フランチャイズと独占禁止法の関係
JFA(日本フランチャイズチェーン協会)によれば、市場規模にして約25兆円に達したとされる国内フランチャイズビジネス。総店舗数は7年連続で増加しており、2015年度には26万店舗を超え、今後も規模拡大が予想されています。
しかし、一方で、フランチャイズビジネスの増加に伴って指摘されるのが、本部と加盟店のトラブルです。フランチャイズ・システムでは、本部(フランチャイザー)が加盟店(フランチャイジー)に対して、経営・営業ノウハウを提供する代わりに、対価として売上の一部をロイヤリティーとして受け取ります。
加盟店は他人の資本・人材を活用して迅速な事業展開が可能となりますが、営業活動や商品の販売方法などにおいて、本部から制約を設けられることが少なくありません。
そこで、公正取引委員会は、本部と加盟者の取引において、本部が加盟者に対して一方的に不利益を与えたり、加盟者のみを不当に拘束したりすることが無いように、フランチャイズにおいてどのような行為が独占禁止法上問題となるかについての方針を示しています。
本記事では、公正取引委員会が公表しているフランチャイズ・システムにおける独占禁止法上のガイドラインを参考に、詳しく解説していきます。
目次
加盟時における適正な情報開示
公正取引委員会は、フランチャイズ契約を結ぶ意思のある加盟希望者が、適正な判断を下せるよう、本部に対して加盟者募集に当たり的確な情報開示を求めています。
ガイドラインが定める8つの項目
加盟者募集における推奨情報開示項目として、商品の仕入れ条件、指導の方法・回数、ロイヤリティーの算定方法や時期、融資利率、赤字保障の有無、中途解約条件など8つを定めています。
1 | 加盟後の商品等の供給条件に関する事項 |
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2 | 加盟者に対する事業活動上の指導の内容、方法、回数、費用負担に関する事項 |
3 | 加盟に際して徴収する金銭の性質、金額、その返還の有無及び返還の条件 |
4 | 加盟後、本部の商標、商号等の使用、経営指導等の対価として加盟者が本部に定期的に支払う金銭(=ロイヤルティ)の額、算定方法、徴収の時期、徴収の方法 |
5 | 本部と加盟者の間の決済方法の仕組み・条件、本部による加盟者への融資の利率等に関する事項 |
6 | 事業活動上の損失に対する補償の有無及びその内容、または経営不振となった場合の本部による経営支援の有無及びその内容 |
7 | 契約の期間並びに契約の更新、解除及び中途解約の条件・手続に関する事項 |
8 | 加盟後、加盟者の店舗の周辺の地域に、同一又はそれに類似した業種を営む店舗を本部が自ら営業すること又は他の加盟者に営業させることができるか否かに関する契約上の条項の有無及びその内容並びにこのような営業が実施される計画の有無及びその内容 |
加盟店募集における独占禁止法違反行為とは
ガイドラインによれば、
「本部が加盟店の募集に当たり、十分な情報の開示を行わず、または虚偽若しくは誇大な開示を行い、実際のフランチャイズ・システムの内容よりも著しく優良又は有利であると誤認させ、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引する場合には、不公正な取引方法(ぎまん的顧客誘引)に該当する」
とされます。
自己の供給する商品又は役務の内容又は取引条件その他これらの取引に関する事項について、実際のもの又は競争者に係るものよりも著しく優良又は有利であると顧客に誤認させることにより、競争者の顧客を自己と取引するように不当に誘引すること
「ぎまん的顧客誘引」行為に該当するか否かは、次の4つの判断基準を総合勘案して判断されます。
1 | 予想売上げ又は予想収益を提示する場合の算定根拠等の合理性 |
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2 | ロイヤルティ算定方法について,必要な説明を行わないことにより,ロイヤルティが実際よりも低い額であるかのように開示していないか |
3 | 客観的でない基準により比較することにより,自らのシステムが他社に比べて優良・有利であるかのように開示していないか |
4 | フランチャイズ契約を中途解約する場合の違約金について十分な開示を行っているか |
契約締結後に問題となる行為
フランチャイズ契約を結んだあとの本部と加盟店の取引について、ガイドラインでは、本部の具体的な取引方法によっては、「優越的地位の濫用」「抱き合わせ販売等・拘束条件付取引」「再販売価格の拘束」に該当する可能性があるとされています。
優越的地位の濫用
取引上、加盟店に対して優越した地位にある本部が、フランチャイズ・システムによる営業を必要な限度を超えて、常識的な商行為慣習と比べて不当に不利益を与えている場合には、「優越的地位の濫用」に該当すると判断されることがあります。
自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、次の各号のいずれかに掲げる行為をすること。
- 継続して取引する相手方に対し、当該取引に係る商品又は役務以外の商品又は役務を購入させること。
- 継続して取引する相手方に対し、自己のために金銭、役務その他経済上の利益を提供させること。
- 相手方に不利益となるように取引条件を設定し、又は変更すること。
- 前三号に該当する行為のほか、取引の条件又は実施について相手方に不利益を与えること。
- 取引の相手方である会社に対し、当該会社の役員の選任についてあらかじめ自己の指示に従わせ、又は自己の承認を受けさせること。
たとえば、本部が加盟者に対して、商品の仕入れ先や店舗内装工事の依頼先について、正当な理由なく、指定の業者とのみ取引させる行為が「優越的地位の濫用」に当たります。
また、商品の仕入れ数量について、返品が認められないにも関わらず、必要な範囲を超えて本部が指示する行為もこれに該当します。
抱き合わせ販売等・拘束条件付取引
フランチャイズ契約に基づく営業手法のノウハウ提供に併せて、加盟店に対して本部が指定する業者から商品などを購入させようとする場合は、「抱き合わせ販売等」に該当する可能性があります。
相手方に対し、不当に、商品又は役務の供給に併せて他の商品又は役務を自己又は自己の指定する事業者から購入させ、その他自己又は自己の指定する事業者と取引するように強制すること
また、本部が加盟店に商品を直接供給していない場合で、加盟者が店舗で販売する商品又はサービス(役務)の価格を不当に拘束する行為は、「拘束条件付取引」に該当する可能性があります。
法第二条第九項第四号又は前項に該当する行為のほか、相手方とその取引の相手方との取引その他相手方の事業活動を不当に拘束する条件をつけて、当該相手方と取引すること
再販売価格の拘束
商品などの販売価格について、一般的に統一的営業・消費者の選択基準の明示の観点から、本部が行う希望価格の提示は、必要に応じて許容されるものとして理解されています。
しかし、加盟店自身が各地域の実情に応じて販売価格を決めなければならない場合があることから、本部が加盟店に商品を供給している場合で、加盟店の販売価格(=再販売価格)を拘束する場合は、原則として「再販売価格の拘束」に該当すると判断されています。
自己の供給する商品を購入する相手方に、正当な理由がないのに、次のいずれかに掲げる拘束の条件を付けて、当該商品を供給すること。
イ 相手方に対しその販売する当該商品の販売価格を定めてこれを維持させることその他相手方の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束すること。
ロ 相手方の販売する当該商品を購入する事業者の当該商品の販売価格を定めて相手方をして当該事業者にこれを維持させることその他相手方をして当該事業者の当該商品の販売価格の自由な決定を拘束させること。