とっても簡単! 加盟オーナーに必要な経営分析講座

経営未経験でもやる気さえあれば挑戦できるフランチャイズ。ただし、長く続けたいなら経営者として最低限の経営分析知識を身につけておかなければなりません。フランチャイズは開業資金さえ揃えば比較的簡単に独立できるビジネス形態です。開業後は定期的に本部から支援スタッフが見回りにくるので、経営の悩みなどを相談することができます。

しかし、本部スタッフは学校の先生ではありません。経営者はオーナー自身であり、本部ではないのです。学ぶ姿勢も大切ですが、加盟オーナーも店舗スタッフを教育する立場にあるわけです。経営者として必要な経営知識を身につけることはフランチャイジーの最も基本的な業務の1つと言えるのではないでしょうか。

今回の記事では決算書の基本的な読み方を解説していきます。なかでも経営状況を判断する、代表的な3つの指標をわかりやすく説明します。

加盟オーナーが押さえるべき財務諸表のポイント

財務諸表(決算書類ともいいますが)は、経営者の全てがを読めるわけではありません。むしろ正確に読み解けるのはほんの一握りでしょう。ですが、デキる経営者は企業の「安全性」や「収益性」といった直接経営に関わる項目だけをピンポイントで押さえているのです。

決算書とは

そもそも決算報告書は、会社の経営状態や資産状況を明らかにする「企業の通信簿」です。投資家や株主たちは会社が提出する決算書類をもとに、株の売買を判断します。

決算書類は主に次の3つからなります。

決算書類 1.貸借対照表
2.損益計算書
3.キャッシュ・フロー計算書

貸借対照表は「B/S(Balance Sheet)」、損益計算書は「P/S(profit and loss statement)、キャッシュ・フロー計算書は「C/F」(cash flow statement)とも表記されます。

貸借対照表とは

貸借対照表は、「会社にいくら資産があるか」「いくら借り入れをしているか」を示す書類です。おもに資産をあらわす「資産の部」、借金をあらわす「負債の部」、資産と負債の差額であらわす「純資産の部」の3要素からなります。

貸借対照表の例

平成30年◯月◯◯日現在(単位:百万円)

資産の部 負債の部
流動資産 ◯◯◯◯ 流動負債 ◯◯◯◯
固定資産 ◯◯◯◯ 固定負債 ◯◯◯◯
繰延資産 ◯◯◯◯
純資産の部
株主資本 ◯◯◯◯
資本金 ◯◯◯
資本剰余金 ◯◯◯◯
純資産合計 ◯◯◯◯
資産合計 ◯◯◯◯ 負債・純資産合計 ◯◯◯◯

損益計算書とは

損益計算書は1年間で売り上げた会社の利益やかかった費用などを明らかにする書類です。損益計算書には「売上総利益」「営業利益」「経常利益」「税引前当期純利益」「当期純利益」の5種類があります。

損益計算書の5つの利益

売上総利益 売上全体の利益のこと。「売上高」から「売上原価」を差し引いて求める。粗利益ともいう
営業利益 本業で稼いだ利益のこと。「売上総利益」から「販売費及び一般管理費」を差し引いて求める
経常利益 本業以外の活動で得られた利益を足したもの。営業利益」に「営業外収益」を足し、「営業外費用」を差し引いて求める
税引前当期純利益 税金を支払う前の利益。「経常利益」に「特別利益」を足し、「特別損失」を差し引いて求める
当期純利益 すべてのコストを差し引いた最終的な利益。「税引前当期純利益」から「法人税、住民税及び事業税」などを差し引いて求める

キャッシュ・フロー計算書とは

会社に入るお金と出て行くお金の流れを詳細に記したものがキャッシュ・フロー(CF)計算書です。「営業キャッシュ・フロー」「投資キャッシュ・フロー」「財務キャッシュ・フロー」の3要素からなります。

3つのキャッシュ・フロー

営業CF 商品販売・サービスなど営業活動(本業)で獲得したキャッシュ(現金)のこと
投資CF 設備投資や固定資産の売却によって獲得したキャッシュのこと
財務CF 会社の借り入れや社債の発行で得られたキャッシュのこと

経営分析のキホン

財務諸表から会社のさまざまな能力を分析することができます。たとえば、貸借対照表では、流動比率(流動資産÷流動負債×100%)を求めることで、短期の支払能力を明らかにできます。

また損益計算書では、純資産利益率(利益÷純資産×100%)で、会社が持つ資産がどれだけの利益を生み出しているか(=資本効率)を明らかにすることができます。

ここでは基本的な「安全性」「収益性」「成長性」の分析を見て行きましょう。

「安全性」分析

安全性分析とは貸借対照表を用いた分析であり、会社の健全性、倒産の可能性、支払能力などを判断することができます。
「安全性」を見る指標は、おもに「流動比率」「固定比率」「自己資本比率」などがあります。

流動比率 流動資産÷流動負債×100% 短期的(1年以内)の支払能力を分析する指標。流動資産と流動負債を比較し、短期的な安全性をみることができる。流動資産>流動負債であることが望ましい
固定比率 固定資産÷自己資本×100% 長期的の支払能力を分析する指標。長期にわたって使用する固定資産をもとに分析する。100%以下であることが望ましい
自己資本比率
(ROE)
自己資本÷総資産×100% 資金調達を返済する不要のない自己資本でどれだけ行っているかを分析する指標。自己資本(会社の純資産)に占める純資産の割合を示す。会社の中長期的な安全性を分析する。自己資本比率は高いほど安定していることをあらわす

「収益性」分析

企業の「収益性」(利益率)を明らかにする指標になります。おもに、損益計算書を用いた分析であり、「売上高総利益率」「純資産利益率」「売上高営業利益率」などがあります。

売上高総利益率
(粗利益率)
利益÷売上高×100% 商品力によって稼いだ利益を分析する指標。売上高に対する売上総利益の割合を示す
総資産利益率
(ROA)
利益÷総資産×100% 事業に投入された総資産が、どれほど効率的に利益を獲得したかを示す指標。リターン・オン・アセット(Return on asset)の略
売上高営業利益率 営業利益÷総売上高×100% 本業が効率的に行われたかどうかを示す指標。売上高に占める営業利益の割合のこと

「成長性」分析

「成長性」は会社の当期と前期を比較して成長度を明らかにする指標です。「成長性」は、「売上高成長率」、「経常利益成長率」、「総資産成長率」などがあります。

成長性分析

売上高成長率 売上高増加額(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100% 売上高の伸び率を示す指標
経常利益成長率
(ROA)
経常利益増加額(当期経常利益-前期経常利益)÷前期売上高×100% 経常利益の伸び率を示す指標
総資産成長率 純資産増加額(当期純資産-前期純資産)÷前期純資産×100% 純資産の伸び率を示す指標

「安全性」「収益性」「成長性」の3指標を押さえるだけで、経営者としてさらに飛躍することができます。計算式自体は難しいものではないので、まずは用語と意味を覚えることから始めてみましょう。