フランチャイズ、業務委託、代理店契約の違いとは? それぞれの特徴を詳細解説!

フランチャイズ、業務委託、代理店契約は、それぞれ似ているようで異なる特徴やメリット・デメリットがあります。本記事では、フランチャイズ、業務委託、代理店契約の特徴や違いについて詳しく解説します。3つの業態の違いを知りたい方、起業や新事業を検討をされている方は、参考にしてみてください。

フランチャイズ、業務委託、代理店契約とは

はじめに、フランチャイズ、業務委託、代理店契約、それぞれの基本を整理してみましょう。

フランチャイズの基本

フランチャイズは、フランチャイズ企業の商品やサービスの販売・提供をフランチャイズ加盟店に任せる形態です。

例えば、コンビニをフランチャイズ展開している企業が、その商品の販売・宣伝をフランチャイズ加盟店に任せるなどが該当します。加盟店は、フランチャイズ企業から商品を購入し、それを消費者に販売することで利益を上げます。この場合、販売する商品はフランチャイズ企業から提供されますが、加盟店は仕入代金を払う必要があります。コンビニフランチャイズでは、一般の小売店と同じように、店舗の売上額から商品仕入原価やその他必要経費を差し引いた残りが営業利益になります。

また、学習塾をフランチャイズ展開している企業が、その教室運営を加盟店に任せるケースもあります。加盟店は、学習塾の生徒を募集し、その入学金や授業料から必要経費を差し引いた残りが利益になります。

フランチャイズ企業と加盟店オーナーは、「フランチャイズ契約」を結びます。フランチャイズ契約には、加盟店がフランチャイズ企業の商号・ブランドを使用できる旨、加盟店はその対価として商標使用料=ロイヤリティを支払うことが定められています。

業務委託の基本

業務委託は、企業の事業や業務の一部を外部の者に委ねることです。例えば、食料品を販売しているスーパーマーケットが、宣伝用のチラシ作成を外部の広告業者に依頼するなどが業務委託となります。この場合の委託内容は「宣伝用のチラシ〇万枚の作成」であり、期限は「○月〇日までに納品」という形をとります。

また、企業の従業員研修で、外部から講師を派遣してもらい、授業を行ってもらうことも業務委託です。こちらの委託内容は「接遇研修の講師〇名・営業技法の講師〇名の派遣」で、派遣期間は「○月〇日~○月〇日まで」となります。すなわち、業務委託された業者は、委託された業務を指定期限までに完了すればよいわけです。

業務委託する企業と受託する業者との間で、委託業務の内容や委託期間、報酬額などを取り決め、「業務委託契約」を締結します。上の例で、スーパーマーケットの宣伝用チラシを作成した業者や企業研修に講師を派遣した企業には、報酬として業務委託した企業から委託料が支払われます。

代理店の基本

代理店は、企業の商品やサービスの販売・宣伝などを外部の者に依頼する形態です。例えば、生命保険会社が保険商品の販売・宣伝を外部の代理店に依頼するなどが該当します。保険商品は、依頼元の生命保険会社が提供し、代理店は、保険商品を消費者に販売し、手数料を受け取ります。

この場合の保険商品の売主は生命保険会社で、買主は消費者(保険加入者)です。代理店は、生命保険会社と消費者を仲介して生命保険に加入してもらうことが仕事になります。

また、海外旅行を扱っている旅行会社のツアー商品を代理店が販売するケースもあります。この場合も、代理店は、旅行会社と消費者を仲介してツアー商品を販売し、旅行会社から手数料を受け取ります。

なお、依頼する企業から商品を買取り、その商品を消費者に販売する方式は「販売店」といい、ここでいう代理店の範囲には含まれません(広義の代理店に含む場合があります)。

依頼する企業と代理店とは、業務内容や手数料、契約期間などを定めた「代理店契約」を結びます。上の例で、保険商品や旅行商品を販売した業者には、その報酬として手数料が支払われます。

フランチャイズの特徴

それでは、それぞれの業態の特徴について、フランチャイズからみていきましょう。

業務はフランチャイズ化されている分野に限定

フランチャイズで開業する場合の業務内容は、現時点でフランチャイズ化されている分野の仕事に限定されます。現在、フランチャイズ化が進んでいる主な分野は、次のとおりです。

  1.  コンビニ
  2.  その他の小売店
  3.  学習塾・英会話教室
  4.  健康教室・スポーツジム
  5.  飲食店・居酒屋
  6.  コーヒーショップ など

上の業種を大きく分けると、

  • ㋐コンビニを含めた小売店
  • ㋑教えごとの教室
  • ㋒飲食店

となります。

したがって、フランチャイズにおける業務の内容は、

  • ㋐小売店:商品の仕入・販売・配達・在庫管理・販売スタッフの確保と管理
  • ㋑教室:生徒募集・生徒の教育指導・保護者面談・進路指導・講師の確保と管理
  • ㋒飲食店:材料の仕入れ・調理・接客・配達・食材管理・店舗スタッフの確保と管理

などになります。

フランチャイズ化されている分野は上記以外にもあり、対象業種も拡大しているため、将来的には新しい業種が加わってくる可能性もあります。

本部の商標・ブランドを利用できる

フランチャイズの強みは、フランチャイズ本部の商標・ブランドをダイレクトに利用できることです。本部の商標・ブランドを利用することにより、効果的な集客ができ、また、販売商品に対する信頼性を得ることが可能になります。

例えば、大手コンビニフランチャイズのセブンイレブンやファミリーマートに加入すれば、店舗名にその名称をダイレクトに使用することができます。また、店舗内に陳列してある商品は、いずれもセブンイレブンやファミリーマートの本部から仕入れたもので、一般の消費者から高い信頼が置かれています。

一方、個人でコンビニを始めたとしたら、店舗名は周知度が低く、販売商品が消費者の信頼を得るには長い期間が必要です。

このようにフランチャイズでは、本部の商標・ブランドを利用することで、開業時点から有利な営業を展開することが可能です。

経営モデル・経営ノウハウを利用できる

フランチャイズでは、加盟店はフランチャイズ本部が有する経営モデルや経営ノウハウを利用できます。経営モデルとは、「この立地と規模であれば、この程度の売上げが見込め、必要経費を差し引いた後の利益がこの位になる」という経営の標準型です。

例えば、フランチャイズで学習塾を経営する場合、

  1.  立地 東京都〇〇区 〇〇線の駅から徒歩5分
  2.  規模 教室〇〇㎡
  3.  対象 小・中・高校生
  4.  開業3年目の生徒数 〇〇人
  5.  開業3年目の売上額 〇〇万円
  6.  開業3年目の必要経費 〇〇万円
  7.  開業3年目の営業利益 〇〇万円

などの経営モデルが用意されており、加盟店はそのモデルを基準に教室経営を行うことができます。

また、フランチャイズ本部は、以下のように、学習塾経営のための豊富なノウハウを提供してくれます。

  1.  生徒募集の効果的な方法
  2.  優秀な講師の確保策
  3.  効果が上がる授業・指導方法
  4.  学習教材・学習システムの揃え方
  5.  学習カリキュラムの編成方法
  6.  保護者面談のポイント
  7.  トラブル・事故の防止対策
  8.  新型コロナ感染対策のポイント など

このように、本部の持つ経営モデル・経営ノウハウを利用できるのは、フランチャイズ加盟店にとって大きな強みとなります。

強力なサポートを受けられる

フランチャイズに加入しても、開業直後は店舗経営が軌道に乗らず、直ぐには売上げが伸びない可能性があります。また、経営が安定した後も様々な要因から、以下のように店舗経営が危機に直面する場合もあります。

  1.  感染症拡大による売上不振
  2.  景気低迷による売上不振
  3.  店舗スタッフの不足
  4.  店舗内での事故やトラブル
  5.  必要経費の増大

このような場合、フランチャイズでは、経験豊富な本部のスタッフや法律の専門家が指導や助言を与えてくれます。

初心者でも始められる

上記の通り、フランチャイズでは、①本部の商標・ブランドを利用できる、②経営モデル・経営ノウハウを利用できる、③強力なサポートを受けられるなどのメリットがあります。

本部の商標・ブランドを利用できることにより開業直後から有利な営業が望めるとともに、経営モデル・経営ノウハウの利用や本部の強力なサポートなどにより、安定した店舗経営が期待できます。

また、フランチャイズでは、店舗運営の手順や方法がマニュアル化されているため、それに従うことで、その分野に未経験の初心者であっても、事業を始めることができる特徴を持っています。

利益は売上げを伸ばして出す

フランチャイズの加盟店は、売上げを伸ばすことで利益を出します。例えば、コンビニフランチャイズでは、加盟店は、本部から商品を仕入れ、それを販売して利益を得ます。すなわち、商品売上額-商品仕入原価-必要経費=営業利益となるのです。

コンビニフランチャイズでは、商品を1個売るごとに手数料を得るのではなく、自分が仕入れた商品の売上げを伸ばして利益を上げるという通常の小売店と同じ経営方式となります。

これは、コンビニ以外の学習塾フランチャイズも同様で、入学料収入+授業料収入-必要経費=営業利益となり、これは個人経営の学習塾と同じ仕組みです。

契約期間が長い

通常、フランチャイズ契約では、5年、10年など、比較的長い契約期間が設定されるので、その間、大きな契約条件の変更はなく、安心して店舗経営に専念できます。一方、自己都合により、契約期間の途中で廃業(解約)すると、ペナルティとして違約金を取られる場合があります。

また、契約期間満了時の契約更新については、通常、フランチャイズ契約の中で定めておきます。契約更新の方法としては、契約期間満了前に当事者の一方が拒否しない限り契約が更新される「自動更新型」、および契約期間満了前・満了時に当事者双方が合意した場合に限り契約が更新される「合意更新型」とがあります。

自由裁量が制限される

フランチャイズ企業は、それぞれ独自の経営方針や営業戦略を持っています。したがって、フランチャイズ加盟店は、本部の経営方針や営業戦略に従った営業を行う必要があります。このため、加盟店オーナーが本部の経営方針や営業戦略に沿わないやり方で店舗経営を行おうとしても認められません。

例えば、大衆食堂を展開するフランチャイズで、「食事は客の注文があってから10分以内に提供すること」とのマニュアルがあった場合、加盟店はその方針に従わなければなりません。「客が混みあっている時間帯は、20分程度かかっても仕方がない」と勝手に変更することはルール違反となります。

なぜなら、フランチャイズの経営方針・営業戦略を逸脱した営業は、そのフランチャイズのブランドイメージや信頼性を損なってしまう危険があるからです。

このように、フランチャイズでは、加盟店オーナーの自由裁量が制限を受ける場合があります。

加盟金・ロイヤリティがかかる

フランチャイズに加入するには、フランチャイズ本部に加盟金を払う必要があります。加盟金の額は、業種やフランチャイズ企業によって異なりますが、おおむね数十~数百万円となっています。

また、フランチャイズ加盟店の開業後は、毎月本部にロイヤリティを払うことになります。ロイヤリティとは商標使用料のことで、フランチャイズの商標を利用する対価として払う金銭です。このロイヤリティもフランチャイズによって様々ですが、毎月定額が決められている定額制と売上額の一定割合を支払う定率制などがあります。

フランチャイズ加盟店の準備段階では、開業に向けて店舗の物件取得費や内装工事費、備品購入費などまとまった出費があるため、加盟金は負担となります。

また、開業後に店舗経営が軌道に乗るまでの間は、売上げが不安定で利益も十分に見込めない場合もあり、毎月のロイヤリティが負担となる場合もあります。

業務委託の特徴

次に、業務委託の特徴についてみていきましょう。

業務の幅が広い

業務委託の大きな特徴は、委託する業務の幅が非常に広いことです。すなわち、委託する業務は、様々な分野にわたっていて非常に裾野が広いのです。中でも、特に業務委託が多いのは、以下のような専門性・技術性が高い分野です。

  1.  業務用のシステム開発
  2.  Web広告作成
  3.  建物管理
  4.  建物警備
  5.  建物清掃
  6.  企業・病院の受付・窓口業務
  7.  企業の秘書業務
  8.  研修講師の派遣 など

上記の例は、代表的なものをあげただけで、実際に業務委託される分野は他にも多くあります。このように専門的・技術的な分野で業務委託が多いのは、専門性・技術性を求められる領域は、企業が自前で行うより外注した方が安全で効率的との理由からです。

細分化された作業もある

委託は、ある業務の進行過程上で「必要な部分の仕事」を依頼する契約形態でもあります。

そのため、一連の大きな業務を委託する場合がある反面、その中の特定の業務を単体で委託するケースもあります。また、特定の業務の初めから終わりまでの一式を委託する場合だけでなく、その中の細分化された作業だけを委託されるケースもあります。

どのような内容を業務委託するかは、委託者と受託者双方が合意すれば、公序良俗に反しない限り制限がないからです。例をあげると、次のように「A商品の販売」という一連の業務があるとします。

  1.  A商品のPR
  2.  A商品の仕入れ
  3.  A商品の販売
  4.  A商品代金の受領・管理

この中で、「A商品の販売」として①~④までの一式を業務委託する場合もあれば、「①A商品のPR」だけを取り出して単体で業務委託することも多くあります。さらに、「①A商品のPR」が、雑誌でのPR・ネット広告・駅前でのティッシュ配りからなっているとして、この中の「駅前でのティッシュ配り」だけを業務委託することも可能です。

さらに言えば、「広告入りティッシュを調達する作業」「ティッシュを駅前に運搬する作業」「ティッシュを実際に配る作業」をそれぞれ別の業者に委託することもあり得ます。

このように、業務委託の内容はすでに説明したように、「業務の種類」という横方向からみると、非常に幅が広いのが特徴であると同時に、「業務の流れ」という縦方向からみて、どこの細分化されたステップでも成り立つのです。

専門性を生かすことができる

上でみたように、業務委託の内容は非常に幅が広く、専門的・技術的な分野が比重を占めています。

例えば、システム開発の分野ではSE=システムエンジニアとしての素養や経験が求められ、Web広告作成でもネットや検索エンジン最適化、ホームページ作成技術などに精通していることが必要です。

また、建物管理では、建物構造や各種配管などハード面の知識とともに、マンション管理士などの資格も必要とされます。建物警備や建物清掃などにおいても、巡回警備の訓練や経験、建物内清掃の技術や要領などが求められるでしょう。

さらに、企業・病院の受付・窓口業務では、受付としての研修・訓練や病院医療事務の能力・経験が必要となります。企業の秘書業務や研修講師では、秘書検定の資格や研修ジャンルに応じた能力・資格が求められます。

このように、業務委託の内容は、専門性や技術性が要求されるものが多いため、それぞれのジャンルに応じた技量や資格・経験などを生かした仕事ができるメリットがあります。

技術や経験が必要

すでにみてきたように、業務委託は専門性や技術性が求められるため、専門的な知識・技術を持たない初心者では、簡単に始めることが難しい分野です。業務委託は、フランチャイズなどとは異なり、受託業務遂行中はどこからのサポートも受けることはできません。

フランチャイズでは、フランチャイズ本部が有する運営マニュアルや経営ノウハウを利用でき、本部スタッフのサポートも期待できますが、業務委託では、受託者が自分の独力で受託業務を遂行し、完成させなければなりません。

このことから、業務委託に初心者が参入するためには、比較的簡単な分野を除き、一定の知識・技術の習得期間が必要です。

利益は委託料収入

業務委託を引き受ける業者の利益は、委託料になります。委託料は、委託業務の内容やボリューム、納期などを考慮して委託契約書に定められます。

委託料の定め方は様々で、商品販売委託では、「A商品1個あたり〇円、B商品1個あたり〇円」と、個別の商品が売れた量に応じて委託料が決まる単価契約や「総販売額の〇%」と販売した金額の一定比率が支払われる場合などがあります。また、指定された製品を○月○日までに仕上げて〇個納品する契約などでは、具体的な委託金額が当初から定められます。

納期が設定される場合がある

指定された製品を製造・納品する業務委託契約では、通常納期が設定されます。この場合、作業が遅れて契約書の納期を守ることができないと、契約違反として違約金を払うことになります。

したがって、業務委託を受ける場合は、①業務委託の内容が、自分の技術性・専門性に適合しているか、②現在の体制(設備・人員)で、納期までに間に合わせることができるかなどについて、十分に検討することが重要です。

契約期間が多様

業務委託契約では納期が設定されますが、納期がない場合は契約期間が設けられます。業務委託における契約期間(納期)は、長短あって様々に異なります。上にあげた業務委託例の中で、①業務用のシステム開発、②Web広告作成、⑧研修講師の派遣が、単発で契約期間(納期)限定の業務です。この場合の契約期間(納期)は、1日~数か月間などとなります。

一方、③建物管理、④建物警備、⑤建物清掃、⑥企業・病院の受付業務、⑦企業の秘書業務などは、継続性がある業務のため、契約期間が1~数年間と長くなる傾向にあります。

このように、業務委託は業務内容が様々な分野にわたっていることから、契約期間も業務内容に応じて多様となっています。

代理店契約の特徴

次に、代理店の特徴についてみていきましょう。

業務は販売・宣伝が中心

代理店の業務は、商品・サービスの販売・宣伝が中心となります。代理店契約が多く普及しているジャンルは、次のとおりです。

  1.  保険代理店
  2.  旅行代理店
  3.  広告代理店
  4.  化粧品代理店

上の例で、①保険代理店であれば、保険会社から依頼されて保険商品の販売・宣伝、②旅行代理店は、旅行会社の旅行商品の販売・宣伝、③広告代理店は、依頼する会社の商品の宣伝広告、④化粧品代理店は、化粧品メーカーの化粧品の販売・宣伝が業務内容となります。

依頼元の商標・ブランドを利用できる

代理店は、企業の商品やサービスの販売・宣伝などを外部の者に依頼する形態です。したがって、依頼元の商標やブランドを利用して営業を行うことができるメリットがあります。

例えば、生命保険商品の販売・宣伝を行う代理店であれば、「〇〇生命保険代理店」と有名大手保険会社の看板を利用することができます。また、店舗に用意する生命保険のパンフレットも、その保険会社が作成したものを使うことができます。

さらに、大手保険会社であれば、新聞・テレビ・雑誌・ネットなど様々な広告媒体を使って大々的に保険商品のPRを行っています。したがって、自分の店で多くの宣伝広告費を使わなくても、取扱商品は世間に周知されています。

このように、代理店は、依頼元の商標・ブランドを利用できる大きなメリットがあります。

利益は手数料収入

代理店は、依頼元の商品を販売・宣伝することで手数料収入を得ることができ、これが利益になります。このため、商品が売れなければ手数料が入らず、経営も立ちいかなくなってしまいます。したがって、代理店事業を成功させるには、販売を依頼された商品をいかに効果的にPRして、販売契約を締結できるかが鍵となります。

契約期間は1年

代理店契約の期間は様々ですが、1年間の契約期間が比較的多くみられます。一般的には、1年の契約期間満了時に更新して、翌1年間の代理店契約を結びます。

その結果、10年、20年と長きにわたって同一企業の代理店を務めている店舗もあります。

営業リスクが小さい

代理店は、商品販売の依頼元とそれを購入する消費者の間に立って、売買契約を成立させる役目、すなわち仲介を行う業務です。

代理店を介した取引では、依頼元と消費者とが売買契約を結ぶことになり、代理店は当事者となりません。販売した商品は、依頼元が直接消費者に発送し、その代金は消費者が依頼元に振り込みます。

仮に、商品購入後に消費者が購入代金を支払うことができなくなった場合でも、代金回収は依頼元が行い、代理店は責任を負いません。

また、商品販売後に商品の瑕疵が判明した場合でも、瑕疵についての責任は依頼元にあり、代理店にはありません(商品の瑕疵を承知の上で仲介を行ったのであれば、代理店も責任を問われます)。

これが、依頼元から商品を仕入れて消費者に売る「販売店」の場合には、商品購入後に消費者が代金を支払わない場合の損失や商品瑕疵にかかる消費者への責任は、販売店が負うことになります(商品瑕疵の場合、販売店は製造元に補償請求ができます)。

このように、代理店は、依頼元と消費者の売買契約を仲介するだけの立場であることから、代金不払いや商品瑕疵責任などのケースでリスクを負うことがないのです。

自由裁量の余地がある

代理店は、依頼元からその商品の販売や宣伝を依頼されますが、そのための仕事の進め方などについては、自由裁量の余地が認められています。例えば、自由裁量が認められているものに、次のものがあります。

①店舗の立地・規模

依頼元企業にもよりますが、店舗の立地や規模は、代理店側の裁量で決めることができます。そのため、保険代理店などでは、自宅を店舗(事務所)にしている例もあります。

②広告宣伝の方法

広告宣伝は、新聞・雑誌・ネット・電話・訪問・チラシなどを組合せ、代理店が自由に行うことができます。

③商品の販売方法

店舗販売・訪問販売・ネット販売など、代理店のやり方で組み合わせることができます。ただし、販売する商品の種類により、販売方法が限定される場合もあります。例えば、保険は、自宅訪問か事務所で内容説明を行うため、ネット販売には不向きです。また、化粧品販売も、実際の商品を見てもらう必要があることから、自宅訪問か事務所で販売することになります。

また、ある商品と他の商品を組み合わせたセット販売や他の依頼元の商品との平行販売(複数の企業と代理店契約を結ぶ)なども代理店側で工夫することができます。

④キャンペーン・特典の設定

キャンペーン期間を設定して、その間に特典を付与するなどの工夫を行うことも可能です。

本部のサポートが弱い

一般的に、代理店は依頼元からの手厚いサポートがあまり期待できません。フランチャイズの場合には、売上不振や人手不足、トラブル・事故など店舗経営上の様々な問題に対して、本部の専門家が指導や助言を行ってくれます。

これに対し、代理店の依頼元では、十分なサポート体制を確立していないところが多くみられます。

また、代理店業務の手順や方法などがマニュアル化されていない場合が多いことから、代理店オーナーが自分で学習や工夫をしながら業務を進めていく必要があります。

フランチャイズ、業務委託、代理店契約の違い

それでは、ここでフランチャイズ、業務委託、代理店契約の違いについてみていきましょう。

フランチャイズ、業務委託、代理店契約の比較

次の表は、フランチャイズ、業務委託、代理店契約について、その違いを整理したものです。

【フランチャイズ、業務委託、代理店契約の比較表】

区分 フランチャイズ 業務委託 代理店
業務の内容 フランチャイズ化されている分野に限定 幅が広い 販売・宣伝が中心
難易度
(技術・専門性)
営業リスク
商標の利用 ×
経営ノウハウの提供 ×
本部のサポート ×
業務遂行マニュアル × ×
加盟金
ロイヤリティ
利益の出し方 売上げの中から 委託料 手数料
契約期間 5~10年(更新あり) 多様 1年(更新あり)

上表をみると、業務内容の幅が最も広いのが業務委託です。業務委託は、技術性・専門性が高い業務が中心ですが、領域は様々な分野に及び、委託の形態も「一連の業務一式」から「ある業務の中の特定の作業」までと幅が広くなっています。

2番目に、業務内容の幅が広いのがフランチャイズで、様々な業種・分野が該当しますが、現時点でフランチャイズ化された範囲に限定されます。

代理店は、これも複数の分野にまたがりますが、業務の内容が「販売・宣伝」中心であるため、検討段階で仕事内容をイメージしやすいでしょう。

仕事の難易度は、技術性・専門性が求められる業務委託が最も高く、経営ノウハウや本部のサポート、業務遂行マニュアルなどを利用できるフランチャイズが最も低いといえます。

また、事業を行う上での「営業リスク」は、販売代金回収不能や販売商品の瑕疵責任などの心配がない代理店が、他の2業態に比べ小さいといえます。

これに対し、フランチャイズ、業務委託ともに、販売代金不払いや販売商品の瑕疵責任を負うリスクがあります。

一方、売上げや獲得注文数・契約数の不振等に伴う事業そのもののリスクは、3業態ともに存在するため、どの業態においても手を抜かず経営に専念することが求められます。

次に、本部のバックアップ面ですが、「商標の利用」、「経営ノウハウの提供」、「本部のサポート」、「業務遂行マニュアル」のすべてを利用できるのはフランチャイズです。

代理店は、依頼元の商標は利用できますが、経営ノウハウの提供や本部のサポートの面が充実しているとはいえません。なお、業務委託は、その仕事の性質上、委託者からのバックアップは期待できないでしょう。

次に、支出面ですが、フランチャイズには、フランチャイズに加入する際にかかる加盟金、および開業後本部に毎月支払うロイヤリティの負担があります。具体的な金額はフランチャイズによって異なりますが、加盟金は数十~数百万円程度かかるため、開業を目指す場合は、まず加盟金の調達方法が課題となります。

多くの場合、この加盟金とその他開業に要する経費(店舗取得費・内装工事費・備品購入費など)を合算して、自己資金で不足する額を金融機関からの融資で賄いますが、融資を受けた場合は、開業後に毎月返済していく必要があります。

一方、業務委託や代理店の場合は、原則として特別な経費の負担はありません(店舗取得費など開業に要する経費はかかります)。

次に、利益の出し方ですが、フランチャイズは、店舗の売上げから商品仕入原価や必要経費を差し引いて利益を出します。客を集めて売上げを伸ばせばそれだけ利益が上がり、売上げが伸びないと利益が出ない仕組みで、それは世間一般の小売店と同様です。

業務委託は、委託内容に応じた報酬が当事者間で定められ、それが委託料収入となります。

また、代理店では、依頼元の商品やサービスを販売・宣伝することで、手数料が支払われます。

ただし、業務委託、代理店ともに、仕事を獲ってきて初めて収入になることは、フランチャイズの場合と同じです。業務委託における委託料は、業務委託の仕事を貰わないと発生しませんし、代理店における手数料も、消費者に依頼元の商品を購入してもらわないと支払ってもらうことはできません。

その意味では、3者の業態は違いますが、商売上の厳しさという観点からは、優劣を付けることができません。

次に、契約期間ですが、一般的にフランチャイズでは5~10年程度と長く、契約期間満了時の更新もあり得ます。ただし、契約期間中に加盟店が勝手に廃業すると、契約違反として違約金を取られる場合があります。また、加盟店の売上げが伸びず改善の見込みがなければ、契約期間満了時に契約を更新しようとしても、本部の方が合意してくれないケースもみられます。

業務委託は、委託内容により納期が設けられる場合と契約期間が設定されるケースがありますが、その長短は委託内容により多様となっています。一般的な代理店の契約期間は1年間が多く、契約期間満了時には更新制度が用意されています。

初心者向きはフランチャイズ

上の3つの事業形態のうち、初心者に適しているのはフランチャイズです。すでにみてきたように、フランチャイズ加盟店は、①本部の商標・ブランドを利用できる、②本部の経営モデルを利用できる、③本部の経営ノウハウを利用できる、④本部の強力なサポートを受けられるなど、本部が持つ有形・無形の営業資産を最大限に活用できる強みがあります。

そのため、フランチャイズ化されている多くの分野で、事業が未経験の初心者であっても、開業して事業を継続していくことが可能です。

例えば、フランチャイズの代表格であるコンビニでは、営業時間や販売商品の構成、販売方法などがマニュアルで詳しく規定されており、加盟店オーナーは、マニュアルに従って経営を進めていけば、大きな失敗を避けることができます。

また、販売スタッフが確保できない、質の良い販売スタッフがいないなどの課題に対しては、本部から人材を紹介してくれるフランチャイズもあります。

さらに、店舗と客の間でトラブルが生じ、それが法的な問題に発展した場合でも、本部の法律に精通したスタッフが指導・助言を与えてくれます。

ここで、「フランチャイズは、初心者でも開業できる」といっても、飲食店における調理のように専門的な分野は難しいと考える方もいらっしゃるでしょう。しかし、ほとんどのフランチャイズ飲食店では、調理未経験の初心者でも事業を始めることが可能です。

その理由は、フランチャイズによって異なりますが、大別して次の2通りの方法で、業務を単純化・標準化しているからです。

①調理レシピが提供される

店で提供する料理の調理レシピが、本部から提供される方式です。加盟店は、提供された調理レシピに従って調理をすれば、当該フランチャイズが提供しているレベルの料理を作ることができます。

②仕上げの調理だけを行えばよい

基本的な調理は、本部の工場で一括して行う方式です。本部の工場で調理した料理を加盟店に配送するため、加盟店は仕上げの調理のみを行うだけです。仕上げの調理とは、「温め」や「ソース・餡をかける」などの簡単な作業が多く、未経験者でも対応可能です。

このように、フランチャイズは未経験の初心者に適した仕組みの事業形態です。しかし、ここで忘れてならないのは、フランチャイズ加盟店は、売上げの中から利益を出す事業を行うということです。単に本部のマニュアルどおりに業務を行うだけでは、客を増やして売上げの中から十分な利益を確保できないことも想定されます。

したがって、裁量権の範囲内に制限されるものの、集客や販売促進など営業上の改善・工夫を進めることにより、売上げをいかに伸ばすかが成功するためのポイントとなります。

また、フランチャイズ加盟店の経営では、本部の方針に従うことが義務付けられているため、加盟店オーナーの裁量権は制限されます。このため、自分の意思で自由に店舗経営をやりたい方には、フランチャイズは適していないでしょう。

リスクが小さいのは代理店

代理店は、商品販売の依頼元とそれを購入する消費者の間に立って、売買の仲介を行う業務です。

この場合、代理店は仲介という立場であるため、依頼元と消費者とが売買契約を結び、商品や購入代金も依頼元と消費者とで直接やり取りを行います。したがって、商品購入後に消費者が購入代金を支払わない事態が生じても、代金回収の責任は依頼元にあり、代理店は責任を負いません。

また、商品販売後に、その商品に瑕疵が見つかっても、基本的にその対応は依頼元が行うことになります。

このように、代理店は、依頼元と消費者の売買契約を仲介するだけの役目であることから、購入代金の不払いや商品の瑕疵などに対して、リスクを負わなくてよいメリットがあります。

ただし、事業リスクが全くないかといえば、そうではありません。フランチャイズ加盟店が売上げを伸ばすための努力を必要とするのと同じく、代理店も営業には力を入れることが求められます。いくら代金不払いリスクや商品瑕疵責任がなくても、手数料収入でやっていく代理店では、顧客の獲得が成功の鍵を握っています。顧客に契約(購入)してもらい、はじめて手数料収入が生じるのです。

このように、代理店でも、売上げが伸びないことによる事業リスクがあることは十分に認識しておくことが重要です。

専門性を生かせるのは業務委託

業務委託では、専門性や技術性が要求される分野が多くみられます。理由は、企業が自前で対応するのが難しい専門的な分野は、外部に委託する方が効率的だからです。

専門分野の業務を行うために、企業が技術や資格を持つ人材を採用する、社内の従業員に技術を学ばせ資格を取得させるなどの方策は経費や時間がかかります。これに比べ、技術や専門性を持つ外部業者に委託する方が、経費的にも労力的にもはるかに効率がよいのです。

そのため、業務委託を受ける側は、特定分野の専門性や技術力を持つことが必要になります。逆にいえば、業務委託では、特定分野の専門性や技術力があれば、自分の得意分野を生かす仕事ができます。自分の専門性や技術力を生かした仕事をして収入を上げることができれば、「生きがい・働きがい」にも繋がっていくのではないでしょうか。

ただし、業務委託で生きていくには、自分の独力で道を切り開いていくことも覚悟しなければいけません。そこには、フランチャイズ本部のようにバックアップをしてくれる組織はありません。

また代理店とは違い、受託業務の結果責任は受託者本人が負うことになります。そのため、業務委託では、知識や技術を磨き専門分野のレベルを上げていくことが重要です。知識や技術の研鑽が十分でない人やその分野の経験が浅く自信が持てない方は、安易に開業しない方がよいでしょう。

このように、業務委託は仕事に生きがいを持つことができる反面、要求されるレベルも高くなるのが特徴です。

まとめ

フランチャイズ、業務委託、代理店契約それぞれの業態には、異なる特徴があり、メリットやデメリットがあります。しかし、上の3者を一覧で比較すると、それぞれの業態に向いている人、逆に向かない人がわかってきます。

その点で、本部の持つ商標や経営ノウハウを利用しながら、様々なバックアップも受けることができる「フランチャイズ」は、初心者に向いていると判断できます。その分野に未経験の人でも、本部から提供される業務遂行マニュアルに従って仕事を進めれば、店舗を運営することが可能です。

また、委託内容が技術的・専門的な傾向がある「業務委託」は、特殊技術・技能や資格、経験などを持つ人、そして、その専門性を仕事で生かしたいと思う方に向いています。

さらに、依頼元と消費者の間を仲介して売買契約を成立させる役目の「代理店」は、契約当事者ではない立場から、販売代金の不払いや販売商品の瑕疵責任などのリスクを負うことがないメリットがあります。このため、営業リスクをできるだけ減らしたい人に向いた業態です。

以上のように、フランチャイズ、業務委託、代理店契約それぞれの業態には、異なる特徴があり、それぞれに向いている人のタイプも違います。事業を始めようとする際は、何の仕事をやるかという事業分野の選定を進めると同時に、自分の条件や考え方に適した業態を選ぶことも重要といえるでしょう。