フランチャイズチェーンとボランタリーチェーンの違いとは

フランチャイズチェーンという言葉に関しては、多くの方にとってなじみがあるかと思います。一方で、ボランタリーチェーンという言葉に関しては、あまりなじみがない方もいらっしゃるでしょう。この記事では、フランチャイズとボランタリーの違いについて、フランチャイズチェーンとボランタリーチェーンの仕組みを解説しながらご紹介するので、参考にしてみてください。

フランチャイズチェーンとボランタリーチェーンの違い

フランチャイズチェーンとボランタリーチェーンの違い

フランチャイズ(franchise)は、「参政権・許可・特定地域での一手販売権」などの日本語訳があります。一方ボランタリー(voluntary)は、「自発的・任意・自由意志」などの日本語訳があります。この2つの言葉の日本語訳は、フランチャイズチェーンとボランタリーチェーンの違いを考える上で、重要なキーワードとなります。

ボランタリーチェーンの定義

ボランタリーチェーンの定義を考える上では、一般財団法人 日本ボランタリー協会サイト内の「ボランタリーチェーンの定義」が参考になります。引用すると、”同じ目的を持つ独立事業者が主体的に参画・結合し、チェーンオペレーションの仕組みを構築・活用して、地域生活者のニーズに対応した商品・サービスを提供する組織”とあります。

コンビニエンスストアのようなフランチャイズの場合、看板からオペレーション・仕入れその他あらゆる部分が、フランチャイズ本部の定めたルールに基づくものとなります。一方、ボランタリーチェーンの場合はそれぞれの店舗(スーパー)の独立性を維持しつつも、仕入れや商品開発を共同で行うことにより、店舗の独自性・独自性を保つことができます。

ボランタリーチェーンの定義を考える上では、フランチャイズチェーンと表で比較すると、次の通りです。

ボランタリーチェーン フランチャイズチェーン
組織 基本的に横並び 本部の傘下に加盟店が加わる形
運営 ボランタリーチェーンに参加する会社によって本部機能の運営や意志決定などが行われる、フラットな組織 フランチャイズチェーン本部が、商標・加盟店に対しノウハウ提供や運営サポートを提供する、本部が主体となる組織
参加会社の規模 既に独立して運営をしている、一定規模の店舗が参加するパターンが多い 既に多業種を運営している法人が経営多角化の一環として参入したり、個人が0から参加するパターンが多い
本部機能 加盟店によって本部機能を形成する、ボトムアップ型の組織 フランチャイズ本部が方針を決定する、トップダウン型の組織
加盟店の自主性 ボランタリーチェーン運営のための積極的な参画が必要だが、店舗運営自体は加盟店の自主性を尊重 本部の定めたルールにきちんと従うことが必要。自主的な仕入れが許されないケースもある
ブランドの統一性 あくまで運営・仕入れ・ノウハウ・従業員教育など、「仕組みの共有」が主体であり、参加店舗はそれぞれ独自の店舗ブランドで運営する 外部から見ると、「同じブランド」で「同一のオペレーション」であるため、極めて統一性が高い
組織構成の仕組み 加盟店が集まって組織を結成 本部と加盟店が、1対1でフランチャイズ契約を締結
加盟店の横のつながり 加盟店同士の横のつながりが強く、ボランタリーチェーン運営への積極的な参画が求められる 加盟店同士の横のつながりは比較的薄いが、FC加盟店会議など、加盟店同士で顔を合わせる機会を設けるフランチャイズもある

フランチャイズチェーンとボランタリーチェーンの違い

このように比較すると、ボランタリーチェーンは「既に運営されている店舗が、様々なノウハウを共有することによりお互いに高め合おう」という組織であり、フランチャイズチェーンは、「本部を中心に、様々な加盟者が集まり、一つのブランドの元に運営しよう」という組織ということが見えてきます。

ボランタリーチェーンの課題と強みは

ボランタリーチェーンの課題と強みは

ボランタリーチェーンとフランチャイズチェーンを比較すると、ボランタリーチェーンの方が高い自由度に見え、魅力的に見えるかもしれません。しかし、ボランタリーチェーンに参画する場合は、「既に自社(自身)が正常に店舗運営をできている状況」でないと、ボランタリーチェーンに貢献することは難しく、良さを活かすこともしにくくなります。

一方、フランチャイズチェーンの場合、既に世間に知れ渡ったブランドや、本部が培った経営ノウハウ、商品、マニュアルなど、「事業に必要なあらゆるもの」がパッケージングされています。そのため、ゼロからビジネスを立ち上げる場合は、フランチャイズチェーンの方が適しているといえます。もしボランタリーチェーンに加入したとしても、ボランタリーチェーンの良さを活かすことが難しいかもしれません。

逆に、自社(自身)が事業を既に行っており、仕入れの改善や販路開拓、事業拡大などで課題を感じており、かつ自身の携わる業種でボランタリーチェーンが存在する場合は、ボランタリーチェーンに加盟する価値があると言えます。また、フランチャイズだと仕入れノルマや各種の厳格な規約がある一方、ボランタリーチェーンの場合は加盟店の自主性を重んじているところも強みといえます。

どのような業態でボランタリーチェーンは存在するか

ボランタリーチェーンに関しては、コンビニエンスストアなどのフランチャイズチェーンと異なり、どういう業態で多く存在するのでしょうか。一般社団法人 日本ボランタリー協会のページをもとに、ボランタリーチェーンでよくある業態と、フランチャイズでよくある業態を列挙してみましょう。

ボランタリーチェーン

  • ・食料品(スーパー)
  • ・ドラッグストア
  • ・寝具
  • ・家具
  • ・宝石
  • ・宝石、時計、メガネ
  • ・クリーニング
  • ・電化製品
  • ・文具、事務機器
  • ・自動車関連サービス
  • ・広告代理店支援
  • ・リフォーム建築業
  • ・石油関連

フランチャイズチェーン

  • ・コンビニエンスストア
  • ・学習塾
  • ・飲食、宅配、テイクアウト
  • ・介護、デイサービス
  • ・各種買取販売
  • ・エステ
  • ・便利屋、掃除サービス
  • ・スマホ修理などリペアサービス
  • ・印鑑・名刺販売

以上のようにそれぞれの業態を比べると、ボランタリーチェーンの側はいわゆる統一的なブランドが少ない一方、フランチャイズチェーンには、各業界におけるメジャーなブランドが多いことがわかります。

ボランタリーチェーンでは、当該ボランタリーチェーンの名前や、ボランタリーチェーン加盟の記述を看板などに入れつつも、一番表に出る名称は独自のものというケースが多いです。しかし、フランチャイズチェーンに関しては、「統一の名称・統一のオペレーション」で、運営会社や個人事業の名称が表に出ることは極めて少ないです。

フランチャイズチェーンとボランタリーチェーンの起源

フランチャイズとボランタリーチェーンを比較する上で、両方のシステムがどのように構築されたかを考えることはヒントになります。それぞれ「フランチャイズハンドブック」 (一般社団法人 日本フランチャイズチェーン協会 編集 発行 商業界) と「これからのボランタリーチェーン」(一般社団法人 日本ボランタリー協会)をひもとき、両社の起源を探ります。

フランチャイズチェーンの起源は、1850年代にさかのぼります。当時最新の産業であった、ミシンや農機具など、「社会的に新しい・高価・修理などのメンテナンスが必要」というハードに対して、製造する自社だけでは、販売網・資金・人的リソースなどが限られるため、地域毎に、特定の販社に対して販売権を与えるなどの方式をとりました。当時、フランチャイズやフランチャイジングという言葉こそ使われなかったものの、フランチャイズチェーンの始まりと言われています。

その後、清涼飲料水・自動車・ガソリンスタンドなどのフランチャイズも始まりましたが、主体となるのは「商品とその保守」という側面が大きくありました。20世紀に入ると、アイスクリームチェーンやファーストフードチェーンなどが、「製品だけでなく、ビジネスフォーマットごと販売しよう」という試みが始まりました。フランチャイズシステムの元祖とも言えます。

ただ、当時のフランチャイズシステムのあり方には、課題もありました。ビジネスフォーマットを販売しても、「事業の運営・実務のオペレーションなどで再現性がない」という問題が各所で発生したのです。本部としても、フランチャイズ側の問題でブランドイメージを毀損する恐れがあり、フランチャイズ側としても、適切な業務の運営ができないと、様々な問題を抱えることになります。

そこで、大手ハンバーガーチェーンなどで、本部の方でフランチャイジーに様々なトレーニングと継続的な指導を行うことにより、「フランチャイズ加盟者の長期的な成功」をもたらす工夫などを行いました。結果として本部・フランチャイズ加盟店の双方のためになる結果がもたらされ、フォーマットだけでなくオペレーション・トレーニングなど教育もフォローする仕組みにシフトしました。結果、現在のフランチャイズシステムの原型が構築されました。

それでは、ボランタリーチェーンのケースを見てみましょう。1923年、現在も続く大手化粧品会社が、街の化粧品店をボランタリーチェーンとして組織し始めました。化粧品連鎖店(チェーンストア)として、街の化粧品店を取り込み、現在もボランタリーチェーンの仕組みは続いています。

ボランタリーチェーンに注目が集まったのは、高度経済成長期からと言えます。当時、様々なチェーンストアが全国各地に進出し、地場の事業者は、いかに「オペレーション・製品・価格・ノウハウ・サービス」などの点で全国各地に進出してくるチェーンストアに対抗するか、という課題を抱えていました。

ボランタリーチェーンは、規模を問わず同一・類似の独立した事業者が、相互に協力して行く形態を取っていますが、小売主導型と卸売り(メーカー)主導型の2種類に分かれます。小売主導型はボトムアップ、卸売り主導は、フランチャイズに比べると緩やかなトップダウンと言えます。小売り主導のボランタリーチェーンは、まさにチェーンストアの進出に地元の小売店が対抗する手段として生み出されたと言えます。

ボランタリーチェーンの仕組み

ボランタリーチェーンの仕組み

それでは、ボランタリーチェーンの仕組みに関してより深く述べていきます。ボランタリーチェーンは本部・加盟店に加え、「加盟店総会」が存在します。ボランタリーチェーン本部・加盟店・加盟店総会の役割を表にします。

ボランタリーチェーン本部 加盟店 加盟店総会
商品供給 集中仕入れを行い商品の供給 商品供給に対する対価の支払い 加盟店の意見を集約し、本部に対し提言
情報集約と共有 加盟店より情報を集約 集約情報を元に加盟店にフィードバック 加盟店からの全体に対する提言を集約
業績把握・指導 各加盟店の業績の掌握や評価を踏まえ、加盟店に指導を行う 店舗の業績を正しく、積極的に本部に提供する 戦略立案や管理機能を本部に委任

上記の通り、フランチャイズと異なり、ボランタリーチェーンの場合は加盟店が横並びの立場になります。この点は事業者にとって自由度の高さを併せもつ反面、フランチャイズのように、「一歩踏み込んだ、積極的な施策」というのは取りにくい傾向があります。既に何年、何十年と業務を行っており、業として成立している法人であれば問題ありません。ただし、異業種に進出する法人や、これから会社設立・起業しようとする個人からすると、フランチャイズのように「このようにしてください」と明確な指針を示された方が、負担がありません。

ボランタリーチェーンの加入方法

ボランタリーチェーンの加入方法

ボランタリーチェーンは、組織により加入方法が異なります。日本のボランタリーチェーンの中でも最大手である、全日食チェーンの加盟プロセスを表にします。

手順 内容
加盟審査書類の提出 加盟の意志決定をしたあと、決算書・不動産登記簿謄本(全部事項証明)等、現在行っている業務に関する資料を、要請に応じ提出します
加盟申込書類の提出 加盟に向けての提出書類を作成、担当者に提出します
加盟取引条件の説明・確認 担当窓口から、加盟・取引にかかる諸条件の説明が行われます
加盟店取引契約書締結及び組合加盟申込 加盟が認可された後、加盟店取引契約書・組合加盟申込書・加盟誓約書・商標使用に関する覚書など必要書類を記入・提出します
立地・商圏調査や実態確認 加盟する事業者の出店地・もしくは出店候補地を調査し、売上予算を策定します
開店に向けての店舗打ち合わせ 本部担当者が店舗におもむき、取引開始に向け打ち合わせを行います
改装準備打ち合わせ 組織加盟に関して、店舗のリニューアル・販売設備の入れ替えやPOS機器の導入等、店舗などのハード・システム部分に関して打ちあわせを行います
事業計画の作成 収支計画・投資回収等の事業計画を策定、計画に基づいたサポートがあります
改装・設備工事 改装・設備等の打ち合わせを踏まえ、改装・設備工事を行います
商品陳列・開店準備 メーカーや本部による開店前の商品陳列作業を行います。品揃えや売値の統一、発注方法の指導などを受けます
営業開始 ボランタリーチェーン加盟店として、正式に開店・もしくはリニューアルを行います

以上のように、「既に営業している小規模スーパーなどが、業態の変革を行うために、ボランタリーチェーンに参画する」というイメージになります。

ボランタリーチェーンと中小企業庁

ボランタリーチェーンに関する各種業界団体と中小企業庁は、積極的に連携・情報交換を行っています。

各種ボランタリーチェーンに関する業界団体が窓口となり、中小企業庁に報告や要望・要請を行う一方、中小企業庁(及び管轄する経済産業省)も、小売業の支援や補助事業・金融支援・指導監督など、積極的にボランタリーチェーン・業界団体に対して関与や施策を講じています。

ちなみに、フランチャイズチェーンの場合は、業態が多く、一部トラブルなどもあることから、中小企業庁がガイドラインを定めています。一方ボランタリーチェーンの場合は、特にガイドラインは定められていません。ボランタリーチェーンは、数がフランチャイズチェーンに比して少ないため、ボランタリーチェーンに関わるトラブルが少ないということも大きいですが、併せて中小企業庁とボランタリーチェーン団体の間で、信頼関係が構築されているであろうこともうかがえます。

ボランタリーチェーンを踏まえ、フランチャイズチェーンを考える

ここまで、フランチャイズチェーンとボランタリーチェーンを対比して考えてきました。様々な要素を比較すると、ボランタリーチェーンの方が、仕入れ・経営の自由度も高く、よいのではないかという印象を持つ人もいるかもしれません。ただ、現状を鑑みると、ボランタリーチェーンよりもフランチャイズチェーンの方が圧倒的に広がっている状況があります。一見制約のあるフランチャイズチェーンが、なぜ受け入れられ、広がっているのかを当章でまとめます。

フランチャイズチェーンの優位性

フランチャイズチェーンの優位性

フランチャイズチェーンの場合は、本部主導により様々な商品開発・意志決定が行われます。時代のニーズがめまぐるしく変わる現在、加盟店の意志を吸い上げて集約、商品開発を行うよりも、フランチャイズのように本部サイドが様々な方面から情報を集め、意志決定をしていくこと方がスピード感をもって対応できます。

例えば、2020年11月現在も、新型コロナウイルスにおける、様々な業界への影響が出ています。ボランタリーチェーンの場合、業種・業態を軸にしたつながりになりますので、例えば外食産業のボランタリーチェーンの場合、手法をテイクアウトや小規模店舗に切り替えるなどの統一的な対応を即時に行うのは、少し難しいところがあります。

一方、フランチャイズチェーンであれば、集団の来客を前提とした焼き肉店→個食を中心としたステーキ店への転換、来店型店舗からテイクアウトの店舗への切り替えなど、運営事業の切り替えは容易です。また、フランチャイズチェーンであれ、ボランタリーチェーンであれ、加盟店の繁栄が本部・全体の繁栄に繋がります。フランチャイズの場合は、本部を主体としたトップダウンのため、「この業態が厳しければ、新しい業態で対応しよう」など、打ち手を切り替える事が可能です。

フランチャイズ本部を見極める重要性

フランチャイズ本部を見極める重要性

フランチャイズに関しては、「本部」の存在が重要であることは、改めて強調したいところです。この「本部」が適切に運営されているフランチャイズこそ、理想のフランチャイズと言えます。具体的にはどのような基準で考えるべきでしょうか。

「産業と会社 研究シリーズ10 フランチャイズ (今野篤氏著作 産学社)では、「優良フランチャイズ本部の6つの見分け方」を挙げています。

定義 具体例
FC理念が明確 理念が存在しない経営は、いざという時に社員やFC加盟店を路頭に迷わせてしまう。「なぜこのフランチャイズを運営するのか」「この業務の理念は何か」というベースが存在しないと、本部・社員・加盟店で団結することが難しい
加盟プランが明確 フランチャイズ加盟者のことを考えると、わかりにくい、加盟者に不利になる加盟プランの提示は問題がある。フランチャイズに限らず、様々な業態のビジネスが複雑化する中で、わかりやすいプランを明示できるかは、フランチャイズ本部の誠実性の表れでもある。フランチャイズ加盟希望者側としても、納得行くまで説明を聞き、インターネットだけでなくフランチャイズフェア・セミナーなどのリアルな場へ足を運ぶことが重要になってくる
出店計画が戦略的 フランチャイズビジネスを本部の立場から見ると、同一商圏に集中的に出店する、ドミナント展開が事業面ではうまみがある。しかし、加盟店側の立場からすると、既に加盟店が出店している地域に、直営店・フランチャイズ店が入り乱れる状況が生じると、各店舗で売り上げ・利益を共食いすることとなり、フランチャイズ加盟店は疲弊してしまう。ドミナント展開と、既存店舗の保護のバランスを適正に考えているフランチャイズ事業者こそが、加盟店思いの事業者と言える
本部のサポートが手厚い フランチャイズ自体がブランド力・店舗運営力を向上するには、スーパーバイザーなど、店舗指導を行うポジションの人材を育成することが不可欠。店舗指導の人材に関する育成体制など、店舗だけでなく、店舗を指導する体制に対し、きちんと投資をしようとしているかを見定める必要がある
差別化できるポイントがある マーケットの市場環境の変化は早く、競争も激化している。その中で、「商品」という切り口での差別化に加え、他社と違った機能やシステムによる差別化ができているかもポイント。顧客のニーズが細分化・多様化し、顧客との接点もチラシやリアル広告からWeb広告・アプリ・SNSなどタッチポイントが複数になる中、展開エリアの情報やマーケティングノウハウを有しているかは重要。また、フランチャイズの本部機能という観点でも差別化は欠かせない。フランチャイズ化されているビジネスだと、資格不要、許認可・届出不要、小資本から始められるなど、参入障壁が低いビジネスほど、得てして競争が激化する可能性をはらんでいる。その中で、同業種・隣接業種と比べ「このビジネスはどうやって他と差別化を図っているのか」という観点は欠かせない
FC本部とオーナーの交流が活発か ボランタリーチェーンも、本部と加盟店の関係性が重要と言えるが、フランチャイズチェーンにおいても同様。一方で、加盟者同士が近づくことを嫌うフランチャイズ本部の場合は、何か加盟者同士が接することを避けるそれなりの事情があるかを探った方がよい

なぜボランタリーチェーンよりフランチャイズチェーンがメジャーなのか

実情として現在メジャーなのはフランチャイズチェーンです。フランチャイズチェーンは、本部があれば組織づくりを始められる一方、ボランタリーチェーンの場合は、組織を構成する店舗が集まり、共同で組織を作り上げる必要があります。(ボランタリーチェーンの中にも、店舗の独自性を保ちつつ、フランチャイズチェーンに近い要素を持つチェーンも存在します)

シンプルにいうと、フランチャイズチェーンは「作りやすく、企業に取って都合が良い」のです。一定の成功を収めたビジネスフォーマットがあり、そのフォーマットをフランチャイズ加盟店に展開していくことで、事業の拡大を一気に図ることができます。もちろん、直営店という形で展開を図る会社も多いですが、自社展開の場合は、人材確保・進出地域の実情・地域の理解などを、企業側が探りながら進めていく必要があり、どうしてもフランチャイズ展開より時間がかかります。

一方、フランチャイズチェーンであれば、地場の多角化を望む有力企業や、これから地元で脱サラをしようとする人の力を活用しながら、スピーディーに勢力拡大ができます。企業規模が大きくなり、拡大や全国展開が望まれる事業が増える中で、フランチャイズチェーンという形式であれば、直接展開とは異なるスピード感で進めていくことができるということも大きいでしょう。

また、フランチャイズチェーンの場合、自前で人材を用意するよりも、モチベーションの高い人材を集めやすい、しかも最初は向こうからお金を払ってくれるということも言えます。フランチャイズチェーンであれば、出した利益は事業者のものになるため、やればやるほど、成果を出せば出すほど、加盟者にリターンとなって返ってきます。これが自社人材だと、人材の確保から始まり、現地調査・人材教育・社員のモチベートなど、人を直接育てる必要が出てきます。特に新型コロナウイルス発生後以降は「異動」ということがより好まれなくなっているので、異動を伴う採用となると、ハードルが非常に高くなります。

また、少しドライな考えをすると、直接の社員採用では、社員がきちんと働き、成果を出すかは不明確です。かといって、雇用して使い物にならない社員であったとしても、現在の法制度では解雇の四要件(人員整理が本当に必要であるか、 解雇を避ける努力義務を履行したか、解雇する人員を選んだ際の選定理由に合理性があるか、解雇手続が妥当であるか)が存在するので、「使えないので解雇」ということはなかなか厳しいのが現状です。

一方、フランチャイズ制度に目を向けると、フランチャイズチェーンに応募してくる人材は、「お金を払って、リスクを取ってでもビジネスに参加したい」という高い志とモチベーションを持った人材です。そのように自分からお金を払って参加する人材が、手抜きをすることは考えにくいといえます。

フランチャイズは、「動いて成果を出せば、本部と加盟店の収入になる、動かず成果を出さなければ、その加盟店の責任」ということになるので、リスク・リターンが明確です。ですので、フランチャイズに加盟する側も、相当な覚悟を持って参画します。

ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーン双方に求められる物

ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーン双方に求められる物

ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンの成り立ちはどちらも異なります。しかし、双方で要されるのが「共存共栄」の精神です。ボランタリーチェーンの場合は、本部と加盟店が双方で意見を出し合いながら、個別の店舗・ボランタリーチェーン全体の成長の双方に対し配慮する必要があります。フランチャイズチェーンの場合も、本部が加盟店に対し、積極的なサポートを行うことで、「加盟店が儲かることで、本部も儲かる」という、win-winの関係を築いていく必要があります。

また、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンともに、加盟店側には、「本部におんぶにだっことなってはいけない」ということも言えます。ボランタリーチェーンの場合は、店舗運営に自主性が求められますし、フランチャイズチェーンの場合は、成功した本部のモデルを、徹底的に再現する努力と工夫が要されます。どちらのケースでも、「本部がなんとかしてくれる」という他力本願であっては意味がないのです。

そのためには、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンの加盟店それぞれに、自主性や自助努力が求められることはいうまでもないでしょう。

チェーン加盟時に注意する点

それでは、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンを問わず、チェーンストア加盟時に注意すべき点を挙げます。

注意点 理由
安易に「儲かる」を売り文句にするチェーンには注意 どんなビジネスでも、誠実な事業者ほど「絶対に儲かる」という表現は使わない。ビジネスには不確定要素があり、絶対ということが存在する可能性は極めて低い。(逆に、絶対失敗する方法だったらあるかもしれないが・・)また、ビジネスにはタイミングや時流もあり、タピオカ・メロンパンなど一時ブームになっても、ブームが下火になったり、ビジネスの分野で法改正・法規制が入り、以前のような収益性がなくなる業種というのも出てくる可能性がある。
現在ブームになっているバナナジュースも、定着するか、一過性のものかはわからない。
このように、社会環境・ビジネス環境が変わる中で「確実に儲かるビジネスがあるということ自体、誠実性に欠けると言える
「儲かる」以外にも、様々な美辞麗句を並び立てる まず、ボランタリーチェーンでも、フランチャイズチェーンでも、ビジネスとして利益を出し、黒字になることが大前提。「社会変革ビジネス」「社会貢献型ビジネス」と銘打っていようが、事業として利益を出さなければ、永続して続けることはできない。
一見聞こえの良い言葉を並べ立てる本部であれば、「それは本心からのものか、それとも収益性など様々な弱さをカモフラージュするために、美辞麗句を並べているだけかというのは、一歩引いた目線で見る必要がある。
近年でいえば、介護関係のフランチャイズで、十分な教育もなく、本部指導が不十分でトラブルになっている事例も散見される。介護ビジネスも、一見社会貢献型ビジネスだが、きちんとしたスキル・ノウハウなしに算入し、十分な教育を受けない状態で事業を始めても、顧客に迷惑をかけたり、事業が成立する、社会に逆貢献するビジネスとなってしまう恐れもある
契約に関しては様々な角度で注意 ボランタリーチェーンでも、フランチャイズチェーンでも、契約やシステムに関しては、徹底的な確認と理解が要される。
契約やシステムがわかりにくかったり、何らかの形でカモフラージュされたものであれば、契約自体を考え直した方が良い。
契約を考える側は、得てして自社に不利な部分ほど、小さく、わかりにくくする。
どれくらいわかりにくい契約条項であっても、署名・捺印を行い契約してしまえば、後で争いになったとき、「あのときこのような契約をしましたよね」となってしまう。そのため、契約条項やシステム面でわかりにくい部分に関しては、様々な意味で注意が必要となる
人材教育の問題は避けて通れないことを留意 ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンに加入する場合でも、人材の確保は加盟者側が行うことになる。ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーン側で、一定のマナー研修・業務に対する人材教育などは行ってくれますが、人材採用・継続的な人材の教育は、加盟者側が行う必要がある。
また、大手企業とは異なり、優秀な人材を採用するということは相当厳しいのは念頭に置いた方が良い。いかに一般・もしくはそれ以下の人材で、「向上心」「人として最低限のモラル」を持ち合わせた人材を選定し、戦力にできるよう辛抱強く教育していけるかが問われる。
例えば、同じブランドのコンビニエンスストアでも、清潔であいさつや各種オペレーションがテキパキとできる店舗と、店員の私語が多く、什器にはホコリが目立ち、店舗外の清掃も不十分な店舗が存在する。
同じシステム・マニュアル・トレーニングを行っているのに、差が出てしまうということは、フランチャイズチェーン加盟事業者の社員教育のレベルの問題に帰結する。いかに、人材を継続的に、辛抱強く、そしてマンネリで怠惰になることのないよう教育していけるかが重要と言える
本部と対等に付き合っていこうというマインドがあるか ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーン問わず、それぞれのチェーンに参画する事業者は、独立した事業者である。
前にあげた、おんぶにだっこという姿勢は論外ですが、一方で何でも本部のいいなりになるのではなく、不合理な点があればきちんと話し合い、本部と対策を協議するなど、あくまで自身は独立した事業者なのだという姿勢を持つ必要がある
本部側が断定的な事項を述べていないか、また、盛った表現に「○○も可」など逃げ道をつけていないか 前の項目の「絶対」に繋がる部分もあるが、収益・利益などに関して、「1日○○万円の売り上げは確実」「月商100万円も可(月商というのは月の売上であり、実際の経費等を差し引いて手元に残る月収とは大きく異なる)」など、数字が大きく見える「月商」を強調したり、「○○も可」とすることで、ビジネスの基本的なことを知らない人から見れば、「月100万円も稼げて、手元に残るの?」と勝手に都合のよい誤解をするケースに盛っていく表記をするフランチャイズ本部は、誠実とはいい難い。
確かに嘘は言っていないとしても、誤解する人は誤解してしまうので、「そういう誇大表示を平気で行うフランチャイズ本部が、事業において誠実な付き合いができるか」というと、少し疑問を持たざるを得ない
自身がボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンの加盟にふさわしい人物か ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンに参画しても、成功する事業者・安定して経営を行う事業者と、失敗して負債を抱えて終わる事業者がいる。
成否を分ける一つのカギとして、「他責思考でない」ということが重要と言える。
「あのときこういうプランを提示されたから」「将来有望なビジネスと言われたから」「積極的に勧められたから」、「でも失敗した、あいつのせいだ、フランチャイズのせいだと、人や組織に責任転嫁をするようでは、フランチャイズなどの仕組みを使おうが、どうしようが成功は厳しい。
既に加盟した先輩経営者の話を複数聞いたり、ネット・リアルなど様々な形で事前リサーチをしたか 加盟するボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンに関して、説明会や資料だけでなく、実際に加入している経営者に話を聞いたり、実際に店舗を見に行くことも重要。やはり、本部だけの話よりも、場所・時間帯を変えて現場を視察したり、様々な形で自身が加入しようとしているボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンが適切に運営されているかを見定めることは重要。
また、本部の紹介する店舗だけでなく、他の店舗にもおもむき、飾りのない、リアルな姿に目を向けることが重要
長期にわたる契約であることを理解しているか ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンともに、契約期間が数年~十数年など長期にわたる契約が多いと推測できる。
現代において、社会環境の変化がこれだけ短い中で、数年から十数年にわたる長期契約を締結するということは、それだけ長きにわたり、加盟するビジネスと付き合っていくのだという覚悟が必要。
途中での契約解除の場合、多くのケースで多額の違約金が発生する恐れがる。
社会環境が変わり、儲からないビジネスになってしまっても、長期にわたる加盟契約を行っている以上は、続ける義務(もしくは、違約金を払い脱退)が生じる。そのため、自身が加盟しようとしているビジネスは、長期にわたる観点でも継続・繁栄できるものなのかということを、慎重に検討する必要があると言える
チェーンの社長が、過剰にメディアに露出していないか 特にフランチャイズにある傾向として、社長がメディア露出することにより、フランチャイズのアピールをする事業もたまに存在する。
しかし、メディアに取り上げられるからいい事業だ、将来性のある事業だと勝手に誤解することなく、「なぜ社長はメディアで目立とうとしているのか」「この事業に本当に将来性はあるのか」「急拡大に舵を切って、フランチャイズ加盟店などの指導がおろそかになっていないか」など、浮ついた目線ではない、事業の本質を見定めることが必要。
ある著名な外食チェーンでも、社長が一時期若き起業家としてもてはやされたが、チェーン店の経営が破綻している。
特に、フランチャイズ本部の社長自身が「セレブな生活」を見せつけている場合は注意が必要です。
フランチャイズなど加盟店との共存共栄を考える社長であれば、社長は目立たず、うまくいっている加盟店の経営者をメディアに出すなど、「フランチャイズ事業でこれだけ成果を出している人がいる」ということを強調した方が、加盟店も良いイメージをもつと言える

検討事項を列挙すると、かなりの量になります。ただ、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンに加入を検討する際は、慎重過ぎるくらいの検討を重ねることが重要と言えます。ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンともに、契約を締結すれば、後戻りをする事はできません。数年経って事業がうまく行かず、「こんなはずじゃなかった」となっても、一度捺印・契約をした以上は、契約を履行する義務を負うわけです。

日本人の習性として、どうしても契約というものをなおざりにする傾向があります。ことボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンの契約に関しては、一字一句見落としのないよう、また誤解の無いよう、しっかり説明を受けながら検討する必要があると言えましょう。確かに契約書には難しい文言が並んでいますが、わからなければ説明を求めるべきですし、説明を受けても理解できないほど難解な契約条項であれば、そこに契約の罠が潜んでいる可能性も否定できません。

それゆえに、契約に関しては、慎重に慎重を期して検討し、「これ以上精査しようがない」という段階になって初めて契約をすることが、理想と言えます。

まとめ

ここまで、ボランタリーチェーンとフランチャイズチェーンの対比も踏まえ、ボランタリーチェーンに関して説明しました。また、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーン双方における注意事項に関しても解説しました。

ボランタリーチェーンというのは、フランチャイズチェーンに比べ、聞きなじみがない言葉だという方も多いと推測します。ボランタリーチェーンが、本部を中心にした加盟店同士の緩いつながり、フランチャイズチェーンが、本部と加盟店の1対1の密なつながりを特徴とし、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーン各々の良さが存在します。

ただ、経営者になることを考える人にとっては、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンともに、あくまで手段・選択肢の一つでしかありません。それぞれの制度の特徴に留意したり、契約上の注意点に細心の注意を払うことは必要ですが、その先には「自身が経営者として、独立した経営をするなり、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンと対等な経営をするなり、それぞれの目的があるはずです。

様々な要素を踏まえて、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンの加入が自身の目指す方向と一致していれば、十分な検討をした上で加入するというのも良いですし、やはり違うと感じれば、他の手法を考える、もしくは起業・会社設立等を一旦待つ、考えるというのも一つのあり方と言えます。

問題なのは、強く薦められたからなど、外部要因を理由にボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンに加盟してしまうことです。「勧められたから」など、外部要因を理由にしている時点で、責任転嫁の芽が出始めているといわざるを得ません。あくまで自主的に考え、選択し、ボランタリーチェーン・フランチャイズチェーンに加盟するなり、他の手法を取る、それが健全なあり方です。