フランチャイズにおける加盟金とは何?

フランチャイズで開業しようとした場合に、まず調べなければならないものが加盟金です。

多くのフランチャイズでは、加入の際に加盟金を徴取しています。事業の開始前には、開業準備のための様々な費用が見込まれます。中でもフランチャイズ加盟金は、開業費用に上乗せされて加入者の負担となることから、フランチャイズで開業を目指す際に気になる方もいるのではないでしょうか。

この記事では、フランチャイズ加盟金の意味や加盟金にかかる注意点、会計処理などを解説するとともに、フランチャイズにおける加盟金の実例について紹介しています。フランチャイズ事業に関心がある方は、ぜひ参考にしてください。

フランチャイズの加盟金とは

フランチャイズの加盟金とは、フランチャイズに加入するために、加入者が支払う金銭をいいます。加盟金は、フランチャイズに加入するために払うものであることから、遅くとも加入する時点で払い込む必要があります。

フランチャイズに加入すると、フランチャイズ本部から、以下のように様々な優遇措置を受けることができます。

①フランチャイズの屋号・名称を利用できる

フランチャイズ加盟店は、フランチャイズの屋号・名称をそのまま加盟店の屋号・名称として利用できます。例えば、コンビニフランチャイズのセブンイレブンやファミリーマートに加入すれば、セブンイレブンやファミリーマートを店舗名称にすることができます。

一方、個人でコンビニを始めるとすると、店舗の屋号は世間に周知されていない名称を使うことになり、一般消費者の信頼度が格段に劣ってしまいます。

②フランチャイズの商標・ブランドを利用できる

加盟店は、フランチャイズのロゴマークなどの商標を利用できます。また、フランチャイズで培ってきたブランド力を活用することができます。有名大手のフランチャイズが手掛けている商品は、その安全性や信頼性が知れ渡っているため、一般消費者は安心して購入することができます。

③フランチャイズの持つ経営ノウハウを利用できる

フランチャイズ本部は、それぞれの業種内容に応じた経営上のノウハウを豊富に持っています。フランチャイズに加入すれば、加盟店は、それらの経営ノウハウを利用することができます。

例えば、フランチャイズに加入せずに個人でコンビニを始める場合は、コンビニ経営のノウハウが皆無に近い状態からスタートすることになります。

コンビニを営業するには、

  • ・どのような立地場所がよいか
  • ・店の規模は、どれ位が適当か
  • ・商品構成は、どうすればよいか
  • ・商品は、どこから仕入れたらよいか
  • ・営業時間は、どう設定するか
  • ・アルバイトの必要人員と勤務シフトは、どう組めばよいか
  • ・集客を上げる方法は
  • ・客単価を上げる方法は
  • ・客とトラブルになったときの対処法は

など、非常に多くの疑問点や懸案事項があります。

個人経営の場合、それらの疑問点や懸案事項はオーナーが独力で解決していかなければなりません。

それに対して、コンビニフランチャイズでは、本部の持つ豊富な店舗経営のノウハウや経験を提供してもらえるため、安全かつ効率的に開業や経営ができます。

④フランチャイズで確立されたビジネスモデルを利用できる

フランチャイズに加入すると、フランチャイズで作られたビジネスモデルを利用することができます。ビジネスモデルとは、「この立地条件と規模の店舗は、開業○年後には、売上げが〇万円、必要経費が〇万円、営業利益が〇万円」という標準的な経営モデルのことで、店舗の立地条件や規模により様々なモデルが揃えられています。加盟店は、これらのビジネスモデルを参考にして経営を行うことが可能となります。

個人で事業を始めるとすると、売上げや必要経費、営業利益などの目安がわかりません。実際に営業しながら、試行錯誤して店舗経営が安定する数字を自分で見つけなければなりません。

その点、フランチャイズでは、スタート直後から、本部のビジネスモデルを目標に営業を行うことが可能となります。

⑤フランチャイズ本部からの経営サポートを受けることができる

事業を行っていると、以下のような様々な問題に直面する場合があります。

  • ・景気変動による売上不振
  • ・必要経費がかかり過ぎる
  • ・アルバイトを確保できない
  • ・来店客とのトラブル
  • ・店内における事故や盗難

このような場合に、個人経営の店舗では、オーナーが独力で問題解決を図らなければなりません。

しかし、フランチャイズに加入していれば、店舗経営で問題が発生した時に、本部の専門スタッフから指導や助言を受けることができます。

⑥事業運営上、フランチャイズ本部から様々な便宜を図ってもらうことができる

フランチャイズに加入していれば、事業を運営する上で、フランチャイズ本部から様々な便宜を図ってもらうことができます。

例えば、フランチャイズ英会話教室で外部講師の確保が難しい場合に、本部が持つルートを使って人材を紹介してくれる場合があります。また、飲食店で専用の調理器具を揃える場合に、本部のルートを使い割安に調達できるフランチャイズもあります。

このように、フランチャイズに加入すれば、フランチャイズ本部から、様々な優遇措置を受けることができます。フランチャイズ加盟金は、このような様々な恩恵に対する対価としての意味を持っているのです。

加盟金の相場

フランチャイズ加盟金の相場は、業種や個々のフランチャイズによって異なるため、一概には言えませんが、数十~数百万円かかる例が多くみられます。中には、加盟金を徴取しないフランチャイズもあります。実際に加盟金がいくらかかるかについては、フランチャイズの加盟店募集サイトや説明会の資料に掲載されているため、事前に確認することができます。

フランチャイズで開業する前は、開業準備のためにまとまった資金がかかります。加盟金は、その開業費用に上乗せされて負担することになる費用です。そのため、あまりにも高額な加盟金を設定するフランチャイズに加入すると、開業のための費用が膨れ上がり、大きな負担となる場合があります。

加盟金を含めた開業費用を金融機関からの融資で賄うとしても、その返済負担が大きいと毎月の経営を圧迫することになりかねません。このことから、加盟金を含めた開業費用については、しっかりとした資金計画や返済計画を立てることが重要になります。

加盟金以外にかかる保証金・ロイヤリティ

フランチャイズに加入すると、加盟金以外に、保証金やロイヤリティがかかる場合があります。

①保証金

保証金とは、フランチャイズ加盟店がフランチャイズ本部に債務を負う場合に、その債務を清算するために、加入時に預ける金銭をいいます。例えば、学習塾フランチャイズで、加盟店の毎月の売上げが低迷してロイヤリティを払えなかった場合に、ロイヤリティの未済分を保証金で清算します。

また、飲食店フランチャイズで、加盟店が本部から食材を仕入れており、その仕入代金を滞納している場合に、最終的に保証金を使って清算します。このような保証金の性格上、解約時(廃業時)に保証金は清算され、使われなかった残額が戻ってきます。

なお、フランチャイズによっては、保証金を徴取しないところもあります。

②ロイヤリティ

ロイヤリティとは、フランチャイズ加入後に毎月本部に支払う金銭をいいます。ロイヤリティは、言葉の意味としては「商標使用料」とされています。しかし、加盟金の説明にもあったように、フランチャイズに加入するメリットは、商標利用だけではありません。このため、ロイヤリティは、フランチャイズ加入後にフランチャイズ本部から受けることができる様々な優遇措置の対価と捉えることができます。

ロイヤリティの具体的な金額は、フランチャイズにより様々に異なっていますが、大きく分けると、次の2通りの方法で算出されています。

①定額制
「毎月○〇円」と毎月の金額が一律に定まっている方法です。

②定率制
「毎月、売上額の〇%」など売上額や利益額に対する比率が定まっている方法です。

加盟金とロイヤリティの違い

加盟金とロイヤリティは、共に、加盟店がフランチャイズ本部から受ける様々な優遇措置に対する対価として支払うものです。加盟金は、フランチャイズに加入する前、または加入時に支払うもので、ロイヤリティは、フランチャイズに加入後に毎月支払うことになっています。

このことから、①加盟金は、フランチャイズに加入する条件として支払う対価=加入条件②ロイヤリティは、フランチャイズ加入を継続するための条件として支払う対価=継続条件と捉えることができます。

フランチャイズ加盟金にかかる注意点

それでは、フランチャイズの加盟金を払う場合に、どのような点に注意すればよいのでしょうか。ここでは、加盟金を払う際の注意点についてみていきましょう。

加盟金の安さより「やりたい仕事」を優先

フランチャイズの加盟金は、かなりのまとまった金額がかかる場合もあるため、少しでも安いフランチャイズを探したくなる心情は理解できます。しかし、加盟金の額にとらわれ過ぎて、その安さだけでフランチャイズを選ぶことは、あまりおすすめできません。

フランチャイズで事業を始めようとするからには、「自分のやりたい仕事」や「自分の将来計画」があるはずです。フランチャイズ選びにあたっては、「自分のやりたい仕事」や「自分の将来計画」を優先基準に置いて検討するのが間違いのない方法です。

極端な例ですが、調理が好きで将来美味しい料理を客に提供することが夢だった人が、加盟金の安さに釣られて、あまり関心がなかった学習塾のフランチャイズに加入したとしたら、どうなるでしょうか。その場合は、料理を作って客に美味しく食べてもらうかわりに、日々子供たちに勉強を教えることが仕事となります。

世間一般では、子供に勉強を教えることも社会的に重要な仕事といわれています。しかし、そのことを毎日の仕事にするためには、その分野に対して人並み以上に関心が高く、自分でやりがいを持てることが求められます。

この例のように、自分が元々やりたかった仕事を諦めて、あまり関心が持てない分野の仕事を続けることは、大変な辛抱強さが必要である上に、毎日の仕事に対するモチベーションを維持することさえ難しくなってしまいます。

フランチャイズ選びにあたっては、確かに加盟金額の大小は重要な判断材料ではありますが、何よりも「自分のやりたい仕事」や「自分の将来計画」を優先基準にすることが非常に重要です。

加盟金の安さより「将来性のある仕事」を優先

それでは、自分の「やりたい仕事」を優先的に選べば、加盟金の安さを次の判断基準にしてよいかといえば、そうでもありません。加盟金の安さに着眼する前に、まだ優先すべき判断基準があります。

自分の「やりたい仕事」の次に優先すべきは、「将来性のある仕事」という基準です。フランチャイズ事業では、開業はあくまでもスタート地点です。実際のレースは、開業した後の事業そのものであることを忘れてはなりません。折角開業しても、事業そのものが振るわず利益が上がらなければ、事業を始めた意味がないのです。

したがって、事業そのものを何とかして軌道に乗せて安定させていく必要がありますが、その事業自体の将来性が見込めず、社会的なニーズに応えることができないものであれば、加盟店オーナーがいかに頑張っても良い結果は望めないでしょう。

このことからも、本番のレースである事業そのものが、はたして将来性があるかどうかについて、フランチャイズに加入する前に十分に検討しておくことが重要です。

すなわち、自分が選ぼうとしているフランチャイズ事業が、①将来性・成長性があるか、②社会経済環境の変化に対応できるか、③社会的なニーズを捕らえているかなどを事前に見極めることが肝心なのです。

もっとも、現在フランチャイズ化されている分野・事業は、いずれも将来性や収益性の面で取捨選択されたものが残ってきています。しかし、その勝ち残った分野・事業でも、今後、社会経済情勢の変化に対応できないものは淘汰されていきます。

現在は、フランチャイズであっても、コロナ禍により、従来の実店舗型の飲食店は大変な苦境に立たされています。この中で、いち早く店内飲食から持ち帰りや宅配に方向転換したフランチャイズは、売上げの減少を食い止めることができています。

例えば、店内飲食を営業する傍らで、持ち帰りの弁当や総菜販売をスタートさせたフランチャイズでは、持ち帰り分が店内飲食分を上回る売上げをあげている例が多くあります。

また、厨房の場所をレンタルし、そこで調理した商品を宅配する事業では、宅配に特化して収益を安定させるとともに、店舗や厨房を構える経費を大幅に削減しています。

同じ飲食フランチャイズでも、社会経済情勢の変化に対応した事業形態を採用するところは、その時々の社会的なニーズを捕らえながら、コロナ禍の中でも業績を安定させているのです。

飲食業界におけるテイクアウトやデリバリーは、今後も伸びしろのある将来性が見込める分野です。このように同じ分野・業種においても、事業のやり方は創意・工夫次第で変わってきます。

市場の動向をみながら常に創意・工夫を凝らし、新しい発想で社会的なニーズを取り込んでいくことができるフランチャイズであれば、将来性や成長力も期待ができます。

したがって、事業を始めるなら、これからの新しい時代に適応しながらその時々のニーズを受け止めることができる将来性ある分野・事業に的を絞ることが極めて重要なのです。

フランチャイズ選びにおいては、①自分のやりたい仕事、②将来性がある仕事を最優先に選び、その中で、加盟金を含めた開業費用全体が自分の予算内に収まるフランチャイズを見つけていくことがポイントです。

払った加盟金は返還されない

一度支払った加盟金は、原則として返還しないフランチャイズが多くみられます。加盟金を返還しない場合は、フランチャイズ契約書に加盟金不返還の規定が定められているはずです。一般的には、加盟金不返還の規定では、理由を問わず返還しない旨が定められています。このことから、加盟金を支払う前に、契約条項をよく確認することが大切です。

加盟金は、多くの場合フランチャイズ契約の締結時に支払いますが、稀に、契約締結前に加盟金の支払いを求めるフランチャイズもあります。契約締結時に加盟金を払う場合は、加入者が契約書の各条項に納得・了解した上で、加盟金を払い込むことができます。

一方で、契約締結前に加盟金を求められる場合は、加入者が、必ずしも契約書の各条項に納得・了解した上で加盟金を払い込むケースばかりではないはずです。そのことからも、契約締結前に加盟金を払わなくてはならない理由を十分に確認し、リスクがあると判断されるときは、加入見合わせも選択肢に上がります。

さらに、加盟金を契約締結時に払う場合にも、注意が必要です。例えば、加盟金支払いや契約締結が完了した後に、自分が希望する立地場所への出店ができないことが判明した場合は、契約締結後のため加盟金が戻ってくる保証はありません。

このため、契約締結前に、出店場所や店舗規模、その他の出店条件などについて、フランチャイズ本部側と十分に協議・決定しておくことが重要です。

払う前に契約条項をよく確認する

加盟金を支払う前に、フランチャイズ契約の条項を十分に確認することが肝心です。契約書条項で、特に注意して確認する個所は、次のとおりです。

①契約期間と違約金

通常、フランチャイズ契約は契約期間が定まっています。契約期間として多いケースは5年間ですが、その契約期間中に加盟店側の都合で解約(廃業)すると、ペナルティとして違約金を徴取される場合があります。

②損害賠償

加盟店が契約条項に違反した場合には、契約違反として損害賠償が請求される場合があります。どのようなケースが契約違反となるかについて事前によく確認し、その場合の損害賠償額も把握しておく必要があります。

③商標の利用条件

フランチャイズに加入したからといって、どのような場合でも自由に商標が利用できるわけではありません。フランチャイズの商標は、企業ブランドそのものということができ、企業ブランドを損ねるような利用方法は制限されているのです。

例えば、加盟店が勝手にロゴマークに手を入れて面白おかしく表示するなどは、商標の利用条件に抵触する可能性があります。

④出店規制

フランチャイズによっては、加盟店の商圏が競合しないよう、「出店エリアを規制する」、「店舗同士の距離を一定以上あける」などの規制を設ける場合があります。同じ系列の店舗が間近に出店すると、売上げに影響が生じるため、それを避ける措置が講じられているのです。

事業を始める場合は、集客に有利な場所に店舗を構えることが重要です。自分が計画していた好立地の場所に出店ができるかどうか、事前に確認しておくことが肝心です。自分の希望場所への出店が難しい場合には、フランチャイズへの加入を見合わせる選択肢もあります。

⑤競業禁止

フランチャイズに加入すると、その業種に関する営業戦略や経営ノウハウなどを提供してもらえます。これらの営業戦略や経営ノウハウは、企業の重要機密情報に該当する内容も多く入っているため、その内容が外部に漏れないようフランチャイズ本部は「競業禁止」の規定を契約書に盛り込んでいる場合があります。

競業禁止規定があると、加盟店オーナーは、フランチャイズ契約を解約後(廃業後)に同じ業種での開業が制限されます。制限方法は、①出店規制エリアを設定、②出店制限期間を設定などとなります。具体的には、「関東地方に限り、今後5年間は同業種で出店不可」などの制限を受けます。

例えば、なんらかの事情でフランチャイズ契約を解約したが、フランチャイズで得た戦略やノウハウを利用して個人で開業しようとしても、同じ業種で始めるには上記のような制限を受ける場合があります。

出店規制エリアが広い、または出店制限期間が長い場合には、事実上、将来の夢や計画の実現に影響が生じてしまいます。

加盟金の名称にこだわらない

加盟金を調べる場合に「加盟金」という名称にこだわらないことが大切です。フランチャイズによっては、加盟金という名称を使わずに、その他の名目で費用負担を求める場合があります。例えば、①企画費、②ノウハウ提供費、③経営支援費などの名目で、実質的な加盟金を徴取するフランチャイズがあります。

上記の他にも、①研修費、②宣伝費などがかかる場合があります。フランチャイズでは、開業前に加盟店オーナーに対し研修を実施する例が多くみられます。また、フランチャイズによっては、加盟店が開業する際に、宣伝広告を行うところもあります。

実際に研修や宣伝が行われれば、徴取される費用は名目どおりということになりますが、研修や宣伝が行われないにもかかわらず、これらの費用を取られる場合は、その費用の実態は加盟金の一種とみることができます。

フランチャイズの加盟金を調べる場合は、加盟金という名称にとらわれず、本部に支払う必要がある費用をすべて洗い出し、その総額を把握しておく必要があります。

加盟金以外に開業費用が必要

フランチャイズの事業は、加盟金さえ払えば開業できるものではありません。フランチャイズで開業するには、加盟金以外に、以下のような開業費用がかかります。

①店舗物件購入費、または賃借用の経費

店舗の場所を確保するための費用です。店舗物件を購入する場合は、立地場所や規模にもよりますが、まとまった資金が必要です。また、店舗の場所を賃借する場合でも、敷金や礼金、初月の賃料などを前払いしなければなりません。なお、加入者が自分で店舗用の土地や建物を用意できる場合は、費用を大幅に圧縮できます。

②店舗内・外の工事費

店舗の内装工事や外装工事にかかる費用です。例えば、レストランなどの場合は、店舗内を洒落た雰囲気にするため、天井・壁・床などのリフォームに費用がかかります。また、カウンター席を設ける場合は、大工工事も必要になります。

一方、店舗の外装では、看板設置や出入口の錠前工事などが必要です。また、場合によっては、店舗の外装が傷んでいる場合は、手入れのための費用もかかります。

③店舗用備品購入費

店舗用の備品を揃えるための費用です。例えば、飲食店では、厨房設備一式を設置する必要があり、まとまった費用がかかります。また、店舗内のテーブルや椅子、空調、照明、レジ用機器なども必要です。学習塾では、飲食店のような備品購入費はかかりませんが、生徒用の机や椅子、黒板、パソコン、空調、照明などが必要となります。

④広告宣伝費

フランチャイズ事業を始めるには、広告宣伝が必要です。フランチャイズ本体の宣伝は本部が一括して行いますが、加盟店は自分の店舗のPRを行わなければなりません。

以上のように、フランチャイズ事業を始めるためには、まとまった開業費用がかかります。フランチャイズ加盟金は、その開業費用に上乗せして負担となるものです。したがって、フランチャイズで開業しようとする場合は、加盟金の額だけに注目するのではなく、加盟金(場合によっては保証金も)を含めた開業費用総額を算出し、その調達方法を検討する必要があります。

加盟金の支払いはスタート地点と心得る

フランチャイズの開業にあたっては、加盟金以外に開業費用が必要となります。このことからも、「加盟金を払って、フランチャイズに加入できたからよかった」で終わるのではなく、加盟金の支払いは、あくまでもフランチャイズの開業に向けてのワンステップです。

加盟金の支払いが終われば、次は開業に向けての準備に入らなければなりません。そして、開業準備が完了しめでなく開業となっても。本番の事業はそこからスタートします。

これまでの加盟金の支払いも開業に向けての準備も、すべてはこれから始まる事業を円滑に開始させ、安定的に継続するための1ステップに過ぎません。加盟金の支払いは、フランチャイズ事業のスタート地点と心得ることが大切です。

フランチャイズ加盟金の会計処理

それでは、フランチャイズ加入者が加盟金を支払った場合には、帳簿上どのように仕訳を行うのでしょうか。ここでは、フランチャイズ加盟金の会計処理についてみていきましょう。

加盟金の会計処理は、

  1.  加盟金支払い時の仕訳
  2.  決算時の仕訳

と2段階で行います。

加盟金支払い時の仕訳

フランチャイズの加盟金については、その会計処理の方法が決められています。加盟金を支払った場合には、会計処理上は「繰り延べ資産」として扱います。

繰り延べ資産とは、将来にわたり便益が期待できる資産をいいます。すなわち、加盟店が加盟金を払うことが、将来的な便益に繋がるとみなされているわけです。この場合の将来的に期待できる便益は、フランチャイズの商標使用権や経営ノウハウ提供などの優遇措置です。

すなわち、支払った加盟金は、フランチャイズ加盟店として、契約期間中商標使用権や経営ノウハウの利用という形の便益が期待できる資産と捉えるのです。同時に、加盟金は、加盟店が支払う営業上の「経費」としても位置付けられます。

具体的には、①借方:長期前払費用、②貸方:預金(現金)として仕訳します。これにより、長期前払費用が資産として増加し、同時に、同じ額の預金(現金)が減少します。

例えば、加盟金の額が150万円の場合は、①借方:長期前払費用150万円、②貸方:預金(または現金)150万円となります。

これにより、長期前払費用150万円が資産として増加し、同時に、150万円の預金(現金)が減少するのです。

加盟金の償却期間

加盟金は、フランチャイズ契約期間中、加盟店に便益をもたらすための前払い費用ですが、同時に、営業上の経費として位置付けられます。したがって、この営業上の経費は、フランチャイズの契約期間にわたって償却していくことになります。

加盟金の具体的な償却期間ですが、法令や国の通達などによると、一般的には5年間とされています。これは、通常フランチャイズの契約期間が5年間とされていることと整合しています。

すなわち、支払った加盟金総額を5等分した金額を毎年償却していくことになります。

決算時の仕訳

支払った加盟金は、その総額を5等分した金額を毎年償却していくことから、決算時の仕訳は次のようになります。

  1.  借方:長期前払費用償却
  2.  貸方:長期前払費用

上の例と同じく、加盟金総額が150万円の場合は、

  1.  借方:長期前払費用償却30万円
  2.  貸方:長期前払費用30万円

決算時点で、資産である長期前払費用150万円を5年間で均等に償却していきます。すなわち、長期前払費用150万円の5分の1である30万円を費用として計上し、その同額である30万円の長期前払費用(資産)が減少することになります。

フランチャイズにおける加盟金の実例

次に、フランチャイズ業界における加盟金の実例についてみていきましょう。

コンビニ

【セブンイレブン】

セブンイレブンは、コンビニ業界を代表する有名大手フランチャイズです。セブンイレブンのフランチャイズ契約では、AタイプとCタイプの2つの契約形態が用意されています。

Aタイプは、店舗用の土地・建物を加入者が用意するタイプで、Cタイプは、店舗用の土地・建物を本部が用意するタイプです。

〇Aタイプ:店舗用の土地・建物を加入者が用意するタイプ

加盟金(成約預託金) 315万円
(内訳)
・研修費55万円(消費税込み)
・開業準備手数料110万円(消費税込み)
・開業時出資金150万円(消費税なし)

店舗用の土地・建物を加入者が用意するAタイプの加盟金は、315万円です。土地・建物を借りる場合の賃料や建物を店舗に改装するための工事費は、別途負担となります。

〇Cタイプ:店舗用の土地・建物を本部が用意するタイプ

加盟金(成約預託金) 260万円
(内訳)
・研修費55万円(消費税込み)
・開業準備手数料55万円(消費税込み)
・開業時出資金150万円(消費税なし)

AタイプとCタイプを比べると、加盟金額は、店舗用の土地・建物を加入者が用意するタイプであるAタイプの方が高くなっています。それは、Aタイプの方が、加盟金が高い代わりに、毎月のロイヤリティがCタイプより安く設定されているからです。

ロイヤリティは、コンビニ営業を続ける限り毎月かかってくる費用であるため、両者を比較すると、ロイヤリティが安いAタイプが一見有利にみえます。しかし、Cタイプは店舗用の土地・建物を本部が用意するため、集客を上げやすい立地が多く、営業面からみるとCタイプにメリットがあるでしょう。

【ファミリーマート】

ファミリーマートは、セブンイレブンと並ぶ大手コンビニフランチャイズです。ファミリーマートのフランチャイズ契約も、セブンイレブンと同様に、大きく分けて2つの契約形態(その下でさらに分かれて4形態)となっています。

〇店舗用の土地・建物を加入者が用意するタイプ

契約時必要資金 150万円

店舗・内装設備工事費用は、原則加入者が負担します。

〇店舗用の土地・建物を本部が用意するタイプ

契約時必要資金 150万円

店舗・内装設備工事費用は、加入者が負担するタイプと本部が負担するタイプに分かれています。

店舗用の土地・建物を加入者が用意するタイプと本部が用意するタイプで、加盟金額は変わりません。ファミリーマートも、店舗用の土地・建物を加入者が用意するタイプの方が、ロイヤリティが安く設定されています。

学習塾

【個別指導 京進スクール・ワン】

京進スクール・ワンは、先生1人に生徒2人の完全個別指導を行う学習塾フランチャイズです。

加盟金 150万円
京都・滋賀を除く都道府県対象

京進スクール・ワンの加盟金は150万円ですが、その他に以下の開業費用が必要です。

  • ・教室長研修費20万円
  • ・教室什器・設備費220万円~
  • ・電子錠システム費18万円~
  • ・内装・看板工事費100万円~
  • ・教材・文具費等40万円~
  • ・テナント保証金・初回賃料等120万円~
  • ・開校時宣伝広告費等130万円~

加盟金含めた開業費用合計798万円~(税抜)

京進スクール・ワンの収益モデルの1例は、次のとおりです。

・年間平均生徒数60名の場合

売上額 入学金収入:63,540円
授業料収入:25,214,500円
諸経費収入:1,297,800円
教材テスト収入:27,330,246円/年
その他経費 変動費:12,698,520円
固定費:4,848,000円
ロイヤリティ 授業料・諸経費10%
入学金50%
営業利益 9,783,726円/年

【個別指導学院フリーステップ】

個別指導学院フリーステップは、先生1人に生徒2人の個別指導制で、中・高生を対象とする学習塾フランチャイズです。

加盟金 165万円

フリーステップの加盟金は165万円ですが、その他以下の開業費用がかかります。

  • ・教室設計管理費16.5万円
  • ・開校研修費44万円
  • ・広告宣伝費71.5万円
  • ・什器・備品費341万円
  • ・その他物件取得費、内外装工事費など

飲食

【牛舌金庫】

牛舌金庫は、牛タン専門店のフランチャイズです。

料理の仕込みは本部が行うため、加盟店ではほとんど調理する必要がなく、店舗が異なっても味に統一感があるのが特徴です。

加盟金 200万円

牛舌金庫の加盟金は200万円ですが、その他に以下の開業費用が必要です。

  • ・研修費30万円
  • ・オープン前実施研修費20万円
  • ・什器・備品費20万円
  • ・システム導入費50万円
  • ・預り金保証金100万円

加盟金含めた開業費用合計420万円

【やどかり弁当】

やどかり弁当は、飲食店の空き時間を利用して弁当を調理し、法人向けに宅配を行うサービスを展開しているフランチャイズです。

既存の飲食店の厨房設備を使うことで、開業費用を大幅に抑えることができます。既存の飲食店が、やどかり弁当サービスを導入することで、これまでの既存店利益に新たな利益を上乗せすることが可能です。

必要な開業資金 533万7,200円
(内訳)
・導入コンサルティング費用 330万円
・登録料30万円
・備品・消耗品(すべて購入の場合)65万円
・研修交通費18万円
・研修宿泊費5万円
・事前営業人件費27万7,200円
・メニューサポート費用20万円

やどかり弁当の必要な開業資金は、533万7,200円となっていますが、その中で、

  • ・導入コンサルティング費用 330万円
  • ・登録料30万円
  • ・事前営業人件費27万7,200円
  • ・メニューサポート費用20万円

の407万7,200円を加盟金と捉えてよいでしょう。

【くれおーる】

くれおーるは、たこ焼きのフランチャイズですが、たこ焼きも楽しめる居酒屋としても有名です。本場大阪では行列ができる本格派のたこ焼き専門店ですが、充実した研修制度により、未経験者でも開業が可能です。

加盟金 110万円

くれおーるの加盟金は110万円ですが、その他に以下の開業資金が必要です。

  • ・研修費50万円
  • ・保証金100万円
  • ・システム導入費50万円

加盟金含めた開業費用合計310万円

【カラーカフェ】

カラーカフェは、キッチンカーによるクレープの移動販売を展開するフランチャイズです。
カラーカフェの大きな特徴は、加盟金、ロイヤリティがともに0円ということです。また、屋号やメニュー、キッチンカーの色もすべて加盟店オーナーが自由に決めることができます。キッチンカーの出店場所は全国各地で、本部が紹介してくれます。

加盟金 0円

加盟金がないため、開業費用を大幅に節約でき、200万円程度からの開業が可能です。

その他

【おそうじ本舗】

おそうじ本舗は、2021年9月時点で、加盟店数1,701店舗を誇る清掃フランチャイズです。
おそうじ本舗のデータによると、1人開業で営業利益が月72万3,600円、従業員3人で営業利益が月183万8,737円となっています。

加盟金 30万円

おそうじ本舗の加盟金は30万円ですが、その他以下の開業費用がかかります。

  • ・保証金20万円
  • ・研修・講習費55万円
  • ・機材費185万円
  • ・システム導入費15万円

加盟金含めた開業費用合計305万円

清掃フランチャイズであるため、清掃用の機材費や研修費が必要となります。

【日本物産】

日本物産は、大手量販店や百貨店のイベント会場で、北海道や九州の特産品グルメを販売する物産展の運営を行うフランチャイズです。

物産展の場所は、本部で多数確保しているため、加盟店側の営業はほとんど不要です。日本物産では、開業にあたって加盟金0円、運営でもロイヤリティ0円を方針としています。

加盟金 0円

日本物産では、開業資金0円を提唱していますが、実際には諸経費で20万円程度が必要になります。日本物産では、加盟金もロイヤリティもかかりません。加盟店の営業利益は完全出来高制で、売上額の15~20%で経費を引いた金額が支給されます。

日本物産の収益モデルは、1例として、

  • ・月間売上額400万円
  • ・必要経費として
    交通費8万円、人件費20万円、備品5万円

などとなっています。

標準的な物産展の平均売上げは、1週間で100~200万円程度とされています。

まとめ

加盟金は、フランチャイズ事業の開業費用に上乗せされて加入者の負担となるため、フランチャイズで開業を目指す場合に大きな関心事項となります。

しかし、加盟金の支払いを含めた開業準備は、いわばフランチャイズ事業のスタート地点であり、本番のレースは開業後の事業そのものです。加盟金の支払いを含めた開業準備のすべては、開業後の事業をスムーズに開始させ、できるだけ早く経営を軌道に乗せるための前座に過ぎません。

いわば、フランチャイズ事業では、「開業後の事業の成功」が目的であり、「加盟金の支払いを含めた開業準備」は、そのための手段です。本番の事業を成功に導くのは、フランチャイズ本部のバックアップもありますが、最終的には、加盟店オーナーのやる気と事業自体の将来性です。

その本番の事業で、仕事への熱意やモチベーションを維持しながら、その時々の社会経済環境の変化に対応し、社会的なニーズを捕らえていくには、①自分の好きな分野で、②将来性のある事業を的確に選別することが肝心です。フランチャイズで事業を始めることを検討されている方は、自身に会う分野や事業を探してみてください。