フランチャイズ経営実態調査から見えてくる本部と加盟店の関係

フランチャイズシステムの加盟店は法律上、独立性が確保されているものの、実際には本部からの制約が多いと言われます

2011年に経済産業省が行った加盟店の実態調査によると、「本部又は本部が推奨する仕入先からのみ商品を仕入れている」と回答した加盟店の割合は、コンビニエンスストアでは74.4%,コンビニエンスストア以外では64.5%にのぼることが明らかとなりました。

また加盟店に対して、本部はどのような取引相手として自分をみていると思うかを質問したところ「本部よりも弱い立場の取引相手であると見ていると思う」「本部が収益を上げるための道具としか思っていない」などの回答がコンビニエンスストアでは54.9%となりました。

現状、本部からの要求に対しては応じざるを得ない加盟店。本記事では経産省が調査した「フランチャイズ・チェーン本部との取引に関する調査報告書」をもとに、本部と加盟店の関係性を詳細に見ていきます。

本部に縛られる加盟店たち

調査は、加盟店が経営している店舗を対象に行われ、回答を得られたのはコンビニエンスストからが97.8%と大半で、それ以外の業態(酒小売店、スーパーマーケット)からは2.2%前後となりました。

本来、フランチャイズシステムでは、加盟店は本部から独立した存在ですが、実際は本部から指示・援助を受けて店舗経営するのが常となっています。本部から商標などの使用や事業に関する援助を受けるかわりに、加盟料(イニシャル・フィー)や経営指導料(ロイヤリティ)を支払います。

本部が指定する仕入れ先からのみ仕入れている74%

コンビニなどの小売業を営むフランチャイズでは、本部が指示する仕入れ先から商品を仕入れるのが一般的となります。実際、「本部又は本部が推奨する仕入先からのみ商品を仕入れている」と回答した加盟店の割合は、コンビニエンスストアで74.4%、それ以外で64.5%でした。

また「本部又は本部が推奨する仕入先以外からも商品を仕入れている」と回答した加盟店は、地元特産の地酒やおみやげ品、自治体指定のごみ袋など地域性の高い商品だったことがわかりました。

コンビニ コンビニ以外
本部又は本部が推奨する仕入先からのみ商品を仕入れている 74.4% 64.5%
本部又は本部が推奨する仕入先以外からも商品を仕入れている 25.6% 35.5%

(経済産業省公表資料より作成)

本部の経営指導なしでは事業継続できない?

本部では、加盟店に対してアドバイザーとしての役割をする経営指導員がいます。
「本部の経営指導なく事業を継続することはできない」と回答した加盟店の割合は、コンビニエンスストアで58.7%、それ以外では26.7%となり、半数以上が本部の経営指導に頼っていることがわかりました。

コンビニ コンビニ以外
本部の指導なしに経営することができない 58.7% 26.7%
本部の指導なしでも経営することができる 41.3% 73.3%

「本部の要請に応じざるを得ない」、コンビニで高い傾向

本部から仕入れ先や仕入れ数量の指定があった場合に、「応じざるを得ない」と回答した加盟店の割合は、コンビニエンスストアで46.5%、それ以外では16.7%と、コンビニで特に高い傾向にあることがわかります。

「応じざるを得ない」と回答した加盟店の多くは、その理由として、「契約上,本部に有利な条件での契約になっているから」「本部の要請に応じないと更新できないことを示唆されることがあるから」などが挙げられました。

コンビニ コンビニ以外
契約上,本部に有利な条件での契約になっているから 56.5% 40.0%
本部の要請に応じないと更新できないことを示唆されることがあるから 37.3% 40.0%

(経済産業省公表資料より作成)

実際に加盟店を営む経営者の声として、

「本部に対して店舗移転を希望しているが,本部の言う事(要請)を聞かないと受け入れないと言われる」

「再契約(契約更新)の際の要素とされる審査基準において,店舗における商品の品質管理や在庫数等の基準が定められており,その基準を達成しないと契約を更新できないため」(フランチャイズ・チェーン本部との取引に関する調査報告書より)

などの意見が聞かれました。

加盟店に一方的な不利益を与えるのは独禁法違反

独占禁止法では、本部が加盟店に対して、一方的に不利益を与えたり、加盟者のみを不当に拘束したりすることを禁じています。

募集時には十分な情報開示を

フランチャイズチェーンにおける独占禁止法上のガイドラインによると、加盟店募集の際、「(本部が)十分な情報の開示を行わず、または虚偽若しくは誇大な開示を行い、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合」、不公正な取引方法(ぎまん的顧客誘引)に該当するとされます。

「不公正な取引方法」に該当するか否かは、ロイヤリティの算出において必要な説明を行わない、中途解約する場合の違約金について十分な説明を行わないなどが判断基準に挙げられています。

加盟契約後の本部と加盟店

加盟契約後の本部の加盟店に対する取引行為については、たとえば、正当な理由なく、指定の業者とのみ取引させる行為が「優越的地位の濫用」に当たるとされます。

また、フランチャイズ契約に基づく営業手法のノウハウ提供に併せて、加盟店に対して本部が指定する業者から商品などを購入させようとする場合は、「抱き合わせ販売等」に該当する場合があります。

このほか、本部が加盟店に商品を直接供給していない場合で、加盟者が店舗で販売する商品又はサービス(役務)の価格を不当に拘束する行為は、「拘束条件付取引」に該当する場合があります。

一方、加盟店自身が各地域の実情に応じて販売価格を決めなければならない場合があることから、本部が加盟店に商品を供給している場合で、加盟店の販売価格(=再販売価格)を拘束する場合は、原則として「再販売価格の拘束」に該当すると判断されています。

1店舗経営がほとんど

加盟店の事業規模では、1店舗のみの経営が、コンビニエンスストアで66.9%、それ以外では44.4%となります。2店舗の経営は、コンビニエンスストアで20.0%、それ以外で11.1%、3店舗以上では、コンビニエンスストアで13.1%、それ以外で44.4%となりました。

コンビニの業態では多店舗経営する加盟店は少なく、一方コンビニ以外では、2店舗以上の経営を行う加盟店が多いことがわかります。

コンビニ コンビニ以外
1店舗 66.9% 44.4%
2店舗 20.0% 11.1%
3店舗以上 13.1% 44.4%

(経済産業省公表資料より作成)

フランチャイズのなかでも人気のコンビニ経営。しかし、その実態は、他よりも本部から受ける制約が多いなど、独自色を出すのが難しい状況であることがわかります。