フランチャイズ契約に強い弁護士を探すポイントとは?

様々な分野・業種に普及してきたフランチャイズ事業ですが、事業の元締めであるフランチャイズ本部と第1線で事業を行う加盟店それぞれの権利義務関係を明文化したものがフランチャイズ契約です。

このフランチャイズ契約を巡っては、当事者双方の認識や解釈の違いなどから法的なトラブルに発展するケースが多々あり、その場合には、フランチャイズ契約に精通した専門家である弁護士に依頼して事態を収拾する必要があります。

今回の記事では、フランチャイズ契約を巡るトラブルの例やフランチャイズ契約に強い弁護士を探すポイントを解説するので、フランチャイズ事業に携わる方は、ぜひ参考にしてください。

フランチャイズ契約とトラブル

フランチャイズ契約とトラブル

フランチャイズ契約とは、フランチャイズ事業を展開するフランチャイズ本部が、加盟店に対し、商標・ブランドの使用や商品・サービスを販売する権利を提供し、その事業の進め方を指導・教育する対価として、加盟金や商標使用料を徴する契約をいいます。

具体的な例としては、コンビニフランチャイズであるファミリーマート本部が、加盟店に対し、ファミリーマートの商号やブランドの使用、ファミリーマート商品を販売する権利を提供し、コンビニ事業の営業方法を指導・教育する代わりに、ファミリーマートフランチャイズへの加盟金や商標使用料であるロイヤリティを徴する契約があります。

フランチャイズ契約は、加盟店からみると、有名フランチャイズの商標やブランド商品を取り扱うことができ、商売のやり方も本部が教育してくれるため、事業経験がない初心者でも安全に始めることができるメリットがあります。

しかし、同時に加盟店は、本部と締結したフランチャイズ契約を遵守する義務が発生し、契約期間中は本部の経営方針に従って営業を行わなければならない制約を受けることになります。

このフランチャイズ契約は、フランチャイズ本部と加盟店の利害が衝突する個所もあるため、当事者の認識や解釈の違いなどから、法的なトラブルに発展するケースも珍しくありません。

フランチャイズ契約で定める内容

次に、フランチャイズ契約でどのような内容を定めるかについて確認しましょう。

①契約の目的とフランチャイズの内容 フランチャイズの基本的な理念、フランチャイズで提供する商品・サービスの内容などを定めます。
②加盟店名・営業場所 加盟店の名称や営業場所、加盟店が独立した経営体であり経営は自己責任であることを定めます。
③商標の使用許諾、ノウハウの提供・権利の帰属、マニュアルの遵守 加盟店に商標の使用を認めること、経営ノウハウを提供すること、ノウハウの権利は本部に帰属すること、加盟店は本部が提供するマニュアルを遵守することなどを定めます。
④テリトリー権の認否 本部が、加盟店から一定の距離内に同系列の他店を出店しないか否かを定めます。
⑤開業前後の支援内容 本部が加盟店に行う開業前・開業後の支援内容を定めます。
⑥加盟店の設備・遵守事項 加盟店の設備、遵守事項を定めます。
⑦宣伝広告 宣伝は本部の権限で行うこと、加盟店が宣伝を行う際は本部の許可が必要であることを定めます。
⑧競業禁止 フランチャイズ契約外で加盟店が同様の事業を行うことを禁止します。
⑨経営委託、権利譲渡の禁止 加盟店が第3者に経営を委託する、契約上の権利を譲渡することを禁止します。
⑩秘密の保持 加盟店が第3者に契約上知り得た秘密を漏えいすることを禁止します。
⑪商品供給 本部の加盟店に対する商品供給のルールや条件、本部指定商品以外の販売禁止などを定めます。
⑫加盟金、保証金、ロイヤリティ、その他の分担金 加盟金、保証金、ロイヤリティ、その他広告分担金などの費用について定めます。
⑬会計帳簿の記帳・報告 加盟店の会計帳簿記帳義務、会計内容報告義務について定めます。
⑭契約期間、中途解約、契約解除、損害賠償 フランチャイズ契約の契約期間や更新方法、契約期間の途中における解約の取扱い、契約違反などにおける契約解除や違約金、損害賠償について定めます。
⑮契約終了後の取扱い 契約終了後に、加盟店がフランチャイズの商標や経営ノウハウを利用することを禁止します。

フランチャイズ契約でトラブルが発生する背景

フランチャイズ契約では、契約当事者であるフランチャイズ本部と加盟店双方の権利義務が定められています。したがって、フランチャイズ契約におけるトラブルは、契約当事者のどちらか一方が、契約で定められた内容に違反した場合に発生します。

しかし、法的なトラブルが簡単に解決できないのは、ある行為を行ったこと、または行わなかったことが、契約違反に該当するかどうかの判定が難しいことにあります。フランチャイズ本部と加盟店のどちらもが、契約違反をしようと思って行うことはまずなく、契約違反に該当しないと判断して行う場合やそのことが契約違反だと知らなかったケースなどが多いといえるでしょう。

いずれにしても、フランチャイズ契約におけるトラブルは、契約の内容に抵触したかどうかということが争点になるわけですが、そのようなトラブルが生じる下地というものが、フランチャイズ契約に潜んでいる可能性は否定できません。

それは、多くのフランチャイズ契約が、フランチャイズ本部側に有利な内容になっていることによります。上で、フランチャイズ契約の内容をみてきましたが、加盟店が遵守しなければならない事項やフランチャイズ本部の許可を受けなければならないことが多く規定されているのに対し、本部側を拘束する規定はあまり多くありません。

フランチャイズ契約は、多くの場合、フランチャイズ本部が作成した契約書に加盟店がサインする方法で締結されます。フランチャイズ本部は、自分側が有利になるよう、自分側の利益が守られるような内容で契約書のひな形を作ります。それに対し、加盟者が契約書の内容を修正・変更してくれるよう希望を出しても、グループ全体で統一的に運用している契約書の内容が簡単に変えられることはありません。

このように、フランチャイズ本部が有利な立場にあるフランチャイズ契約が土台となり、本部が十分な支援を行わなかったことを棚に上げ、経営不振の責任を加盟店の能力・努力不足にあると決めつけてしまうような事例が多くあるのが実情です。

トラブル発生時の対処法

加盟店が、フランチャイズ事業を進める中でトラブルに遭遇した場合、自店だけで対処することが難しければ、優先順位的には、まずフランチャイズ本部に相談し、その指導・助言を受けることになります。フランチャイズ本部には、顧問弁護士をはじめ、法律の専門スタッフがいるため、利用客とのトラブルなどに対しては適切な支援を受けられるはずです。

しかし、そのトラブルがフランチャイズ契約を巡る当事者同士、すなわち加盟店とフランチャイズ本部とのトラブルである場合は、加盟店は本部の支援を期待することができません。

その場合には、以下のような順序で、トラブルの解決を目指すのが良い方法です。

①トラブルの理由を把握する

トラブルになっている理由は何なのか、その内容を正確に把握するのが第1です。例えば、フランチャイズ本部から契約違反を問われた場合は、その契約違反の内容を正確に聞き取ります。逆に、本部が契約違反をしたと判断した場合は、その違反の内容を整理します。

②事実を確認する

次に、トラブル原因となった事実の有無を確認します。加盟店が指定商品以外の商品を販売したとして契約違反を問われているなら、そのような事実があったかを確認します。逆に、本部が加盟店への支援を行わなかったことで契約違反があったと考えるなら、実際に行われるべき支援が行われなかったのかを確認します。

③フランチャイズ本部に説明する、または、フランチャイズ本部から説明を受ける

トラブル内容を把握しトラブル原因となった事実の有無を確認したら、フランチャイズ本部に説明を行います。説明は、契約違反が事実である場合は素直に陳謝し、事実でなければ反論を行います。逆に本部の契約違反が疑われる場合は、フランチャイズ本部から説明を受けます。

④当事者同士の話し合いで解決する

当事者の陳謝や説明を基に、一方に非がある場合は責任をどうとるか、トラブルが誤解に基づく場合はその誤解を解くことができるか、契約の解釈や捉え方の違いでトラブルが発生している場合は契約の正しい認識は何かなど、当事者同士の話し合いで解決するよう努めます

⑤解決できない場合は、法的な解決を目指す

上記の話し合いによっても、どうしても解決できない場合は法的に解決するしか方法がありません。話し合いで解決できないとは、当事者の一方が相手に責任をとってもらうまで引き下がらず、もう片方が自分の非を認めないなどの場合です。

この場合は、フランチャイズ本部には法律の専門スタッフが揃っていますが、加盟店にはそのような人材がいないため、弁護士など法律の専門家に依頼することになります。なお、弁護士に依頼した後も、弁護士のフォローにより、示談など当事者同士の話し合いで訴訟を回避できる場合があります。

フランチャイズ契約にかかるトラブルの例

フランチャイズ契約にかかるトラブルの例

それでは、フランチャイズ契約で契約当事者間にどのようなトラブルが発生しているか、その例をみていきましょう。

情報提供義務違反

情報提供義務違反は、フランチャイズ本部が加盟者に対して義務付けられた情報提供を行わなかったことによるトラブルです。

フランチャイズ本部は、個々の加盟店が行う営業のベースとなる事業の仕組みを構築し、展開させています。フランチャイズへの加盟者は、このフランチャイズ本部が用意した事業の仕組みに乗って、自分の店舗の営業を行います。したがって加盟者は、フランチャイズが用意した事業の仕組みに乗って大丈夫かどうかを判断し、フランチャイズ契約を結ぶことになります。

フランチャイズが用意した事業の仕組みに乗って大丈夫かどうかを判断するためには、判断材料となる情報がなければなりません。すなわち、加盟者は、フランチャイズ本部の企業規模や経営状況、系列店舗数の増減、フランチャイズ契約の主な内容などについての情報を提供されないと、自分がそれに乗って商売を始めてうまくいくかどうかを判断することができません。

フランチャイズ本部が開示しなければならない情報には、以下のものがあります。

  1.  フランチャイズ企業(本部)の概要
    フランチャイズ企業の財務状況、店舗数の推移、株主など
  2.  フランチャイズ契約の中で、加盟者にとって重要な情報
    契約期間、契約更新条件、契約解除、商品・材料の仕入れ、加盟金、ロイヤリティ、守秘義務、競業禁止など

このように、フランチャイズ契約を締結する前に、フランチャイズ本部は加盟者に対し、契約締結の是非を判断するための情報を提供しなければなりませんが、その一部が不足、または誤っていた場合に、「そのことは知らなかった」、「聞いていなかった」としてトラブルが生じてしまうことがあります。

また、加盟店で事業を始めた場合の売上額や収益額の予想値が事前に提供されることがありますが、いざ開業してみたら、実際の売上額や収益額が提供された予想値に届かず、「話が違う」とトラブルになることもあります。事前に提供された売上額や収益額の予想値は、あくまで予想として情報提供したものであることから、このことだけでフランチャイズ本部の責任を問うことは困難です。

しかし、その予想値の算出が、誤った判断を基礎にしていた場合、合理的な根拠なく楽観的に見積もった場合、調査内容や調査方法が十分ではないと判断される場合などで、その算出した数値をあたかも信憑性があるかのように説明した場合は後で問題になることがあります。

このことからも、加盟者は、開業後の売上額や収益額の予想値について説明を受ける際には、系列店全店の実績額から求めるなど客観的・合理的な方法で算出した情報を要請することが大切です。

指導援助義務違反

指導援助義務違反は、フランチャイズ本部が契約で定められた指導援助を加盟店に行わないことによるトラブルです。フランチャイズ契約には、フランチャイズ本部の加盟店に対する支援内容が定められています。また、契約で細かく定める代わりに支援内容の事前説明がされる場合もあります。

【加盟店に対する支援内容の例】

  • ・契約締結から開業までの手順やタイムスケジュールを説明する
  • ・優良な立地の店舗物件を探して紹介する
  • ・融資申込書類の作成をフォローする
  • ・事前研修を行い、業務の知識・技術を教示する
  • ・業務遂行マニュアルを提供する
  • ・開業から一定期間はスタッフを派遣して営業をバックアップする
  • ・開業後は定期的にスーパーバイザーが巡回指導する
  • ・法的なトラブルが発生した場合は、本部の専門家の指導助言を受けることができる

フランチャイズ本部の加盟店に対する支援は、フランチャイズによって異なりますが、加盟店が円滑に事業を行うために必要不可欠な内容が多くみられます。

フランチャイズ本部が、上記のような様々な支援の内容について、フランチャイズ契約書に記載、または事前に説明を行うことにより、加盟者は安心して事業を始めることができるのです。

しかし、契約書に記載された、あるいは事前に説明を受けたにもかかわらず支援をしてもらえなかったり、支援内容が事前の説明と違うことで円滑な経営ができなくなってしまった場合は、加盟店は、契約内容または事前説明に違反しているとして、フランチャイズ本部の責任を問うことができます。

この場合、フランチャイズ契約書に支援内容が明確に記載されていれば結論を出しやすいのですが、契約書には細かい記載がなく事前説明のみされた場合は、解決が難しくなる場合があります。このように口頭説明を受けただけの場合は、どのような内容の説明を受けたかの記録がないため、後で証明することが難しいからです。

このことからも、重要な約束ごとについては、後でトラブルが起きないよう、契約書または文書に記録して保管する必要があります。

営業権侵害

営業権侵害は、加盟店が特定地域に有する独占的な営業権を侵害されることによるトラブルです。

フランチャイズ本部が、加盟店の営業地域を指定する場合があります。これは、系列店同士の商圏競合を避けるため、本部が加盟店の営業地域を指定する代わりに、その地域(加盟店から一定の距離内)には他の系列店を出店させず、その加盟店に独占的な営業権を与えることを意味します(テリトリー制)。

本部が、フランチャイズ契約でテリトリー制を定めていれば、その地域に同系列の他店が出店してこないため、加盟店は独占的に営業を行うことが可能になります。フランチャイズ契約でテリトリー制を定めているにもかかわらず、同一地域に同系列の他店が出店し本部がそれを黙認しているとすれば、加盟店は契約違反として本部の責任を問うことができます。具体的には、同一の営業地域に同系列の他店が出店したことにより被った損害の賠償を請求することが可能です。

なお、フランチャイズ契約でテリトリー制が定められていない場合は、将来的に、同一営業地域に同系列の他店が出店してくる可能性があることを認識しておく必要があります。

契約違反

契約違反は、加盟店またはフランチャイズ本部がフランチャイズ契約で定めた内容を守らなかったことによるトラブルです。加盟店が契約違反をした場合は本部側がその責を追求し、本部が違反したらその逆になります。契約違反のトラブルでは、当事者が行った、または行わなかった行為が契約違反に該当するかどうかが争われます。

例えば、フランチャイズ契約では、本部の加盟店に対する商品供給のルールや条件などが定められています。この場合に、本部が加盟店に商品を毎日供給するとの定めがあるにもかかわらず、地震による交通ストップで商品の運搬が間に合わず、商品を供給できなかった日が発生してしまったとします。このような災害や不慮の事故を起因とする商品供給の遅延が契約違反に該当するかどうかを争うケースなどがあります。

通常、フランチャイズ契約に違反があれば、そのことが契約解除の理由になります。すなわち、フランチャイズ契約には、契約当事者の一方が契約内容に違反すれば、もう一方の当事者は、そのことを理由に契約を解除することができる旨が定められるからです。また、その契約違反により、片方の当事者に損害が発生した場合は、その当事者は相手方に被った損害の賠償を求めることができる旨も定められます。上の例で、商品供給を受けられなかった日に商品不足のため加盟店の売上げが大きく減少したことで、加盟店が被った損失の賠償を本部に対し求めるなどです。

更新拒否

更新拒否は、多くの場合、フランチャイズ本部が行った拒否が問題にされる場合があります。通常、フランチャイズ契約は、5年間など一定の契約期間が定められています。その契約期間が終了する際に契約当事者双方が同意すれば、新たな一定期間の契約が更新される仕組みになっています。しかし、時として、契約当事者の片方が更新に同意せず、それがトラブルに発展する場合があります。その多いパターンが、フランチャイズ本部側が、契約更新に同意しないケースです。

本部が更新に同意しない理由は様々ですが、その1つに加盟店の売上不振があります。すなわち、本部が業績の振るわない加盟店を整理するため契約更新を行わない決定をした場合に、まだ営業を続けたい加盟店が、その理由に納得できずに争うケースです。加盟店は、本部に契約更新してもらえなければ、フランチャイズの商標やブランドが使えなくなり、商品供給も途絶えてしまうため、実質的に商売を続けることが困難になってしまいます。

話し合いによって契約更新するためには、当事者双方の同意が必要であるため、いずれにしろフランチャイズ本部が了承することが必要となります。加盟店としては、本部に対して今後の事業計画や事業改善案を示し、相手が納得するよう十分に説明を行うことが必要です。

なお、フランチャイズ本部の契約更新しない理由に合理性がなく、協議にも応じようとしない場合は、加盟店は契約更新を求めて法的に争う余地があるでしょう。

中途解約

フランチャイズ契約では契約期間が定められており、その契約期間中は、契約当事者双方が契約に従って債務を履行する責任を負います。

しかし、様々な事情により、契約当事者の一方が契約期間の途中で契約を解約=中途解約することで、トラブルが生じる場合があります。

この中途解約については、あらかじめフランチャイズ契約の条項にその取扱いが定められる場合と定められない場合があります。中途解約の取扱いが定められる場合は、契約書に、

  1.  契約期間の途中においても、契約当事者の一方が意思表示することにより契約を中途解約できること
  2.  中途解約する場合は、契約相手に一定額の違約金を支払うこと

などの規定が盛り込まれます。

このように、フランチャイズ契約書に中途解約の取扱いが定められている場合は、その定めに従って中途解約が行われるため、トラブルに発展するケースは少ないといえます。

しかし、フランチャイズ契約書に、中途解約の取扱いが定められていない場合は、その取扱いは、契約当事者同士の話し合いで決められることになります。この場合には、中途解約により違約金が発生するかどうか、発生するとしたらいくらの金額になるかなどを巡り、トラブルが生じる場合があります。

例えば、加盟店がフランチャイズ契約を中途解約した場合、フランチャイズ本部は、見込んでいたロイヤリティ収入がなくなってしまう、商品・材料の販売先がなくなってしまう、グループの出店計画や売上目標に狂いが生じてしまう、代替の加盟店を開拓する負担が生じるなど、様々な負担や損失が発生します。

一方、フランチャイズ本部が中途解約した場合は、加盟店は、フランチャイズの商標・ブランドが使えなくなる、経営ノウハウを利用できなくなる、商品・材料の仕入れ先を開拓しなければならないなどの事態に陥り、商売を続けることが困難になることも想定されます。

このように、フランチャイズ契約を中途解約されると、解約された相手が本部であっても加盟店であっても、様々な負担や損失が生じることから、違約金を請求せざるを得なくなります。中には、定められた契約期間を守らないのだから契約に違反していると主張する当事者もいるでしょう。

片や中途解約を行う側も、様々な事情によりフランチャイズ契約を継続できない理由が生じたことから、損失を最小限に抑えて契約を終了させたいと考えます。この場合、フランチャイズ契約書に違約金の定めがなくても、本当に払う必要があるのかと考える当事者もいます。

また、違約金の支払いを認めた場合でも、その金額を決めることは簡単ではありません。契約を中途解約された側の損害額を算出できれば、その金額が請求のベースとなりますが、損害額の正確な算出は困難であるため、金額の妥当性を判断することが難しいのです。

このようなことから、中途解約は、当事者間のトラブルが発生しやすいポイントとなります。

競業禁止

競業禁止もトラブルが生じやすい分野です。競業禁止とは、フランチャイズ契約外で、加盟店がフランチャイズ事業と類似の事業を行ってはならないというルールです。フランチャイズ本部としては、フランチャイズ契約外で加盟店に類似の事業を行われると、グループの事業と競合し商圏にも影響が生じてしまうため、このルールを定める場合が多いのです。

競業禁止は、多くの場合、次のようにフランチャイズ契約書の条項として盛り込まれています。

  1.  フランチャイズ契約期間中
    加盟店は、契約存続期間中、フランチャイズ本部が展開するフランチャイズ事業と同種または類似の事業を行わないものとする
  2.  フランチャイズ契約終了後
    加盟店は、契約終了後〇年間は、別途定める場所・地域において、フランチャイズ本部が展開するフランチャイズ事業と同種または類似の事業を行わないものとする

トラブルで多いパターンは、フランチャイズ契約終了後に加盟店が類似の事業を行った場合に、フランチャイズ本部が契約違反として営業の指止請求や損害賠償請求を行うものです。しかし、フランチャイズ契約に競業禁止が定められていても、加盟店の営業がすべてのケースで契約違反に問われるわけではありません。

競業禁止で問題となるのは、加盟店の営業の自由との関係です。すなわち、過度に行き過ぎた競業禁止は、加盟店の権利である営業の自由を侵すものとして認められない場合があります。すなわち、競業禁止ルールがフランチャイズ契約書に定められていても、すべてその契約内容どおりの結果になるわけではなく、競業禁止は、加盟店の営業の自由を過度に制約しない範囲で認められるとされています。

実際の裁判でも、フランチャイズ契約終了後の競業禁止規定で、業種や場所、時間的な制限を設定せず一律に禁止する場合、あるいはその義務の範囲が広過ぎる場合は、加盟店の営業の自由を過度に制限するものとして無効とされた例があります。

フランチャイズ契約に強い弁護士を探すポイント

フランチャイズ契約に強い弁護士を探すポイント

それでは、フランチャイズ契約に強い弁護士を探すには、どのような点がポイントになるかをみていきましょう。

本部が推薦する

加盟店が、利用客などグループ外の第3者との間でトラブルになった場合は、フランチャイズ本部に相談するのがベストな方法です。

フランチャイズ本部には、フランチャイズ事業に精通した法律の専門スタッフがいるので、トラブル解決のための指導・助言を受けることができますが、難しい案件は弁護士に相談しなければならない場合もあります。弁護士に依頼する場合も、顧問弁護士または繋がりがある弁護士を本部に紹介してもらうことができます。フランチャイズ本部の顧問弁護士や繋がりが深い弁護士であれば、当然フランチャイズ契約に精通しているので、力になってくれるはずです。

加盟店が、フランチャイズ契約に関連して、利用客などグループ外の第3者との間でトラブルになるのは、例えば以下のようなケースが想定されます。

利用客:「そちらで購入した食品を食べたら体調が悪くなった。食品の安全性を確認したいので、製造方法を開示してほしい」

加盟店:「商品の製造方法は企業秘密になっている。企業秘密事項は、フランチャイズ契約で本部から守秘義務が課せられているので開示できない」

利用客:「店の使命は客の健康を守ることだ。そのようなフランチャイズ契約は問題があるのではないか」

上の例のように、フランチャイズ契約に絡んで第3者とトラブルが起きる可能性はありますが、フランチャイズ契約が問題になりやすいのは、概してトラブルの相手がフランチャイズ本部の場合が多いと想定されます。加盟店がフランチャイズ本部との間でトラブルを抱えてしまった場合は、本部に頼ることはできないため、自分で弁護士を見つけなければなりません。

ネットの評価が高い

加盟店が自分で良い弁護士を探す1つ目のポイントは、ネットでの評価が高いことです。弁護士を探す、弁護士の評判を調べるなどの場合に、身近で利用できるものにネットがあります。ネットでは、弁護士に関する口コミや評判を見ることができるからです。

方法としては、まずネットの口コミや評判で評価が高く地理的にも近い弁護士を探し、第2段階でその弁護士がフランチャイズ契約を得意としているかを個別に調べていきます。

あるいは、フランチャイズ契約、弁護士などをキーワードにして、直接フランチャイズ契約に強い弁護士を探す方法もあります。

日頃、一般の人は弁護士との接点が少ないため、良い弁護士を探すには、まずネットの情報を活用するのが効率的です。

知人の評価が高い

次は、知人の評価が高いことです。良い弁護士を探したい場合に、実際に弁護士に依頼した経験がある知人から推薦を受けるケースがあります。その知人は実際の依頼経験があるため、推薦する弁護士が企業法務やフランチャイズ契約に精通しているかどうかを知っている可能性があります。また、その時の体験から、その弁護士が依頼者の立場に立って親身に面倒をみてくれるかもわかっているはずです。

このように、依頼経験がある知人からの評価が高い弁護士は、有力な候補になります。

企業法務・フランチャイズ関連の実績が豊富

次は、企業法務・フランチャイズ関連の実績が豊富なことです。弁護士は、医師のように外科や内科、皮膚科、眼科などの専門が明確に分かれているわけではありません。したがって、企業法務やフランチャイズ契約など会社法や商取引にかかる案件を引き受けることもあれば、離婚や相続など民法関係の案件、刑事事件なども引き受けることがあります。いわば、法的なトラブル全般について手がけることができるわけですが、弁護士にも得意・不得意な分野があります。

通常、得意とする分野は事務所のホームページでPRしていることが多く、そのため企業法務やフランチャイズ契約の分野に強い弁護士を探すことは、それ程難しいことではありません。しかし、ホームページでのPRをそのまま受け取るのではなく、本当に得意なのか、その裏付けを取ることが重要です。自分の事務所は〇〇に強い、自分は〇〇専門の弁護士などとPRしていても、それは客観的な認定を受けたものではなく、あくまでも弁護士側の自己申告に過ぎないからです。

企業法務やフランチャイズ契約などに精通しているかどうかは、これまでの実績で確認するのが良い方法です。弁護士事務所がこれまで取り扱った主な案件は、事務所のホームページに掲載されている場合があるので、その内容を確認します。ホームページに掲載されていない場合は、直接問い合わせてみるしかありませんが、問い合わせても丁寧に回答してもらえない場合は、そこに依頼することはやめた方がいいでしょう。

このようにして、企業法務やフランチャイズ契約関連の事件を豊富に取り扱った実績がある弁護士事務所に的を絞っていきます。

加盟店側に立った実績がある

加盟店とフランチャイズ本部間のトラブルで、加盟店側に立った実績がある弁護士であることも重要なポイントです。企業法務やフランチャイズ契約に精通し実績も豊富な弁護士であっても、その活動内容が本部側に偏っている場合は、注意が必要です。

例えば、Aというフランチャイズ本部の顧問弁護士として、長年にわたり本部側に立って動いてきた弁護士に、Bフランチャイズの加盟店が、本部とのトラブル解決を依頼したとしましょう。この弁護士は、Aフランチャイズの顧問弁護士として、その分野に精通し経験も豊富であるため、一見理想的な弁護士に見えます。

しかし、彼は、これまで本部と加盟店の間のトラブルについて、フランチャイズ本部の利益を守るために動いてきた弁護士です。仮に裁判になったら本部側が不利になると予想される場合は、極力裁判にならないよう、事前の話し合いで解決しようとしてきたはずです。裁判になってしまうと、フランチャイズ本部が高額の損害賠償を払わなければならない可能性がある場合は、一定額のお金で示談になるよう相手方に働きかけ、本部の名誉を守るとともに、経済的損失を最小限に止めるよう努めてきたでしょう。

このように、この弁護士は、表立った正式対決になると形勢が悪い場合は、加盟店をおとなしくさせて諦めさせる方法に精通し、そのノウハウも持っています。いわば、依頼人であるフランチャイズ本部の利益を守ることを優先的な目標とし、社会的な正義や公正な取引の実現などに軸足を置かない弁護士がいるのも事実です。

ここで問題なのは、このような弁護士が、加盟店の立場になって親身に働いてくれるかどうかです。もちろん、理屈の上では、フランチャイズ本部側で加盟店と対峙してきた弁護士の中にも、異なる系列のフランチャイズ内部の争いで加盟店の味方になり誠心誠意尽くしてくれる弁護士もいるはずです。しかし、長年権力側の人間として加盟店とのトラブルを捌いてきた弁護士には、効率性を優先するあまり、加盟店の本意でない解決策に持っていこうとする人もいるかもしれません。

これらのことを考慮すると、加盟店がフランチャイズ本部とのトラブル解決を依頼するのであれば、加盟店側に立った実績を持つ弁護士の方が望ましいといえるのではないでしょうか。

事務所に一定の規模がある

一定の規模を持つ事務所であることも重要なポイントです。一定の規模がある事務所とは、複数の弁護士を抱えている事務所という意味です。なぜ複数の弁護士がいる事務所が良いかというと、フランチャイズ契約に強い弁護士を割り当ててくれる融通性があるからです。

上で説明したように、弁護士は自分の得意とする分野を持っています。

得意とする分野は、そうでない分野に比べ、取り扱った件数が多く経験が豊富です。得意分野は、自分でもPRし周囲も認めていることが多いため、得意分野の仕事が来ると優先的に割り振ってもらえる場合もあるでしょう。

このため、大~中規模の事務所に、フランチャイズ契約にかかるトラブル案件の依頼が来た場合は、その時に抱えている仕事の量や緊急度にもよりますが、その案件はフランチャイズを得意分野とする弁護士に割り振られる可能性があります。

一方で、弁護士1人でやっている個人事務所の場合はどうでしょうか。個人事務所の弁護士がフランチャイズ分野を得意としていればよいですが、そうでない場合もあります。「不得意の分野は、依頼を引き受けないのでは?」と思う方もいらっしゃるでしょう。しかし、弁護士事務所で、「〇〇分野は受けるが、△△分野は受けない」、「うちは、□□専門にやっている」などと言っていたら、経営が成り立ちません。

昔に比べ総数が増えているため弁護士の世界も競争が激しくなっており、殿様商売をしていたら事務所が潰れてしまいます。ほとんどの弁護士は、得意・不得意を問わず、依頼された仕事は特別の事情がない限りすべて引き受けています。

このため、個人事務所の弁護士が、フランチャイズ分野が得意でないにもかかわらず、生活のために依頼を引き受けることは大いにあり得るのです。個人事務所であるため、自分のほかに弁護士はおらず、不得意であっても勉強しながら案件をこなしていくこともあるはずです。

このように、あくまで可能性が高いという話ですが、一定の規模がある事務所に依頼する方が、フランチャイズ契約に強い弁護士を割り当ててもらえます

法律相談の評価が高い

最後のポイントは非常に重要ですが、実際に法律相談を行ってみて、その時の自分の評価が高いことが大切です。

事務所のホームページに、フランチャイズ契約にかかる事件やトラブルを解決した実績が豊富に記載されていれば、この事務所に依頼してみようかという気になります。しかし、①本当にフランチャイズ契約に強いのか、②報酬目的でなく、社会的使命を持っているか、③依頼人の視点に立って、親身になってくれるかなどは、実際に弁護士に会って話をしてみなければわかりません。

「それなら、事務所に出向いて、○○関連のトラブルを抱えているが引き受けてくれるか。その場合の費用はいくらかかるか、と訊いてみればよいのでは」と思われるでしょう。しかし、それでは、本当にフランチャイズ契約に強いのかなど上記のポイントを確かめることが困難です。このため、自分が現実に抱えているフランチャイズ契約のトラブルを法律相談してみることをお勧めします。

「法律相談は高くつくのでは」という不安があるでしょうが、利用客を開拓するため、初回~2回目の法律相談料を割安に設定している事務所がかなりあります(初回のみ安くしている事務所、割安価格をまったく設定していない事務所もあります)。例えば、法律相談料が通常1時間2万円のところ、初回は40分5,000円、2回目は1時間1万5,000円など安くしている場合です。この例の場合、3回目以降通常の1時間2万円にしてあるのは、3回以上になるなら正式に依頼してくださいということでしょう。

したがって、この割安の初回を狙って実際に法律相談を行い、弁護士の実力や人柄を観察するのです。「法律相談しても、その弁護士がフランチャイズ契約に強いかどうかわからないのでは」という方もいらっしゃるでしょうが、別に法律の観点から判定してくださいというわけではありません。

こちら側が素人で法律に詳しくなくても、わかりやすく丁寧に解決のためのポイントを説明してくれるかどうか、また、使命感や熱意を持って仕事を行ってくれそうかなどを観察するのです。それらの点を観察すれば、仮に法律のことがよくわからなくても、この弁護士はフランチャイズ契約に強そうだ、使命感を持って一生懸命にやってくれそうだなどのポイントを感じ取ることはできます。

まとめ

フランチャイズ契約に強い弁護士を探すポイントのまとめ

フランチャイズ契約を巡っては、当事者双方の認識や解釈の違いなどにより法的なトラブルになってしまうケースがあります。

フランチャイズ契約を巡る当事者同士のトラブルは、元々フランチャイズ契約が本部に有利な内容で締結されていることを背景として、経営不振の責任が偏に加盟店の能力・努力不足にあると決めてしまうことなどにより生じやすい実態があります。しかし、いざトラブルが発生し、当事者同士の話し合いで解決できない場合は、フランチャイズ契約に強い弁護士に依頼して事態を収拾する必要があります。

フランチャイズ契約に強い弁護士を探すポイントとしては、①本部の推薦がある、②ネットの評価が高い、③知人の評価が高い、④企業法務・フランチャイズ関連の実績が豊富、⑤加盟店側に立った実績がある、⑥事務所に一定の規模がある、⑦法律相談の評価が高いの7つがあるので、検討してみてください。