ヴィーガンやベジタリアン向けのフランチャイズ店が加速する?
フランチャイズで注目されている分野に、ヴィーガン店やベジタリアン店があります。近年の健康志向や食の多様化を背景に、ヴィーガンやベジタリアンの人たちが増えてきたことが主な理由です。フランチャイズでヴィーガン店やベジタリアン店を始める場合の大きな関心事項は、この分野の将来性はどうかということですが、近年のヴィーガン・ベジタリアンの増加状況や今後の予測などから、これから大きな成長が見込めるとされています。
今回の記事では、ヴィーガン・ベジタリアンの現状と将来、フランチャイズヴィーガン店・ベジタリアン店のメリットや成功させるポイントについて解説しています。フランチャイズ飲食店で開業を目指す方は、ぜひ参考にしてください。
目次
ヴィーガン・ベジタリアンとは
ヴィーガンとは、動物性食品を摂取しない人をいいます。ヴィーガンは、肉や魚を食べないだけでなく、動物性食品である卵や乳製品、ハチミツなども食しません。その意味で、完全菜食主義者ともいわれています。
それに対し、ベジタリアンとは、肉を摂取しない人をいいます。卵や乳製品を食しても、肉を摂らなければベジタリアンに区分されます。ベジタリアンは、摂取しない食品の種類によって、次のようにいくつかのタイプに分かれています。
【ベジタリアンの種類】
ペスコ・ベジタリアン | 肉は食べない 植物性食品、魚、卵、乳製品は食べる |
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ラクト・オボ・ベジタリアン | 肉、魚は食べない 植物性食品、卵、乳製品は食べる |
ラクト・ベジタリアン | 肉、魚、卵は食べない 植物性食品、乳製品は食べる |
ヴィーガン | 肉、魚、卵、乳製品は食べない 植物性食品は食べる |
上表のように、ヴィーガンはベジタリアンの1つのパターンであり、動物由来の食品を最も厳格に摂取しないグループといえます。
それでは、ヴィーガンやベジタリアンとなる動機は、どのようなものでしょうか。ヴィーガンやベジタリアンとなる動機は、以下のように様々です。
①体質的な理由
体質的な理由で、肉や動物性食品を食べることができないものです。生まれつきの体質で、肉や動物性食品を食べると体調が悪くなる、アレルギーが表れるという人がいます。このような人は、好き嫌いにかかわらず、肉や動物性食品を食べません。
②健康上の理由
肉や動物性食品は健康に良くないとして、食べないとするものです。肥満や動脈硬化などの成人病は、肉や動物性食品の摂り過ぎによるものが多いことから、近年の健康志向の高まりにより、ヴィーガンやベジタリアンになる人が増えています。
③宗教上の理由
宗教の教義により、肉や動物性食品を摂ることができないものです。例えば、イスラム教の信者は豚肉を食べることができませんが、豚肉以外の肉についても、イスラム教の方法に従って調理したもの以外は摂ることが禁止されています。
④動物愛護
動物愛護の理由から牛や豚を殺すことに反対し、そのため肉や動物性食品を摂らないとするものです。
⑤地球環境保護
家畜のCO₂排出量が多いことから、地球環境保護の理由で肉や動物性食品を摂らないとするものです。近年は環境保全に対する意識が高まっているため、環境保護の動機でヴィーガンやベジタリアンになる人が増えています。
ヴィーガン・ベジタリアンの現状と将来
次に、ヴィーガンやベジタリアンの現状と今後についてみていきましょう。
世界におけるヴィーガン・ベジタリアンの現状
近年、健康志向や地球環境保護への意識の高まりを背景として、世界的にヴィーガンやベジタリアンの人口が急速に増えています。中でも、ヴィーガン・ベジタリアン人口が多いヨーロッパでは、全人口の10%程度がヴィーガンまたはベジタリアンともいわれています。
このように、世界ではヴィーガン・ベジタリアン人口が増えていますが、特にその比率が高いのが次の国々です。
①インド
インドは、ヒンドゥー教の影響によりヴィーガン・ベジタリアン人口が多くなっています。
ヒンドゥー教は動物に対する殺生が禁止されており、このヒンドゥー教を信仰する人が多いインドではヴィーガン・ベジタリアン人口が多くなっているのです。
②イギリス
イギリスはヴィーガン発祥の国で、ヴィーガン・ベジタリアン人口の割合が世界一といわれています。
国民の地球環境保護や動物愛護の意識が高いこと、ヴィーガン食材が身近で手に入れやすいことなどがヴィーガン・ベジタリアン人口の多い理由です。
③アメリカ
アメリカでは、10~30歳代前半の比較的若い層でヴィーガン・ベジタリアン人口が増えており、年に4%近く増加しているといわれています。食文化が肉食主体であったことから、近年肥満や成人病などが問題となっており、健康志向の意識が高まっていることがヴィーガン・ベジタリアン人口増加の理由となっています。
④オーストラリア
オーストラリアでは、近年、環境問題や動物愛護、健康に対する意識が高まっており、ヴィーガン・ベジタリアン人口が増加しています。ヴィーガン・ベジタリアンは若い世代が中心で、国民の約10%ともいわれています。
日本の現状
日本のヴィーガン・ベジタリアン人口は国民の5%程度といわれ、ヴィーガン・ベジタリアン人口の比率が高い国に比べると、約半分程度の割合となっています。その理由としては、①販売されているヴィーガン食材の種類が少ない、②ヴィーガン食材の価格が高い、③飲食店におけるヴィーガン料理のメニューが少ないなどがあります。
ヴィーガン食材の種類が少ない、価格が高い、料理のメニューが少ないなどは、日本ではまだ本格的にヴィーガン・ベジタリアンの取組を行う人が多くないことが影響しているかもしれません。
日本におけるヴィーガン・ベジタリアンの今後
それでは、日本におけるヴィーガン・ベジタリアンの今後はどうなのでしょうか。上でみたように、日本におけるヴィーガン・ベジタリアン人口の比率は、それが高い国に比べると半分程度となっています。
日本を含めた世界では、健康志向をはじめ地球環境問題や動物愛護の意識の高まりが、今後さらに強くなっていくことが想定されます。それに伴いヴィーガン・ベジタリアン人口も増えていくとすれば、その人口比率が高くない日本では、将来的にヴィーガン・ベジタリアン人口が急激に増加していく可能性があります。
ヴィーガン料理・ベジタリアン料理は、元来、日本人の体質や考え方にマッチするものです。和食の代表ともいえる精進料理は、穀物・野菜・山菜などを中心に調理してある健康食で、ヴィーガン料理・ベジタリアン料理といってもよいものです。
昔の日本人は、一汁一菜として味噌汁や漬物を添えたご飯を食べていました。元々魚を食べる文化はありましたが、ほとんどの国民が経済的にあまり豊かでなかった時代には、食事のおかずに魚が付くことは何かのお祝い事など特別な日だけで、日頃は穀物や野菜、味噌などの粗食が中心でした。今から見ると非常にヘルシーな食事でしたが、よく考えると、昔の一汁一菜はまさにヴィーガン料理・ベジタリアン料理そのものだったことがわかります。
このように、精進料理や一汁一菜にみられるように、ヴィーガン料理・ベジタリアン料理の精神は、日本人のDNAに深く刷り込まれているといってもよいでしょう。その意味で、日本は、ヴィーガン料理・ベジタリアン料理が広く一般に普及していく下地が十分にあるといっても過言ではありません。
今後日本においても、健康志向が一層広がり、地球環境保護や動物愛護の意識が高まるにつれ、ヴィーガン・ベジタリアン人口がさらに増えることが想定されます。それは、①日本人は、歴史的・文化的・体質的に、ヴィーガン料理・ベジタリアン料理を抵抗感なく受け入れることができること、②日本のヴィーガン・ベジタリアン人口比率が高くないため、環境が整えば簡単に上がりやすいことなどの理由があるからです。
そして、ヴィーガン・ベジタリアン人口が本格的に増える兆しが見えてくると、販売されるヴィーガン食材の種類や量が増え、価格も手頃になっていくはずです。その頃には、飲食店でも、ヴィーガン・ベジタリアンのメニューが多彩となり、どれを選んでよいか迷う程になっているでしょう。
ヴィーガン・ベジタリアン人口が増加すること、および多彩なヴィーガン食材が手頃な価格で入手できる環境となることは、いわば両者の相乗効果の結果ともいえます。すなわち、①ヴィーガン・ベジタリアン人口が増加することで、多彩なヴィーガン食材が手頃な価格で入手できる社会になる、②多彩なヴィーガン食材が手頃な価格で入手できる社会になることで、ヴィーガン・ベジタリアン人口が増加するということなのです。
このことから、両者の相乗効果が本格的に効き始めると、爆発的にヴィーガン・ベジタリアン料理が普及していく可能性もあるのです。
フランチャイズヴィーガン店・ベジタリアン店のメリット
それでは、ヴィーガン店・ベジタリアン店をフランチャイズで始めるとどのようなメリットがあるかみていきましょう。
食材が確保できる
フランチャイズでヴィーガン店・ベジタリアン店を営業する場合の大きなメリットは、食材が確保できることです。
多くのフランチャイズでは、加盟店が調理用食材を仕入れる場合、その仕入先はフランチャイズ本部指定の業者と決められています。すなわち、加盟店は自分で食材の仕入先を探す苦労がなく、本部が指定する業者が自動的に仕入先となるシステムです。
このシステムの何が大きなメリットかというと、ヴィーガン店やベジタリアン店で使う食材には特殊なものが多いからです。ヴィーガン店やベジタリアン店で使う食材には、通常のメニューでは使用しないような種類のものが多いため、普通の仕入先では取り扱っていない場合があるのです。
例えば、ヴィーガン店やベジタリアン店でも、ハンバーグやシューマイなど肉仕様の料理を提供しています。ヴィーガン店やベジタリアン店といっても、野菜サラダや温野菜などの野菜ばかり提供しているわけではありません。見た目や味が、ハンバーグやシューマイそっくりで、肉を使用しない料理も多くあるのです。そのようなハンバーグやシューマイは、肉の代わりに植物性の大豆ミートなどを使って作りますが、大豆ミートなどを取り扱っている仕入先は限りがあります。
また、薬品や肥料を使わない無農薬野菜・自然栽培野菜、添加物を用いない無添加食材などもヴィーガン店やベジタリアン店で多く使用されますが、これらの食材もどこででも手に入るわけではありません。
仮に、個人でヴィーガン店やベジタリアン店を始めようとしたら、このような特殊な食材を取り扱う業者を自分で探さなければなりません。それに対し、フランチャイズでは、食材の仕入先はフランチャイズ本部が指定する業者と決められているため、仕入先を自分で開拓しなくてもよいのです。
調理法や経営ノウハウが教示される
フランチャイズヴィーガン店・ベジタリアン店の大きなメリットは、調理法や経営ノウハウを教えてもらえることです。
ヴィーガン店・ベジタリアン店では、通常の飲食店では使用しないような特殊な食材を使い、動物由来ではない肉料理や魚料理を作ります。そのためには、特別な調理法を学び身に付ける必要がありますが、フランチャイズでは研修をはじめ調理マニュアルの提供などによりその調理技術を教示してくれます。
ヴィーガン店・ベジタリアン店における調理は、肉や魚以外の食材を肉や魚の味に近づけるだけではありません。肉や魚以外の食材を使って肉や魚の味を超える料理を作ることが目標になります。また、味だけでなく、見た目や盛り付け、匂い、食べたときの食感なども非常に大切です。さらに、スープや出汁の原料に肉や魚介類を使えないため、旨味を出す工夫も必要になります。
このように、普通の料理にはない調理法をフランチャイズ本部から教わることができるのは、大きなメリットです。
また、フランチャイズでは、提供料理の調理方法だけでなく、店舗の経営に関するノウハウなども教えてもらえます。店舗の経営は、①食材の仕入れ、②調理、③接客・会計、④アルバイトの採用・教育、⑤日々の記帳・損益計算、⑥保管食材の管理、⑦店舗施設・設備の管理など、そのジャンルは多肢にわたります。
フランチャイズ本部には、それぞれのジャンルに蓄積されたノウハウがあり、必要に応じて加盟店に教示してくれるのです。
開業後の収益予測ができる
フランチャイズの大きなメリットの1つに、開業後の収益を予測できることがあります。事業を始めようとする場合に、最も関心が高い事項として次の2つをあげることができます。
- 開業費用はどの位かかるか
- 開業後の収益はどの程度か
このように、事業を始める場合の2大関心事項の1つである「開業後の収益」ですが、個人で事業を始める場合にこれを予測することは非常に難しいといえます。
開業後の収益は、営業利益=売上額-必要経費で表すことができますが、この中の売上額は、売上額=客単価×客数で求めることができます。すなわち、売上額は、客1人あたりいくら使ってくれるかという客単価や何人の客が来てくれるかという客数がわからなければ算出することができません。
また、必要経費も、仕入額や光熱水費などは実際に営業してみないと予測することは困難です。
それに対し、フランチャイズでは、系列既存店の営業実績を日々集計しデータ化しています。フランチャイズ本部は、系列店の規模や従業員数に応じて、どの程度の売上額がありどの位の必要経費がかかっているかを常に分析しているのです。
このため、フランチャイズで事業を始める場合は、これらの集計分析データから開業後の売上額や必要経費、営業利益額などを予測することが可能です。
商号・ブランドを使用できる
商号・ブランドを使用できることは、フランチャイズの代表的なメリットです。通常、個人でヴィーガン店・ベジタリアン店を営業する場合は、長い年月をかけて美味しい料理を手頃な価格で提供し続けて、やっと店の名前が世間に周知され、客に提供する料理も一定の評価を得ることができるようになります。そうなるまでには、店主や店舗スタッフの地道な努力や多くの苦労があるはずです。
それに対し、フランチャイズに加盟する場合は、開業時点から店の名前にフランチャイズの商号を使うことができ、店の料理もフランチャイズブランドのものを提供することができます。フランチャイズは、長年に渡りそれぞれの業界で一定の実績を積み上げてきており、また、豊富な資金を使ってグループの宣伝広告を行っていることから、その商号や提供ブランドは、社会的に周知されるとともに一定の信頼を得ています。
すなわちフランチャイズに加盟すると、加盟店は、フランチャイズが築き上げてきた社会的な信頼や評価をそのまま引き継ぐことができるわけです。
宣伝広告してもらえる
フランチャイズに加盟すると、フランチャイズ本部に宣伝広告してもらえるという大きなメリットがあります。
個人で事業を行う場合、独力で自分の店舗や商品を宣伝しなければなりませんが、フランチャイズでは、グループのPRは本部が行ってくれます。フランチャイズ企業は資金力があるため、新聞・テレビ・雑誌など様々な媒体を使って宣伝を行うことができることから、フランチャイズの商号やブランドを世間に周知してもらうことが可能です。
このように、グループ自体のPRはフランチャイズ本部に任せておけばよいので、加盟店は自分の店舗の宣伝に専念することができます。加盟店は、新聞・テレビ・雑誌など費用がかかる広告媒体を使うのではなく、ネットやSNSを利用したPRを主体とし、余裕があれば近隣にチラシを配布するなどの方法で十分でしょう。
フランチャイズヴィーガン店・ベジタリアン店を成功させるポイント
それでは、フランチャイズヴィーガン店・ベジタリアン店を成功させるには、どのような点がポイントになるかをみていきましょう。
ヴィーガン・ベジタリアンを学ぶ
フランチャイズヴィーガン店・ベジタリアン店を成功させるには、まず、ヴィーガン・ベジタリアンを学ぶことから始めます。
- ヴィーガン・ベジタリアンとは何か
- ヴィーガンとベジタリアンの違いは何か
- ヴィーガンやベジタリアンになる理由は何か
- ヴィーガンやベジタリアンになると、健康上どのような効果があるか
- ヴィーガンやベジタリアン向けの料理には、どのようなものがあるか
- 肉・魚・卵・乳製品などの代替食材には、どのようなものがあるか
- 代替食材の栄養価はどうか
- 代替食材は、どこで手に入るか
- ヴィーガンやベジタリアン料理は、どのように調理するか
①~④のヴィーガン・ベジタリアンとは何でそれらの違いは何か、そうなる理由は何で健康上どのような効果があるかなどは、既に説明した事項について、さらに深く掘り下げて学習することです。
また、⑤~⑨のヴィーガンやベジタリアン向けの料理にはどのようなものがあり、肉・魚・卵・乳製品などの代替食材はどのようなものがあって、その栄養価はどうで、どこで手に入るか、どのように調理するかなどは、開業前にフランチャイズ本部の研修や業務マニュアルで勉強するはずです。
しかし、開業のために突貫工事で研修や勉強をして知識を即席で詰め込んでも、本当の意味でヴィーガンやベジタリアン料理のことをわかったとはいえません。無事に開業に漕ぎつけても、その後も引き続き学習や研究を重ねて、より美味しく、より手頃な価格で、より健康的な料理を提供できるように、安易に妥協しないことです。
仮に、一夜漬けで業務マニュアルに書いてある知識・技術だけを詰め込んだだけで、後はマニュアルどおり機械的に調理を行っていたら、利用客に「料理の完成度が低い」、「店主の熱意が足りない」など、技量不足を見破られてしまいます。
ヴィーガンやベジタリアンの客は、その辺のハンバーガーやカレーを食べる一般の客とは異なり、食や健康に対して強いこだわりを持っています。そのような食や健康に強いこだわりを持つ利用客に喜んで食べてもらうには、店主自身も客と同じ位に料理にこだわりを持って研鑽を積んでいく必要があります。
また、ヴィーガンやベジタリアンの客は、料理や食材について専門的で細かい質問をしてくる可能性があります。宗教上の理由で食べることができない食材がある場合などは、自分が納得するまで細かくしつこく訊いてくる客がいても不思議ではありません。そのような専門的で細かい質問をされた場合に的確な説明ができなければ、「この店のレベルは低い」とみなされてしまいかねません。
ヴィーガン店やベジタリアン店で成功しようとしたら、一般のフランチャイズ飲食店以上の熱意を持って研究や自己研鑽を続けることが非常に重要となります。
利用者のニーズに適合させる
次に重要なポイントは、事業を利用者のニーズに適合させることです。
これからのフランチャイズ事業は、利用者のニーズをいち早く捉えそれを事業に反映させていくことが肝心です。特に、ヴィーガン店・ベジタリアン店などその利用者が食に対するこだわりを強く持っている業種では、店の商品やサービスを利用者のニーズにマッチさせていくことがその成否の鍵となるといっても過言ではないでしょう。
一口にヴィーガン店・ベジタリアン店といっても、その種類は多様性を帯びています。多くのヴィーガン店・ベジタリアン店は、一般の既存料理をベースにして、ヴィーガン仕様やベジタリアン仕様の料理にしていきます。例えば、一般の中華料理のギョーザやイタリア料理の魚介パスタなどを基本として、それを植物由来の食材を使って調理します。
このため、ベースとなる基本料理をどこの国の料理に置くか、和食にするか、中華にするか、イタリアンにするかという問題があります。和食も中華もイタリアンも何でも調理するというのは無理なため、ベースとなる料理を決める必要があるのです。
そして、その決め方は科学的で合理性がなければいけません。科学的・合理的ということは、利用者のニーズが最も高い料理を見極めて、それをベース料理にするということです。
すなわち、基本となるベース料理は、消費者のニーズ調査やアンケート調査、その他既存飲食店の営業実績の統計など、利用者が欲しているものがわかる客観的・科学的なデータに基づき判断することが求められます。
また、利用者のニーズは、ベース料理だけではありません。ヴィーガン店・ベジタリアン店も、そのレベル内容によって、ランクが分かれています。肉だけ使わないベジタリアン店にするのか、肉、魚、卵、乳製品など動物由来の食材を一切使わないヴィーガン店にするのか、両者の中間タイプにするのか、あるいは、ベジタリアン料理とヴィーガン料理の両方を提供できる店にするのかという問題です。
どのような店にするかは、これも適当に決めるのではなく、どこに利用者のニーズがあるかに基づき決める必要があります。商圏調査や利用者のニーズ調査、既存店営業実績などによりヴィーガンやベジタリアンが欲しているものは何かを把握し、それを基に提供料理の内容を客観的・科学的に決めているフランチャイズを選ぶことが非常に重要です。
基本的には、上で説明した基準でフランチャイズを選ぶわけですが、ここで、フランチャイズ本部の方針決定が客観的・合理的であるという見極めは、どうすればよいのでしょうか。
それは、フランチャイズの提供料理の内容、例えば、ベースとなる料理がタイ料理で、料理のランクが動物由来の食材を一切使わないヴィーガン料理である場合、その提供料理が利用者のニーズにマッチしていると判断した根拠を訊ねてみるのです。いつ、どこで質問するかというと、契約締結前のフランチャイズ選びの時点で、フランチャイズ本部への資料請求に併せて質問するか、加盟店募集説明会の会場で訊ねてみましょう。
その場合に、「それは○○年に実施した○○調査の結果を分析したところ、タイヴィーガン料理のニーズが高いことが判明したことによる」などと明確な説明があれば、そのフランチャイズ本部の方針決定は客観的・合理的であるといえるでしょう。
外国人への接客体制を整える
外国人への接客体制を整えておくことも重要なポイントになります。海外からの観光客や出張者には、ヴィーガン・ベジタリアンが多く混じっています。しかし日本では、ヴィーガン・ベジタリアンに対応した料理を提供できる店の数がまだ少ないのが現状です。そのため、ヴィーガン・ベジタリアンの外国人観光客や出張者は、自分が食べたい料理を自由に摂ることができず不便を感じています。
したがって、ヴィーガン・ベジタリアン向けの料理を提供できる店を開くと、店舗の場所にもよりますが、ヴィーガン・ベジタリアンの外国人観光客や出張者が集まってくると想定されます。その場合に備え、外国人への接客体制を整えておくのです。具体的には、次の対策を講じると良いでしょう。
①英会話の習得
海外からの観光客や出張者が来店した際に困らないよう、英会話を習得しておきましょう。
来日外国人は、日本語を話せる人ばかりではありません。日本語をほとんど話せずに英語でコミュニケーションをとろうとする人もかなりいます。そのような客に対しては、こちらも英語で応じる必要があります。
この場合、英会話の習得といっても、料理の注文を受け、料理をテーブルに運び、会計を行うなどの際に必要最小限の英会話ができればよいので、その習得にはあまり苦労はしないはずです。ただし、ヴィーガン・ベジタリアンの客は、それなりに料理に対するこだわりを持っている可能性があることから、食材や調理法について質問されることもあるでしょう。その際に、簡単に答えることができるレベルの英会話は身に付けておきたいものです。
「英語圏ではなく、中国やフランスなどから来る客には中国語やフランス語で応対しなければならないのでは?」と思う方もいるかもしれませんが、そこまでの準備は必要ありません。英語は万国共通語なので、必要最小限の英語だけ身に付けておけば、ほとんどの場合に対応が可能です。
②メニュー表の外国語表記
メニュー表は日本語のみではなく、できれば外国語表記も入れたいものです。会話の場合は英語だけで大丈夫でしたが、メニュー表は、英語のほかに来日観光客数が多い中国語や韓国語表記も入れておくと効果的です。
メニュー表に外国語表記がされていると、「間違って違う料理を注文されて後でトラブルになる」「注文を受ける際に質問をされる」などが少なくなるでしょう。
店舗の立地場所が重要
店舗の立地場所は、非常に重要なポイントです。ヴィーガン・ベジタリアン店を経営する上で、立地の良い場所に店を構えると集客に苦労しません。逆に、立地の良くない場所に店があると、どのように頑張っても人は集まってきません。どのような場所に店を出すかによって、店舗経営の成否が分かれるといっても過言ではないのです。
それでは、立地が良いとはどのような場所なのでしょうか。ヴィーガン・ベジタリアン向けの飲食店を始める優良な場所は、次のエリアです。
①大都市のビジネス街
大都市のビジネス街は、平日を中心に会社員などで賑わいます。海外から仕事で出張してくる外国人ビジネスマンも多く、周辺の飲食店はランチを兼ねた商談に利用されます。
②大都市のターミナル駅の一角・周辺
大都市のターミナル駅の一角や周辺も、自然に人が集まる場所であるため、立地場所として有望です。
③有名な観光地
日本の有名な観光地は、京都・鎌倉などの歴史ある古都、浅草などの風情ある下町、東京ディズニーランドを始めとするテーマパークなど、数えたらキリがありません。近年は、外国人観光客で大変な賑わいを見せていましたが、コロナ禍により下火となっていました。しかし、最近は入出国制限が緩和され、往時の活況が戻りつつあります。
日本を代表する有名な観光地であれば、ヴィーガン・ベジタリアンの人口比率が高い外国人観光客が行楽の際に立ち寄りやすく、利用してくれる可能性が高いでしょう。
④国際空港の一角・周辺
国際空港の一角や周辺にヴィーガン・ベジタリアン店があれば、海外の観光客やビジネスマンが手軽に利用できます。
以上のように、店舗の立地は、自然に人が集まりやすい場所を基本とし、その上でヴィーガン・ベジタリアン人口の比率が高い外国人を出来るだけ取り込める所が有望でしょう。
店舗のPRに力を入れる
店舗のPRに力を入れると、大きな効果が見込めます。コロナ禍による入出国制限が緩和され、来日する外国人観光客や出張者は往時の盛況さを取り戻しつつあります。この来日外国人には、かなりの確率でヴィーガン・ベジタリアンの人が含まれています。
また、行動制限が緩和されたことから日本人の行楽客や出張者も増えていますが、これらの日本人もヴィーガン・ベジタリアンの占める割合が高くなっています。
このように近年は、日本国内においても、ヴィーガン・ベジタリアン人口が増えていますが、その人たちのニーズに応えられる飲食店の受け皿が、まだ国内には不足しているのが実情です。このことから、ヴィーガンやベジタリアン向けの飲食店でなかなか食事ができずに不便を感じている人たちは、そのようなニーズを満たしてくれる店を苦労しながら探していることが想定されます。
このことから、「ヴィーガン・ベジタリアン向けの料理を提供するお店は、ここにありますよ」と、探しやすい形でPRしておくのが大変効果的でしょう。
宣伝広告の費用をかけずにPRするには、ネットやSNSを使うと便利です。フランチャイズ自体のPRは、フランチャイズ本部が大々的に行ってくれるので、こちらで宣伝するのは、自分の店舗の場所やメニュー、駐車場の有無などです。また、旅行社に営業を行ってPR用チラシを置かせてもらえば、外国人観光客の目に留まりやすくなります。
このように、地道に店舗をPRしていけば、外国人同士の口コミで店がそれなりに有名になる可能性もあります。来日外国人の間で話題になるようであれば、店が新名所になる日もそれ程遠くはないでしょう。
開業費用をかけ過ぎない
開業費用をかけ過ぎないことも重要なポイントです。フランチャイズヴィーガン・ベジタリアン店を開業しようとすると、次のような費用が必要になります。
①加盟金・保証金
加盟金は、フランチャイズに加盟する際にフランチャイズ本部に支払うお金で、その金額はフランチャイズにより違ってきます。保証金は、開業後加盟店がフランチャイズ本部に負債を負った場合に、それを清算するために預けておくお金です。保証金が使われなかった場合は、フランチャイズ契約解約時に全額が返金されます。
②店舗取得費
店舗の敷地・建物の取得費です。開業費用を抑えるためには、店舗を購入するのではなく賃借することを基本とします。賃借では、契約時に敷金・礼金・当初の家賃などが必要になります。
③店舗改造費
借りた店舗を飲食店用に改造するための費用です。飲食店の場合は、厨房スペースで防水工事や電気・ガス・上下水道工事、客室スペースでカウンター設置工事などが必要になります。また、内装工事では、室内をある程度洒落た雰囲気に仕上げる必要があるため、その分費用がかかります。
④店舗用備品・消耗品費
備品では、厨房用の流し、作業台、オーブン、ガスコンロ、冷凍・冷蔵庫などの大型設備が必要です。また、客用のテーブルや椅子、照明器具なども用意しなければなりません。
⑤広告宣伝費
店をPRするための費用ですが、当初はネットやSNSを中心に宣伝すれば、費用を抑えることができます。
以上が、フランチャイズヴィーガン・ベジタリアン店の大まかな開業費用ですが、これに家賃や仕入代金、光熱水費などを払うための運転資金の予備を一定額加えた金額が、開業時に必要になります。
このように、飲食店を開業するためには、かなりのまとまった資金が必要になりますが、その金額を出来るだけ抑えることが肝心です。開業費用をかけ過ぎてしまうと、自己資金だけでは賄えないため多額の融資を受けることになり、その返済負担が毎月降りかかってくるからです。ローン返済の負担が大きいと、それを返済するために売上げを伸ばそうとします。
客が沢山来店して売上げが伸びれば嬉しいですが、商売は初めからそのように理想的にはいきません。客があまり来ないのに、ローン返済のために売上げを伸ばそうとすると、後は、①提供料理の単価を上げる、②提供料理の質を落として仕入代を抑えるという方法になりますが、どちらの方法も実施は困難です。
というのは、フランチャイズでは、提供料理の単価や調理に使う食材はフランチャイズ本部が決定し、加盟店は勝手にメニュー表の単価を変えることや提供料理の質を落とすことはできないからです。このため、客があまり来ないままだと、最終的にローンの返済ができなくなる、別途借金してそのお金で返済するなど、大変な事態に陥ってしまう危険性があります。
このことから、開業資金は可能な限り抑えることを基本とし、①店舗は購入でなく賃借で、②店舗は居抜きで賃借するのが理想、③居抜き物件がなければ、厨房設備は購入でなくレンタルで、④厨房設備を購入する場合は中古でなど最も費用がかかる店舗取得費や店舗改造費、店舗用備品費などの圧縮に努めます。
なお、「居抜き物件」とは、貸店舗が前の営業形態のまま残されている形態、すなわち飲食店であれば、厨房と客室があり厨房設備一式がそのまま残されている物件です。居抜き物件であれば、店舗改造費や厨房設備費を大幅に節約することが可能です。
フランチャイズ本部の力を利用する
フランチャイズヴィーガン・ベジタリアン店を始める場合は、フランチャイズ本部の力を最大限に利用することが重要なポイントになります。
フランチャイズヴィーガン・ベジタリアン店を始めようとする人で、自分もヴィーガンかベジタリアンだという人がどれだけいるでしょうか。多少はいらっしゃるかもしれませんが、それ程大勢はいないでしょう。
ということは、フランチャイズ飲食店を始めようと決心した時点では、その人はヴィーガンやベジタリアンに関して初心者の素人であるというケースが多いと想定されます。
既に説明したように、ヴィーガン・ベジタリアン店の利用客は、食や健康に強いこだわりを持っていることから、店を経営する店主も客と対等に話ができるよう研究や自己研鑽を積むことが重要です。しかし、ヴィーガンやベジタリアンの素人が、自分1人だけの力で食や健康に強いこだわりを持つ利用客と同等の知識を身に付けるのは、簡単ではありません。そこで、その簡単ではないことを達成するために、フランチャイズ本部をうまく利用するのです。
フランチャイズ本部には、研修の講師などを務める調理の専門スタッフがいます。フランチャイズによっては、研修講師を外注しているところもあるかもしれませんが、ヴィーガン・ベジタリアン店専門のフランチャイズであれば、自社内にヴィーガン・ベジタリアン料理の専門スタッフがいる可能性が高いです。また、調理の業務マニュアルを作成する部署にも、料理に詳しいスタッフがいます。
したがって、日々の研究や勉強でわからない箇所が出てきたら、そのような専門家に質問し教えてもらえるよう、あらかじめ依頼しておくのです。あまりに度を越えて頻繁に質問ばかりしていたら業務妨害になってしまいますが、適度な範囲内であれば研究熱心な加盟店オーナーだということで、よく教えてくれるはずです。
また、参考になる書籍なども教えてもらい、暇を見つけて読み込んでいけば、業務マニュアルだけからではわからないヴィーガン・ベジタリアン料理の本質が見えてくるのではないでしょうか。
まとめ
日本は、現状ヴィーガン・ベジタリアン人口の比率がそれ程高くありませんが、今後、健康志向や地球環境保護、動物愛護の意識が高まることにより、その人口はさらに増えることが想定されます。その理由は、①精進料理や一汁一菜にみられるように、日本人は歴史的・文化的・体質的に、ヴィーガン料理・ベジタリアン料理を抵抗感なく受け入れることができること、②ヴィーガン・ベジタリアン人口の比率が高くない日本は、環境さえ整えば簡単に比率が上がりやすいことなどをあげることができます。
また、フランチャイズヴィーガン店・ベジタリアン店を成功させるには、①店主自身も客と同じように料理にこだわりを持ち、ヴィーガン・ベジタリアンを学び研鑽を積んでいくこと、②利用者のニーズにマッチする料理を提供するフランチャイズを選ぶこと、③ヴィーガン・ベジタリアン人口の比率が高い外国人への接客体制を整えること、④大都市のビジネス街、大都市のターミナル駅の一角・周辺、有名な観光地、国際空港の一角・周辺などヴィーガン・ベジタリアンの客が集まりやすい立地に出店すること、⑤ネットやSNSを使い、効果的に店舗のPRに力を入れること、⑥店舗は購入でなく賃借を基本とし、居抜き物件がなければ厨房設備はレンタルとし、購入する場合でも中古とするなど、初期費用の圧縮に努めること、⑦料理の知識や技術を専門家に教わるなどフランチャイズ本部の力を最大限利用することなどがポイントになるでしょう。