フランチャイズ経営を安定させるポイントとは 安定経営におすすめの業種・業界も
フランチャイズ経営を安定させるためには、事前の綿密な準備とフランチャイズ業種の選定が重要なポイントになるほか、経営開始後はフランチャイズ本部との連携や現場での工夫が必要になります。また、フランチャイズ本部が望む施策を積極的に取り入れ、利益を出していく試みも大切です。
フランチャイズ経営は、業種やフランチャイズ本部の選定、契約、資金調達、営業スタート時など、最初のボタンを掛け違えると、開始後の軌道修正に苦慮することになります。また、フランチャイズは5年、10年、それ以上など長期的なスパンで続けていくことになります。
そのため、フランチャイズ開始時点と運営開始後、そして数年・10年など長期スパンを見据えて考えて行く必要があります。当記事では、フランチャイズ経営安定のポイントをまとめ、ポイントを踏まえた上で安定経営にお勧めの業種・業界をご紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
フランチャイズ経営を安定させるポイントは?
フランチャイズ経営を安定させるポイントは、開業後のフランチャイズ本部との連携や自助努力だけでなく、「開業前の綿密な準備・事業者選定」が重要です。開業検討時・フランチャイズ選定時・資金調達時・開業時・営業開始などで、ポイントを踏まえてご紹介していきます。
何よりも十分な資金調達
フランチャイズのみならず、経営安定の上で不可欠なのは、十分な資金調達です。資金調達を行うためには、多くのケースで「日本政策金融公庫」より融資を受ける必要があります。(また、都道府県の信用保証協会より保証を受け、金融機関から借入を行うという方法もあります)日本政策金融公庫から融資を受ける上では、借りる金額の最低10分の1、理想としては3分の1以上の自己資金を用意しておくことが必要となります。
日本政策金融公庫の創業融資の審査においては、多くのケースで通帳1年分の確認、自己資金をどのようにして貯めたか等が確認されます。その際、自己資金が10分の1に満たないと、融資を受けることはかなり厳しくなります。また、通帳上は自己資金が存在しても、コツコツ貯めたものではなく、突然大きなお金が振り込まれている場合も、本当に自己資金なのか、お金の出所が本人のものであるのかが問われる場合があります。お金の出所が不確かな場合、審査は厳しくなる可能性があります。
また、公共料金の引き落とし漏れなども1年分チェックされるケースが多く、引き落としがされていない月があると、お金の支払いに対してルーズであると見なされ、審査が相当厳しくなります。
そのため、個人としてできる限りの十分な自己資金の用意と、日本政策金融公庫などを通した十分な資金調達が必要となります。
プランBを見込んだ計画
フランチャイズを検討する上で、「プランB」、つまり当初の見込みと違う場合になったケースを見込むことは重要です。フランチャイズを始めるプロセスで、プランBを考えておくポイントはあります。
・フランチャイズを検討し、加盟したが想定以上の費用が発生した
フランチャイズ検討時や加盟時に、想定される必要費用などのシミュレーションを本部が行うケースが多いです。ただ、実際に開業に着手すると、様々な要因で、想定以上の費用がかかる事もあり得ます。この場合、費用を抑える手段を検討するか、追加で資金を調達するかを決めておく必要があります。
特に、開業準備が途中まで進み、その中で想定を超える費用が発生したときは、想定を超える費用をどのようにして工面するかを考える必要があります。いざお金が必要となってから、追加で融資を受けるのは大変です。当初の融資時に余裕を持って借入を起こすか、もし足りない場合は借入を行った金融機関に事情を説明し、追加融資を受けられるかなどの相談を早急に行う必要があります。
・フランチャイズを開業したが、本部のシミュレーション通りに収益が推移しない
本部のシミュレーションは、あくまで理想の想定で試算を行ったものです。フランチャイズ本部は、シミュレーション書面を一つの参考資料と位置づけ、内容が確実に実現されることは保障できないという注意書きをどこかに入れているケースが大半です。そのため、本部のシミュレーションはあくまで理想通りに事業が進んだ最善のケースであり、ここから下振れする可能性があることは想定しておく必要があります。
ちなみに、令和3年1月に、「フランチャイズ・システムに関する独占禁止法上の考え方について」の改正(案)が公正取引委員会より出されています。その中で、予想収益等の説明が不十分なケースを優越的地位の濫用の違反例とし、モデル収益等を示す場合は,収益を予想するものではない旨を説明するよう注記するように改正される方針が進んでいます。そのため、今後はモデル収益に関し、より慎重なシミュレーションと、注意事項のより明確な記載が進む予定です。
想定通り収益が出ていれば良いですが、問題は、収益の推移が想定プランより、下振れをした際です。もし、ビジネスとして利益が出ており、債務の返済もでき、オーナーが生活できるレベルであれば、現状のビジネスを改善することを考えるのがよいでしょう。
早急に手を打つ必要があるのは、シミュレーションより極端に下振れし、債務の返済がマイナスとなった場合や、オーナーの収益が0かマイナスになるケースです。フランチャイズ本部と、なぜこのような結果となったのかを分析し、てこ入れ策をどのようにするかなどを相談すると共に、追加融資を受けるか、違約金などが発生するのを承知で早期撤退するかを考える必要があります。
テコ入れ策が打てる場合は続けて改善するように持っていくのみです。しかし、場所の問題、地域の顧客層の問題、ビジネス自体の需要の問題など、どうしても改善の見込みがない場合は、傷がどんどん深くなる可能性もあります。何とかしようとして追加借入を起こしても、改善できず再起できなくなっては意味がありませんので、撤退も想定する必要があります。
いずれにせよ、2020年より様々なビジネスに影響を及ぼしている新型感染症のように、事業には「想定できない事象」が発生することは、大なり小なり起こりえます。その事象の中で、取りうる手を打ち、時には撤退やビジネスの方向転換を図るなど、「プランB」、思い通りに行かない事態、最悪の事態に想定できるプランを想定しておくことは不可欠と言えます。
開業地域の絞り込み・地域に受け入れられるビジネス選定
開業地域の絞り込みや、地域に受け入れられるビジネス選定は極めて重要です。土地・建物が既にあるなどで、開業する場所が決まっている場合は、特に場所を考慮したフランチャイズビジネスを考えることは重要と言えます。特に、来店が前提となるビジネスでは、下記の事項に注意する必要があります。
- ・地方店舗の場合、駐車場は十分か
- ・車で出入りがしづらい、交差点の四つ角に位置していないか
- ・店舗が、通行数の多いレーンから左折で入りやすい場所にあるか
- ・歩行者や運転者に、存在が認知してもらいやすい場所か
- ・人通りが多く、初めて来客する人が入りやすい店舗か
- ・都市部・地方都市の場合、近隣に強力な競合店舗がいないか
- ・駅からどれくらいの距離があるか
- ・繁華街の場合は、治安に課題はないか
- ・出店想定地を歩いたり、通行している人は理想の顧客と重なるか
以上のように、店舗の立地がプラスに働くか、マイナスに働くかを考慮する必要があります。
また、地域に受け入れられるビジネスの選定も重要です。地域の人が「こういうお店が欲しかった・サービスが欲しかった」というのが理想のビジネスです。既に競合他社が多くいる場所に出店しても、競合とのパイの取り合いとなるおそれがあります。加えて、出店地域で需要がないビジネスというのも問題です。地方の高齢化が進む過疎地に、24時間営業のフィットネスジムを開業してもなかなか人を集めるのは難しいと考えられます。
また、土地の流動性が極めて低い小規模都市で、不動産業務を行おうと思っても、元々地元の事業者が基盤を持っている可能性が高い上に、都市部や地方都市と異なり、土地の単価も低いため、非常に苦しいところで戦うことになります。
逆に、高齢化・人口減少が進んでいるという状況を踏まえれば、こちらから出向くことも含め、商圏を広めに見る必要があります。地域でニーズがあるのにまだ供給が少ない、高齢者向けの出張サービスを行うフランチャイズを選ぶことで「高齢化・過疎化」をプラス要因に転換できる可能性があります。
ビジネスでは、勝ちやすい市場・場所を選定することが重要ですが、特にフランチャイズは、下記の点が重要です。
- ・勝ちやすいマーケットを選ぶ
- ・勝ちやすい場所を選ぶ
- ・No1になれるビジネス・地域を選ぶ
- ・始めに場所ありき、ではなく勝ちやすい場所へ行く
- ・場所が決まっている場合は、マーケットで需要があるのに供給が不充分なものを徹底的に探す
このように、与えられた条件下で、どれだけベストの方向に持っていくかを考えることが重要です。
初期コスト・固定費の削減
コスト削減、特に毎月に掛かる固定費の削減は重要です。会社でも家庭の家計でも、毎月出て行く固定費と、状況によって変動する変動費があります。どちらも重要なのは、固定費を極力削り、身軽な体質にしておくことと言えます。
特に、開業で融資を受けた直後は、大きなお金が銀行口座に入っているため、多くの人は気が大きくなります。そのため、月額固定費が掛かるサービスや初期コストに関し、「あれもこれも」とつい入れてしまいたくなるものです。
しかし、融資を受けたお金は、自分のお金ではなく今後返済するお金です。「自分のお金ではない、借りたお金だ」ということを深く念頭に置く必要があります。初期費用でも、冷静に考えて必要ないと思えるものはカットするのが望ましいと言えます。毎月費用が発生するものは、「これを導入してお客様が喜び、来てくれるものか?」という観点で、本当に必要なものだけを導入し、残りは手元の運転資金として温存しておくのが理想です。
一般論として、運転資金は3ヶ月~6ヶ月分を手元に置いておくのが、経営の安定化を図る上で重要と言われています。実際、新型感染症の流行時は、非常事態宣言等で客足が大きく鈍ったり、各種業務がリモートになり、様々なところで業務の遅れが生じる現象が起こりました。こういう時に、緊急融資制度などの施策こそ打たれたものの、融資依頼が殺到し、融資実行まで時間がかかるというトラブルが一部で生じました。手元の運転資金が1ヶ月分などの状態であれば、融資の少しの遅れで資金ショートとなります。
もし手元資金が6ヶ月分あれば、融資の申請も余裕を持って行えますし、現在の事業を新しい社会に合わせどのように転換していくかという判断も冷静にできます。普段どんなに冷静な人であっても、翌週の支払いの見込みが立たないという状況になってしまっては、場当たり的な判断しかする事ができなくなります。周囲からみて、「なぜこのタイミングでこんな所からお金を借りるのか」ということが起こるのは、おそらく目の前の支払いで、冷静に考える能力が失われるからではないかと推測します。
現預金の余裕は、経営者の心の余裕にもつながります。創業当初に借りた大きなお金がある場合でも、「これは自分のお金ではない、あくまで融資を受けたお金だ」という意識を持ち、自分がお金を使うときか、それ以上に節制しながら使っていくことが重要と言えます。
自身のフランチャイズ業務への適性
フランチャイズに加盟する場合は、元々企業を運営していて社員に任せる場合を除き、オーナーがプレイングマネジャーの役割も担うことになります。つまり、経営を行いつつ、店舗の実務も回しつつという形になるので、オーナーがフランチャイズ業務に対し適性があるかというのはポイントになります。
例えば、おしゃれな移動クレープ店舗の中で、50代の中年男性が立っていたら、多くの人が違和感を持つと思います。一方で、唐揚げやお好み焼きなどの粉ものの店舗や、信頼性が大事な不動産の窓口に座っていたら、非常に収まりがよく見えると言えます。
このような外から見た部分に加え、様々な実務をオーナーが負担なく担えるかという点も重要になります。例えば、パソコンが得意だけれども口下手で、顧客と対面で話すのはしんどいという人が接客業を行うのは負担になると言えます。また、慎重さが要される仕事で、ケアレスミスが多いというのも問題です。
フランチャイズに加入する際は、自身が現場で働いて負担なくできそうか、情熱を持ち、楽しんで取り組めそうかという点を考える必要があります。仕事に対する情熱・やる気について、お客様はそれとなく見抜きます。また、仕事に対して本気であれば、いかにお客様のためになり、かつ加盟店としても利益を出せるサービスを提供するか、接客を行うかを真剣に考えますので、特にやる気・情熱なしに運営されている店舗と圧倒的に差を付けることができます。
自身が客の立場で、いつも暇そうにしているオーナーがいて、入店すると面倒くさそうに出てくる店と、「いらっしゃいませ!」ときちんと迎えてくれて、要望を満たすために最大限の配慮をしてくれるお店であれば、どちらを選ぶでしょうか。
いくら儲かりそうであっても、自分が積極的に取り組める仕事でなければ、望む結果を得ることは難しいと言えます。利益を運んでくるのはお客様であり、フランチャイズ本部ではありません。もちろん本部-加盟店の指示系統は守る必要がありますが、一番向き合うべき相手は、目の前にいるお客様です。
フランチャイズ自体を活かす
フランチャイズを募集している店舗の多くは、知名度が高く、名前を聞くと「ああ、あのお店・あのサービスをしているところか」と想起されることが多いです。このフランチャイズの看板があるから、顧客の側も、一定品質のきちんとしたサービスが受けられるだろう、と安心して店舗を利用することができます。
また、フランチャイズによってはオーナー会など、加盟店同士の横のつながり作り・成功事例の共有などを行う本部も少なくありません。フランチャイズ加盟店同士は、ある意味仲間でもあり、ライバルでもあります。同時期に加盟したオーナーが大きな実績を挙げているのを見ると、「うちも頑張ろう」という励みになります。
また、オーナー会を通して横のつながりを作ることで、個人営業ではなかなか入りにくい業界内の情報や、他地域の事例などを共有することもできます。もちろん、加盟店同士で教え合うというギブの姿勢が大事となりますが、加盟店のつながり作りを本部が奨励している場合は、つながりを積極的に活かした方が良いでしょう。
許認可や資格などの必要性
フランチャイズによっては、許認可や資格が必要な業種があります。典型的なケースは、不動産業における宅建士の資格です。宅建士は事務所に必ず専任担当者を置く必要があり、また業務従事者の5人に1人が宅建士である必要があります。
宅建士試験は、以前は宅地建物取引主任者試験という名称で、努力をすれば受かりやすいと言われていましたが、現在は難化しています。
資格だけでなく、業務を行う上で許認可が必要な業種もあります。許認可を得る上では、運営者の経歴や店舗・施設の要件、従事する人員など、種類によって様々な要件があります。飲食店を始める際は保健所の食品営業許可が必要になりますし、理美容行為を行う店舗では、理容所・美容所の開業許可が必要になります。
このような資格や許認可が必要な業種は、資格取得や許認可の手間がかかり、登録・許認可自体に数万円程度の費用が発生します。また、手続が煩雑ですので行政書士などの専門家に頼むケースも多いですが、手続の代行費用で更に数万円~十数万円がかかります。加えて、問題が発生すると免許取消等のリスクがあります。一方で、資格や許認可という壁があるため、外部から参入しにくいというメリットもあります。
資格が必要ない業種・許認可の要件が厳しくない業種の場合、参入に関してはフレキシブルにできるものの、儲かると注目を集めた業種には、多くの事業者が参入し、競争が激化しやすくなります。2021年現在では、唐揚げ店や移動型店舗、食パン店などのフランチャイズや、貴金属等の買取り(古物商免許が必要)、便利屋などの業種が目立ちます。
このように、資格の存在や許認可にかかる要件などが、過度な参入を抑えているという面があります。
過去の経験が活きる業種か
もし加入しようとしているフランチャイズが、過去の経験を活かせるものであれば非常に強みとなります。販売・接客を伴う業種であれば、営業職や接客業の従事経験は大きなプラスになります。また、また、エステサロンであればエステの勤務歴、塾であれば塾講師・教員歴などがプラスに働きます。
一方で、過去に従事した仕事で、大なり小なり「過去の業務の癖」がついていることがあります。フランチャイズに加入する際は、フランチャイズの方式に適合しない過去の癖を直し、フランチャイズが行うやり方にしていく必要があります。また、過去に従事歴があっても、数年・十数年で手法などが大きく変化している可能性もあります。その際は、「今有効なやり方」に自身を合わせるよう、アップデートしていく必要があります。
いずれにせよ、ゼロから始めることと比べると、過去の経験が十分に活かせます。創業融資の際も、日本政策金融公庫は過去の業務経験と関連のある事業への参入を大きくプラス要素としてくれますので、創業融資の成功確率が上がることが期待できます。
サービス提供でどれだけ人件費等コストを抑えるか
人件費は、多くのケースでは固定費として運営上の重いコストとなります。必要な時に必要な人員に出てもらうことと、いかに最小限の人数で業務を円滑に運営するかというのは課題となります。
考え方にもよりますが、最初はアルバイト・契約社員などの形で雇用し、実際に活躍してくれる、業務を任せられると思えたときに正社員登用をするなど、人の雇用に関しては慎重に行う必要があると言えます。一見戦力になりそうな人材でも、現場ではミスマッチだったということが、正式採用してから判明しては、扱いに苦慮することとなります。
一方、実際に活躍してくれる優秀な人材に関しては、給与アップやボーナス、その他特典を与えるなど、優秀な人材に相応の待遇を行うという配慮も必要です。
また、人件費に限らず、どれだけ「お客様のプラスにならない」コストを抑えるかは重要です。電気代やガス代の見直し、家賃の見直し、その他コスト削減を行いつつ、お客様のプラスになる部分に関しては、きちんと投入していく必要があります。
加入する本部を精査する
フランチャイズとして自身が加入する本部(加盟店も含め)を精査することも、欠かせません。まず、フランチャイズの評判をネットで調べるだけでなく、実際の加盟店に客として行き、買物をし、店舗の雰囲気や客の入り、話すことができればオーナーやマネジャーと話すことで店舗の実情がわかります。
また、本部が「本部だけの利益重視」の体質ではなく、「本部と加盟店双方が利益を出し、お互いに栄える」という共存共栄の姿勢を持った組織かを見極める必要があります。
特にフランチャイズへの加盟を注意して考えた方がいいケースは下記の通りです。
・やたらと「儲かる」を強調
初月から数百万円の売り上げ、と派手に宣伝していても、売上に対して諸経費・税金を差し引き後残る利益はいくらなのか、というのが肝心です。また、飲食店などの場合、オープン時が売上のピークとなるケースが多く(物珍しさもあるので)、初月で大きな実績が出るのはある意味当然と言えます。
・「初心者が」「ド素人が」「楽して」などの言葉に注意
どんなビジネスでも、努力か何らかの工夫なしに儲かるビジネスというのは存在しません。また、スキルがない人の場合、「商品やサービスを買って貰えるレベルまで技術を高める」必要があります。上記のような強い言葉を使う事業者の場合、少し注意して「本当か?」と考えてみる必要があります。
・オーナーや元オーナーから本部への悪いクチコミがある
本部の支援体制が不充分であったり、そもそも本部の運営体制に問題があると、オーナーや元オーナーから、悪いクチコミが出ている可能性があります。特に、単なる批判ではなく内容が具体的な場合は、「実際のところはどうだろうか」と精査することが望ましいと言えます。一方、大規模なフランチャイズの場合、全員が全員満足できる結果が得られるとは限りません。オーナー側の努力不足で、思うような成果が得られなかったというケースも存在し得ます。
それゆえ、批判の記事・書き込みがあれば、本部とオーナー側、両方の目線に立って検討するのが望ましいです。
・説明会担当者が即日の加入を煽る
説明会で、「当日加入するとこういう特典が!」、「エリア限定なので、急がないと枠が埋まります」など、当日契約を迫ったり、契約書面の説明が不充分、フランチャイズ加盟時のリスク(途中で脱退する場合の違約金・毎月発生するフィー・土地が確保できず出店できなかった場合の代替措置など)が説明されていないケースは、特に注意する必要があります。
・メリットばかりしか説明せず、デメリットの説明がない
フランチャイズへの加盟に限らず、ビジネスにはメリットとデメリットが存在します。本部側がメリットを強調するのは当然ですが、デメリット・リスクに関してもきちんと触れているかは重要です。
営業開始当初は、特に費用がかさむため、黒字化まで時間がかかるケースも想定できます。この際、ロイヤリティの減額措置はあるのか否かで、加盟店に対する配慮が推し量れます。また諸事情で店舗を休業した際のペナルティはあるか、これまでに脱退した店舗はどれくらいあるか、加盟金が無料の場合、他の経費やロイヤリティはどういうものがあるかなど、本部にとって都合の悪い質問に対し、本部担当者が誠実に答えず、はぐらかす場合は注意が必要です。
・本部の説明・説明資料があいまい
中小企業庁は、フランチャイズ契約にあたり、過去のトラブルを踏まえフランチャイズ事業を始めるにあたってのガイドラインを策定しています。
フランチャイズ事業者は、中小小売商業振興法に基づき、本部事業者の事業概要や契約の主な内容に関する情報を、「契約締結前に」、加盟希望者に対し書面を交付し説明することが義務づけられています。契約を行う前段階で、下記の「事前開示項目」を加盟希望者に示す義務があります。
主な事前開示項目は下記の通りです。
- ・本部事業者の概要(株主・子会社・財務状況・店舗数の推移・訴訟件数など)
- ・契約内容のうち加盟者に特別な義務を課すもの等重要事項
- ・テリトリー権の有無(近隣に同一店舗を出店されずにすむ権利はあるか)
- ・競業避止義務や守秘義務の有無(脱退後一定の年数は、類似するビジネスをしてはいけないなど)
- ・加盟金・ロイヤリティの計算方法などお金が関わること
- ・商品、原材料などの取引条件
- ・契約期間、更新条件、契約解除等に関すること
以上のようにフランチャイズ本部は、加盟店にとって不利になる要素が存在しうる契約について、事前に加盟希望者に開示し、十分に納得の行く説明を受けさせる義務があります。特に、店舗数の減少、係争中の訴訟がある場合は、なぜそのような状況になっているのかを確認することが重要です。
当然ながら、正式な契約についても、加盟希望者側が契約書を熟読し、時には専門家に書面を見てもらい、リスクチェックを行い、注意点を把握するなど、加盟希望者がきちんと契約を理解する時間を取ることが必要です。もしその時間も与えず、早期に契約を迫る場合は、フランチャイズへの加盟を再考する必要があると言えます。
本部との連携を綿密に行う
フランチャイズ本部と加盟店は、契約上は対等な関係ですが、業務においてはフランチャイズ本部の方針と足並みを合わせながら進める必要があります。そのため、迷うことがあったら必ず本部に相談し、行って良いか確認する必要があります。ちょっとこれくらいなら、で勝手に判断し行ったことが、契約違反となり、大きなペナルティに繋がることもありえます。そのため、細かなことでもフランチャイズ本部への確認を行うことは重要です。
また、事業運営においても本部の提案する施策をきちんと実行し、プロセス・結果をフィードバックすることが重要です。成果が出た場合は好事例になりますし、成果が思うように出ない場合は、施策のどこに問題があったかの検討や、他の打ち手の考案など次に繋がる手法が取りやすくなります。
フランチャイズの安定経営におすすめの業種・業界
フランチャイズとして安定経営を行う上で、お勧めできる業種や業界に関してピックアップをします。主に「事業の安定・継続性」、「適切な収益性」「事業にストックビジネス(一度契約すると、毎月売上が発生する)の要素があるか」等の観点から選定しています。
不動産業界
不動産のフランチャイズは、非常に収益性が高く、少人数でも運営できることから、お勧めしやすい業種と言えます。唯一の難点は、店舗に宅建士の配置が必要な点です。オーナーが宅建士であるか、宅建士の雇用が必要となる点は留意する必要があります。
不動産取引は地域により温度差がありますが、自宅を売って住み続けるリースバック、空き家の売買・管理・リフォーム、既存住宅の買取など、都市部には都市部、地方には地方のニーズがあるため、通常の不動産の売買以外にも、多様な業務が生まれているため、「地域の家の困りごとに対応する」というニーズは今後強まっていくことが想定されます。
食事のテイクアウトサービス
2020年に発生した新型感染症の影響で、外食という業態が大きなダメージを受け、テイクアウトや配達という方向に飲食業界全体がシフトしている傾向が見られます。そんな中、食事やスナックのテイクアウトサービスは、外食が難しいご時世でニーズが高まっていると言えます。
また、食事に関して、仕事で疲れて料理を作るのも大変・・・という場合に、テイクアウトで購入できる物だと、家に帰ってからすぐに食べることができます。また、最近流行っている揚げ物系のテイクアウトに関しても、冷凍食品や家庭で揚げて作る揚げ物とはまた違ったニーズがあります。
普段自炊をする人だと想像がつくかと思いますが、冷凍食品の揚げ物のレンジ調理だと記事がしんなりしてしまい、揚げ物特有のカリッと感がなくなります。かといって自宅での揚げ物調理は、油の処理・調理時間・においなどが気になるという点が出てきます。揚げ物をそのまま持ち帰れるというのは、実は意外と需要があるのです。
障がいを持つ人向けのグループホーム・就労支援施設運営
障がいを持つ人向けのグループホームも、地域を問わずニーズがある業態と言えます。現在厚生労働省は、精神・知的の障がいを持ち入院している人が退院し、社会と共生できるようにという方向性を推し進めています。厚生労働省の出した、長期入院精神障害者の地域移行に関する具体的施策についてという資料では、入院から地域生活への移行を推進することが方向付けられています。
しかし、それに対応する施設や、障がい者が就労を通して社会に貢献できる施設、また障がい者に対応するためのマンパワーは足りているとは言いがたい状況です。とはいえ、ノウハウがない状況で、グループホームや就労支援事業を行うのは、難しいと言えます。そのため、障がい者向けのグループホームや就労支援事業運営のフランチャイズが広がっています。
障がい者の支援というのは、行う側も受ける側も、まだ手探りの面が多いビジネスなので、様々な事業所におけるノウハウの共有が重要になります。また、病院等とのパイプ作りに関しても、なかなか独力では難しいですが、フランチャイズであればノウハウがあるため、スムースに進めやすくなります。
特にグループホーム・就労支援事業においては、障がい者の方の人生に責任を持つビジネスであるため、本部が本当に福祉・障がい者のことを考えているか、社会貢献と適正な利益のバランスを考えているかを、加盟希望者側も厳しく見る必要があります。確かに社会貢献は大切ですが、利益をきちんと得て、事業を継続させないと、障がい者が行き場を失うおそれもあります。
また、社会貢献をきれい事として、実際は本部の儲け至上主義に走っていることがないかも、注意する必要があります。これまでの加盟事業者に直接話を聞くなど、本部が本当に社会のために行っているかは、きちんと見抜く必要があると言えます。
賃貸物件の原状回復代行
3月・4月は特に引っ越しの多いシーズンで、賃貸物件の原状回復に関するニーズが高まります。住人の入れ替わりがある場合、退去後の原状回復は必ず行う必要があり、不動産事業者や大家さんからのニーズが見込まれます。
清掃だけでなく、賃貸物件全体に傷や問題がないかを厳しくチェックする必要がある仕事ですので、掃除の技術と、チェックの細やかさが重要になります。また、作業は一人・もしくは少人数でできるので、人と接するのが苦手な方でも、自分のペースで、黙々と進めていくことができるのも隠れたメリットです。
加えて、個人ではなく法人との取引であるため、費用が対個人よりも確実に受領しやすいというのもメリットと言えます。
塾・スクール
塾・スクールは、生徒数が増えれば増えるほど、毎月のストック収入が確保でき、模試や特別講義などでのアップセル、他の教科やプログラミングなどのクロスセルなどが期待できる、理想的なストックビジネスです。
また、近年はWebを活用した授業を行うフランチャイズも増え、講師が直接授業をするわけではないので、教えるスペースを抑えられ、教え方に熟達したプロ講師の授業を、学生のペースで受けさせることができます。わからないことがある場合は、学生をチューターとして雇い、教えさせることもできますので、人件費もさほど大きくならず、教わる学生の側も、年代が近いので、お兄さん・お姉さんに質問するように、わからない所を気軽に聞くことができます。
少子化が進む現代とは言え、教育にかけるお金に関しては「6ポケット」、つまり父母、および双方の祖父母が積極的にお金を出す傾向があります。
また、学生のレベルも様々なものがあり、名門塾から、普通の学生を難関中学・高校・大学に合格させる塾、学習カリキュラムについて行くのが困難な学生に、基本的なことを教える塾まで、レベルに応じた様々なニーズがあるといえます。
抗菌加工・清掃・消毒業
新型感染症の影響もあり、清掃に加え、抗菌加工に対するニーズが強まっています。新聞の広告などを見ると、抗菌加工・空気清浄・消毒関連の広告が増えていることに気付いた方もおられるかもしれません。新聞広告というのは、社会のニーズを表す鏡でもあり、また新聞に出稿する余裕がある、つまり儲かっている業種であることの一つの印でもあります。
特に、オフィスや公共空間においては、抗菌加工・清掃に対するニーズが高まっています。飲食店や店舗などでも、抗菌加工や消毒を行っているというのは、安心して入りやすいというアピールになります。Withコロナがまだ続くことが見込まれる現在では、抗菌加工・清掃・消毒のニーズは非常に高いと言えます。
高齢者向け食事・飲料配達サービス
高齢者向け食事・飲料配達サービスは、今後も伸びる可能性を秘めた市場と言えます。高齢者向けの食事や、昔ながらの牛乳などの宅配が現在見直されている背景には、高齢者の独居や核家族化の進行があると言えます。食事・飲料宅配サービスは、高齢者の安否確認や配達時のあいさつ、ニュースレターやハガキによるコミュニケーションなど、食事・飲料配達だけでなく、高齢者の心の隙間を埋めるサービスでもあると言えます。
そのため、加盟店や従業員は、配達先の安否確認や声かけ、気持ちに添ったサービスが求められます。信頼を得ていくことで、別の商品のアップセルや、チラシを同封することで無理のない商品訴求ができるなど、通常の飲食業・販売業とは違ったサービスを行うことができます。
今後、高齢社会が進展するにつれ、より高齢者に求められるサービスのニーズは高まると思われますが、食事・飲料の配達は、今の時代だからこそ逆に求められるようになってきたサービスと言えます。
結婚相談所
結婚相談所のメリットは、大きな設備が不要で、自宅などでも開業ができたり、省スペースで運営できるので固定費が掛かりにくいことです。近年はマッチングアプリなどの存在もありますが、本人や家族からしたら、地元の身元が確かな人と、第三者を介した上で会える方が、安全面・信頼性等様々な点で安心できると言えます。
また、以前は近所に「お見合いや世話焼きが好きな人」というのがいたものですが、時代の変化やプライバシーに対する意識の高まりにより、世話焼き役を担う人は大きく減りました。結婚を考える上では、収入・年齢・持ち家などの「スペック」だけでなく、二人の性格が合うかというのが非常に重要になります。
特に、様々な経験をしてきた女性にとっては、実体験も含めて様々なアドバイス、相手の選び方などがレクチャーできますので、うってつけの仕事と言えます。特に、これまで専業主婦などで家にいた人でも、家事や育児、夫婦の関係構築など様々な経験を得ていますので、成婚希望者に対し的確なアドバイスができます。また、子育てをしていると、子どものわがままに付き合うことが増えます。ここで備えた忍耐力が、結婚相談でも活きてきます。
あまりにも非現実的な要望に対しても、きちんと優しく諭したり、煮え切らない人に対して背中を押したり等、これまでの経験がダイレクトに活きると言えます。
貴金属他不要品買取事業
高齢社会が進むにつれ、生前整理の一環として、使わなくなったものを処分しようという人も多くいます。インターネットに慣れている人に取っては、オークションやフリマアプリで出せば高く売れるのに、なぜ買取事業者に頼むのかというのを疑問に思う人もいると推測します。
高齢者は、思いの他新しい事をするのにエネルギーを使います。一点一点写真を撮り、紹介文を書き、発送を行うというのは、若ければともかく年を重ねるとおっくうに感じる人が少なくありません。
最初はインターネットで処分しようと思っていたけど、やってみると思いの他大変だった、途中で挫折したという話をよく聞きます。そうであれば、専門の事業者に買ってもらった方がいいという人が出てくるというのも頷けます。
特に、貴金属や整理するものの中には、売り手のお客様に取って、今までの様々な思い出などがあり、処分に迷うものというのもあると思われます。そこで、お客様の気持ちに寄り添い、「また他の人のお役に立つかもしれないので、家の中で眠らせておくよりは、次に求める人のお役に立てるようにしてみませんか」と、穏やかに背中を押す声かけ・心配りができる人であれば、向いていると言えます。
特に、貴金属や骨董品に関しては、都市・地方を問わず処分・買取のニーズがあります。また、遺品整理事業者と連携することにより、貴金属や骨董品を適正価格で買取し、遺品整理を依頼した方に還元することで、遺族の金銭的負担も減り喜ばれますので、葬祭関係や遺品整理関係の事業者との連携も重要なポイントと言えます。
まとめ
以上、フランチャイズ経営を安定させるポイントと、今の時代の安定経営に適したフランチャイズの紹介を行いました。新型感染症の流行は、どんなビジネスでも安定があるとは限らないということを示しました。一方で、社会が大きく変わる中から生まれるビジネスもあり、ある種「時流に適応した選択を行い、柔軟にビジネスの形を変える」ことが安定のポイントであると言えます。
現在の大きな流れは、非接触化・衛生化・高齢化・IT化、そしてビジネスのあり方自体の変化と、これまでにない変わり方をしようとしています。
上記に述べたビジネスも、長期スパンで必ずしも安定していると断定できるわけではないですが、現代の流れや人口動態を踏まえると、今後ニーズがさらに高まるであろうビジネスです。時代の流れを読み、流れに乗ることこそ、安定を実現させるポイントになります。