファミリーレストラン)23店舗となります。
フランチャイズ企業 | 店舗数 |
---|---|
ケンタッキーフライドチキン | 108 |
スターバックスコーヒー | 86 |
ピザハット | 81 |
バーガーキング | 37 |
チリーズ | 23 |
昨年は国内フランチャイズが外資をはじめて上回る
フランチャイザー数の推移を見ると、2012年では国内系106社、海外系162社でしたが、2016年では国内系218社、海外系216社となり、はじめて国内系が海外系を上回りました。
2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | |
---|---|---|---|---|---|
国内系 | 106社 | 125社 | 150社 | 187社 | 218社 |
海外系 | 162社 | 210社 | 212社 | 239社 | 216社 |
合計 | 268社 | 335社 | 362社 | 426社 | 434社 |
海外系を国別に見ると、米国が81社と最も多く、次いでアルゼンチン61社、スペイン16社、ブラジル9社、コロンビア7社と続きます。
2012年 | 2013年 | 2014年 | 2015年 | 2016年 | |
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米国 | 76社 | 78社 | 78社 | 86社 | 81社 |
アルゼンチン | 15社 | 56社 | 56社 | 60社 | 61社 |
スペイン | 16社 | 18社 | 18社 | 23社 | 16社 |
ブラジル | 10社 | 10社 | 10社 | 10社 | 9社 |
コロンビア | 8社 | 7社 | 7社 | 9社 | 7社 |
合計 | 162社 | 210社 | 212社 | 239社 | 216社 |