ジム経営のフランチャイズに加入するメリット・デメリットやポイント
近年の健康志向を背景に、ジム経営のフランチャイズが広く普及しています。フランチャイズには、商号のブランド力をはじめジム経営のノウハウや目的に応じた練習プログラムなどを利用でき、会員募集のために強力な宣伝広告をしてもらえるなど様々なメリットがあります。
その反面、フランチャイズに加入するための加盟金や月々のロイヤリティなどの費用がかかるデメリットもあります。
本記事では、フランチャイズジムの開業・運営費用や収益、フランチャイズジムに加入するメリットやデメリット、そしてフランチャイズジムに加入する際の重要なポイントなどを解説しています。フランチャイズでジムの開業を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
フランチャイズジムの基礎
はじめに、フランチャイズジムの基本的な知識を整理していきましょう。
フランチャイズジムとは
フランチャイズジムとは、ジム経営のフランチャイズに加入して運営されているジムです。
ジムのオーナーは、フランチャイズ本部からジム経営のノウハウや各種支援を受けながらジムを運営します。
フランチャイズジムの種類
フランチャイズジムは、各フランチャイズにより、以下のように様々な種類に分かれています。
【一般的なジム】
従来から最も多い形態は、トレーニング用の設備・器具が設置された部屋に複数のスタッフが待機しているジムです。ジムの会員は、各自自分のトレーニング計画に基づき、自由に設備・器具を利用することができます。スタッフは、事故などが起きないよう各会員の状況を見守りながら、求めに応じて会員への指導を行います。
【パーソナルジム(プライベートジム)】
会員に対して、マンツーマンで個人指導を行うジムです。会員は、それぞれジムの加入目的が異なり、また、年齢・性別・身体能力なども違います。
パーソナルジムでは、そのような各会員の加入目的や年齢・性別・身体能力に応じたプログラムを考え提供します。
例えば、ダイエット目的で加入した会員と筋肉を増強しようと加入した会員とでは、トレーニングプログラムが大きく異なってきます。また、同じダイエット目的で加入した場合でも、会員ごとに身体的な条件が異なるため、それぞれに合うメニューを適用する必要があります。
パーソナルジムは、各会員の目的や条件に応じて、個別のプログラムや練習メニューを提供し、専属のスタッフがマンツーマンで指導を行います。なお、通常のパーソナルジムは、トレーニング室が個室になっているため、練習風景を他人に見られたくない人にも向いています。
会費は、通常のジムより高めに設定されており、月にトレーニングできる日数が決まっています(会費5万円で毎週2回、会費7万円で毎週3回など)。
【集団指導のジム】
ヨガやエアロビクス、太極拳など、一定の技術を習得しながらトレーニングを行うジムです。広い会場で、1~数人のインストラクターが多数の生徒を集団指導します。会員からみると、技術習得と健康の両面を追求できるため、広く人気があります。
【客層限定のジム】
女性限定や高齢者限定など、会員資格を指定しているジムです。客層を限定し、それに応じたトレーニングメニューを用意しているため、外部に対してジムの特徴をPRしやすいメリットがあります。
その反面、トレーニングプログラムやメニューはそれぞれの客層に特化した内容が求められ、スタッフの技量も必要となります。会員からみると、女性だけ、高齢者だけ、子供だけのトレーニング環境が与えられるため、安心して練習に専念できるメリットがあります。
【24時間OKのジム】
24時間いつでも好きな時にトレーニングができるジムです。24時間ジムを開けて会員にトレーニング環境を提供できることが特徴であり、一般的にスタッフは少人数のものが多くみられます。
24時間営業のため、時間当たりの運営経費は効率が良く、会費も低めに設定されています。
フランチャイズジムの規模
フランチャイズジムの規模は様々で、非常に大規模なジムから小規模のものまであります。
【大規模なジム】
トレーニング室が非常に広く、各種の設備や器具が設置されており、スタッフもそれなりの人数が揃っています。設備は、トレーニング室、シャワー室、更衣室などのほか、レッスンスタジオや浴場などが用意されているところもあります。
全体の面積が広いため、物件賃借費がそれなりにかかります。また、シャワー室や浴場、レッスンスタジオなどの内装費やトレーニング用の設備・器具の購入費・リース代、スタッフの人件費なども必要であるため、まとまった額の初期費用や運営経費が必要です。
【小規模なジム】
フランチャイズオーナー1人、あるいは小人数のスタッフで運営する規模の小さいジムです。トレーニング室の面積は狭く、マンションの1室などで開業することも可能です。物件賃借費、内装費、設備・備品費、人件費などの費用を極力抑えて開業・運営したい方に向いています。
この場合、フランチャイズオーナーがトレーニングやダイエットの知識を持っており、それなりの技量があれば、オーナー兼トレーナーとして自分1人で開業ができます。
フランチャイズジムの開業・運営費用と収益
【開業費用】
フランチャイズジムを始めるには、以下のような開業費用がかかります。
- ①フランチャイズ加盟金
フランチャイズに加入する際に払う費用で、100~400万円が相場となっています。 - ②場所の取得費・賃借費
トレーニング室など物件の取得費または賃借費です。 - ③トレーニング室・シャワー室・更衣室の内装・設備費
トレーニング室・シャワー室・更衣室などの内装や設備にかかる費用です。 - ④看板・出入口鍵工事費、防犯・セキュリティ費用
ジムの看板、出入口の錠前工事、防犯カメラなどセキュリティシステムにかかる費用です。 - ⑤トレーニング器具の購入費
トレーニング用マシン・バーベル・ダンベルの購入に要する費用です。 - ⑥研修費
本部の研修を受けるための費用です。 - ⑦宣伝広告費
開業のための宣伝広告費用です。
これら必要となる開業費用は、フランチャイズによって異なります。また、開業場所やジムの規模、ジムの場所を取得するか賃借するか、自分で用意するかなどでも大きく違ってきます。そのため、一概にはいえませんが、500~3,000万円程度が開業費用の相場となっています。
【運営費用】
フランチャイズジムを運営するための費用は、次のとおりです。
- ①ロイヤリティ
ロイヤリティとは、フランチャイズ加入者がフランチャイズ本部(フランチャイズを運営する企業)に支払う「商標の使用料」のことです。このロイヤリティには、変動型と定額型があります。
〇変動型
ジム売上収入の12~15%程度が相場となっています。
〇定額型
毎月5~15万円程度が相場です。
- ②場所の賃借費
トレーニング室など物件の賃借費です。 - ③スタッフ人件費
トレーナーやインストラクターを雇う場合の人件費です。 - ④光熱水費
照明・冷暖房費・水道代などの光熱水費です。 - ⑤トレーニング器具のリース代
トレーニング用マシン・バーベル・ダンベルなどをリースする場合の費用です。 - ⑥宣伝広告費
生徒募集のための宣伝広告費用です。
これらの運営費用も、フランチャイズによって、また、ジムの規模やジムの場所を取得するか賃借するか、自分で用意するか、さらにスタッフを雇うか否かなどで異なってきます。一概にはいえませんが、平均的な規模のジム運営費用は、毎月100万円程度といわれています。
【収益】
フランチャイズジムの収入には、次のものがあります。
- ①会費収入
会員からの会費収入です。
フランチャイズジムの会費は運営方式の違いなどによる幅がありますが、毎月3,000~3万円程度となっています。 - ②売上収入
プロテインや健康ドリンク、健康グッズなどの売上収入です。
例えば、月会費2万円のジムを始めたとしましょう。上で説明したように、ジムの平均的な運営費用が月100万円かかる場合に、赤字にならないようにするには、月会費2万円×会員数50人=月収入100万円で、50人の会員が必須となります。
ここには、不確定要素である健康グッズなどの売上収入は計上していません。
また、開業費用をローンで賄っていると、毎月数十万円の返済が必要かもしれません。
ローン返済が毎月30万円あるとすると、
〇月運営費用100万円+月ローン返済額30万円=月必要費用130万円
〇月必要費用130万円÷月会費2万円=会員数65人
となり、65人以上の会員確保が必要となります。
上記の場合、会員が100人集まれば、
〇月会費2万円×会員数100人=月収入200万円
月収入200万円-ローン返済含めた月必要費用130万円=70万円
この70万円から税金(単月分)を払った残りが、1か月の手残り利益となります。
すなわち、1月分の手残り利益は、
〇手残り利益=(会費×会員数)+売上収入-運営費用-ローン返済額-税金(単月分)
となるため、ジム経営の成否は、会費の設定と会員を何人集めることができるかにかかっています。
フランチャイズジムのメリット
次に、フランチャイズジムのメリットについて見ていきましょう。
商号を利用できる
フランチャイズジムに加入すると、フランチャイズが持つ商号(屋号)を利用することができます。
トレーニングを始めようとして良さそうなジムを探す場合は、まず初めに、世間に周知されている有名なジムを調べます。一般の人は、有名なジムは設備が充実しており、トレーニングメニューやスタッフも信頼できると考える傾向があるからです。
元来、スポーツジムは、快適に続けることができる練習環境(広さ・設備・スタッフ)やトレーニングの成果が具体的に得られるような練習の質(プログラム・指導内容)が求められます。本当は、これらの練習環境や質の高さを先に確かめることが重要ですが、一般の人は、有名なフランチャイズジムであれば、練習環境や質が良いはずと簡単に信じて申し込んでしまうのです。
それに対し、周知度が低いジムは、いくら練習環境や質が良くても、会員を集めるのは容易ではありません。
このように、会員はフランチャイズの商号やブランドに惹かれて集まってくるため、フランチャイズに加入すると、その商号の知名度やブランド力を最大限利用することができるのです。
経営モデルを利用できる
経営モデルとは、「この立地・規模では〇人の会員が見込め、売上げ〇円、利益〇円で事業を継続できる」という経営のひな形です。
【標準的な経営モデル例】
- ①立地 西武池袋線江古田駅 徒歩3分 (駅近物件)
- ②規模 床面積200㎡
- ③年数 開業5年目
- ④設備 トレーニング室・シャワー室・更衣室
- ⑤器具 ショルダープレス2台、ルームランナー3台、ダンベル20㎏4個・・・
- ⑥スタッフ トレーナー3人、受付・事務1人
この場合の
- ①月間売上高 250万円(会費収入2万円×会員120人、グッズ売上10万円)
- ②月間必要経費 150万円(家賃50万円、人件費15万円×3人、電気代10万円・・・)
- ③月間営業利益 100万円
このようなモデルが、条件を変えて多数揃えられています。フランチャイズ本部は、加盟店の運営実績などを集約し、ジムを事業継続するための経営モデルを揃えています。そのため、加盟店はその経営モデルに従ってジム運営を行うことにより、いち早く事業を軌道に乗せることが可能です。
それに対し、個人経営でジムを始める場合、当初は頼るべき経営モデルなどどこにもなく、独力で試行錯誤を重ねながらジムの運営を行っていくことになります。
このように、フランチャイズでは、事業継続のための標準的な経営モデルを利用できるため、加盟店オーナーは安心して事業に専念することができます。
経営ノウハウを利用できる
フランチャイズ本部は、ジム経営のための豊富なノウハウや経験を持っています。フランチャイズでは、多くの広告媒体の中で何を使えば効果的に会員募集ができるか、また、宣伝広告のタイミングはいつがよいかなどについて調査しており、その調査結果に基づき最も効果が上がるPRを行います。
また、会員が快適にトレーニングを続けることができるよう、設備などの練習環境をどのように整えればよいか、目的別のトレーニングプログラムをどう組めばよいか、スタッフの教育をどうすればよいかなど、ジム運営にかかる課題・問題について、豊富なノウハウや経験を持っています。
さらに、光熱水費の節約方法や防犯・セキュリティのポイント、会員のクレーム対策など、事業を継続するための様々な事項について、検討・改善を行ってきています。
フランチャイズジムに加入すれば、このようなフランチャイズ本部の持つ豊富なノウハウや経験、統計データなどを利用することができます。
有利な価格で備品を購入できる
ジムを始めるには、トレーニング用のマシンや各種器具を備えておかなければなりません。
マシン類は、用途別に種類が分かれており、価格も非常に高価です。また、マシン以外にも、ダンベルやバーベル、ベンチ、マット類なども必要です。
これらのマシンやトレーニング用器具を揃えようとすると、まとまった資金が必要となります。しかし、フランチャイズによっては、これらのマシンやトレーニング用器具を独自のルートで割安に調達・リースしてくれるところもあります。このような特典を利用すれば、開業に要する初期費用を節約することが可能です。
有利に会員を募集できる
大手の有名なフランチャイズは、雑誌・テレビ・ネットなどの広告媒体を使い、写真や動画などで頻繁にPRを行っています。
多少の宣伝広告料をかけても積極的にPRを行うことで、そのジムに会員が集まり、それを見た事業者がフランチャイズに加入するため、最終的に、フランチャイズ加盟金やロイヤリティが本部に多く入ることになるのです。
そのため、有名大手のフランチャイズは、潤沢な資金を使って積極的に宣伝広告を展開するため、非常に効果的な会員募集が可能となります。
フランチャイズジムに加入すれば、その豊富な宣伝広告力を利用して、有利に会員募集を進めることができます。
本部のサポートがある
フランチャイズでは、事業を運営する上で生じる様々な課題・問題について、本部の支援を受けることができます。
一般的に、ジムの運営では、以下のように様々な問題やトラブルが発生します。
- ①会員が集まらない
- ②退会する会員が増えた
- ③事故・怪我・盗難が発生した
- ⑤会員同士のトラブルが発生した
- ⑥トレーニングの成果が現れない会員が多い
- ⑦会員からのクレームが多い
- ⑧人件費がかかり過ぎる
- ⑨光熱水費が収益を圧迫する など
個人経営のジムでは、このような様々な問題について、誰からもサポートを受けることができず、自分だけの力で解決していく必要があります。しかし、フランチャイズジムでは、このような様々な問題やトラブルに対し、本部の経験豊富なスタッフが問題解決のための指導やアドバイスを行ってくれます。
初心者でも始めることができる
フランチャイズのメリットは、初心者でも事業を始めることができることです。それは、ジム経営の初心者であっても、フランチャイズ本部の心強いバックアップを支えに事業を進めることができるからです。
例えば、ダイエットや筋トレ、栄養学などの専門知識や事業経営のノウハウをほとんど持っていない初心者が、個人でジム経営を始めようとしたら、非常に無謀な試みといわざるを得ないでしょう。
しかし、このような知識や経験がない初心者であっても、フランチャイズに加入すれば、研修や個別指導を受けながら、本部が開発したトレーニングプログラムやジム経営のノウハウを利用して事業を始めることができます。
さらに、事業を行う上で困ったことや問題が発生した場合にも、本部スタッフの指導やアドバイスを受けることも可能です。
このように、フランチャイズでは、その分野の知識や経験がない初心者であっても、本部のサポートを受けながら創業することができるのです。
フランチャイズジムのデメリット
次に、フランチャイズジムのデメリットについてみていきましょう。
加盟金がかかる
フランチャイズジムに加入するには、フランチャイズ本部に加盟金を支払う必要があります。個人経営でジムを始める場合は、この加盟金は不要であるため、フランチャイズに加入するデメリットの一つとなります。
加盟金の具体的な金額は、フランチャイズにより異なりますが、概ね100~400万円程度が相場となっています。フランチャイズジムを始めるには加盟金以外にも様々な経費が必要であり、開業費用をできるだけ抑えたい方にとっては、100~400万円の出費は負担になるでしょう。
ロイヤリティがかかる
フランチャイズジムに加入すると、毎月本部にロイヤリティ(商標使用料)を支払う必要があります。
ロイヤリティには、変動型と定額型がありますが、金額の算出方法は各フランチャイズによって異なります。変動型ロイヤリティはジム売上収入の12~15%程度、定額型ロイヤリティは毎月5~15万円程度が相場となっています。
この中で、特に定額型ロイヤリティは、売上収入がない月でも支払う必要があることから、ジムの経営が軌道に乗るまでの間は負担となる場合があります。
ペナルティが発生する場合がある
通常、フランチャイズ契約には5~10年などの契約期間があり、その契約期限までは契約内容を守る必要があります。仮に、契約期間中に途中解約してしまうと、ペナルティとして違約金が発生する場合があります。この契約期間の長さや違約金の額は、フランチャイズによって異なります。
このことから、個人経営のジムと異なり、フランチャイズジムではオーナーの都合で好きな時期に廃業することが困難です。
例えば、フランチャイズ契約を結んでジムを始めたが、契約不振が続くため、または家庭の事情により、契約期限前にジムを廃業したい場合には、ペナルティの負担がかかってきます。
自分独自の経営が難しい
通常、フランチャイズでは、フランチャイズ本部が各加盟店の経営方針を策定します。各加盟店は、フランチャイズ本部が立てた経営方針の枠内で、店舗を運営していきます。このため、フランチャイズジムでも、ジムの経営は本部の方針に従いながら行う必要があります。
特に、次の事項については、ジムのオーナーが自分の裁量で決めることができない例が多くみられます。
①ジムの運営方式
フランチャイズジムには、一般的なジム、パーソナルジム、集団指導のジム、客層限定のジム、24時間トレーニングができるジムなど、様々な種類があります。フランチャイズによっては、他のフランチャイズと差別化を図るため、パーソナルジム路線を展開するところもあれば、「会員は女性オンリー」など客層を限定して運営しているところもあります。
このように、ジムの運営方式を統一しているフランチャイズに加入した場合は、自分のジムもその運営方式に従う必要があります。
例えば、パーソナルジムを展開しているフランチャイズに加入して、自分のジムはマンツーマンではない一般方式で運営しようとしても、本部に許可されません。同じく、会員を高齢者に限定しているフランチャイズで、高齢者以外の若年層も取り込みたいと思っても、実現は難しいでしょう。
このように、ジムの基本的な運営方式は、加入するフランチャイズの方針に従う必要があります。
②トレーニングのプログラム・カリキュラム
ジムで行うトレーニングのプログラムやカリキュラムも、オーナーが勝手に変更することは困難です。
フランチャイズジムは、それぞれが独自に開発・検討したトレーニングプログラムによって指導を行い、世間の評価や信用を集めています。例えば、ダイエット目的のプログラムでは、体に高い負荷ではなく、低い負荷を繰り返してかけるトレーニングプログラムになっており、週や月ごとのトレーニング内容やスケジュールが決められています。
また、食事の内容や頻度も、タンパク質や野菜を多く含む食事を1日3食決まった時間に採るなどが指導内容になっています。
フランチャイズが開発・検討したトレーニングプログラムは、科学的な根拠に基づいて作成され、長い年月をかけて実際の現場でも成果を上げているものです。それを、加盟店オーナーの個人的な判断で変えてしまうと、トレーニングの成果に支障が生じてしまい、それがフランチャイズの評判に悪い影響を及ぼす可能性があります。
このため、フランチャイズの評価や信用を失墜させるような、指導内容の変更は許されないとみてよいでしょう。
③開業場所
フランチャイズによっては、既存の加盟店と商圏が競合しないように、本部が開業場所を決定する場合があります。
④会費
本部がジムの会費を決定しているフランチャイズがあります。この場合、加盟店オーナーが会費をより高く、またはより安く設定しようとしてもできません。これは、フランチャイズに標準的な経営モデルがあることも関係しています。標準的な経営モデルは、「この立地・規模では、毎月〇円の会費収入が見込め、売上げ〇円、利益〇円が想定できる」というものです。
ジムの開始後に経営を軌道に乗せていくには、この経営モデルを目標にし達成していくことが早道です。そのため加盟店オーナーは、その経営モデルに定められた会費を徴収する必要があるのです。
フランチャイズジムに加入するポイント
それでは、フランチャイズジムに加入する際はどのような点が重要になるのでしょうか。ここでは、フランチャイズジムに加入するポイントについてみていきましょう。
自分の方向性に合ったフランチャイズを選ぶ
フランチャイズによって、ジムの運営方式や経営方針は様々に異なっています。
例えば、
- ①マンツーマン指導型
- ②集団指導型
- ③会員が女性限定、高齢者や子供限定
- ④24時間トレーニング環境を提供
- ⑤普通の一般的なジム
など、その運営方式は多様化しています。
また、指導プログラムも、
- ①本格的な筋トレ
- ②ダイエット目的の運動
- ③高齢者の老化防止
- ④ヨガなどのストレッチや健康法
など、様々なものがあります。
このことから、フランチャイズに加入する際は、自分がやりたいと思っている方向に合ったフランチャイズを選ぶことが肝心です。マンツーマン指導のパーソナルジムを始めたいと思っている人が、普通の一般的なジムを展開するフランチャイズに入っても、自分の希望を達成することは困難です。また、ダイエットに特化したジムを開きたい方が、本格的な筋トレを主体にしているフランチャイズに加入しても、目的が違うため軌道修正を余儀なくされるでしょう。
また、以下のように、ターゲット層の違いにも注意が必要です。
- ①ビジネスマン・OLが対象
- ②主婦・学生・高齢者などが対象
ビジネスマンやOLを対象にマンツーマン指導のパーソナルジムを展開しているフランチャイズであれば、都心のビジネス街に近い立地で、ある程度の高い会費を設定している例があります。
しかし、主婦・学生・高齢者などを対象としているフランチャイズでは、住宅地に近い場所を中心に立地し、比較的安い会費を掲げています。
このように、一口にフランチャイズジムといっても、その運営方式や指導プログラム、ターゲット層などが様々に異なっています。自分の方向性に合っていないフランチャイズを選んでしまうと、本来自分がやりたかったことが実現できず、モチベーションを維持することも難しくなってしまいます。
フランチャイズに加入する際は、加入後に自分は何をやりたいのか、自分にはどのような夢や計画があるかなどについて、しっかりと自覚した上で、自分の方向性にマッチしたフランチャイズを選ぶことが重要です。
快適に続けることができるフランチャイズを選ぶ
スポーツジムの運営で非常に大切なことは、会員が快適に続けることができるジムにすることです。
会員の皆が快適に続けることができなければ、ジムを運営している意味がなく、経営も立ちいかなくなる危険があります。ジムは、以下のように、会員が快適に続けることができる練習環境やトレーニングの成果が具体的に得られるような練習の質が要求されます。
【練習環境】
- ①トレーニング室など
過密にならない適度な広さがある
換気されている
各部屋が清潔である - ②トレーニング器具
安全で使いやすいトレーニング器具が揃っている
待ち時間がないようトレーニング器具の数量が十分にある - ③スタッフ
気を使わなくてよいスタッフが揃っている
しっかりとした指導を行える質の良いスタッフがいる - ④客層
客層が良い
不良や反社会的な客がいない
【プログラム・指導内容】
- ①プログラム
目的別・年齢階層別・性別など個人の目的・条件に応じた練習プログラムやカリキュラムが用意されている - ②指導内容
初心者にもわかりやすく親身になって指導してくれる
中・上級者には、そのレベルに応じた指導をしっかりと行ってくれる
これらの練習環境やプログラム・指導内容は、フランチャイズの入会パンフレットや資料を見ただけでは十分に把握できません。最低でも、当該フランチャイズに加盟しているジムのトレーニング風景を見学させてもらい、練習プログラムやカリキュラムを貰って確認の上判断することが必要です。
フランチャイズに加入してジムを始めるには、自分の大切な資金をまとめて投入することになります。したがって、フランチャイズの加入にあたっては、フランチャイズ選びのための事前調査の労力を惜しんではいけません。
最善の策は、自分が目を付けたフランチャイズに加盟しているジムの会員になり、2~3か月の間トレーニングを実際に体験し、ジムの練習環境や練習プログラム・指導内容を観察して、快適に続けることができるフランチャイズジムかどうかを判断することです。
提供ノウハウが充実しているフランチャイズを選ぶ
フランチャイズに加入する大きなメリットとして、フランチャイズ本部が持つジム経営のノウハウを利用できることがあげられます。加盟店オーナーとしては、本部から提供されるノウハウが充実していれば、個人経営のジムに比べ有利な立場で事業を進めることができます。
フランチャイズが提供してくれる経営ノウハウには、以下のようなものがあります。
- ①効率的、効果的な会員募集の方法
- ②会員の退会を防ぐ方法
- ③最少人数のスタッフでジムを運営する方法
- ④光熱費などの必要経費を抑制する方法
- ⑤会員からのクレームに対処する方法
- ⑥ジム内でトラブルが発生した場合の対応方法
- ⑦トレーニングで事故や怪我を防止する方法
- ⑧感染症対策を中心とする衛生対策
以上のような各分野で、フランチャイズ本部はその持っている豊富なノウハウを提供してくれます。提供方法は、マニュアル化されている、研修で教示する、スタッフが口頭でアドバイスするなど様々です。
フランチャイズ選びでは、提供ノウハウが充実しているフランチャイズを選びましょう。
市場調査・会員募集に強いフランチャイズを選ぶ
フランチャイズ本部は、ジム経営を行うために、どこに立地するのが適切か、ターゲット層をどこに置くかなどについて常に検討しており、そのためには、事前の市場調査が重要な手法となります。フランチャイズが行う市場調査のポイントは、次のとおりです。
①年齢別・性別・職業別・居住地別のニーズ
年齢別・性別・職業別・居住地別などの条件で、トレーニングのニーズがどの程度あるかによって、ジムのターゲット層や立地場所を決めていきます。
②トレーニングの目的別ニーズ
トレーニングの目的は、本格的な筋トレ、ダイエット、老化防止など様々ですが、目的別にどの程度のニーズがあるかを調べます。また、①の年齢別・性別・職業別にそれぞれどの目的が多いかも調査し、年齢別・性別・職業別に対策を立てていきます。
③ジムの運営方式別のニーズ
マンツーマン指導によるパーソナルジム方式、一般のジム方式、24時間オープン方式など、それぞれのニーズがどの程度あるかを調べ、運営方式決定の際の参考にします。
④会費の額、ジムの場所
ジムの会費が月いくらまでなら払えるか、ジムの場所が駅から〇分以内であれば通いやすいかなどを調べ、会費の設定やジムの立地場所決定の参考にします。
⑤競合ジムの場所・規模等
競合する既存のジムの場所・規模などを調べ、出店の参考にします。
フランチャイズが行う市場調査の時期や方法などは各フランチャイズによって様々ですが、以上のような組織的な市場調査を行い、その結果を分析・検討し、適切な開業場所を選定していくのです。
フランチャイズジムに加入する際は、科学的な市場調査で実際の成果を上げているフランチャイズを選びたいものです。
また、会員募集に力を入れていることもフランチャイズ選びの重要なポイントです。
大手のフランチャイズであれば、テレビ・新聞・雑誌・広告・ネット掲載など各種の広告媒体を使って、大規模な宣伝広告を行い、会員を集めています。フランチャイズジムの宣伝広告が、視聴者の関心を惹く内容になっているか、健康をイメージさせるものであるか、それを見てトレーニング内容や成果を想像することができるかなどに着眼し、会員募集に力を入れているフランチャイズを選ぶことが重要です。
サポート体制が充実しているフランチャイズを選ぶ
フランチャイズの強みは、加盟店が困ったときに強力な支援ができることです。このことからも、フランチャイズ選びでは、サポート体制が充実しているフランチャイズを選びたいものです。
フランチャイズジムのサポートには、以下のようなものがあります。
①経済的なサポート
フランチャイズによっては、ジムの開業後に経営が軌道に乗るまでの数か月間はロイヤリティを課さないなどのサポートを行っているところがあります。ジムの開業直後は、まだ会員数も十分ではないため、会費収入も安定経営の水準に到達しない可能性があるからです。
②トラブル解決のサポート
ジムでは、会員の怪我や盗難などの事故が法的なトラブルに発展する場合があります。
ジムが会員から法的責任を追及されそうな場合に、フランチャイズ本部と契約している法律の専門家がトラブルの解決に向けてサポートを行ってくれます。
③経営面のサポート
ジムの事業収支が振るわず黒字化できないような場合に、ジム経営に精通した本部のスタッフが、経営面での指導・アドバイスを行います。
経営面での指導・アドバイスは、会員の退会を防ぐ、新会員を増やすなどで収入を上げる対策とともに、スタッフなどの人件費や光熱費で削減できるところはないかなど支出を抑える対策も含みます。
④人材面のサポート
ジム運営には、経験豊かな質の高いトレーナーなどのスタッフが必要です。その経験豊かなスタッフが、何かの事情で同時に辞めてしまい、後任がなかなか見つからない場合もあります。そのようなときに、フランチャイズ本部独自のルートで、経験があるスタッフを紹介してくれるフランチャイズがあります。
フランチャイズジムの加盟店オーナーは、ジム経営の初心者も多いことから、サポート体制が充実しているフランチャイズを選ぶことが非常に重要です。
セキュリティが充実しているフランチャイズを選ぶ
セキュリティが充実していることは、フランチャイズジムを選ぶ際の重要な条件です。
ジムでは、更衣室でトレーニングウェアに着替え、衣服や身の回りの物はロッカーに保管します。このため、貴重品などを狙った盗難に注意する必要があります。また、更衣室やシャワー室などでは、盗撮の危険もあります。このように、同じ習い事でも、トレーニングジムは絵画教室や英会話教室などと違って、セキュリティをより充実させておく必要があるのです。
具体的には、
- ①ジム内にスタッフ・会員以外の者が入らないよう入退室管理ができているか
例えば、ICカードなどを使ったオートロックシステムの導入など - ②ジム内の要所に防犯カメラが設置されているか
- ③更衣室のロッカーの鍵はどのように管理しているか
例えば、トレーニング中は受付に預ける、自分で持つなど
ジム内で、盗難や盗撮などのトラブルが発生すると、ジムの評判に大きく影響してしまいます。フランチャイズ選びの際は、セキュリティが充実しているフランチャイズを選ぶことが肝心です。
衛生対策が万全なフランチャイズを選ぶ
衛生対策が万全なフランチャイズを選ぶことも重要なポイントです。
近年は、新型コロナ禍により、ジムの経営は厳しい環境に置かれています。現在、ジムの衛生対策として最も重要なのが、以下のような感染症対策です。
- ①入室時に検温・手の消毒はされているか
- ②受付がパーテーションで仕切られているか
- ③ジム内原則マスク着用が守られているか
- ④トレーニングは、隣と距離を空けてできるか
例:マシンの数を減らすなど - ⑤使用前・使用後に、マシン・器具のアルコール消毒を行えるようになっているか
例:消毒液設置、会員にタオルを配布など - ⑥十分な換気がされているか
例:窓・ドア開けなど - ⑦一時に会員が集中しない仕組みが採られているか
例:時間予約制など
新型コロナ対策にかかわらず、シャワー室やトイレ・更衣室などが綺麗に清掃され、清潔感が保たれているかなども観察のポイントです。
事前に資金計画・収支計画を立てる
フランチャイズに加入する際は、事前に
- ①開業のための資金計画
- ②開業当初の事業収支計画
を立てておくことが重要です。
①開業のための資金計画
上で説明したとおり、フランチャイズ加盟金をはじめ様々な費用を洗い出し、それを合計したものが開業費用になります。
開業費用のうち、自己資金で賄える金額、融資を受ける金額、毎月のローン返済額を算出しておきますが、毎月のローン返済に無理な負担がかからないよう注意する必要があります。
②開業当初の事業収支計画
あらかじめ、ジムの売上収入(会費収入+健康グッズ売上収入)と必要経費(運営費用)を何パターンか想定しておきます。
〇ジムの営業利益=売上収入-必要経費
の算式に基づき、会員数を変えながら試算し、経営存続のため必要な会員数を求めておきます。
また、最終的に手元に残る利益は、以下の算式で試算しておきます。
〇手残り利益=営業利益-ローン返済額-税金
フランチャイズには、経営を軌道に乗せるための標準的な経営モデルがありますが、それはあくまで標準的な例です。そのため、その標準的な経営モデルを自分の条件に当てはめて、各項目の数字をあらためて算出し直し、シミュレーションしておくことが重要です。
例えば、標準的な経営モデルでは、開業後3年・駅から徒歩3分・広さ200㎡のジムで、月会費3万円・会員数100人・月運営経費が150万円となっていたとしましょう。自分が開業予定のジムは、駅から徒歩7分・広さ150㎡とすると、同じ開業後3年でも会員数は100人に達しない可能性があります。ましてや、開業当初は少数の会員しか集まらないことも想定されるため、月会費の額はフランチャイズで固定されるにしても、会員数は10人程度から始めて試算する必要があります。
また、標準モデルより駅から遠く、面積も狭いことから、毎月の家賃や光熱費は標準モデルより安くなるはずです。そのように、収入・支出両面から標準モデルの数字を見直して、自分用に修正した上で損益分岐点を求めておくことが大切です。
まとめ
一口にフランチャイズジムといっても、その運営方式や指導内容、ターゲットとする客層などが様々に異なります。フランチャイズジムの加入を成功させるには、開業後に自分が何をやりたいか、自分の夢や計画は何かを踏まえた上で、自分の方向性に合ったフランチャイズに加入するのがポイントです。
そして自分の方向性に合うフランチャイズが見つかれば、その加盟店が快適に続けることができるジムかどうかを実際に自分の目で確かめることが肝心です。それらの条件をクリアできれば、開業のための資金計画作成や開業当初の事業収支シミュレーションの実施など、フランチャイズジムの開業に向けた具体的な準備を進めていきましょう。