加盟後に新規事業を導入するケース、コンビニでは7割

フランチャイズビジネスでは、加盟契約後に本部から新規事業を導入するよう指示されることは珍しくありません。特にコンビニエンスストアでは、7割近い加盟店は「導入経験がある」と回答しています(公正取引委員会資料より)。

導入事例としてコンビニエンスストアでは「ATM(現金自動預払機)の設置」が最も多く、コンビニ以外では「宅配便・メール便の取次ぎ」が最多となりました。

公取委によれば、新規事業の導入の経緯では、契約で「新規事業に関する条件」に基づいて行われたものが最も多くなりましたが、なかには契約条項に「新規事業導入に関する定め」がないにも関わらず、一方的に導入させられたり、導入しなければ不利益的な取り扱いをすると示唆されたりする場合などもあったようです。

本記事では公正取引委員会の公表資料をもとに、フランチャイズビジネスにおける「新規事業の導入」を詳細に見ていきます。

新規事業を導入したことがあるコンビニ、68%

公正取引委員会が2011年に行った調査では、加盟後、新たに事業を導入したことがある加盟店の割合は、コンビニエンスストアで68.1%、それ以外では14.3%となっています。

「ATM設置」が最多の72.2%

新しく導入した事業内容を見ると、コンビニエンスストアでは「現金自動預払機(ATM)の設置」が72.2%で最も多くなります。

次いで、「インターネット販売における消費者への物品の受渡し業務」70.8%、「チケット・プリペイドカード・宝くじの販売等」68.9%、「マルチメディア端末機(そのような機能を有するコピー機を含む)の設置」66.8%、「フード類の調理販売」46.3%、「本部オリジナル商品の販売」44.7%「宅配便・メール便の取次ぎ」43.4%、「公共料金・通信販売等の料金等収納業務」37.4%、「商品等の宅配業務」20.6%、「その他」5.5%と続きました。

加盟契約後、新規導入した事業内容

現金自動預払機(ATM)の設置 72.2%
インターネット販売における消費者への物品の受渡し業務 70.8%
チケット・プリペイドカード・宝くじの販売等 68.9%
マルチメディア端末機(そのような機能を有するコピー機を含む)の設置 66.8%
フード類の調理販売 46.3%
本部オリジナル商品の販売 44.7%
宅配便・メール便の取次ぎ 43.4%
公共料金・通信販売等の料金等収納業務 37.4%
商品等の宅配業務 20.6%
その他 5.5%

(公正取引委員会より作成)

(複数回答あり)

コンビニ以外では「一方的に導入された」5割

新規事業を導入するに当たっては、契約条項に記載するか、無ければ加盟店と十分に協議をした上で行われることが求められます。
しかし、公取委の報告書によると、なかば強引に新規事業の導入を迫られた加盟店が少なくないことが分かります。

たとえば、コンビニエンスストアでは、新規事業導入に際して「本部との契約に定められた新規事業を導入する際の条件に基づき、自動的に事業を導入した」とする回答が最も多く67.3%を占めるも、「本部との契約に新規事業を導入する際の条件が定められていないのに、一方的に又は十分な協議なく新たな事業が導入された」と回答した加盟店が19.4%ありました。

さらに、「不利益な取扱いがあった又は不利益な取扱いをする旨示唆され、一方的に又は十分な協議なく新たな事業が導入された」ケースは1.0%ありました。

このほか、「本部との契約に新規事業を導入する際の条件が定められていなかったため、本部と十分に協議して新たな事業を導入した」は12.3%でした。

一方、コンビニエンスストア以外では、「本部との契約に新規事業を導入する際の条件が定められていないのに、一方的に又は十分な協議なく新たな事業が導入された」が最も多く50.0%と半数におよびました。

次いで、「本部との契約に定められた新規事業を導入する際の条件に基づき、自動的に事業を導入した」25.0%、「本部との契約に新規事業を導入する際の条件が定められていなかったため、本部と十分に協議して新たな事業を導入した」25.0%となりました。

回答内容 コンビニエンスストア コンビニエンスストア以外
本部との契約に定められた新規事業を導入する際の条件に基づき、自動的に事業を導入した 67.3% 25.0%
本部との契約に新規事業を導入する際の条件が定められていなかったため、本部と十分に協議して新たな事業を導入した 12.3% 25.0%
本部との契約に新規事業を導入する際の条件が定められていないのに、一方的に又は十分な協議なく新たな事業が導入された 19.4% 50.0%
不利益な取扱いがあった又は不利益な取扱いをする旨示唆され、一方的に又は十分な協議なく新たな事業が導入された 1.0% 0.0%

(公正取引委員会より作成)

本部と加盟店の立場に明暗

新規事業に関する導入が契約条項にないからと言って断ることのできた加盟は少ないようです。

断ることができない加盟店

「本部との契約に新規事業を導入する際の条件が定められていないのに、一方的に又は十分な協議なく新たな事業が導入された」または「不利益な取扱いがあった又は不利益な取扱いをする旨示唆され、一方的に又は十分な協議なく新たな事業が導入された」と回答した加盟店がその後どのような対応をとったかの調査では、コンビニエンスストアの場合、「受け入れざるを得なかったため受け入れた」との回答が最も多く、89.7%でした。また、コンビニエンスストア以外では100%に達しました。

回答内容 コンビニエンスストア コンビニエンスストア以外
受け入れざるを得なかったため受け入れた 89.7% 100.0%
受け入れざるを得なかったわけではないが受け入れた 10.3% 0.0%

(公正取引委員会より作成)

また、コンビニエンスストアで、「受け入れざるを得なかったため受け入れた」加盟店のうち、「不利益を被った」との回答は51.5%に達しました。

新規事業は単価が低いことが多い?

新規事業を導入した結果、「損失を被った」とする加盟店にその理由を調査したところ、コンビニエンスストアでは「新規事業に係る手数料収入が少ない(単価が低い等)」との回答が58.5%で最も多くなりました。

次いで、「新規事業を行うための人件費が増大した」55.6%、「新規事業を行う上で必要な電気料金や光熱費等の負担が大きい」33.1%、「新規事業の導入に伴い設置した機器の維持費用(リース代等)の負担が大きい」11.3%、「新規事業の導入に伴い設置した機器の設置費用(工事費等)の負担が大きい」10.6%、「その他」41.5%と続きました。

回答内容 割合
新規事業に係る手数料収入が少ない(単価が低い等) 58.5%
新規事業を行うための人件費が増大した 55.6%
新規事業を行う上で必要な電気料金や光熱費等の負担が大きい 33.1%
新規事業の導入に伴い設置した機器の維持費用(リース代等)の負担が大きい 11.3%
新規事業の導入に伴い設置した機器の設置費用(工事費等)の負担が大きい 10.6%
その他 41.5%