フランチャイズの成功率・失敗率はどれくらい?
フランチャイズチェーン(FC)への加盟を検討している人の中には、「本当にFCに加入すれば成功できるの?」と不安に思っている方もおられるのではないでしょうか。実際、FC加盟店のビジネスの成功率や失敗率を知りたい方は少なくありません。
そこで今回の記事では、FC加盟店の成功率や失敗率などの内容を紹介するとともに、成功するためのポイント、失敗を回避するための方法、成功しやすい業種、FC本部を選ぶポイント、などを解説していきます。
FC加盟店に興味のある方、経営の内容や成功のポイントを把握したい方は参考にしてみてください。
目次
FCビジネスの現状
最初にフランチャイズチェーンやその店舗数、それらの開廃業率、成功率などを確認していきましょう。
FCの数とその店舗数
(一社)日本フランチャイズチェーン協会が公表しているの2020年度「JFAフランチャイズチェーン統計調査」の報告によると、2020年度のチェーン数とその店舗数は下表の通りです。
業種 | チェーン数 | 店舗数* | ||
---|---|---|---|---|
チェーン数 | 増減 | 店舗数 | 増減 | |
小売業 | 322 | ▲6 | 108,256 | ▲1,964 |
外食産業 | 588 | ▲9 | 52,777 | ▲4,210 |
サービス業 | 488 | ▲1 | 92,984 | ▲2,678 |
合計 | 1,308 | ▲16 | 254,017 | ▲8,852 |
*店舗数は直営店+加盟店の合計
本調査の総括には、
- ・日本国内のフランチャイズチェーン数は1,308チェーンで、昨年より16チェーンが減少した(△1.2%)
- ・国内の総店舗数(直営店と加盟店の合計)は25万4,017店舗で、昨年より8,852店舗の減少(△3.4%)となった(昨年度に続く減少)
と説明されています。2020年度は新型コロナの感染拡大の影響を受けた最初の年で個人消費が▲6.0%落ち込み、それがFCビジネスにも少なからぬ打撃を与えたことが上表から窺えます。
なお、業績においては、巣ごもり需要など、コロナ禍で生じた新生活様式に対応できた企業などは良好な業績を確保していますが、外食業などでは業績を大きく落とした企業が多いです。
店舗数の増減について見ると、2020年度は▲8,852、2019年度が▲1,687、2018年度が+1,066、2017年度が+381、2016年度が+2,117となっています。
この直近5年のFCの状況としては、店舗数の伸びが頭打ちとなり、やや減少傾向が見られ始めた矢先に新型コロナによる打撃で2020年度が大きくマイナスになった格好と言えるでしょう。
これらの数値には開業店と廃業店を含むことから2019年からは廃業店数が開業店数を上回る状況になっていることが分かります。
FCの開業率・廃業率
FCに関する開業率や廃業率のデータとしては以下のような資料が挙げられるでしょう。
平成15年2月3日に経済産業省から「我が国のフランチャイズの現状」という資料が公表されており、P8に「フランチャイズ加盟店における開業率・廃業率」が確認できます。その内容は下表の通りです。
FC加盟店 (単位:%)
小売業 | 外食業 | サービス業 | FC全体 | |
---|---|---|---|---|
開業率 | 6.7 | 7.2 | 14.1 | 8.2 |
廃業率 | 3.2 | 4.5 | 7.1 | 4.4 |
全産業 (単位:%)
小売業 | 外食業 | サービス業 | 全産業 | |
---|---|---|---|---|
開業率 | 4.2 | 5.0 | 4.1 | 4.5 |
廃業率 | 8.5 | 9.5 | 5.6 | 7.5 |
FC加盟店と全産業とを比較すると、FCの方が開業率は高く、廃業率も概ね低い結果となっています。
この開業率・廃業率のデータは1998年~1999年の店舗情報をもとに算出されていることから、その当時のFCの状況を確認する必要がありますが、チェーン数、店舗数および売上高も右肩上がりの状況でした。
従って、全体と比較してFC事業の方が好調であったことから、その開業率は高く廃業率が低くなっている点が理解できます。
また、平成20年3月に経済産業省が公表した「フランチャイズ・チェーン事業経営実態調査報告書」でも開廃業の状況が確認できます。この調査は1,200のFC本部と2,542のFC加盟事業者にアンケート調査を行い20.1%と25.6%の有効回答率を得た結果です。
全体(小売業、外食業、サービス業)の推移(平均値) 単位:店
年度内出店数 | 年度内閉店数 | 年度末店舗数 | |||||||
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
年次 | 2004 | 2005 | 2006 | 2004 | 2005 | 2006 | 2004 | 2005 | 2006 |
総店舗数 | 31.9 | 33.8 | 31.6 | 25.7 | 26.1 | 26.1 | 431.7 | 429.2 | 425.8 |
直営店 | 9.6 | 11.6 | 9.5 | 11.0 | 10.8 | 11.3 | 163.2 | 161.4 | 159.1 |
加盟店 | 23.9 | 23.4 | 23.1 | 12.8 | 14.2 | 13.2 | 276.3 | 275.4 | 275.2 |
加盟店の2,542店に調査票が発送され、そのうち回答が得られたのが25.6%であることから650店が回答実数であると考えられます。この数字から2004年度内の開業率は23.9店÷650店×100%=3.68%、2005年度が3.60%、2006年度が3.55%、程度と推察することが可能です。
閉店率(廃業率)も同様に考えると、2004年度は12.8店÷650店×100%=1.97%、2005年度が2.18%、2006年度が2.03%、程度と推察されます。このデータから判断すると、開業率が閉店率を上回っており、かつ閉店する割合がかなり小さいことが理解できるはずです。
これに対して2008年度版中小企業白書の附属統計資料に掲載されている企業(個人企業+会社)の2004年~2006年の開業率は5.1%、廃業率が6.2%となっています。
単純に比較することはできませんが、上記のFCの開業率および閉店率は白書データよりも小さいです。従って、国内産業全体で見ると、当時のFC業界では開業も廃業もその割合は全体より小さいと考えられますが、失敗という観点からすると、FCのほうが失敗の確率は低いと言えるでしょう。
また、ニッセイ基礎研REPORT 2005.3の「フランチャイズ加盟店の経営実態と成功条件」では、FCの開業率・廃業率について以下のように発表されています。
「現在の株式会社日本政策金融公庫の総合研究所が2004年に公表した「新規開業企業を対象とするパネル調査結果(2004)」によると、2001年の開業企業が2003年までに廃業した割合は、フランチャイズ非加盟企業が7.8%で、フランチャイズ加盟企業は14.4%になっていた」とのことです。
また、同論説では、日本フランチャイズチェーン協会のホームページに掲載されている各チェーンの開示資料から、FC加盟店の廃業率が算出されています。そのデータと一般事業者と比較した資料の一部が下表の内容です。
廃業率(%)
コンビニ | 小売 | サービス | 飲食 | |
---|---|---|---|---|
FC加盟店 | 5.76 | 9.60 | 7.44 | 7.96 |
一般(1~29人) | 5.88 | 5.88 | 6.46 | 4.26 |
この調査分析では、FC加盟店の廃業率が一般事業者よりも高くなっており、FC加盟店の経営が厳しくなっていることが分かります。
以上の通り上記の3つの調査のうち前の2つと最後の1つでは異なる内容の結果となりました。前2つの調査からは、概ねFC加盟店のほうが全産業よりも開廃業率において良好な傾向が見られましたが、最後の1つはその逆です。
つまり、時期や調査方法により結果が逆転することもある、という点が確認できます。このように参考となる開廃業率のデータはあるものの、異なる結果があったり古い資料であったりするため現状のFC業界を正確に把握するのは困難です。
また、最近のFC業界全体や特定の業種のデータがあっても、実際に自分が知りたい業種やFCのデータと傾向が異なることも否定できません。そのため店舗数、開廃業店舗の数、開廃業率については、自分が知りたい業種や対象のFC本部の内容を確認する必要があります。
FC加盟店の成功率・失敗率
FC加盟店の成功率や失敗率の定義はないですが、一般的には開業後5年程度存続している場合を成功とし、存続していない場合を失敗として、その存続率を成否の目安にしているケースが多いです。
ただし、FC加盟店の成功率・失敗率や存続率などについて、客観的な調査分析から正確なデータを提供している情報源を探すのは容易ではありません。FC関連の情報サイトでは、FC加盟店の3~5年後の存続率を60%~70%と示しているケースがいくつか見られます。
こうしたデータの算出についての説明がほとんどなく、根拠情報が乏しいためFC業界の状況を正しく反映していると判断するのは困難です。従って、自分で特定のFC業種や本部企業について調べる必要があります。
たとえば、客観的な調査分析が実施された場合でも、コンビニ、小売業、サービス業や飲食業など各業界で差異が生じるほか、同じ業界内のFC本部ごとに差が出る可能性が高いです。つまり、同じ業種でもFC本部が異なれば存続率等に大きな差が生じることが十分に考えられます。
そのため重要な点は自分が経営したいFC本部の加盟店情報を自分で正確に把握することです。たとえば、コンビニであれば、希望のFC本部を複数挙げて各々に開業率・廃業率・存続率などを調べていきます。
これらのデータをFC本部が一般に公表しているケースは少ないですが、加盟の相談会などでデータを提供してくれるはずです。そして、そのデータを比較して開業率・廃業率・存続率の良い本部を選ぶことが重要になります。
もしこのデータの提供を拒む、もしくは信頼性の低いデータを提供する本部なら、加盟希望者としては選定の対象から外す検討も必要です。なお、存続率に自信のあるFC本部では次のように積極的にデータを公表しています。
ある買取専門店FC本部の2010年から2021年(404店)までの店舗継続率は93.2%とのことです。また、あるカレーライスのFC本部の場合、開業3年以内に廃業している加盟店の割合は2.4%、開業10年以内での廃業率は7.9%となっており、約9割の加盟店が10年間経営を持続しています。
このようにFC本部の中には極めて高い数値を達成しているところもありますが、そうでないケースもあるため確認する必要があります。
なお、FC以外の一般事業企業の存続率についてのデータとしては以下の2つが参考になるでしょう。
1つは日本政策金融公庫 総合研究所が2016年12月28日に公表している「新規開業パネル調査」の「存続廃業状況~2015年末までに10.2%が廃業~」です。
そのデータによると、「2011年末に存続していた企業のうち、2015年末で10.2%の企業が廃業している」となっており、開業5年後の存続率は89.2%、廃業率が10.2%になります。
また、2019年度版中小企業白書(第2部「中小企業のライフサイクル」の「起業後の企業生存率」(P109)によると、開業5年後の存続率は81.7%です。
FC加盟店の成功・失敗にかかわる重要ポイント
FC加盟店としての成功や失敗にかかわる重要点を確認していきましょう。
FC加盟店の成功に必要な取組
以下の5つのポイントなどが挙げられます。
1)FC本部のビジネスモデルの再現やノウハウの実践
FC加盟店が成功するためには、その加盟するFCのビジネスモデルを正確に再現し、またそのビジネスに必要なノウハウを適切に実施することが不可欠です。
FC展開して成功している本部企業には優れたFCビジネスのビジネスモデルがあり、それを実行するためのノウハウが加盟店に契約を通じて提供されます。
特に加盟店の存続率が高く店舗数が増大し続けているようなFC本部には加盟店が成功しやすいビジネスモデルが確立されている可能性が高いため、それを加盟店が正確に実行できれば自ずと成功する確率が高くなるわけです。
ビジネスモデルは、その企業のビジネスの仕組みであり、そのビジネスが成り立つための骨格や基盤であるため、それが儲かる内容になっていれば再現するだけで儲かる商売が可能となります。
そのため加盟店は本部のビジネスモデルの内容をしっかり把握して再現する努力が不可欠です。特にビジネスモデルを業務として実施していくためのノウハウを身につけ実行することが求められます。
加盟店にはそのノウハウが教授され、実施できるように指導・支援が提供されるため、それらを上手く活用して実行すれば成功確率は上昇していくでしょう。
2)FC本部のマニュアルを実際の業務で標準化
FCのノウハウを自店(自社)の標準的な業務として実施できることが加盟者としての成功に不可欠です。そのため本部から指導されたことやマニュアルに書いてあることを実際の店舗オペレーションの中で当たり前に実行できなければなりません。
各FC本部によって違いはありますが、通常本部から一定の研修等が行われ、その後定期的に経営・業務のサポートが行われます。そうした中で本部から加盟店はFCのノウハウを吸収していくことになりますが、短期間でマニュアル等の内容を完全に習得するのは容易ではありません。
そのため開業後から教わった内容やマニュアルの内容を業務で定着させる持続的な取組が不可欠になります。また、その定着が不完全にならないようするための経営者のマネジメントも重要です。
各業務のポイントをリストアップしてそれが守られているか、合格水準に達しているか、などを確認し不十分な場合には改善していく管理・指導などが求められます。
3)FC本部との良好な関係
通常、FC本部からは開業後も継続的に経営支援が実施されるため、加盟店は本部との関係を良好に維持して店舗運営に役立てることが重要になります。
本部からの開業後の指導や支援は、業界情報・ニーズ動向等の情報提供、店舗オペレーションのチェック・改善、新商品の紹介、プロモーションの提案や人的資源管理・財務管理等のマネジメント支援、など様々です。
こうした支援内容について、1人の経営者が対応していくのは容易でないため、加盟店にとっては大きな助けになり、事業の成功に直結します。そのためこうした有本部からの有益な指導・支援を適切に確保するためには本部との良好な関係が不可欠になるのです。
その本部との関係の構築と維持は、通常本部が派遣する担当者を介して実施していくことになるため、本部担当者とのコミュニケーションを良好することが重要になります。
担当者からの情報提供や指示などを確実に把握して実行するとともに、経営や店舗運営に関する様々な情報や問題点などを伝えていくことも必要です。
単に担当者から言われたことを実施するだけでなく、マニュアル内容が実情に合わない点の改善を求めたり、新たなニーズに対応する取組を求めたり、といった相談・提案も求められます。
加盟店のビジネス環境は、本部の想定外になったり、急激に変化したりするため、本部のノウハウやマニュアルの内容が各加盟店の状況に合致しない場合は部分的な修正・追加は必要です。
そうした各加盟店がフレキシブルな対応を実施するためには本部との良好な関係が必要であり、担当者との適切なコミュニケーションを図ることが欠かせません。
4)最適なFC本部の選択
FC加盟店の成功はその所属するFC本部のビジネスモデルやサポート体制のあり方に大きく左右されるため、どのFC本部を選ぶかが極めて重要になります。
たとえば、そのFCの経営方針に共感できる、儲かるビジネスモデルを持っている、加盟店にノウハウを上手く吸収させ成長させている、といったFC本部を選ぶことができれば、そのFC加盟店の成功確率は高くなるはずです。なお、FC本部の選定方法については後述します。
5)1人の経営者としての自覚と実践
FC本部のノウハウを着実に実行し支援を有効に活用して店舗運営することは重要ですが、本部任せの経営をするのではなく1人の独立した経営者としての能力を蓄え経営に従事する姿勢が必要です。
FC事業であれ他の事業であれ、ビジネスを行い成功するには経営に関する最低限の知識やノウハウを保有しなければなりません。具体的には、経営戦略、マーケティング、人的資源管理・財務管理等のマネジメント、経営資源の確保、業務オペレーション、などです。
これらについてはFC本部から研修や指導などにより学習することになりますが、限られた短い期間ですべてを修得することは容易ではありません。通常、研修等ではFC業務に関する部分を主な対象とするため、それ以外の部分は加盟店経営者が独自に学習を継続する必要があります。
しかし、それを怠ると本部の指示やマニュアル以外のことには経営の目が届かなくなり、新しいビジネスチャンスを逃したり、問題を見過ごしたりする可能性を高めてしまうのです。
加えて本部のノウハウを適切に運用できない場合は、問題を多発させることになりかねません。特に費用、業績や在庫等に関する計数管理、人材確保や従業員の勤怠等に関する人材管理は重要であり、本部の指導はもとよりその運用に関する基本知識を持ち業務に活用しないと問題が生じやすくなります。
FC本部の業務オペレーションの実行だけでなく、企業全体を運営・管理できる経営知識を保有して経営することが成功に繋がるという意識を持ち経営に臨みましょう。
FC加盟店の失敗に繋がる取組
ここではFC加盟店のどのような行動や取組が事業の失敗に繋がるかを確認していきましょう。
まず、FC加盟店がそのビジネスで失敗する主な理由は、先に説明した成功のポイントを実施しないことが第一に挙げられるでしょう。たとえば、加盟店が本部のマニュアルや指示を守らず、勝手な業務を行うといった行動です。
また、開業後も本部担当者等から様々なサポートが提供されますが、それを活用しなかったり業務に定着させなかったりする場合は、問題が起こりやすくなり業績を低迷させることになりかねません。
しかし、FC本部の指導やマニュアルを的確に実行しても、そのFCの加盟店ビジネスに根本的な問題があれば、その加盟店の事業は失敗しやすくなります。つまり、FC加盟店のビジネスモデルに欠陥があるFC本部を選ぶと、加盟店の失敗確率は自ずと高くなるでしょう。
そのためFC本部だけでなく加盟店も儲かり、成長できるようFCを選ばないと失敗するということを留意しておかねばなりません。
ほかにも1人の事業者として必要な経営知識や能力を蓄えず、本部に依存した経営を行っていると、経営環境の変化が激しい現代のビジネスで生き残っていくのが困難になる点も忘れないようにしましょう。
ほかにも以下のような点も失敗に繋がりやすいです。
1)業務内容の過小評価
FC加盟店の業務内容を簡単なものだと過小評価していると事業の失敗確率を高めてしまいます。
FC加盟店の経営はその分野の素人でも短期間の指導等により素早く業務を実践できるというメリットがありますが、そのFCの業種や業務内容により一定レベルの業務品質を実現するのに想定以上の時間がかかるケースがあるため注意が必要です。
加盟希望者がFC本部の説明会や相談会などでそのビジネスモデルや業務内容などの説明を受けますが、その際にその分野の未経験者であっても研修や指導により業務を遂行することは難しくないとよく説明されています。
確かにFC本部の加入者に対する一定の指導プログラムは用意されていますが、その内容の量と質については各FC本部で異なります。その指導プログラムが適切で充実したものであれば、未経験者でも短期間で一定レベル以上の店舗運営も可能となりますが、不十分な指導内容であれば問題が生じやすくなるのです。
また、加盟前に実際の店舗などで業務体験をする機会ない場合、加盟希望者が考えていた業務と実際とが大きく乖離するケースもあります。たとえば、加入希望者が相談会や研修でFC業務の説明を受けて、その時に業務について対応可能と判断しても、店舗で実際に業務を行うとその困難さに戸惑うケースが少なくないのです。
もちろん開業当初は業務に多少つまずいても時間とともに慣れて業務品質を向上させていければ問題はないですが、時間がかかり過ぎるケースもあるため加入前に業務の適性を的確に判断しなければなりません。
2)FC本部のビジネスモデルの限界
加盟を検討しているFC本部のビジネスモデルが限界に近づいている場合、FCの業績が急激に悪化して加盟店も失速してしまうケースもあります。加盟前において対象とするFCの業績が好調であっても急に業績が落ち始めそのビジネスモデルの成長性が困難になることも十分にあり得ることです。
科学技術の発展、人々の生活様式の変化や自然災害の発生など、現代社会の変化とともに企業の経営環境は激しく動いているため、現時点で成功しているビジネスモデルでも急激に業績を落とし衰退していくことは珍しくありません。
こうしたことはどのようなビジネスでも起こり得ることで、FCビジネスにおいても同様です。たとえば、加盟前にはそのFCビジネスが飛ぶ鳥を落とす勢いの成長を遂げていたとしてもそのビジネスモデルの代替となる商品・サービスや技術などが登場すれば、たちまち競争力を失い市場から退出を余儀なくされることもあります。
加盟時点の当初はライバル業態やライバル店が少なく、業績が好調だったものが、数年後にはライバルが多くなり儲けの減少とともに成長が見込めなくなるといったケースは少なくないのです。
そのため加盟前には希望するFC本部のビジネスモデルについて、その将来性に対する評価が必要になります。ライバルとなる候補が多いのか、今後どの程度の期間まで競争力を維持できそうか、近い将来にライバルや代替品・代替技術の出現はあり得るか、といった点についての評価が必要です。
また、業績が落ちた時の脱退を含む撤退の容易さなども把握しておくことが望まれます。
3)加盟店に不利な契約内容
FC加盟店のビジネスを行うには本部と加盟希望者との間でその加盟店業務に関する契約書を交わすことになりますが、その契約において不利な条件を確認しないまま締結すると、業務に支障が生じ失敗する確率を高めてしまいます。
契約では様々な内容について取り決められますが、問題になりやすい点としては、「ロイヤリティの金額」と「テリトリー権の有無」などです。
たとえば、同じ業種・業態やそのライバル店などのロイヤリティの相場に比べて契約書に提示された金額が高すぎる、といったケースが見受けられます。説明会などではそのロイヤリティが妥当な価格であると言われて契約したものの、加盟後に調べたら相場以上に高かった、というケースがあるのです。
ロイヤリティが高いと加盟店の利益は低くなり当然店舗運営が苦しくなりやすく事業の失敗確率を高めてしまいます。
また、FC本部の中には加盟店に一定地域の営業独占権を与えるというテリトリー制を設けているケースが少なくないですが、契約書の中でその点に触れていないケースは危険です。テリトリー権の設定がない場合、本部の判断で自店の地域内に加盟店がどんどん増える可能性があります。
テリトリーの制限がない場合、ライバルFCの店舗ではなく、同じFCの加盟店同士による競争が激しくなり加盟店の経営が厳しくなってしまうのです。
加盟店の経営の安定化や成長を重視しないで、加盟店を増やすことだけに注力するFC本部ではこうした加盟店にとって不利となる条件の契約を提示するケースがあるため注意しなくてはなりません。
4)収益や投資費用の見積りの甘さ
開業前の売上、費用や投資額等に関する見込みが甘かったために開業当初から事業収益が赤字となって、そこから黒字に転換できず短い期間で廃業に至るケースは少なくないです。
FC本部から開業した場合の投資額や収益の数値が提示されますが、通常ビジネスとして成り立つだけの年収や月収が示されます。それらの数値は一定の条件を根拠として算出されますが、それはあくまで予想であり、条件が異なればその内容も異なってくるものです。
また、そうした性質の予想収益は一般的には保証されるケースはほとんどありません(稀に一定額の売上保証が提示される場合がある)。つまり、「ある条件下で上手くいったらこれくらい稼げますよ」という内容の数値であり、その条件が自分の店舗に合致しないことが十分にあり得えます。
FC本部の説明を鵜呑みにして開業したものの、売上は伸びず、予想以上に費用が嵩む、という事態になるケースは少なくないのです。そのため本部の収支計画を加盟希望者が開業前に何らかの方法でその内容や数値を適切に評価しないと、開業後にはこの見込み違いによる経営リスクに直面しやすくなります。
収支計画を作る、収支を予想する、といった作業は経営に必要な基本能力であるため、開業前には勉強し修得しておくことが望ましいですが、困難な場合は第三者(経営支援機関等)の助けを借りることも必要です。
FC加盟店ビジネスで成功しやすい業種
FC加盟店のビジネスで成功するには、成長性や将来性が期待できる業種のFCを選ぶことが重要です。選定基準はいくつか考えられますが、ここでは加盟店数と成長性の点から業種を挙げてみましょう。
FCの店舗数による選考方法
店舗数が多い、店舗数の推移が増大傾向にある、という状態はそのFCが成長している1つの根拠になり得ます。たとえば、店舗数の多いFC業種を調べてその業界について考察して選ぶといった方法です。
たとえば、(一社)日本フランチャイズチェーン協会が発表している「2020年度フランチャイズチェーン統計調査」(P5)から、FC業界での店舗数の多い業種を5つ挙げると下表のような結果になります。そして、各業界についての状況を確認していくのです。
順位 | 業種 | 店舗数 |
---|---|---|
1位 | コンビニエンスストア | 57,999 |
2位 | 学習塾・カルチャースクール | 32,772 |
3位 | その他サービス | 23,669 |
4位 | 医薬品・書籍・スポーツ用品・中古品等 | 20,205 |
5位 | リース・レンタルサービス | 12,047 |
1位のコンビニは店舗数では圧倒的に多い業種(業態)です。コンビニ業界は1980年代前半から成長が顕著となり、その後半に1万店を超えて以来2015年頃まで右肩上がりの増加を持続してきました。
現在では5万店を超える人気のFC業種であり、それだけ成功しているFC加盟店の存在が窺えます。ただし、2016年あたりから店舗数は伸び悩みが見られ、FC本部としては店舗数の拡大による成長から既存店舗の収益を向上させる営業方針へ移行するという変化が見られるようになりました。
2位の学習塾・カルチャースクールには様々なスクール事業が含まれますが、カテゴリー名の通り大別すると「学習塾」関連と「カルチャースクール」関連になります。「学習塾」では受験対策目的(進学塾)と補修目的のタイプ(補習塾)に分かれますが、両方に対応するスクールも多いです。
なお、指導する形態には個別指導と集団指導の形態があり、最近ではAIシステムを活用した塾なども登場しています。
事業所数の推移を見ると、少子高齢化を反映して2013年以降減少が見られるようになりました。ただし、個人経営の事業所の減少が大きい一方、会社の事業所には拡大も見られます。
カルチャースクールでは、英会話などの外国語会話の教室が多いです。他にはパソコン、ダンス、料理、などのジャンルの教室を展開するFCも見られます。
3位のその他サービスには、職業紹介、家事支援サービス、マッサージ、介護サービス、ペット関連サービス、冠婚葬祭業、保育所、運送業、情報サービス、などが含まれます。
この中で特に多い業種は介護サービスです。日本では人口割合で4人に1人が65歳以上なるという高齢社会が目の前に迫ってきており、公的介護保険が適用される介護サービス市場の成長はさらに期待できるはずです。ただし、国の介護保険制度の変化に収益が大きく左右される点には注意が求められます。
また、家事代行などの家事支援サービスを提供するFCも多いです。女性の有職率の上昇に伴い家事支援のニーズは増加しており、今後の店舗数の増加が見込まれます。
4位の医薬品・書籍・スポーツ用品・中古品等には、薬局、化粧品、書籍、文具、印章店、リユース、スポーツ用品店、カメラ店、時計店、など幅広い業種が含まれます。
店舗数の多い業種では、ドラッグストアチェーンやリサイクルショップなどが代表的です。ただし、前者の場合は店舗規模の大きなチェーン店のケースが多く、そのため直営店が圧倒的に多くなっています。
リサイクルショップ関連では、以前は金券ショップが人気を集めていましたが、最近では貴金属・時計・バッグ等の買取のFCなどが多くなり注目され始めました。
メルカリなどの個人間売買を仲介するプラットフォームの登場などにより、買取店を気軽に利用する雰囲気が生まれ消費者の利用が進んでいます。そのためリサイクル関連の店舗は今後も増加が見込まれるでしょう。
5位のリース・レンタルサービスは以前から利用されてきたサービスですが、消費者の価値観が「所有」から「利用」にシフトしつつあるため、事業者向け以上に個人向サービスの利用の増大が期待されます。
また、先ほどの買取販売とレンタルを同時に行う業態なども多く見られるようになりました。
FCの売上高の推移に基づく選考方法
売上高の増加傾向が維持されるほどその企業の成長性は高いと判断されることから、FC本部の選定においてこの考え方を活用することも有効です。
たとえば、(一社)日本フランチャイズチェーン協会の統計調査をもとに2016年から2020年における業種別の売上高の対前年比をまとめる(上位のみ)と下表のようになります。
*100%を超える場合にその数値を表に記入し、100%以下の場合は「―」を記入
業種 | 2020年 | 2019年 | 2018年 | 2017年 | 2016年 |
---|---|---|---|---|---|
コンビニ | ― | 100.6 | 102.2 | 101.8 | 103.2 |
各種総合小売 | 109.8 | 108.2 | 103.8 | 104.7 | 101.9 |
衣服・靴・身の回り品小売 | 101.2 | 115.1 | 115.2 | ― | 102.0 |
自動車・自転車関係小売 | 103.6 | 104.2 | 101.8 | 103.6 | 102.7 |
医薬品・書籍・スポーツ用品・中古品等 | 102.3 | 109.5 | 101.8 | 102.6 | 103.1 |
ハンバーガー | 105.8 | 103.4 | 104.2 | 108.7 | 110.4 |
カレー・牛丼・各種丼物 | ― | 107.9 | 103.6 | 100.2 | 101.5 |
アイスクリーム | ― | 100.2 | 101.6 | 100.5 | 105.1 |
コーヒーショップ | ― | 104.1 | 110.2 | 101.4 | 107.7 |
レジャーサービス・ホテル | ― | 101.6 | 101.9 | 102.3 | 105.7 |
自動車整備 | ― | 101.3 | 104.4 | 100.4 | 104.8 |
学習塾・カルチャースクール | ― | 100.7 | 102.3 | 101.0 | 100.1 |
100%超の数字を超える回数が多いほど成長度合が高いと考えられるため、上位の業種ほど選考対象として有望と言えるでしょう。
●全5回の業種
- 各種総合小売
- 自動車・自転車関係小売
- 医薬品・書籍・スポーツ用品・中古品等
- ハンバーガー
●4回の業種
- コンビニ
- 衣服・靴・身の回り品小売
- カレー・牛丼・各種丼物
- アイスクリーム
- コーヒーショップ
- レジャーサービス・ホテル
- 自動車整備
- 学習塾・カルチャースクール
同協会の直近5年のデータで見た売上高から考えると、上記の業種の成長性が高いと評価できます。さらに各業種における最新データを加味すれば、より成功に繋がる成長性の高い業種を判断しやすくなるでしょう。
もちろん数値情報だけでなく、各業界内の商品・サービスの動向や新技術等の登場の可能性、消費者の価値観の変化、関連する法制度の動向、国内外の社会情勢(紛争、パンデミックや自然保護等の状況)などの影響する情報を加味することも重要です。
なお、2020年度の調査から新型コロナの影響が出始め、飲食・宿泊・サービスなどの分野で大きな売上減少が見られたため、今後も感染拡大が収束しないうちはその影響を考慮した評価が求められます。
FC本部を選ぶポイント
最後にFC本部を選ぶ上で特に重要な点をまとめておきましょう。
本部の経営方針・経営姿勢
FC本部の事業内容やその取組み方、加盟店の扱い方、顧客や社会に対する接し方、などの経営方針やその取組姿勢を確認し評価する必要があります。
たとえば、FC本部Aの経営方針が「加盟店を繁栄させるサポートに注力して本部を含むFC全体の成長を図る」で、FC本部Bが「加盟店の経営はその店舗経営者に任せて本部は加盟店の増加による収益拡大を目指す」とした場合、B本部よりA本部に加盟した方がその加盟店は成功に近づきやすくなるでしょう。
加盟店を単なる本部企業が発展するための都合の良い駒と考え、十分なサポートを提供しない本部のFCに加盟するとその店舗は失敗する可能性を高めてしまいます。
また、あるFC本部が利益第一主義で顧客や社会への配慮を欠いた営業を行う場合、その経営姿勢が社会に徐々に伝わり顧客が離れていく可能性が高いです。そのようなFC本部の加盟店になれば、その加盟店も業績を落としていき閉店に追い込まれる確率は上昇するでしょう。
本部企業の経営に対する取組み方が加盟店の発展に大きく影響することに留意して本部企業を選びましょう。
サポートの質や契約条件の内容
ロイヤリティの高さやテリトリー制の扱いなど適正な契約条件を提示したり、加盟店の経営維持や成長に必要なサポートを提供したりするFC本部を選ぶことも重要です。
その分野での事業経験がない者が事業を始めるにはそのためのノウハウが必要となることから、FC本部の指導・支援といったサポートが欠かせません。そのため本部はその対価としてロイヤリティ等を徴収することになりますが、高すぎると加盟店の経営を圧迫することになります。
このサポートの内容(質・量・提供期間等)とロイヤリティの金額のバランスが適正であることが加盟店にとって望ましい状態です。サポートとロイヤリティの内容については、同じ分野の他のFC本部と比較した評価が求められます。
また、テリトリー権、多店舗展開の可能性や競業避止義務など本部との加盟に関する契約を適正な内容にしているFCを選ぶことも重要です。
テリトリー権が未設定の場合は、対象エリア内で同じFCの加盟店が乱立して共倒れになる恐れが生じます。多店舗展開が不可の場合、自店の成長が制約されることになりかねません。
競業避止義務とは、加盟店にその所属するFC本部と同じか類似の事業を行うことを制限させる義務のことで、加盟店からのFCノウハウの流出を防止するために設定されます。それは結果的に加盟店を守ることにもなるため一定程度は必要な契約事項と言えるでしょう。
このように契約において、FC本部と加盟店の双方にとって適正な契約を提示する本部を選ぶことが重要です。
本部の信頼性と成長性
FC本部企業としての信頼性と成長性の高いFCに加盟することが成功には欠かせません。この信頼性とは、たとえば本部企業が加盟希望者に真実の情報を誠実に提供するといった姿勢のことです。
具体的には、加盟希望者に対して、業績、店舗の増減数(開業店・廃業店の数 等)、平均営業年数、営業の自由度、などを包み隠さずに情報提供しているか、といった点になります。
業績が悪く、店舗数が減少している場合、FCとしての魅力が低下していることを明示することになるため、説明会などで都合の悪い情報を隠すFCがいないとも限らないため注意が必要です。
また、いくら誠実なFC本部であっても事業としての成長が見込めにくい場合、選ぶと失敗確率を高めてしまいます。店舗数、売上高・営業利益率の推移や定性情報など、いくつかの指標をもとに成長性も評価して選びましょう。
加盟店の収益性
同じFCの業種の加盟店の収益性を比較して本部を選ぶことも重要です。つまり、FCの同じ業種内の本部の収益性のほかに、その所属する加盟店の収益性を比較して、それが良好なFCを選ぶということになります。
加盟店の収益性を評価する項目としては、加盟店の平均営業利益率、「売上/人」や「売上/坪」等での生産性、投資回収期間(初期投資額を回収できる期間)、などの指標になります。
営業利益率が高いほどそのFCビジネスは儲かると言えます。「売上/人」などは生産性を示す指標であり、数値が高いほど効率的な店舗運営が可能で利益の増大に繋がりやすいです。投資回収期間が短いほどそのFCビジネスは効率的で投資額の回収速度が速いと言えます。
これらの指標が良いほど店舗の収益性は良くなり成功に繋がりやすいため、それらが良好であるFCを選びましょう。
まとめ
FC加盟店の近年における成功率・失敗率に関する客観性の高いデータを探すのは困難であるため、個々のFC本部に加盟店の持続年数(存続率)や廃業店数の推移などを確認する必要があります。
そして、それらの数値が良好であるFCを選ぶことが加盟店としての成功に繋がることを理解しておくことが重要です。また、そうしたデータ以外にも経営姿勢・サポート内容・契約内容・信頼性・成長性などの評価の良い本部を検討することも成功には欠かせません。
FC加盟店のビジネスは成功しやすいと言われることもありますが、成功・失敗にかかわる点を理解し、加盟の検討や店舗経営に取り組むことが大切です。