フランチャイズオーナーの年収の目安は?

最近、フランチャイズが様々な業種で普及・拡大しています。フランチャイズに加入すればそのブランドを利用でき、強力なバックアップも望めることから、加盟店オーナーとして商売を始めれば、有利に事業展開ができると考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。

しかし、フランチャイズへの加入に際して最大の関心事項は、どの程度の年収が見込めるかです。事前に加盟店オーナーとしての年収の目安がわかれば、フランチャイズに加入する強力な判断材料にすることができます。

この記事では、フランチャイズオーナーの年収の目安フランチャイズオーナーが年収を上げるポイントについて解説しています。フランチャイズへの加入に関心がある方は、ぜひ参考にしてください。

フランチャイズオーナーの年収とは

はじめに、「年収」という用語の意味を整理しておきましょう。

会社員の年収は給与支払金額

会社員の年収は、源泉徴収票の給与の「支払金額」で確認できます。給与支払金額は、税金が差し引かれる前の年間給与の総額で、「税込年収」といわれます。この給与支払金額から、社会保険料と所得税・住民税を引けば「手取年収」を求めることができます。

以上のように、会社員の年収は、源泉徴収票の給与支払金額(税込年収)で判断します。

自営業者の年収は所得金額

一方、フランチャイズオーナーなど自営業者の年収は、どのようにして求めるのでしょうか。通常、自営業者の年収は、「年間の売上額」から「事業活動に伴う必要経費」を差し引いた「年間所得金額」で捉えます。

自営業者の場合には、「年間の売上額」に占める「事業活動に伴う必要経費」の割合が高く、売上額が多くても必要経費を差し引けば手元に残る金額が大きく減ってしまいます。
この場合に、売上額=年収と捉えてしまうと、実際の収入との乖離が大き過ぎて意味をなさなくなってしまいます。

このため、自営業者の売上額は「年商」とされ、その年収は年間所得金額で判断しているのです。

以上から、フランチャイズオーナーの年収も、自営業者と同じく年間所得金額で捉えます
なお、自営業者の「手取年収」は、所得金額(税込年収)から、社会保険料や所得税・住民税を引いて求めることができます。

フランチャイズオーナーの年収の目安

それでは、フランチャイズオーナーの年収はどの位あるのでしょうか。フランチャイズオーナーの年収は、以下のように、業種により様々に異なります。

コンビニ

コンビニでは、年間売上高から年間必要経費を除いた残りがオーナーの税込年収となります。コンビニオーナーの平均年収は、700万円程度とされています。

コンビニ業界は、1店舗あたりの平均売上高が巨額になりますが、それに対する必要経費も大きくかかるため、通常、オーナーの年収は売上高の1割以下となります。

なお、大手コンビニフランチャイズでは、店舗の売上が低迷した場合に備えて、開業後半年~1年間に限り、月2,000万円前後の「売上保証」を制度化しているところが多くみられます(その場合ロイヤリティはなし。売上保証金から、商品仕入原価を除くその他の必要経費を支払う必要がある)。

コンビニの売上収入は、以下のとおりです。

  1.  商品売上収入
     コンビニの売上収入は、陳列商品の売上による収入になります。

必要経費は、次のものがかかります。

  1.  仕入原価
     商品の仕入原価です。
  2.  ロイヤリティ
     フランチャイズ本部に支払う商標使用料です。
     ロイヤリティは「売上総利益高の〇%」などとなっていますが、このパーセンテージは、売上高をはじめとする諸条件によって変動します。
     (注)売上総利益高=売上高-商品仕入原価
  3.  家賃
     店舗の場所を賃借している場合の家賃です。
     自前で土地を用意するオーナーが多くいます。
  4.  人件費
     アルバイトを雇う場合の人件費です。
     コンビニでは、アルバイト雇用が必須となります。
  5.  光熱水費
     照明・冷暖房費・冷蔵庫電気代・トイレ水道料などの費用です。
     コンビニでは光熱水費が大きくかかりますが、フランチャイズ本部が7~8割程度を負担するところもあります。
  6.  不良品・廃棄品の原価
     不良品・廃棄品が生じた場合の仕入原価です。
     コンビニでは廃棄品が多く生じますが、フランチャイズ本部が7~8割程度を負担するところもあります。
  7.  消耗品費
     トイレットペーパー、洗剤、タオル、消毒液などの消耗品費です。
  8.  ゴミ収集委託費
     ゴミ収集を委託する費用です。
  9.  その他雑費
     盗難・万引き損失、店舗の修繕費などの雑費です。
  10.  広告宣伝費
     顧客募集のための広告宣伝費です。

以上のように、コンビニでは、商品売上収入から様々な必要経費を差し引いた残りが、オーナーの税込年収となります。

学習塾

年間売上高や年収は、フランチャイズや個々の教室によって違いますが、年間売上高が1,000~3,000万円、そこから年間必要経費を除いた年収が500~1,500万円程度が目安となります。学習塾オーナーの平均年収は、800万円程度とされています。

学習塾の売上収入は、以下のとおりです。

  1.  入学金
     生徒が入校する際の入学金です。営業初年度が最も多く、2年目以降は新しい生徒が入らなければ、収入はありません。
  2.  授業料
     授業料は、生徒1人あたり30,000~35,000円程度が相場です。
     (例)
     授業料が、生徒1人あたり30,000円の場合
     ・生徒数50人
     30,000円×50人×12月=年間授業料収入1,800万円
     ・生徒数70人
     30,000円×70人×12月=年間授業料収入2,520万円
  3.  その他収入
     教材販売やテスト実施による検定料収入など

一方の必要経費は、次のとおりです。

  1.  ロイヤリティ
     フランチャイズ本部に支払う商標使用料です。
     相場は、授業料収入の10%、入学金収入の50%程度となります。
  2.  家賃
     教室の場所を賃借している場合の家賃です。
  3.  人件費
     外部講師を雇う場合の人件費です。
  4.  教材・文具費
     教材・文具に要する費用です。
  5.  光熱水費
     照明・冷暖房費・トイレ水道料など教室の光熱水費です。
  6.  広告宣伝費
     生徒募集のための広告宣伝費です。

以上のように、学習塾の売上収入から必要経費を差し引いた残りが教室オーナーの年収となります。

飲食

飲食はフランチャイズの代表的な業種で、様々な店舗が出店しています。従来、実店舗での店内飲食型がほとんどでしたが、近年の営業形態の多様化や新型コロナウィルスの感染拡大を背景として、テイクアウトやデリバリー併用型、テイクアウトやデリバリー専門型などの業態が増えています。

実店舗型の飲食店を開業するには、店舗物件の取得(購入・賃借)や店舗内装工事、厨房設備の導入、トイレ・手洗い所の設置など、数十~数千万円のまとまった額の資金が必要となります。

それに対して、最近普及してきたゴーストレストランは、テイクアウトやデリバリーに特化しており、店内飲食がないことから店舗の取得や内装工事の費用がかかりません。調理のための厨房設備だけは必要ですが、営業時間だけ厨房設備をレンタルする例が多くみられます。

このように、フランチャイズ飲食店オーナーの年収は、店舗の規模や提供メニュー、また、店内飲食型か否かにより大きく違ってきますが、およそ1,000万円程度とされています。

現在は、未だ新型コロナウィルスの感染拡大が続いているため、フランチャイズ加盟店といえども、飲食業界は非常に厳しい環境に置かれています。飲食業界のフランチャイズに加入を検討する場合は、テイクアウト・デリバリー併用型、またはテイクアウト・デリバリー専門型のフランチャイズの方が有利といえるでしょう。

【収益モデルの例】

飲食フランチャイズの「やどかり弁当」では、収益モデルを公表しています。やどかり弁当は、法人向けに弁当の宅配業を展開しているフランチャイズです。

この収益モデルは、開業3か月目を想定したモデルです。

  1.  月間売上額2,700,000円(日販300個)
  2.  月間必要経費1,974,000円
  3.  月間営業利益506,000円
  4.  月間営業利益=月間売上額2,700,000円-月間必要経費1,974,000円
    -ロイヤリティ220,000円=506,000円

  5.  ロイヤリティ 月22万円

なお、やどかり弁当の開業に要する費用は、以下のとおりとなっています。

● 必要な開業資金533万7,500円

(内訳)

  1.  導入コンサルティング費用3,300,000万円
  2.  登録料300,000円
  3.  備品・消耗品(すべて購入の場合)650,000円
  4.  研修交通費180,000円
  5.  研修宿泊費50,000円
  6.  事前営業人件費277,200円
  7.  メニューサポート費用200,000円

ハウスクリーニング

高齢化や共働き世帯の増加を背景として、清掃サービスに対する需要が増えており、ハウスクリーニングは成長産業として注目を集めています。また、開業するために大掛かりな店舗や設備が不要のため、少ない開業資金で始めることが可能です。家庭向けのハウスクリーニングでは、オーナーの平均年収は900万円程度とかなり高めとなっています。

フランチャイズ本部に支払うロイヤリティは、毎月数万円の定額制や売上額の20%程度などの定率制となっています。

【収益モデルの例】

ハウスクリーニングフランチャイズの「おそうじ本舗」では、収益モデルを公表しています。おそうじ本舗は、首都圏で営業展開する業界店舗数第1位のフランチャイズです。

この収益モデルは、個人で開業して1年経過したオーナーの平均的な月間収益モデルです。

● 千葉県で従業員3名を雇用した場合

  1.  月間売上額2,876,954円
  2.  月間営業利益1,838,737円
  3.  利益率63.9%
     利益率=月間営業利益1,838,737円÷月間売上額2,876,954円=63.9%
  4.  ロイヤリティ 月間売上総額の30%

なお、おそうじ本舗の開業に要する費用は、以下のとおりとなっています。

● 必要な開業資金315万円~

(内訳)

  1.  フランチャイズ加盟金30万円
  2.  保証金50万円
  3.  研修費55万円
  4.  機材費165万円
  5.  システム導入費15万円

修理

修理(リペア)業も成長産業の一つです。一口に修理といっても、その幅は非常に広く、大きな物から小さな物まで扱います。具体的には、建物のリフォームや外構の修繕、車のケア、また、家具や装飾品、時計などの修理も行います。その他、何でも請け負う便利屋として営業しているフランチャイズもあります。

修理業は、無店舗でも営業ができるため、開業費用を抑えることができます。また、在庫を抱えることも少ないことから、低リスクでの営業が可能です。

営業形態や修理の対象が多肢にわたるため、オーナーの年収は一概にいえませんが、おおむね700万円程度となっています。

【収益モデルの例】

修理フランチャイズの「トータルリペア」では、収益モデルを公表しています。トータルリペアは、住宅のリフォームや家具の修理業を展開するフランチャイズです。

この収益モデルは、既存店舗の収益の平均値等から作成した月間収益モデルです。

● 1人で開業した場合

  1.  月間売上額1,700,000円
  2.  月間材料費90,000円(売上の約5%)
  3.  月間収入1,610,000円
    月間収入=月間売上額1,700,000円-月間材料費90,000円=1,610,000円
  4.  ロイヤリティ 月4~6万円

なお、トータルリペアの開業に要する費用は、以下のとおりとなっています。

● 必要な開業資金350万円

(内訳)

  1.  フランチャイズ加盟金150万円
  2.  トレーニング費50万円
  3.  機材費75万円
  4.  初期材料費75万円

買取

買取のフランチャイズは、貴金属など中古品や不用品を買い取って再販売する事業を展開しています。買取業は、2~3坪の小規模店舗でも営業ができるため、大規模店を構える事業に比べ、開業資金を抑えることが可能です。

ただし、一般的に買取業は、顧客から買い取った商品の再販売がスムーズにいかない場合に、在庫を抱えてしまうリスクがあります。そのため、売上保証の制度を導入しているフランチャイズがあります。

買取業界の売上保証は、フランチャイズ本部が開拓した販売先を加盟店に紹介し、加盟店の販売を促進して売れ残りリスクを避ける方式です。この売上保証があれば、加盟店のオーナーは、自分で苦労して買取商品の再販売先を探さなくても、商品を処理していくことができます。

このことから、買取のフランチャイズに加入する場合は、売上保証を導入しているフランチャイズを選ぶことがポイントとなるでしょう。

加盟店オーナーの年収は、フランチャイズによって、また、店舗の規模や売上保証の有無により大きく違ってきますが、おおむね1,400万円程度と、フランチャイズオーナーの中では高額となっています。

【収益モデルの例】

買取のフランチャイズを展開する「銀座屋」では、収益モデルを公表しています。銀座屋は、店舗買取、出張買取、宅配買取など様々な形態で買取を行っています。

この収益モデルは、銀座屋直営店の2019年度の平均実績(月次平均)であるため、現実に即した数値です。

  1.  月間来店数146人
  2.  月間買取額6,458,000円
  3.  月間売上額11,223,000円
  4.  月間粗利額4,765,000円
     月間粗利額=月間売上額11,223,000円-月間買取額6,458,000円=4,765,000円
  5.  月間営業利益2,985,000円
     営業利益は、粗利額からロイヤリティをはじめ必要経費を差し引いた残りの額
  6.  ロイヤリティ月額10万円
  7.  広告協賛金月額10万円

上によると、月平均で298万5,000円の営業利益が上がっていることから、年収に換算すると3,000万円を超えることになります。なお、銀座屋では、加盟店が買い取った商品について、フランチャイズ本部が買取保証を行っており、加盟店が在庫を抱えるリスクをなくしています。

なお、銀座屋の開業に要する費用は、以下のとおりとなっています。

● 必要な開業資金200万円

(内訳)

  1.  フランチャイズ加盟金100万円
  2.  研修費50万円
  3.  開業支援金・開業準備金50万円

業種・フランチャイズ選びのポイント

フランチャイズで年収を上げるには、①どの業種でフランチャイズを始めるか、②同じ業種でも、どのフランチャイズに加入するかが非常に重要です。ここでは、業種・フランチャイズ選びのポイントについてみていきましょう。

業種選びのポイント

まず、どの業種でフランチャイズを始めるか、業種選びのポイントをみていきましょう。

【自分がやりたいことを優先する】

業種選びで最も重要なポイントは、自分がやりたい業種を選ぶことです。フランチャイズで事業を始めようとするからには、自分がやりたいと思っている仕事があるはずです。その自分がやりたいと思っている仕事を実現できる業種が、自分に最も合っている業種といってよいでしょう。

自分がやりたいと思っている仕事があるにもかかわらず、まったく関係がない業種を選んでしまうと、事業自体に対する関心や興味がないままで経営を続けていくことになりかねません。そのような状況では、事業を軌道に乗せてゆくことも難しくなってしまいます。

例えば、従来から調理に関心があり、飲食店を始めたいと考えている人が、開業資金が安いからという理由でハウスクリーニングのフランチャイズに加入して経営を始めるとどうなるでしょうか。

人によっては、仮に関心がない業種であっても、仕事と割り切って努力を続けることができる方もおり、そのようなケースでは事業も成功するかもしれません。しかし、多くの場合は、自分の関心がない仕事や業種に対しては、熱意が乏しくモチベーションを維持することが困難となります。このように、熱意やモチベーションが低下した状態では、事業の成果が上がる可能性は極めて低いといってよいでしょう。

このことから、業種選びでは、「好き」、「興味がある」、「得意である」、「面白い」などの要素を優先的な判断材料とすることがポイントです。

【社会的なニーズにマッチした業種を選ぶ】

次に、業種は、社会的なニーズにマッチしているものを選ぶことが肝心です。自分が始めたフランチャイズ事業が、その時々の社会的なニーズにマッチしていれば、自然に客が集まり売上も伸びていきます。逆に、社会的な需要が乏しい事業は、いくら頑張っても売上を伸ばすことが困難です。

現在の社会的なニーズにマッチした事業・業種の例をあげてみると、

①飲食のデリバリー・テイクアウト

コロナ禍により、多くの実店舗型飲食店が苦境に立たされていますが、その中で好調な分野がデリバリーやテイクアウトです。実店舗を持たずに厨房のみをレンタルして調理し、デリバリー専門に営業するゴーストレストランも増えています。

②個人指導の学習塾・教室

少子化時代にあっても、経営が好調な学習塾や教室があります。このように経営が好調な学習塾や教室のほとんどが、講師1名対生徒1名、または講師1名対生徒2名の個人指導制を採用しています。

また、現在の学習塾・教室では、リアルタイムで指導やコミュニケーションができるOA機器や指導システムの導入も進んでいます。

【初期費用が安い業種を選ぶ】

初期費用が安く済む業種を選ぶことも重要です(ただし、自分が「好き」、「関心がある」業種であることが必要)。

フランチャイズの初期費用は、業種によって大きく異なります。初期費用がまとまってかかる業種には、次のようなものがあります。

  1.  飲食店
     ・店舗物件の確保(購入・賃借)
     ・厨房設備の導入
     ・店舗の内装工事
     などに、まとまった額の資金が必要です。
  2.  学習塾・英会話教室
     飲食店よりは安く済みますが、
     ・教室物件の確保(購入・賃借)
     ・パソコンや視聴覚機材など学習機器・システムの導入
     などに費用がかかります。
  3.  ジム
     ・トレーニング室の確保(購入・賃借)
     ・シャワー室の設置
     ・各種マシンなどトレーニング機器の導入
     に費用がかかります。

上記に比べ、以下の業種では初期費用が安く済みます

  1.  買取
  2.  修理
  3.  ハウスクリーニング

買取や修理、ハウスクリーニングなどの業種では、訪問専門にすれば店舗を構える必要がなく、初期費用を抑えることができます。

ただし、②修理、③ハウスクリーニングでは、修理用機材や清掃用機材など業務用機器の購入が必要です。

フランチャイズ選びのポイント

同じ業種の中でも、フランチャイズによりその経営方針や特徴が異なります。ここでは、フランチャイズ選びのポイントについてみていきましょう。

【自分の方向性に合うフランチャイズを選ぶ】

同じ業種でも、フランチャイズが違えば、その経営理念や経営方針などが様々に異なってきます。

①オーナーの裁量について

通常、フランチャイズでは加入時に締結するフランチャイズ契約やフランチャイズ本部から交付される経営マニュアルの中に、各種のルールや経営方法が定められています。加盟店オーナーは、そのルールや定められた経営方法に従って経営を行いますが、フランチャイズによって加盟店オーナーの経営に対する裁量の範囲に差があります。

オーナーの裁量をほとんど認めないフランチャイズもあれば、比較的大きく認めるフランチャイズもあるのです。

フランチャイズ本部が定めたやり方に従って着実に成果を上げていきたいと考える方であれば、オーナーの裁量はあまり認められなくても、詳細な経営マニュアルが整備されているフランチャイズが向いています。

一方で、自分独自の経営方法を取り入れて他店との差別化を図りたいと考える方は、オーナーの裁量をある程度認めてくれるフランチャイズを選ぶ方がよいでしょう。

②事業の方向・内容について

同じ業種でも、フランチャイズにより事業の方向や内容が違ってきます。例えば、英会話教室を展開するフランチャイズの場合でも、その重点の置き方が以下のように異なります。

㋐大人を対象とした実践的なビジネス英会話

㋑幼児・児童を対象とした英会話教育

㋒高齢者などを対象とした趣味的な日常英会話

例えば、英会話教室で本格的なビジネス英会話の指導を行いたいと考える方は、㋐大人を対象とした実践的なビジネス英会話に重点を置くフランチャイズを、また、子供に英会話を教える希望がある方は、㋑幼児・児童を対象とした英会話教育に重点を置くフランチャイズを選ぶことが肝心です。

以上のように、フランチャイズ選びでは、将来自分が何をやりたいのか、自分が温めてきた計画や青写真は何かなどを再認識し、自分の方向性に合うフランチャイズを選ぶことが肝心です。

【時勢への対応力があるフランチャイズを選ぶ】

事業や商売は、その時々の時勢により大きな影響を受けます。最近ではコロナ禍を背景に、実店舗型飲食店が、営業自粛や酒類提供制限などにより苦境に立たされています。このような状況をみると、時勢の変化に素早く対応できるフランチャイズを選ぶことが、非常に重要となってきます。

例えば、コロナ禍により店内飲食が不振になり、回復の目途が立たない場合、テイクアウトやデリバリーに路線を軌道修正し、加盟店の営業を守っていくフランチャイズなどが良い見本といえます。

さらに、飲食店では、テーブルやカウンター席にパーテーションを設置し、消毒や換気を徹底するようマニュアル化しているフランチャイズも多くみられます。

また、一時、室内感染が不安視されたスポーツジムでも、消毒や換気の徹底、利用人数の制限など素早く感染対策を講じ、利用者の安全を第一に考えるフランチャイズもあります。

時勢の変化は新型コロナ関連だけではありませんが、どのような社会・経済状況の変化が生じた場合でも、それに対して素早く対応し、加盟店の営業を守ってくれるフランチャイズを選ぶことが重要です。

【提供ノウハウが充実しているフランチャイズを選ぶ】

フランチャイズに加入する大きなメリットは、フランチャイズ本部が持つ事業経営のノウハウを提供してもらえることです。

フランチャイズが提供してくれる経営ノウハウの例は、以下のとおりです。

  1.  集客・生徒募集の効果的な方法
  2.  商品・サービスの効果的な配分方法
  3.  スタッフなど人件費の節約方法
  4.  光熱水費など必要経費の節約方法
  5.  客・生徒のクレーム対処方法
  6.  事故・トラブルの対処方法
  7.  感染症対策など衛生対策

フランチャイズにより、提供してくれる経営ノウハウの種類・質・量などが異なります。経営ノウハウは加盟店経営にとって非常に重要であることから、提供してくれるノウハウが充実しているフランチャイズを選ぶことが肝心です。

【市場調査力があるフランチャイズを選ぶ】

フランチャイズ事業を展開するには、市場調査が欠かせません。フランチャイズに加入する際は、市場調査力があるフランチャイズを選ぶことが重要です。

例えば、英会話教室の分野では、フランチャイズ本部は以下のような市場調査を行っています。

①英会話習得の需要がどの程度あるか

年齢別・職業別・性別・居住地別にどの程度の英会話ニーズがあるかを調査します。その調査結果に基づき、生徒とするターゲット層、教室の立地場所を決定していきます。また、英会話の内容によってどの程度の需要があるかも調べます。

一口に英会話といっても幅が広く、幼児・児童を対象とする英会話、会社員を対象とするビジネス英会話、受験生を対象とする受験英会話・資格試験用英会話・海外留学用英会話、趣味としての日常英会話など、その内容は非常に多肢にわたっています。

それぞれのジャンルで、どの程度の需要があるかを調べ、英会話コース設定の参考とするのです。

②一般的に払える授業料の額はいくらか

一般の人が払うことができる授業料の額や他教室の授業料を調べ、授業料設定の参考とします。

③通える場所はどの範囲か

一般の人が通うことができる教室は、駅から何分までかなどを調べ、教室立地の参考とします。

④どのような授業形態に需要があるか

英会話の授業形態には、オンライン対話型、対面指導型、オンライン・対面指導併用型などがあります。どのような授業形態に人気があるか調べ、授業の形態を決めていきます。

⑤既存教室の調査

既存の英会話教室の場所・規模など競合状態を調べ、出店の参考とします。

このように、フランチャイズ事業を展開していくにあたり、市場調査は非常に重要なものです。市場調査のタイミングや精度によって、事業の成否が分かれてしまうといっても過言ではありません。

しかし、市場調査の時期や方法などは各フランチャイズによって様々で、非常に重視して綿密な調査を行うフランチャイズもあれば、あまり力を入れていないところもあります。

市場調査に力を入れているかどうかは、加盟店募集説明会や個別相談会で貰う資料を見ればわかります。市場調査に力を入れているフランチャイズの資料には、市場調査から判明した業種の現状や将来性が説明されているはずです。

フランチャイズ本部から貰う資料やスタッフの説明を聴いた上で、組織的・科学的な市場調査を行っているフランチャイズを選ぶことが肝心です。

【集客力があるフランチャイズを選ぶ】

また、集客力が優れていることも、フランチャイズ選びの重要なポイントとなります。

有名大手のフランチャイズは、テレビ・新聞・雑誌・広告・ネットなど様々な広告媒体を使って効率的・効果的な宣伝広告を行い、集客を行っています。フランチャイズ選びの際は、その宣伝広告に着眼し、以下の視点からチェックしてみることが重要です。

①宣伝広告が、視聴者の関心を惹く内容になっているか
②宣伝広告が、視聴者に良いイメージを与えるか

・飲食店=空腹、美味しいなど
・スポーツジム=健康、若々しいなど
・学習塾=先進的な教育、楽しく学べるなど

上記の視点からみて、視聴者の関心を惹き具体的なイメージを与える宣伝広告を行っているフランチャイズを選ぶことが重要です。

【サポート力があるフランチャイズを選ぶ】

サポート力があるフランチャイズを選ぶことは、非常に重要です。
フランチャイズは、加盟店が困ったときに強力な支援ができるメリットがあることから、このメリットを最大限生かすことができるフランチャイズを選ぶことが肝心です。

フランチャイズ本部のサポートは、以下のとおりです。

①経済的サポート

フランチャイズによっては、加盟店が開業間もない間は、金銭的な支援を行うところもあります。例えば、開業後〇か月間は、ロイヤリティなし、またはロイヤリティの割合を下げるなどのサポートを行うフランチャイズがあります。

開業直後は、店舗の経営が軌道に乗る前の余裕がない時期であるため、各フランチャイズともに支援に力を入れています。

②経営サポート

店舗の経営が安定せず、事業収支のマイナスが続く場合などに、店舗経営に精通した本部のスタッフが、経営面での指導・アドバイスを行います。経営面での指導・アドバイスは、顧客や生徒を集めるなどの収入向上対策、およびアルバイトなどの人件費や光熱水費の削減など支出抑制対策の両面から行います。

③人材サポート

学習塾経営では外部講師、ジム経営ではインストラクターなどの専門スタッフが必要です。
その専門スタッフが辞めてしまい、後任がなかなか見つからない場合に、フランチャイズ本部のルートで、専門的なスタッフを紹介してくれます。

④備品サポート

ジム経営ではトレーニング機器、飲食店経営では調理器具などの備品が必要ですが、フランチャイズによっては、これらの専門備品を独自のルートで確保し、加盟店に割安で提供してくれるところがあります。

⑤トラブルサポート

店舗や教室を運営していると、事故や盗難など様々なトラブルがあり、また、顧客からのクレームも発生します。
そのような場合に、フランチャイズ本部の法律に精通したスタッフがトラブルの解決に向けてサポートを行ってくれます。

【他との差別化に取り組んでいるフランチャイズを選ぶ】

フランチャイズ選びの大切なポイントの一つは、他との差別化に取り組んでいるかどうかです。フランチャイズでは、他のフランチャイズとの差別化を図ることが重要です。差別化を図ることで、利用者は、他のフランチャイズにはないものを求めて集まってくるからです。

例えば、大手コンビニフランチャイズでは、特定商品の開発に力を入れて商品の質を高め、大々的にPRすることで、その商品自体をブランド化しています。「○〇コンビニのスイーツは絶品」「○〇コンビニの唐揚げは、カラッと揚がっていて美味しい」など、差別化を図っている商品は口コミでその良さが伝わり、自然と有名になっていきます。

また、低価格を売りにしている飲食店フランチャイズが多い中、高級感のある食材やメニューを開発し、採算がとれる価格で提供しているフランチャイズもあります。利用者にとっては、手頃な価格で贅沢感を味わうことができることで好評を得ています。

近年は、各業種において、フランチャイズ間の競争が激しくなり、各フランチャイズとも新しい商品開発や新サービスの提供を心掛けています。

学習塾フランチャイズでも、講師1名対生徒1名または2名の個別指導型が普及してきており、学習システムもリアルタイムのコミュニケーションが可能なOA機器を導入しています。このように、最近では、学習塾における個別指導やOA化も他に見られない斬新な取組みとはいえなくなってきました。

今後は、他との差別化を図ることはより簡単にはいかなくなってきますが、フランチャイズの姿勢や力の入れ方で、差別化への取組は外部にも伝わってきます。フランチャイズ選びでは、他との差別化への取組に力を入れているフランチャイズを探したいものです。

フランチャイズオーナーが年収を上げるポイント

次に、フランチャイズオーナーが年収を上げるには、どのような点がポイントになるかみていきましょう。

資金計画・事業計画・収支計画を立てる

年収を上げるには、事業を軌道に乗せ、売上を伸ばしていくことが重要です。そのためには、資金計画・事業計画・収支計画を立てる必要があります。
どのような事業であっても、十分に検討された資金計画・事業計画・収支計画があれば、その計画を柱にして進むことができるからです。

①資金計画

資金計画は、開業資金をどのように調達して、どのように返済するかについての計画です。
開業に要する資金のうち、自己資金で賄える額を決め、残りは融資を受けることになります。

融資額の規模と金利、返済期間により、毎月の返済額が決まってきます。大きな融資額を短い返済期間で返そうとすると、毎月の返済額が過重になり、無理が生じて滞ってしまう危険があります。逆に、融資額が少ないにもかかわらず返済期間を長めにすると、毎月の返済負担は軽くなりますが、なかなか残債が減らないことになってしまいます。

このため、無理が生じない範囲で、効率良く返済できる計画を立てておくことが肝心です。

②事業計画

事業計画は、どのような事業を行うかの青写真です。
例えば、

㋐コンビニの場合=どのような商品をどの位の数量仕入れて、販売するか。商品別の売上見込みはどの程度かなど

㋑学習塾の場合=何の科目をどのような形で教えるか、授業料はいくらで、生徒数はどの程度を見込んでいるかなど

③収支計画

収支計画は最も重要です。

②の事業計画で立てた「売上見込」や「生徒数見込」から、想定できる売上を求めます。
売上見込額から必要経費を差し引いて営業利益を算出します。
さらに、営業利益から、融資返済額や税金を差し引いて、手残り利益を求めておきます。

集客力を高める

年収を上げる2つ目のポイントは、集客力を高めることです。店舗の集客力を高めるには、客集めや生徒募集に力を入れることです。フランチャイズでは、フランチャイズブランド自体の宣伝は、フランチャイズ本部が行っています。フランチャイズ本部は、豊富な資金を使い、テレビ・新聞・雑誌・ネット・広告など様々な媒体を通じてPRを行います。
しかし、それらの強力なPR効果によって、フランチャイズブランドは有名になりますが、そのことがストレートに個々の加盟店の周知に繋がる保証はありません。

このため、自店舗の売上を伸ばし年収を上げるには、自店舗のPRに努める必要があります。誰でも見やすく、わかりやすいホームページを作り、人目を惹く情報を掲載するなどが重要です。また、SNSも活用して積極的な宣伝を行うのも効果的です。

事業を拡大する

年収を上げるために、事業を拡大する方法も検討します。事業の拡大には、次の方法があります。

①店舗や教室の規模を拡大する

店舗や教室の規模を拡大し、店舗では商品の種類や数量を増やす、教室では科目数を増やす、募集生徒数を増やすなどの方法です。
また、単一のフランチャイズブランドから複数のブランドを扱う業態に変更する場合もあります。

(例)

唐揚げフランチャイズの専門店に、新たに別の中華フランチャイズを導入し、唐揚げと中華の2つのブランドで営業を行うなど

この場合、新業態に店舗や教室の規模が合わなければ、新しい場所に物件を探す、増築するなどの可能性もあります。

②店舗や教室を増やす

店舗や教室を別の場所に新しく開業して複数経営にする方法です。ただし、事業を拡大するのは、事業が軌道に乗り経営が安定したことを十分に確認した後のことです。まだ事業が安定しないうちに拡大すると、リスクが大きくなってしまいます。

他店との差別化を図る

他店との差別化を図ることも重要な方法です。同じ業種でも、他店にない商品やサービスを提供できれば、売上増が見込め、オーナーの年収も上がっていきます。

例えば、学習塾で、学習内容に質問箇所があれば、授業時間外でも自宅からスマホで講師に問い合わせることができるなどのサービスを導入すれば、生徒の疑問解消に繋がり、他教室との差別化に繋がります。

また、先に説明した単一のフランチャイズブランドから複数のブランドを扱う業態に変更するのも他店との差別化に該当します。同じ唐揚げフランチャイズに属していれば、どの店も同じ唐揚げメニューしか提供できませんが、そこに別の中華ブランドなどを導入することで、メニューの幅を広げ、他店との差別化を図ることが可能となります。

ただし、フランチャイズでは、フランチャイズごとの経営方針や営業方法が定められているため、その経営方針・営業方法に抵触する形でのサービス内容の変更は認められません。
このため、自分が加入しているフランチャイズのルールの範囲内で工夫・改善していくことが大切です。

コストを削減する

コストを削減することは、営業利益を残す上で、非常に有効な方法です。通常、フランチャイズ加盟店を経営するには、以下の必要経費が発生します。

  1.  ロイヤリティ
  2.  家賃
  3.  仕入原価
  4.  人件費
  5.  光熱水費
  6.  広告宣伝費
  7.  雑費

上で、①ロイヤリティ、②家賃、③仕入原価は、削減が困難です。しかし、④人件費、⑤光熱水費、⑥広告宣伝費、⑦雑費は、工夫次第で削減することが可能です。

④人件費

店舗の販売員や学習塾講師などの人件費です。加盟店オーナーが自分でできる範囲の業務はできる限り行い、人件費を削減することが重要です。ただし、オーナーに過度な負担がかからないよう注意が必要です。

⑤光熱水費

光熱水費は、店舗や教室内でルールを決めて、節電・節水に努めることが大切です。

⑥広告宣伝費

開業時を除いて有料広告はできるだけ使わず、ネットやSNS、知人を介しての口コミなどでPRを図ることとし、広告宣伝費を削減します。

⑦雑費

雑費は、店舗・教室が破損した場合の修繕費、トイレットペーパー・洗剤・雑巾・タオル・消毒用アルコールなどの消耗品を含みます。店舗・教室が破損した場合に、軽微なものはオーナーが自前で修繕できる場合があります(洒落た内装のレストランなどは不可)。

また、消耗品は、個々にみると大した金額ではありませんが、まとまると金額が膨らみます。従業員に節約の趣旨やルールを徹底し、削減に励むことが肝心です。

まとめ

フランチャイズ加盟店オーナーの年収は、業種や所属するフランチャイズにより、また、店舗の立地や規模などの諸条件で様々に異なります。
しかし、稼ぐことができるフランチャイズオーナーになるためには、いくつかの大切なポイントがあります。

①フランチャイズに加入する前段階では、以下のステップが非常に重要です。

㋐業種選び
㋑フランチャイズ選び

②加盟店の経営段階では、以下の点で努力することが重要なポイントとなります。

㋐資金計画・事業計画・収支計画の策定
㋑集客力の向上
㋒事業の拡大
㋓他店との差別化
㋔運用コストの削減

フランチャイズオーナーとして、満足のいく年収を上げていくためには、ただ漫然とフランチャイズに所属するのではなく、業種・フランチャイズ選びの段階から十分に検討を重ね、さらに開業後は、あらゆる視点から加盟店運営について創意工夫を重ねることが大切です。