東南アジアのフランチャイズ市場②〜シンガポール、ベトナム編〜

経済発展により所得が増え、生活水準も上がってきた東南アジアでは、積極的に外食をする人口が増えた、日本を始め世界各国のフランチャイズチェーンが進出しています。

なかでも富裕層が多く、1人当たりGDPでも日本やアメリを上回るシンガポールでは、フランチャイズを規制する法律がないため、外資系企業が多く進出した日系企業は2000を超えます。業態別では外食が全体の半数以上を占めており、次いで、「小売り」「理容室」と続きます。

また、発展著しいベトナムでは、外食産業企業数は伸び続けており、2013年時点で6338社となります。さらに、現在は外資100%による法人設立が許可されているため、外資の進出も盛んで、市場の拡大加速と競争激化が予想されています。

本記事ではジェトロ公表資料をもとに、シンガポールとベトナムにおけるフランチャイズ市場の動向を詳細に見ていきます。

シンガポールのフランチャイズ市場

東京23区と同程度の国土面積であるシンガポールは、中華系(74%)、マレー系(13%)、インド系(9%)の3つの民族に大別することができます。
GDP成長率では過去3年間、2%台で推移しており、1人当たりGDPはアジアで最も高く、5万1496ドル(578万円)となります。昨年の失業率は2.1%と低く、シンガポール経済は安定的でかつ成長基調にあると言えます。

外資参入に規制がない

東南アジア随一の経済大国であるシンガポール。法人税率も低く、英語が公用語の一つとなっているため、外資系企業によるフランチャイズ事業の進出も積極的に行われています。さらにシンガポールは、地理的に戦略優位的に位置し、インフラも発達しているため、海外企業の東南アジア進出における拠点としての役割も担っています。

シンガポールでは、フランチャイズを規制する法律がないため、海外企業が参入しやすい市場と言えます。
ジェトロ資料によると、2014年、フランチャイズによって運営される店舗数は3067店舗で、ブランド数は219におよびます。

業態別では、ブランド数で外食が51.6%と最も多く、次いで小売り(30.6%)、理容室(9.6%)、教育(3.7%)と続きます。

シンガポールにおけるフランチャイズブランド数

業態別 ブランド数
外食 113
小売り 衣料・履物 40
健康食・医薬品 5
コンビニ 3
宝石・アクセサリー 10
ギフト・文具 4
ベット・ベビー用品 2
家具・家庭用品 3
67
理容 21
教育 8
その他サービス 10

(ジェトロ資料より作成)

シンガポールにおける業態別店舗数

業態別 ブランド数
外食 1296
小売り 衣料・履物 405
健康食・医薬品 121
コンビニ 113
宝石・アクセサリー 78
ギフト・文具 37
ベット・ベビー用品 33
家具・家庭用品 22
809
理容 239
教育 69
その他サービス 83

(ジェトロ資料より作成)

海外ブランドでは米国がトップ

フランチャイズブランドを国別で見ると、シンガポールが124と最も多く、次いで、アメリカ(33)、日本(11)、台湾(8)、オーストラリア(7)、イギリス(6)、マレーシア(5)、香港(4)、フランス(3)、韓国(3)、スペイン(3)、その他(12)と続きます。

国別フランチャイズブランド数

シンガポール 124
アメリカ 33
日本 11
台湾 8
オーストラリア 7
イギリス 6
マレーシア 5
香港 4
フランス 3
韓国 3
スペイン 3
その他 12

(ジェトロ資料より作成)

国別フランチャイズブランドの店舗数

シンガポール 1261
アメリカ 573
日本 128
台湾 90
オーストラリア 55
イギリス 93
マレーシア 50
香港 72
フランス 25
韓国 16
スペイン 22
その他 105

(ジェトロ資料より作成)

今後のシンガポールフランチャイズ

ジェトロによれば、これまでのシンガポールのフランチャイズビジネスは中小企業が政府の支援を受けながら事業を拡大させてきました。その結果、1980年代はほぼ100%のブランドが海外企業によるものでしたが、2010年には国内発によるフランチャイザーが200を超えました

また、シンガポールでは中間層が拡大するにつれて、ショッピングモールや大型スーパーといった大量消費に適した店舗形態が目立つようになりました。ジェトロは「人口密度が高く、駐車場も隣接するため、小売店舗にとって格好の立地となっている」と分析します。

一方、外国人規制の影響から、人材不足が深刻化しており、特に外食産業では人手不足の穴埋めのために自動調理ロボットやセルフ・オーダー・システムなどの導入が進められています。

ベトナムの外食チェーン事情

昨年度の経済成長率6%と高い水準を維持するベトナムは、インフレを抑制しつつ安定的に成長しており、2010年には中所得国となりました。一方、未成熟な投資環境、国営企業の非効率性、国内地場産業の未発達などの課題が指摘されています(外務省より)。

一人当たりGDPは2052ドル(約23万円)で、ジェトロによればベトナムでは、経済発展と所得上昇に伴い、様々な分野で消費者需要が伸びており、外食産業も同様の状況であるとされます。

伸び続ける外食産業

ベトナムにおける外食産業の売り上げは2005年以降、右肩あがりに伸び続けており、2013年は280兆ドン(約137億円)に達しました。

外食産業の売上高と成長率

売上高 成長率
2005 48.5兆ドン
2009 135.1兆ドン 41.2%
2010 183.2兆ドン 35.6%
2011 226.2兆ドン 23.5%
2012 268.2兆ドン 18.6%
2013 280.7兆ドン 4.7%

(ジェトロ資料より作成)

また、外食産業企業数は2013年時点で6388社となっており、過去5年間で1.6倍に増加しました。

ベトナムにあるレストランの多くは個人経営で、カフェやバーなどが家族・友人と会話を楽しむ場所として老若男女を問わず人気となっています。国内最大手のカフェ・チェーン「Trung Nguyen coffee」は50店舗をフランチャイズ展開しており、同ブランドのコーヒーを提供しているカフェはおよそ1,200店舗あります。

また、ファーストフードは外資系チェーンが多くを占めており、ジェトロによればロッテリア211店舗、KFC(ケンタッキー・フライドチキン)140店舗、ジョリビー59店舗、ピザハット53店舗、ドミノピザ22店舗、バーガーキング16店舗となります。

外食産業企業数

企業数
2009 4104社
2010 4468社
2011 5862社
2012 6091社
2013 6388社

(ジェトロ資料より作成)

増える日本食レストラン

近年の海外における日本食ブームを背景に、ベトナムでも「一番好きな外国料理」として日本食が挙げられるなど人気を獲得しています。

ジェトロによれば、ベトナム国内の外食店27.5万店舗の情報を掲載するウェブサイト「Foody.vn」に日本食レストランは、でハノイ市約260店、ホーチミン市約350店、ビンズオン省30店、ダナン市24店、ハイフォン市10店、ドンナイ省4店が登録されています(2015年9月時点)。

従来ベトナムでは、日本で外食店経営の経験を持たない日本人個人・企業が日本食レストランを営業しているケースが多くありましたが、2010年以降、日本の外食産業の進出が始まり、進出企業は約20社となりました(2015年10月現在)

また、フランチャイズ形式では、Toridoll社(丸亀製麺)、Yoshinoya International(吉野家)、Kyo Kiyomizu(創作割烹京きよみず)、Wondertable社(モーモーパラダイス)、Ootoya Japanese Restaurant(大戸屋)、JAPANESE BBQ RESTAURANT GYU-KAKU(牛角)などが外食市場に参入しています。