フランチャイズビジネスの廃業率は?廃業しないためのポイントも
コンビニやレストラン、英会話教室など、街を歩けば至る所で有名フランチャイズの店舗を見かけます。フランチャイズは、グループのバックアップを受けながら開業できるビジネスであるため、加盟を検討している方も多い一方、フランチャイズビジネスの廃業率など加盟側として気になる情報もあるのではないでしょうか。
この記事では、フランチャイズビジネスの廃業率や廃業しないための重要なポイントを解説しています。フランチャイズビジネスで開業を目指している方は、ぜひ参考にしてください。
フランチャイズの廃業率は
日本商業学会によると、1999年度~2002年度の営業店舗数の平均および廃業店舗数の平均から算出されたフランチャイズの業種別廃業率は、次の通りです。
小売業 | 6.32%(うち、コンビニ5.76%、一般小売業9.71%) |
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サービス業 | 7.44% |
飲食業 | 7.95% |
それでは、フランチャイズ加盟店も含めた全事業所の廃業率はどの程度なのでしょうか。フランチャイズ加盟店の廃業率を全事業所の廃業率と比較するには、総務省が実施した平成11年事業所・企業調査報告における小規模事業所の廃業率が参考になります。それによると、全事業所の廃業率は次のようになっています。
【全事業所の廃業率】
小売業 | 従業者1~29人5.88%、従業者1~19人5.91% |
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サービス業 | 従業者1~29人6.46%、従業者1~19人6.50% |
飲食業 | 従業者1~29人4.26%、従業者1~19人4.28% |
この数値をフランチャイズ加盟店の廃業率と対比してみましょう。
【フランチャイズ加盟店と全事業所の廃業率比較】
区分 | フランチャイズ加盟店 | 全事業所 |
---|---|---|
小売業 | 6.32% | 5.88~5.91% |
サービス業 | 7.44% | 6.46~6.50% |
飲食業 | 7.95% | 4.26~4.28% |
フランチャイズ加盟店の廃業数は、1999年度~2002年度の3年間にフランチャイズ契約を解除された店舗と契約更新がされなかった店舗の合計数とされています。
一方、全事業所の廃業数は、実際に事業所が廃業した数値であることから、フランチャイズ加盟店の廃業と全事業所の廃業とでは、異なる捉え方をしています。そのため、フランチャイズ契約を解除された店舗と契約更新がされなかった店舗の合計数は、それがなかった場合の廃業数(本来の廃業数)より膨らみやすいといえます。
というのも、上記調査でフランチャイズ加盟店の廃業率算出の基礎となるフランチャイズ契約を解除された店舗と契約更新がされなかった店舗は、以下の店舗です。
- フランチャイズ契約に違反して解除・非更新となった店舗
- 売上が好調でないため非更新となった店舗
- 経営不振で撤退せざるを得ず、解除・非更新となった店舗
このうち、経営不振によりフランチャイズビジネスを廃業する店舗は、③の店舗のみです。①は、契約違反の責任を問われての解除・非更新であるため、経営状態とは何の関係もありません。②は、売上が好調でない事由はあるものの、経営不振で廃業するまでには至っていないケースです。フランチャイズ本部がこれ以上面倒をみることを嫌って契約更新しなかったと想定されますが、仮に契約を更新していれば、頑張って廃業せずに持ちこたえた可能性もあります。
売上が好調でないという理由だけで、フランチャイズ本部が契約を中途解約することは困難ですが、契約期間満了時に契約を更新しないことは可能です。多くのフランチャイズ契約で、契約更新の条件に契約当事者双方の合意をあげていることから、契約当事者の一方が合理的な理由に基づき契約更新の合意をしないことはあり得ます。
このように考えると、真の廃業数とされるべきは③の店舗のみであるにもかかわらず、②と③の数値が上乗せされて廃業数がカウントされているのです。以上のように、フランチャイズ加盟店の廃業率の数値は、経営不振による廃業以外の事由によるものも計上されているため、全事業所分より高めになっている可能性があります。
しかし、この調査結果から認識しなければいけないことは、フランチャイズビジネスには、経営不振による廃業以外の事由=フランチャイズ特有の事由による廃業のリスクがあるということです。上記の①フランチャイズ契約違反による解除・非更新、および②売上不調による非更新は、このフランチャイズ特有の事由による廃業リスクといえます。①と②どちらのケースも、フランチャイズ契約が解除または非更新となるため、加盟店は廃業せざるを得なくなる確率が高くなります。
加盟店としては、契約解除または非更新された場合にフランチャイズに属さないで営業を続ける選択肢もありますが、商標・ブランドを利用できず、フランチャイズ本部のバックアップもなくなると、孤立無援でやっていくことは困難といわざるを得ないからです。
以上のように、フランチャイズ特有の事由による廃業リスクがあることを加盟前に考慮することが大切です。
フランチャイズビジネスの優位性と非優位性
次に、フランチャイズビジネスには、どのような優位性や非優位性があるかをみていきましょう。
商標・ブランドを利用できる
フランチャイズビジネスの最大の優位性が、商標・ブランドを利用できることです。有名フランチャイズに加盟すれば、そのフランチャイズの商標・ブランドを使って営業ができるようになります。例えば、コンビニのローソンやファミリーマートに加盟すると、自分の店舗名にローソンやファミリーマートの名称を使用することができ、ローソンやファミリーマートブランドの商品を店で提供することが可能になります。
美味しいもの、安全なものを求める消費者に対して、有名なローソンやファミリーマートブランドの商品を提供できることは、それができない店に比べると、非常に有利な武器を持つに等しいものがあります。
一般的に、ある商標やブランドを社会的に周知、有名にするためには、㋐商品・サービスの開発を続け、良いものを世に出していく、㋑社会や消費者ニーズの変化に対応しながら、商品・サービスの内容を改善していく、㋒人材教育に力を入れ、消費者に快適に来店してもらう、㋓宣伝広告に力を入れ、商品・サービスを社会にPRするなどの長年に渡る努力やコストが必要です。
そのような経営努力を積み重ね、商品やサービスが世に知られるようになって初めて、「あそこの料理は美味しい」、「あの会社の商品は間違いない」など、消費者の高い評価と信頼を得ることができるようになるのです。
その長年に渡る努力やコストの結晶である商標・ブランドを、素人同然のオーナーが開業当初から利用することができるということは、フランチャイズビジネス最大のメリットといえるでしょう。
営業マニュアル・経営ノウハウが提供される
フランチャイズに加盟すると営業のやり方をまとめたマニュアルをはじめ、店舗経営に関するノウハウの提供を受けることができます。
通常、どのような事業を始めるにしても、経験者を除いて、事業の仕組みや営業の進め方などの知識・技術を勉強し、ある程度身に付けてから開業するものです。未経験の初心者がいきなり開業し、誰かの手助けなしでうまくやっていける程世の中は甘くないからです。しかし、この事業に関する知識・技術をマスターすることは、一朝一夕でできるものではなく、長い期間に渡る努力と費用が必要です。この知識・技術をマスターする前に諦め、夢を断念する人もいるほどです。
このように、事業を始めるためには、関連知識や技術の習得が必須条件ですが、フランチャイズに加盟すると、その知識・技術を短期間で習得することができます。フランチャイズには、仕事のやり方をまとめた業務マニュアルが整備されており、初心者であっても、研修でマニュアルを勉強すれば業務を行うことができる仕組みになっています。
そもそもフランチャイズは、加盟店オーナーそれぞれが自分だけの独自技術・手法を売りにしている事業ではなく、マニュアルに従って処理すれば、どこの店舗でも同じ商品や同じサービスを提供できることを強みにしています。
例えば、ラーメンフランチャイズでは、飲食店経営が未経験の人であっても、研修でマニュアルを勉強しマニュアルどおりに調理すれば、他の系列店と同じ味、同じ香り、同じ外見のラーメンを提供することができるのです。
また、事業を円滑に進めるためには、業務マニュアルで仕事のやり方を覚えるだけではなく、快く来店してもらえる接客のポイントや様々な業務の場面に応じたスムーズな対処方法など、いわゆる営業のコツというものも必要です。その点、フランチャイズ本部には、長い経験から得た店舗経営を円滑に進めるためのノウハウが蓄積されており、加盟店は、それらの経営ノウハウも提供してもらえるのです。
このように、営業マニュアルや経営ノウハウを提供してもらえることで、フランチャイズビジネスは、未経験者や初心者でも始めることが可能となっています。
出店調査がされている
フランチャイズでは、どのエリアにどの位の数の直営店や加盟店を出店させるかについて、店舗展開の計画を策定しています。その出店計画の裏付けとなるのが出店調査=商圏調査です。
出店調査では、目星を付けたエリアが住宅地か商業地か等土地に関する情報、人口や労働者数、世帯数、単身世帯と既婚世帯の割合、若年層と高齢層の割合等人に関する情報、大型店出店計画、企業や学校の誘致計画、駅前開発計画など様々な情報を収集し、㋐どの程度の消費者ニーズが見込まれるか、㋑将来的に成長の余地があるか、㋒競合店の出店状況はどうかなどを総合的に勘案し、出店の是非を決定します。
このようにフランチャイズでは、事前に消費者ニーズや将来性について組織的な調査・分析がされるため、開業の安全性はかなり高いといえるでしょう。
仕入先が確保されている
多くのフランチャイズでは、材料や商品の仕入れ先は、フランチャイズ本部または本部が指定する業者と決められています。したがって、事業を始めるにあたり、材料や商品の仕入れ先を開拓・確保する心配が不要です。
例えば、個人が牛丼店を開業しようとする場合は、米や牛肉、野菜などの仕入れ先を自分で開拓しなければいけません。仕入先は、食材ばかりでなく、醤油やソースなどの調味料、付け合わせの紅ショウガ、味噌汁に使う味噌、炒める際のオイルなども確保する必要があります。それらの食材や調味料について、味や風味、鮮度などを調べ、価格との折り合いをつけていくのは結構な手間暇がかかります。
それに対し、フランチャイズビジネスでは、主要な仕入先が初めから決められているため、悩む必要がなく、仕入先開拓の時間・労力を節約できます。
また、飲食フランチャイズの中には、料理を作る工程のほとんどがフランチャイズ本部直営の工場で行われ、加盟店には調理済みの料理が搬入される例もあります。この場合、加盟店は、搬入されてきた料理を温めて皿に盛りつけるなど、簡単な作業を行うだけで客に提供することができます。このように、本部の工場で調理済みの料理を搬入する方式であれば、加盟店で難しい調理を行う必要がなく、初心者でも開業できるメリットがあるのです。
しかし、初めから仕入先が決められていることは、良い面ばかりではありません。加盟店が、鮮度が良い美味しい食材を安く提供する問屋を見つけ、そこから仕入れようとしても、フランチャイズ本部の同意なしでは困難です。予め仕入先が決められているフランチャイズでは、このような場合に本部の同意は得られないでしょうから、諦めることになります。
本部のバックアップがある
フランチャイズビジネスの大きなメリットは、本部のバックアップがあることです。通常、フランチャイズでは、開業前に加盟店オーナーに研修を実施し、業務のやり方を身に付けてもらいますが、それだけでは十分ではないため、加盟店開業後はスーパーバイザーなどの指導員が店舗を巡回指導してくれます。
また、加盟店では、日々業務を行っていると、「客の入りが良くない」「客は入るが、売上げが振るわない」「アルバイトを確保できない」「光熱水費などの固定費がかさむ」「万引き被害が多」等の様々な問題が生じることがあります。
加盟店で生じる問題はこれだけではありませんが、このような問題やトラブルが発生した際に、加盟店オーナーが1人で悩んで対処しようとしても限界があります。そのような場合にフランチャイズでは、本部の相談・助言を受けて解決を図ることができるのです。
加盟金がかかる
加盟金は、フランチャイズに加盟する際に支払う金銭です。その金額は、フランチャイズによって違ってきますが、高いところでは数百万円から安いところで0円~数万円までと差があります。似たような条件の場合、加盟金が安いフランチャイズを選ぶ方が有利になります。ただし、加盟金の安さだけに目を奪われてフランチャイズを決めてしまうのは、誤った方法です。加盟するフランチャイズの選定は、そのブランド力や将来性、加盟店への支援体制など総合的に勘案し判断する必要があります。
ロイヤリティがかかる
ロイヤリティは、フランチャイズの商標・ブランドを利用する対価として支払う金銭です。
一般的には、開業期間中毎月支払うことになりますが、「毎月一定の額を支払う」「毎月、売上額や利益額の一定割合を支払う」の方法があります。フランチャイズによっては、ロイヤリティを無料にしているところもあります。
契約期間中は拘束される
フランチャイズ契約の契約期間中は、契約内容に拘束されます。通常、フランチャイズ契約には、3~5年間程度の契約期間があります。また、この契約期間が終了する際は、加盟店オーナーとフランチャイズ本部の双方の合意により契約を更新することができます。契約が更新されれば、さらにそこから一定期間の契約期間が始まることになるわけです。
このフランチャイズ契約期間中は、加盟店オーナーとフランチャイズ本部双方は、契約当事者として、契約内容を遵守する義務を負います。仮に、どちらか一方が契約内容に違反した場合は、契約書の定めにより損害賠償などのペナルティが課されることになります。
このように、契約期間中は、当事者双方が契約内容を守る義務を負うことになるため、例えば、加盟店オーナーが何かの事情で、契約期間の途中に廃業しようとしても勝手にはできません。
廃業するためには、フランチャイズ契約を中途解約する必要がありますが、その中途解約の取扱いが契約書に定められているかどうかが問題となります。中途解約の取扱いが契約書に定められているとしたら、㋐中途解約を認めること、㋑中途解約を申し入れる期限、㋒中途解約する場合は違約金を支払うこと、などが規定されているため、その定めに従って解約手続きを進めることになります。
しかし、中途解約の取扱いが契約書に定められていない場合は、加盟店オーナーとフランチャイズ本部双方が協議してその取扱いを決めなければなりません。この場合は、当事者双方が合意して違約金なしで円満に解約できるケースもあれば、相手方に発生した損害賠償を請求されるケースなどもあります。
当事者の一方が、契約期間の途中でフランチャイズ契約を解約することは、契約書で定めた契約期間を守らない債務不履行に該当するとして、中途解約により発生する損害の賠償を請求される可能性もあるわけです。
以上のように、フランチャイズ契約の契約期間中は、契約当事者双方は契約内容に拘束されることを覚悟しておく必要があります。
自由裁量で経営できない
フランチャイズに加盟すると、自分の自由裁量で店舗経営を行うことが難しくなります。
フランチャイズは、それぞれ独自の営業戦略や経営方針を持っています。その営業戦略や経営方針に基づき、傘下の直営店や加盟店の営業を統一するのがフランチャイズのやり方です。
したがって、加盟店が本部の了解なく独自の判断で、「商品・サービスの値下げやバーゲンセールを行う」「特定の商品・サービスの提供を止める」「新商品・新サービスを提供する」「定休日を設ける」「営業時間を変更する」などを行うことは、難しくなります。
フランチャイズは、同系列の店であれば、どこの店でも同じレベルの商品・サービスを提供できることが強みであり、ブランド価値を維持することに繋がります。例えば、牛丼チェーン店であれば、どこの店でも、同じ味、外見の牛丼を同じ価格で提供することができるようにしているのです。それを、加盟店が勝手に牛丼価格を半値にする、牛丼を止めてトンカツの提供を始めるなどの行為をすれば、系列店としての存在意味がなくなり、牛丼ブランドの価値も失墜させてしまいます。このため、フランチャイズの足並みを乱すような営業行為は、契約で禁じられているのです。
そのため、自分の思うように自由に店舗経営がしたい、誰の指示も受けたくないという人は、フランチャイズビジネスには向いていないでしょう。逆に、自分は初心者なので専門家に助けてもらいながら営業したいという方は、フランチャイズと相性が良いといえます。
経営不振以外の廃業リスクがある
既に説明したように、フランチャイズビジネスには、経営不振以外の廃業リスクがあります。通常の事業では、ほとんどの場合経営不振が廃業の原因となりますが、フランチャイズの場合は、経営不振以外に、フランチャイズ本部による契約の解除や契約の非更新が廃業の契機となることがあります。
すなわち、㋐加盟店がフランチャイズ契約の定めを守らなかった場合に、本部が契約の解除や非更新の措置を講じる、㋑加盟店の売上不調が続く場合に、本部が契約更新に同意しないなどの可能性があります。フランチャイズ契約が解除または非更新となってしまっては、商標・ブランドや業務マニュアルを利用できなくなり、本部のバックアップもなくなるため、加盟店は廃業せざるを得ない可能性が高くなります。
フランチャイズで廃業しないためのポイント
それでは、フランチャイズビジネスで廃業しないためには、何がポイントになるかをみていきましょう。
将来性ある業種・業態を選ぶ
将来性ある業種・業態とは、①将来的に成長が見込める、②今後人気が高くなる、③購買層が増えてくる仕事です。例えば、今後高齢化社会が一層進展し、高齢者の数や比率が増えていきます。それと併せて核家族化も進むため、夫婦2人だけや1人暮らしの高齢者が多くなります。そのような社会では、子供と一緒に住んでいない高齢者の安否確認や食事・買物の手助けなど、お年寄りの世話をする分野は益々ニーズが高まるでしょう。
介護や看護などの専門分野は、介護士や看護士を擁する福祉施設や在宅サービス業者が対応しますが、介護の必要がない日常の安否確認や買物代行、弁当宅配、住宅修理など手助け的な仕事は、専門の資格を持たなくても参入することができます。
さらに、今後は、いわゆる元気な高齢者も多くなることから、高齢者向けの健康や趣味を扱う教室を開く途もあります。このように、シルバー関連全般は将来的に成長が見込める分野です。
また、少子化も進展していることから、子供がいない家庭を中心にペットの飼育が大きく伸びており、この傾向は今後も続きそうです。単身世帯や夫婦共働き世帯では、昼間家に誰も居なくなるため、代わりにペットの世話をするペットシッターなどの仕事に人気があります。また、新しくペットを飼いたい人に、希望のペットを探して譲渡の仲介をする仕事も将来性がありそうです。シルバー関連と並び、ペット関連も大きな背長が見込めるのではないでしょうか。
これらは一例であり、将来性ある仕事は他にも多くあります。将来性ある業種・業態を探すには、時代の背景や流れを読み、今後社会的に必要度が高まると予測される仕事を絞り込んでいくことが大切です。
夢を実現できる業種・業態を選ぶ
2つ目は、これも非常に重要なポイントですが、夢を実現できる業種・業態を選ぶことです。子供に勉強やスポーツを教える、お年寄りの世話をして快適に過ごしてもらう、美味しい料理を作って食べてもらうなど、人には、それぞれの夢や将来の青写真があります。重要なポイントは、その将来の夢を実現できる仕事を選ぶことなのです。
なぜ夢を実現できる仕事を選ぶことが大切かというと、日々の仕事に対するやる気や熱意、モチベーションが違ってくるからです。人は誰でも自分の好きなことをやる場合は、それがどのように大変な苦労を伴っても、文句一つ言わずにやり遂げます。それは、フランチャイズビジネスの場合も同じです。自分の選んだ業種・業態が自分の夢と重なる場合は、どのように大変な仕事でも、逆境に立たされても、最後の頑張り・踏ん張りがきくのです。
その点で、美味しい料理を作って人に食べてもらう夢を持つ人が、加盟金が安いからとの理由で学習塾フランチャイズに加盟しても、仕事への熱意やモチベーションを維持するのは困難です。また、子供に勉強を教える夢を持っている人が、ラーメンフランチャイズに入ってもその夢を実現することはできません。フランチャイズの業種・業態を選ぶ際は、自分の夢や将来の青写真と照らし合わせることが大切です。
優良なフランチャイズを選ぶ
次に重要なポイントは、優良なフランチャイズを選ぶことです。フランチャイズビジネスを始めるにあたり、優良なフランチャイズを選ぶことができるかどうかが、事業の成否の鍵を握っているといっても過言ではない程、フランチャイズ選定は大切なポイントになります。
「優良なフランチャイズといっても、選び方がわからない」と思う方がいらっしゃるかもしれません。優良なフランチャイズを選ぶには、次のようないくつかの重要なポイントがあります。その重要なポイントについて、フランチャイズ本部から資料・データを取り寄せて分析し判断するのです。
①グループが成長しているか
優良なフランチャイズは、グループ全体が成長しています。グループが成長しているかどうかは、傘下の直営店・加盟店が増えているかどうかで判断できます。成長しているフランチャイズは、傘下の直営店・加盟店が次々に出店し、閉鎖する店の数より上回っています。傘下の直営店・加盟店が次々に出店できるということは、そのフランチャイズが消費者のニーズを掴み、良質な商品・サービスを提供できているからです。
②加盟店の撤退が多くないか
本記事のテーマにもなっていますが、加盟店の撤退が多くないかどうかも重要な判定材料です。時代のニーズを掴み切れず人気が出ないフランチャイズの加盟店は、営業が長続きしない傾向があります。加盟店が年間でどの程度廃業しているか、また新規出店はどの位かなどは、フランチャイズ本部から資料を貰えば把握ができます。加盟店が長く営業できており、撤退する比率が低いフランチャイズは、優良グループと判定できます。
③収益モデルが信頼できるか
フランチャイズは、加盟店の収益モデルを公表しています。収益モデルは、年間または月間の売上額や必要経費額、営業利益額などからなっています。そして多くの場合、収益モデルの数値は、「㋐系列既存店の営業実績の平均値から算出」「㋑代表的な店舗の営業実績値」から算出されています。
㋐系列既存店の営業実績の平均値から算出する方法は、実際に営業している全ての既存店の営業実績平均であるため、信頼を置くことができます。一方で、㋑代表的な店舗の営業実績値を記載している場合は、他の既存店の営業状況が不明であるため、あまり信頼することができません。グループ内で特に営業成績が良い店舗を選んで掲載している可能性もあるためです。
したがって、系列既存店の営業実績の平均値から算出された収益モデルにおいて、売上額や黒字幅がどの程度あるかを把握することが重要です。
④開業費用が多額でないか
開業費用が多額でないことも、フランチャイズの選定材料です。フランチャイズで開業する際の最大のハードルが、開業費用です。開業費用が多額に過ぎると、それを調達することが難しく、開業を断念せざるを得なくなります。また、何とか開業に漕ぎつけても、融資額の返済負担が大きいと店舗経営を圧迫することになってしまいます。
このため、フランチャイズ選定においては、業種や業態にもよりますが、開業費用が多額でないということも条件に入れておく必要があります。
⑤社会のニーズにマッチしているか
そのフランチャイズの提供する商品・サービスが、社会のニーズにマッチしているかは、フランチャイズ事業の成否を左右する非常に重要なポイントです。提供する商品・サービスが、その時代のニーズにマッチしていれば営業実績は伸びていき、逆にその時代が求めるものに適合していなければ、いかに努力しても成績を上げることは困難です。
近年のコロナ禍により、実店舗型飲食店が営業時間短縮や営業自粛を余儀なくされた中で、持帰りや宅配形式のサービスに転換または導入した飲食店は、外食を忌避した層のニーズを取り込み一定の成果を上げることができました。それは、コロナ禍という社会的な状況変化に対応し、社会のニーズに適合した代表的な例でしょう。
世の中は刻々と変化し、それとともに消費者の行動や志向も変わっていきます。その変化にいち早く気づき、先を見据えた商品・サービスを提供できるフランチャイズを選ぶことが重要です。
⑥サービスの質が良いか
サービスの質も重要なポイントです。ここでいうサービスとは、単に従業員の接遇が丁寧であるとか、電話の応対に好感が持てるなどだけを言っているのではありません。もちろん、サービスの質を判定する上で、従業員の応対は重要な要素ですが、サービスとは、従業員の応対も含めたより広いものを指します。
すなわち、サービスの質は、㋐提供する商品・サービスのグレードや内容、㋑提供する商品・サービスの価格、㋒従業員の接遇や応対、㋓店舗全体の雰囲気や利用した満足感などにより判定します。
フランチャイズのサービスの質が良いかどうかは、その店舗に出向いて、商品を手に取ってみる、購入してみる、サービスの提供を受けてみる(ハウスクリーニングなど)、見学してみる(英会話教室など)、従業員に質問してみるなど、実際に体験してみるとよく判断できるでしょう。
フランチャイズのサービス提供の内容や水準、従業員教育の程度などは基本的に統一されているため、2~3店舗の状況をみればそのフランチャイズのレベルがわかります。
⑦本部の支援体制が手厚いか
本部の支援体制がしっかりしているかどうかは、フランチャイズ選定の重要なポイントになります。
既に説明したオーナー研修や店舗巡回指導の期間やタイミングは、フランチャイズによって異なり、かなり手厚く研修・指導してくれるところとあまり十分ではないところが見受けられます。
また、加盟店が業務を進める中で発生した問題やトラブルに対する本部の支援体制にも、フランチャイズによって差があるのが実情です。フランチャイズの強みは、いざという時に、加盟店オーナーが1人で悩み独力で対処しなければならない状況に陥ることなく、本部の適時適切な指導・助言により問題の解決を図ることができる点にあります。このことからも、加盟店に対する研修や相談・指導体制が充実しているフランチャイズを選びたいものです。
事前に市場調査を行う
事前に市場調査を行うことも重要なポイントです。事業を始める場合は、どの地域・エリアにどの程度の購入ニーズがあるかを予め調べ、有利な場所に出店を行うことが成功するための鍵となります。それは、フランチャイズビジネスでも同様で、事前の市場調査で消費者のニーズを把握することが大切です。
しかし、「市場調査といわれても、どうすればいいかわからない」と誰もが思うとおり、普通の素人が市場調査などすぐにできるものではありません。市場調査は、フランチャイズ加盟者が行わなくても、フランチャイズ本部が保有しているデータを利用すればよいのです。
フランチャイズ本部は、それぞれ独自の方法で、地域・エリア別の消費者ニーズや競合店舗の出店状況などを調査しています。その市場調査結果のデータを活用し、できるだけ消費者ニーズが高く、競合店舗が少ないエリアを狙って出店するのが上手な方法です。
開業資金を抑える
フランチャイズで廃業しないためには、開業資金を抑えることが非常に重要です。一般的に、フランチャイズで開業しようとすると、次のような開業費用が必要になります。
①加盟金 | フランチャイズに加盟する際に支払う費用です。 |
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②店舗取得費 | 店舗の購入費または賃借費(敷金・礼金・初回家賃など)です。 |
③店舗改装費 | 店舗の内装や外装の工事費です。 |
④備品取得費 | 店舗で使う備品の購入費または賃借費です。 |
⑤消耗品取得費 | 店舗で使う消耗品の購入費です。 |
⑥宣伝広告費 | 店舗をPRする費用です。 |
上記の開業資金の他、家賃や商品・材料仕入代、アルバイト人件費、光熱水費など、開業当初の運転資金を一定額準備しておく必要があります。
開業費用と一定額の運転資金の合計は、かなりのまとまった額になります。自己資金が不足する場合は、金融機関から融資を受けるなど借金で賄うケースも多くみられます。しかし、その場合には、開業後に毎月ローンの返済を行っていく必要があり、その返済額が過大であると経営を圧迫する要因になりかねません。
したがって、廃業を避けるためにも、開業費用はできるだけ抑えることがポイントになります。開業費用を低額に抑えるには、次のポイントに着眼して検討します。
①加盟金を抑える
加盟金が高いフランチャイズでは数百万円のところもあるため、それを抑えることは有効な方策です。しかし、加盟金の安さだけに着眼して加盟先を決めるのは、あまり良い方法とはいえません。フランチャイズ選定は、まずフランチャイズの中身を審査し、加盟金の額も加えた総合判定により決めることが大切です。
②店舗取得費、店舗改装費、備品取得費を抑える
実店舗を持たずに、自宅で開業できるかを検討します。自宅開業であれば、②店舗取得費が不要になります。③店舗改装費は、自宅でレストランを開くなど業種によっては必ずしも不要にはなりませんが、事務所と倉庫だけの機能にする場合は改装する必要がなくなります。
実店舗が必要な業種の場合は、物件を購入するのではなく賃借する方が安くあがります。また、備品も賃借できればそれに越したことはありません。賃借は、居抜き物件を借りるのが最も効率的です。
例えば、レストランを開く場合は、従前飲食店だった店舗を内装や備品がそのままの状態で借りることができれば、店舗取得費、店舗改装費、備品取得費を抑えることが可能となります。飲食店の場合は、建物内を客席部分と厨房部分に分け、カウンターを設置する、厨房機器を設置するなどの費用が必要ですが、居抜き物件であれば大幅に節約できます。
③人件費を抑える
人を雇わずに、自分1人だけで開業できるかを検討します。
開業当初は自分1人だけで、事業経営が安定した後にアルバイトを雇用する方法もあります。
集客を工夫する
フランチャイズビジネスを軌道に乗せるには、集客を工夫することも大切です。集客に繋げるためには、効果的な宣伝広告が重要な手段となりますが、使う広告媒体は、新聞・テレビ・雑誌・チラシ・ネットなど多肢に渡ります。新聞やテレビ・雑誌などを使えば、多くの消費者に知らしめることができますが、それらの媒体は多額の広告費がかかります。
そのような費用がかかる宣伝広告は、フランチャイズ本部に任せておいて、加盟店は、できるだけ費用をかけずに効果的なPRを行いましょう。それには、ネットを使い、自分の加盟店をPRするのが最も効率的です。ただし、ネットでPRする際には、サイトが目立つように綺麗に設計することもよいですが、検索した時に可能な限り検索エンジンの上位に表示されるよう工夫することが大切です。いかに立派なサイトを立ち上げても、検索エンジンの上位に表示されなければ、訪問者数が伸びていきません。
検索エンジンの上位表示を狙うためには、広告費を支払って上位表示してもらう方法と自分の力でサイトの評価を上げて上位表示を勝ち取る方法があります。広告費を節約して自分の力でサイトの評価を上げるには、SEO=検索エンジン最適化について勉強する必要があります。SEOでは、検索エンジンの評価を上げるためのサイト設計の方法やPR記事の掲載方法、キーワードの盛り込み方などについて学習します。
差別化を図る
他店との差別化を図ることは、一般的に事業を成功に導く重要な鍵とされていますが、フランチャイズではなかなか難しい試みになります。というのは、フランチャイズでは、商品・サービスの提供内容やそのグレード、提供方法などが画一化・標準化されており、同系列であればどこの店でも同じレベルの商品・サービスを提供できることを売りにしているからです。
このため、目立つやり方、例えば、商品の大安売りやつかみ取り、ポイントやくじ抽選などで差別化を図ることは、フランチャイズ本部の方針でも出ない限り困難です。しかし、以下のように全く方法がないわけではありません。
㋐複数ブランドの導入
複数ブランドの導入は、1つの店舗で複数のフランチャイズ商品・サービスを提供することです。このため、加盟するフランチャイズは複数になりますが、複数のブランドを提供できるため、同系列他店との差別化を図ることができます。
例えば、Aというラーメンフランチャイズに加盟している店が、Bという焼き鳥フランチャイズにも加盟して、ラーメンと焼き鳥の2つのブランド商品を提供できるようにする方法になります。
㋑営業店舗がフランチャイズに加入
もう1つは、既に個人で営業している店舗が、新たにフランチャイズに加入してその商品・サービスを提供できるようにすることです。例えば、個人で蕎麦屋を営業している店が、新たに唐揚げフランチャイズに加盟して、蕎麦と唐揚げ両方を提供できるようにします。この店は実店舗を持ち店内飲食もできるため、唐揚げフランチャイズが持帰りや宅配に特化しているグループの場合は、他の同系列唐揚げ店との差別化を図ることが可能になります。
契約解除・非更新を避ける
既に説明したように、フランチャイズでは、フランチャイズ本部による契約の解除や契約の非更新により、加盟店が廃業せざるを得なくなる場合があることがわかりました。
このことから、加盟店としては、自分のできる範囲で廃業リスクを極力抑えるよう注意していくことが重要です。
具体的には、フランチャイズ契約の解除事由となるような契約違反やフランチャイズブランドを失墜させるような行為は、厳に慎むことです。
また、フランチャイズ本部に、契約非更新の口実を与えるような売上不調、集客不振などの状況が続かないよう、店舗経営に工夫を凝らし日々努力していく必要があります。
まとめ
日本商業学会における調査、および総務省の事業所・企業調査報告によると、フランチャイズ加盟店の廃業率は、全事業所に比べ高い数値を示しています。このことは、廃業の原因が、通常の事業では経営不振にあるのに対し、フランチャイズでは経営不振以外に、フランチャイズ本部による契約の解除や契約の非更新も廃業の契機となり得ることを示しています。
このように、フランチャイズビジネスでは、一般の事業にはない契約がらみの廃業リスクがあることから、廃業しないための戦略を十分に分析・検討した上で、スタートすることが重要となります。