フランチャイズはクーリング・オフ可能? クーリング・オフ制度の仕組みも詳細解説!

ノウハウも経験もない状態で会社やお店を経営したい、そんな人に人気なビジネスモデルがフランチャイズです。コンビニや塾や飲食店やサービス業など様々なフランチャイズビジネスを探すことができます。

フランチャイズビジネスを始めようとする時に必ずやらなければならないことがフランチャイズビジネスを経営するフランチャイズ本部との「フランチャイズ契約」です。このフランチャイズ契約を行うと、契約の解除ができません。つまり、クーリング・オフ制度も適用されません。

今回の記事では、フランチャイズ契約でクーリング・オフ制度が適用できない理由クーリング・オフ制度の仕組みを中心に解説します。また、フランチャイズ契約時点でトラブルに合わないように注意すべきポイントもご紹介するので、参考にしてみてください。

クーリング・オフの制度について

クーリング・オフの制度について

クーリング・オフを理解する上で、必要となるのは“契約”の知識です。契約とは、法的に保護される約束を言います。2人以上の当事者が合意して、法的な権利と義務の関係が発生します。最も身近な契約の一つが『売買契約』になります。売買契約は、商品の“売り手”と“買い手”が合意して商品とその代金を交換して成立します。この時に、合意は口頭で成立して、契約書はありません。

このように、本来契約の成立には契約書は不要です。いったん、契約が成立すると契約を行った当事者には権利と義務が発生します。例えば、先ほどの売買契約においては“売り手”は商品を“買い手”に受け渡す義務が発生します。また、“買い手”は“売り手”に対して商品代金を支払いする義務が発生します。これらの義務を果たさなければ、契約義務違反となり損害賠償*を請求されることがあります。

これが、契約の基本になります。しかし、契約には複雑な義務や条項を含んでいるものや5年や10年の単位で契約期間や義務が発生するものもあります。そのため、充分な理解をせずに契約を締結してしまった場合の救済措置として、クーリング・オフ制度があります。

クーリング・オフ制度とは、契約成立後の一定期間において契約の解除ができる制度になります。このクーリング・オフ期間中の解約であれば、契約義務違反になることや損賠賠償請求を受けることが原則ありません。

*損害賠償とは、債務不履行や不法行為によって他人に損害を与えた者がその損害を補償することを言います。契約の不履行などの場合には、契約を履行されていた場合に得られていたはずの利益などが損害となります。

基本的な概要

クーリング・オフ制度とは、“消費者保護”を目的として特定商取引など指定した契約方法について一定期間であれば解除できる制度です。

クーリング・オフとは、契約の申込や契約の締結後に書面を受け取った日から8日間など一定の期間内に契約内容をじっくり考えることができるように無条件に契約の申込や契約自体を解除できるようにした制度です。

ただし、前述のようにすべての契約にクーリング・オフが適用できるわけではありません。例えば、売買契約ではクーリング・オフは適用されません。スーパーで商品を購入し、3日後に契約を取り消しすることはできません。また、インターネットで消費者が商品を選択して購入する通信販売にもクーリング・オフは適用されません。

クーリング・オフが適用されるのは、契約前後にトラブルが生じやすい以下の6つの取引類型を対象としています。また7つのトラブルの多い取引類型においてトラブル防止のために規則・ルールを定めているのが特定商取引法になります*。

≪クーリング・オフが適用される6つの取引類型≫

  • ✓訪問販売
  • ✓電話勧誘販売
  • ✓特定継続的役務提供
  • ✓訪問購入
  • ✓連鎖販売取引
  • ✓業務提携誘引販売取引

この6つ以外の販売形態の店舗販売などはクーリング・オフの対象ではありません。

目的は消費者保護

クーリング・オフ制度は、訪問販売や電話勧誘販売など販売によって強くプッシュされて契約はしてみたものの、冷静になって考えた時に「契約をやめたい」と思った時に一方的に申込や契約の解除ができます。

クーリング・オフ制度のような仕組みは、消費者の保護のためにあります。消費者は、まったく検討していない時に、セールスマンからの電話や場合によっては家庭への訪問や電話などによって始まるいきなりのセールスを受けることになります。

販売側からすれば、用意されたセールストークや資料などを活用して短期間で一気に消費者に商品やサービスの販売を行うプロです。相手の懐に入り信用させて、『今だけのお得な情報』や「あと1人だけの割引」などと言って、説明から申込までを考える時間を与えずに“契約”や“申込”といったゴールまで消費者を誘導していきます。

一方で、消費者からするとセールスが始まるとも思っていないうちにセールスが始まり、気づけば契約していたということになります。もちろん、契約内容についても説明は受けているものの、正しくかつ十分な理解をする機会も時間もないままに契約していることも少なくありません。

また、消費者からすると初めての話ではありますが、販売者側からみると様々なケースを想定してかつ情報を集めているうえで販売をしています。このような状況では、消費者とセールスを行う事業者の間の情報格差が起きてしまい、消費者にとって不利な状況での契約に至ることも考えられます。

これらの消費者に不利な状況下で必要のない契約を結ばれることが無いようにしているのがクーリング・オフ制度になります。

特定商取引法とは

クーリング・オフができるのは、特定商取引法で規定した『販売方法』と『指定商品・サービス』になります。

特定商取引法とは、事業者による違法行為や悪質な販売・勧誘行為などを防止し、消費者の利益を守ることが目的の法律です。具体的な消費者保護の方法の代表が、クーリング・オフになります。

特定商取引法では、対象となる販売方法を7類型定めています。この販売方法によってクーリング・オフができる期間がそれぞれ定められています。

取引類型 期間 内容
訪問販売 8日間 消費者の自宅や職場などへ訪問して販売(キャッチセールスやアポイントメントセールスを含む)での契約*
電話勧誘販売 8日間 電話で勧誘を受けた販売での契約*
特定継続的役務提供 8日間 一定期間と一定期間を超えるサービス**の契約
連鎖販売取引 20日間 “他の人が加入すれば利益が得られる”という販売員が次の販売員を勧誘していくことで販売組織やネットワークを広げていくマルチ商法やネットワークビジネスなどによる商品や役務の販売***。
業務提供誘引販売取引 20日間 収入が得られる仕事を提供する代わりに、必要となるという勧誘によって、商品はサービスなどを契約する内職やモニター商法***。
訪問購入 8日間 一般消費者の自宅などに訪問を行いその場で物品の購入を実施する取引

なお、特定商取引法で定められている通信販売においてはクーリング・オフが適用できません。通信販売では、消費者が自身の判断をもって他の商品や他の販売事業者と比較できることがその理由になります。

*この場合の契約には、チケットなどの権利やレンタルやリフォームどのサービスや指定商品が対象となります。

**エステや語学教室や学習塾や家庭教師派遣、パソコン教室や結婚相手紹介などを言います。特定継続的役務提供についてはその販売場所が店舗である場合も特定商取引法の対象となります。

***連鎖販売取引ならびに業務提供誘引販売取引においても、販売場所が店舗である場合も特定商取引法の対象となります。また、連ら販売取引では指定商品はなく、全ての商品が対象となります。

●クーリング・オフが適用できないケース

クーリング・オフは、特定の販売累計によって契約内容を十分に理解する時間を取ることができない状況下で、適切な判断ができなかった場合を想定しています。そのため、十分に契約内容がわかるべき販売方法や消費者の自主的な購入や契約については対象外になります。具体例は以下の通りです。

  • ・事業用としての契約
  • ・自らの意思で店舗に出向き行った契約(ただし、「特定継続的役務提供」を除く)
  • ・現金購入で3,000円未満の契約
  • ・消耗品(化粧品や食品など)で開封して使用した場合の使用分*
  • ・ネットでの購入を含めた通信販売の場合
  • ・キャッチセールスによる飲食店、カラオケなど
  • ・その他、クーリング・オフができない商品―葬儀や乗用自動車や自宅購入など

*契約書面に「使用・消費した場合にはクーリング・オフができない」旨の記載が必要です。もし、記載がない場合には使用・消費の如何に関わらずクーリング・オフができます。

注意したいのは、法人向けの訪問販売などです。この場合も、クーリング・オフの対象外になります。なぜなら、上記の事業用の契約になるからです。消費者保護を目的としている特定商取引法では、26条1項「契約者が営業のために若しくは営業として締結する取引」は適用除外と定められています。

しかし、たとえ書面上で「事業者間取引」として記載されていたとしても、法律的な解釈で事業者間取引(営業のため若しくは営業として)とはみなされず、クーリング・オフの適用を受けられる場合もあります。判例では、事業者間の取引にあたるかどうかについて「単に契約書の記載だけでなく、当該取引の実態から判断すべき」としています。

つまり、その取引が業務用のものではなく、個人用のものだということを十分に証明できれば消費者契約としてみなされ、特定商取引法が適用されることになります。

フランチャイズ契約について

フランチャイズ契約について

フランチャイズ契約は、民法上の『事業者間の契約』に該当します。そのため、前述のクーリング・オフの適用対象外である“事業者用の取引”に該当します。フランチャイズ契約を締結しようとするオーナーは法律上や契約上は事業者として取り扱われ、フランチャイズ本部と対等の関係になります。

サラリーマンなどを辞めてフランチャイズオーナーになろうとする人は事業者としての経験がないうえにフランチャイズ本部は事業者として多くのフランチャイズオーナーに接していることが多くなります。一般的に考えればこのような状況であれば、フランチャイズオーナーとフランチャイズ本部が対等な関係であるとは言いにくいとみることもできます。

しかし、法律上は対等な関係になります。フランチャイズを始めようとするオーナーはそのタイミングから事業者として扱われることに理解と自覚が必要です。

事業者間取引

事業者間取引は、BtoB(Business to Business)やB2Bとも言われます。一方で、今までの事業者と消費者が行う契約はBtoC(Business to Consumer)と言います。

事業者間取引では、売り手はもちろんなのですが買い手の事業者であるため取引によって利益を得ることを目的としています。そのため、事業者間取引は売り手と買い手事業者の双方にとって事業活動の一環になります。

事業者間取引の場合には、消費者向けの販売と比べると1回の取引量が多いことに加えて取引が継続するため売り手企業からもメリットが大きくなります。そのため、量や期間を見込んで消費者への販売とは異なる条件などが提供できる場合も多くあります。

買い手となる事業者は利益を追求することを目的として契約を行います。そのため、通常新規で取引を開始しようとする時には、3社見積もりと言われる複数の業者に提案や見積もりをもらうなどを行い、できるだけ良い条件を引き出して取引先を決定します。

また、条件以上に必要となるのが、新規取引先の信用度になります。条件だけで取引先を決定してしまうと、欠品や不良品などが含まれる納品がされた場合には自身のビジネスに大きな影響が出てしまいます。

これらのことから、買い手事業者には購入条件や他社比較によるメリットデメリットのとりまとめと信用力の見極めやこれらを引き出す交渉力などが求められます。そのため、事業者間取引においては必要な能力を持った担当者が十分な時間をかけて決定することが一般的です。

フランチャイズ契約も事業者間取引であり、他の事業者間取引以上にフランチャイズオーナーにとっては大きく影響がある契約です。自身のフランチャイズ事業の成否を決める要素であると言っても過言ではありません。そのため、フランチャイズオーナーには買い手企業として求められる能力を充分に備えることが求められます。

フランチャイズ契約を取消できる場合

フランチャイズ契約を取消できる場合

フランチャイズ契約でもクーリング・オフが適用できないかというとそうではありません。

フランチャイズ契約形態ではあるものの、様々な費用(入会金や研修費など)を請求することが目的としており実態としてフランチャイズ契約でない場合などはクーリング・オフ制度が適用できます。契約の実態がフランチャイズ契約=事業者間契約ではなく、消費者契約に該当すると判断されるためです。

しかし、上記に該当するフランチャイズ契約は決して一般的なフランチャイズ本部ではなく、どちらかというとイレギュラーなケースと言えます。

●無効/取り消し

不当なフランチャイズ本部や契約に対しては事業者間契約であっても、契約の解除を実施することはできます。民法上の「無効」や「取り消し」や「債務取消」などの主張ができます。

無効とは、法律行為の効力を契約の最初から発生させないことを言います。契約すべてに対して無効を主張できるわけではなく、契約自体の内容が社会的に著しく不適切である場合や無意味である場合に主張できます。具体的には、以下の場合に契約の無効を主張できます。

  • ✓契約意思表示をした者に意思能力がなかった場合
  • ✓契約内容が公序良俗や強行法規*に反する場合
  • ✓契約内容の履行が当初から実現することが不可能な場合

*強制的に適用する法律の規定を言います。民法上は契約の内容は自由に決定できますが、民法第90条で「公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする」と定められています。

取り消しは、契約行為の効果自体は発生しますが、契約内容に法律で定められた取消事由がある場合には契約の取り消しを意思表示ができます。そして、取り消しの意思表示によって、契約行為の効果が契約当初に遡って消滅します。

無効の主張は、誰が主張しても良いことになっています。一方で、契約の取り消しは『取消権者』のみが主張できます。契約の取り消しは、大きな勘違いをしたため契約を締結してしまった場合の『錯誤』などを理由に主張します。

●契約の解除

無効や取り消しは、契約内容が適切でない場合や契約内容は適切であるが締結時に錯誤などの大きな問題があった場合に主張できます。一方で、契約内容にも契約締結時にも問題がないものの、契約先が約束を守らない(債務の不履行)場合には契約の解除ができます。

債務不履行による契約の解除は、債務を履行しない相手に対して相当の期間を定めて履行を要求して、それでも期間内に履行がされない場合に契約解除ができます。ただし、不履行になっている内容が契約や取引上軽微なものでは契約の解除は適用できません(新民法541条)。

つまり、フランチャイズ本部とフランチャイズ契約を締結したものの、フランチャイズ本部が契約内容である重大な義務を果たせない場合などは、一定期間を定めて義務を果たす要求を行いそれでも義務が果たされない場合には契約の解除ができます。

また、フランチャイズ本部が事業を引き継ぐことなく倒産や連絡を取ることができなくなってしまった場合など債務の履行が不能になってしまった状況や債務の履行を拒絶しているなどの状況では催告なく契約の解除ができます(民法542条)。

ただし、いずれの場合でもフランチャイズオーナーに責任がある場合には契約の解除は認められません(民法543条)

契約の解除になった場合には、当事者は契約する前の状態に戻す『原状回復』義務が発生します。もし、契約に基づいて金銭を受け取っていた場合には、原状回復義務に基づいて金銭を返還する必要があります(民法545条)。

どうしてもフランチャイズ契約をやめる場合

どうしてもフランチャイズ契約をやめる場合

フランチャイズ契約は、クーリング・オフが適用されません。また、契約内容やフランチャイズ本部側にも問題がない状況でも、自身の健康問題や家庭の事情などによってフランチャイズ契約の契約期間満了を待たずして“やめたい”もしくは“やめなければならない”状況になることもあります。

フランチャイズ契約の満了前の終了には大きく、『合意解約』『中途解約』などの方法があります。それぞれの方法は他の契約においても同様に契約終了の方法として共通するため、内容を理解しておく必要があります。

●合意解約

契約は、当事者間の合意によって終了させることができます。この契約の終了方法を合意解約と言います。合意解約では、解約条件も合意内容に含まれます。そのため、制限なく自由に定められるため解約後にトラブルが残ることを回避できます。

フランチャイズ契約の終了に合意解約が成立する場合には、フランチャイズオーナーが事業を継続できない一定の事情などがあることが一般的です。また、フランチャイズ本部側がサービスを継続できない場合にも同様に合意解約による契約の終了となるケースがあります。

●中途解約

フランチャイズ契約の規約には、契約期間中の解約である中途解約に関する事項が一般的には定められています。この中途解約の条項に沿った契約の終了を任意解約と言います。フランチャイズ契約は原則、契約期間内の任意解約をすることができない、ないしは解約の意思を示してから一定期間が必要になる条項が定められています。

また、任意解約の場合には中途解約金や違約金などが定められているケースが多くあります。フランチャイズオーナーや加盟店からすると、事業をやめるという収益がなくなるタイミングで決して少額とは言えない中途解約金や違約金がかかることは大きな負担です。

しかし、フランチャイズ本部の立場からすると、フランチャイズビジネスの仕組みではいたしかたがない面があります。フランチャイズビジネスは一定期間ビジネスが継続することを前提としたビジネスモデルとなっています。

一定期間のビジネスが継続する前提なので、フランチャイズ本部側は長期的かつ安定的に利益を確保できることが見通すことができます。長期的かつ安定的な利益をもとにフランチャイズ本部は、先行投資的として商品開発やマーケティングやビジネスノウハウの強化などを行い、フランチャイズ加盟店やそのオーナーのビジネスを強化する戦略が採用できるのです。

どうしても解約しなければならない事態になった場合には、まずはフランチャイズ本部に相談を行い、原因の解消する具体策がないかを検討することが賢明です。それでもどうしても契約を終了させる場合には双方にとってデメリットや負担が少ない状況を模索していきます。

フランチャイズ契約でトラブルに遭わないためには

フランチャイズ契約でトラブルに遭わないためには

契約をすることは簡単ですが、契約の債務を履行し続けることは簡単ではありません。そのため、どのような契約であるのか、契約の債務を不履行したらどうなるのかなどは必ず契約前に確認しなければなりません。

ただし、分かっていても契約をすれば思ったものや言われていたことと異なることは多かれ少なかれ発生します。しかし、前述したとおりフランチャイズ契約においては事前の想定や言われていたことと相違していることはビジネスの成否に大きく関わってくる問題に発展することがあります。

そのため、フランチャイズ契約ではできるだけトラブルを回避するためにも契約内容を熟慮してから契約を締結することが必要です。ここでは適切にフランチャイズ契約を選択・締結して、トラブルに遭わないためのポイントを解説します。

留意すべきポイント

フランチャイズ契約自体は、多くの事業者が活用している契約になります。その中で、トラブルになりやすい内容というのは、絞られています。そのトラブルになりやすい内容を注意喚起として掲載されているのが、中小企業庁のウェブサイト事業者間トラブル事例『フランチャイズ契約において留意すべきこと』になります。

留意すべき事項をあらかじめ把握したうえで情報収集することで、聞き漏れや詳細を確認すべきポイントを整理することに役立てることができます。

中小企業庁の記事では、フランチャイズ契約について独立した事業間の契約であることを前提として、フランチャイズオーナーになる側が「適切な情報を得て」「十分内容を理解」して契約することが重要とされています。

その理由として、以下の2点のフランチャイズ契約の持つ特性を挙げています。

  • ・フランチャイズ契約約款は本部が一方的に設定し、その内容を加盟者が受け入れる契約形態である
  • ・フランチャイズオーナーをフランチャイズ本部の系列の中に組み込む契約である

これらの契約形態であるため、“独自の経営手法を重視し、本部の統一的イメージなどにとらわれない経営を望まれる方”は、フランチャイズ契約をお薦めしないとしています。つまり、フランチャイズ本部側の意向や契約に則って事業運営を行う必要があるため、より契約形態や契約内容の理解が独自経営を行う場合より重要になります。

●契約前にチェックすべきこと

小売業や飲食業を対象とするフランチャイズ本部は、フランチャイズ加盟店との契約締結をする前に定められた情報を書面で説明することが義務付けられています(中小小売商業振興法)。説明が義務付けられている事項は、大分すると以下の2項目になります。

  • ✓チェーン本部の概要
  • ✓契約内容における加盟店側にとって重要な事項

これらの義務付けられている事項については、小売業や飲食業でフランチャイズ事業を始めようとする方以外にも共通で重要な事項になりますので、一つずつ説明します。

チェーン本部の概要については、チェーン本部の資本力や規模や財務体質などやフランチャイズ店舗数などの成長力や、クレームなどの訴訟などのデメリット情報についても開示が求められています。

開示事項
・チェーン本部の主要株主や親会社や子会社などのグループ会社

企業母体の規模は、経営の安定性や
・PL(損益対照表)やBS(貸借対照表)などの財務諸表
・フランチャイズ店舗数の推移
・訴訟件数 など

契約内容における加盟店側にとって重要な事項は、以下になります。

・テリトリー権の有無

飲食店や小売店は店舗集客数によって売上が生まれます。そのため商圏と言われる店舗を中心として集客が見込めるエリアがあります。このエリアを守るのがテリトリー権になります。テリトリー権が認められているフランチャイズ契約では、商圏が被ることがないように同一チェーン店舗の立地場所が考慮されていきます。

・加盟金の発生条件

加盟金は、フランチャイズ契約を締結することで本部に支払う手数料です。ビジネスノウハウを身につけるための研修や店舗開設など事業を開始するためのフランチャイズ本部の支援活動などに充てられます。一方で、店舗が開店する前に支払いはしたが、店舗が結局開店できない場合でも加盟金の返還がされないなどのトラブルがあります。支払と返金について条件や期限を確認することが必要です。

・ロイヤリティの計算方法

ロイヤリティは、加盟店へ毎月支払する手数料になります。このロイヤリティの計算方法は、各フランチャイズ本部によって異なります。ロイヤリティの計算方法は、あらかじめ定められた同額の場合もありますし、売上や粗利や利益に連動してロイヤリティ率を乗じた金額を支払う場合もあります。

ロイヤリティは加盟店の利益が出ずに赤字の状態でもロイヤリティが発生することや負担額が大きすぎて利益が残りにくいケースも発生します。事前に様々なパターンの収益計画に対してロイヤリティを計算しておくことが必要です。

・オープンアカウントの有無

オープンアカウントとは、コンビニエンスストアなどの一部で取り入れられている仕組みです。内容は、加盟店本部と加盟店の間で発生する仕入れなどによる金銭の債権債務を本部側で相殺する仕組みです。

1ヶ月分の売上全てを本部に送金し、ロイヤリティなどの本部への手数料を全て差し引いて月に1度本部から加盟店に支払うなどの時間軸の場合もあります。また、加盟店の売上が不足している場合など、本部が自動的に利息付きで融資を行う形になっている場合もあります。

利用できる現金が手元にないなどの不自由さの原因になる場合もあるため、やり方や支払いサイトなどの詳細を把握する必要があります。また、融資がつく場合には利率などの条件を把握しなければなりません。

・契約解除時の条件

フランチャイズ契約を終了する時に、契約期間を残した中途解約の場合に解約金など加盟店側が負担する者は何か発生するか確認します。また、解約までの手続きと負担がある場合にはその条件を把握しなければなりません。

解約の手続きは、事前の3~6ヶ月前に書面で通知する義務があることもあり、思った時に辞めることができない場合もあります。

また、契約終了後の競合禁止について設定されていることも多くあります。これは、契約終了後にフランチャイズ事業で培った経営・事業運営ノウハウを活用して自ら経営することが契約違反になってしまう場合があります。そのため、禁止される競合の範囲や期間などの諸条件を把握しなければなりません。

これらの留意すべきポイントを抑えたうえで、フランチャイズ本部自体の会社規模や諸条件を比較することでより理解が深めることができます。比較に参考になるのが日本フランチャイズチェーン協会のホームページです。各チェーン本部の事業概要や契約内容など、フランチャイズビジネスについて知りたい情報が確認できます。

時間をかけて選ぶ

時間をかけて選ぶ

契約には、時間をかけて選びます。

企業や営業マンによっては、期限を切って契約を求めることがあるかもしれません。営業である以上、決められない相手をプッシュすることも仕事のうちですし、適切な期限であればむしろ決めなければいけないスケジュールを定めるうえで有効に働きます。

フランチャイズ契約を決める上で適切な期間や時間がどのくらいかというのは、フランチャイズオーナー次第であるため、一概には言えません。事前の予備知識や業界に対する経験や経営経験などによって集める情報の量やポイントが異なってくるからです。

しかし、説明会などに参加し、その場で決めてしまうなどの極端に短い即決は進められません

3者間契約を締結した場合のクレジット会社には、特定商取引法で“加盟店(=販売者)の影響を受けなくなった相当の期間”を開けた後に契約者に契約の意思確認をすることが求められています。

これは、加盟店側の営業トークで受けた影響が時間経過によって冷静に立ち返って契約を見直す機会を確保することを目的としています。契約者が冷静になって見直したうえで契約の必要性を改めて確認するためのステップです。同じように、契約をする時には、事業者間の取引であっても自身で冷静になる仕組みや期間をとった後に契約を進める必要があります。

●3社見積もりと比較ポイント

時間を空ける仕組みにおいて有効なものが、3社見積もりなど複数の業者に見積もりをとることです。

3社見積もりをとるたには、当然ではありますが、3社に話を聞くことが必要になります。かつ、情報を整理したうえで比較するために情報の整理のための時間も必要になります。つまり、3者見積もりを実施することで時間を充分にとる必要が生まれます。

1社のみに契約内容の説明を聞いただけでは分からない契約内容やサービス内容などを比較検討することができます。

例えば、フランチャイズ契約で3社見積もりをとる場合には、フランチャイズ契約を行うときに発生する費用と、同じ売上や仕入れ量などの条件を揃えて毎月かかるフランチャイズ料などを見積もり依頼します。

そして、フランチャイズ契約の際には、契約期間や解約の時の“条件”をそれぞれ確認していきます。フランチャイズ料金は高いですがサービスがしっかりしている契約やその逆にフランチャイズ料金は低く設定されているものの受けられる支援やサービスが少ないなどの比較ができるのも3社見積もりなどの複数業者に確認するから分かることがあります。

なお、説明を聞く時や見積もりをとっていることは最初に相手に話をしておくことが3社見積もりなどを取得する時には一般的なマナーです。複数の企業に話を聞いていることを伝えることで、見積もりを出すほうもより良い条件を出してくれる可能性や相手の検討の本気度を測ることもできます。また、他の企業と自分の企業の差を分かりやすく説明する企業などもいます。

万が一、複数の企業の見積もりを取ることを嫌がる企業があれば、そのような企業とは縁がなかったと考えるのも一つの方法です。

3社見積もりは、情報整理や比較に有効です。しかし、複数の企業に話を聞けば良いというわけではありません。情報が多くなりすぎて、整理することができなくなる懸念やせっかくとった見積もりの有効期限が過ぎる場合もあります。フランチャイズ契約の場合などは、資料請求などで多くの企業の情報やそこから分かる条件などを比較し、3社~4社に話を聞く対象を絞って検討することが一般的です。

なお、3社見積もりを行った場合でも、契約するのは1社のみになります。フランチャイズ契約の場合には確実に1社のみと契約することになります。その際に、結果的に契約しない決断となった残りの2社に対して断わりの連絡を入れることが最低限のマナーになります。

断わりを入れる際には、感謝の意を伝えたうえで金額や条件の断わりの理由を伝えると相手も参考になりますし、納得ができます。ここで、重要なのはビジネスにおいて人との縁は重要です。その時には重要と思えない縁でも、いつか助けになる場合もあります。くれぐれも断りの連絡を行わなかった結果相手からの連絡を受けて断ることなどが無いよう、礼を失わない対応を心掛けるようにします。

不明な点の確認は怠らない

信頼できる取引先を見つけることは、フランチャイズ契約などの継続的かつ長期的な取引が必要になるビジネスモデルにおいては自身の事業の成功に必須条件と言えます。

では、信頼できる取引先を見つけるための重要な方法の一つが『確認』です。フランチャイズ契約を最初に理解することは簡単ではありません。契約内容や取引条件や解約条件など一つずつ丁寧に正確に把握・理解することが求められます。

しかし、自力だけで把握・理解することには限界があります。自身で考えることを放棄し、質問や確認をする姿勢なら問題ですが、自身でも調べて不明のまま残る部分を確認することは事業主としても重要な資質と言えます。

そこで、契約内容やビジネスモデルの把握・理解をサポートしてくれるのがフランチャイズ本部の営業の方になります。フランチャイズ本部の営業窓口スタッフに分からないことは確認します。確認をお願いしたことを、正確かつ短期間に返答をくれる営業スタッフがいるフランチャイズ本部は組織力や人材育成能力が高い可能性があります。

また、フランチャイズ契約を行おうとするオーナーが質問・確認すること自体が主体的に事業を行っていく証であり、そのことを理解しているフランチャイズ本部は検討しているオーナーの質問や確認を歓迎します。

●専門家などヒトの知識を活用する

経営者は全て自身で判断することが必要になります。自らの資本・資金を活用しているため、自己責任が原則になるからです。しかし、だからこそ専門家や専門分野で経験が豊富な人の意見に耳を貸すことが大事になります。

確認についても同様で、自ら確認することと合わせて人を活用しての確認も重要になります。

例えば、契約内容などは法律の専門家である弁護士などに確認をお願いすることでより詳細まで把握することができます。また、契約内容について自身に不利になる内容は変更案などを弁護士にもらい、フランチャイズ本部と協議することもできます。

また、専門分野で経験が豊富な人の代表例がフランチャイズオーナーの先輩経営者などになります。経営に成功している人も苦労している人にも様々な経験が培われています。成功の要因や失敗の原因などの話を聞くことでこれから実施するフランチャイズ経営やその契約について反映すべきことのヒントが生まれる場合も多くあります。

そして、ヒトの知識を活用することで、自身の主観的な考えや場合によっては思い込みに気づくこともできます。どうしても、フランチャイズ本部側の説明には、セールストークが含まれます。セールストークは、強みをより引き立たせて弱みやデメリットの影響が少ないように思わせてしまうことがあります。

セールストークは、フランチャイズ本部側が1件でもフランチャイズ加盟店を増やしたい姿勢の表れになります。フランチャイズ加盟店が増えるとフランチャイズ本部の経営は安定し、ブランディングなども強化されるため、フランチャイズ加盟店としてもプラスの影響が多くありますので、その姿勢はけして悪いものではありません。

しかし、セールストークをそのままうのみにすることなくメリットとデメリットを整理して自身のやろうとする事業への影響の大きさを把握することが必要です。

そのためには、主観的な考えや思い込みがないかを客観的な目で見直すことが役に立ちます。客観的な目で見直すには、専門家や先輩経営者はもちろんスタッフや信頼できる人など複数の人に話すことや確認することが重要です。

合意内容は記録する

契約は口頭でも成立します。しかし、口頭でやりとりをした場合には“言った言わない”の議論や解釈の違いなどによってトラブルの原因になります。

そうならないために、合意や契約内容の説明で重要な部分は書面に落とすことや相手に録音しておくなどの対応が必要です。

●書面に落とす

商談を進める上で、分かりにくい内容はできるだけ書面に落としてもらうことを依頼します。後で文字を見返すことで、理解できていない箇所や思い違いにも役立てることができます。また、第3者に確認を依頼する時も書面に落とされていると説明時点の抜け漏れの心配がありません。

約束します、と言われてしまうと人を信じて安心して書面に落とさずに済ませてしまう気持ちになる方もいます。しかし、事業者同士の取引であり、クーリング・オフができないということを思い返して、口約束で済ませることなく合意内容は書面に落とすようにします。

書面に直すこと自体は、弁護士や司法書士などの専門家に依頼して作成をすることが抜け漏れや時間の節約になります。

●録音

近年の商談においてはスマートフォンなどの録音機能が拡充されていることもあり、録音が身近な手段として活用する機会が増えています。そのため、商談や契約内容の説明を録音しておくことは一般的になっています。

録音をする時には、相手に目的や用途を伝えて許可を得ることを忘れないようにしてください。許可をとらない場合には、相手に不信感を与える原因になることや失礼にあたります。これからフランチャイズ契約を締結してビジネス上のパートナーになるかもしれない相手には礼を逸しない対応が必要です。

また、フランチャイズ契約の中で秘密保持事項なども多く含まれているため、自ら聞き直すだけであってもその録音内容の使用方法について相手側から規制が入る場合もあります。

録音を撮ることを相手に許可をとることで、相手も録音をされていることを意識し、正しく説明しようという意識が高まり、結果的に商談の質が向上します。また、説明の聞き漏らしや理解の相違が発生することも多いため、後で聞き直すことは非常に有効です。

まとめ

フランチャイズはクーリング・オフ可能?まとめ

フランチャイズ契約を締結する際、初めて事業をする人もいます。自身が事業者であるという意識が薄い中でフランチャイズ契約を結んでしまう方も少なからずいます。また、長い間事業をしているような事業者でも確認の不足などからフランチャイズ契約締結後に思っていなかった点からトラブルになる場合もあります。

いずれの場合でも、事業者同士の契約であるフランチャイズ契約は、クーリング・オフ制度が適用できません。クーリング・オフ制度は消費者保護つまり個人の保護を目的に制定されている法律になるからです。

フランチャイズ事業を行っていく中では、フランチャイズ契約以外にも複数の業者との取引が発生します。このような場合も同様に事業者間の取引に関する契約を締結します。その契約も同様にクーリング・オフの対象外になります。

事業者として契約する際には、内容におかしな点がないかの法的な確認や自身にとって不利になる点がないかなどトラブルになる内容を事前に整理して一つずつ丁寧に確認しながら時間をかけて進めることが大切です。