良い本部と悪い本部を見分けよう

対価を払うことで既存店が持つブランド力を使用できるフランチャイズ。開業わずか数年で多店鋪経営に乗り出す成功者もいれば、契約解除となる加盟店もあります。

フランチャイズ加盟成功の秘訣は経営者の努力に依るところも大きいですが、実際はそれだけではありません。そもそも最適な「本部選び」が出来ているのかが最も大事な要素となっているのです。

本記事では加盟者にとって「良い本部」と「悪い本部」を見分けるコツを紹介したいと思います。

見分けるポイントは5つ

一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会によれば、全国のFCチェーンは1335チェーンあるとされます。マクドナルドやセブンイレブンといった超有名チェーンから昨年度は新たに6チェーン増えました。フランチャイズに加盟する人はこの本部のなかから選ぶことになります。

フランチャイズの契約期間に統一ルールのようなものはないですが、5年単位とするのが比較的多いようです。契約する際は加盟期間を意識して慎重に判断しなければなりません。

自分にとって「良い本部」か「悪い本部」は次の5つのポイントを目安に考慮してみてください。興味のある業種や経営哲学、企業規模などによって本部の選び方は変わってくるはずです。

本部の良し悪しを見分ける5つのポイント

1 フランチャイズ理念に共感できるか
2 サポート・研修体制が充実しているか
3 情報開示が徹底されているか
4 収益性・成長性は高いか
5 既存加盟店の評判は

フランチャイズ理念に共感できるか

FCビジネスを展開する企業の経営理念を確認しましょう。企業が掲げる目標やフランチャイズを始めるキッカケなどを知ることで、本部に対する理解が深まります。そのうえで加盟する理由と照らし合わせ、自分がやりたい事がここで成し遂げられるかどうかを考えてみてください。

このほか、足を使って経営者本人の人柄や職場の雰囲気を調査するのもいいでしょう。加盟後の人材採用や職場づくりなどで役立つはずです。

ここで世界最大手ファストフードチェーンであるマクドナルドの経営理念を見てみます。

「マクドナルドのビジョンは、クイックサービスレストランとして最高の店舗体験の提供により、お客様にとって『お気に入りの食事の場のスタイル』になることです。ビジョン達成の鍵は、他社の追従を許さないベストのQSC&V(クオリティ、サービス、クレンリネス&バリュー)の実践にあります」

(JFAフランチャイズガイドより)

1971年に設立されたハンバーガーチェーンは、現在世界118カ国・地域に約30,000店の店舗を構えます。創業者であるマクドナル兄弟にフランチャイズ化の展開を提案したレイ・クロックにより同社は世界一のFCチェーンに成長しました。

本部の経営理念や詳しい情報を得るためにもフランチャイズ説明会に参加するといいでしょう。企業ごとのFCビジネスに対する考え方や今後の戦略など、ネットでは手に入らない貴重な話が聞けるはずです。

サポート・研修体制が充実しているか

FC加盟の最大の魅力ともいえば「本部による強力なサポート」となります。ロイヤリティ(商標使用料)を支払う代わりに、本部のスーパーバイザーらによる経営指導を受けることができます。

公正取引委員会が行った「加盟店に対する実態調査(2011年)」によれば、加盟者のおよそ半数が経営未経験とされています(加盟前の職業、コンビニでは56.0%、コンビニ以外では42.9%が会社員)。

経営未経験者に対しては、研修制度が用意されているかどうかも重要なポイントです。開業前研修を受けることでスムーズにスタートを切ることができます。なかには収入を得ながら運営ノウハウを学ぶことができる本部もあります。
また開業後のサポートも充実しているか調べましょう。研修を済ませたらアフターフォローが全くなかったという例もよく耳にします。開業資金の安さにばかり目を奪われないように気を付けることが肝要です。

運営マニュアルもきちんと更新されているかも注目です。古い店舗運営マニュアルを何年も使い続けている企業などには注意しましょう。

情報開示が徹底されているか

中小小売商業振興法では、本部に対して加盟希望者に契約内容について十分な情報を開示する書面を提示することを義務付けています。情報開示書面(法定開示書面とも)と呼ばれ、加盟後に生じるトラブルを未然に防ぐことに役立つものです。

情報開示項目

1 加盟時に支払う加盟金、保証金その他(ロイヤリティなど)の金銭に関すること
2 加盟者に対する商品の販売条件に関すること
3 経営の指導に関すること
4 使用させる商標、商号その他の表示に関すること
5 契約期間、契約更新、契約解除に関すること
6 その他、経済産業省令で定めること

このほか、「中小小売商業振興法施行規則」「独占禁止法フランチャイズガイドライン」でも契約時における加盟者への十分な情報開示を求めています。加盟する際は、本部が提供する情報と法律で求められる情報開示項目を照らし合わせることが重要です。企業のコンプライアンスに対する意識の高さをはかることができます。

たとえばコンビニエンスストア大手のファミリーマートでは、「資本金」「事業目的」「従業員数」「売上高」「出店状況」「経営指導に関する事項」などの基本的情報のほか、「テリトリー権の有無」「競業禁止義務の有無」「契約違反の違約金に関する事項」「ロイヤリティの計算方法」「損失に対する補償内容」を公開しています(JFAフランチャイズガイドより)。

加盟後のトラブルとしては、「マニュアルが勝手に差し替えられた」「実態が変わっているのにマニュアルの内容が変更されていない」といった問題が多発しています。

トラブルに巻き込まれた時に冷静に対処するためにも、契約内容は全て把握するよう努めることが大切です。

収益性・成長性は高いか

本部に加盟することで収益を上げられるか、成長が見込めるかといったことを検討する必要があります。たとえ加盟料ゼロでも毎月のロイヤリティがあまりに高すぎたり、多店舗展開が望めないようなら契約を見直すべきでしょう。

フランチャイズでは商品価格や仕入先などは本部から指示されるため、加盟者が決められることに制限があります。しかしながら、本人の努力や工夫なしに経営は成功しません。積極的な商品開発や消費者への営業などを受けて入れてもらえる風土が本部にあるかがチェックポイントです。

既存加盟店で多店舗展開している経営者がいるかも目安となります。

既存加盟店の評判は

本部に対する評判は既存加盟店から聞くのが最も手っ取り早い方法と言えます。なかには本部の悪口を言わないよう指導されている加盟店もあると思いますが、リアルな意見を聞くことができます。

本部と加盟店は法律上は独立した対等関係にあるとされますが、実際は明確な上下関係に分かれます。「加盟店に対する実態調査(2011年)」によれば、コンビニエンスストアでは半数近くが本部の要請に応じざるを得ない状況であると答えています。「本部が加盟店をどのように見ていると思うか」の調査では、54.9%が「本部よりも弱い立場の取引相手であると見ていると思う」と回答しました。

本部からの締め付けが厳しすぎる場合、加盟店からの評判も芳しくないでしょう。フランチャイズでは一度契約すれば、本部とは数年の長い付き合いになります。本部と良好な関係を維持できるかどうかも、経営を成功させる大きな要因となります

情報開示を公表している企業一覧

日本フランチャイズチェーン協会が運営するウェブサイト「JFAフランンチャイズガイド」(http://fc-g.jfa-fc.or.jp/article/article_36.html)では、情報開示書面を公開している企業を業種別に検索することができます。「小売業」「外食業」「サービス業」ごとに、閲覧できるので、加盟を検討している人は一度チェックしておくとよいでしょう。