東南アジアのフランチャイズ市場①〜マレーシア、タイ、インドネシア編〜

成長を続けるアジア経済。アジア開発銀行が今年4月に公表した「アジア経済見通し2017」によれば、アジア途上国は3分の2以上で経済が上向きであり、世界の経済成長の約6割を占めることが明らかとなりました。

とくに東南アジアの成長率は明るく、域内全ての国で経済拡大が見込まれています。インドネシア、マレーシア、ベトナム、などの一次産品生産国では、世界の食糧・燃料価格の回復により、成長が加速し、昨年4.7%だった経済成長率は2018年には5%になると予測されます。

また、東南アジア経済を支えているのが、フランチャイズ企業の存在です。東南アジアではフランチャイズ事業が拡大し続けており、雇用の創出、経済拡大、GDPの成長に影響を与えています。

本記事では、東南アジア各紙を参考に、ASEAN諸国におけるフランチャイズビジネスがどのような普及を見せているか、どのような新しい価値を創造しているかなどを詳細に見ていきます。

マレーシアのフランチャイズ、順調に拡大

第2四半期の実質GDP成長率が前年比5.8%だったマレーシア。ジェトロ(日本貿易振興機構)によれば、予想を上回る経済成長率が資金の流入や通貨リンギット(MYR)の上昇につながり、今年上半期における経常黒字は、前年比56億リンギ増となる149億リンギ(約3874億円)となりました。

外資系企業が積極的に進出

タイビジネス紙「ThaiSMEsCenter」によると、マレーシアにおけるフランチャイズ市場では、「食品飲料事業」が31%と最も多くを占めます。次いで、「衣料品、アクセサリー事業」11%、「美容と健康」8%、「小売り」4%となりました。

マレーシアフランチャイズ市場

順位 業種 割合
1 食品飲料 31%
2 衣料品、アクセサリー 11%
3 美容と健康 8%
4 小売り 4%

フランチャイズ企業は400社以上あり、フランチャイズブランドは370におよびます。このうち34%がアメリカ企業で、残りはASEAN諸国となります。平均初期投資額は3000ドル(約33万円)とされます。

中国アリババもマレーシア進出

Eコマース大手の中国アリババは7月、マレーシアにデータセンターを開設すると発表しました。マレーシアでは日本の美容グッズ・化粧品などが人気で、今後はECサイト市場の拡大が見込まれています。

新たな投資政策を始めたタイ

国民の95%以上が仏教徒であるタイは親日国としても知られ、多くの日本企業が進出しています。

アジア開発銀行によれば、2017年のGDP成長率は前年比3.5%と予想されています。バンコク日本人商工会議所(JCC)が発表した「2017年上期タイ日系企業景気動向調査」では、在タイ日系企業の業況感は、2017年上期から下期にかけて大きく改善する見通し(参照:ジェトロ)です。

ほとんどが地元企業

フランチャイジーの50%以上がレストラン、カフェなどを経営する飲食関係とされるタイ市場。現在、フランチャイズ事業者1523社、加盟店12000店舗以上で、このうち85%が地元企業で、残りはアメリカを中心とした外資とされています。2020年にはフランチャイズブランドが500を超えると予想されます。

今後は東部経済回廊(EEC)に注力

タイ政府は、タイ湾東部地域3県をEEC(Eastern Economic Corridor)と指定し、今後5年間で1兆5,000億バーツ(約4兆8000億円)の投資を官民連携で行うことを発表しています。

これら地域は「東洋のデトロイト」と呼ばれ、石油産業が自動車産業が集積しています。

規制が厳しいインドネシア

人口2.5億人とほぼ日本倍あるインドネシアは、イスラム教徒が9割近くを占めます。1997年のアジア通貨危機後、インドネシア政府はIMFとの合意に基づき、経済構造改革を実施。2005年以降の経済成長率は、世界金融危機の影響を受けた2009年を除き、5%後半~6%台という比較的高い水準を維持しています。昨年の経済成長率は5.0%でした。
ただし、経常収支の赤字化や通貨安もあり、輸出促進による収支改善が課題となります。

売り場面積により細く規制

インドネシアは外資の規制が厳しいことで知られます。2007年、新投資法の成立により、国防産業に対する外国資本の投資は禁止されました。また昨年5月には新たに禁止業種・規制業種の一覧であるネガティブリストが公開されました。

デパート・スーパーマーケット・コンビニなどは売り場面積によって、外資比率が細く設定してあり、たとえば「売場面積が400平方メートル未満の、コンビニエンスストア・コミュニティストアを含むミニマーケット」は、「内資比率100%」が条件となります。

またレストラン・ケータリングサービス、カフェなどの外食は「外資比率51%」が条件となります。

コンビニでは外資系が8割以上

ジェトロが公表しているインドネシアにおけるコンビニエンスストア店舗数推移(2011年)を見ると、外資系企業が市場シェアの81%を占めます。

最も多いのがサークルKの259店舗で、このほかミニマート36店舗、AM・PM28店舗、アルファ・エクスプレス8.9%、セブンイレブン0.8%と続きました。

しかし、これらのコンビニエンスストアは、そのほとんどが地場企業とフランチャイズ契約を結び、ライセンス供与を行ったものになります。

FCコンビニ店舗数

店舗名 2009年 2010年 シェア
サークルK 238 259 72%
ミニマート 36 36 10.0%
AMPM 28 28 7.8%
アルファ・エクスプレス 0 32 8.9%
セブンイレブン 0 3 0.8%

(ジェトロ公表資料より作成)