フランチャイズと自営業、どっちの方がリスク高い?それぞれの違い、メリット・デメリットを解説!
2022年度版中小企業白書・小規模事業白書によれば、コロナ以降の企業経営の難しさが浮き彫りになっています。新型コロナウィルス感染症の企業活動への影響は、73.8%の企業が未だ影響があると回答しています。
先行きが不透明で見通しがつきにくい状況下でも、事業者は事業の継続を考えなければいけません。これから起業を検討する方も、見通しがつきにくい中でいかにリスクを最小化して事業を継続させるかを考える必要があります。
事業のリスクを考える上で、フランチャイズの仕組みを利用して起業をすることは有効です。フランチャイズでの起業はリスクを抑えることができます。しかし、フランチャイズを利用するということは自身の独力で自営することと比較すると制限も多くなります。
そこで今回の記事は、自身で全ての事業内容や運営方法を決めていく自営業とフランチャイズを比較した場合にどちらがリスクを抑えられるか、また両者の違いやメリットを解説するので、参考にしてみてください。
目次
自営業とフランチャイズ
先行きが不透明な時代で、サラリーマンをこのまま続けても大丈夫か、そんな不安を抱える人は少なくありません。
勤める会社の倒産への不安や、残業時間禁止や賞与の減額による収入の減少など、企業に務める会社員には不安の種が尽きません。また、人員の削減などによって一人当たりの仕事量やストレスが増えて、仕事に束縛されている感情をもつ会社員もいます。
このような時に、会社務めへの不安の解消や会社に勤めることへのストレスを回避するために、自分で事業を行うことを意思決定・検討する方は多くいます。
自分で会社や事業を行う場合に、経営方法を2つに分けるとすると自営業とフランチャイズでわけることができます。
この2つは同じ起業であった場合でも、リスクが異なってきます。そのため、それぞれの特徴を抑えた上で、自身にあった起業を選択する必要があります。
自営業とは
自営業とは、自身で事業を経営することを言います。そして、自営業には、広義と狭義の2つの意味があります。
広義では、個人事業主や法人を含めて『自ら事業を行う人』を言います。一方で、狭義では法人を除いた個人事業主を言います。
申込書の記載などの職業欄には、自営業と会社経営のそれぞれの選択肢がある場合も多くあります。このような場合の自営業は、狭義の意味で利用されています。
●法人とは
法人は、法律上で人格が認められている組織を言います。法人格には、株式会社や合資会社や社団法人などがあります。
法人が認められている人格が『法人格』です。法人格があることで、人と同じく権利や義務の主体となれます。法人は自ら契約を締結することができます。法人として契約することで、その法人の規模に応じた権利や義務の履行範囲の契約を行えます。
仮に法人格がない場合には、組織としての契約ができずに個人として契約を締結しなければならなりません。法人で契約ができるということは、社長や会長の個人として負える責任範囲を大きく超えた責任を負うことが可能です。
そのため、法人の事業規模が大きくなるにつれ、法人との契約の必要性が高くなることになります。法人の事業規模が大きくなると一般的には財務状況も良化していき、社会的信用も高くなっていきます。
●個人事業主とは
個人事業主は、法人格をもたず個人として事業を行う人を言います。
個人事業主は、屋号名と言われる店舗やサービスの名称で事業を行います。しかし、名称の前後に「株式会社~」や「合資会社~」などの法人格の種類を示す商号を利用することはできません。
個人事業主は個人で契約を締結しなければなりません。そのため、契約を締結する場合には、法人の代表などと異なり、全ての責任を個人として負うことになります。
●フリーランスとは
フリーランスは、会社や団体に所属しない、仕事単位で契約を行う働き方を言います。このような説明になると、個人事業主とフリーランスの違いが分からなくなる人もいます。
個人事業主は事業者の主体を示していて、税務上の所得区分になります。一方で、会社や団体とは雇用契約を締結することなく、仕事の単位で契約・業務を行う”働き方”を言います。
ITの進化や企業による副業の促進によって、副業としてフリーランスの働き方を選択する人が増えています。2021年10月時点で1577万人ものフリーランスがおり、約23.8兆円の経済規模があると言われています*。
*ランサーズ株式会社『新・フリーランス実態調査 2021-2022年版』より
フランチャイズとは
フランチャイズは、フランチャイズビジネス全体を管理・運営する『本部』(フランチャイザー)と契約した『加盟店』(フランチャイジー)が行う事業を言います。
フランチャイズの代表的存在はコンビニエンスストアです。セブンイレブン、ローソン、ファミリーマートなどコンビニエンスストアの店舗は2022年4月時点で55,922店舗*あります。その大半がフランチャイズ店舗となります。
フランチャイズ業種は、その他に以下に挙げた業種もあります。
- ・飲食(ファミリーレストランやファストフードなど)
- ・サービス(学習塾、ハウスクリーニングなど)
- ・理美容(美容院や理容院、エステサロンなど)
- ・その他(結婚情報サービスなど)
上記以外でも幅広い業種でフランチャイズは行われています。
*一般社団法人日本フランチャイズ協会『コンビニエンスストア統計調査月報』より
●フランチャイズの仕組み
『自身で起業したい』『事業運営や会社経営をしたい』という考えを実行するために必要なのは、ノウハウです。必要となるノウハウは、経営と事業=商売のノウハウです。
経営は、事業を成功させるための組織や資金の管理や運用になります。事業とは、お客さまに提供する商品やサービスで売上や利益を上げていくための運用などを言います。
これらのノウハウがないと、起業することができない、あるいは起業はできたとしても上手く利益を出していけるのかリスクが残ってしまいます。
このリスクを少しでも減らしていく仕組みの一つが、フランチャイズです。フランチャイズであれば、売上や利益を上げていく上で必要となる事業のノウハウ提供を受けられます。
この事業ノウハウを受けることで、未経験の業界や業種にも挑戦できます。
✓未経験の業界や業種への挑戦
未経験の業界や業種で起業することはリスクが高いように感じる方もいます。未経験の業界や業種でも将来において成長が見込まれる市場の場合には、経験があって縮小している業界や業種を選ぶよりリスクを低くできます。
日本では、少子高齢化が進んでおり、今後より一層市場が縮小されることが予想されています。そのため、事業の継続を10年から20年先を考えるならば、市場選びがより一層重要になっています。
経験やノウハウがあったとしても縮小市場を選択すると、お客様が減少していく中で生き残りと競合他社との顧客の奪い合いなどによって十分な利益を得ることが難しい局面を迎えるリスクがあります。
一方で、自力で起業する場合に未経験の業界や業種へ挑戦すると、何をすればよいのか分からないため、事業を軌道に乗せるまでに多くの時間が必要です。
フランチャイズであれば事業を行う上で必要なものは全て提供を受けられるため、事業ノウハウの有無を気にすることなく市場選択ができます。
●フランチャイズでできること
フランチャイズ本部と契約して受けられる事業のノウハウには、以下のようなものがあります。
①仕入れ | お客様に販売する商品やサービスに必要なものをフランチャイズ本部が仕入れします。 |
---|---|
②商品開発 | お客様や市場の変化に対応して、新商品や既存商品のリニューアルなどの商品開発をフランチャイズ本部が実施します |
③ブランディング | 商号(店舗名称)や商品名を広くかつ持ってもらいたいイメージの通りに認知してもらうために行うブランディングをフランチャイズ本部が実施します。 |
④集客 | 新規店舗開業の立地条件やWebや広告など顧客獲得のために行う広告ノウハウをフランチャイズ本部が提供します。 |
⑤スタッフ研修 | お客様への販売やサービス提供に必要なスタッフ育成をフランチャイズ本部が研修やマニュアルを提供します。 |
⑥システム開発 | POSレジなどの情報収集のためのITツールや生産性向上のためのツールの開発・導入をフランチャイズ本部が主導します。 |
⑦店舗運営 | 来店したお客様が満足できるための店舗運営ノウハウをフランチャイズ本部が提供します。 |
●フランチャイズも実は自営業
フランチャイズ加盟店は、フランチャイズ本部から様々なノウハウの提供を受けて、事業を実施します。そのノウハウの提供を受ける対価として、加盟店は本部に対してロイヤリティを支払います。
フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店は別の事業者で、それぞれが別経営になります。
そのため、前述した広義の意味での自営業=自ら経営するという点では、フランチャイズ本部もフランチャイズ加盟店も自営業と言えます。
自営の実態とリスクを知っておく
自営は、自分の好きな働き方ができます。取り扱う商品やサービスや営業時間、経営方針や採用するスタッフなど全て自身の考えで選択できます。事業のすべては自己責任となるので、サラリーマンなどの会社に雇われているのとは同じ働くことでもやりがいも成果も大きく変わってきます。
●起業の実態
会社を起業することは簡単です。必要な資金と事務手続きをすることで、起業できます。難しいのは、会社を存続することです。
2017年度の中小企業白書の『中小企業のライフサイクル』によると、企業存続率は起業から1年後に95.3%、5年後に81.7%まで減少します。この企業存続率は、5年経過時点で5社に1社が倒産や廃業していることを示しています。
新型コロナウィルス感染やロシアウクライナ戦争による原油やエネルギー資源の高騰など経済環境が今まで以上に変化が大きく不透明な局面での起業はよりリスクが高いと言えます。
●自営のリスクとは
自営や起業には、リスクがあります。責任範囲が勤めている時と比較して大きくなります。
しかし、社会的に知名度の高い企業も倒産する時代であり、会社員であることにもリスクはあります。また、会社に勤めていることで発生する望まない異動や上司や部下との人間関係のストレスによる体調を壊して働くことができなくなるリスクです。
リスクがあるからやらないという判断もありますが、リスクより大きな見返りが望めるならばリスクをとる判断もあります。リスクを明確にして、対策が講じられるのであればリスクを必要以上に警戒する必要はありません。
事業の失敗などにつながるリスクは、不足のリスクになります。分かっているリスクは、事前に対応をとることができるためリスク回避に成功するかリスク回避はできなかったとしても影響を最小化するなどの手を打てます。
自営業の最大のリスクは、自己資金を失うことにあります。金融機関等の融資などの借入において代表個人の連帯保証に入っている場合などを除けば、事業に失敗したとしても自己資金以上に失うものはありません。
自営業を行う上での資金は、行う事業にもよりますが1,000万円前後は必要となります。この起業時点で必要となる自己資金を失うリスクを許容し、一定の自己資金以上は再度投入しないなどと決めておくことでリスクを制限できます。
また、事業を行っていく中で収益が得られないと、代表者の収入も入ってきません。起業する前までは、会社員をしていた場合には給与として毎月収入があります。
しかし、起業すると1から売上を作らなければなりません。売上があっても経費を上回らなければ赤字となって、逆に支払をしなければなりません。
法人や事業主となっても収入を得られなければ、働き方の自由は手にできても経済的な不自由に直面してしまいます。
●自営業のリスク原因
自営業が上手くいかない原因は、事業計画どおりに実際の事業が進まない点に起因します。事業計画は、事業運営を具体的な行動に移す為の行動計画書になります。事業計画を立てることで、事業運営に必要な資金を確認できます。
例えば、月間の売上100万円の収益を得るための原価や人件費や店舗家賃などの販売管理費を計画します。売上と原価と販売管理費が決まれば、粗利や営業利益が計算できます。
ここで、重要なのは販売管理費の多くは固定費と言われる売上の増減にかかわらず一定に発生する費用が多い点です。例えば、店舗を借りて正社員を採用すると売上が全くなかったとしても店舗のテナント料や正社員の給与は支払わなければなりません。
そのため、収入がなく費用の支払が続くと現金が無くなり資金不足による事業継続ができなくなります。
このように収入より支出や費用が多い経営状態を、赤字経営と言います。いったん赤字経営に陥ると、そこから復活する事は簡単ではありません。
赤字経営に陥ると賞与や昇給などの給料を高く支払うことができず、優秀な人材を確保・維持することが難しくなります。会社に残るスタッフのモチベーションも下がり、成果が下がる要因になります。また、広告・宣伝や事業転換など費用が先行する投資がやりにくくなるなどの戦略の自由度が下がります。
結果的に、赤字経営の中では人材の確保やモチベーションの維持が難しく、実施できる戦略の選択肢が限定されるため、赤字の原因を取り除くどころかより赤字の幅が広がっていく負のスパイラルに陥るリスクがあります。
そのため、事業計画を策定する上で重要なのは現実的な売上をもとに計画を立てることです。売上が計画通りに入ってくる状態であれば、概ねそこからの事業計画がずれることはありません。また、あったとしても修正可能な範囲のずれになります。
『現実的な売上をもとに』というのは言うのは簡単ですが、実際に現実的な売り上げを起業時点で把握しておくことは簡単ではありません。誰しも起業時点では、自らの起業の成功を信じています。信じていないのであれば、自己資本を投入して安定的な給与を捨てて起業するリスクは取りません。
しかし、どれだけその自信が現実的な根拠に基づいているのか、ということを検証する必要があります。この検証を最も簡単でかつ間違わずに実施するためには、複数の同業他社の平均などを活用することです。
同業他社の正確な情報を持っている企業は非常に少ないのですが、フランチャイズ本部であればその情報を持っています。自身のフランチャイズ加盟店の売上を把握しているからです。
このように、フランチャイズを利用しての起業において同業の収益性や売り上げ規模などを正確に把握しているフランチャイズ本部の協力を得られるのは、正確で現実的な事業計画を策定する上で非常に有効です。
フランチャイズでの起業のメリットと自営との違い
フランチャイズ加盟店となって起業することは、起業のノウハウがない人にとってはメリットが多くなっています。
前述のとおり、フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店には資本関係などはなく、別々の経営になります。また、フランチャイズ加盟店になると、ロイヤリティという費用負担が必要です。
ロイヤリティを払ってもやる価値があるフランチャイズでなければ、フランチャイズ本部は継続できません。フランチャイズ加盟店が支払うロイヤリティがフランチャイズ本部の主たる収入になるからです。
そのため、フランチャイズ本部はフランチャイズ加盟店が増えるように、加盟店が満足する経営ができるようにフランチャイズ事業を成長・改善し続けています。
メリット1:ビジネスモデルや運営・システムを全て活用できる
フランチャイズ加盟店になるということは、フランチャイズ本部が持つビジネスモデルや運用・システムなどの事業を行う上での核となる強みを活用できるということです。
フランチャイズの代表格である、コンビニエンスストアの3大大手のセブンイレブンやローソンやファミリーマートと同じだけの知名度やブランディングを築こうとすることは新規の起業では限りなく不可能に近いと言えます。
しかし、フランチャイズ加盟店として起業すれば、そのコンビニエンスストアの大手の看板やブランディングを活用して店舗運営ができます。
●今、売れているモデルを活用できる
フランチャイズはノウハウを提供するため、フランチャイズ加盟店になろうとする事業者の経験を問わないフランチャイズ本部が大半です。
そのため、今売れているフランチャイズサービスや商品に参画できます。また、看板や商標もそのまま利用できるため、勢いのあるサービスや商品そのものを使って事業ができるため、成功確率が高まります。
前述のとおり、売上をたてることが起業時には簡単ではありません。売れていない商品を売れるようにすることは知恵と努力が必要です。この企業努力は、実る場合も実らない場合もあります。
フランチャイズでは売れているサービスや商品を活用できます。そのため、1から商品開発やマーケティングを実施しなくてすむ点は大きなメリット/span>です。
●経営全体のサポートを受けられる
経営はやることが多く、始めの1年は四苦八苦する経営者が大半です。そんな経営者や事業者を支援する点もフランチャイズのメリットです。
監督官庁や行政への届出や申請のサポートや、経理や税金関連についても業務代行サービスなどを提供するフランチャイズ本部もあります。
フランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店は別経営であると前述しましたが、一方で運命共同体という面もあります。フランチャイズ本部はフランチャイズ加盟店を増やすことで収益の増加ができ、また規模の利益を享受しコストなどを下げることも可能です。
また、儲かっている加盟店や上手くいっている加盟店が多くなれば、フランチャイズ自体の評判が高まって新しい加盟店探しのハードルが低くなります。
逆に、フランチャイズ加盟店が儲かっていない・上手くいっていないなどのマイナスの評判がたつと新しいフランチャイズ加盟店探しや既存フランチャイズ加盟店の継続率が下がる結果となり、フランチャイズ本部の経営も悪化する要因になります。
また、フランチャイズ加盟店1社の不祥事が他の加盟店やフランチャイズ事業全体のイメージを損ねる危険性もあります。
これらのことから、フランチャイズ本部はフランチャイズ加盟店の経営を支援するサービスも充実しているケースも多くあります。
メリット2:安定した経営ができる
経営は、成長を持続することが重要です。成長し続けることで、経営が安定するためです。
衰退している状況では、経営が不安定なのはもちろんです。成長が横ばいの状態も経営が安定しているとは言えません。
なぜならば、成長が横ばいの状況では人件費などの費用を増やすことができないからです。人件費が増やせないということは、従業員の昇給や賞与の増加ができず、年収がある一定のところで止まってしまいます。
従業員のモチベーションの要素は複数ありますが、昇給や賞与などの年収の増加もモチベーションの一要素です。従業員のモチベーションが上がっていかない状況では、安定した経営は望めません。
また、人口の少子高齢化によって消費者自体が減少している中で、現状維持で良いという態度では、市場の急激な変化や競合他社の参入に対応が遅れて危機的な状況になりえるリスクがあります。
従業員が一人もいない個人事業主であれば望んだ収入に到達した時点からそれ以上の収入を望まずに横這いの成長でも問題ないように思いますが、従業員がいる状態での経営では横這いの成長は安定しているようで不安定な状態と言えます。
フランチャイズ事業では、成長に欠かせない商品開発が継続される仕組みがあり、かつ成長を真似しやすい環境があるため、加盟店にとって成長しやすい環境になっています。
●商品開発やマーケティングはフランチャイズ本部が実施してくれる
成長を維持するためには、市場の変化に対応する必要があります。市場の変化に適用するために行うべきは、商品開発やマーケティングになります。
フランチャイズにおいては商品開発やマーケティングはフランチャイズ本部の役割になります。自力で事業を行う事と比較すると大きなメリットになります。
商品開発やマーケティングは、専門の知識が必要であり、専門スキルを持つ人材を採用しようとするとコストが大きくかかります。
しかし、フランチャイズでは商品開発やマーケティングのコストは、加盟店が支払するロイヤリティに含まれています。つまり、複数の加盟店が分散してこれらのコストを負担しあう仕組みになっています。
●真似ができる
事業を成功させたい時に、成功している同業他社を真似るのは重要な要素です。真似る為には、成功している相手の事業と自身の事業の差を見付けて、その差を自社の事業に取り込むことです。
同じフランチャイズ本部の加盟店は、売っている商品やサービスやマニュアルは同じです。しかし、上手くいく加盟店とそうではない加盟店に差が生まれます。
同じフランチャイズ加盟店を真似るのは、比較的簡単です。同じ商品やサービスになるので、成功している差も大きくは変わりません。
自身で成功しているフランチャイズ加盟店の研究もできますが、フランチャイズ本部にはスーパーバイザーなどの加盟店をサポートするスタッフがいます。スーパーバイザーは、複数の加盟店を担当し、加盟店への指導や相談に対応します。
このスーパーバイザーは、成功しているフランチャイズ加盟店を最もよく知っています。スーパーバイザーから情報を吸収することで成功店舗の真似ができます。
デメリット:自営なら、自分で方向性を決定できる
独力の自営業では、自身で制約なく事業の方向性を決定できます。例えば、営業時間です。
基本的には、フランチャイズでは同じサービスを受けられる前提があります。そのため、営業時間はどの地域でも同一になります。しかし、時間帯別で見ていくと収益が見込めない時間帯も発生します。
フランチャイズでは、店舗ごとの判断ではなく全体の利益やブランディングも考慮して決定しなければなりません。そのため、本部と加盟店の双方の合意がなければ変更できません。
自営業であれば、収益が見込めない時間帯は営業をしないという判断が1社で意思決定できます。
●自営業は選択肢が多い
自営業は全て自己責任になるので、責任を取れる範囲で法律や公序良俗に反しない限り全ての選択肢を活用できます。
そのため、経営ノウハウと事業ノウハウを持っている法人などは選択肢に制限をかけないためにフランチャイズ加盟店にならない選択を選ぶこともあります。
●中小企業は選択のスピードが速い
自営業は自身で意思決定するため、意思決定を早く行えます。フランチャイズでは、本部の確認が必須であるため、本部への説明と本部での検討が必要になります。
変化が激しい時代に対応するためには、適切な対応を素早く行える事業者が生き残っていくと言われています。
特に中小企業の多くは、飲食店や理美容など開業資金が比較的少なく比較的売上もあげられやすい経営が難しくない分野に集中しています。そのため、競合他社が多い環境で事業を行うことになります。
この環境下では適切な対応ができなければ他社に顧客を奪われて、2番手3番手などのマイナスイメージが定着しかねません。
そのため、常に変化適応のための適切で素早い対応を実施する必要があります。
フランチャイズの起業で成功のポイント
フランチャイズでの起業を成功させるために必ず抑えなければならないのがフランチャイズ選びです。フランチャイズ選びは、以下の項目に代表される重要事項を決めることになります。
- 取扱商品やサービス
- 必要資金
- 事業期間
- ビジネスパートナー
①取扱商品やサービス
フランチャイズ本部を選ぶと、取扱商品やサービスが決まります。一般的な経営では、取扱商品やサービスは一定程度豊富であることが必要です。しかし、フランチャイズ本部と提携すると、本部の許可を受けた商品以外は取り扱えません。
②必要資金
フランチャイズ契約の締結時の加盟金や、契約締結時のロイヤリティなどの金額が固定で発生します。
また、運用方法の詳細が定められていることも多いため、大枠で事業に必要な資金が決まっていきます。
一方で、独力の自営業であれば、創意と工夫でできるコスト削減の幅が広くなります。活用できる資金に応じて店舗の規模やできることを制限できるのが自営業です。
③事業期間
フランチャイズ契約を締結する際には、一般的には契約期間が5年前後で定められています。また、この契約期間中に加盟店事業から撤退すると違約金等の請求を受けます。そのため、フランチャイズ加盟店は、契約時に設定した契約期間はフランチャイズ事業を行います。
自営では、事業として成立しないと判断できたタイミングで事業を転換できます。事業を転換するのには当然コストがかかりますが、大きく転換することなく事業の強みの強化や弱みの克服などの対応は事業自体の変更が必要になる場合があります。
④ビジネスパートナー
事業を共に成長させていける相手がビジネスパートナーです。ビジネスパートナーとなる会社の利益が自社の利益につながる関係となれば、お互いに支えあいながら協力できる完成の構築ができます。その点でフランチャイズ本部とフランチャイズ加盟店はビジネスパートナーの関係にあります。
フランチャイズ加盟店の収益が成長できることは、フランチャイズ本部の利益になります。また、フランチャイズ本部の利益が増えれば、フランチャイズ本部機能が強化されるためフランチャイズ加盟店も恩恵を受けます。
フランチャイズで起業した場合でも、自ら事業を進めなければいけません。しかし、フランチャイズ契約の制約は大きく、フランチャイズ本部の商品力やノウハウ、意向や方針に事業が左右されます。
加盟店契約は前述のとおり契約期間があります。契約期間中に商圏に競合他社の店舗が開業することや様々な事業にとってマイナスな出来事もありえます。そんな時に適切な対応策を講じるためにもフランチャイズ本部との信頼関係が必要です。
フランチャイズでの起業の成功を左右する重要事項である、フランチャイズ本部の選び方はどのようにすべきかを解説します。
フランチャイズをやめるのは、簡単ではないことを知っておく
新しく何かを始めるときに、失敗した場合のことを考えるのは不吉に感じてしまいます。しかし、事業を始めようとする時には失敗した場合を想定して、発生する損失やリスクを考慮しておくべきです。
損失やリスクを考慮せずに、成功イメージだけをもって事業を開始すると上手くいかなくなった場合のリカバリーの選択肢が限定されてしまうからです。
そして、企業存続率でも分かるように事実として上手くいかない起業も多く存在します。そのため、事業を撤退する場合の具体的な方法論を把握しておくことは重要です。
●任意解約と合意解約
フランチャイズ契約だけでなく、契約期間を残す契約を解約しようとする場合には『任意解約』と『合意解約』の2つの解約の方法があります。
任意解約は、契約に定められた解約の条件に従って解約する方法です。フランチャイズ契約における任意解約の場合には、一般的には解約違約金などの費用が発生します。フランチャイズ事業が上手くいかずに撤退する際にフランチャイズ契約を解約する場合も少なくなく、解約違約金についてはトラブルの要因になります。
解約違約金のほかに、解約意思表示の方法や意思表示から解約できるまでの期間などが定められています。具体的には、解約の意思表示は書面で実施し、解約するまでの3か月前までに通知するといった条項が定められている場合があります。
もう一つの解約である合意解約は、契約当事者であるフランチャイズ本部と加盟店の双方が合意して実施する解約です。フランチャイズ契約の条項に中途解約に関する事項がない場合などに双方が解約の条件などを協議と合意を行って解約します。
合意解約の場合には、解約違約金などが免除や減額の可能性もあります。また、解約の場合の条項が定められていたとしても合意解約に応じるフランチャイズ本部もあります。
ただし、フランチャイズ本部との協議には時間も労力もかかります。フランチャイズ契約を締結する前に、フランチャイズ契約の解約について具体的に確認・理解することが必須です。
●解約後の留意点
フランチャイズ契約を解約した後にも違約金が発生するケースもあります。中止する必要がある事項が『競業避止義務期間』になります。
競業避止義務とは、競合する会社への転職や競合する事業を行うなどの競業行為を禁止する義務を言います。
フランチャイズ契約では、契約の解約や終了後の一定期間は競業避止義務を科すことが一般的です。フランチャイズで実施していた事業やサービスのビジネスモデルとノウハウを吸収して競合になることは、フランチャイズ本部だけでなく既存のフランチャイズ加盟店にとってもマイナスでしかありません。
一方、フランチャイズ事業の撤退後の次の事業でノウハウを活用した新事業を選択したほうが成功確率も上がります。そのため、競業避止義務の期間がどの程度に設定されているかも併せてフランチャイズ契約前に確認すべき事項です。
計画的に選択する
フランチャイズ本部を選ぶ時に必要となるのは、時間です。急いでフランチャイズ本部を選択すると、思わぬトラブルに遭遇する可能性もあります。『フランチャイズ事業を始めるにあたって』という、一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会が公表している資料があります。
この資料は、加盟店と本部の間の様々なトラブルを回避することを目的にフランチャイズ加盟契約の前に確認すべき事項をまとめた資料になります。
●トラブル事例
資料の中で紹介されているトラブルは以下のようなものがあります。
- ✓フランチャイズ事業を開始後に、事業計画の売上に対して現実は半分に満たない
- ✓結局事業を開始できなかったが、加盟金の返還がない
- ✓ロイヤリティが想定以上に高額となる
- ✓本部から知らない内に貸付が行われた
- ✓自分の店舗の商圏に同じフランチャイズ店舗が開業して売上が下がった
これらのトラブルを回避するために、フランチャイズ契約を締結する前のチェックポイントがあります。
●チェックポイント
チェックポイントは、中小小売商業振興法で定められている事前開示項目と法律では定められていないもののチェックすべき重要事項に分けられます。
中小小売商業振興法で定められている主な事前開示項目は以下のようになっています。
本部事業者の概要
- ・株主構成
- ・子会社やグループ会社の情報
- ・財務状況
- ・店舗数推移
- ・訴訟件数 など
フランチャイズ契約内容で、加盟者が負う義務でかつ加盟者にとって重要な事項
- ・テリトリー権*の有無
- ・加盟金やロイヤリティなどの支払金銭に関する計算方法など
- ・商品や原材料などの本部と加盟店の取引条件
- ・契約期間と契約更新の条件、契約解除など
*テリトリー権は、フランチャイズ本部が加盟店の営業地域を特定する権利を言います。テリトリー権をフランチャイズ本部が設定できると、フランチャイズ加盟店が商売を行える地域が限定されるリスクがあります。
法律以外の主たるチェックポイントは以下の通りになります。
✓経営理念
経営理念は、経営者の哲学や信念を基礎として、その会社が存在する目的であり活動方針となります。経営理念は最終的にその企業の判断基準であり、あるべき姿を示しています。そのため、経営理念が明確でかつ共感できる企業を選択すること、経営理念が実際に事業活動に反映されていることの確認が重要になります。
✓収益予想の信ぴょう性
事業計画は最終的に加盟店となる事業者が作成しますが、その元となるのがフランチャイズ本部の作成する収益予想です。
この収益予想がどんなデータをベースとしてどのように計算されているのか、売上が多くて経費が少なくないかの確認をします。売上が多く見積もっている場合には商圏や店舗立地の評価が過剰になっているケースがあります。
また、あくまで予測であるため、収益予想には仮定の数値が利用されています。この仮定の数値がフランチャイズ本部にとって都合の良い数値になっていないか、を確認します。仮定の数値の上下によって大きく収益に影響が出る場合には、想定できる最低の仮定で収益予想を計算します。
✓制約内容と期間
フランチャイズ契約においては、基本的に本部の指示に従って事業を行う必要があります。事業の自由度の制限は、事業活動上の障害となるリスクがあります。また、契約終了後も競業避止義務などがあります。
●チェックの仕方
チェックの仕方で重要となるのは、事前準備と複数から情報を収集することです。事前準備としては、『チェック表の用意』と『ヒアリング相手のリストアップ』です。
チェック票の用意は、事前にヒアリング事項を整理ができることと、チェック漏れを防ぐことができます。また、チェック表とヒアリング事項を埋めたのちには複数のフランチャイズ本部を比較できます。
ヒアリング相手のリストアップでは、気になるフランチャイズ本部を複数社リストアップします。また、日本フランチャイズチェーン協会や可能であればフランチャイズ加盟店オーナーなどの本部以外もリストアップします。
法人と個人事業主を選ぶ
フランチャイズ加盟店として起業する場合でも、個人事業主として開始するのか法人として起業するのかの選択が必要です。
一般的な個人事業主と法人のメリットと留意点を把握した上で、フランチャイズ事業の将来性を鑑みて選択することが必要です。
●個人事業主のメリットと留意点
個人事業主として事業を開始するためには、開業届出を管轄する税務署に提出することで完了します。そのため、即座に事業を開始したい場合には、個人事業主としてスタートすることにはメリットがあります。
個人事業主は、事業主とはいえあくまで個人になります。そのため、納税も個人の収入に対して実施しなければならず、利益が大きくなると法人よりも納税額が多くなってしまう留意点があります。
また、個人事業主は契約の主体が個人になります。最終的な責任は個人で追うことになる点にも留意が必要です。
●法人のメリットと留意点
株式会社などの法人になった場合には、法人間の取引などにおいて社会的信頼を得やすい点がメリットになります。個人事業主より法人と取引するほうが、取引先としては安心ができるため、そもそも個人事業主との取引ができない法人もいます。
また、年間の所得が500万円を超過すると、個人事業主で納税するよりも節税効果があります。
法人化する留意点としては、法人化するために発生する費用が25万円前後発生します。また、社会保険加入が義務となります。
●フランチャイズ事業においてはどちらを選択しても良い
フランチャイズ事業を行う上では、社会的信用などは基本フランチャイズの看板を利用できるため、事業上の支障は少なくなります。
ただし、資金調達をしようとする場合やテナント契約を行う場合には、法人の信用度によって個人事業主より優位になります。
事業規模によって、節税効果などを見極めて法人になる必要性を判断することで問題ありません。また、いったんは個人事業主としてフランチャイズ事業を開始して、その後に法人になることも可能です。
まとめ
起業する上で、独立した自営とフランチャイズ加盟店として事業を開始することを比較して、違いやメリットや留意点などをまとめました。
フランチャイズ加盟店になることは、加盟金やロイヤリティなどの費用は発生するもののフランチャイズ本部の支援を受けられます。この支援を上手に活用することで企業存続の可能性を高められます。
逆に、フランチャイズ本部選びに失敗すると、適切な支援が受けられない上に事業として実施できる選択肢が制約されます。そのため、事業が失敗する可能性が高くなる点などには注意が必要です。
適切なフランチャイズ本部を選べるように、チェックポイントを明確にした上で時間をかけて充分なヒアリングと調査を行い、納得できる形でフランチャイズ契約の締結を行うことが必要です。