フランチャイズ独立に必要な7つのスキル〜経営経験ゼロから加盟〜

フランチャイズに加盟しようする人の中に「経営経験がある人」がどれくらいいるかご存じでしょうか。公正取引委員会の調査報告書(2011年)によると、コンビニエンスストアチェーンに加盟する人の加盟前の職業では、「会社員等」が56.0%におよびました。加盟者の半数以上が経営未経験となっている通り、フランチャイズへの加盟に必要なのは、経営経験ではありません。むしろ、自営業などをしていた人は、フランチャイズでの決まり事の多さに驚くとさえ言います。

では、フランチャイズでの独立に必要な能力とは一体何なのか。定番と言われる「7つのスキル」を見ていきましょう。

FCビジネスを成功に導く7つのスキル

経営経験がゼロでも身につけられる7つのスキルをご紹介します。そもそも独立・開業に最も必要なのはお金や人脈などではなく、本人の「意欲」と「計画性」です。自分が何をやりたいのか、なぜフランチャイズチェーンへの加盟を目指すのかを明確化し、実現のために「何が必要なのか」「何をすればいいのか」の計画を立てることが最も大切なのです。

フランチャイズ加盟に必要な7スキル

1 情報収集能力、情報分析能力
2 商品・サービス知識
3 最低限の経理知識
4 自己管理能力
5 人材管理能力
6 出店立地を見極める能力
7 FCビジネスに関する法律知識

情報収集能力、情報分析能力

「情報」に対する価値がますます高まる現代。IoT(インターネット・オブ・シングス)、SNS、クラウド、AIなど情報に関するテクノロジーで溢れる世の中となりました。経営者が情報社会で生き残るためには、最低限の情報技術に関する知識を身に付けるべきでしょう。今や国民1人1台のスマートフォンを持つようになり、自ら情報を発信して共有しています。無名の一般人のツイートでも話題になればニュースで取り上げられ、何十万、何百万といった反響があります。

AIの進化もすさまじいものがあります。各自動車メーカーはこぞって人工知能を駆使した自動運転技術の開発に乗り出し、競争は熾烈を極めています。政府は2020年を目処に、人の運転を必要としないレベル4の完全無人運転サービスの開始を目標に掲げています。

このほか、AI搭載のおもちゃロボットやインターネットに接続する冷蔵庫が登場したりと、ICT産業は目まぐるしい発展を遂げています。

フランチャイズのみならず会社の経営者は、日進月歩する情報技術に対して常にアンテナを張り続け、メインストリームを把握することが大切です。あなたが中年以上の年齢層なら若者文化だからと言って敬遠せず、積極的に受け入れましょう。自らの足を使って幅広く情報を仕入れることが大切です。

商品・サービス知識

販売を考えている商品、提供を予定しているサービスに対して深い理解と知識が必要となります
加盟する業界ではどんな商品が売れ筋なのか、なぜ売れているのか、似たような商品で売れていないのはなぜなのか、など分析を進めて商品・サービスに対して理解を深めましょう。品質には常に気を配り、顧客満足の向上に努めなければなりません。

FCビジネスでは仕入れ先や仕入れ数量、値入れなどが本部から指定されることも多いですが、より良い提案をすることで本部も受け入れてくれるかもしれません。粘り強く交渉してみましょう。

最低限の経理知識

大企業で経理事務を行っている経営者はあまりいないかと思いますが、中小企業では経営者自身が決算書類を作成することも少なくありません。経理作業は経営が軌道に乗り出せばスタッフに任せるか、アウトソーシングすることもできますが、創業初期段階なら自ら行ってみるのもいいでしょう。高度な簿記知識までは必要ないものの、財務諸表の見方など決算書を読み解く最低限の知識はあったほうが便利です

これはフランチャイズでも同じことが言えます。加盟店舗の経済状況を理解していなければ新たな投資はできず、コスト(費用)を正しく把握していなければムダな経費をカットできないでしょう。

財務諸表は経営店の財産状況をあらわす決算書となるので、確定申告の際に必要です。経理の基礎は日々の取引や入出金を管理し、帳簿に記録することです。請求書や領収書などの書類はきちんとファイル管理するクセをつけておくといいでしょう。

また財務諸表を読み解くことで適正に資金調達計画を立て、収支を見直すことができれば、店舗経営に大いに役立てることができます。

自己管理能力

これまで会社員だった人も、フランチャイズに加盟すれば一人の経営者。今後は上から指示を待つのではなく、自ら動いて仕事を作り出していかなければなりません。

自己管理能力で最も大切なのは、①モチベーションの維持、②体調管理です。
会社員時代とは違い、経営者は決まった就業時間がありません。何時に起きて何時から仕事して何時に終わらせるというのも、経営者が自由に判断することになります。実際、経営者になった途端、24時間仕事のことを考えるようになったと多くの新人経営者は言います。

そこで大切なのが、仕事の終わりと始まりにメリハリをつけることです。ダラダラと仕事のことばかり考えていては高いモチベーションを維持できるはずがありません。

自身のスケジュールにメリハリをつけるには、「仕事をする時間」と「仕事をしない時間」の2つをきっちり分けることがポイントです。
「仕事をする時間」はスーツを着て仕事場に向かいましょう。プライベートの環境から遠ざかることで、脳は自然と仕事モードに切り替わるようになります。一方、「仕事をしない時間」は仕事に関係する書類やノートパソコンなどは傍におかないなどの工夫を心がけることが大切です。

また、体調管理もフランチャイズ加盟者にとって最も重要な要素です。経営者は体が資本なので、病気や怪我をしたら収入を得ることができなくなります。会社員のような有給休暇もないため、一日休むとそれだけ収入が減ります。会社員よりも日々適切な健康維持が求められるのが経営者なのです。バランスの取れた食事、十分な睡眠時間を取るように心がけましょう。

人材管理能力

スタッフを雇う場合、適切な人材管理能力が求められます。募集の広告の作成から、面接、採用と一貫して行わなければなりません。理想の人材を獲得するためにどのような条件で募集するか、面接では何を聞くかを慎重に検討します。

また雇ったらそれで終わりではありません。労働基準法に違反しないようコンプライアンス精神を遵守した労務管理が求められます。昨今は長時間労働、残業賃金の未払いに対する風当たりが非常に強くなりました。採用したアルバイトに「ここはブラック企業だ」と呟かれてしまえば、本部から是正するよう指導される可能性もあります。

このほか、人件費と時間帯別の売り上げのバランスも精査しなければなりません。フランチャイズ経営でも人件費をいかに抑えるかが肝となります。

 

出店立地を見極める能力

フランチャイズ加盟では、どこに店舗を出店するかが大きな問題となります。
代表的な商圏モデルの考え方の1つとして小売中心性指標というものがあります。地域商業の活性度合いを測る指標であり、「商圏内人口1人あたり販売額」を「県内人口1人あたり販売額」で除すことで求めることができます。数値が1よりも大きければ「その地域で小売業が繁栄している」ことを示し、1より小さければ、「繁栄していない」ことになります。

このほか、出店戦略の方法として「ドミナント戦略」(dominant strategy)があります。コンビニエンスストアチェーンがよく採用する方法の一つであり、特定地域に重点的に出店することで、他の競争店に対して優位に立とうとする戦略です。

出店する地域を見極める力を養うことで、経営未経験でも有利な条件でスタートすることが可能です。

FCビジネスに関する法律知識

フランチャイズに加盟するなら、関連する法律を知っておくと心強いでしょう。

たとえば独占禁止法は、本部は加盟店に対して優越的な地位にあるとし、必要な限度を超え、常識的な商行為慣習と比べて不当に不利益を与えている場合には、「優越的地位の濫用」に当たるとして規制しています。たとえば、商品の仕入れ数量について、返品が認められないにも関わらず、必要な範囲を超えて本部が指示する行為などが「優越的地位の濫用」に該当します。

このほか、中小小売商業振興法では、本部との契約時における説明・書面交付義務の項目、内容について定めています。
第11条1項では、情報開示義務項目として、「加盟に際し徴収する加盟金、保証金その他の金銭に関する事項」「加盟者に対する商品の販売条件に関する事項」「経営の指導に関する事項」「使用させる商標、商号その他の表示に関する事項」「契約の期間並びに契約の更新及び解除に関する事項」「前各号に掲げるもののほか、経済産業省令で定める事項」の6つを定めています。

見切り販売に関する裁判事例には、加盟店オーナーがコンビニ最大手のセブンイレブンを相手取り、本部から見切り販売をしないよう妨害行為を受けたとして、最高裁まで争われた結果、原告(加盟店側)が勝訴したものもあります。

加盟してからが本当のスタート

フランチャイズは加盟がゴールではありません。加盟後はこれまで経験したことの無いような困難に立ち向かわなければならないこともあります。強い意志をもって自己の夢の実現に取り組みましょう