人気の学習塾フランチャイズは?加入する際の注意点やポイントも

最近様々な業種で普及してきたフランチャイズですが、学習塾フランチャイズの将来性や開業費用、年収はどうなのでしょうか。少子化の時代でも、新しい学習システムや質の良い講師を揃え、受験・進路情報を迅速に収集・提供できる学習塾には生徒が集まり、将来的に伸びていくことが予想されます。このためには、企業が有する人的・物的資源や経営ノウハウを活用できるフランチャイズに加入するのが成功への近道です。

本記事では、学習塾フランチャイズを始める費用や年収、学習塾フランチャイズに加入する際のポイントを解説するとともに、人気の学習塾フランチャイズを紹介します。
企業のバックアップを受けながら生徒を育ててみたい方は、ぜひ参考にしてください。

目次

学習塾フランチャイズの将来性、始める費用や年収は?

学習塾フランチャイズの将来性、始める費用や年収は?

はじめに、学習塾フランチャイズの将来性や始めるための費用、また、学習塾フランチャイズを始めた場合の年収などをみていきましょう。

学習塾フランチャイズとは

学習塾フランチャイズとは

学習塾フランチャイズとは、学習塾経営に特化したフランチャイズです。フランチャイズとは、フランチャイズに加入する人が、フランチャイズ企業から屋号、すでに出来上がった商品、サービス、経営ノウハウなどを使用する権利を得るかわりに、その対価をフランチャイズ企業に支払う仕組みです。

フランチャイズ企業に支払う対価は、フランチャイズに加入する際に支払う加盟金、および毎月の売上げの中から何%かを支払うロイヤリティがあります。

学習塾フランチャイズでは、学習塾を始める人がフランチャイズに加入して、上で説明したようなフランチャイズ企業のバックアップを受けながら事業を行うことができるのです。

学習塾業界の現状と将来性

学習塾業界の現状と将来性を考えた場合に、初めに思いつくのが少子化の流れです。
子供の数が少なくなっていることから学習塾の数も当然減少し、将来的にも少子化の流れが変わらない限りは学習塾も減り続けるのではないか、と予想する方が多いのではないでしょうか。

それでは、学習塾の数は実際に減ってきているのでしょうか。
経済産業省の「特定サービス産業実態調査」によると、全国における学習塾の数は、以下のようになっています。

【全国における学習塾数の推移】

区分 2009年 A 2017年 B 増減 B-A
会社経営 13,808 16,008 2,200
会社以外経営 35,873 31,562 ▲4,311
合計 49,681 47,570 ▲2,111

上の表をみると、2017年の全国における学習塾の合計数は、2009年に比べて2,111教室減少しています。その内訳は、会社経営の学習塾がプラス2,200、個人など会社以外が経営する学習塾がマイナス4,311となっています。

ここで注目したいのは、少子化の影響で学習塾の合計数は確かに減っていますが、会社経営の学習塾は増えていることです。

少子化の流れの中で、なぜ会社経営の学習塾が増えているのでしょうか。それは、次の要因が影響しているからです。

  1. ①少子化で世帯の子供数が減ったことにより、子供1人あたりにかける教育費を増やすことができるようになった
  2. ②大学進学率が上昇している
  3. ③学習塾の指導方法が集団指導から個別指導へと変わってきたが、法人は迅速に必要講師数を確保できる
  4. ④映像やオンラインを使った新しい教育コンテンツが現れてきたが、法人は迅速に教育システムを切り替えることができる
  5. ⑤子供1人に教育費を多くかける時代になったことから、新しい学習教材・システムの装備、質の良い講師の確保、最新の受験・進路情報の収集力など総合力の面から、法人経営の学習塾に生徒が流れやすい

以上のように、少子化の流れの中でも、新しい学習教材・システムや質の良い講師を揃え、最新の受験・進路情報を迅速に収集・提供できる学習塾であれば、将来性があると判断できるのです。

このことからも、学習塾を始める場合は個人経営ではなく、企業が有する人的・物的資源や経営ノウハウを活用できるフランチャイズに加入することが、成功への近道といえます。

学習塾フランチャイズを始める費用

学習塾フランチャイズを始めるには、どの位の資金が必要でしょうか。各フランチャイズでは開業資金の目安を公表していますが、それぞれで費目の捉え方が異なるため、単純に比較するのは困難です。しかし、各フランチャイズに共通の開業に要する費用を選び出して合計すると、およそ500~1,000万円程度が必要です。

この開業費用の内訳は、次のとおりです。

①加盟金 フランチャイズに加入するための費用で、フランチャイズによってその金額が異なります。
②物件取得費または物件賃借に要する費用 教室の場所を確保するための物件購入費、または物件賃借料・保証金などです。教室の場所を取得するか、賃借するかで費用が大きく違ってきます。
③内装・看板・錠工事費 教室の内装や看板、出入口の錠工事に要する費用です。
④教室設備・備品費 教室の黒板・机・椅子・パーテーション・エアコン・パソコンなどの設備・備品に要する費用です。
⑤教材・文具費 授業で使う教材や文具に要する費用です。
⑥研修費 塾オーナーになるための研修費です。
⑦宣伝広告費 生徒募集のための宣伝広告費です。

学習塾フランチャイズを始めるには、この開業資金を準備する必要がありますが、他の業種に比べると、その金額は大きくありません。

例えば、独立開業できる職種で大変人気がある飲食店の場合は、人が集まる場所に店を構える必要があるため、物件取得や物件賃借に要する経費が高くつきます。その点、学習塾は生徒が通える場所であれば、鉄道駅から多少離れていても経営が成り立つため、物件にかかる費用を抑えることができます。

また、飲食店は、厨房設備を備える費用がまとまってかかり、さらに、店舗内をある程度洒落た内装や設備にする必要があるために工事費も余計にかかります。

それに対して、学習塾では厨房など費用がかかる設備は必要がなく、また、教室内も洒落た造りにしなくてもよいため、工事費が安く済みます。このように学習塾は、初期費用を抑えて開業ができる職種なのです。

学習塾フランチャイズの年収

それでは、学習塾フランチャイズでは、どの程度の年収を稼ぐことができるのでしょうか。売上高や営業利益はフランチャイズや個々の教室によって違いますが、年間売上高が2,000~3,000万円、そこから必要経費を除いた年間営業利益が1,000~1,500万円程度を目安としてください。

まず、学習塾の売上収入ですが、内訳は次のようになります。

①入学金 生徒の入学金ですが、営業初年度が最も多く、2年目以降は新しい生徒の入学があれば入ってきます。
②授業料 授業料は、生徒1人あたり30,000~35,000円程度です。生徒1人あたり35,000円として、50人集まれば35,000円×50人×12月=年間2,100万円、生徒数が60人になれば35,000円×60人×12月=年間2,520万円の収入になります。
③その他の収入 その他の収入としては、教材販売による収入やテスト実施による検定料収入などがあります。

一方の必要経費は、次のとおりです。

①ロイヤリティ フランチャイズ本部に支払う費用です。授業料収入の10%、入学金収入の50%をフランチャイズ本部に支払うのが、多いパターンです。
②家賃 教室の場所を賃借している場合の家賃ですが、必要経費に占める割合は高くなります。
③外部講師費用 外部講師を雇う場合のアルバイト代です。
④教材・文具費 毎年の教材・文具に要する費用です。
⑤光熱水費 照明・冷暖房費など教室の光熱水費です。
⑥広告宣伝費 生徒募集のための広告宣伝が必要な場合の費用です。

以上のように、学習塾の売上収入から必要経費を差し引いた残りが営業利益となります。なお、上で年間営業利益が1,000~1,500万円程度を目安としてくださいと書きましたが、これはあくまでも目安です。

一般的に、学習塾フランチャイズの営業経過年数が長くなれば、教室の知名度や信頼性が上昇して生徒数が増えるため、営業利益も増加していきます。

事業の先読みができるのが学習塾業界

学習塾業界は、他の業界と比較すると、ある程度事業の先読みがしやすい業種です。生徒が一度学習塾に入ると、長く続ける傾向があります。これは、ある程度の期間が経過しないと、学習成果が目に見える形で現れてこないからです。また、入った学習塾が気に入らないからと変わってばかりいると、学習に支障が生じやすいのも理由です。このため保護者は、自分の子供を一定期間同じ学習塾で学ばせようとします。

したがって、今月在籍している生徒は、来月もその先の月も継続している可能性が高いのです。これは、飲食店に例えると、毎日来店する常連客のようなもので、上得意の客といってよいくらいです。

さらに、生徒が学習塾を辞めるタイミングも、ある程度読むことができます。それは入試が終わった時期です。上級学校の入試が終わり、進学が決まった段階で学習塾を辞める生徒が多いのです。

このように、年間を通じた在籍生徒数や退学するタイミングについて、ある程度先読みができることは、事業を進める上で非常に大きな安心感に繋がります。

学習塾フランチャイズのメリット

学習塾フランチャイズのメリット

個人で学習塾を始める場合に比べ、フランチャイズに加入すると事業を行う上で非常に有利です。ここでは、学習塾フランチャイズに加入すると、どのようなメリットがあるかをみていきましょう。

学習塾フランチャイズのメリット

屋号が使える

学習塾フランチャイズに加入する最大のメリットは、フランチャイズの屋号を使用できることです。良い学習塾を探している生徒や保護者にとって、大きな判断基準となるのが屋号です。

いかに熱意を持って指導を行っていても、名が知られていない個人学習塾などでは、生徒や保護者が安心して入塾を決めることが難しいといえます。

それに対して、誰もがその名を知っているような学習塾フランチャイズは、有名進学校への合格実績なども武器となり、生徒や保護者は大きな信頼感や安心感を持って入学を決めることができます。

有名な屋号の学習塾フランチャイズであれば、オーナーはフランチャイズの知名度や実績を初めから利用することができるのです。

ビジネスモデルを活用できる

成功できるビジネスモデルが初めから用意されているのと、いないのでは、学習塾を始めるスタート地点で、すでに大きな差がついているようなものです。ビジネスモデルは、「このように運営すれば、経営が安定して事業を継続できる」という経営モデルのことです。

個人経営で学習塾を始める場合は、初めの数年間は試行錯誤を重ねながら教室運営を行い、苦労して自分なりのビジネスモデルを作り上げていかなければなりません。

それに対し学習塾フランチャイズは、直営教室の運営経験などから、学習塾が成功するためのビジネスモデルを持っています。そのため、加盟教室はそのビジネスモデルに従って教室運営を行うことができるので、経営上の試行錯誤や失敗のリスクを抑えることができます。

生徒募集のノウハウがある

学習塾フランチャイズは、生徒募集の豊富なノウハウを持っています。生徒を集めるためには、あらゆる広告媒体の中で何を使ってPRすればよいか、どのような時期にどのような場所で重点的に宣伝すれば効果的か、などの検討が欠かせません。

しかし、個人経営などの小さい学習塾では、どのような生徒募集活動を行えば効率が良く効果があるか、という科学的な分析・検討を行うのがなかなか困難です。

この点、学習塾フランチャイズでは、過去の生徒募集・入学の豊富なデータを集計・分析しており、その分析結果に基づいて科学的・組織的な募集活動を行うことができます。

受験・進路に関する豊富な情報が提供される

学習塾フランチャイズに加入するメリットで、屋号の使用に優るとも劣らない大きなメリットが豊富な情報力です。生徒や保護者は、入試制度の変更をはじめ、志望校の試験問題の傾向や偏差値の推移など、受験や進路に関する様々な情報を求めています。

個人経営の学習塾では、オーナー自らが受験や進路に関する情報の収集を行わなければなりません。その点、学習塾フランチャイズでは、本部から提供される受験や進路に関する豊富な情報を生徒や保護者に提供することができます。

質の良いカリキュラム・教材が提供される

学習塾の塾長は、年間カリキュラムの内容を生徒や保護者に示し、理解してもらう必要があります。また、学習指導に使う教材は、対象となる生徒別(小・中・高生など)に用意しなければなりません。

このように、個人経営の学習塾では、オーナーが苦労して年間カリキュラムを作成するとともに、使用する教材を選別して用意する必要があります。その点、学習塾フランチャイズでは、年間のカリキュラムや教材はフランチャイズ本部から提供してもらえます。

豊富な教育コンテンツが使える

近年、学習塾においてもパソコンやスマホを使った映像教育が利用されてきています。これは、従来のようにビデオを視聴する教育方法に止まらず、最近ではWEB配信型の授業をはじめ、オンラインでの双方向コミュニケーションが可能な授業形態に発展しています。

生徒にとっては、講話・黒板・テキストという従来型の教育指導に比べ、幼い頃から馴染んできたデジタル視聴覚機器で勉強することができる、自宅でスマホを使って学習ができるなど多くのメリットがあります。

しかし、個人営業の学習塾で映像教育のための視聴覚機器や教材を揃えようとすると、かなりの費用がかかり、また、配信する教材も自分で調達しなければならないことから、資金的・作業的に四苦八苦しているオーナーが多くみられます。

その点、学習塾フランチャイズでは、一定の備品費はかかりますが、視聴覚機器は開業時に教室整備と併せて準備ができ、配信する教材はフランチャイズ本部から提供してもらえます。

本部のサポートがある

学習塾フランチャイズの強みは、運営に際して本部のサポートを受けられることです。学習塾を運営していると、「生徒が思うように集まらない。辞めてしまう生徒が増えた。生徒の成績が伸びない。問題行動を起こす生徒がいる」など、様々な問題に突き当たる場合があります。

個人経営の学習塾オーナーであれば、このような問題に一人で向き合い、問題解決のために頭を悩ませてしまいます。

しかし、学習塾フランチャイズでは、塾側が抱える様々な問題に対し、本部の経験豊富なスタッフが問題解決のための指導やアドバイスを行ってくれます。

学習塾フランチャイズのデメリット

学習塾フランチャイズのデメリット

学習塾フランチャイズには、デメリットもあります。次は、学習塾フランチャイズに加入するデメリットをみていきましょう。

学習塾フランチャイズのデメリット

初期費用がかかる

学習塾フランチャイズに加入するには、初期費用がかかります。初期費用の内訳は、上でも説明したように次のとおりです。

  1. ①フランチャイズ加盟金
  2. ②物件の取得・賃借費
  3. ③教室内装・看板・出入口錠前工事費
  4. ④教室設備・備品費
  5. ⑤教材・文具費
  6. ⑥研修費
  7. ⑦宣伝広告費

必要な初期費用は、加入するフランチャイズによって、また、開業する場所や規模によって違ってきますが、一般的には500~1,000万円程度かかります。

なお、上記の費用のうち、①のフランチャイズ加盟金と⑦の研修費以外は、個人で学習塾を始める場合でも必要となるものですが、個人の場合は、自分の判断で安く済ませることも可能です。

ロイヤリティがかかる

学習塾フランチャイズに加入すると、毎月本部にロイヤリティ(手数料)を支払う必要があります。ロイヤリティの金額は、加入するフランチャイズによって異なりますが、一般的には、入学金の50%、授業料の10%程度です。

途中解約するとペナルティがある

個人経営の学習塾は、オーナーがいつ塾を閉鎖してもペナルティはありません。しかし、フランチャイズ契約には、通常5年契約や10年契約などの契約期間があります。オーナー側の都合で契約期間の途中で学習塾を廃業するなど、途中解約すると違約金をとられます。契約期間の長さや違約金額は、加入するフランチャイズによって異なります。

開業場所を自由に決めることができない

個人で学習塾を始める場合は、どこの場所で開業するか自由に決めることができます。
しかし、学習塾フランチャイズでは、オーナーが開業場所を自由に決めることができないケースがほとんどです。

それは、既存の加盟店と商圏が重なる場所には、開業ができない仕組みになっているからです。同じフランチャイズの加盟店同士が場所的に接近して、生徒の取り合いになることを防いでいるため、この制約は仕方がないと諦めるしかありません。

授業料・教材などに制約がある

個人で学習塾を始める場合は、授業料を自由に設定でき、使用する教材も自分で決めることが可能です。極端な例では、授業料を大幅に安くする、自分が手作りの教材を使用するなどで、他の学習塾と差別化を図ることもできます。

しかし、学習塾フランチャイズでは、授業料は本部が設定するため、オーナーが自由に決めることができません。また、使用する教材も本部が指定するものを使う必要があるなど、オーナーの裁量が制約を受けます。

学習塾フランチャイズに加入する際のポイント・注意点

学習塾フランチャイズに加入する際のポイント・注意点

学習塾フランチャイズに加入するときは、どのような点に注意したらよいのでしょうか。
次は、学習塾フランチャイズに加入する際のポイントについてみていきましょう。

学習塾フランチャイズに加入する際のポイント・注意点

個別指導に強いフランチャイズを選ぶ

個別指導とは、先生1人が生徒1人を、または先生1人が生徒2人を指導する体制をいいます。これに対して、従来型の先生1人が多数の生徒を指導する体制を集団指導といいます。
集団指導は、一定の学力を持っている生徒に対し一律に指導ができる効率性が長所ですが、クラスの授業レベルやスピードについていけない生徒が生じる可能性があります。

それに対し個別指導は、質の高い講師を多数集める必要がありますが、学力が十分ではない生徒に対し、その生徒の力に応じたきめ細かい指導ができる長所があります。

近年は、個別指導を希望する生徒や保護者が増えており、それに応じて学習塾側も個別指導に力を入れています。そのため、個別指導に弱い学習塾では、生徒や保護者のニーズを満たすことが難しくなっているのです。

このことから、学習塾フランチャイズに加入する際は、個別指導への力の入れ方、レベルの高い講師の確保策、教室内の個別指導方法などについて、十分に確認しておくことが重要です。

特に、教室内の個別指導方法では、
①常時生徒の隣に先生が居て、いつでも質問・応答ができる体制がとれているか
②先生1人生徒2人体制では、先生が1人の生徒に教えている間は、別の生徒に演習問題を解かせる指導を行っているか
などをチェックしておくことです。

市場調査を十分に行うフランチャイズを選ぶ

学習塾の経営を成功させるには、教室のある場所から通える範囲内に生徒が一定数以上住んでおり、その世帯にある程度の経済力があることが必要です。また、開業場所の周囲にある他の学習塾の数や規模・学習レベル・特徴、公立学校や私立学校の数や学習レベルなども塾経営に大きく影響します。

しかし、これらの情報は、市場調査を行わなければ適確に把握することが困難です。
このため、学習塾に生徒を集めて経営を安定させていくには、開業前の市場調査を十分に行うことが必要です。

フランチャイズ企業では、何か所もの教室候補地について、常時市場調査を行っています。しかし、その市場調査の方法や頻度はフランチャイズによって異なるため、結果の精度には差が生じます。

学習塾フランチャイズに加入する際は、市場調査の対象地域・方法・頻度について詳しく調べることが大切です。また、市場調査の結果と開業後の経営状態との相関について、実際の過去データを求めて自分なりに検証してみることが肝心です。

そうすると、市場調査に力を入れているフランチャイズが自ずと判別できるようになってきます。科学的・客観的な市場調査に力を入れているフランチャイズを選別し、加入することをおすすめします。

生徒募集に力を入れるフランチャイズを選ぶ

どのように条件の良い場所に学習塾を開業しても、生徒募集のやり方が上手でないと、生徒は集まってきません。いわば、生徒募集活動は学習塾経営の生命線です。生徒募集の広報媒体は、新聞・雑誌・ネット・電車広告・看板広告・チラシ配布など様々ですが、どの媒体をどのようなタイミングで使うかは、フランチャイズによって異なります。

学習塾フランチャイズに加入する際は、どのような媒体を使ってどのタイミングで広告を行うのか、また、宣伝広告の対象は生徒なのか保護者なのか、さらに、広告が生徒・保護者の気持ちを掴む内容になっているかなどについて、詳細に調べることが大切です。

生徒募集に力を入れているフランチャイズであれば、必ず生徒や保護者を動機付けできる内容やタイミングでPRを行っているはずです。生徒募集に力を入れるフランチャイズを見抜くことが、学習塾経営を成功に導いてくれるのです。

受験・進路の情報力があるフランチャイズを選ぶ

生徒や保護者は、以下のような受験・進路に関する様々な情報を求めています。

  1. ①入試制度の変更
  2. ②志望校・競合校の偏差値
  3. ③志望校の試験内容・試験問題の傾向
  4. ④志望校の最新の評判
  5. ⑤志望校にある部活動
  6. ⑥志望校・志望学部と将来の進路・職業
  7. ⑦生徒の学力の分析と対策

これらの情報について、いかに正確かつ詳細に提供できるかが、学習塾の評価に繋がります。すなわち、生徒・保護者の求めている情報を迅速・正確・詳細に提供できる学習塾の評価・評判が高くなっていくのです。

そのため、学習塾フランチャイズに加入する際は、そのフランチャイズが受験・進路に関してどれだけの情報収集力があるかを見極め、加入の判断基準にすることが重要です。

映像コンテンツが充実しているフランチャイズを選ぶ

近年は、学習塾においても、映像を用いた教育指導が普及してきました。この映像教育も、従来からある授業内容のビデオ配信など情報を流すだけの方式から、パソコンやスマホを利用した双方向コミュニケーション型の教材に進化しています。

従来型のビデオ配信など情報を一方向に流す方式は、生徒が好きなときに映像を視聴して学習することができるメリットがありました。

しかし、近年普及してきた双方向コミュニケーション方式の教材を使えば、生徒が自宅に居ながら先生の説明を聞き、わからない箇所はすぐに質問することができます。問題解決を後送りにせず、リアルタイムで生徒の疑問や不安を解消することが可能です。例えば、学習塾における授業とは別に、双方向コミュニケーション方式の学習システムを使い、生徒の自宅学習を支援することも可能になっているのです。

また、2020年からの新型コロナウィルス感染禍を契機として、将来的に学習塾業界も大学のようにオンライン授業が普及拡大していく可能性もあります。

学習塾業界では、すでに独自のオンライン学習システムを開発し、教材として利用しているフランチャイズも多くあります。

これからの時代、学習塾フランチャイズに加入するにあたっては、映像コンテンツを活用した教材、特に、パソコンやスマホを使って先生と生徒がリアルタイムで双方向のコミュニケーションがとれる学習システムを完備しているフランチャイズを選ぶのがポイントです。

カリキュラム・教材・本部のサポート内容を十分に確認する

学習塾にとって、カリキュラムや教材は経営の生命線ともいうべき重要な商品です。学習塾フランチャイズを開業した後は、本部から提供されるカリキュラムや教材を使って生徒を教えていくことになります。

したがって、カリキュラムや教材は事前にしっかりと確認しておく必要があります。また、学習塾の経営で様々な問題に直面したときに、本部からどのようなサポートを受けることができるかについても、具体的に例をあげて確認しておくことが大切です。

開業場所は妥協しない

学習塾フランチャイズを開業しようとする場合は、本部側で事前に市場調査を行ってくれますが、生徒が集まりそうな条件の良い場所に開業希望者が集中してしまうことがあります。

そのため、希望順位が低い場所での開業を勧められるケースがありますが、開業場所は最後まで妥協しない方が安全です。

どうしても条件の良い場所での開業が叶えられない場合は、その話は一旦止めておき、他のフランチャイズで自分が納得できる場所を探すことも必要です。

資金計画を立て、事業収支のシミュレーションを行う

事業を始める場合は、初めに資金計画を立てる必要があります。学習塾フランチャイズを開業する場合は、初期費用として、以下のような開業に要する費用が必要です。

  1. ①フランチャイズ加盟金
  2. ②物件の取得・賃借費
  3. ③教室内装・看板・出入口錠前工事費
  4. ④教室設備・備品費
  5. ⑤教材・文具費
  6. ⑥研修費
  7. ⑦宣伝広告費

以上の開業費用はフランチャイズによって異なりますが、必要な開業資金の合計額、自己資金の額、融資を受ける額を明確にしておきます。融資額は、毎年の営業利益から返済していくことになりますが、元本・金利を合わせた返済計画を立てます。

融資額の返済が滞らないためには、一定額以上の営業利益を上げる必要がありますが、様々な条件を変えて、以下のように試算を行ってみます。

〇収入=入学金+授業料+その他の諸収入
〇支出=教室賃料+外部講師費用+教材・文具費+光熱水費+ロイヤリティ+その他の諸経費
〇収入-支出=営業利益
〇営業利益-ローン返済額=手残り利益
*いずれも年額

在籍する生徒数や外部講師数など様々な条件を変えることで、入学金、授業料、外部講師費用などが変動するため、手残り利益が一定額以上のプラス(生活費)になる条件値を求めておく必要があります。

例えば、手残り利益が一定額以上のプラスにできる条件値として、年間の在籍生徒数平均が40人以上必要と算出された場合には、自分が開業しようとする場所でこれが達成可能な
数値であるかを客観的かつ冷静に検討します。

達成可能と判断できれば学習塾の開業に大きく近づくわけですが、達成困難と判断された場合は事業計画を根本的に見直すことも必要でしょう。

人気の学習塾フランチャイズ

人気の学習塾フランチャイズ

現在、学習塾フランチャイズは多くありますが、ここでは人気のあるフランチャイズを選んで紹介しましょう。

京進スクール・ワン

40年の歴史がある学習塾で、先生1人に対し生徒2人の個別指導制を採用しています。大学受験では、毎年過去最高合格者数を更新中のフランチャイズです。「脳科学理論に基づく学習指導」と「ほめる指導」に定評があります。

京進スクール・ワンでは、オーナーが直接生徒に教育指導することは勧めておらず、教室長として教室の運営と経営に専念してもらう方針です。

名称 京進スクール・ワン
運営会社 株式会社京進
教室数 106校
対象生徒 小学生・中学生・高校生
開業資金 798万円~(内訳)加盟金150万円研修費20万円教室設備・備品220万円~電子錠システム18万円~内装・看板工事100万円~教材・文具など40万円~テナント保証金・初回賃料120万円~宣伝広告費130万円~
加盟金 150万円
ロイヤリティ 授業料10%、入学金50%
営業地域 全国

【収益モデルの例】

・生徒数が年間平均60人のケース

年間収入 入学金 63,540円
授業料 25,214,500円
諸経費収入 1,297,800円
教材テスト収入 751,106円
収入合計A 27,330,246円
年間支出 固定費 4,848,000円
変動費 12,698,520円
支出合計B 17,546,520円
年間営業利益 A-B 9,783,726円

ベストワン

子供向け英会話教室でお馴染みのECCが経営する個別指導型の学習塾フランチャイズです。
ECCの持つ全国的な知名度や加盟店に対するしっかりとしたサポート力がメリットのフランチャイズです。

ベストワンでは、本部で優秀な教室長や講師の採用をサポートしてくれるため、多くの学習塾未経験者が教室オーナーとして活躍しています。

名称 ECCの個別指導塾ベストワン
運営会社 株式会社ECC
教室数 120校
対象生徒 小学生・中学生・高校生
開業資金 700~900万円
(内訳)
加盟金250万円
保証金525万円
加盟金 250万円
ロイヤリティ 授業料・諸費10%、入学金50%
営業地域 全国

松陰塾

松陰塾は、吉田松陰の松下村塾の教育を継承する塾として、自分で考える力の育成に取り組んできました。その中核は、自立学習教材である「Showin」という名のネット学習システムで、これにより講師不要の教育指導体制を作っています。

また、松陰塾は、ロイヤリティが0円という新しい方式の学習塾フランチャイズとしても有名です。

名称 ショウイン式完全個別指導塾 松陰塾
運営会社 株式会社ショウイン
教室数 165校
対象生徒 小学生・中学生
開業資金 400~600万円
(内訳)
加盟金(研修費を含む)200万円
学習システム導入費200~400万円(プランによる)
*別に、物件取得費、看板・備品費、広告費などが必要
加盟金 200万円
ロイヤリティ 0円
営業地域 全国

【収益モデルの例】

年間売上高A 2,100万円
年間経費B 400万円(人件費0円、ロイヤリティ0円)
年間営業利益A-B 1,700万円

Wam(ワム)

Wamは、1998年に創業してから、赤字で撤退した教室がない学習塾フランチャイズです。出店のエリア選定では、今後子供の増加が見込める地域や子供が安心して通える地域など学習塾ニーズがある地域を選定するマーケティング力に定評があります。

Wamの強みは、ポスティングなどによる独自の集客力ですが、その一環として体験生徒30人の獲得保証を行っています。

名称 個別指導Wam(ワム)
運営会社 株式会社エイチ・エム・グループ
教室数 107校
対象生徒 小学生・中学生・高校生・浪人生
開業資金 605万円
(内訳)
加盟金100万円
出店準備金100万円
営業支援100万円
研修費85万円
本部保証費50万円
設備費140万円
広告宣伝費30万円
*別に、物件取得費などが必要
加盟金 100万円
ロイヤリティ 総売上高の10%
営業地域 全国

【収益モデルの例】

1年目 3年目 5年目
生徒数平均 49人 90人 118人
年間売上高A 約1,738万円 約3,012万円 約3,872万円
年間経費B 約1,538万円 約2,100万円 約2,428万円
年間営業利益A-B 約200万円 約912万円 約1,443万円

Axis(アクシス)

Axisでは、以下の学習システムを導入し、講師に依存しない体制を作っています。
①スーパー講師映像講座
各教科・科目を網羅した1700講義を収録した映像講座です。
②Axisオンライン
どこに居ても講師によるマンツーマン授業が受けられる学習システムです。
③ロボットプログラミング講座
株式会社ソニー・グローバルエデュケーションと共同開発した学習講座です。

また、全国47都道府県に県本部を設置し、加盟店のサポートに力を入れています。

名称 個別指導Axis(アクシス)
運営会社 株式会社ワオ・コーポレーション
教室数 93校
対象生徒 小学生・中学生・高校生
開業資金 480万円
(内訳)
加盟金150万円
開校支援費30万円
教室設備費120万円
教室備品費30万円
広告宣伝費150万円
*別に、内装工事費、物件取得費などが必要
加盟金 150万円
ロイヤリティ 売上げの10%
営業地域 全国

【収益モデルの例】

・生徒数が年間平均70人のケース

年間売上高A 2,940万円
年間経費B 1,640万円
年間営業利益A-B 1,300万円

トライプラス

トライプラスは、「家庭教師のトライ」で有名なトライグループが展開する個別指導塾フランチャイズです。トライ式個別指導とAI学習プログラムを組み合わせた教育指導が売り物です。知名度の高さから教室数は400を超えていますが、約22万人以上の登録講師の中からハイレベルな講師を揃えることが可能です。

また、開業後生徒数が30名になるまでロイヤリティを無料とするなど、本部が強力なサポートを実施します。

名称 個別指導塾トライプラス
運営会社 株式会社TRGネットワーク
教室数 400校超
対象生徒 小学生・中学生・高校生
開業資金 548万円~
(内訳)
加盟金330万円
PC・タブレット・複合機など104万円
システム費22万円
教材・印刷・文具22万円
広告宣伝費50万円
加盟金 300万円
ロイヤリティ 授業料10%、講習料7~10%
営業地域 全国

【収益モデルの例】

・開業2年目のケース

年間売上高A 約2,640万円
年間経費B 約1,380万円
年間営業利益A-B 約1,260万円

フリーステップ

フリーステップは、先生1人に生徒2人の個別指導塾です。生徒の「成績アップ」と「志望校合格」を達成目標として力を入れており、点数アップと大学受験に強い学習塾として定評があります。フリーステップでは、内装・外観にこだわった教室を700万円台の初期費用で開校できます。

また、当初の加盟金を生徒数の増加に応じて分割払いできるセパレートチャージの制度も用意されています。

名称 個別指導学院フリーステップ
運営会社 株式会社成学社
教室数 237校
対象生徒 小学生・中学生・高校生
開業資金 セパレートチャージ制の場合
120万円~
(内訳)
加盟金0円(生徒数の増加に応じて分割払い)
教室設計管理費15万円
研修費40万円
広告宣伝費65万円
*別に、物件取得費、教室備品費、内外装工事費などが必要
加盟金 150万円
ロイヤリティ 授業料10%、入会金50%
営業地域 全国

【収益モデルの例】

・生徒数が年間平均60人のケース

年間売上高A 約2,549万円
年間経費B 約1,471万円(家賃300万円)
年間営業利益A-B 約1,078万円

まとめ

まとめ

少子化の流れの中で、学習塾の総数は減っていますが、企業が経営する学習塾はその数が増えています。すなわち、個人経営の学習塾は淘汰されながらも、法人経営の学習塾は伸びているのです。

それは、学習塾が直面している以下のような課題に対する対応力の違いが大きく影響しています。

  1. ①近年主流の個別指導の体制をとるためには、質の良い講師を確保する必要がある
  2. ②映像やオンラインを使った新しい教育システムへの切り替えが必要である
  3. ③最新の受験・進路情報を迅速に提供できる情報収集力が必要である
  4. ④学習塾を成功させるには、成功できるビジネスモデルを確立し、それに従った経営を行う必要がある

以上のような学習塾が直面している様々な課題に対して、個人経営に比べ法人経営の学習塾は、その組織力や資金力、豊富な経営ノウハウなどを駆使できるため、非常に優位な立場にあります。

このことから、学習塾を始める際は、企業が持つ様々な人的・物的資源や経営ノウハウを最大限活用できる学習塾フランチャイズに加入することが成功への鍵となります。

ただし、事前の検討もなく、学習塾フランチャイズに盲目的に加入しても、それだけで成功への途が開けるわけではありません。

学習塾フランチャイズで成功するには、フランチャイズのメリットを最大限に活用することです。加入にあたっては、そのメリットを最大限に生かすことができるフランチャイズを入念に選別し、その経営モデルに従って次第にノウハウを蓄積していくことが重要です。
そうすれば、少子化の時代にあっても、あなたの学習塾は生徒で賑わい、保護者からの信頼を集めることができるでしょう。