和菓子のフランチャイズを始めるメリット・デメリットや成功のポイントは?
フランチャイズには様々な業種や仕事がありますが、代表的なものの一つに和菓子があります。和菓子は、昔から日本人に愛され続けてきた食べ物ですが、日本全国に銘菓や特産品がありフランチャイズも数多く展開しています。
今回の記事では、和菓子のフランチャイズを始めるメリットやデメリット、和菓子のフランチャイズで成功するポイントについて解説しています。フランチャイズで独立開業を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
和菓子産業の現状と将来性
和菓子は、日本人に古くから愛されてきた菓子で、国民食ともいうべき地位を占めています。しかし、近年は小規模和菓子店を中心に後継者不足などから閉店する例もみられるところです。
その和菓子の売れ行きは、どのように推移しているのでしょうか。和菓子に限定した売上げの統計はありませんが、独立行政法人農畜産業振興機構が総務省実施の家計調査を引用して公表した資料があります。それによると、ようかん、まんじゅう、カステラなどの和菓子に対する1世帯あたりの家計支出は、平成18年が1万2,850円、平成28年が1万2,487円となっており、10年間でほんの少し減少しているだけとみることができます。このことから、和菓子に対する需要は底堅いものがあり、比較的安定している業界といえるでしょう。
ただし、この統計は自家消費額を表したもので、贈答用などが入っていない可能性があるため、和菓子の売上推移を厳密に判定することは困難です。ここ近年は、コロナ禍により和菓子の外食が減少し、人の流れも制限されてきたことから訪問時の手土産需要も減っていましたが、ここに来て回復傾向にあると推定されます。
国内では和菓子に対する需要は底堅く、また、外国人旅行者の人気も高いことなどを勘案すると、今後急激な消費増は期待できないものの、ほぼ安定した需要に支えられると想定されます。
和菓子のフランチャイズを始めるメリット
それでは、和菓子のフランチャイズを始めると、どのようなメリットがあるかをみていきましょう。和菓子フランチャイズのメリットは、大きく、①和菓子店のメリット、②フランチャイズのメリットの2つに分けることができます。
年中行事と一体化している
和菓子は日本の年中行事と一体化しているため、安定した需要が見込めるメリットがあります。年中行事と一体化しているとは、日本の四季折々の行事の際には必ず食されるということです。例えば、正月には「紅白まんじゅう」、2月の節分には「豆餅」、春には「花見だんご」など、年中行事の際に求められる和菓子には昔から決まった定番というものがあり、毎年その時期がやって来るとまとまった注文が入ります。
日本の四季は年中行事とともに訪れ、その年中行事には定番の和菓子がセットで付いているのです。この定番の和菓子を洋菓子や果物に変えてしまうと、それぞれの季節や行事が持つ風情や趣が損なわれてしまうため、大多数の日本人はこの風習を変えようとはしません。このように、年中行事とセットになった定番の和菓子というものは、昔から廃れることなく日本人に愛されてきているのです。
和菓子が日本の年中行事の際に利用されるという風習は、将来的にも長く続くと想定されることから、和菓子に対する需要は底堅いことが見込まれます。
生活に溶け込んでいる
和菓子は、日本人の生活に溶け込んでいるため、安定した需要が見込めるメリットがあります。生活に溶け込んでいるとは、上の年中行事とセットになっているという次元の話ではなく、文字どおり日常生活の一部になっているということです。
例えば、友人や近所の知り合いが自宅に来たときは、お茶と煎餅でもてなすのが普通です。皿に盛った煎餅は自然に食卓や縁側に出すことができ、嫌味がありません。これが饅頭などの生菓子やケーキになると大袈裟なイメージがありますが、煎餅やあられのような乾菓子は値段も張らないため、お客さんも遠慮する必要がないのです。近所の茶飲み友達と煎餅をほお張りながら談笑する光景は、日本人の生活そのものといえます。
近所の茶飲み友達と食べる以外でも、職場での3時の休憩や自宅に1人でいて小腹が空いたときなど、日本の乾菓子は重宝します。値段が手頃で日持ちもするため、買い置きで常備している家庭も多いのではないでしょうか。
季節感を得ることができる
和菓子は季節感を得ることができるため、日本人に愛され続けてきました。日本には、美しい四季が巡ってきます。そして、それぞれの季節には、それを代表する草花や風景があります。春は「桜の花」や「新緑」、夏は「清流」、秋は「紅葉」、冬は「雪景色」などが代表的でしょう。
和菓子には、その季節を代表する草花や風景をテーマにしているものがあります。例えば、「桜餅」は、桜の花をイメージしたピンクの餅を桜の葉で包んでいます。桜餅を見ると、桜の季節の情景が脳裏に浮かびます。また、クズや寒天を使った透明感ある和菓子もあり、夏の清流をイメージさせてくれます。冷やした「水ようかん」は、夏の風物詩ということができます。
このように、和菓子には、日本の四季をイメージさせてくれるという価値もあるのです。
高齢化の進展で需要が伸びる
高齢化の進展により、今後、和菓子の需要が伸びることが期待されています。高齢者は和菓子好きという傾向があります。歳を重ねてくると、牛乳やバターを使った洋菓子よりも、あっさりとした和菓子が好まれます。もちろん、高齢者の中には、「自分は饅頭よりケーキが好きだ」という人もいます。高齢者の好みは単一ではなく様々なのは確かですが、全体的な傾向として、高齢者には和菓子好きな人の割合が多いといえます。
特に、今の80歳代以上の高齢者は、戦前から戦中に生まれた方たちです。戦中や戦後は砂糖不足や食糧難のため和菓子も豊富に食べられませんでしたが、昭和30年代に入ると、次第に和菓子をおやつに食べることができるようになりました。その時代には、ケーキやチョコレートなどの洋菓子ももちろんありましたが、まだ一般家庭では食べる機会があまり多くありませんでした。そのような時代背景もあって、80歳代以上の高齢者は、最中や饅頭などの和菓子に馴染みが深く、和菓子を食べると昔の思い出が蘇るという人もいるくらいです。
これからわが国は一層の高齢化が進展し、国民に占める高齢者の比率が高くなっていきます。このことからも、将来的にあっさりとしたヘルシーな和菓子への需要が高まることが期待されています。
インバウンド需要が見込める
和菓子店を始めると、インバウンド需要が見込めるメリットがあります。和菓子には、日本の四季や草花、風景などをテーマにしたものがあり、職人が丹精込めて造り上げた和菓子は、その美しさや可愛らしさなどを見ると芸術作品と確信できるものもあります。そのように綺麗で美しく、草花や風景をイメージさせてくれる和菓子は、外国人旅行者に大変人気があります。
また、和菓子は、牛乳やバターなどの動物性食品をあまり使わず植物由来のものを中心に作っているため、しつこくなくヘルシーで体に良いというイメージもあります。このヘルシーで体に良いという点も、外国人旅行者に受けるポイントです。
近年はコロナ禍により出入国が規制され外国人旅行者も減少していましたが、最近の緩和後は回復してきていることから、一層のインバウンド需要が期待されています。
商号・ブランドを利用できる
フランチャイズに加盟する最大のメリットは、フランチャイズの商号やブランドを利用できることです。
個人で和菓子店を始める場合は、良い商品を提供するなど営業実績を作ることにより店の屋号を社会的に広め、提供商品の中で人気があるものを長い期間をかけてブランド化していく必要があります。しかし、いくら努力しても消費者からの支持が得られなければ、屋号が有名になることは難しく、商品のブランド化も達成できないでしょう。
それに対しフランチャイズに加盟すれば、商売のスタート時点でフランチャイズの商号やブランドを使用することができます。すなわち、フランチャイズの商号やロゴマークを自分の店の看板に掲げ、フランチャイズで扱っている有名ブランドの菓子を販売することができるのです。このことは、個人で事業を始める場合に比べ、圧倒的に有利なスタートをきることができることを意味しています。
和菓子のフランチャイズは、長い年月をかけて営業を続けながら提供商品をPRし、何か事件や事故が起きた場合は、フランチャイズの信用やブランドが失墜しないよう迅速な対応に努めてきました。その結果、徐々に消費者の信用や信頼を得ることができ、「○○屋の水ようかんは品が良い」「〇〇堂のもみじ饅頭はくどくない」などの評価を付けてもらえるようになったのです。
「○○屋の水ようかん」、「○○堂のもみじ饅頭」と多くの人に言われ始めた時点で、これらの商品はやっと一人前のブランドになることができ、消費者が安心して食べ、また世話になった人に安心して贈ることが可能になったのです。
フランチャイズに加盟するということは、このような時間と労力をかけた営業努力を一足飛びに超えて、はるか先からスタートできることだということを認識することが大切です。
経営ノウハウを提供してもらえる
フランチャイズに加盟すると、事業経営のノウハウを提供してもらえるメリットがあります。フランチャイズは、以前事業をやっていた人が加盟する場合もありますが、事業経験がない初心者が始めるケースも多くあります。事業を行ったことがない素人が、未知の分野で開業しやっていけるのは、フランチャイズが事業経営のノウハウを提供しバックアップしてくれるからです。
通常、事業を円滑に進めていくには、次の各分野について仕事のやり方やうまく進めるコツというものを身に付けなければいけません。
- 仕入れ
- 在庫管理
- 商品陳列
- 接客・販売・会計
- 従業員採用・教育
- 宣伝広告
- 財務管理
それぞれの分野にはそれぞれのやり方があり、スムーズに進めるノウハウがあります。何も知らない素人が、開業して曲がりなりにもやっていけるのは、フランチャイズ本部が実施してくれる研修や指導・助言、業務マニュアルの提供などのおかげです。
仮に、フランチャイズに加盟せず、個人で和菓子店を始めようとしたら、これら各分野の仕事のやり方について独学で身に付けていかなければなりません。フランチャイズでは、未経験の初心者でも開業できるよう、業務に関する知識や技術を効率的に教えてくれるシステムが確立されているのです。
売れ筋商品を把握できる
フランチャイズでは、売れ筋商品を把握できるメリットがあります。フランチャイズは、系列店における営業実績のデータを蓄積・分析し、経営戦略を立てる際の参考にしています。すなわち、提供商品の中で売れ行きが良い商品や売上げの伸びが著しい商品などの情報は、本部を通じて加盟店も把握することができます。
「そのような情報なら、個人営業の店でも把握することができるのでは?」と思う人もいらっしゃるでしょうが、個人営業の店の売れ筋商品とフランチャイズ系列店全店における売れ筋商品とでは、統計の母数が違うため同列に扱うことが困難です。フランチャイズ系列店全店の実績から導き出される売れ筋商品は、統計の規模からみても非常に信頼性が高い情報なのです。
加盟店は、フランチャイズの売れ筋商品を中心に品揃えを行うことで、売上げを伸ばすことが可能です。
市場調査を利用できる
フランチャイズに加盟すると、フランチャイズが実施している市場調査の結果を利用できるメリットがあります。フランチャイズは、日頃から、各地域の市場調査を実施しています。その地域の人口や世帯数、世帯構成人数や年齢構成、企業や商店の立地状況、従業員数などを調査し、その地域に出店した場合に商売が成り立つかどうかなどを判定しています。
素人の個人が事業を始めようとして、目を付けた地域に需要がどの程度あるかを判断するのは至難の業です。その地域に需要があるかないか、需要があるとしたら商売が成り立つ程度にあるかどうかなどを見極めるためには、市場調査の知識や技術が必要です。
そのため、フランチャイズの市場調査結果のデータや資料を見せてもらい、担当者にレクチャーをお願いするのです。フランチャイズ本部も大切な加盟候補者に対しては、懇切丁寧に説明してくれるはずです。業種の現状や将来性、出店しようとする地域の需要動向などを把握した上で、加盟するかどうかの決断や出店場所をどこにするかを判断することが可能になります。
和菓子のフランチャイズを始めるデメリット
次に、和菓子のフランチャイズには、どのようなデメリットがあるかを見ていきましょう。
催事が減る
和菓子店は、催事が減ると需要も少なくなるデメリットがあります。和菓子は、様々な催事の際に利用されてきました。学校の謝恩会や後援会の集まり、地域の夏祭りの打ち上げや町会の懇親会、趣味の会、親戚一同が集まる親族会議など、学校、地域、身内など様々な形で人が集まる際によく好んで食されるのが和菓子です。
しかし、コロナ禍を契機として人が集まる催事は行われなくなり、今後コロナの影響が小さくなるとしても催事の回数が元通りに回復する保証はありません。それは、コロナ禍により人が集まること自体の必要性が見直され、その結果、催事は必要最小限に行うという方向性が定着してきたからです。
催事が減少傾向になると、それだけ和菓子を利用する機会が減ってしまうことになります。
贈答が減る
催事と同じく、贈答も減少傾向にあります。贈答は、中元や歳暮をはじめ、職場の上司やお世話になった人にお礼の印として品物を届けることです。このような贈答でよく利用され重宝されてきたのが和菓子です。しかし、近年は、中元や歳暮をはじめとする贈答は減少傾向にあります。
特に最近の若い人たちは、相手に失礼にならない範囲で儀礼的なことは極力省略するという割り切った考え方が主流になっています。贈答の減少は、和菓子店を始める場合のデメリットに該当するでしょう。
好きなときに撤退できない
フランチャイズに加盟すると、自分の好きなときに撤退するのが難しいデメリットがあります。フランチャイズ契約には契約期間の定めがあり、その期間中は、契約当事者である加盟店とフランチャイズ本部双方は契約内容を守る義務を負います。
しかし、契約期間の途中で契約を継続することが難しくなる事態を想定し、あらかじめ契約書に契約期間の途中における解約=中途解約について取扱いを定めておく場合があります。例えば、フランチャイズ契約書に、「契約期間の途中でも、契約当事者の一方が意思表示することにより契約を中途解約できる」などと定められていれば、その定めを根拠に中途解約することが可能になります。ただし、その場合でも、中途解約する場合は違約金を支払う旨が記載されていれば、中途解約する側は違約金を支払う必要があります。
問題は、フランチャイズ契約書に、中途解約に関する取扱いが何も定められていない場合です。契約書に定めがない場合は、契約当事者双方の協議により合意に達すれば、中途解約することが可能になります。契約書に中途解約についての取扱いが定められていない場合は、その取扱いは契約当事者双方の合意内容次第となります。加盟店に契約を継続できない事情が発生した場合に、その事情を説明することでフランチャイズ本部が「仕方がない」と納得してくれる場合がある一方で、「契約期間の途中で契約を放り出すのだから、こちらが受ける損害を違約金で支払ってもらわないと困る」という場合もあり得ます。
契約期間の途中における解約についての取扱いが契約書に定められている場合は、その定めに従って手続きを進めることになり、定めがない場合は契約当事者同士の合意によりその取扱いが決まります。いずれにしろ、加盟店オーナーが好きなときに勝手に撤退することはできなくなるのです。
自由な経営ができない
フランチャイズに加盟すると、自分で自由な経営を行うことが難しくなるデメリットがあります。フランチャイズに加盟すると、加盟店はフランチャイズ本部の経営方針や事業戦略に従って営業を行うことになります。フランチャイズは、系列の直営店や加盟店の営業成績を伸ばすことにより、グループ全体の業績を向上させ、グループ自体を拡大していく目的があります。そのためにグループ内の取り決めやルールを定め、グループ全体の足並みが乱れないよう統一的に運用しています。そのような状況下で、特定の加盟店だけがグループのルールを守らず勝手なことをすることは許されないのです。
例えば、フランチャイズの和菓子店では、提供する菓子のメニューや価格は統一的に定められています。したがって、ある加盟店だけが、敬老の日に高齢者に半額で提供するサービスを実施しようとしても困難です。
オリジナル商品を提供できない
和菓子のフランチャイズでは、オリジナル商品を提供するのが難しいデメリットがあります。個人で和菓子店を営業する場合、他店にはない味や外観を持つオリジナル商品を開発すれば、その商品がその店のブランドに成長し、他店と差別化する武器になることがあります。しかし、フランチャイズでは、加盟店で販売する商品はフランチャイズ本部が決定しており、加盟店で独自のオリジナル商品を開発することは困難です。
したがって、この場合は、他のフランチャイズと差別化を図れるオリジナル商品を開発しているフランチャイズが加盟先の有力な選択肢になります。昔からある一般的な生菓子や乾菓子は、高齢者層を中心に根強い需要はありますが、社会的にブームを巻き起こすような強力な起爆剤にはなれません。やはり、和菓子界に一大旋風を起こす可能性がある商品は、フランチャイズまたは個人の和菓子店が独自に開発するオリジナル商品です。
フランチャイズで和菓子店を始めると、自分の店でオリジナル商品を開発することは難しいですが、フランチャイズ本部が開発した商品であれば正規に取り扱うことが可能です。
フランチャイズ特有のコストがかかる
フランチャイズに加盟するとフランチャイズ特有の費用が発生します。フランチャイズ特有の費用には、以下のものがあります。
①加盟金
加盟金は、フランチャイズに加盟する対価として支払う金銭で、その金額は、業種や個々のフランチャイズにより異なります。極端な例では、加盟金を無料にしているフランチャイズから、数百万円と高額な金額を設定しているフランチャイズまであります。
②保証金
保証金は、加盟店がフランチャイズ本部に負った負債を清算するために預ける金銭です。
例えば、加盟店が仕入代金やロイヤリティを支払えないなどの場合に、充当するためのお金が保証金です。したがって、保証金が使われなかった場合は、フランチャイズ契約解約後に戻されます。
③ロイヤリティ
ロイヤリティは、フランチャイズの商標を利用する対価として支払う金銭で「商標使用料」ともいわれます。通常、ロイヤリティは、加盟店が開業後に毎月定額または売上額や利益額の一定割合を支払うとされている例が多くみられます。
フランチャイズに加盟すると、上記のような経済的な負担が発生します。
和菓子のフランチャイズを成功させるポイント
それでは、和菓子のフランチャイズを成功させるためのポイントは何かを見ていきましょう。
要はフランチャイズ選定
フランチャイズ事業で成功するためには、加盟先のフランチャイズをどこにするかというフランチャイズ選定が非常に重要です。
フランチャイズでは、本部の経営方針に従って事業を進める必要があり、加盟店の自由裁量が制限される部分が少なくありません。そのため、加盟店オーナーが業態変更や経営改善に取り組もうとしても、簡単には実行できないケースが多いのです。
加盟後に改革が難しいのであれば、加盟する段階で、社会的なニーズをうまく取り込むよう改善や工夫を行っているフランチャイズを選び出し、合格点を付けたところに加盟することがベストの方法です。その意味で、加盟先のフランチャイズ選びは、フランチャイズ事業を成功させるための要の役割を担っているといっても過言ではありません。
方向性を決める
次に重要なことは、事業の方向性を決めることです。「事業の方向性は、フランチャイズの和菓子店で決まりですよね」と思う人もいらっしゃるでしょう。しかし、一口でフランチャイズの和菓子店といっても、その中身は様々で千差万別です。その千差万別のフランチャイズ和菓子店の中で、自分がこれから始めようとする事業の方向性を決めることが大切なのです。ここでいう事業の方向性とは、次の事項をいいます。
①目指すのは高級店か大衆店か
和菓子の高級店を目指すのか、それとも大衆的な店を目指すのかという方向性です。
和菓子の高級店は、いわゆる老舗として手の込んだ本格的な和菓子を製造・販売しているフランチャイズです。高級店には、全国的に名の知れた銘菓も多くあり、価格も高めに設定されています。このような銘菓になると、フランチャイズ本部の工場で製造されるパターンが主流になります。
一方の大衆店は、気軽に食べることができる大衆的な和菓子を製造・販売しているフランチャイズです。例えば、「たい焼き」や「大判焼き」、「みたらし団子」などは価格も手頃で気軽に食べることができる和菓子ですが、大衆店はそのような商品を扱っている店です。「たい焼き」や「みたらし団子」などは、調理マニュアルに従って作業を行えば加盟店オーナーでも製造することが可能です。
高級店を目指すか、大衆店を目指すかは、自分が和菓子にどう関わっていきたいかという仕事に対する人生観が関係してくるため、自分なりに十分に考えて方向性を決めるのが良いでしょう。
②自分で製造するかしないか
商品の和菓子を自分で製造するか、しないかの方向性です。フランチャイズによっては、商品の和菓子は本部の工場で集中的に製造し、加盟店は配送されてきた和菓子を販売するだけという方法を採用しているところがあります。このようなタイプは、本格的な和菓子を製造しているフランチャイズに多く、本部の工場では和菓子職人が作業を行っています。本格的な和菓子となると、修行を積んだ和菓子職人でなければ作ることが難しいため、必然的にこのようなシステムになっている例が多くみられます。
自分で製造をせず、配送されてきた和菓子を陳列して販売するだけであれば、製造技術を身に付ける必要はありませんが、反面やりがいがあまりないかもしれません。
一方、加盟店オーナーが自分で製造するシステムのフランチャイズは、本格的な和菓子ではなく、簡単な菓子を取り扱う場合が多くみられます。例えば、かき氷などは、和菓子職人でなくても、マニュアルに従って氷を削りシロップをかければ誰でも作ることができます。この場合は、本格的な菓子でなくても自分で作ったという達成感があるかもしれません。
③実店舗販売かそれ以外か
実店舗販売かどうかの選択は、開業費用に大きく影響するため重要な問題です。和菓子店というと、通常は実店舗で販売するパターンを思い浮かべますが、フランチャイズ和菓子店には様々な形態があります。例えば、宅配専門や百貨店などの催事場での販売に特化している営業形態です。実店舗を持たなければ、それだけ開業費用を節約できますが、実店舗なしの販売で実際に採算がとれるかをしっかりと見極める必要があります。
自分が始めようとする和菓子店の方向性が決まったら、その方向に合うフランチャイズを見つけて加盟することがポイントになります。自分の目指す方向と違うフランチャイズに入った場合は、開業後に充実した毎日を送ることが難しくなるかもしれません。例えば、大衆的な和菓子店を目指して、自分で「たい焼き」を作るのを楽しみにしていた人が、老舗の高級フランチャイズに入ってしまったために、工場直送の和菓子を販売するだけの日々になってしまったら、仕事のモチベーションを維持していくのが難しくなってしまうでしょう。
以上のように、自分がやりたい方向性というものは非常に大切で、これからフランチャイズ事業を進める上で原動力になるものです。可能な限り自分の方向性にマッチした仕事を探すことが非常に重要です。
有名な商品を扱う
和菓子のフランチャイズを成功させるには、有名な商品を扱うことがポイントになります。もっとも、フランチャイズで扱う商品の種類は、フランチャイズ本部で決めているため、加盟店が自由にできることではありません。このことから、有名な商品を扱うためには、有名な商品を持っているフランチャイズに加盟することが重要となります。
しかし、なぜ有名な商品を扱うことが重要なのでしょうか。和菓子には、昔からの愛好者やファンが大勢います。その愛好者やファンは、「水ようかんなら〇〇屋」、「もみじ饅頭なら〇〇堂」と決めています。仮に他の業者が水ようかんやもみじ饅頭を作っていても、昔から有名で慣れ親しんだメーカーの菓子を選びます。
それは、自分が食べる場合も進物に使う場合も同じです。進物として使うのであれば、なおさら名が通った有名な業者のものが喜ばれます。〇〇屋の水ようかん、○○堂のもみじ饅頭というのはブランドです。フランチャイズは、その有名なブランドだけで勝負できる強さを持っているのです。このことからも、加盟店になるなら、周知度が高い有名ブランドの和菓子を扱っているフランチャイズを選ぶことが肝心です。
市場調査で分析する
和菓子のフランチャイズを成功させるには、事前に市場調査で分析することが重要です。開業資金の目途が立ち、事業にかかる知識や技術を学習したとしても、それだけで事業が成功する保証はありません。物理的に自分の店舗を持つことができ、事業を回していけるだけのスキルを身に付けることができても、事業に対する消費者のニーズや将来性の課題がクリアできなければ、最終的に事業はうまくいかないでしょう。
その「事業に対する消費者のニーズ」や「事業の将来性」を見極めるために、市場調査を行うのです。市場調査を行うといっても、これからフランチャイズ事業を始めようとする初心者が、自分で市場調査などできるはずもありません。ここは、フランチャイズ本部が実施している市場調査結果を参考にさせてもらい、自分が始めようとしている事業が、自分が始めようとしている地域で、消費者のニーズにマッチするのかを最終判断するのです。
和菓子のフランチャイズを成功させるポイントの一つ目で、自分の方向性=高級路線か大衆路線か、自分で製造するか販売だけするかなどを決めて、その方向に合うフランチャイズを選ぶことが重要であると説明しました。しかし、これには但し書きが付きます。
自分が決めた方向性が、市場調査結果を踏まえて消費者のニーズにマッチするのか、将来性があるのかという観点で合格点を付けることができたら、その方向性を尊重することは間違っていません。しかし、市場調査結果からみて、どうも自分が決めた方向性は消費者受けが良くない、将来性に疑問符が付くなどの場合は、より社会的なニーズに合う方向に軌道修正することも必要です。
フランチャイズの加盟先や事業の業態は、一旦決めたら後は走り出すだけで後戻りができません。そのため、走り出す前にフランチャイズ本部のデータや資料を十分に活用し、レクチャーも受けて間違いのない道に入らないといけません。
優良な出店場所を探す
和菓子店で成功するためには、優良な出店場所を探すことがポイントになります。優良な出店場所は、黙っていても自然に人が集まる場所です。そのような自然に人が集まる場所は、開業しても集客に苦労しません。少しくらい店のPRを怠っても、お客さんが来て売り上げもある程度伸びていきます。逆に、人が集まらない場所に出店してしまうと、どのように宣伝広告を行なおうが、お客さんは集まりません。このように、商売を始める場合は、店舗を構える場所というものが非常に重要な鍵になるのです。
それでは、どのような場所が人の集まる優良な場所なのでしょうか。和菓子店として優良な場所は、次のとおりです。
- 主要ターミナル駅の駅中や駅ビル
- 鉄道駅の駅前
- ショッピングセンターなど商業施設の中
以上の場所は、黙っていても自然に人が集まってくる場所です。①~③であれば、どこに出店しても一定以上の売上げを計上できる可能性があります。
また、上記以外では、
④住宅地に近い商店街の一角
も候補の1つです。住宅地が近ければ、和菓子好きの高齢者などを中心に固定客が付く可能性があります。
問題は、人が集まりやすい優良な場所をどうやって探すかですが、これは個人だけの力では限界があります。ここは、せっかくフランチャイズに加盟するわけですから、フランチャイズ本部の支援を受けることが肝心です。フランチャイズ本部は、和菓子店としてどのような場所がふさわしいかなどについて、日頃から調査し出店候補地などの情報を持っている場合があります。仮に出店候補地の具体的な情報を持っていなくても、本部の強力なネットワークを使って情報収集を行ってもらえば、個人だけで調べるよりはるかに豊富なデータが集まります。
和菓子店を成功させるなら、出店場所が成否の鍵になるといっても過言ではありません。したがって、フランチャイズ本部を巻き込んで優良な出店場所を探すことが肝心です。
開業費用を抑える
和菓子店を成功させるためには、開業費用を抑えることも重要です。なぜ開業費用を抑えることが重要かというと、開業後の経営に関わってくるからです。一般的に、和菓子店を開業しようとすると、自己資金で不足する費用は金融機関からの融資で賄います(国や自治体の補助金も利用できます)。
しかし、借入額が多いと、開業後のローン返済の負担が大きくなり過ぎ、下手をすると返済が遅滞したり不能に陥ったりする危険性があります。したがって、開業費用で抑えられるところは極力節約し、後のローン返済負担を軽くしておく必要があります。
例えば、和菓子店の店を借りる場合は、提供できる商品の種類や数量を念頭に、それに見合うショーケースを置くことができるスペースがあれば、それでよしとします。すなわち、商品を陳列できれば、それ以上の無駄な広さは必要ないという考え方が重要です。売場の広さが多少狭くても、商品さえ陳列できれば商売はやっていけます。そのような発想で、店の規模を抑え加減にすれば、店舗改造工事や家賃を安く済ませることができます。
宅配を視野に入れる
これからは、宅配を視野に入れた事業展開も必要です。和菓子店というと、和菓子販売の小売店、または店内飲食ができる甘味処をイメージします。しかし、コロナ禍で店内飲食が苦境に立たされたことなどを契機として、宅配の業態が見直されることになりました。
また、和菓子の世界にもネット販売が普及してきたことで、和菓子の宅配は珍しいことではなくなっています。
和菓子販売の業態に宅配を組み込むかどうかは、フランチャイズ本部の経営事項です。このため、フランチャイズ選びの段階で、宅配を組み込んでいる事業者の業績、特に宅配と店頭販売の比率などを加盟先決定の参考情報にすることも重要です。
サポートを受ける
和菓子のフランチャイズを成功させるには、フランチャイズ本部のサポートを上手に受けることも重要です。フランチャイズに加盟すると、本部から以下のような様々なサポートを受けることができます。
- 市場調査結果の提供
- 店舗物件探しの支援
- 店舗改造における助言
- 事業にかかる知識・技術習得の講習実施
- 業務マニュアルの提供
- 業務ノウハウの提供
- 従業員等人材の確保支援
- 開業日前後の応援
- 定期的な巡回相談・指導
まだ他にもありますが、加盟店の開業準備から開業日や開業後に至るまで、きめ細かくサポートを行ってくれます。上の中で特に重要なものは、以下のとおりです。
①市場調査結果の提供
市場調査は個人の力ではできず、フランチャイズ本部から結果の提供を受けるしか方法がありません。市場調査の結果次第では、そのフランチャイズへの加盟断念や出店場所の変更などもあり得るため、非常に重要なものです。市場調査の結果は、提供を受けるだけでなく、本部の担当者から説明をしてもらい、質疑応答も入れたいところです。
②店舗物件探しの支援
店舗物件探しでは、慣れない初心者の場合優良物件を見つけるのに苦労します。フランチャイズ本部は強力な情報収集力を持っており、店舗物件選定の豊富な経験があります。自分個人で見つけようとしないで、家賃や間取りなどの条件を提示して本部に探してもらうよう要請してもよいでしょう。
④事業にかかる知識・技術習得の講習実施
本格的な和菓子の場合は、本部の工場で集中的に製造するケースがほとんどですが、比較的製造が簡単な「串だんご」や「大判焼き」、「かき氷」などは、講習で製法をしっかりと身に付ける必要があります。
また、店舗で製造せず、配送された商品を陳列・販売だけするケースでも、お客さんからの質問に答えられるよう知識はしっかりと習得しておく必要があります。
⑤業務マニュアルの提供
和菓子店は、製造と販売だけすればよいというものではありません。和菓子店としてやっていくためには、売上げを見込んだ仕入れ量の決定、商品の在庫管理や衛生管理、接客応対、財務管理とローン返済管理、従業員の人事管理など様々な分野で仕事の進め方をマスターしていく必要があります。そのような場合に、基本的に頼るのが業務マニュアルになります。
⑥業務ノウハウの提供
業務を円滑に進めていくには、業務マニュアルの内容だけではなく、業務の進め方やコツ、ポイントなどのノウハウを習得することが大切です。業務ノウハウは、豊富な業務経験がないと蓄積されません。その点で、フランチャイズ本部は、長年にわたり直営店や加盟店を指導してきた実績があります。その本部が持っているノウハウを上手に引き出すのがポイントです。仕事上で疑問が生じたら、または不安になったら、遠慮せずに本部に相談して教えてもらうことが大切です。
まとめ
和菓子のフランチャイズを成功させるには、一貫した品質と美味しさを提供することが重要になります。そのためには、成功している和菓子のフランチャイズ本部を選ぶことがポイントになるため、信頼できる本部であるか、継続的なサポートやトレーニングを提供しているか、加盟店の利益を最大化するための取り組みをしているかなど、本部の実績と信頼性を慎重に確認しましょう。
また、和菓子の歴史や文化、伝統的な製法や材料についての知識を深めることも大切です。専門的な知識や情報を常に学ばないと、お客さんに対して和菓子の魅力や特徴を伝えることができないので、おもてなしの心と接客スキルもしっかり身に付けましょう。さらに、季節やイベントに合わせた特別なサービスや限定商品など、お客さんに喜んでもらえる工夫も大切です。