フランチャイズとライセンス契約の違いとは
牛丼の吉野家やコンビニのセブンイレブンに代表されるように、近年急速に拡大・発展しているフランチャイズですが、そのフランチャイズに似たシステムとしてライセンス契約があります。
ライセンス契約も、フランチャイズと同じく、ライセンス保有企業から商標やブランド、様々な権利などの使用許諾を得て事業に生かすものですが、フランチャイズとの違いはどこにあるのでしょうか。
本記事では、フランチャイズとライセンス契約という2つのシステムの違いを解説し、併せて、それぞれのシステムで成功するためのポイントについて紹介しています。
独立開業するために、フランチャイズとライセンス契約のどちらが適しているか、それぞれのメリットやデメリットは何かなどについて知りたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
フランチャイズとは
フランチャイズは、フランチャイズ加盟店が、フランチャイズ企業(本部)の商標や商号を使用する代わりに、加盟金や商標使用料(ロイヤリティ)を本部に支払う契約形態です。
フランチャイズ加盟店は、フランチャイズ本部から、事業を行う上で必要となる経営ノウハウの提供や様々なサポートを受けることができます。
フランチャイズのメリット
フランチャイズの代表的な例では、牛丼の吉野家やコンビニのセブンイレブン、ファミリーマートなどが有名です。フランチャイズに加入すると、以下のようなメリットがあります。
①商標・ブランドを利用できる
フランチャイズに加入すると、フランチャイズ企業の商標や商号、ブランドなどを利用することができます。
事業を円滑に進めるためには、店舗の信用や信頼性が非常に重要となります。有名大手のフランチャイズであれば、その商標や商号は社会的に広く周知されており、そのブランドは信用度が大変高いといえます。
大手企業が長年築き上げてきた商標やブランドを利用できるのは、フランチャイズの最大のメリットです。
②標準的な経営モデルを利用できる
フランチャイズでは、標準的な経営モデルを利用することができます。標準的な経営モデルとは、「この位の立地と規模の店舗であれば、毎月の売上高〇万円、必要経費〇万円、営業利益〇万円程度が目安となる」という経営のひな型です。
フランチャイズ本部では、長年にわたる傘下加盟店の営業実績などを分析し、この標準的な経営モデルを構築しています。フランチャイズで開業すれば、加盟店オーナーは、この標準的な経営モデルを目標に店舗運営を行うことができます。
③経営ノウハウの提供を受けることができる
フランチャイズでは、フランチャイズ本部から店舗の経営ノウハウを提供してもらうことができます。
実際の店舗運営では、以下のような業務を行っていく必要があります。
- ・商品・材料の仕入れ
- ・商品・材料の加工・調理
- ・商品の管理
- ・商品の販売・接客
- ・店舗スタッフの採用
- ・店舗内消耗品の補充
- ・店舗の宣伝広告
- ・現金の管理
- ・損益などの財務管理
事業経験が豊富な人であれば、開業直後から円滑に業務をこなしていけるかもしれませんが、経験が浅い初心者は、初めからスムーズに処理していくことは非常に難しいでしょう。
しかし、フランチャイズであれば、上記の店舗運営業務について、統一的なマニュアルを提示してくれるため、加盟店オーナーは、そのマニュアルに基づいて日々の仕事を進めていくことができます。
また、店舗開業後は、フランチャイズ本部の専門スタッフが巡回し、商品・材料の加工・調理方法、管理方法のポイントや、効果的な商品の販売・接客方法などについて、豊富な経験に基づくノウハウを提供してくれます。
④本部のサポートを受けることができる
フランチャイズでは、フランチャイズ本部のサポートや支援を受けることができます。事業を進めていると、例えば次のように様々な問題やトラブルが生じます。
- ・客の集まりが良くない
- ・売上げが伸びない
- ・必要経費がかかり過ぎる
- ・店舗スタッフを確保できない
- ・接客がスムーズにできない
- ・客とトラブルが生じる など
このような場合に、個人営業では店主が独力で解決しなければなりませんが、フランチャイズでは、本部の専門スタッフが指導・アドバイスを与えてくれます。
フランチャイズのデメリット
一方、フランチャイズの加入には、次のようなデメリットもあります。
①加盟金がかかる
フランチャイズに加入する際には、フランチャイズ本部に加盟金を支払う必要があります。加盟金の額はフランチャイズによって様々ですが、数百万円かかるフランチャイズもあります。
②ロイヤリティがかかる
ロイヤリティは商標使用料のことですが、フランチャイズに加入すると毎月このロイヤリティを支払うことになります。ロイヤリティ金額の算定は、毎月一定の金額を払う定額制と毎月売上高や利益額の一定割合を払う定率制の方式があります。
③経営の裁量権がない
フランチャイズでは、一般的に、加盟店の経営裁量権は認められていません。フランチャイズは、グループの統一的な経営戦略や経営方針に基づき傘下店舗の運営を行うため、各加盟店はその方針ややり方に従う必要があります。
実際の店舗運営も、本部が作成したマニュアルに沿って行う必要があるため、加盟店オーナーの裁量を挟む余地が少ないのです。
④自由に解約できない
フランチャイズ契約は契約期間が定められており、契約期間の中途で勝手に解約・廃業することができません。やむを得ない事情により途中解約する場合は、違約金などのペナルティが課される場合があります。
ライセンス契約とは
次に、ライセンス契約の基本について整理していきましょう。
ライセンス契約とは
ライセンス契約は、事業者が、ライセンス保有企業の商標や商号、特許権や著作権、ソフトウェアなどを使用する代わりに、ライセンス使用料をライセンス保有企業に支払う契約形態です。
一般的に、ライセンスを受ける事業者が開業後は、ライセンス保有企業からの継続的な支援やサポートを受けることはできません(開業前の指導・研修を受けることができるケースがあります)。ライセンス契約の代表例として、スターバックスコーヒーが有名です。
ライセンス契約のメリット
次に、ライセンス契約のメリットについて見ていきましょう。
①ライセンスが使用できる
ライセンス契約のメリットは、ライセンス保有企業からライセンス使用の権利を受けることができることです。ライセンスの内容は多様で、ライセンス保有企業の商標・商号・ブランドのほか、特許権や著作権などの権利、ソフトウェアなどの知的財産も含まれます。
②経営の裁量権がある
ライセンス契約では、フランチャイズのような経営方針の縛りや店舗運営における制限があまりありません。
基本的に、使用許諾されたライセンスの信用やブランド価値を傷つけたり失墜させたりしない限り、ライセンスを受ける事業者が自由な裁量に基づき、経営や店舗運営を行うことができます。
③開業費用を抑制できる
ライセンス契約では、開業費用の負担を抑えることが可能です。ライセンス契約では、フランチャイズと異なり、店舗の立地場所や規模に特段の制限がありません。したがって、店舗物件取得費や賃借費の安い立地場所を狙って出店することができ、また、店の規模を小さくすることで物件にかかる費用を抑えることもできます。
店舗物件にかかる費用は、開業費用の中で大きなウェイトを占めることから、これらの費用を節約できるのは、大きなメリットになります。
さらに、ライセンス契約では、フランチャイズにみられるような加盟金の制度がありません。そのため、開業にあたっての初期費用を抑制することができます。
④必要経費を節約できる
ライセンス契約は、事業における必要経費を抑制できる余地があります。ライセンス契約では、基本的に、ライセンスを受ける事業者の経営裁量権が制限を受けないため、仕入先も事業者が自分で開拓して決めることができます。そのため、商品や材料の安い仕入先を見つけて契約すれば、仕入原価を節約vすることが可能です。
また、事業者の裁量によって、営業形態や店舗経営を工夫・改善し、人件費や固定費を圧縮することもできるでしょう。
ライセンス契約のデメリット
次に、ライセンス契約のデメリットをみていきましょう。
①ライセンス使用料がかかる
ライセンスを使用するには、ライセンス保有企業にライセンス使用料を払う必要があります。ライセンス使用料は、契約締結時に一括して支払う方法や開業後に毎月支払うやり方など様々です。毎月払いの場合の金額の算定は、月々一定の額を払う方式や売上高や利益額の一定割合を払う方式があります。
いずれにしても、ライセンス契約締結時に、ライセンス使用料の金額の妥当性について精査する必要があります。
②ライセンス保有企業からのサポートがない
ライセンス契約では、事業を進める上で、ライセンス保有企業からのサポートや支援は期待できません。開業前の研修や指導を行うライセンス契約も一部にはありますが、開業後は、基本的にサポートや支援を受けずに、事業者が独力で経営を軌道に乗せていくことになります。
自分だけの力で事業を展開・発展させていく充実感や達成感はありますが、その分苦労や負担を覚悟しておく必要があります。
③自由に解約できない
契約内容の定め方にもよりますが、基本的には、ライセンス契約もフランチャイズ契約と同じく自由に解約はできません。
ライセンスを受ける側、ライセンス保有企業双方ともに、自社の事業の一環としてライセンス契約を結んでいます。それを、片方の当事者の一方的な理由による自由な解約を認めてしまったら、相手方の事業に重大な支障が生じかねません。
ライセンス契約では、契約期間の中途における解約を防ぐため、違約金などのペナルティについて定めるケースもあります。
フランチャイズとライセンス契約の違い
次に、フランチャイズとライセンス契約では、どこが違うかについてみていきましょう。
開業費用
フランチャイズとライセンス契約の1つ目の違いは、開業費用です。開業費用は、フランチャイズに比べ、ライセンス契約の方が安く済みます。一般的に、事業を始めようとすると開業費用が必要です。
この開業費用は、フランチャイズとライセンス契約のどちらにもかかる費用ですが、次のような内訳となります。
- 店舗物件購入費、または賃借費
- 店舗内・外装工事費
- 店舗内備品購入費
- 広告宣伝費
- 加盟金
フランチャイズに加入して店舗を構える場合、例外を除き、①の店舗物件購入費、または賃借費は、加入者(開業者)の自己負担となります。
フランチャイズでは、店舗の立地や規模について一定の制限があり、加入者が好きな場所に自由に出店することが難しい場合があります。そのため、駅から離れた小規模店で物件取得費を安く抑えようとしても、より立地の良い一定の規模の店舗での開業を要請され、その分費用が余計にかかるケースがみられます。
例えば、カレーのフランチャイズに加入する場合に、同じフランチャイズカレー店同士が商圏競合しない場所で、フランチャイズ横並びの規模を持つ店舗で開業するよう本部から求められることがあります。
また、②店舗内・外装工事費、③店舗内備品購入費についても、フランチャイズ本部の方針に基づいた内容の工事や調達を求められるケースもあります。店の規模やデザインについてフランチャイズ統一規格に合わせ、店舗内の備品も用意するものが決められているなどの例もみられるのです。
さらにフランチャイズでは、加入の際に、⑤の加盟金を徴取されます。加盟金の額は、フランチャイズにより異なりますが、200~300万円かかる場合もあります。
一方、ライセンス契約では、基本的に、出店場所や店舗規模などは、ライセンスを受ける開業者が自由に決めることができます。このため、駅から離れた場所で小規模に始めようとすれば、①店舗物件購入費・賃借費、②店舗内・外装工事費を安く抑えることが可能です(ただし、店舗の看板やデザインについては、統一性が求められることがあります)。
また、店舗の経営方針も、ライセンス保有企業の干渉なしに自由に決めることができるため、③店舗内備品購入費や④広告宣伝費も抑えることができます。
さらに、ライセンス契約では、フランチャイズにみられるような加盟金は徴取されません。
以上のように、一般的には、開業費用はライセンス契約に比べてフランチャイズの方が高くかかります。ただし、これには例外もあります。フランチャイズは裾野が広く、様々な業種で普及しており、その中には、実店舗を構えずに無店舗で営業できる業態もあるからです。無店舗で開業できるフランチャイズには、次のものがあります。
- 飲食の中のゴーストレストラン
ゴーストレストランは、実店舗を持たない飲食店で、宅配を専門に営業します。調理のための厨房は、時間限定でレンタルします。 - 買取り
- 修理
- ハウスクリーニング
- ペットシッター など
③修理、④ハウスクリーニング、⑤ペットシッターなどは、訪問先ですべての仕事を行うため実店舗は必要ありません。これらの業種は、自宅を事務所兼用具置場として開業する例が多くみられます。
また、②買取りは、物品買取りのための接客窓口が必要ですが、自宅で用が足ります。このように無店舗で開業できる業種であれば、フランチャイズでも、開業費用を大きく抑えることが可能です。
事業コスト
2つ目の違いは、事業コストです。この事業コストについても、一般的には、フランチャイズに比べ、ライセンス契約の方が安く済みます。事業を始めると、一般的には、次のような必要経費がかかります。
- 商品仕入原価
- 販売スタッフ人件費
- 光熱水費
- 消耗品費
- 広告宣伝費
- ロイヤリティ
フランチャイズの場合は、商品や材料の仕入れ先が決められているため、①商品仕入原価を削減できる余地がありません。
②販売スタッフ人件費も、フランチャイズによっては、スタッフの時間帯別人数などが決められている場合もあり、それなりの費用がかかります。また、③光熱水費、④消耗品費も、フランチャイズ本部が決めた店舗規模に応じて必要となります。
さらに、フランチャイズでは、開業後に毎月ロイヤリティを徴取されます。ロイヤリティは、フランチャイズの商標使用料で、本部の商標を使う限り払い続けなければいけません。
ロイヤリティの金額は、フランチャイズにより異なりますが、毎月定額で払う場合や毎月の売上高や利益額の一定割合を徴取されるケースがあります。
それに対してライセンス契約では、商品や材料の仕入れ先は、ライセンスを受ける事業者が自分で探して決めることが可能です。このため、原価の安い仕入先を自分で開拓し、①商品仕入原価を抑えることができます。
また、ライセンス契約では、事業の運営はライセンスを受ける事業者が比較的自由に決めることができるため、②販売スタッフ人件費、③光熱水費、④消耗品費、⑤広告宣伝費などについても、工夫次第で削減できる余地が大きいといえます。
この自由裁量による経営ができることで、事業者の創意工夫による経営改善や事業コスト削減が可能になることが、ライセンス契約の大きなメリットといえます。
さらに、ライセンス契約では、フランチャイズのような毎月のロイヤリティはかかりません。ただし、ライセンス契約では、ロイヤリティに代わるものとしてライセンス使用料を払う必要があります。
ライセンス使用料は、ライセンスを受ける事業者が、ライセンスを使用する対価としてライセンス保有企業に支払う金銭です。その支払方法は、契約当初に一括して払う場合と事業開業後に毎月払う場合に分かれます。開業後に毎月払う方法では、フランチャイズのロイヤリティと同じく、毎月一定の金額を払う方式と毎月の売上高や利益額の一定割合を払う方式などがあります。
経営の自由度
3つ目の違いは、経営の自由度が異なることです。事業経営面の自由度は、フランチャイズに比べライセンス契約の方が勝ります。フランチャイズは、フランチャイズの商標・ブランドを守り、かつ傘下加盟店の業績を伸ばしグループ全体を成長・拡大させるため、経営戦略や店舗の運営方針を統一しています。
各加盟店は、その立地や規模に多少の差はありますが、すべて同じ経営方針の下に店舗を運営することを義務付けられています。具体的には、商品や材料の仕入先や販売商品の種類はフランチャイズ本部から指定され、販売価格も各加盟店が勝手に変更することはできません。
業態によっては、時間帯別のアルバイトの人数まで指定され、加盟店オーナーが裁量を挟む余地はあまりありません。このように、フランチャイズでは、事業経営の自由度が小さい代わりに、統一的に決められた経営方針・店舗運営方法・商品販売方法などに従って経営を行えばよいことになります。
これに対し、ライセンス契約では、基本的に経営方針は、ライセンスを受ける側が自由に決めることができます。
商品や材料の仕入れ先は、店舗経営者が独自に開拓することが可能であり、また、販売商品の種類や販売価格も各店舗が自由裁量で決定することができます。
また、店舗の事業はライセンスに関わる商品・サービスに限定されることはなく、ライセンス契約に関係がないその他の商品・サービスも一緒に扱うことができます。
以上のように、ライセンス契約では、事業経営の自由度が大きい一方で、フランチャイズのような事業経営マニュアルがないため、各経営者が独力で店舗運営を行わなければなりません。
経営の標準化
4つ目の違いは、経営の標準化についてです。経営の標準化とは、誰が経営しても同じような形態の店舗運営、同程度の水準のサービス提供ができるということです。
この経営の標準化が徹底されているのが、フランチャイズです。フランチャイズでは、同程度の立地・規模の店舗であれば、建物の内・外装や商品の種類、商品の陳列なども同じものになります。また、商品の仕入れや販売方法、商品の管理方法、店舗スタッフの研修なども標準化されています。
これらの仕事の進め方はすべて統一されており、マニュアル化されているため、各加盟店はそのマニュアルの内容に従って同じように業務を進めることが求められます。これは、フランチャイズの商標・ブランドを守り、すべての加盟店で同水準のサービスを客に提供するという目的があるからです。
それに対してライセンス契約では、店舗経営のやり方は、原則としてライセンスを受ける側に任されています。
したがって、店舗の立地や規模、商品の種類や陳列方法などに原則規制はありません。店舗の看板やデザインについては、統一性が求められることがありますが、それ以外は、ライセンスを受ける側で自由に決めることができます。
商品の種類についても、ライセンスに関わる商品に加えて、経営者が独自のルートで仕入れた他の商品も一緒に陳列・販売することが可能です。
商品の仕入れ先も規制がないため、ライセンスを受ける側が自由に開拓することができ、その他、店舗の運営やスタッフの研修なども、ライセンスブランドの信用を失墜させたり、傷つけたりしない範囲で、ライセンスを受ける側が自由に考えて行うことが可能です。
本部のサポート
フランチャイズとライセンス契約の5つ目の違いは、本部のサポートです。フランチャイズでは、開業前の準備段階から本部が強力にサポートしてくれます。フランチャイズで開業する人の中には、事業経験がない初心者も多いことから、開業予定の事業について研修制度を設けているフランチャイズが多くみられます。
この研修制度により、初心者であっても事業の知識や技術を身に付けて開業ができるのです。また、開業後も、加盟店オーナーが店舗運営で困った場合に、本部の専門スタッフが相談に応じ、適時指導やアドバイスを与えてくれます。
一方のライセンス契約では、基本的に本部のサポートはありません。中には、開業前の指導を行っているライセンス保有企業もありますが、基本的に開業準備はライセンスを受ける側が独力で行うことになります。また、開業後の店舗経営についても、フランチャイズのような本部からのサポートはありません。このため、ライセンス契約では、ライセンス保有企業からのサポートや支援なしで、独力で経営できるだけの知識や経験が求められます。
フランチャイズに向いている人
次に、どのような人がフランチャイズに向いているかをみてみましょう。
事業経験が少ない初心者
事業を行った経験があまりない初心者の人は、フランチャイズに向いています。フランチャイズでは、加盟店に対し、開業前~開業後を通して手厚いサポートを行ってくれます。
開業前には開業業種にかかる研修が用意され、また開業後は、実際の店舗運営について、フランチャイズ本部の持つ豊富な経営ノウハウを提供してくれるからです。
店舗運営の具体的な方法はマニュアル化されている場合が多く、初心者でもマニュアルに従って運営すれば店舗を経営することができるのです。
さらに、事業運営において問題やトラブルが発生したときは、本部の専門スタッフがサポートしてくれます。
マニュアルどおりの経営ができる人
定められたマニュアルどおりの経営ができる人は、フランチャイズに向いています。フランチャイズでは、店舗運営の方法がマニュアル化されており、それに従った経営が求められます。したがって、自分の創意工夫を追求したい人や他人から指示・命令されたくないという人は、フランチャイズに向いていません。
多くの分野から開業業種を選びたい人
フランチャイズの業種は多肢にわたっているため、以下のような様々な仕事があります。
- 飲食
- 学習塾・英会話
- 買取り
- 修理
- ハウスクリーニング
- スポーツジム・美容教室
- 不動産業
- レンタル業
- コンビニ・スーパーマーケット
- ペットシッター など
そのため、いろいろな分野に関心があり、多彩な業種の中から取り組む仕事をじっくりと選びたいという人は、フランチャイズが適しています。
フランチャイズで成功するためのポイント
次に、フランチャイズで成功するためのポイントについてみていきましょう。フランチャイズで成功するには、次の2つが特に重要です。
- 業種選び
- フランチャイズ選び
フランチャイズは、初心者も対応できるようにコース設定がされていることから、はじめの「業種」と「フランチャイズ」の選択がポイントになります。
自分の好きな業種を選ぶ
フランチャイズで成功するための1つ目のポイントは、自分の好きな業種を選ぶことです。事業を継続して安定させ最終的に成功するためには、自分が好きな仕事を選ぶことが肝心です。自分で関心がない、または興味がない分野で開業しても、事業を続けていく熱意やモチベーションを長く維持していくことが困難です。
例えば、学習塾で子供に勉強を教えて育てていくことが夢だった人が、開業資金が安いことに惑わされてハウスクリーニングの業種を選んでしまったとしたら、事業継続への熱意ややる気が続いていくかが疑問です。
フランチャイズの世界は、すでに説明したように裾野が非常に広く、多くの分野・業種の中から、自分が開業するジャンルを選ぶことができる環境が整っているのです。このことからも、自分の好きな仕事を優先して選び、モチベーションを維持していくことが肝心です。
将来性がある業種を選ぶ
2つ目は、将来性がある業種を選ぶことです。事業は、その時代の社会経済状況の影響などにより、成長が見込める分野とそうでない分野に分かれます。フランチャイズは裾野が広く、多くの分野・業種にわたっていることから、将来性のある業種を選ぶことが大切です。
例えば、飲食店を例にあげると、コロナ禍により実店舗型の飲食店は大きな苦境に立たされていますが、テイクアウト(持ち帰り)やデリバリー(宅配)の分野は、家庭内での消費を追い風に売上げを伸ばしている店舗が多くみられます。
また、買取りや修理、ハウスクリーニングなどの業種は、実店舗を持たずに開業できることから開業費用を安く抑えることができ、成長が期待できる分野といえます。
学習塾は、少子化で斜陽産業にみえますが、実は子供1人あたりにかける教育費が昔より増えていることから、加入するフランチャイズを吟味すれば将来的な成長が見込めます。
ペットシッターは、ペットブームに乗って、今後も一層の成長が見込める分野でしょう。
豊富な経営ノウハウを提供してくれるフランチャイズを選ぶ
フランチャイズで成功するための3つ目のポイントは、豊富な経営ノウハウを提供してくれるフランチャイズを選ぶことです。
すでに説明したように、フランチャイズの強みは、フランチャイズ本部から店舗経営のノウハウを提供してもらえることです。一口に経営ノウハウの提供といっても、以下のように様々なものがあります。
①経営モデルの提供
フランチャイズ本部では、標準的な経営モデルを構築しています。すでにみてきたように、経営モデルは、フランチャイズ加盟店舗の立地や規模によって、売上げや必要経費、営業利益などを試算したひな型ですが、加盟店は、この標準的な経営モデルを目安にして経営を行うことができます。
②店舗運営マニュアルの提供
店舗運営マニュアルは、フランチャイズ加盟店舗を運営するための説明書です。そこには、
以下の各ジャンルについて、その手順や方法が説明されています。
- ・商品、材料の仕入れ
- ・商品、材料の加工・調理
- ・商品の管理
- ・商品の陳列・販売・接客
- ・宣伝広告
- ・損益管理
加盟店オーナーは、この店舗運営マニュアルに従って店舗経営を行えば、他店と同じように経営を行うことができます。
③事業で必要な資料の提供
フランチャイズでは、事業で必要となる様々な資料の提供を受けることができます。例えば、飲食店のフランチャイズでは、調理レシピを提供してくれるところがあります。また、学習塾や英会話のフランチャイズでは、授業の年間・月間カリキュラムなどを提示してもらえます。
調理レシピや授業カリキュラムなどは、本来は経営者が個人で作成しなければならないものですが、フランチャイズでは初心者でも事業運営ができるように事業で必要となる資料を提供してくれるのです。
以上のような、経営ノウハウの種類や内容は、フランチャイズによって異なります。
このため、フランチャイズのメリットを最大限に生かすには、豊富な経営ノウハウを提供してくれるフランチャイズを選ぶことが重要です。
本部のサポート力があるフランチャイズを選ぶ
4つ目のポイントは、本部のサポート力があるフランチャイズを選ぶことです。フランチャイズの強みは、ライセンス契約と異なり、本部のサポートを受けることができる点にあります。実際の店舗経営では、以下のように様々な問題が発生します。
- 客が集まらない
- 売上げが低迷している
- 必要経費が抑制できない
- 店舗スタッフ(アルバイト)を確保できない
- 客とトラブルが生じる
- 万引きが減らないなど
フランチャイズでは、このような問題が発生した場合に、本部の専門スタッフが指導・助言を与えてくれるため、加盟店オーナーが1人で行き詰ることがなくなります。しかし、この本部のサポート力は、フランチャイズによって異なることから、サポート力があるフランチャイズを選ぶことが成功の秘訣となります。
ライセンス契約が向いている人
次に、どのような人がライセンス契約に向いているかをみてみましょう。
事業経験がある人
事業経験がある、または事業経験が豊富な人は、ライセンス契約に向いています。ライセンス契約では、①どのような場所で開業するか、②商品をどこから仕入れるか、③店舗の経営方法などは、ライセンスを受ける事業者に任されています。
したがって、ライセンスを得てどのように経営するかは、基本的に本人の自由裁量なのです。ライセンス保有企業から、開業後の経営ノウハウや店舗運営マニュアルなどの指導・情報提供はありません。
また、事業経営で困ったときのサポートも期待できません(ライセンス保有企業によっては、開業前に限定した指導を行うところもあります)。このことから、ライセンス契約で開業するためには、一定の事業経験や経営に関する知識が求められます。
自分の裁量で自由に経営を行いたい人
自分の裁量で自由に経営を行いたい人は、ライセンス契約に向いています。フランチャイズでは、店舗経営を行うにあたり、フランチャイズ本部の経営方針に従う必要があります。加盟店オーナーは、本部の方針に逆らって自分の好きなように経営することは契約で禁じられているのです。
それに対し、ライセンス契約では、どこに店を構えて店の規模をどうするか、商品をどこから仕入れるか、販売方法をどうするかなどは、ライセンスを受ける事業者に任されています。
そのため、自分の思うように自由な経営を行いたい人は、ライセンス契約が適しています。
ライセンス契約で成功するためのポイント
次に、ライセンス契約で成功するためのポイントについてみていきましょう。ライセンス契約で成功するには、次の2つが特に重要です。
- 独占できるライセンス選び
- ライセンス契約の内容検討
ライセンス契約では、特に、ライセンスの独占的な利用や契約内容の精査が重要なポイントになります。
ライセンスの独占は非常に有利
ライセンス事業を有利に進めるポイントの1つに、ライセンスの独占があります。ライセンスの独占は、ライセンスを受ける側が、ライセンスを使用する権利を独占できるというものです。ライセンスを独占できれば、同じ事業を行う競合他社は、ライセンスを使用できなくなることから、非常に有利な立場で事業を進めることができます。
また、ライセンスの独占権には、競合する他社のみでなく、ライセンス保有企業も含めて権利の使用を禁止することが可能な専用実施権という権利もあります。
ライセンスの独占を認めてもらうかどうか、認めてもらう場合は専用実施権も可能かどうかについては、ライセンス保有企業との事前協議が必要です。しかし、ライセンスの独占は、事業を成功に導く大きな要因であるため、用意周到かつ粘り強い折衝を行うことが肝心です。
また、ライセンスの独占が認められた場合には、ライセンス契約書にその旨を明記しておくことも忘れてはなりません。
契約範囲・類似品取扱い禁止に注意する
ライセンス契約を結ぶ場合は、①契約範囲がどこまでか、②類似品取扱い禁止条項を盛り込むかについて、慎重な確認や検討が必要です。
①契約範囲がどこまでか
ライセンスを受ける側が与えられた権利を行使して事業を行っていたつもりが、その権利の使用が契約の範囲外であると指摘されるトラブルがみられます。
ライセンス契約は、フランチャイズのように商標やブランドの使用のみでなく、特許権や著作権、ソフトウェアなどの使用権を与えることができる非常に幅が広い契約です。したがって、ライセンスを受ける側が契約に基づく正当な権利行使であると認識していても、ライセンスを与える側が契約の範囲外であると判断する場合もあり得ます。
このことからも、ライセンス契約では、どのような使用形態であれば契約の範囲内であり、逆にどのようなケースが契約の範囲外となるかについて、当事者同士で十分に協議・納得した上で契約を締結することが重要です。
②類似品取扱い禁止条項を盛り込むか
ライセンス契約に、ライセンスに関わる権利に類似するものの取扱いを行うことを禁止する=「類似品取扱い禁止」の条項を盛り込む場合があります。そうすると、ライセンスを受ける側は、ライセンスにかかる権利に類似するものの販売やサービスを行うことができなくなります。
この場合に注意しなければならないのは、ライセンスを受ける側が、元々独自開発した類似品を取り扱っているケースです。この類似品取扱い禁止条項があると、自社で独自開発したライセンスに関係がない権利・商品なども取り扱うことができなくなってしまいます。
ライセンス契約に類似品取扱い禁止条項を盛り込むかどうかについては、自社の営業範囲や内容まで見据えた慎重な検討が必要です。
必要な契約期間を確保する
ライセンス契約を結ぶ場合は、①必要な契約期間を設定する、②相手側からの中途解約は認めないことが必要です。
①必要な契約期間を設定する
ライセンス事業の内容によっては、成果を得るための事業期間が長期にわたる場合も想定されます。そのような事業で、成果を得る前に契約期間が終了してしまうと、事業経営が立ちいかなくなってしまいます。したがって、成果を得るまでの期間については、ライセンス契約期間として確保しておくことが大切です。
ライセンス契約では、自社の事業計画を見据えた上で、契約書に必要な契約期間を設定することが重要です。
②相手側からの中途解約は認めない
①と同じ理由で、事業成果を得る前に相手方の都合による中途解約を認めてしまうと、事業経営に大きな支障が生じてしまいます。契約書では、相手側からの中途解約を認める条項は盛り込まないことが肝心です。
契約終了後の商品取扱いを可能にする
ライセンス契約では、契約終了後の商品取扱いを可能にしておくことも重要です。事業は、ライセンス契約が満了になったからといって、すぐに綺麗に終了できるものではありません。
権利の行使に基づいて商品を販売している場合は、常に仕入れた商品や材料の在庫が一定量あるはずです。契約期間終了時期に合わせて仕入れ量を調節し、契約終了時に在庫がほとんどないという場合もありますが、商品の売れ行き次第でうまくいかない場合も想定されます。
このため、契約期間終了後も、余った在庫を販売処分することができる体制にしておくことが大切です。ライセンス契約では、契約終了後の商品取扱いを可能にする条項を盛り込むことを検討しておく必要があります。
ライセンス使用料に注意する
ライセンス契約では、ライセンス使用料が高額過ぎないかどうか精査することが肝心です。ライセンス契約では、ライセンスを使用する権利の対価として、ライセンス使用料を支払う必要があります。
ライセンス使用料の額は、以下のように、フランチャイズにおけるロイヤリティと同様の方法で算定されます。
①定額を払う方式
毎月、一定額をライセンス保有企業に支払う方式です。毎月定額であるため先の見通しが立ちやすいですが、売上げや利益がない月でも一定の金額を支払わなければならないデメリットがあります。
②売上高または利益額の一定割合を払う方式
毎月、売上額または利益額の一定割合をライセンス保有企業に支払う方式です。売上げや利益がない月は支払わなくてよいメリットがありますが、事業が拡大して売上額や利益額が膨らんだ場合は、毎月相当な金額を支払わなければならなくなります。
そのため、
- ・売上高〇万円以下の部分は、その7%
- ・売上高〇万円を超える部分は、その5%
と、売上額や利益額が大きくなるにつれて低減させる方式もあります。
高額なライセンス使用料を払い続けると、競業他社との競争に不利となります。定額方式であればその金額、一定割合方式であればその%について、妥当な数値であるかを見極めることが重要です。
まとめ
フランチャイズとライセンス契約は、双方ともに、他社の商標やブランドなどを使用する権利を得るシステムで非常によく似ています。しかし、フランチャイズとライセンス契約では、以下の点について違いがあります。
- 開業費用
- 事業コスト
- 経営の自由度
- 経営の標準化
- 本部のサポート
フランチャイズは、フランチャイズ企業の商標・ブランドの価値を高め、同時に傘下加盟店の業績向上を通じてフランチャイズグループの拡大・発展を目的とすることから、その経営戦略や店舗運営方法などが統一的に決められており、加盟店に自由裁量の余地があまりありません。
それに対して、ライセンス契約は、ライセンスブランドの価値や信用に傷を付けない範囲で、事業者に比較的自由な店舗運営が認められています。
上記の5つの違いは、このフランチャイズとライセンス契約における「各店舗の自由裁量の余地」に着眼して導き出された違いということができます。
フランチャイズとライセンス契約は、それぞれにメリットとデメリットがありますが、事業を始める場合に、①用意できる資金や事業経験の有無など「自分の有する条件」、②自由裁量で経営したい、サポートや支援が欲しいなど「事業に対する姿勢」などに適合するシステムはどちらか、という視点で選択することが重要になります。