ワークマンのフランチャイズが人気の理由とは

ワークマン公式
ワークマン公式

現場作業服や安全靴などを主に手掛けるワークマン(WORKMAN)の新店舗を目にする機会が増えています。ワークマンは苦戦が続く小売業界の中で、現在進行形で出店攻勢をかける優良企業です。ワークマンは、国内最王手の作業服・作業関連用品の専門店になり、2020年3月末時点で863店を日本45都道府県にフランチャイズ展開しています。そして2025年に1,000店まで店舗数を伸ばす計画で拡大・成長を続けています。

そこで今回の記事では、ワークマン自体の魅力と合わせて、ワークマンのフランチャイズの特徴について詳しく解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

ワークマンとは

ワークマンとは

ワークマンは「For the Customers 働く人に便利さを より良いものをより安く」という経営理念を持った、ワーキングウエアおよびアスレジャーウエア、作業関連用品の専門店チェーンになります。また、ワークマンはベイシアグループの中核企業になります。

ベイシアグループは、ショッピングセンター“ベイシア”やホームセンター“カインズ”などの小売業を中心とする、物流チェーン6社を中心とした合計28社のグループ総店舗数約1,879店の年商9,435億円の流通企業グループです。ベイシアグループの強みとして、商品開発や人材育成やロジスティクスや情報システムなどの各分野の連携がグループ各社と連携がなされ、「より良いものをより安く」という理念の実現をグループ全体で追求できる点です(参照:ベイシアホームページ「ベイシアグループについて」)。

ワークマンは、衣類を中心とする小売業の中で、以下の2つの市場に特化した形で事業を展開しています。

ワークマンの市場

①ワーキングウエア市場
②アスレジャーウエア市場

①ワーキングウエア市場
ワーキングウエア市場とは、作業服の市場です。もともと、ワークマンはワーキングウエアの専門店として事業を開始しています。ワークマンは自営業や一般向けのワーキングウエア市場1,430億に対してシェア20%の287億円でシェアNo1に輝いています*。

②アスレジャーウエア市場
アスレジャーとは、Athletic(アスレチック)とLeisure(レジャー)を組み合わせた造語です。もともとはヨガウエアの進化した形で浸透していった機能性が高くストレスが少ないスポーツウエアを普段着に取り入れるスタイルを言います。

もともとワークマンが得意とするワーキングウエアの特徴は、スポーツウエア同様に機能性が高いことでいた。そのため、ワーキングウエアの機能性と低価格という優位性をミックスしてワークマンはアスレジャーウエア市場で「WORKMAN Plus(ワークマンプラス)」を展開しています。

アスレジャー市場は8,558億円の市場規模があります。その中の普及価格が低く機能性が求められる4,000億円の市場規模にワークマンは狙いを定め目標シェアを25%(売上1,000億円)に設定しています*。

このアスレジャーウエア市場での事業展開がワークマンの成長に繋がっています。ワークマンはワーキングウエアにおいては、他を寄せ付けない形でシェアNo1でした。しかし、建設作業員などは減少傾向が続いていたため、もともとニッチの市場はさらに縮小を続けていました。そこで、プロという市場ではなくより広がりのある一般人の市場であるアスレジャーウエア市場へ進出・展開することに成功しました。

具体的な展開商品としては、業務用の防水・防寒ウエアは機能性と低価格であることからプロはもちろん一般客がレインコートに求めるニーズにも合致したため人気を集めました。(参照:株式会社ワークマン「個人投資家向け会社説明会資料(2019年11月)」)

ワークマンの特徴

ワークマンの特徴は、以下の2つにあると言えます。

ワークマンの特徴

①事業を展開する市場が限定的である
②驚異のコストパフォーマンス

①事業を展開する市場が限定的である
ワークマンの特徴は衣服の小売でありながら、機能性で勝負することができるワーキングウエアとアスレジャーウエアという商品を限定して事業を展開している点にあります。

ワークマンもアパレル小売業に含まれます。アパレル小売業は約9.2兆円の市場であるといわれています*。その中で、自営業や一般向けのワーキンウエアとアスレジャーウエアの両市場を足した約1兆円の市場ですが、全体の約10.9%に過ぎません。

しかし、事業を展開する市場が明確かつ限定されているため戦略も分かりやすいと言うことができます。事業を展開する市場でシェアNo1を獲得することで、ブランディングや価格決定権などその後の事業展開を非常に優位に進めることができます(参照|株式会社矢野経済研究所「国内アパレル市場に関する調査を実施(2019年)」)。

②驚異のコストパフォーマンス
経営理念にある「より良いものをより安く」を実現しているのが、コストパフォーマンスの良さと高い機能性の実現になります。

ワークマンは、もともと大量生産による原価を抑える方法を採用していました。ワークマンはワーキングウエア市場ではシェアNo1であったため、強い規模の利益を活用することができました。その結果、プロが求める高品質を維持しながら他社が真似することができない低価格を展開することに成功していました。

そして、ワーキングウエア市場で得て規模の利益の活用とさらなる強化につなげているのが、以下の3つです。

  • ・PB商品の展開
  • ・プロ向けのワークマンと一般客向けのワークマンプラスの商品の共通化
  • ・常に安いが、セール等をしないエブリデイロープライス(EDLP)戦略

ワークマンは、用途別にアウトドアウエア「フィールドコア」とスポーツウエア「ファインドアウト」とレインスーツ「イージス」の3つのPBブランドを展開しています。これらのブランドを含めて、ワークマンでもワークマンプラスでも商品展開を統一しています。販売のアプローチを変えることで顧客層を広げていますが、商品の内容を共通化していることで規模の利益の活用と強化につなげています。

また、エブリデイロープライス(EDLP)を実現するため、いつでも同じ低価格での販売を実施しています。クリアランスセールなどで値下げ販売を継続的に行う場合には、通常時価格とセール価格の両方を考慮して利益が出るように価格設定をしなければなりません。そのため、EDLPを前提に価格設定を行うことで、利益を確保しながらも安さを実現することができます。このEDLPも、大量仕入れを販売しきれる販売量=規模の利益があって初めて成立できるものです。

ワークマンの成長戦略

ワークマンは、フランチャイズ(FC)展開を進めています。2020年3月末時点で868店舗あるうちの96.1%の734店舗がフランチャイズ店舗になります。5年前の2015年3月末時点でフランチャイズ店舗が641店舗でフランチャイズ比率が85.6%でしたが、大きくフランチャイズ店舗と比率が増えていることが分かります。これは既存店舗の売上が増えていることと、新規開店時点からのフランチャイズ化を推進した結果になります。

ワークマンの成長戦略

また、ワークマンは顧客利便性向上による販売強化を行っています。具体的には、「良質アンバサダーの発掘」と「EC販売強化」などに注力しています。

SNSによってアスレジャーウエア需要を発掘できたことから、SNSや口コミなどの活用に力を入れています。その中で、特に力を入れているのが良質なアンバサダーを発掘することです。現在は、25名のアンバサダーがいますが、これを2021年3月末までに50名にまで増やす計画になっています。良質アンバサダーやSNSなどの活用によって、潜在顧客の取込みによる新規顧客や新規顧客のリピーター化を進め、コーディネート重視の売り場づくりを進めています。

また、EC販売については店舗在庫を活用した様々な手法によって、店舗への送客を強化しています。具体的には、Webで申込を行い、店舗で受取すれば送料が無料になります。また、その場での試着やサイズ交換も可能で、最短3時間で受け取りができます。また、法人向けにはネーム加工などのサービスも行っています。

これらの顧客層の拡大と店舗集客戦略により、2019年の年商1億円以上の高収益店舗は、714店舗と全体の83%以上の店舗が高収益を達成しています。利益が出ているため、フランチャイズ契約の99%というほぼ全店が再契約を行っています。また、その再契約の6~7割が次世代に事業を引き継いでいます*。これは日本の利益が出ない事業に後継者が表れにくい事象と逆を行くパターンと言えます(参照:ワークマン「数字で見るとよくわかるワークマン経営者の特徴」)。

ワークマンのフランチャイズ

ワークマンのフランチャイズ

ワークマンは、2025年に1,000店舗の出店計画の達成を目指しています。また、前述のとおりプロ向けのワーキングウエアでは断トツのシェアを誇り、規模の利益を活用できる体制でより市場が大きいアスレジャーウエア市場や一般客向けに事業を広げようとするユニークな展開により成長を続けています。

ワークマンは、まだ店舗数を伸ばしていこうとしている企業であり、店舗はフランチャイズによって増加させようとしています。そのため、商品力などとは別にフランチャイズ加盟店になるのも非常に魅力的な条件になっています。

今までのワークマンは、新店開業時には自社経営の直営店としてオープンしてきました。ワークマン本部の開発部門のルールと基準にそって本部が出店を決定しています。これにより、一部のフランチャイズで見られるような同業同士の競合を避けることができます。この新規開店の方法も、ワークマンの成長を続けている要因の一つになっています。

その新店舗の売上が6,500万円を超えたタイミングでフランチャイズ経営に切り替える流れでした。このやり方であれば、開店時の立地選びを100%ワークマン側の出店計画に沿って選ぶことができます。また、フランチャイズオーナーとしては、すでに売上が一定以上あるという「顧客がついている」「スタッフが店を回せる」といった状態で経営を引き継ぐことができます。

ワークマンのフランチャイズ契約

ワークマンのフランチャイズ加盟店になるには、ご自宅の近隣に募集店舗があることが絶対条件になります。自宅の近くに募集店舗がない場合や条件に合致しない場合にはワークマンのフランチャイズを始めることができません。以下の4つの加盟条件があります。

4つの加盟条件

【4つの加盟条件】

①店舗運営に専念できる個人契約である この事業に専念することが必須条件になっています。そのため、副業でワークマンの加盟店になることはできません。その他の事業と共に行うことになる可能性が高い法人契約や個人事業主は契約することができません。
②ともに50歳未満の、専従者と二人で加盟することができる フランチャイズ契約者と共に経営に専念することができる50歳未満の専従者が必要です。この専従者は契約者と夫婦関係にあることが原則ですが、兄弟や姉妹や従妹などの三親等内であってもなることができます。1名だけ50歳以上という状況でも本条件を満たすことができませんので、注意が必要です。
③地元で生活し、通勤が30分圏内*の方 フランチャイズ店舗を開業している土地に対して地縁がない場合にはフランチャイズオーナーになることができません。また、現在地元で生活していない単身赴任者なども同様にフランチャイズオーナーになることができない場合があります。*通勤時間はワークマンプラスのフランチャイズの場合は30分圏内で、ワークマンの場合には40分圏内になります。
④健康状態が良好である フランチャイズ契約には、健康診断書の提出が必須になります。

●フランチャイズ契約
フランチャイズ契約には、総額300万円(税別)の資金が必要です。内訳は以下になります。

加盟金 75万円(消費税が別途必要)
開店手数料 100万円(消費税が別途必要)
研修費 25万円(消費税が別途必要)
保証金 100万円*
開店時出資金 任意*(商品代金の支払いに充当)

*契約満了終了時に変換の対象となります。ただし、全額ではありません。

また、これ以外に研修に行く交通費や資格取得やつり銭準備金や、1ヶ月程度の生活費などでおよそ100万円程度の資金がフランチャイズ契約の必要資金とは別で必要になります。

・契約期間と再契約
契約は6年間で終了します。契約終了後には、加盟店と本部のお互いの合意があれば再契約を行うことができます。なお、この再契約の率が2019年3月時点では97%と非常に高くなっています。再契約時には、再契約料200万円が上記費用とは別に必要になります。

・報酬
報酬は、荒利益分配方式を採用しており、以下の計算でフランチャイズオーナーに報酬が支払われます。

・荒利益*×40%

また、店舗には年間22日の本部指定の店舗休日があります。また営業時間も〇時から〇時と定められているため、休日が取りやすい環境にあるということができます。

フランチャイズに関わらず、収入がどのくらいになるのかは働く上で最も重要でかつ気になる要素の一つであることは間違いありません。ワークマンは、自社のホームページにて、全国平均の売上や粗利率を利用してのシミュレーションが公開されています。そのシミュレーションによると、約80万円が収入となります。これは全国平均の売上1,150万円と荒利益率36%を利用して、以下のような計算をしています。

(報酬額)全国平均の売上1,150万円×平均荒利益率36%×加盟店割合40%=約166万円
そこから人件費(40万円)や在庫返済や諸経費合計46万円を差し引くことで収入を算出できます。

*荒利益は、一般的には売上から商品原価を差し引いた利益をいいます。

・加点主義
ワークマンは、加盟店オーナーのやる気を引き出すために複数の褒賞金制度を導入しています。以下のような報奨金で加盟店平均80~100万円を年間に獲得していて、300万円以上の金額を獲得することができます。

サクセス倶楽部 20万~50万円/年 年間の売上が1.5億円以上の店舗が褒賞対象になります。
買取懸賞金 30万円/年 ルールを順守し、返品がない(不良品は除く)店舗が対象になります。
販売コンクール 3万~10万円/年2回 対象となる商品の販売戸数を40前後の店舗で競います。
ベストストア・オペレーション証 5万または10万円/年2回 基本4原則*の徹底による店舗の清潔さを競います。全国20位以内の店舗の場合には10万円で、100位以内の場合には5万円になります。
ステップ・アップ賞 3万~150万円/年2回 前年比売上101%以上の店舗を表彰します。

・研修
フランチャイズ運営においては、業界未経験の方も多くいます。そのため、研修の成否が店舗運営の成否に大きく影響してきます。ワークマンでは、参加人数を2名に絞った集中的な9日間のスケジュールで、座学研修3日と実店舗研修6日間を行います。

研修は、ワークマンの経営理念やその特性を学習することから始まり、オペレーションマニュアルを利用して店舗でのオペレーションを学びます。実際の店舗で6日間研修を行うため、実際の運営を学びながら質問や疑問に答えることができます。
また、その後の店舗での研修では、基本4原則(クリンリネス/フレンドリーサービス/商品マッサージ/こまめな発注)について実習と共に学びます。

なお、開業後についても店舗運営が安定的に実施できるように、適時スーパーバイザーが指導することが可能です。

●契約までのスケジュール
フランチャイズ契約の申込から実店舗での加盟が開始するまでには、およそ4~5か月が目安になります。また、加盟契約が開始されるまでには書類選考や審査(信用調査)や部長面接などがあります。場合によっては店舗ごとの加盟契約の申込になるため、1店舗に複数の申込者が現れることもあります。そのため、働きながら加盟契約の申込を行う場合には、部長面接の結果をうけて退職手続きをすることが推奨されています。

申込は、個別に現地で行う説明会に参加することが必要です。フリーダイヤルもしくはワークマンHP説明会フォームからお申込みができます。なお、説明会に参加するためには、前述の加盟条件に合致していることが必要となります。また、募集店舗一覧に記載されている店舗のみの応募が可能で、募集店舗以外で出店の要請を行うことはできません。

特徴

特徴1 ホワイトフランチャイズ

ワークマンは、開店5分前に店舗にきて閉店5分後に帰られる仕組みを構築しています。閉店してから売上を締めると、閉店後に仕事を残すことになります。そのため、ワークマンでは売り上げの締めを14時に実施しています。1日の売上げを計算するのは翌日の締めを待つ必要がありますが、経営者や責任者が閉店後にやらなければならない仕事を減らすことを優先しています。

また、現在コンビニのフランチャイズでは24時間年中無休でサービスを継続させていることへ社会的関心が強くなっていますが、ワークマンは年間18日の店休日を設定していました。それが2020年には4日増加した年間22日に休日が増加しました。また、営業時間もアパレル店舗としては早い7時からにはなりますが、閉店時間は20時までと夜遅い時間帯まで店舗を開く必要はありません。

ホワイトフランチャイズの実現を真剣に考えるワークマンだからこそ、契約終了をする経営者の約半数が自身の家族(お子様など)や従業員に事業を継承していきます。大事な家族や従業員に経営を引き継ぐのは、経営者の満足度が高い証拠といえます。

これは前述のとおり、契約更新率が97%と高いこともワークマンがホワイトフランチャイズであることを示している数値といえます。

特徴2 安定した経営基盤が保証されているうえで高収入

ワークマンの出店に際しては、必ず繁盛する店舗を作ることが目指されています。そのため、ワークマンの出店地選びは100%ワークマン本部が決定しています。出店地域は、その地域のニーズや需要度が高い地域に集中的に出店するドミナント政策に則って決定されています。積極的な出店をおこなうことと、全ての店舗がお客様の支持を得て、繁盛する店舗になるように綿密な出店を行っています。

また、今までは出店時にはワークマン本部直営で運営を行っていました。本部直営が最も難しい新規出店時期を乗り越えて、フランチャイズオーナーに引き継ぐ形を採用していました。安定軌道に乗ったと判断できる売上げ6,500万円を超えたタイミングで、開店時からフランチャイズオーナーに経営を転換していました。

万全な出店戦略に加えて、高機能で低価格で高シェアを誇る商品群をワークマンは持っています。3つのPBブランドを展開して独自性も確保しています。また、アパレルでは常態化している季節商品のクリアランスセールなどの値引き販売率はワークマンでは2%以下と圧倒的に低く抑えられています。

そのため、低価格ではあるもののほぼ常に定価販売を実現しています。また、値引き販売を行う場合には、そのロスの60%を本部が負担しているのでフランチャイズオーナーの負担を軽減することができます。

これらの結果、FC経営者の年収は19年3月期時点で平均1,200万円と、前年度から14.0%増加することに成功しています。ワークマンでは、今後さらに店舗の売上げを2億円まで伸ばすことで、フランチャイズオーナーの平均収入を2,000万円まで増加させようとしています。

現在でも、売上が2億円を超える店舗は14店舗あります。アスレジャーウエア効果による一般客の取込みによる売上増加によって、2億円越えの店舗数を20期3月末には3倍近い40店舗へと増やし、さらに21期3月末には100店舗以上にするべく事業は進んでいます。

実際に、ワークマンのフランチャイズで1店舗の売上が1億円以上になっている店舗は2014年には343店舗でした。これが、2019年には714店舗となり、5年で約3倍近く増加した実績があります。2019年時点での店舗数は858店舗であるため、2014年時点で5割を切る状態から8割以上の店舗が1億円以上の売上を達成していることになります。

継続的にフランチャイズ全体の成長が図られていく結果、1店舗の平均年間売上1億3,800万円を実現し、フランチャイズオーナーの平均月収は136.6万円を実現しています。この136.6万円は10年間で2倍以上に成長しています。

高い商品力と高いシェアを維持・強化していくことで、ワークマンのフランチャイズビジネスは安定かつ高収入を実現しています。そのため、ワークマンのフランチャイズオーナーは1店舗の経営で必要な収入を賄うことができます。これが、ワークマンの加盟店条件で副業などを控えてもらうことを依頼できる背景にあります。

また、安定という意味で欠かせないのは、フランチャイズ本部の経営の安定・成長です。ワークマンでは、以下のように16年3月期から20年3月期までの5か年で当期純利益も2倍以上の成長になっています。

≪ワークマンの5か年の当期純利益推移≫

当期純利益(単位:百万円)
16年3月期 6,233
17年3月期 7,142
18年3月期 7,844
19年3月期 9,809
20年3月期 13,369

特徴3 様々な支援制度

ワークマンのフランチャイズには独立をサポート・バックアップする支援制度があります。
特に、フランチャイズ契約時の時事業を開始するタイミングにおいては、まとまった資金が必要になります。

一方で、開業において大きな課題になるのも資金準備です。具体的には、ワークマンのフランチャイズオーナー向けの開業時に以下のような資金支援制度があります。

  • ・ヤング加盟店(39歳以下)支援制度
  • ・オープンスタート支援制度
  • ・公的金融機関の紹介

・ヤング加盟店(39歳以下)支援制度
意欲のある若い経営者の活躍を支援します。ワークマンのフランチャイズビジネスは、長期的に続けられる安定的な収入とビジネスモデルであるため、フランチャイズ契約の継続率が非常に高くなっています。そのため、若いオーナーであれば永く店舗経営において活躍ができます。

一方で、年齢が若いとやる気はあるけれど、フランチャイズ契約に必要な資金が潤沢ではない場合もあります。そのような時に、必要資金の一部をワークマン本部から融資を受けることができます。

・オープンスタート支援
ワークマンでは、新規店舗での売上が6,500万円に到達するまでの店舗運営をワークマン本部が実施します。しかし、新規店舗をオープンの時から加盟すると、通常の必要資金より50万円低い資金で加盟することができます。

・公的金融機関の紹介
開業時の資金調達方法で、多くの開業者が利用するのが公的金融機関になります。公的金融機関とは、民間の金融機関のサービスが行き届きにくい対象に融資などの金融サービスを提供しています。開業資金を民間の金融機関から融資を受けることは簡単ではありません。その点で、公的金融機関は開業資金の融資に対して積極的な融資の姿勢があります。

ワークマンでは、加盟資金の1/3を超えた資金を用意することを前提に公的金融機関を紹介することができます。

フランチャイズ展開をしながら、消費者ならびにフランチャイズオーナーとワークマンのそれぞれが利益を得られていくというモデルが構築できていることは大きな魅力です。特にアパレル業界は非常に移り変わりが早い業界です。

その中では、ユーザーのニーズをつかみ続ける機動力が必要であり、フランチャイズ展開をする以上直接お客様と接触するフランチャイズ店舗毎の研鑽が必要になります。そのフランチャイズの研鑽が実を結ぶようにするのはフランチャイズオーナーの事業や商品展開の成否にかかわる部分が多くなることを留意しておきましょう。

フランチャイズビジネスの注意点

フランチャイズビジネスの注意点

フランチャイズに加盟して起業をすれば、未経験の業種でも起業することができます。なフランチャイズ本部が仕事のやり方を研修してくれ、事業を行うことをサポートしてくれる上、知名度の高いブランディングされた看板を利用でき、集客を行うことができます。さらに、自分で起業をする時よりも資金調達が簡単になり、開業資金を抑えることも可能です。

一方、フランチャイズに加盟すると売上や利益に応じてロイヤリティを払う必要があります。また、事業がうまく行かないなどの理由から、急に事業を変更することや止めることも簡単にできません。フランチャイズ契約には契約期間があるからです。

フランチャイズに加盟するメリットを最大化させ、デメリットを最小化させるためには選ぼうとするフランチャイズについて以下の2点を確認することが重要です。

①事業計画の再確認
②事業の将来性と業務内容の確認

事業計画の再確認

フランチャイズを展開するフランチャイズ本部(以下「FC本部」と言います)は、フランチャイズ加盟店が増えれば増えるほどメリットが増えます。そのため、FC本部は自社が展開するフランチャイズビジネスの良い点をPRしています。メリットばかり情報が集まり、つい事前の想定が甘くなることが起きてしまいます。その結果、フランチャイズ契約を締結した後に聞いていた話や想定していた話と実際とが異なるケースが発生することもあります。

想定と実際とが異なって最も大きな影響が出やすいのは、事業計画です。起業してどれだけ収入=利益が欲しいのか、ということを改めて確認することが重要です。起業する際には、売上から計算していって費用を差し引いて月間や年間でどれだけ利益が出るのかを計算していきます。この事業計画は加盟しようとするFC本部のできるだけ客観的データを基に再確認していきます。加盟しようとするビジネスの平均顧客単価が分かれば、売上のめどが分かります。加えて、どれだけの集客をしなければいけないかも明確になります。

集客数と平均顧客単価が分かれば、店舗を開店する場所や商圏エリアに近い条件の加盟店に実際の数値を確認することもできるかもしれません。さらに、商品の仕入れ代金や人件費や家賃などの費用もより現実的な数値を利用して計算していきます。そこからさらにフランチャイズに加盟することで発生するFC本部に支払いをするロイヤリティなどの費用を見込んでいきます。売上から費用を引いて目標としていた収益より大きいのであれば、収入面においては安心してフランチャイズ契約に前向きになることができます。

一方で、売上から費用を差し引いて目標としていた収益より小さい場合や収益がマイナスやほとんど出ないというケースもあります。この場合、FC本部と一つずつの項目を確認して、間違いがないかを確認していきます。間違いがないうえで、無理のない事業計画上で収益が出ない場合もあります。その場合には、再度情報を整理して売上面と費用面の両面を見直していくことが必要になります。

事業の将来性と業務内容の確認

事業の将来性と業務内容の確認

事業計画が適正に作成でき、かつ得られる現実的な利益が満足できるものになっていることを確認したら、事業の将来性と業務内容を確認していきます。

事業計画を作成できる段階ですでに概ね事業自体を把握できていることが多くあります。しかし、事業をする以上最低5年以上の将来を見ておくことが必要です。フランチャイズ契約も契約期間が5年のものも多くあります。この期間中に事業をやめると、契約違約金が発生することが一般的です。

事業の将来性は、FC本部に確認するのが最も簡単です。ただし、ここでも客観的なデータかどうかに注意が必要です。お客様のターゲットとなる人口がどれくらいの推移で変化しているのか、と1顧客当たりの単価を変化させる要因を確認していきます。

また、過去にどのくらいのサイクルで事業変化の波が来ているかを確認します。そして、その変化に対してFC加盟店がどのように対応してきたのかをヒアリングします。環境変化は一定期間で必ず発生します。その時にはFC本部と共に対策を講じていくことが必要になります。過去のFC本部の変化への対応速度やその精度は事業の将来性を大きく左右すると言えます。

次に業務内容になります。フランチャイズ加盟店になった場合には、多くのフランチャイズではやらなければいけないことが詳細に定められています。そのため、業務内容と働き方が一致するかを確認する必要があります。これが業務内容の確認の目的です。

欲しい収益が得られて、将来性もある事業であるならば、大抵の我慢はできます。ただし、ライフワークバランスを考えておかないと事業を永く継続することができません。また、事業を継続する代償として、体調を壊すような結果になりかねません。そのためにも、フランチャイズ契約を締結する前にもう一度簡単でかつ重要な質問として業務内容が無理なく実施できるかという確認が必要です。

フランチャイズ契約内容の確認

フランチャイズ契約内容の確認

契約を行う前の最後に残された確認が、フランチャイズ契約書の内容確認になります。ここまで来るのに、多くの選択と時間を費やしているためどうしても早く事業を開始したいという逸る気持ちも強くなっている方も非常に多くいます。しかし、このタイミングのフランチャイズ契約書内容の確認は、慎重さが必要になります。

原則として、契約を締結したのちはフランチャイズ契約に則ることが義務付けられます。そのため、FC本部と加盟店が訴訟などに発展する場合にはフランチャイズ契約に則っているかいないかということが争点になります。

また、フランチャイズ契約書はFC本部が有利になるように作成されています。そのため、社会一般的におかしいと思われる内容が含まれている場合もあります。同意しかねる内容があった場合には、お互いにビジネスパートナーという立ち位置で契約内容の変更などを協議します。

厳しすぎる契約内容だけでなく、加盟店にとって自由すぎる内容にも注意が必要です。なぜなら、フランチャイズは複数の事業者が同じ看板を利用してビジネスを行います。そのため、1つのフランチャイズ加盟店の行動が社会問題に発展するような事態が発生した場合には、同じブランドを活用する他のフランチャイズ加盟店にも影響がでます。そのため、加盟店をFC本部が管理監督できるようにする条項が入っていた方が良い場合もあります。

これらのことから、フランチャイズ契約内容は事前に読み込んで不明点を理解することが必要です。FC本部側の口頭での説明を聞いて、理解できたと認識するのは危険です。費用をかけてでも弁護士などの専門家に内容を確認してもらい、アドバイスを受けることも必要となるケースも多くあります

契約書の内容を見ることにより、FC本部の姿勢や考え方を読み取ることもできます。フランチャイズ加盟店とトラブルを起こすことが無いように慎重な姿勢の本部であれば説明が適切かつ明文化されて曖昧な表現や判断を要することがないように努力の跡を見ることができます。逆に曖昧な部分が多い契約内容の場合には、FC本部の姿勢や考え方に疑義を持つべきです。

契約中の義務などの確認

事業者同士でトラブルになるのは、金銭関連が非常に多くなります。そのため、フランチャイズ本部に加盟金やロイヤリティなどの支払い関連事項については正しく理解をする必要があります。以下に代表的な支払い事項をまとめました。

≪FC本部への支払い事項≫

支払名称 内容
加盟金 FC本部が提供するビジネスノウハウや看板やネーミングなどの商標利用権などの対価になります。加盟金は、契約締結時に支払いするのが一般的です。加盟金には研修費などが含まれている場合もあります。そのため、加盟金には何が含まれているのかを確認する事も必要です。
ロイヤリティ FC本部に原則毎月支払いをする対価です。ロイヤリティの金額算出はフランチャイズ契約毎に異なる設定になっています。加盟店側の利益が出ていない状況でもロイヤリティの支払いを求められる場合もあるので、算出方法は正確に把握することが必要です。
研修費/システム利用料 多くのFC本部は、事業開始の前などに研修を行うようにしています。その研修の対価として支払いをします。同様に事業を行う上で利用するシステムについてその対価の支払いがシステム利用料です。
保証金 加盟店の未払いが発生した時に対応するためにFC本部に預けておく金銭です。保証金が活用される条件も契約によって異なります。もし、条件などが明示されていない場合には説明を求めるようにします。また、保証金は基本残額が戻ってきます。この返還の条件や金額計算方法も確認が必要です。
損害賠償 加盟店に違反行為があった場合などは、FC本部が契約を一方的に解除することや損害賠償を求めることができる条項があります。これらの条項が入っていることで、違反行為の抑制につながります。一方的かつその条件が不明確な場合は問題になる要因になります。また、違反行為や損害賠償の事項がないような場合には、加盟店管理がおろそかになるリスクが発生します。

契約終了時の義務などの確認

契約は必ず終了します。フランチャイズ契約には、契約期間があります。契約期間中の途中解約には一般的には解約金が発生します。解約金は途中での解約抑止のために金額が高く設定されていることが多いため、その解約金に関わる計算方法や請求される条件などを正しく理解します。

また、契約期間が終了した際に更新を行うことも多くあります。更新時に更新料など別途費用が発生する契約もあります。また、更新になる条件や更新した場合の期間などとあわせて理解が必要です。

契約終了後に、フランチャイズ事業と類似した事業を行う場合に注意が必要なのが『競業避止義務』になります。これは、フランチャイズ事業と類似する事業を、フランチャイズ契約終了後から一定期間(あるいは期限を定めず)実施を禁じるための条項になります。競業避止義務は、FC本部が提供する経営ノウハウを守るための条項になります。

まとめ

まとめ

フランチャイズは、店舗運営やサービスなど収益を上げていくためのノウハウをマニュアル化しています。起業を検討する方にはとても便利なシステムですが、起業してから5年後に中小企業が存続する確率は約40%*と言われています。つまり、起業から5年で半数以上の中小企業が存続していないことになり、事業を継続させることの難しさを示しています。

フランチャイズシステムを利用しての起業であれば、ビジネスノウハウと商品と看板などのブランディングや規模の利益も活用して事業を開始することができます。これは1から事業を立ち上げるより、大きなメリットやアドバンテージとなります。

しかし、フランチャイズビジネスも事業の責任は、起業された方自身であることは変わりません。そのため、事業の成否は起業家がどのような運営・アクションをとるかによって変わってきます。また、フランチャイズ事業であっても事業をやめざるを得ない状況になるリスクはあります。

フランチャイズでは契約内容をよく確認せずに締結すると、「こんなはずではなかった」という後悔や「事前の説明と違う」という憤りなどを抱えたまま事業を行うことになります。そうような状況では、事業への集中力が阻害されます。また、FC本部との訴訟などに発展すれば、フランチャイズ加盟店としての成功は難しいでしょう。

このようなことにならないように、事業者としての責任を自覚し、事業自体とフランチャイズ契約をもう一度慎重な確認が必要です。