フランチャイズの開業・独立で利用できる助成金・支援制度とは

個人が独立開業しようとする際、商標ブランドの利用や本部のバックアップが見込めるフランチャイズは、大きな魅力を持つ選択肢の一つです。しかし、フランチャイズでの開業は、一定の開業資金を用意することに加え、開業後に経営がうまく軌道に乗るか等の不安もあります。

そのため、フランチャイズの開業資金や開業後の販路開拓などに活用できる助成金をはじめとする各種の支援制度が、フランチャイズ起業家にとって大きな手助けとなっています。

今回の記事では、フランチャイズの開業・独立で利用できる助成金や支援制度を紹介するとともに、支援制度を利用する際の注意事項を解説しています。フランチャイズで開業を考えている方やフランチャイズで事業を行っている方は、ぜひ参考にしてください。

フランチャイズの開業・独立で利用できる支援制度とは

フランチャイズの開業・独立で利用できる支援制度とは

はじめに、フランチャイズの開業・独立で利用できる支援制度にはどのようなものがあるかをみていきましょう。

補助金・助成金による支援

支援制度の中で、代表的なものが補助金や助成金です。補助金・助成金は、国や地方自治体を中心に創業しようとする事業者や創業後の事業者に資金を補助する制度です。フランチャイズの開業・独立で利用できる補助金や助成金は、①フランチャイズで起業しようとする場合に、創業費用や開業費用を補助してくれる制度、②フランチャイズで開業した後に、販路開拓や経営改善に必要な費用を補助してくれる制度の2つに大きく分けることができます。

補助金・助成金は、それぞれ目的や要件が定められているため、事前にその内容を調査し、自分の事業が受給要件を満たすことができるかを確認する必要があります。

また、補助金と助成金の違いですが、どちらも申請して国や地方自治体から金銭が交付されるシステムに変わりはありません。また、補助金と助成金ともに、支給要件が決められており、その要件に合致した申請内容になっていなければ支給されないことも同じです。

しかし、補助金は、申請期間内に要件を満たした書類を提出しても、必ず支給されるとは限りません。補助金は、あらかじめ予算上支給件数が定められている場合が多く、支給要件を満たしていても貰えない場合があり得ます。例えば、支給件数100件の補助金に対して、支給要件に適合した150件の申請が出されたとしたら、審査の結果、評価が上位の100件に補助金が支給され、評価が下位の50件には支給されないこともあるのです。

それに対し、助成金は、支給要件に適合していれば、申請者すべてが貰える可能性が高い給付制度です。どのような助成金でも、申請者の100%が貰えると断言はできませんが、予算措置の関係からは、適正に申請すればほぼ支給される場合が多いのです。

なお、補助金・助成金を受給する流れは、以下のようになります。

①申請 補助金の交付申請書を所管機関に提出します。添付書類は、補助金交付要綱に定められていますが、フランチャイズで起業する場合は、事業計画書や資金計画書などの添付が求められます。
②審査 補助金交付申請書を提出したら、所管機関において審査が行われます。審査を通過するためには、開業しようとするフランチャイズ事業が補助金の目的や要件に適合することが必要です。
③交付決定 所管機関による審査を通過したら、補助金交付決定通知書が交付されます。
④補助対象事業開始~完了 補助金が交付決定されたら、補助対象事業を開始することができます。この場合の補助対象事業は、フランチャイズ加盟店開業のための事業、または加盟店の販路開拓や経営改善事業などを指します。
⑤実績報告 補助対象事業が完了したら、実施した事業の内容を記載した事業実績報告書を所管機関に提出します。
⑥検査 提出した事業実績報告書に基づき、所管機関による補助金検査が行われます。補助金検査では、実際に実施された事業が補助金の目的や要件に適合しているか、資金が補助事業の目的外に流用されていないかなどについて調査します。仮に、実際に実施された事業が補助金の目的や要件に適合していない、資金が補助事業の目的外に流用されているなどの場合は、補助金交付決定が取り消される場合があります。
⑦交付確定 補助金検査に合格してはじめて補助金の交付が確定し、補助金交付確定通知書が交付されます。
⑧支払い 補助金の確定額が事業者の口座に支払われます。

融資制度による支援

次に、融資によりフランチャイズの開業を支援する制度があります。

融資は、日本政策金融公庫など政府系の金融機関などが中心となって行うケースが多くみられます。

政府系の金融機関などの融資制度は、銀行など一般の金融機関の融資に比べ、金利や担保の提供などの面で優遇措置が講じられています。

融資制度は、フランチャイズの開業資金や運営資金を借りるシステムであるため、補助金・助成金と違い後で返済する義務を負います。

一般的な民間金融機関の融資と異なるのは、担保を求められない融資制度があることで、担保物件を持たない起業者の助けになっています。しかし、融資制度にもそれぞれの要件が定められており、融資を受けるにはその要件を満たすことが必要です。

また、多くの場合、開業資金の全額を借り入れることは難しく、起業者が自分で一定額の自己資金を貯めておくことが求められます。

融資の流れは、概ね補助金・助成金交付の流れと同様です。

助言・指導による支援

様々な機関や団体による助言・指導は、フランチャイズの開業に向けた強い支援となっています。助言・指導による支援は、自分が加盟しようとするフランチャイズ本部からのものと、その他の機関によるものとに分けることができます。

自分が加盟しようとするフランチャイズ本部からの助言・指導は、これから事業を始めようとする業界やそこでの営業について、個別具体的なアドバイスを受けることができることから、フランチャイズ起業者にとっては非常に強力な支援となります。

一方、その他の機関からの助言・指導では、経営全般や行政手続き、税金に関する分野などについて、アドバイスを受けることができます。

利用できる補助金・助成金

フランチャイズの開業・独立で利用できる補助金・助成金

次に、利用できる支援制度のうち、補助金・助成金についてみていきましょう。

小規模事業者持続化補助金

対象者 常時使用する従業員数が
・商業・サービス業(宿泊業・娯楽業を除く)の場合 5人以下
・上記以外の業種の場合 20人以下
の小規模事業者
対象事業 小規模事業者の販路開拓等の事業
対象経費 店舗改装、広告掲載、チラシ作成など
補助額・補助率 〇上限 通常枠50万円、賃金引上げ枠200万円、卒業枠200万円、後継者支援枠200万円、創業枠200万円、インボイス枠100万円
〇補助率 2/3

小規模事業者持続化補助金は、経済産業省(中小機構)が所管する補助金です。この補助金は、小規模事業者等が自ら経営計画を策定し、商工会議所・商工会の支援を受けながら取り組む販路開拓等の取組を支援する制度です。

補助対象事業の内容により、通常枠の他に賃金引上げ枠などの特別枠が設定されており、補助上限額や補助率が異なっています。中小機構の案内では、当補助金の活用例として、以下の事業が紹介されています。

・古民家に厨房を増設し、カフェとして営業を開始。地元飲食店とのコラボメニューの開発や、地域住民の協力を得て様々なイベントを開催している。

地域再生中小企業創業助成金

対象者 ・雇用保険の適用事業主であること
・中小企業者であること
・雇用情勢の改善の動きが弱い地域(第1種または第2種)に主たる事業所があること
・設立、開業から6か月以内に地域再生事業計画の認定申請を行い、認定を受けた計画に基づき地域再生事業を行っていること など
対象事業 雇用情勢が厳しい地域における地域再生分野での創業、労働者雇入れ事業
対象経費 ○創業経費
・法人等の設立に関する事業計画作成経費
・職業能力開発経費
・設備・運営経費
補助額・補助率 創業支援金
〇上限額
第1種 創業・雇用支援対象労働者が5人以上 500万円
創業・雇用支援対象労働者が5人未満 300万円
第2種 創業・雇用支援対象労働者が5人以上 250万円
創業・雇用支援対象労働者が5人未満 150万円

〇補助率 第1種1/2、第2種1/3
創業支援金以外に、雇入れ奨励金、追加雇入れ奨励金あり

地域再生中小企業創業助成金は厚生労働省所管の補助金で、雇用情勢が厳しい地域において、地域の重点分野で創業する中小企業を支援する制度です。

〇雇用情勢の改善の動きが弱い地域

・第1種

北海道、青森県、岩手県、秋田県、高知県、長崎県、熊本県、宮崎県、鹿児島県、沖縄県

・第2種

宮城県、山形県、福島県、奈良県、和歌山県、鳥取県、島根県、愛媛県、福岡県、佐賀県、大分県

なお、支給要件である地域再生事業とは、道県等が定める地域再生分野に該当する事業をいいます。例えば、北海道では、飲食料品小売業、飲食店、社会保険・社会福祉・介護事業となっています。

子育て女性起業支援助成金

対象者 ・12歳以下の子供を持つ女性であること
・雇用保険の被保険者期間が5年以上あること
・設立1年以内に労働者を雇用すること
・設立後3か月以上事業を続けていること
・有効求人倍率が全国平均を下回る都道府県に住所があること
・起業した女性自身が出資者であり代表者であること
対象事業 創業後間もない運営事業
対象経費 会社設立後6か月以内に事業運営に要した経費
補助額・補助率 補助率 1/3

子育て女性起業支援助成金は、厚生労働省が所管する助成制度です。助成対象は、12歳以下の子供を持つ女性であることとされており、子育てのため社会から離れてブランクのある女性の起業を支援するものです。

また、有効求人倍率が全国平均を下回る都道府県に住所があること、設立1年以内に労働者を雇用することなどが資格要件になっていることから、求人が低調な地域の雇用を活性化させる狙いもあります。

IT導入補助金

対象者 中小企業者、小規模事業者
対象事業 ITツール導入事業
対象経費 ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費、ハードウェア購入費(デジタル化基盤導入枠)、サービス利用料(セキュリティ対策推進枠)
補助額・補助率 〇ソフトウェア購入費、クラウド利用料、導入関連費
・通常枠
補助額30~450万円、補助率1/2以内
・デジタル化基盤導入枠
補助額5~350万円、補助率3/4以内または2/3以内
〇ハードウェア購入費
上限10~20万円 補助率1/2以内
〇独立行政法人情報処理推進機構のサイバーセキュリティサービス利用料
5~100万円、補助率1/2以内

IT導入補助金は、中小企業庁(中小企業基盤整備機構)所管の補助金です。この補助金は、中小企業や小規模事業者がITツールを導入する経費を補助することで、業務の効率化や売上向上など経営力の強化を図ることを支援する制度です。

地方自治体による起業家向けの助成金

全国の地方自治体では、様々な創業者向けの助成金を用意していますが、ここでは代表的なものを紹介しましょう。

○ふるさと起業家応援事業(秋田県)

対象者 ・秋田県内で新たに起業する人、または起業して5年以内の人
・新たな業種に事業展開する秋田県内の中小企業者または個人
対象事業 ・地域資源を活用した事業
例えば、地域の特産品、建造物、自然、景観等を活用した事業
・地域課題の解決に資する事業
例えば、買物弱者支援、子育て支援、まちづくり推進など
対象経費 ・事業拠点開設費
施設整備費、機械装置費、備品費
・事業促進費
人材育成費、広告宣伝費、人件費、新製品・サービスの開発等に要する経費など
補助額・補助率 〇寄付額に応じた補助 補助率10/10 寄附の目標額100~200万円
ただし、事業拠点開発費は、補助率1/2以内、上限100万円の上乗せ補助がある

秋田県のふるさと起業家応援事業は、起業や新分野への事業展開に必要な経費の一部を、クラウドファンディング型ふるさと納税により集めた寄附金を使って補助する制度です。

クラウドファンディング型ふるさと納税は、ふるさと納税の使途である補助対象事業に賛同した人から寄附を募る形式のふるさと納税です。

すなわち、寄附する人は、ふるさと納税の使途である補助対象事業に賛同し応援しようとの動機から秋田県に寄附を行います。秋田県は、集まった寄附額に応じて、起業家に対し補助を行います(一部、上乗せ補助を行います)。起業家は、寄附した人に対し、お礼品として事業にかかる新商品や試供品、体験チケットなどを送ります。

○埼玉県起業支援金(埼玉県)

対象者 ・補助事業期間完了日までに個人事業の開業届出または会社等の設立を行い、その代表者であること
・埼玉県内に居住している、または補助事業期間完了日までに埼玉県内に居住予定であること
・個人事業の開業届出または会社等の設立を本事業の対象地域で行うこと
対象事業 ・地域課題の解決に資する社会的事業で、対象地域において新たに起業する事業であること
・対象地域において実施する事業であること
・令和4年4月1日以降、起業支援金の交付決定を受けた事業の事業期間完了日以前に新たに起業する事業であること
対象経費 新たな起業に要する経費
補助額・補助率 上限200万円(補助率 1/2 以内)
対象地域 秩父市、飯能市、本庄市、ときがわ町、横瀬町、皆野町、小鹿野町、東秩父村、神川町

埼玉県の起業支援金は、特定の対象地域での起業を補助の要件としています。対象地域に指定された市町村は、県西部の過疎地域であることから、この補助金は、個人の操業を支援するとともに、過疎地域の活性化を目的とする制度です。

○若手・女性リーダー応援プログラム助成事業(東京都)

対象者 ・女性、または年度末時点で39歳以下の男性
・都内の商店街で開業予定の個人
・申請時点で都内に限らず実店舗を持っていないこと
・独創的な事業プランを考え、主体的に商店街活性化に取り組む意欲のある人
対象事業 以下の対象業種を新規開業するための事業
○対象業種
卸売業、小売業、不動産業、物品賃貸業、学術研究・専門・技術サービス業、宿泊業、飲食サービス業、生活関連サービス業、娯楽業、教育・学習支援業、医療・福祉、その他サービス業
対象経費 新規開業にあたり、店舗の新装、改装、設備導入等に要する経費の一部
補助額・補助率 上限730万円
事業所整備費  400万円以内(補助率 3/4 以内)
実務研修受講費 6万円(補助率 2/3 以内)
店舗賃借料   1年目180万円、2年目144万円(補助率 3/4 以内)
対象地域 都内の商店街

東京都の若手・女性リーダー応援プログラム助成事業は、都内の商店街で開業予定の個人に対し助成するもので、若手および女性の操業を支援するとともに、地元商店街の振興を目的とする制度です。

○あいちスタートアップ創業支援事業費補助金(愛知県)

対象者 〇新たに起業する場合
・2022年4月1日~2023年1月31日までの間に、愛知県内で個人事業の開業届出を行う人、または愛知県内で株式会社等設立の登記を行い、その代表者となる人
・愛知県内に居住している、または2023年1月31日までに愛知県内に転居予定の人
〇事業承継または第二創業する場合
・付加価値の高い産業分野での地域課題の解決に資する社会的事業を事業承継または第二創業により実施すること
・2022年4月1日~2023年1月31日までの間に、愛知県内で個人事業の開業届出を行う人、または愛知県内で株式会社等設立の登記を行い、その代表者となる人
・愛知県内に居住している、または2023年1月31日までに愛知県内に転居予定の人
対象事業 新たな起業、事業承継または第二創業
補助額・補助率 上限200万円、補助率1/2以内

愛知県のあいちスタートアップ創業支援事業費補助金は、新たな起業の他、事業承継や第二創業も補助対象としています。

○さっぽろ新規創業促進補助金(北海道札幌市)

対象者 ・事業を営んでいない個人、または開業届の提出から5年を経過していない個人事業主で、2022年4月1日以降に新たに会社を設立した人
・札幌市より特定創業支援等事業の証明を受け、登録免許税を支払っていること
・札幌市内に登記上の本店所在地を置いていること
・新たに設立した会社以外に、経営に携わっている会社がないこと
など
対象事業 創業のための法人設立
対象経費 登録免許税、定款認証手数料など法人設立経費
補助額・補助率 〇株式会社設立の場合 一律17万5,000円
〇合名会社、合資会社、合同会社設立の場合 一律8万円

札幌市のさっぽろ新規創業促進補助金は、創業者や個人事業主が株式会社など法人を設立する費用を補助する制度です。創業者の他、開業から5年を経過していない個人事業主も補助対象となります。

○創業促進事業補助(大阪府茨木市)

対象者 ・新たに創業する個人または中小企業、または創業して5年を経過していない人
・申請6か月前の時点で、事業開始に必要な資金の 1/10 以上の自己資金を持っていること
対象事業 新規創業するための事業
対象経費 改築・改装工事費、テナント賃借料、法人設立に要する経費
補助額・補助率 改築・改装工事費上限50万円(補助率 1/2 )
テナント賃借料上限月額5万円(補助率 1/2 )
法人設立に要する経費上限25万円(補助率 1/2 )

大阪府茨木市の創業促進事業補助は、事業開始に必要な資金の 1/10 以上の自己資金を持っていることが要件となっています。

○創業者広報活動支援補助金(長崎県長崎市)

対象者 次の要件をすべて満たす人
・創業サポート長崎による一定の支援を受けた人
・長崎市内で創業予定、または創業して5年未満の法人または個人(個人は長崎市民であること)
・事業所のホームページをまだ作成していないこと
・ホームページや広報誌作成の発注は、長崎市に登録のある市内業者を指定すること
・市税、事業税、消費税、地方消費税を滞納していないこと
・申請年度の末日までに創業していること
対象事業 創業者の広報事業、情報発信事業
対象経費 ・事業所のホームページの新設、広報誌作成にかかる経費
・広告掲載費
・広報戦略の作成委託料
・情報発信にかかる指導・助言を受けるために依頼した専門家への謝礼金や旅費
補助額・補助率 上限20万円、補助率2/3

長崎市の創業者広報活動支援補助金は、創業者が行う広報事業や情報発信事業に的を絞って補助する制度です。補助の要件として、創業者がホームページや広報誌作成を発注する際は、長崎市に登録のある市内業者を指定することとしており、地元産業の振興も盛り込んでいます。また、補助対象は、創業予定者ばかりでなく、創業して5年未満の事業者も含まれています。

利用できる融資制度

フランチャイズの開業・独立で利用できる融資制度

次に、創業者が利用できる融資制度は数多くありますが、代表的なものとして、政府系金融機関である日本政策金融公庫が扱っている融資制度をみていきましょう。

新創業融資制度

融資対象者 新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を2期終えていない人
融資金の使途 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要な設備資金および運転資金
融資限度額 3,000万円(そのうち運転資金1,500万円)
返済期間 他の融資制度と併用のため、併用する融資制度の返済期間
担保・保証人 原則不要

新たに事業を始める人、または事業開始後税務申告を1期終えていない人については、創業時に創業資金総額の1 / 10以上の自己資金を確認できることが要件となります。また、無担保・無保証人で当融資制度を利用する場合は、日本政策金融公庫の他の融資制度と組み合わせる必要があります。

なお、年利率は、融資制度、融資金の使途、融資期間、担保の有無などにより異なってきます。また、基準利率の他に、一定の要件に該当する場合に適用される特別利率があります。

新規開業資金

融資対象者 新たに事業を始める人、または事業開始後概ね7年以内の人
融資金の使途 新たに事業を始めるため、または事業開始後に必要とする設備資金および運転資金
融資限度額 7,200万円(うち運転資金4,800万円)
返済期間 設備資金 20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金  7年以内(うち据置期間2年以内)
担保・保証人 要相談

新規開業資金は、新たに事業を始める人はかりでなく、事業開始後概ね7年以内の人も融資対象にしています。

女性・若者・シニア起業家支援資金

融資対象者 女性または35歳未満か55歳以上の人で、新たに事業を始める人または事業開始後7年以内の人
融資金の使途 設備資金および長期運転資金
融資限度額 直接貸付7億2,000万円(うち運転資金2億5,000万円)
代理貸付1億2,000万円
返済期間 設備資金 20年以内(うち据置期間2年以内)
運転資金  7年以内(うち据置期間2年以内)
担保・保証人 担保設定は要相談
直接貸付で一定の要件に該当する場合は、経営責任者の個人保証が必要

女性・若者・シニア起業家支援資金は、女性および35歳未満の若者、そして55歳以上のシニア層に的を絞って創業支援を行うのが大きな特徴です。

利用できる助言・指導

フランチャイズの開業・独立で利用できる助言・指導

次に、助言・指導についてみていきましょう。

フランチャイズ本部による助言・指導

フランチャイズ本部による助言・指導は、様々な機関・団体による助言・指導の中で、最も実践的で役に立つ支援となります。

フランチャイズ本部が加盟店オーナーに提供する開業にかかる助言・指導には、以下のものがあります。

①開業予定エリアの商圏調査内容

フランチャイズでは、傘下の店舗を展開するにあたり、緻密な商圏調査を実施しています。各エリアの人口や年齢層、客層などに基づき、出店が適しているかどうかの判断を行っているのです。加盟店オーナーが出店する場合は、事前に開業予定エリアの商圏調査の内容や既存の競合店の状況について説明を行ってくれます。

②標準的な店舗モデルの提供

フランチャイズでは、グループ傘下の加盟店の営業実績を集計・分析しています。この加盟店の営業実績から、そのフランチャイズの標準的な店舗モデルが導き出されます。例えば、

・都市部の駅近にある従業員○人程度の中規模店の月間売上額、月間必要経費、月間営業利益はそれぞれこの位見込める

・郊外の従業員○人程度の大規模店の月間売上額、月間必要経費、月間営業利益はそれぞれこの位見込める

などのモデルです。このようにフランチャイズでは、開業者に対し、この標準的な店舗モデルの情報を提供してくれます。

③開業に向けた資金計画

フランチャイズ本部では、加盟店が開業に向けた資金計画を策定する手伝いをしてくれます。加盟店が開業するために必要となる資金総額を算出し、出店者の自己資金で不足する分の手当も一緒に考えてくれます。自己資金の不足分を融資で賄う場合には、返済計画の策定にも手を貸してくれます。

④開業準備のために必要な事項や業務

多くの新規出店者は素人であることから、加盟店が開業するために何が必要で、それを解決するにはどうしたらよいかについて、ほとんど知識や知恵を持っていません。そのため、フランチャイズ本部が、開業するために必要な事項や事前にやっておかなければならない業務を洗い出し、出店者に助言・指導を行ってくれます。

例えば、白紙からの新規出店の場合は、

  1. 店舗物件の取得(購入または賃借)
  2. 店舗内・外装の改装工事
  3. 店舗用備品の取得
  4. 原材料・商品の仕入れ先選定(多くの場合、フランチャイズ本部が指定)
  5. 店舗アルバイトの採用
  6. 店舗の宣伝広告

など、事前にやっておかなければならない仕事があります。その一つひとつの仕事をこなせるように、フランチャイズ本部がバックアップを行ってくれます。

⑤開業までのタイムスケジュール

開店予定日までに、上記の開業に向けた準備業務を全て終わらせるため、フランチャイズ本部がタイムスケジュールを作り、管理してくれます。

また、開業後の営業に関する助言・指導には、次のものがあります。

①業務推進マニュアルの提供・説明

フランチャイズ本部には、加盟店が営業を行うための業務マニュアルが用意されており、出店者に提供・説明してくれます。

②加盟店営業のための研修

フランチャイズ本部は、加盟店のオーナーが店長として営業を行えるよう、開業前・後を通じて実地研修を行ってくれます。

③加盟店経営のポイントなど経営ノウハウの提供

フランチャイズ店舗の経営には、重要なポイントがあります。フランチャイズ本部は、それらの経営ノウハウを提供してくれます。

④加盟店の営業で問題やトラブルが生じた場合の助言・指導

開業後に加盟店の営業で問題やトラブルが生じた場合、フランチャイズ本部の専門スタッフが解決のための助言・指導を行ってくれます。

商工会議所・商工会による助言・指導

商工会議所・商工会では、各地域の事業者に対する各種指導や情報提供などを行っています。その一環として、各分野の専門家が、起業しようとする人に対し様々な相談に応じ、実務的な指導も行っています。

例えば、①会社設立の方法や登記手続き、②事業を行う場合の会計処理や税務申告の方法、③国や地方自治体の創業支援にかかる助成金の情報、④従業員を雇用する場合の労働法規や雇用保険の適用に関する注意事項などについて指導を受けることができます。

税務署による助言・指導

税務署では、開業届の提出方法など開業時の手続きについて、問い合わせれば指導を行ってくれます。また、事業者向けに記帳説明会を開催し、青色申告用に用意すべき台帳やその記帳方法などについて説明を行ってくれます。さらに、税金や確定申告について、様々な疑問に答えてくれます。

地方自治体による助言・指導

近年、各地方自治体では、起業・創業しようとする方達のバックアップに力を入れています。例えば、都道府県や市町村では、産業担当の部署に起業家への相談コーナーを設けている場合や創業・ベンチャー支援センターなどの機関を設置しているケースがあります。

起業家への相談コーナーでは、起業するにあたり受けられる支援の内容や開業資金の準備方法などについて相談を受けることができます。また、創業・ベンチャー支援センターなどでは、起業家向けのセミナーや講演会、起業家を集めた情報交換会などが開催されたりします。

支援制度を利用する際の注意事項

フランチャイズの開業・独立で支援制度を利用する際の注意事項

次に、支援制度を利用する際に、どのような点に注意すればよいかをみていきましょう。

補助金・助成金は、事業が目的や要件に適合することが必要

補助金・助成金を受けるには、事業が補助金の目的や交付要件に適合することが必要です。

国や地方自治体が所管する補助金や助成金には、その交付の目的があります。フランチャイズの開業で利用できる補助金であれば、起業家支援や小規模事業者支援などの目的が謳われているのです。その補助金の交付目的に適合していなければ、いくら書類を用意して申請しても無駄な作業になってしまいます。

また、補助金・助成金には、その交付要綱に支給のための要件が定められています。これは、交付対象者の資格や補助対象事業となるための要件などですが、補助金を受けようとする場合は、自分が行おうとしている事業が、補助金の要件に適合しているかについて、事前にしっかりと確認することが大切です。

補助金・助成金は、事業が事業計画に沿うことが必要

補助金・助成金の交付を受ける場合は、補助対象事業が事業計画から逸脱していないことが必要です。

補助金・助成金は、申請の段階で事業計画を提出し、審査を受けます。国や地方自治体は、提出された事業計画書や仕様書を審査し、交付できるかどうかを審査するのです。このため、実際の補助対象事業の内容が、提出済みの事業計画書と違っていては、適正な補助対象事業とみなされず、交付決定を取り消されてしまう事態も生じます。

例えば、フランチャイズで飲食店を始めるために補助金を申請したとします。事前に提出した事業計画書や仕様書では、①新しい厨房設備一式や調理器具の購入、②店舗内にカウンターを設置するための改装工事が計上されており、その内容で審査を合格し、補助金の交付決定を受けました。

しかし、その後の検討で、新しい厨房設備一式の費用が高いことから中古の安いものに変更し、また、カウンター工事も費用がかかるため、当初は設置しないことに決め、浮いた費用は開業後の運転資金に回そうとしました。

このように、当初の事業計画を勝手に変更して補助対象事業を行うと、事業終了後の実績報告の内容が提出済みの事業計画書と食い違うことになります。この場合、交付決定された補助金額は、新品の厨房設備一式購入とカウンター工事施工に応じた金額です。このため、事業経費をカットして浮いた差額分の補助金を開業後の運転資金に回すことは許されず、少なくともその金額は交付決定を取り消されることになります。

また、当初から変更後の事業内容で申請していた場合、補助金の審査が合格したかどうかという問題も生じてきます。本来は、交付決定後にやむなく事業内容を変更せざるを得ない場合は、補助金の所管機関に連絡して再度審査してもらい、それでも合格の場合は交付額の変更決定を受ける必要があるのです。

補助金・助成金は、清算払いと概算払いがある

補助金・助成金には、清算払いと概算払いがあります。「1-1 補助金・助成金による支援」で説明した受給の流れは以下のとおりでしたが、これは清算払いの流れになります。

  1.  申請
  2.  審査
  3.  交付決定
  4.  補助対象事業開始~完了
  5.  実績報告
  6.  検査
  7.  交付確定
  8.  支払い

清算払いの補助金・助成金は、補助対象事業が完了した後で支給されます。つまり、補助対象事業に要する経費は自分で立て替えて支払い、その後に補助金が支給されるのです。このことから、注意すべきは、補助対象事業を行うための資金は、あらかじめ自分で用意しておく必要があるということです。「補助金が支給されるから、自己資金は用意する必要はない」などと考えていると、事業の途中で支払い不能に陥ってしまう危険があります。

これに対し、概算払いの補助金・助成金は、補助対象事業の完了前に支給されます。概算払いの補助金・助成金は、審査に合格して交付決定がされた段階で口座に払い込まれるため、補助対象事業に要する経費は、払い込まれた補助金を使うことができます。

なお、どのような補助金・助成金が概算払いなのかは、補助金・助成金の応募要領や交付要綱で確認するしかありません。

補助金・助成金は、帳簿や書類を整備しておく

補助金や助成金の交付を受けた場合は、帳簿や書類を整備しておくことが肝心です。この帳簿や書類は、補助金の一連の交付事務が終わった後も保管しておく必要があります。国が補助金を交付した場合には、後で会計検査院による検査の対象になります。また、地方自治体の補助事業も、監査を受けることになります。

会計検査や監査の対象になると、補助対象事業にかかる収支一覧や現金出納簿、契約書などがチェックされることになります。この場合に、実際の現金の出し入れが、現金出納簿と適合していることを証明するため、預金通帳も検査されます。また、補助対象事業で工事代金や備品購入代金を支払った場合は、証拠書類として請求書や領収書も提出することになります。

このため、補助金交付にかかる帳簿類や証拠書類は、きちんと整合性がとれる形に整備し、保管しておく必要があります。

融資制度を利用する場合でも、一定の自己資金が必要

フランチャイズで開業する場合に、開業資金の不足分を融資で賄う場合があります。融資制度は、貸付金額が大きいものもあり、事業を始めようとする人にとっては強力な支援となるものですが、どの金融機関でも、融資を受けるには審査を通らなければなりません。

金融機関は、対象者の社会的な信用、事業計画の妥当性や将来性、事業の損益見込みや返済の可能性などを審査して、融資しても大丈夫かどうかを決めます。フランチャイズで起業しようとする人の多くは、まだ社会的な信用が高くないことから、事業計画の妥当性や返済可能性を前面に出して売り込んでいくことになります。

したがって、必然的に、返済見込みが立たないような過大な融資希望額では、審査を通過できないことになります。この場合、過大な融資希望額にならないようにするには、ある程度を自己資金で賄って、不足分を借りるという形にせざるを得ません。自己資金ゼロで開業資金全額を借りてやっていこうとすると、現実的に無理がある上に、金融機関も簡単には応じてくれないでしょう。

融資制度を利用する場合は、返済負担に注意が必要

融資制度を利用した場合は、開業後に毎月利益の中からローンを返済していく必要があります。店舗の経営が順調で利益が上がっていれば、借入金もスムーズに返済していくことができます。しかし、実際の事業では、営業不振で利益が出ない時期があることも想定しておかなければならず、そのような観点からみると、毎月多額の返済を設定するのは危険が大き過ぎます。

借入金の返済額は、借入総額、金利、返済期間の3要素で決まります。このことから、借入総額を低く抑える工夫をするとともに、実際に借り入れる前に、金利や返済期間がどの程度なら無理なく返していけるかについて、シミュレーションを行っておくことが大切です。

フランチャイズにより、助言・指導の内容は異なる

既に説明したように、フランチャイズで開業する場合は、フランチャイズ本部のバックアップが非常に心強い支援となります。しかし、フランチャイズによって、開業者へのバックアップや助言・指導の内容、程度は異なります。

どのフランチャイズでも、傘下の加盟店を増やし、グループ全体の売上げや利益を伸ばしていくことを基本的な戦略としています。このため、加盟店に対する支援は、それなりに力を入れているはずですが、フランチャイズ同士を比較すると、差が生じてしまう分野でもあります。

開業者や加盟店へのバックアップに注力し、きめ細かな助言・指導を行ってくれるフランチャイズがある一方で、あまり充実したバックアップ体制を持たず、通り一遍の支援しか行ってくれないフランチャイズがあるのも事実です。

このため、フランチャイズだから大丈夫と安易に考えるのではなく、加盟するフランチャイズを選定する段階から、強力なバックアップ体制があるかどうか、本部からの助言・指導の内容や水準は満足できるレベルかどうかについて、十分に調査・把握することが重要です。

まとめ

フランチャイズの開業・独立の際の支援制度

フランチャイズの開業・独立で利用できる支援制度としては、大きく分けて①補助金・助成金による支援、②融資制度による支援、③助言・指導による支援があります。

①補助金・助成金による支援は、国または地方自治体が所管する補助・助成制度です。

これらの補助・助成制度は、㋐フランチャイズで創業する際に、開業費用を補助してくれる、㋑フランチャイズで創業した後に、販路開拓や経営改善に要する費用を補助してくれるの2種類があります。

通常、㋐の開業費用にばかり目が行きがちですが、㋑開業後の支援も非常に重要です。その点で、補助対象に「開業後〇年以内の人」も含む補助・助成制度が意外に多くあり、上手な活用が望まれます。

補助金・助成金は、創業者の事業が補助金の目的や要件に適合し、申請時に提出した事業計画に沿っていることが必要で、補助を受けた後も関係帳簿や書類を整備しておくことが肝心です。

②融資制度による支援は、日本政策金融公庫所管の融資制度が代表的ですが、融資制度を利用する場合でも、一定の自己資金の用意や後の返済負担に注意が必要です。

③助言・指導による支援で、最も重要なのがフランチャイズ本部のバックアップです。一般的に、フランチャイズ本部は、加盟店に対し、助言・指導をはじめとする様々な支援を行ってくれますが、その内容や程度はフランチャイズによって異なります。バックアップ体制が充実しているフランチャイズとそうでないフランチャイズがあることに留意する必要があります。

フランチャイズの開業では、①開業資金をクリアすることが第一の関門、②開業後に経営を軌道に乗せることが第二の関門と認識し、それらの目標に応じて、各種の支援を上手に活用していくことが重要です。